東方入郷記   作:あおのん

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やはりあのペース維持は無理があった(白目)




夕日を見ながら

 

 

本日も快晴である。

 

 

そろそろ夏も終わりだというのに、太陽さんは一向に仕事を辞める気が無いらしく、ギンギラギンに輝いてらっしゃる。さり気なく。

 

年代が違うからなんだろうけどあのタイトルは正直理解できない。

ギンギラギンってさり気なくなくね? 随分自己主張激しいと思うんだけど、どういうことなの?

 

 

そう思って一度知恵袋で検索したことがある。どうやら結構様々な憶測が飛び交っているようで。うーんわかんね。

 

まあ原曲ほとんど聞いたことないんだけどさ。ちなみにディスってるわけではない。悪しからず。

 

……果てしなくどうでもいい。

 

 

 

ところで当たり前だけど、今年は残暑見舞い送ってないな。幻想郷だし。まあ今までも送ったことはないんだけどね。

 

残暑見舞いといえばアレだ。爺ちゃんと婆ちゃんが一昨年急に送ってきた激辛のカップラーメン。夏なのに。謎である。ついにボケたかと思った。

 

 

だって爺ちゃんと婆ちゃんの家、ウチから徒歩五分だぜ? その距離をゆうパックで送ってくるんだぜ? しかも激辛ラーメン。ボケたな(確信)とか言われても仕方ないと思う。

 

露骨すぎてツッコミに困り、次に会った時に普通に「おう爺ちゃん! 美味かったぜ!」って言ってしまった俺を誰が責められようか。いや責められない。

 

 

 

 

 

 

……ヤバイな、暑すぎて頭が突拍子もないこと考えちゃってるぞ。

 

袖で額を伝う汗を拭い、深呼吸して呼吸を整える。

 

ここは最近俺の中でのお気に入りスポット、芝生エリアだ。森の中の急に開けたこの場所は、本当に何にもない。

だが何となくここが好きだ。直射日光は辛いが、寝っ転がるとふかふかしてて気持ちいい。

 

 

良いタイミングでびゅうっと風が吹いた。草が風に揺れて心地良い音を立てる。目を閉じ、しばしその音と涼しさを楽しむ。

 

 

……いよし、そろそろやるか。

 

 

「……ふっ」

 

 

小さな霊力の弾を作る。

 

イメージ。この動作において最も大事なのは、イメージだと最近気付いた。

 

しっかり集中出来ていれば、弾は安定した球状になるが、少しボーッとしてしまうと、ザザッとラグが入って揺れたり、最悪消えてしまったりする。

 

 

脳で自分の掌の上に架空の弾を想像し、丸く、留まっている姿を想像する。そしてそれに合わせて弾を構成……。

 

少しすると、弾は安定してきた。

 

 

……OK、だいぶこの操作には慣れてきたな。安定するまでの時間だって半分以下になったと思う。

 

それでもまだ五秒ちょっとは掛かる。魔理沙はほとんど一瞬で構成と発射を行っていた。しかも十個単位で。もう俺からすれば変態技術なんだけど。あんな風になるまでにどんくらいかかるんだか……。

 

 

次に、今の弾を維持したまま、もう一つ同じものを形成する。

 

 

 

……多少手間取ったがクリア。

 

何度か同じ操作を続ける。

 

 

「あっ」

 

 

三個、四個、五個と続いたが、六個目を作っている最中にプツンと集中が途切れ、六個目どころか今まで作ってたものが全て霧散してしまった。

 

 

「あー……無理ぽ」

 

 

膝から力が抜けた。踏ん張ろうとせずにそのまま重力に身を任せると、まるで引き合うかのように背中は芝生へくっ付いた。俺の背中が芝生と仲良しこよしなようです。

 

 

……てか俺集中するのヘッタクソだなホント。

暑いというのを差し引いても、一つのことに真剣に取り組めないというかなんというか。

 

とりあえず、余計なことを考えないってのがかなり難しい。てか辛い。

 

昔からあまり喋らない分、脳内で色々と無駄に考え事をしてたせいだろうか。

 

 

いや、でもまぁアレだ。お釈迦様も何も考えないっていうのが出来るようになるためにすげぇ苦労したって聞くし。

いわゆる瞑想ってやつだ。

 

 

