異世界はスマートフォンとともに 改 作:Sayuki9284
18禁版の方も読んでくださってる方は「いや、過去編どころじゃない!」と思うかもしれませんが、どうしても入れたかったので、ご了承くださいm(*_ _)m
来週もう一度過去編(完結編)を挟み、続きに行こうと思います。
それではどうぞ!今話もお楽しみください(●︎´▽︎`●︎)
……コツ……コツ………
真っ白な空間の外から誰かが近づいてくる音が聞こえてくる。ただの足音がなぜ壁一枚隔てた空間の中まで響くのか。そもそもこの音は普通の人間なら聞き取ることも感じることもできないくらい小さな音だ。
しかし、少年には関係ない。少年の耳は最長ではるか数キロメートル先の人の会話を聞き分け、少年の目は最長ではるか数キロメートル先の光景を鮮明に脳へと送り込む。
ここに来てからもう5年が経つ。少年の身体はもうここまで改造されていた。心は閉ざされ、もはや感情は見る影もない。機械。ロボット。そう言われても仕方の無いほど、少年は人ならざるものに近づいていたのだ。
そんなある日のことだった。
コツコツと聞こえる足音。どうせいつものようにここの従業員が朝の食事を運んできたか、もしくは食事を抜きにして勉強でも始めさせようとしているのだろう。いや、人体実験を始めるために呼びに来たのだろうか?
まぁ、そんなことはどうでもよかった。どうせいつもの日常が始まるんだ。そう思ってた。
しかし……
「初めまして。私、星野あかりって言うの。よろしくね。」
「……だれ?」
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突然の出会いから数ヶ月。優輝翔の世話役だというあかりは週に3日、優輝翔のもとへ訪れて、食事や洗濯、教師役など、様々なことをしてくれていた。
最初は怪しげにあかりのことを監視していた優輝翔も、しっかりしつつも度々ドジってしまう人間味溢れるあかりに徐々に肩の力が抜け、1年もたった頃にはすっかりそれを日常と受け入れるようになっていた。
しかもありがたかったのは、あかりが来ている日は実験やまともじゃない食事が一切なかったのだ。まぁ食事は3食あかりが用意するので当然かもしれないが、人体実験を受けなくていいのはありがたい。あれは今でもなお、優輝翔にとっては苦痛の時間なのだ。
ただ、優輝翔は一つだけ大きな疑問を抱いていた。なぜあかりのような人間がこんな場所で、こんな仕事をしているのか。人体実験の時にここの研究員があかりにこのことは話すなととても強く念を押されたので、恐らくあかりは本当にこの施設に預けられている一人の少年の世話としか思ってないのだろうが、それでもここは、あかりのような真っ当な人間が来ては行けない場所である。
優輝翔はその事がどうにも頭から引っかかり、抜けそうになかった。
「こら。ちゃんと私の話聞いてた?」
「え?ああ。聞いてたよ。答えは log3+2 だろ?」
「む〜〜〜はぁ……。正解。ほんと、なんでこの子はもう高校レベルの問題が暗算で解けるようになってるのよ。」
「こんだけ一緒にいりゃ分かるだろ?俺が天才だからだよ。」
「こら。調子に乗るなっ。」
「…………ワァー、イターイ。」
あかりがそう言いながら優輝翔のおでこに指を弾くと、優輝翔は目を逸らしながら完璧な棒読み演技を行う。それを見てあかりがまたワーワー喚き、優輝翔がそれを興味無さそうに返す。いつもの光景だ。
……でも、1年前までは絶対に見れなかった、光景だ……
なんというのだろうか?この感情は……
嬉しい?楽しい?幸せ?
