珍しく間隔が短いだと!?
前半はゆうかりんサイド、後半は春くんサイドです。
そんなに脳天気にかけなかった……うーむ、修行が足らぬか。
面白い力の使い方をするものだ。
春はよく意外なことをする。
発想が柔軟なのか、それとも今まで触れていなかった力なので逆にそういうことが思いつくのか、はたまた外の知識なのか。
いずれにしろ、私は春の行動を、なかなか読むことが出来なかった。
故に、面白い。
未知の事ほど面白いことはない。
さっき魔理沙から一機奪った時だってそうだ。霊力を触手のように伸ばし、一度放った弾幕に繋いで弾けさせるなど、見たことがない。
私が春を気に入っているというのもあるだろうが、意外に感じているのは私だけではないようだ。
その証拠にこの宴会に参加しているほとんどが、まだ拙い春の弾幕ごっこを見ていた。
避け方は危なっかしく、弾幕もまだまだ温い。
それでも、何かをやりそうな予感がするのだ。……あの子なら。
まあ、実際はかなり窮地に追い込まれているのだが。
スペルカード無しとはいえ、魔理沙は実力者だ。少し本気を出せば春は手も足も出ないようだった。
それにしても。
「……あの子、自分が能力持ちだって忘れてるのかしら」
「能力?」
スレスレで避ける春を見ながら、ボソリと呟いた言葉に、霊夢が反応する。
「あいつ、能力持ちなの?」
「ええ」
どうして能力を使わないのだろうと思っていたが、そういえば春はギリギリになると、どうも色々と考えなくなるらしく、身体で避ける事が多かったのを思い出す。
今までそんなに頼っていたものではなかったというのが大きいのかもしれない。
外では目立つから、人前では一回も能力を使ったことがないと言っていたし。
あの能力はかなり弾幕ごっこに於いては重宝すると思うのだが……。
霊夢が能力の内容を聞いてきたが、面倒だったので、あの子が言う前に私が言うのは変でしょ、と適当にごまかしておいた。
と、そこで遂に春が被弾してしまう。一発の弾幕を腹に受け、こちら側に飛んでくる。
「落ち着きなさいよ」
「落ち着いてるわ」
身体が無意識に春を受け止めに行こうとしていた。
が、霊夢に止められる。
結界があるから入れない、と言われた。
そんなもの簡単に壊せると言うと、霊夢は苦笑していた。
「……随分入れ込んでるのね、あいつに」
「そう、ね」
否定は出来ない。
少なくとも私は他人が傷付けられても、自分に被害が及ばなければ全く動こうとしなかったはずなのだが。
だが、入れ込んでいるというより……私の物に傷を付けられて腹が立っているだけだ。勘違いしないで欲しい。
それでは、まるで、私が春を好いているようでは……何を思っているのだろう。私は。
顔に複雑そうな表情が出ているのだろうか。幸せそうね、どっちも、と言われた。……なんだか馬鹿にされている気がする。
「どっちでもいいけど壊すのはやめなさいよ、貼り直すのがめんどくさいわ」
……理由はそれか。
仕方なく、少し結界に近づくだけに留める。春は……まだ意識はあるようだ。しかし、少々放心気味だった。
まだ、早かっただろうか。
そうでなくとも、春はただの人間だ。
霊夢や魔理沙とも違う、本当にただの人間。まぁ能力持ちだったり、霊力が豊富だったりするが。
少なくともこんな弾幕ごっこに参加する理由はほとんどないわけで。
春を戦わせている大元の原因は私だ。修行をさせていたのも私だ。
春は……それで楽しんでいるのだろうか。思えば私は私利私欲でただただ春を強くさせているだけではないか。
本人は実はやりたがっていないかもしれない。
──春と目があった。
申し訳なくなった。彼の瞳が、凄く辛そうだったから。
きっと、限界が近いのだろう。感じられる霊力は当初よりかなり弱く、全身はボロボロ。人間の身でこれ以上の戦闘はキツイだろう。
でもここで目を逸らすのは失礼だと思った。謝るのも違うと思った。
頑張っている春に、なんとか、少しでも、届けたい。
「頑張って」
そんな言葉がふと零れていた。
そこからはどうなったか。私も熱中して見ていたので、少々朧気である。
ただ、春が立ち上がって。
ガムシャラに立ち向かって。
死力を尽くして追い詰めて。
……それでも最後は全て避けられてしまって。
最後は気絶して落下してしまって。
傘を振るって結界をぶち破り、落ちてくる春を受け止めて、お疲れ様と呟いたところまでは、覚えている。
とりあえず、気付いたらボロボロの春を連れて、家に帰ってきてしまっていた。
身体に異常が無いことを確認し、とりあえず一安心。おそらく霊力の使いすぎだろう。いつものように。
砂埃に塗れた顔を拭いて、布団に優しく寝かせ、すやすやと寝息を立てる安らかな寝顔を見ていると、何だか春がとても、愛おしく感じた。
ふと手を握ってみる。思っていたより、少しゴツゴツしていて、大きい。その辺は男なのだなと思う。
男。そう、男。
私は今、春の手を握って、いる……?
