異世界はスマートフォンとともに 改   作:Sayuki9284

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今話もよろしくお願いします。

最近リアルが忙しく、咲野皐月さんという「イセスマ if」を書いている方には返信が出来ず迷惑をかけたり、この話もギリギリでちょっと修正点を見つけて書き直したせいで文章がおかしくなってたり、ほんと皆さんには迷惑をかけてばかり……

本当にごめんなさい。こんな私とこの作品ですが、これからもどうか、「イセスマ if」含めよろしくお願いしますm(_ _)m


第19話 ジェネシスと過去②

 

「……っと、そうだ。「ジェネシス」の効果そのものについてなんだが……」

 

「あ、はい…//」

 

 

しばらく抱きしめ合っていたふたりだが、優輝翔がふと思い出したかのようにそう言ったところで、リンゼも同様な感じで頷いた。と言っても、膝には乗ったままなので距離はずっと近いままだが……

 

 

「古代魔法「ジェネシス」。この魔法の効果には常時発動しているタイプと、普通の魔法みたいにその時その時で詠唱して発動するタイプがあるんだ。」

 

「えっ!//ま、まだそんな秘密があったんですかっ//」

 

「ああ、ちなみに常時型の方はもう登録した時点で発動している。リンゼ。俺に言葉を発さず心の中で思うだけで語りかけてみろ。」

 

「えっ?//あ、はい…//」

 

(優輝翔さん…//)

 

(リンゼ……愛してる//)

 

「えっ!//」

 

リンゼはいきなり頭の中に直接響いたかのような声がして優輝翔の顔を見る。しかし優輝翔はゆっくりと首を横に振った。

 

 

「俺は喋ってない。心の中で語りかけただけだ。」

 

「じゃあ、これが…?//」

 

「ああ。便利だろ?」

 

「はいっ//」

 

 

優輝翔の問いかけにリンゼが嬉しそうに頷く。

そう、これが「ジェネシス」の常時発動型の効果の1つ目。『念話』である。

 

ちなみにこれはふたりの愛が深まれば深まるほど、そしてふたりが交われば交わるほど、より長い距離を念話でき、またその度合いがある一定値を超えると、なんと自分が見ている光景や、自分の伝えたい本当の思い(たとえそれがうまく言葉に出来なくても)までも、正確に相手に伝えることができるようになるのである。

 

そして1つ目と言うからには、当然2つ目もあるわけで……

 

それが『累加属性』だ。そしてこれは『念話』よりも更に特殊で、男と女で累加される属性が異なるのである。

 

簡単にまとめると……

 

・男の場合

火、土、光、闇の4つの属性が使えるようになり、その魔力消費量が減少し、発揮される効果が上がる。最終的には魔力消費ほぼ0で最大限の威力を発揮できる。

 

・女の場合

水、風、光、闇の4つの属性が使えるようになり、その魔力消費量が減少し、発揮される効果が上がる。最終的には魔力消費ほぼ0で最大限の威力を発揮できる。

 

と、このようになっている。

 

ちなみに無属性がないのは、「ジェネシス」自体が無属性魔法だからだ。何せ今まで述べてきたのは、全て常時型の効果なのだから。

 

 

「すごい…//じゃあ私は風と闇の属性も使えるようになっているってことですか?//」

 

「ああ。でもそれだけじゃない。リンゼは火が得意で光が苦手と言っていたが、これからはその光に加えて普通と言っていた水もより使えるようになる。」

 

「すごいですっ//なら私、もっともっと優輝翔さんのお役に立てるんですねっ//」

 

「役に立つっていうか……まぁ、これまで以上にリンゼを頼れるようにはなるな。離れていても『念話』があるし。」

 

「はいっ//」

 

 

優輝翔の『頼れる』という言葉を聞いてリンゼが嬉しそうに拳を握った。優輝翔はそんなリンゼを愛おしそうに撫でながら、忘れてはいけないもうひとつのタイプの説明を始める。

 

 

「さて、じゃあ次はその時その時……臨時型とでも言おうか?そっちの説明を始めたいんだが……」

 

 

優輝翔はそこまで言って口を閉ざした。溜めているとかではなく、どこか躊躇っている様子の優輝翔に、リンゼは首をかしげながらどうしたのか尋ねる。

 

 

「どうかしましたか?優輝翔さん。」

 

「いや、実は臨時型なんだが……詳細は分かってないんだ。」

 

「分かってない?載ってなかったんですか?」

 

「いや、なんて言うか…本にはこうあったんだ。『無属性魔法「ジェネシス」。戦闘時におけるこの魔法の効果は時が来るまで明かされず、使えない。心せよ。もしこれを使えれるようになれば、そこには大きな力と代償が目を覚ますだろう。』って……」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

その後、ふたりはエルゼたちが来るまで今度こそゲームをして過ごし、エルゼたちが迎えに来たところで外に出た。

 

朝から少し王都を探索して午後から行きたい店の目星をつけていたらしいふたりは、当然同じ部屋から出てきたリンゼと優輝翔を怪しく思い詰め寄った(特にエルゼ)が、昨夜から今に至る話を聞き、さらにリンゼの真っ直ぐな優輝翔への想いと、優輝翔のリンゼを真剣に想う強い意志を確認すると、あっさりと引き下がった。

 

