異世界はスマートフォンとともに 改   作:Sayuki9284

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やって参りました、Sayukiです(。ᵕᴗᵕ。)

さて、今回は過去編の最終回。力作となっております(๑•̀ㅂ•́)و✧

ちょっと文字数が多いですが、時間のある時にじっくりと読んでください!

涙腺緩い人はティッシュか何か準備しといてくださいね(*^^*)


それではどうぞ!


第31話 過去編(完結編)

 

「……あかり、何かあったのか?」

 

「え?」

 

 

いつものようにあかりが持ってきた食事を二人で食べていると、優輝翔が怪訝そうな顔をしながらそう聞いてきた。

 

何かこれといった大きな変化が見えたわけじゃない。でも、確実に先週までと違っていたのだ。態度が、雰囲気が、顔色が、声のトーンが、その全てが、今までより若干負の方向に傾いているように優輝翔は感じていた。

 

 

「別に、何も変わってないよ。」

 

 

あかりは言う。いつもの笑顔で。でも、その笑顔でさえ、優輝翔が好きなそれではなくなっていることに、優輝翔が気づかないはずもない。

 

 

「嘘つくな。顔でわかる。」

 

「……何も無いって。」

 

「だから嘘を…「(バンッ!)ほっといて!」……」

 

 

優輝翔の言葉を遮るように、あかりは両手をテーブルの上に打ち付けてそう叫んだ。そして少し間を置いてから、悔しそうに下を向いて言葉を震わせながら呟いた。

 

 

「……ごめん、今はそっとしてて……」

 

「……わかった。」

 

「……洗い物してくる。」

 

 

あかりはそう言うと、2人分の食器を持って空間を出ていった。今まで……いや、先週までとは完全に違ったあかりの様子。いったい先週の金曜、別れてからあかりの身に何が起きたのか。

 

優輝翔はそこに嫌な予感しか感じられなかったが、ほっといてと言われた今、しばらくは様子を見ることにした。

 

 

 

 

 

その決断が後に、絶望という名の津波となって自分に返ってくることなんて、夢にも思わずに……

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

(はぁ…。やちゃったな…、せっかく心配してくれたのに……)

 

「あかりさん。」

 

「えっ?」

 

 

あかりが顔を落としながら歩いていると、不意に目の前から自分の名を呼ばれ驚きながら一歩後ろに下がった。顔を上げた先にいたのは、自分を雇ってくれたこの会社の社長の秘書の男だった。

 

 

「あかりさん、社長がお呼びなので一緒に来ていただけますか?」

 

「えっ?社長さんが……」

 

 

あかりは怪訝そうな顔をしながらも、無視するわけに行かないので秘書の後を着いて社長室を訪れた。

 

 

「失礼します。…………何か御用でしょうか?」

 

 

あかりは社長室に足を踏み入れると、数歩だけ進んで椅子に座っている男に尋ねた。

 

 

「よく来たね、あかりさん。優輝翔はどうだい?仲良くやってるようだが?」

 

「えっと、息子さんは大変素晴らしいと思います。報告書にも書かせていただきましたが、既に高校学習範囲の全てをマスターしており、試しに受けさせてみた日本最難関大学の試験も満点。知識欲も深く、ダメ出しするところが見つからない次第です。」

 

「ほぉ…。一流大学に特待合格した君を持ってそう言わしめるか、さすが私の息子だ。……ところで、最近は教えることも無くなってきたように思えるが?」

 

「えっ、あ、はい…。ですから、最近は許可を頂き体験学習などを……」

 

 

あかりは言葉をつまらせながら質問に答える。ここで対応を誤れば、お役御免にもなりかねないのだから。もちろん、かなりの給与は貰っているし、退職金も出るだろうから金には困らないが、それでもあかりは、お金より優輝翔と離れるのを嫌ったのである。

 

だが事態は、あかりの思わぬ方向へ進み始めていた。

 

 

「体験学習ね…。何をするのかと思い1度は許可したものの、ほとんど草むらで添い寝ごっこをしていただけのように思えるが?」

 

「ごっ……いえ、ちゃんとその場で見つけた植物や昆虫、動物などとも触れ合い、多くのことを……」

 