きっとどれも正解ではなく、きっとどれも当たってる。
まだ1年。されど1年。この1年で、優輝翔が徐々に人間に戻る道筋を歩み始めていたことに、優輝翔自身もまだ気づけていなかった。
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それからさらに3年。なんと、今日はあかりが初めて自分を真っ白な空間の外に連れ出してくれた。なんでも教えることがなくなってきたので、課外授業ということらしい。
ただし常にあかりの傍を離れないという約束の元だ。恐らくどこからか監視されているのだろう。守れなければ、あかりがクビになるという。
「ま、俺はお前がいなくなっても別に困らねぇけどな。」
「あ、またゆきくんそういうこと言う。ダメだぞ。メッ。」
「……俺は何年生だよ、あかり。」
そんな砕けたいつもの会話を交わしながら、二人は手を繋ぎながら施設の外に出ていった。優輝翔の年齢はもう15歳。身長はとっくにあかりを越している。遠くから見たらほんとカップルにしか見れないだろう。実際会話もそれに近いものになっている。
「……眩しいな。」
「いい天気じゃん。久しぶりに外に出るんでしょ?」
「……もう10年くらい出てねぇな。」
「うげっ!マジで!?」
二人はそんな会話をしながら歩き、とある拓けた草むらに出たところで腰を下ろした。
二人はしばらく無言になり、大自然を感じる。そよ風に吹かれ聞こえる木々の音色、さらりと自分たちを包み込む優しい風、上から暖かく照らす陽の光。
「……気持ちいいね……」
「……ああ…。」
「……ゆきくん、お弁当食べる?」
「いや、はえーだろ。」
優輝翔のツッコミはいつも通り健在である。
……ポス
不意に、優輝翔の肩に何かが乗せられた。見なくてもわかる。音で、匂いで、空気の流れで。
「……どうした?眠いのか?」
「……うん//自然の中にいるとちょっと…//」
「なら横になれよ。俺はここにいるから。」
「ううん。これがいい。地面は枕ないもん。」
「自分の腕を枕にすればいいだろ。」
「やだ。腕痛い。」
「……しゃーねぇな//」
「えっ……//」
優輝翔はめんどくさそうに吐き捨てると、あかりを腕に抱いて地面に寝転がり、自分の腕を枕にしてもう片方の腕であかりを包み込んだ。
「ちょっ…//ゆきくん…//ダメだよ//こんな所で…//」
「別に//一緒に寝るだけだろ//」
「でも//」
「うるさい//口も塞ぐぞ//」
「あう//」
優輝翔の言葉にあかりは思わず口をとざす。さすがにこんな場所でキスまでされると、初なあかりは心臓が持たない。……と言っても、ここだけの話、あかりはアラs…( ´∀`)=⊃)`Д゚);、;'.・グホォ
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とある日の夜。
「ふんふっふ〜ん♪//ゆきくん今日の食事も美味しいって言ってくれた//最初の方は全く言ってくれなかったのに、今じゃ必ず言ってくれるからな〜//余計なことも言っちゃうけど…//」
あかりはいつもの要領で夜ご飯を優輝翔に作り、今は洗い物を終えて施設を出ようとしているところだ。
「次は土日挟んで月曜か〜。早くまた会いたいなぁ…//……そうだ、もう一回社長に頼みに行こっかな。ゆきくんにもっと会いたいって。」
実はあかり、優輝翔の父親に過去に二度、三度直訴したことがあるのだ。もっと優輝翔の世話をしたい(訳:優輝翔と一緒にいたい)から日数を増やして欲しいと。だが全て断られた。
それでもめげないのがこの人、星野あかりである。そして、あかりが適当な理由を考えながら社長室までの道を歩いていると、不意にちゃんと閉じられていなかった部屋の中から、奇妙なナニカの鳴き声のようなものが聞こえてきた。
「え?なに?」
あかりは気になってその扉を少しだけ開く。
……後悔した。開けなければよかったと、何度となく思う。でも、そんなものは、あとの祭りだ。
あかりが見たもの、それは…………
「ヒッ……」
紫色の涎を垂らした真っ黒な大蛇が、信じ難い餌を食べている光景だった。その餌の名は……【人間】