異世界はスマートフォンとともに 改 作:Sayuki9284
今話もよろしくお願いします(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*ペコ
第10話 王都へ
数週間後、週6ペースで依頼をこなしていた優輝翔たちのランクはともに紫まで上がった。
そしてその翌日、優輝翔たちはさっそく紫の依頼書の中から『王都への手紙配送(報酬:銀貨8枚)』という依頼を選択し、馬車で王都に向かう。この依頼の選考基準としては、この国の首都である王都に1度は足を運んでおきたい(そうすれば次からは「ゲート」が使えるため)というのと、この依頼の差出人が優輝翔の知り合い(?)であるザナックさんだったからだ。
王都への道すがら、優輝翔は実家が農家のため馬の扱いにも慣れているという双子に御者の方を任せ、1人荷台で魔法の本を読んでいた。ちなみに題名は『無属性魔法百科』である。
リンゼのお陰でこの世界の文字をほぼマスターした優輝翔は、午後から1人で買い集めた本を読み漁っていた。読んでる本の例を挙げると『水属性魔法百科』、『火属性魔法百科』、などの魔法の本や、『ベルファスト王国の歴史について』、『ミスミド王国の成り立ち』などの歴史や政治の本だ。
「優輝翔さん。調子はどうですか?」
今しがたエルゼと御者を交代したばかりのリンゼが優輝翔の隣に来てそう尋ねた。
「まぁまぁってところだ。他の魔法の本と違って、無属性魔法の本は分厚いくせに内容が薄いからな…。」
「まぁ、まさか個人魔法と呼ばれる無属性魔法を全部扱える人が出てくるなんて、誰も予想つかないですからね。」
「なるほど。こんな本を買うのはただのバカか物好きってか。」
優輝翔の投げやりな言葉に「あはは…」とリンゼが乾いた声を漏らしながら頷いた。
優輝翔はその反応を横目に見ながら「ふぅ…」とひとつ息を吐くと、パタンっと本を閉じてスマホを取り出した。
「休憩だ。流石に疲れた。」
「そう言えば優輝翔さん、途中の町で昼食を取った時以外はずっと本を読んでましたもんね。」
「まぁ、朝読んでたのは別の(歴史の本)やつだけどな。」
そう言いつつ、優輝翔は慣れた手つきでスマホの画面を開き、最近暇な時にやっているボードゲームアプリを開いた。そしてその中からチェスを選択して遊び始める。
「何をしているんですか?」
優輝翔がスマホに集中しているのが気になったのか、リンゼがそう尋ねてきた。
「ああ、ボードゲームだ。」
「ボードゲーム?」
「ん?………ああ。(そう言えばこの世界は娯楽が少ないんだったな)。ほら、これだ。」
優輝翔は1人そう納得すると、リンゼにスマホの画面を見せるために身体をくっつけた。
「ひゃっ///」
「ん?悪い、嫌だったか?」
「い、いえ…///……えっと、これが?//」
「ああ、これはチェスというゲームだ。他にも……」
優輝翔はそう言ってスマホの画面を戻し、リバーシ、将棋、麻雀、囲碁などの他のボードゲームを紹介する。
「すごい、こんなに……」
「リンゼは何かやりたいやつあるか?」
「そうですね…、お姉ちゃんならこの麻雀?というゲームなんですけど……」
「ん?何故だ?」
「だってお姉ちゃん、運はいいですから。」
「……そうなのか?」
「はい。」
優輝翔の疑問にリンゼははっきりとそう言って頷く。恐らくお祭りとかの抽選では毎回当たっていたのだろう。この世界にお祭りがあるかは知らないが……
その後、リンゼがとりあえず全部順番にやってみたいと言うので、優輝翔はリンゼがエルゼと御者を交代する時まで付きっきりでリンゼに大まかにルールを教えていった。
ただまぁ流石にこの量のゲームのルールを全て覚えきるのはすぐには無理なので、一通りルールを話した後は優輝翔が先ほど遊んでたチェスをより細かいルールを教えながらひたすら二人でやり続けたのだが…。
ちなみに、リンゼがエルゼと御者を交代したあと、エルゼはリンゼの勧めで優輝翔に簡単にルールを教えてもらってから、優輝翔とコンピューターを混ぜて麻雀を行い、案の定一人勝ちを収めたのだった。それも大勝。
そして『決してエルゼとは麻雀はしない』と心に誓う優輝翔であった…。
まぁそうなるとエルゼが拗ねてしまうので、結局その後エルゼと麻雀をやり続けたのだが……
(もちろん全敗)
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夕刻になり、優輝翔たちを乗せた馬車はリフレットの次の次の町、『アマネスク』へと到着した。そして適当に宿を決めてその日はそこで一泊。
翌日、優輝翔たちは午前中をこの町でゆっくり過ごしてから旅を再開しようと話し合い、それぞれこの町の観光をし始めた。そして昼前になり、3人で集まって昼食場所を決めようとしたのだが……
「……何か騒がしいな。」
「ほんとね。何かあったのかしら?」
優輝翔の言葉にエルゼも続く。3人の目の前には少し人だかりが出来ていた。
優輝翔たちが気になってその中心まで顔を出してみると、そこでは1人の変わった格好の少女が複数人の男に囲まれている風景が映し出されていた。
薄い紅色の着物に紺色の袴を身につけ、腰には大小2つの刀を挿している。髪はポニーテールに結われていて、そこに控えめな簪が1つ添えられていた。
「侍か。」
「サムライ?それって確かイーシェンの……」
「ああ。」
リンゼの言葉に優輝翔が頷く。優輝翔自身も生で見たのは当然初めてであった。
どことなくオーラを感じなくもない。
そんなことを考えていると、男達が一斉に女の子に殴りかかった。中には武器を持っている者もいる。
「助けた方がいいかしら?」
「………いや、普通にやってれば問題ない。」
優輝翔の返しにエルゼが納得したように「それもそうね」と言って目の前の戦いを傍観した。
それもそのはずで、女の子は戦いが始まってから1度も男達に攻撃を当てられていないのだ。むしろ襲ってくる男達を剣を抜かずに体術だけでいなしていた。要は、相手になっていないのだ。
だが……
「ん?なんだ?」
女の子が攻撃を受けていないのにも関わらず、急にお腹を抑え始めたのを見て優輝翔がそう呟く。
そして男達は今が好機と思い、女の子に一斉に飛びかかった。
「優輝翔っ!」
「ちっ!ああ!」
エルゼと優輝翔はお互いに声をかけ合い、女の子に飛びかかろうとしていた男達を蹴散らす。女の子は初め混乱したような顔をしていたが、敵ではないと判断すると再び男達を蹴散らし始めた。
そしてほとんど男達を片付け終えたところで町の警備兵がやってきたので、後を任せて優輝翔たちは女の子とともにこの場から離れ、近くの路地裏に入った。
「ご助勢かたじけなく。拙者、九重八重と申す。あ、八重が名前で九重が家名でござる。」
そう言って女の子、もとい八重が頭を下げた。続いて優輝翔たちも自己紹介を行うと、優輝翔は先程の疑問を八重に尋ねる。すると八重はまたお腹を抑えながら……
「いやぁ……実は、その……拙者、ここに来るまでに、恥ずかしながら路銀を落としてしまい、それで……」
ぐうぅぅぅ……
八重の言葉に反応したかのように、八重のお腹から大きめの音がこの辺り一帯に響き渡ったのだった……