「触れ合いねぇ…。そんなもの、教科書に書いてあるものだけでどうとでもなると思わないか?例えば生きた熊を捕まえてその場で齧り付いて味を確かめるくらいしてくれればこちらも何も言わないのだがね。」

 

「そっ、そんなこと!出来るわけが!息子さんに万が一のことがあったらどうするんですか!?」

 

「……ふふっ、はははっ!!ハッハッハッハッハッ!!!」

 

「!!」

 

 

突然大きな声で笑い始めた社長に驚いて、あかりは数歩後ろに下がる。しかし、すぐに壁ではない何かにぶつかって下がれなくなった。

 

後ろを振り向く。そこには、いつの間にいたのか、自分より遥かに背の高い2mくらいのムキムキの黒人男性がたっていた。

 

 

「やぁ、よく来たね、クロムくん。もう少し待ちたまえ。すぐに彼女を運んでもらうから。」

 

「えっ!?はっ、運ぶって!どういうことですか…っ?」

 

「そのままの意味さ。君の役目はひとつ終わったんだ。そろそろ次の役目に移ってもらおうかと思っててね。」

 

「次って……」

 

「 」

 

「ッ!!」

 

「……運べ。」

 

「いやっ、いやぁぁぁぁぁァぉー!!!!」

 

 

あかりは絶叫して逃げようとするも、すぐに黒人男に意識を奪われる。薄れゆく意識の中、あかりは一言だけ、心の中で、最後にこう囁いた。

 

 

(ゆき、くん……たすけ、て……)

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

翌日以降、あかりは優輝翔の前に姿を見せなくなった。どこに行ったのか、どうなったのか。

 

優輝翔の耳にはもう役目を終えたので大量の退職金とともに退職させられたと聞いたが、もしそうなら優輝翔はなぜ言ってくれなかったのだろうと、少しだけ怒りを覚えていた。

 

なんなのだろうか?このまるで、恋人にでも捨てられたかのような気持ちは……

 

自分はあかりのことを、自分でも気付かぬうちにこんなに大切に思っていたなんて……

 

あかりは違ったのだろうか?今まで自分に見せてくれていた笑顔は、作り物だったのだろうか?いや、そうでは無い。ちゃんとした本物だと、優輝翔はそう確信をもてた。

 

なら何故、あかりは何も言わず、相談もなしに立ち去ったのか……

 

優輝翔は心の中で、何か大切なものがぽっかりと抜けたような感覚を覚え始めていた。

 

 

 

それからの日々は、また、以前の地獄の日々と同じものだった。いや、勉強の時間が無くなり、人体実験が殆どになるのだから、以前よりも地獄と言った方がいいだろう。

 

半年も経つ頃には、優輝翔は毒、電気、熱、痛み、その全てに強固な耐性を手に入れ、1時間程度なら呼吸をしないで過ごせるようになっていた。

 

もはや人間ならぬ、人造人間と言った方が良いかもしれない。ハブに噛まれても死なず、地雷を踏んでも無傷、深さ数千メートルの水圧を再現した圧力に耐え、嵐の中を普通に歩く。腕力は象一頭を片手で投げ飛ばせるほどあるだろう。脚力は地球上に勝てるものはいなくなった。

 

ここまできたら、もう育てるものは何もない。あとはその成果を確かめて、飼育するだけだ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

20XX年 〇月。

 

 

優輝翔はここに来て10年目で、初めてとなる空間に連れてこられた。広い、とにかく広い空間。

 

いったいここで何が始まるのか。

 

優輝翔はその空間に入ると、指示された場所まで進む。そしてそこにたどり着くと、一瞬のうちにガラスの壁が四方を覆い、床から大量の粘着性のある液が漏れ出した。

 

 

「これは……」

 

 

優輝翔は試しに足をあげようとするが、動かない。かなり強力なのだろう。そして目の前にあるガラス。触って見てわかる。これはかなりの強度を持つ強化ガラスだ。

 

優輝翔がそうやって冷静に現状を確かめていると、どこからともなくいきなり空間内にある男の声が響き渡ってきた。

 

 

「やぁ。久しぶりだね、優輝翔。」

 

「………………」

 

「無言?酷いな。挨拶くらいできるだろう?」

 

「………………」

 

「……ふっ。まぁ、いい。今日はこれから面白いものを見せてやるからな。」

 

 

