相変わらずの遅筆である。
子供の頃、毎日のように酒を飲む父に、そんなに美味しいものなのかと尋ねたことがある。
毎日毎日毎日毎日このために生きてるーだの、くぅー美味いだの言ってたら気になるもんだ。
両親が酒を飲んでいる人は似たようなことをしたことがあるんじゃないだろうか。
ええと、その時うちの親は何て言ったっけな。うーむ幼少期の頃の記憶は曖昧だ。
唯一覚えているのは父がつまみに食べていたサラミを、トイレに行っている際にこっそり盗み食いして美味しかったことくらいだ。あれ美味い。超美味い。それ以来つまみが好きになったのは余談。
うちの父は酔うと、呂律が回らなくなり、自分の子供達にも酒を飲ませようとする馬鹿だった。ホント馬鹿。あの頃の俺小六ぐらいだよ?
なんで急にこんなことが思い浮かんできたんだろうか。
……ああ。そうか。
「おーい春ぅ、飲んでるかぁ?」
「うっげ……ベロベロじゃんか」
この酔っ払い魔理沙が父に重なって見えたからだっけ。
絡んできた魔理沙から地味に距離を取りつつ、内心で舌打ちする。
宴会が始まって結構経った。人数もわりといて、なかなか賑やかである。
俺は今幽香さんと二人きりで談笑しながら飲んでいるところだった。……のだが。邪魔が入ってしまったようだ。
畜生。幽香さんとこうやって二人きりで飲めるようになるまでにどんだけかかったと思ってんだよ!
というのも、幽香さんに他の幻想郷の住人に挨拶回りくらいしてきたら? と言われたので、あっちこっちのテーブルに回って、会釈して、自己紹介して、お酌して……ようやく戻って来て、今に至るのである。……ちっ、魔理沙め。
そういえばさっき、霊夢や魔理沙がいたテーブルに回っていた時、どうして今日幽香さんがこの宴会に来たのか、という話題になったんだが……二人の推測によると、俺の友好関係を広めるためなんじゃないかという話になった。
まぁさすがに無いだろうけどな、と魔理沙は余計なことを言ってきたが、正直俺は嬉しすぎて泣きそうだった。
幽香さんが俺のためを思ってわざわざ連れてきてくれたんだぜ? もう涙ちょちょ切れるわ。ただし『かも』だが。
本当に幽香さんには頭が上がらない。
しかもそれを全く俺に伝えない辺りが……もうなんていうかカッコイイ。
可愛くて美しくて綺麗で素敵でいい匂いでスタイルよくて料理上手でSで面倒見がよくて更にかっこいいとか……もう天使すぎる。好きです。幽香さんの為なら死ねる。
ていうかこう見ると高嶺の花すぎる気が…………。
ただまぁ運のいいことに、実は一つ安心できることがある。
それは、恐らくライバルがいないこと!
恋敵と書いてライバルである。
幻想郷で太陽の畑まで来る人間は少ないってかほぼいない。
よって出会いがない!
いくら幽香さんが魅力的だろうが、そもそもその存在を知らな…………いことはないか、大妖怪だし。
こんなに素晴らしい女性だとは知らない奴ばかりというところか。
ふはははは!
つまるところの幽香さんは俺だけが知ってるめちゃくちゃ可愛いのに何故か売れてないグラビアアイドルのようなものである。グラビアアイドルに興味なんぞ無かったが。
そういえばこの宴会に来ているメンバーにも男は全然いなかった。さっき一人見たくらいだ。
でも断言できる。アレは……枯れてる。そうとしか思えない。なんというか雰囲気で察した。
さて、何故こんなに男が少ないのか。
それ幻想郷の強者は女性ばかりであり、その強者たちの宴会のため、参加者が女性ばかりなのである。強者が女性ばかりなのは知らんけど。
うーむ、女尊男卑? ……全く関係ないな。さらに関係ないけど今の現世はマジで女尊男卑だと思う。今の時代で痴漢に疑われた時に最も有効な手段何か知ってる? 全力で逃げるだぜ? なんかどんなに説明しても負けることの方が多いらしい。理不尽すぎる。つまり何を言いたいかと言うと幽香さん可愛い。……あれなんか結論おかしい気がする。
閑話休題。
まぁそんなこんなで幽香さんに惚れる男はほぼいないと断言して良いわけだ。百合の花が咲く可能性はありますが。……うーむ、俺がもし女だったら間違いなく咲くね。乱れ咲く。
何なら幽香さんが男だったら薔薇の花が咲くまである。……いや待てそれはどうだろう。
例外として幽香さんが買い物に出かけたりする時に、人里で男に会うこともあるだろうが……とりあえず最近は俺が全ておつかいにいっているので問題ない。
おおぅこうみると俺結構ストーカーじみてるような気がする。後悔はないけど。
まあ、言いたいことはアレだ。
ざまぁみやがれ幻想郷の男どもよ!!
