異世界はスマートフォンとともに 改   作:Sayuki9284

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16話目です。今回から18禁版の方も作成させていただき、そちらの方にもう少しだけ詳しく?書いた優輝翔の過去編①を乗っけております。

そちらも含め、今話もよろしくお願いします。


第16話 過去と今

 

《過去編①》

 

━━━約十年前━━━

 

 

「おらっ!!」

 

「ゴホっ!」

 

 

男が一人、手加減なしでまだ六歳の子供の鳩尾に蹴りを入れた。そして休むことなく他の男達も追撃を加える。

 

 

「おら立てよこらっ!」「おらっ!」「おいっ!」「このっ!」

 

「かハッ!」「ゴボッ!」「ブッ!」「ッ……おえぇぇ……」

 

「たっく、可愛いねぇこいつぁ。いいサンドバッグだ、ストレス発散にもってこいってな。」

 

 

男はそう言って床に血を吐いて倒れている少年の頭を容赦なく踏みつけた。

 

 

「うぅ……痛い……痛いよ…、お母さん……おかあ…ヴぉえッ……」

 

「優輝翔!!」

 

 

目の前で苦しみながら自分に助けを求めてきた一人息子が乱暴に蹴りあげられるシーンを見せられ、男達に拘束されていた母親は大声で息子の名を呼んだ後、涙を流し懇願するような目で息子の近くにいる自分の『夫である男』に叫んだ。

 

 

「お願い!!私はなんでも言う事を聞くから!!だからっ!優輝翔だけは助けて!!お願いします!!」

 

 

もうここ一時間足らずで何度目か分からない母親の悲痛な叫びを聞いても『夫である男』の顔色が変わることは無かった。ただひたすら息子と自分の姿を見てニッコリと笑っているだけ。とても楽しそうに。

 

ただ、今回は少しだけ反応を示した。

 

 

「ふむ……何でもか…?」

 

「えっ…、ええっ!そう!なんでも聞く!聞きます!だから優輝翔は傷つけないで!!お願い!!!」

 

「そうか。なら……」

 

 

そう言って『夫である男』が始めたのが、この場にいる男達、計十三人(『夫である男』含め)全員で母親を壊すことだった……

 

 

 

 

 

そして、数時間後……

 

死ぬ間際の母親が最後に見たものは、自分の愛する一人息子の顔が、自身が死ぬ瞬間をまるでサーカスのクライマックスでも観ているかのような目で見つめている『夫であった男』に踏み潰されている、残酷な映像だった……

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「………嫌な夢を見たな……」

 

 

優輝翔は苦しそうな顔でそう呟いてベッドから起き上がる。

 

お金には余裕があるということで少し……いや、かなり高めの宿、否、ホテルを選択した優輝翔たちは、今はホテルでの豪勢な夕食も終えてそれぞれの自室で休んでいた。

 

ちなみに今回ホテルは1人1つの部屋を取っており、それぞれの部屋には風呂とトイレも完備されている。それゆえ値段もそれなりに高く、1人金貨3枚だ。

 

時刻は午後9時前。優輝翔は軽くシャワーを浴び、ベッドの上に座って1人の来客者を待った。

 

 

そして、その時はやって来る……

 

コンコンっ……

 

 

「いいぞ、入って。」

 

「し、失礼します…///」

 

 

そう言って控えめな態度で入ってきたのは、リンゼ・シルエスカ。今日優輝翔に自身の初めてを捧げるためにここに来た女の子である。

 

リンゼは緊張しているのか、顔を真っ赤にして身体をモジモジさせながら、チラチラ優輝翔を見つつその場にい続けていた。優輝翔はそんなリンゼの様子を見て立ち上がると、リンゼの元まで歩み寄ってその身体ぎゅっと抱きしめる。

 

 

「あっ…////」

 

「風呂、入ったんだな…//」

 

 

優輝翔はリンゼの濡れた銀髪を指で解きほぐしながら、耳元で囁いた。

 

 

「んっ// はい…////汗、かいてましたから…////」

 

「そうか…//スーッ……シャンプーのいい匂いだ…//」

 

「……////」

 

 

優輝翔がリンゼの髪に顔を擦り付け匂いを嗅ぐと、リンゼは頬を真っ赤に染めあげる。

 

 

「リンゼ…//先に幾つかいいか?//」

 

「は、はいっ…////」

 

「まずひとつ目なんだが……俺はまだ結婚とかする気はないし、子供も作る気はない//」

 

「えっ///でも優輝翔さ んっ…///」

 

 

リンゼは優輝翔の言葉に動揺したように声を上げたが、言葉を最後まで言えないまま優輝翔の指で口を閉ざされた。

 

 

「分かってる//だからリンゼにはこれを飲んでもらいたい//」

 

 

そう言って優輝翔がポケットから取り出したのが、小瓶に入っているピンク色の透明な液体だった。

 

 

「これは…?///」

 

「避妊薬だよ//後遺症とかもない安全なやつだ//」

 

「えっ、でもいつ…?///それに高かったんじゃ…///」

 

「まぁ…な//前者に関しては食後すぐだ//「ゲート」があるしな//後者はまぁ……リンゼが気にすることはない//だがその分効果は保証する//(少しだけ媚薬効果もあるしな//)」

 

 

実際は金貨1枚なのだが、まぁリンゼに知られて申し訳ないとか思われるよりはましであろう。リンゼも優輝翔の気遣いを気づいてかは知らないが、少し表情を崩して笑顔で頷いた。

 

 