そんな声が聞こえた次の瞬間、優輝翔の正面にある床がパカッと開き、下から壁に手錠で張り付けられたあるものが上昇してきた。

 

 

……いや、ある人と言うべきか。懐かしい……あの人……

 

 

「なん…で……“あかり” が……ッ…」

 

 

星野あかり。約1年前、突然優輝翔の前からいなくなったはずのその人である。裏切られたと思っていたあの人が今、再び自分の前に姿を現したのだ。変わり果てた姿で……

 

 

「ゆき……くん……」

 

「あかり……どうしたんだよ…。そのお腹は……」

 

 

そう、久しぶりに会った彼女のお腹はまるで妊婦かのようにぷっくり膨れ上がっていたのだ。

 

一体誰の子を……いや、ナニの子を……

 

 

「いったい、何にあかりを襲わせやがった……」

 

「気になるか?彼女の相手が誰なのか?」

 

「ふざけるな!!どうせまともな生き物じゃねぇだろうが!!」

 

 

優輝翔はそう言いながら目の前のガラスを全力で叩く。だがガラスには、ヒビ1つ入らなかった。

 

 

「ッ……固い……」

 

「当然だよ!そのガラスは世界一強固なガラスとして作られているものを何重にも重ねたものなんだから!たとえ運良く表面の1枚を割れても、全部割ることは無理だろうね。ハッハッハッハッ!!」

 

「……ゲス野郎……」

 

「酷いなぁ。実の父に向かって。せっかくこれから出産ショーを見せてやろうと思ってるのに。」

 

「なっ、まさかっ……」

 

「そのまさかさ。もう時期産まれるよ。彼女の子はね。」

 

 

男の言葉に優輝翔はあかりのお腹に慌てて視線を戻す。確かに何かがしきりに暴れてるのが目に見えてわかった。そしてその度に、あかりが苦しんでいる姿も。

 

 

「あかり!しっかりしろ!」

 

「うぅ……ゆき、くん……助けて……」

 

「くそッ!!」

 

 

優輝翔は何度も何度も全力でガラスを叩き続ける。しかし、未だガラスにヒビは入らない。そして、そうこうしているあいだに……

 

 

「うっ……ぁ…………」

 

「っ!あかりっ……」

 

「うぅぅ……ぁ……ぁあぁぁあぁぁぁ!!!」

 

 

あかりは仰け反るようにして腰を突き出した。そして、一分半ほどかけて赤ちゃんが生まれるところから生まれてきたのは、蛇のような、されど蛇じゃないナニカ。ひとつ言えるのは、人の要素は何も無かったことだ。ある事象以外……

 

 

「オギャー、オギャー、オギャー……」

 

「!!これは……」

 

「ハッハッ!やったぞ!成功だ!」

 

 

突如聞こえてきた忌まわしき声。優輝翔の怒りの矛先は瞬時にあの男に向けられた。

 

 

「テメェ……あかりに何しやがった!!」

 

「なに、簡単なことだよ。私のペットの子供を産ませてやっただけさ。改良に改良を重ねたペットのね。」

 

「なに……」

 

「いやぁ〜大変だったよ。彼女の身体が何度拒絶反応を起こしたことか。その度に手術や薬などを打って、全く、彼女には最後までちゃんと仕事をしてもらわないと。今まで高い金払ってあげてたんだから。」

 

「っ!待てっ!これ以上何する気だテメェ!!」

 

「なに、簡単なことさ。用済みとなった彼女には食料となってもらうんだよ。ペットのね。」

 

「ッ!!」

 

 

男がそう言った直後、何人かの人間がこの空間に足を踏み入れてきた。そして痛みで気を失っているあかりを無視して生まれてきた蛇のようなナニカの赤ん坊を丁重に保護すると、少し距離を置いて立ち止まった。

 

 

「さて、それでは私のペットを紹介しようか。ああ、彼らは見物人だよ。最高のショーには観客も必要だからね。」

 

「テメェ……!!」

 

 

優輝翔が悔しそうに歯ぎしりしている目の前で、ゆっくりとあかりのさらに奥にある扉が開く。そしてそこから、長さ数十メートルはあるであろうこの世のものとは到底思えないほどどデカい蛇が現れた。

 