幽香さんは俺が時間を掛けてゆっくりと……ぐふふ。
「ーー、ーーい、いつまでぼーっとしてるんだよ」
「ーーんあ、はい、なんですか。なんか言ったか魔理沙」
おっと危ない。最低な笑みを浮かべるところだった。現実に引き戻してくれた魔理沙に向き直る。
「だから、春は酒に強いのかって聞いてるんだよ」
「まだあんまり飲んだことないからよくわからん。幻想郷で初めて飲んだし」
今まで清く正しい行いをして生きてきたため、お酒やらタバコやらのようなヤンチャな物に手を出したことはない。父に何度か飲まされそうにはなったが、そういう時は大体母が鉄拳制裁を下していた。うちはカカア天下……いやたれはババアだ、よってババア天下である。超どうでもいい。
まぁこないだ幽香さんに勧められたので呆気なくお酒には手を出しましたけど。ルール? 幽香さんがルールなんだよ! 自分で思っといてなんだが意味不明だ。
何度か幽香さんと飲む機会があったが、俺は飲んでも少し思考が陽気になったり、無駄なことをいつもより考えやすくなるくらいなので、案外ザルというやつなのかもしれない。
「まあまあ強いんじゃないかしら。私に付き合ってもケロッとしていたし」
お酒をゆっくり飲みながら幽香さんが補足してくれた。くぅ……お酒かコップになりたい。なんなら空気でもいい。幽香さんの体内を循環したい。
幽香さんは飲むと、割と早い段階で顔が赤くなってくる。そんなに真っ赤になるわけではないが、見れば『あぁ酔ってるなかわえぇ押し倒したい』と思うくらい。幽香さん可愛い。
だが問答はあまり変わらないので意識は割としっかりしているっぽい。ベロンベロンに酔ってこっちにしな垂れかかって来る幽香さんというのも最高だなぁとか妄想したのは一度や二度どころじゃないけど。……まあ普通に顔赤いだけでも物凄くエロスなんでそう悲観してはいない。
「へぇ……そのわりにはあんま進んでないみたいだなぁ」
「別に早く飲めばいいってもんでもないだろ?」
「まぁそれもそうか。そんなことはどうでもいいんだ。なあ、元の世界に帰りたいとか思わないのか?」
ならなんで聞いてきたのよと言うツッコミをぐっと堪えていると、矢継ぎ早に魔理沙は質問をしてくる。ついでに身を乗り出してきた。
ちょ、なに、お前俺のこと好きなの? 童貞は勘違いしやすいんだからあんまりグイグイこないで欲しいんだけど。
よく見ると、いや、よく見ないでも魔理沙は普通に美少女である。幽香さんに惚れてなかったら危なかったかもしれない。だがレベルが違う。幽香さんは天使である。魔理沙なんぞに誘惑されるものか!
……とは思いつつも悲しいかな、男の性というのは。無意識に高鳴ってしまう鼓動を落ち着かせるため、また微妙に距離を取る。さりげなく幽香さんの方向に近づくことも忘れない俺は策士だと思う。
「ぐ、グイグイくるな。なんでそんなに気になるんだよ」
「仕方ないだろ、幻想郷は娯楽が少ないんだ。外の人間の話なんてこっちでは全然聞けないんだよ」
「……そういうもんなのかねぇ。まぁ、全然帰りたいとは思わないな。外の世界は色々とめんどくさいんだよ」
勉強とか友達とか社会とか。
それに、幽香さんがいますし。そう思いながらちらっと横目で幽香さんを見る。
幽香さんは近くにあった料理を皿によそっていた。伸びる手がすらっとしていてめちゃめちゃ綺麗。結婚したい。
「そうなのか? 博麗神社に来た外来人はだいたいすぐに帰って行くみたいだけど」
「え、まず帰れんの?」
「霊夢に言ったら帰れるはずだぜ」
初耳である。いやまぁ帰る気は無いけど。方法あったのね。
「そういえば博麗の巫女はそんなこともしていたわね」
「そういえばってお前……」
思い出したかのように呟く幽香さんと、呆れたように眺める魔理沙。てめ誰にお前とか言ってやがるしばき回すぞ。
幽香さん忘れてたのか。うん、可愛いです。
……最近もうなんか俺病気なんじゃないかと思うんだ。幽香さんの行動全て可愛く見える。
全ての道がローマに通じるよう、幽香さんの全ての行動は可愛いのだろうか。そうに違いない。はっ、これはまさか……恋!?
あぁ、うん。知ってた。
オチ? ああ、落としました。オチだけにね!
……おかしいな俺も酔ってるのかしら。
春くんはお酒を飲むとめちゃくちゃ無駄なこと考えます。今回地の分長過ぎィ。
の癖になに一つ進まないとかいう謎展開。散々時間空けといてなんなのなの。ゆうかりんかわいいしかいってねーぞ。
というのもまあ実は普通に書いてたら余裕で5kくらいいっちゃったんで、一回ここで分けました。なので次話は三日以内かな? 多分。
感想などお待ちしております。