「ありがとう//2つ目はエルゼたちに関してだが……//」

 

「あ、それならちゃんと『どうしても今日中に読み終えたい本があるから邪魔しないで』って伝えてあります///部屋の鍵も掛けました///」

 

「そうか…//じゃあ最後に、リンゼ//」

 

「はい…///」

 

 

優輝翔からの真剣な眼差しに応えるように、リンゼははっきりと返事をして真っ直ぐ優輝翔の目を見つめ返す。

 

 

「最初に言ったな//俺は今はまだ結婚もしないし、子供も作らないと//その理由には当然生まれてくる子供に安定した安全な生活空間を用意してやりたいというのもあるが、他にも俺がまだ冒険者でいたいだとか、リンゼたちともっと冒険者を続けていたいというのもある。これに関しては、あと最低1年くらいはやっていたいな//」

 

「1年…ですか…///そうですね…///まだ始まったばかりですし///」

 

「ああ//でも、俺はリンゼと恋人になる気はない…//それだと、心のどこかでリンゼを実験台にしているような気がして嫌なんだ…//」

 

「えっ……えっと…///」

 

 

優輝翔の言葉の真意が掴めず、リンゼは少し困惑した目を優輝翔に向けた。そんなリンゼに優輝翔は優しく微笑みかけると、そっと頭に手を置いて撫で始めた。

 

 

「リンゼ//今から出す問いには、これ以上ないくらい真剣に考えて答えを出してほしい//」

 

「…………はいっ…///」

 

 

リンゼは優輝翔の目から、言葉から、雰囲気からその問いに対する重要性を感じ取り、それに対して力強く言葉を返した。

 

優輝翔は1度頷くと、1度部屋の奥に行き、そこから小さな白の小箱を持って戻ってきた…。そしてその小箱を見た瞬間、リンゼは目を見開いて思わず声を漏らす。

 

 

「えっ///そ、それって///」

 

「ああ//………リンゼ//」

 

 

優輝翔はリンゼの言葉に頷くと、リンゼの前まで行って膝をつき小箱を開けた。そこにあったのは紛れもない『婚約指輪』と呼ばれるものであった。

 

その中でも優輝翔が選んだのは『エタニティリング』と呼ばれるもの。なんでも『永遠』を意味するのだとか。

優輝翔は指輪を見て感極まったのか、手を口に当てて涙を零しているリンゼの名を呼ぶと、しっかりと目を見つめながら言葉を紡いだ。

 

 

「リンゼ//俺のことを好きなのはリンゼだけじゃない///そのことはリンゼの方が気づいているよな…//」

 

「…はい…///」

 

「俺は……そいつらの気持ちにも、その都度応えていくつもりだ…//むろん一番はリンゼだが、お嫁さんが増えてくればお前だけに構う理由にはいかなくなる//」

 

「……コクリ///」

 

「……その場合、俺がリンゼに確かにあげられるものは、俺の『初めて』でリンゼの『初めて』を奪うことと…//俺がリンゼを一生守ってやるという誓いと…//」

 

 

リンゼの目から次々と涙が溢れ出す。それはもう口元を抑えている手の下から絶え間なく流れ落ちるほどに……

 

 

「お前が少しの間だけ、俺の唯一の婚約者であることと//お前が俺の第1妃であるという事実くらいだ…//まぁ最後のは俺がどっかの王様にでもならないとあまり意味をなさないだろうがな…//」

 

 

優輝翔は最後に冗談じみた言葉でリンゼの笑顔を誘おうとした。だがもはや、リンゼはもう前など見ていなかった。ただただ泣きながら顔を手で抑えて、優輝翔の言葉に耳を傾けていたのだ。

 

優輝翔は1度深呼吸をすると、指輪を手に取ってリンゼに尋ねた。

 

 

「リンゼ////ここまで聞いて尚……この指輪、受け取ってくれるか…?/////」

 

「…ッ……ッ…はぃ……ッ…/////」

 

 

大粒の涙を流しながらもしっかりと返事を返したリンゼに、優輝翔はそっと手を伸ばしてリンゼの左手を取った。そしてゆっくりと薬指に婚約指輪をはめる。

 

 

「……綺麗だ//よく似合ってる//」

 

「優輝翔さん…///わたし…///」

 

「ああ……リンゼ、キスしていいか…?//」

 

 

優輝翔の問いにリンゼは真っ赤な顔にトロンとした目を浮かべながらゆっくりと頷いた。そして優輝翔は1度立ち上がるとリンゼの腰と後頭部に手をやり、そのまま顔の距離を詰めた。リンゼも優輝翔の顔がアップされるのを見て静かに目を瞑る。

 

 

「んっ///」

 

 

リンゼの口から可愛らしい声が漏れた。優輝翔は一瞬だけ口を離すと、またすぐに自身の唇をリンゼのそれに押しつける。何度も……何度も……

 

リンゼも途中からは優輝翔の首に手を回し自分から優輝翔を求めていた。何回も……何回も……

 

 

 

時間にしては5分ほどだろうか。短いと思うかもしれないが、触れ合うだけのキスだけで5分は決して短くはないと思う。

 

事実、ふたりは永遠のような5分を過ごしていたのだから……

 

 

 




いかがでしたでしょうか?not18禁版に書き直す際にちょっと文字が変わった所もありますが、話の流れに変化はないのでご安心ください。

次回は完全18禁予定なので、そちらの方に投稿させていただく予定です。18歳以下の方は1週か2週話が飛んでしまいますが、どうかお許しいただけると幸いです。

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