異世界はスマートフォンとともに 改   作:Sayuki9284

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今話もよろしくお願いします。

それともアンケートの方ですが、一番多かった『このまま(週一投稿)』になりました。多くの投票ありがとうございました。


第11話 襲撃

ちょうど自分たちも昼食を取ろうとしていたので、優輝翔は八重も伴って近くにあったこの町評判のレストランに入った。

 

八重は最初「赤の他人に施しを受けるわけにはいかないでござるっ!」と言っていたが、優輝翔たちが対価としてイーシェンの内政や八重自身の情報を要求するとあっさり首を縦に振った。チョロイ。

 

そして昼食中に分かったことは、

 

1、八重の家系は代々武家の家柄で、実家は八重のお兄さんが継ぐことになったので、八重は腕を磨くために武者修行の旅に出たということ。

 

2、八重の目的地が王都にいる、昔父が剣術を教えに出向いていた生徒の家だということ。

 

3、八重の家は徳川の収める領地のオエドにあるということ。

 

4、日本と同じような名前の武将(織田、毛利、上杉……etc)がイーシェンにもいるが、別に戦国時代のように争ってはないということ

 

などである。ああ、そう言えばもうひとつ。八重の胃袋は底なしだということも追加で。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~〜〜〜〜〜〜〜

 

 

昼食を終えると、優輝翔たちは八重も加えて4人で王都へと旅立った。ちなみに何故八重も一緒かというと、単純に目的地が一緒だからだ。

 

但しそのままだと、王都に着くまでの間、八重は金銭面を優輝翔たちに頼りきってしまうことになってしまうので、優輝翔は八重を雇うという形にして、その代わりに八重は優輝翔に旅の費用を全額担ってもらうということでお互いに合意した。

 

そしてアマネスクの町を出て3日。優輝翔たちは今日も馬車に揺られていた。

 

今御者台には八重が1人で乗っている。基本はエルゼとリンゼも混ぜて3人で交代しながらなのだが、八重は自分が雇われているということで、2人よりもかなり多めの割合で御者を担っていた。

 

そして荷台では、エルゼは優輝翔のスマホで麻雀(しかも超上級者向け)をひたすらプレイしており、リンゼは優輝翔の隣に座って一緒に魔法の本を読んでいた。

 

 

「この魔法……試してみるか。」

 

「何かいい魔法があったんですか?」

 

 

優輝翔の声を聞いてリンゼが優輝翔に尋ねる。

 

 

「ああ。「アポーツ」って言う魔法なんだが……」

 

「……遠くにある小物を取り寄せる魔法……ですか。」

 

 

リンゼが優輝翔の持っている本を覗きながらそう言うと、優輝翔は頷いて手のひらを上に向けた。

 

 

「アポーツ」

 

「あっ!えっ、うそっ!」

 

 

目の前からエルゼの悲鳴が聞こえてくる。そして優輝翔の手のひらの上にあるのは1台のスマートフォン。そしてその画面では……

 

 

「あっ、負けてる……」

 

「しっ、仕方ないでしょっ!//相手も強いんだからっ!//」

 

 

優輝翔の呟きにエルゼがそう言いながら奪い取るように優輝翔の手の上からスマホをひったくった。

 

 

「珍しいな。」

 

「ふんっ!//言っとくけど勝率はいいんだからねっ!//次は勝つし…//」

 

 

エルゼはそう言うとまた元の場所に座ってスマホを弄り始めた。恐らく再戦をしているのだろう。

 

 

「もう……お姉ちゃんったら…。その魔道具は優輝翔さんのなのに……」

 

「別にいいさ。リンゼもゲームをやる時は熱中してるだろ?」

 

「えっ、あ、ごめんなさい……」

 

「気にするな。ふたりが楽しんでくれてるならそれでいいさ。」

 

「…///」

 

 

優輝翔がそう言いながらリンゼの頭を撫でると、リンゼはお馴染みのように顔を赤くした。そして照れ隠しのようにさっさと自分の読みかけていた本へと意識を落としたのだった……

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~〜〜〜〜〜〜〜

 

 

午後、先程途中の町で昼食を終えた優輝翔たちは再び王都への旅路についていた。ちなみにもう距離もそこまで遠くはない。

 

そんな中、優輝翔はまたひとつ新しい魔法を試そうとしていた。

 

 

「ロングセンス」

 

 

優輝翔がそう唱えた瞬間、優輝翔は隣にいるリンゼだけでなく、優輝翔の目の前で今も麻雀をしているエルゼ、そして御者台にいる八重の呼吸音、さらにはその3人の心臓の鼓動までもが自分の耳に流れ込んでいる感じがした。

 

 

「これは、すごいな…。」

 

 

優輝翔がそう感心して他の音にも意識を傾けようとすると、ふと同じように強化されていた嗅覚に馴染み深い臭いがした。

 

優輝翔がすぐにその臭いの漂ってきた方角に視覚を最大限強化して向けると、目に飛び込んだのは革の鎧を身にまとった二足歩行の多数のトカゲ(恐らくリザードマンであろう)が、剣と盾を手に複数の鉄の鎧を着た兵士らしき者達と戦っている風景だった。

 

また兵士の人たちの後ろには優輝翔が今まで見たことも無い煌びやかな馬車があり、またリザードマンたちの後ろには黒のローブを着た怪しげな男が1人目の前の戦況を見守っていた。

 

その肝心な戦況だが、どうやら兵士たちの方が分が悪いようだ。恐らくは既に過半数が地面に倒れ血を流している。

 

 

(これは急がないとまず兵士は全員死ぬな。)

 

 

優輝翔はそう確信すると、数秒ほど悩んだ後、即座に御者台にいる八重に少し大きめの声で指示を出した。

 

 

「八重!全速力だ!もう少し行った先の森の中で人が襲われてる!」

 

「なっ!しょ、承知!」

 

 

優輝翔の掛け声に、八重が鞭を入れて一気に馬の速度を上げる。そして着くまでの間に優輝翔はもう少しだけ詳しい様子を見ることにした。

 

 

(倒れているのは……今はまだ6人か?でも残りが4人ならやばいな。というか1人は今にも倒れそうだ。対してリザードマンはその数倍。あとは男の方だが…………なるほど、やはりあいつは闇魔法の使い手か。)

 

 

優輝翔はローブの男が何やら呟いた後にリザードマンが1体男の前から現れたのを見てそう確信し、馬車に乗っている3人に指示を出し始めた。

 

 

「敵はリザードマン十数体だ。戦っている兵士は今はもう3人だ。」

 

「えっ!3人ですか!?」

 

「ちょっ!それやばいんじゃないの!?」

 

「いや、恐らくもう着くからもつにはもつだろ。ただ時間がないから先に指示を出す。リンゼ。」

 

「は、はい!」

 

「リンゼは目に見えるとこまで来たら先制魔法を打て。その後は八重とすぐ御者を交代。そのまま馬車の上から援護射撃してくれ。」

 

「分かりました!」

 

「エルゼ。八重。ふたりはリンゼが馬車を止めるか、行けると思ったら、すぐに飛び降りて兵士と協力してリザードマンを倒せ。俺は黒幕を殺る。」

 

「「了解(でござる)!!」」

 

 

ふたりからの返事を聞くと、優輝翔は再び戦況を確認する。4人を乗せた馬車と血のついた戦場までの距離は、もう目と鼻の先だ。

 

 

 


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