何にも考えない。それが瞑想の関門だと聞いたことがある。コツは確か呼吸に意識を向けること、だったっけ? 人間が唯一コントロールすることが出来る『普段は無意識にやってる行動』ってのが呼吸だとかうんぬんかんぬん。よくわからん。

 

 

……あー、ところで、意識したらすげぇ気になるよな呼吸って。どのタイミングで吸って吐いてたかわかんなくなるわ。ついでにあと舌の置き場所も。ぐぁぁ、気になる。

 

 

 

青いペンキをぶちまけたような空をボーッと眺め、五分ほど休憩してから、ゆうかさんホームに帰ることにした。背中が芝生から離れることを寂しがったが、幽香さんが家にいると思うとすんなり離れた。

幽香さん>芝生が証明された瞬間である。当たり前だ。

 

 

 

 

 

 

三日後、遂に引越しをするらしい。まさか幻想郷に来て半年も経たない内に引越しすることになるとは思わなんだ。

ていうかまず住んでるのが俺の家じゃないのに引越しといっていいものなのだろうか。

 

 

こないだ唐突に聞かされた引越し宣言だったが、幽香さんが勝手に俺も連れて行くことにしてくれてて嬉しかった。

 

何ていうんだろう。この、所有されてる感? ……幸せだ。

俺は幽香さんの物……うわあ、マジで最高なんですけど。首輪付けられてもいいレベルです。あ、色は青がいいなぁ。

 

最近の俺はMというか忠犬に近い気がする。もし尻尾があったら幽香さんの目の前では尋常じゃない速度で揺れてるんだろうなぁとか、客観的に思ってみたり。

 

 

まぁ引越し直前というと、挨拶回りやら荷造りやらで忙しそうなモンだが、生憎俺は幻想郷での友達なんて片手で数えられちゃうレベルだし、しかも引っ越すと言っても幻想郷自体がそんなに広くないので、夢幻館と引っ越し先とを行き来するのもそう難しくないのだ。

 

荷物だって自分の分はたかが知れてる。着替えと……いや着替えしか無いや。

というか基本的な家具は全て引っ越し先もとい、別荘、そちらにあるので、持ち運ぶ必要は特に無いらしい。

 

しかも時たま幽香さんが別荘を訪れて、掃除したりしていたので、綺麗なんだとか。ちなみに幽香さんは綺麗好きである。だって幽香さんが綺麗だしね。幽香さんマジ天使。

 

 

それを聞いて、俺も言われたら手伝ったのにーみたいなことを幽香さんに伝えたら「秘密にしておきたかったの」と、笑顔で言われた。もうそう言われると何も言えません。

あ、言えることあった。幽香さんかわえええええええええ!

 

 

 

と、まあそんなわけで俺は今までとあまり変わらない日常を過ごしていたわけだ。

 

 

朝起きて、おはようからおやすみまで可愛い幽香さんと一緒に朝食を食べ、日課の水遣りを済ませ、最近始めたランニングを小一時間ほど。

 

終わったら川に行って水浴びして、んで筋トレ。たまに釣り。

 

筋トレはあまり専門的なことが分からないので、とりあえず有名どころの腕立て、腹筋、背筋、スクワット辺りを軽く筋肉が熱くなるまでやっている。お陰でこの所筋肉痛が辛い。

 

んで帰って昼飯食って、ちょっと休憩して、そんでこの霊力トレーニングをするわけだ。

これが最近の俺の日常である。

 

 

……俺幻想郷に順応し過ぎじゃね?

 

最近は幽香さんに教えてもらった森の中に成ってる木の実とかも平気で食べるようになった。

 

少々前まで学校に通ってた都会っ子の俺は何処へ行ったのだろうか。あまり虫とか触れない系男子だったのに、最近なんか蛇を見ても驚かない系男子だ。うーん、流行らないなこれは。

 

グッバイ昔の俺。俺は幻想郷で気ままに生きて幽香さんに仕えます。

 

 

にしてもホント、七つの玉を探す物語に出れそうな勢いで修行してんな俺。

……いやでもあいつら無印時点で素手で畑耕してたしなぁ。でもかめなんとか波くらいなら撃てそうだ。

 

 

 

 

下らないことを考えながらポツポツ歩いて帰ると、辺りは綺麗な夕焼けになっていた。

 