真っ黒な見た目に毒々しい吐息。反り立つ二本の牙は生きる者の命を簡単に奪い取ることができると思えるほど立派で、眼光は見ただけで石になりそうなほど鋭い。だが何より不気味なのは、その身体から無数に生えているうにょうにょした触手のようなものだった。

 

間違いなく、これはこの世の生き物などではない。違うナニカだ。

 

 

「……やれ。」

 

シュ〜〜〜

 

「っ!やめろォおぉぉぉ!!!」

 

 

優輝翔はそう叫びながら再びガラスを殴り始める。しかし殴れど殴れどヒビは入らない。いや、少しヒビ割れてきたようにも思えるが、それもまだ1枚だけ。あかりを救うなんて、夢のまた夢だった……

 

 

「あかりっ……あかりっっ!!」

 

「うっ……ゆき、くん…。」

 

 

優輝翔の声に反応したのか、それとも蛇の触手に持ち上げられたことによって目を覚ましたのか。兎にも角にもすぐに自分の現状を理解して未来がないのを悟ったあかりは、精一杯の笑顔を作りながら優輝翔に最後の言葉を送り始めた。

 

 

「ごめん……ね…。わたし……」

 

「謝んなよ!今助けるから!」

 

 

無理だと分かっていても、優輝翔はそう叫びながら懸命にガラスを殴り続けた。手を真っ赤に染めながら、それでも、やっと1枚目が砕けただけだった……

 

 

「無理……だよ…。ゆき、くん…。もう、やめて……」

 

「ふっざけんなっ!!あかりは殺らせねぇ!!あかりは!あかりだけは!あかりは俺の!俺の!!」

 

「……私もね、あなたのこと……」

 

「あかり!あかりっ!!」

 

「あなたが……だいすk…ベチャッ……」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「………………え?」

 

 

 

……ポタ……ポタ……

 

 

「……あかり?……あか…り……」

 

 

ヘビの口から、ポタポタと赤紫色の液体が垂れ落ちる。何度も……何度も……

 

 

(あかりは……死んだ、のか……)

 

 

(俺の目の前で……何も、できないままで……)

 

 

(俺が……弱かったから……)

 

 

(俺が……ガラスごときに、手こずってたから……)

 

 

(俺の目の前で、殺されたのか……)

 

 

(俺が……俺の……せいで……)

 

 

「ハッハッハッハッ!!最高のショーだったぞ!!ハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━ブチッ━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、優輝翔の中で、ナニカが切れた。それと同時に景色が変わる。

 

今までとは、何もかもが違っていた。

 

ガラスに片手の手のひらを当て、腕と指先に力を込める。一瞬だけ。それだけで、目の前のガラスは先程までが嘘のように一気に全て砕け散った。。

 

当然、周りにいた人々は恐怖した。今までは檻に入っていたから安全だと思っていたのに、急にその檻から這い出てきたのだ。当然である。そして、運悪く一番優輝翔のそばにいた人間は、その一秒後に生命活動を停止した。

 

 

「っ!バカな!あのガラスまでもを破るだと!素晴らしい!素晴らしいぞ優輝翔!」

 

「社長!そんな場合じゃありません!早くお逃げ下さい!」

 

「案ずるな。この空間は外から鍵をかければあのガラスの数百倍の強度を持つ。いくらあいつでも……」

 

 

ズッドーン!!!!!

 

 

「「「!!!!!」」」

 

 

男の言葉を遮って響き渡ってきた音に、全員がその空間の中が映し出されてるモニターに目を戻した。そこには、血塗れの床と、数匹+幾人もの死体、そして大きな風穴の空いた壁が映し出されていたのだった。

 

 

「……バカな。ここまでなのか……」

 

「社長!早くお逃げ下さい!」

 

「くっ!」

 

 

部下に言われ、ようやく男は逃げ出した。とりあえずは最上階の自分の部屋に行って、緊急脱出用のミニロケットを起動する。そのあとはどうとでもなるだろう。男はそう思って必死に階段をのぼり、社長室の扉をあける。

 

絶望した。

 

 

「……なぜ、もうここにいるんだ……」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

それから数日。優輝翔は施設があった場所のすぐ近く、その場所に幾本かの花を植えた。死体はもうないので、彼女が好きだった場所に、花だけでもと。

 

 

その花の名は……【 スノードロップ 】

 

 

 

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