急に恥ずかしくなって手を離そうとした。何をしているのだろう、私は。
が、今度は春の手が私の手のひらを握ってしまっていた。
無理に離すのも気が引ける。
ついでに、飲んでいたせいか、急に眠くなってくる。
布団に寝ている春を見ていると、さらにその眠気は加速した。
……まあ、少しくらいは、いいだろうか。
そう自分に言い聞かせながら、こっそりと布団に潜り込む。
さっきまでの恥ずかしさは、眠気と、それから……安心感で何処かへ追いやられて行った。
どうしてだろう、春の側が、とても暖かく感じる。
起きたら春はどんな反応をするだろうか。楽しみだ。
空いている手で春の頭をそっと撫で、そのまま私はゆっくりと意識を沈めて行った。
「おやすみなさい」
「……んぁ?」
気が付くと布団で寝ていた。
知らない天井……ではない。現在居候中の幽香さんの家の俺の部屋の天井だった。
あれ、確か俺魔理沙と弾幕ごっこしてて……えーと、それで、どうしたんだっけっか。
とりあえず、身体を起こす。
何だか全身が少しダルいような気もするが、恐らくただの霊力の使いすぎだろう。多分直に治る。
修行しすぎてよくこんな状態になってたからな。最初は風邪かと思うが、だいたいお昼になると直るのは知っているのだ。
よいしょっと。
「ん……」
ちょっと待てなんだ今の艶やかな声は。
勿論俺じゃないぞ。むしろ俺だったら怖い。てかキモい。
そんなことよりこの聞いてるだけでストレスが溶けていくような癒しボイスは…………まさか!?
同時に左手に違和感があるのに気付く。恐る恐るその違和感の正体を確かめてみると、そこには────
幽香さんが寝てた。
幽 香 さ ん が 寝 て た 。
……ちょっと意味がわからない。
どういうことなの? えー、こういうときはあれだ。文節で切ってみましょう。
幽香さん/が/寝てた。
ふむふむ。
ダメださっぱり変わらん。
────ってなんで幽香さんが俺の隣で寝てるんですか!?
散々遠回りしてようやくその思考にたどり着く。
あまりに信じられないことが起こると脳は認識を拒否するんだってよ? 便利だよねーあっはっはっは。空気が美味いなぁ。
いやでも待てよどういうことなんだよ!
なんで幽香さんは俺の隣で寝てるんだ!
どうしてこんなに寝顔が可愛いんだ!
なんで俺は寝てるときの記憶が全くないんだ!
ずっと手繋いでたのにぃぃぃぃぃ!
俺のアホ!
って違うそうじゃない!
お、俺が寝てる間に何があったんだ!?
一緒に寝てる……まさか俺、大人の階段登っちゃったの!?
────お、俺初めては幽香さんとって決めてたのにぃぃぃぃぃぃぃ!!
……あ、幽香さんか。なら問題ないや。唯一問題があるとすれば全く覚えていないことだな。
あの幽香さんの美しい身体が全く記憶にないなんて……うわこれ問題どころか鬱だろ死にたい。
ってそれも違う! ああもうこの際理由はどうでもいいや!
とりあえず何で幽香さんは俺のおててをニギニギしてるの!?
手が超柔らかくて、なんか思ってたより手のひら小さくて、白くてすべすべで……ああいかん勃つぞこれは。
ついでにどうやら一緒の布団で寝ていたようなので、距離はほぼ密着状態である。つまりあの豊満なお胸様がちょこっとばかし、いやしっかり押し付けられているわけで。
よし勃った。
んなことは置いといて、さて……どどどどうするのよ。
これが、かの有名な添い寝というやつか。うわぁ、日本ではもう絶滅したと思ってた。ニホンオオカミかよ。
どうでもいい。
とりあえずこれ、アレだろ。エロゲやらギャルゲやらでよくある、起こしたら『なにするのよ! エッチ! びったーん』なやつだろ?
……ちょ、勘弁してくれ幽香さんにビンタされたら俺立ち直れる気がしないんだけど。
弄られるのはいい。踏まれるのもいい。でもビンタはなんか明確な拒絶が伝わって来そうでイヤだ。
……わかった。ならこうだ。敢えてもう一度寝る!
たしかこのシチュエーションの主人公ってだいたいドギマギしながらヒロイン起こすよね? だから失敗するんだよな多分。
よって何事もなかったかのようにもう一度眠れば問題ない。うわ俺超孔明。
まぁこんなのは建前です。本音は、その、まぁ、アレだ。
幽香さんともうちょい一緒に寝ていたいだけに決まってます。
幽香さんになるべく優しく布団を掛け直して自分もその中に潜る。
あー……なんでこんなに可愛いんでしょうね。睫毛なげーし。唇ぷるっぷるだし。ついでにすげー良い匂いがする。
……なんかあんまり直視してると理性失いそうなまである。め、目を閉じよう。
布団の中で。
手を繋いだまま。
幽香さんと二人で。
寝る。
なにこの神シチュエーション。まさかこれ夢だったりしないよな……。
夢だとしたらだいぶ俺幽香さん依存症だなぁ。二人で寝る夢見るとか……乙女かよ。
本当に幽香さんが好きなんだなぁと実感する。
好きすぎて辛い、とかそんな感じのラブソングの歌詞を聞くと、以前は寒気がするか、クソワロタと言って小馬鹿にしていた俺だったが、今なら理解できなくもない気がする。
アレだ。幽香さんが可愛すぎて辛い。
幽香さんが微笑めば世界は平和になるんじゃないかな。
いや待て、争奪戦で戦争が起こるかもしれんな。
今の俺ならきっと一般人には負けはしないだろう。飛べるし。
もしそうなったら全部敵にしてでも幽香さんは渡したくない。おお、なんか、映画が出来そうだ。
そんなことを考えていると、幽香さんの安らかな寝息に釣られたのか、睡魔がまたやってきた。
ああ、超幸せ……。幽香さんの添い寝付き二度寝とか。
とてつもない安心感に包まれて、少しずつ俺は微睡みの中へ落ちて行った。
欲を言うと、起きた時も幽香さんが隣にいればいいなー……なんちって。
少々スランプ気味?
感想批評などお待ちしております。