超綺麗だった。夕焼けってなんでこんなに心に来る物があるんだろうか。思わず歩みを止めてしまったが、とある考えが思いついて、歩みを再開する。

 

 

(幽香さんにも見てもらおう)

 

 

じっくり眺めたい気持ちも山々だが、折角の景色なので、幽香さんにも共有して欲しかった。

 

幸い、家に入ってすぐに幽香さんの姿が見えた。

 

 

「ただいま戻りましたー。あ、幽香さん。今凄い夕焼けが綺麗ですよ」

 

「ええ、窓からオレンジ色が見えたわ。そうね、ちょっと出ましょうか」

 

 

リビングで本を読んでいた幽香さんを引っ張り出せたことに心の中でガッツポーズ。

好きな人と夕焼け見るとかどんなリア充イベントだよ。嬉し過ぎて小躍りしちゃいそうだ。怪しまれそうなのでピョンピョン跳ねるくらいで済ませたけど。

 

外に出て少し空を飛ぶと、西の地平線から太陽が半分だけ顔を出していた。まぁ沈んでるんだが。

 

 

 

オレンジに染まる幻想郷や、光源の太陽を見て、俺の貧困なボキャブラリーでは、綺麗だなぁくらいしか思いつかなかったが……感動した。

 

 

幻想郷にどうして来れたのかは分からない。

だが、もし神様が来させてくれたのだったら深く、感謝したい。そう思った。

 

感傷に浸りながら、横目でチラッと幽香さんを見る。

 

 

 

幽香さんは風で靡く髪を片手で抑え、夕焼けを見ながら佇んでいた。

 

 

「────」

 

 

思わず、息を飲んだ。

夕焼けに染まる幽香さんは本当に綺麗で。この人の傍にずっといられたらなぁと、そう感じた。

 

 

「どうかした?」

 

「っあ、いや、なんでもないです!」

 

 

俺の視線に気付いた幽香さんが、首を傾げていたので、慌てて視線を夕焼けに戻すと、変な春ねとクスクス笑われてしまった。め、めちゃめちゃ可愛い……。

 

 

ってか……なんか俺今凄いセンチメンタルだったな。超センチメンタルしてたわ。ちなみによく意味は知らない。センチメートルとどう違うんだよ。教えてエロい人。まあ知ったら知ったでふーんで終わるだろうが。

 

にしても幽香さんホントサキュバスかなんかじゃないの? 今俺完璧にチャームの魔法に掛かってたと思うんだが。そんなのなくても俺は幽香さんにメロメロなんですけどね!

 

ああ……脳内だと桃色テンションが板について来たな俺。

 

 

「ちなみにあっちが引っ越し先よ」

 

 

幽香さんの指差す方向は夢幻館から見て北側の大きな山だった。

 

えーと、確か一度地名はだいたい教えられたんだよな。あの大きな山は天狗がいっぱい住んでる所で……あ、思い出した。そうそう、物騒な名前で覚えやすかったんだよ。

 

……え、物騒?

 

 

「妖怪の山、でしたっけ」

 

「ええ。そうよ」

 

 

曰く、山の妖怪は他の妖怪たちとは違う組織であるらしく、主に河童や天狗が住んでいるんだとか。

 

河童。河童といえば尻子玉抜かれるとかで結構グロテスクなことをするイメージだ。天狗も子どもを攫うんだっけ?

 

 

もしかすると幻想郷に来て初めて、俺のイメージ通りの妖怪に出会えるかもしれない。そう思うとちょっとワクワクする。

幽香さんは天使だからな。

 

 

……ってんなこと言ってる場合じゃねぇよ。妖怪の山。読んで字の如く妖怪がいっぱいいるんだろうなきっと。……俺死ぬんじゃね?

 

え、まさか幽香さんこれもしかして引越しっていうより強化合宿的なアレなんじゃ……

 

 

「とりあえず、家に入りましょうか。晩御飯にしましょう?」

 

 

ああもう、そんな笑顔で言われたら何も言い返せないですってば。

あ、言うことあった。幽香さん可愛いよこんちくしょう結婚してくれー!

 






試験前なので恐らくまた更新速度が遅くなります。申し訳ありません。

理系は辛いよ(確信)


次から舞台は妖怪の山に移ります、多分。多分ね(念押し)

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