しかし流石は姉妹、そして感情を読み取るのが得意な優輝翔というべきか、エルゼ、そして八重が落ち込んでいることはすぐにわかったので、ふたりは念話を使って話し合い(ほぼ確認みたいなもの)をし、リンゼがふたりを連れて優輝翔のいた部屋に入っていった。

 

そして僅か5分後、部屋からリンゼがふたりを連れて出てくる。その時優輝翔が見たふたりの顔が少し赤かったのは、おそらく気のせいではないのだろう。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

《過去編②》

 

 

「母さん……」

 

 

まだ幼いと言ってよい少年の、寂しげな声が少年のいる部屋一体に響き渡る。

 

いや、部屋と言っていいのかも分からない。少年のいる『そこ』はただただ4×25×25の全面真っ白な空間であった。家具などそういった類のものは愚か、ほこり一つ落ちてはいない『そこ』は、少年がもう1年も前にあの『夫であった男』に連れてこられた場所であった。

 

食事、睡眠、学業、その全ては『そこ』で行われ、少年が外に出られるのは風呂と、トイレ、そして『人体実験』を受ける時のみであった。

 

だが、そんなことはどうでもいい。何よりひどいのは、少年にあてがわれる『人体実験』が常軌を逸していた事だ。例えばやれ『実験』と称して食事を1日に何食も食べさせられたり、または全く食べさせられなかったり、さらにその『実験』で出される食事の内容も、普通の食事の時もあれば、ある時は生肉であったり、またある時は生きた虫であったり、さらに運が悪い担当者の時には自身の排便や毒蜘蛛を食べさせられたりもしたのだ。

 

当然少年は拒んだ。だがそんなもの意味は無い。食べさせられる。苦しい、気持ち悪い、吐きそう。毒蜘蛛の時など、何度死にかけたか。だが、死ななかった。そうやって少年はまず毒に対する絶対耐性を徐々につけられた。

 

他にもある。風呂に入る時にたまに熱湯風呂や冷たい風呂の中に突き落とされながら暑さと寒さ、風邪などの病気に無理やり耐性をつけたり、何度も皮膚を切り付けて痛みに強くしたり、電気を浴びせて電気耐性をつけたり、少年にとって、『人体実験』が行われる時間はまさに地獄だったのだ。

 

……だが、もう1年も『そこ』で暮らしてきた少年には、既にそんなことはどうでも良くなってきた。

 

いや、辛くないわけではない。確かに熱湯風呂は入ると火傷をして痛いし、食事も生きた虫や毒蛇、蠍などは味覚がおかしくなり、時には死の淵に落ちかけた時もあった。だが、もう一年も経てば大分耐性も付いてきて、今ではハブに噛まれても顔を歪ませるだけで済んでいる。

 

そんなクダラナイことよりも、今少年の心の奥底に今もこびりついて離れないのが、去年星になった母親の事であった。特に、最後の死ぬ間際の母の姿。

 

客観的に見れば散々な姿をしていたであろう。当然少年の目にも同じ母親の姿が映っていた。だが、少年はそれとは別にもうひとつ違う景色が見えていたのだ。

 

あの日、あの時、『夫であった男』に踏み潰されながらも、少年は確かに母親が自分を見ながら唇を動していたのを見逃さなかった。おそらく気づけたのは少年だけであろう。そして少年だけが、既に舌を無くしていた母親が伝えたかった『言葉』をはっきりと理解出来た。

 

 

『ごめんね』

 

 

たった4文字。されどそこに込められた母親の想いは、その何百倍もの文字ですら言い表せないものだった。

 

少年も当時はよく理解出来なかったものの、約1年経った今ではそこに込められた母親の愛情にも少しは気づくことが出来た。

 

だが、まだ少しだけだ。しかもその『少し』というのが本当に『少し』なのかは、少年には分からない。それを知る人物はもういない……いないのだ。

 

少年が目の前で母親を殺され施設へ連れて来られたあと、少年は何度も自殺を試みた。しかしそれを『夫であった男』、否、『実験道具の持ち主』が許すはずもなく、結果一年がすぎた。

 

どうして『男』は少年に固執しているのか。確かにまた代わりを用意すればいいだろうし、いちようストックも用意してあるのだが、それでも『道具としての愛着』はこの少年が1番強かったのだ。

 

他の少年少女なら簡単に斬り捨てていただろう。事実、この『実験道具の持ち主』は、要らなくなった少年を解体して『実験道具』や施設で買っている他の動物たちの餌にしたし、少女の場合は年齢に関係なく施設が雇っている男たちや飢えた獣の性処理道具、もしくは “ナニカ” の母胎にしていた。

 

しかし、この少年、この『実験道具』だけは捨てる気になれなかった。理由は主に2つ。1つは少年には才能があったこと。もう一つは少年の中に自分の中の『王』としての血が流れている事だ。

 

だからこそ、少年は死ぬことも許されず、『当たり前を模した』かのような日々の中で時折の拷問を受けながらここまで、そして、数年を過ごしてしまった。

 

しかし、少年が10歳になった頃、少年に一筋の光が訪れた。その光はやがて完全に闇に落ちていた少年を光の元に誘い、救い出していく。少年は徐々にその光に魅了され、心を取り戻していく。

 

 

幸せのないはずの空間で、一人の女性が、絶望を抱え込んでいた少年に、再び『幸せ』の意味を教えていく……

 

 

━━━過去編②終了━━━

 

 

 


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