異世界はスマートフォンとともに 改   作:Sayuki9284

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今話もよろしくお願いします(。ᵕᴗᵕ。)


第40話 三人目

 

「お姉ちゃん……」

 

 

暗く閉ざされた部屋の中。外から鍵をかけられ中からは開けられない場所に、オリガさんとアルマ、そして姉妹の護衛の獣人たちが一同に閉じ込められていた。

 

 

「大丈夫よ、アルマ。」

 

 

オリガさんは不安そうに自分を呼び胸に頭を乗せる妹に優しく声をかけ、頭の上に頬を当てた。抱きしめることは出来ない。この場にいる全員両手を後ろで拘束されているから。

 

しかしそれでもオリガさんは、何があってもこの子だけはという気持ちを持っていた。そんな中、不意に部屋の鍵が開く音が響く。

 

 

ガチャ

 

 

『!!』

 

 

部屋の中にいた全員が一斉に扉の方を向く。姉妹は不安そうに。護衛の者達は睨みつけるように。そんな視線の集中する扉から入ってきたのは、誰もが予想もしなかった人物だった。

 

 

「優輝翔……さん……」

 

 

最初に口を割ったのはアルマだった。

 

優輝翔はその声に反応してアルマの姿を見つけると、安心したように優しく微笑む。

 

 

「っ……優輝翔さんっ!」

 

 

ガシャンッ!!

 

 

「きゃっ!」

 

 

アルマが優輝翔に飛びつこうと立ち上がったが、短い手錠故にすぐ尻餅をついてしまった。そんなアルマの頭に、そっと温かい感触が乗る。

 

 

「大丈夫か?アルマ。待ってろ。すぐに外してやるから。」

 

「優輝翔さん……ッ//」

 

 

アルマは涙ぐみながら優輝翔の胸に額を擦りつける。優輝翔はそんなアルマの頭を2度3度と撫でると、両手で手錠を掴み、無理やり引きちぎった。

 

 

『っ!!』

 

 

その光景に周りにいた護衛やオリガさんは目を見開く。しかしそんなことは気にもとめずに、優輝翔はアルマの身体を両手でしっかりと抱きしめた。アルマも自由になった両腕を優輝翔の背に回し力いっぱい抱きついて涙を流す。

 

 

「ゆきとしゃん……ッ…ッ……ゆきとしゃんっ……ッ…///」

 

「大丈夫だ、アルマ。俺はここにいる。ごめんな、怖かったよな…。先に真犯人捕まえてたから遅くなったんだ。」

 

「えっ?」

 

 

優輝翔の言葉を聞いてオリガさんが声を漏らした。ちなみに護衛の人たちは最初優輝翔を睨みつけていたが、アルマの反応と優輝翔の言葉を聞いて、顔を見合わせながらとりあえず傍観していた。

 

 

「あの……真犯人は見つかったんですか……?」

 

「ええ。だからもう大丈夫ですよ。陛下も俺が治しましたから、後ほど直々に謝罪されるとの事です。」

 

『………………』

 

 

優輝翔の言葉を聞いてオリガさんと護衛の人たちは皆一様にポカンと口を開けて優輝翔を見つめた。事態が急速に終結したため、頭が追いついていないのだ。

 

だがそんな中でも、アルマだけは例外だった。と言うよりアルマは優輝翔の話などほぼ聞いていないのだ。ただ優輝翔がここにいて、自分を包み込んでくれている。それだけでもう大丈夫なんだと思えるほど、アルマの優輝翔に対する信頼度は高くなっていた。

 

 

「アルマ、少し落ち着いたか?」

 

「ッ………コクン…//」

 

 

優輝翔の問いかけにアルマが首を縦に振る。

 

 

「じゃあオリガさんたちの手錠も外したいから、少しだけ離れていいか?」

 

「フルフルフル………ずっと……このまま……///」

 

 

アルマはそう言って優輝翔に抱きつく腕により力を込め、額を何度も擦りつける。そんなアルマを優輝翔も力強く抱きしめて頭を撫でると、お姫様抱っこで抱えあげた。

 

 

「きゃっ///」

 

「これならいいだろ?アルマはただ俺の首に捕まってればいいから。」

 

「……うん///」

 

 

アルマがそう頷いて優輝翔の肩に顔を埋めると、優輝翔は順番に手錠を壊していった。護衛の人たちの時はまだ少し警戒されていたが、それでもお構い無しに優輝翔は全員の手錠を外し終えた。

 

その後1度全員で国王陛下のもとに行って謝罪を受けてから、護衛の人たちはそれぞれの持ち場に、オリガさんとアルマ、そして優輝翔は、国王陛下たちとともに王宮の客間へと訪れた。

 

 

「まずはもう1度だけ謝罪をしておこう。すまなかった。」

 

 

国王陛下はそう言って深く頭を下げる。それに対し、斜め右に座るオリガさんは申し訳なさそうに手を横に振っていた。

 

ちなみにアルマは陛下の向かいに座っている優輝翔の腕の中だ。先程謝罪を受けた時も、今も、決してそこから動こうとはしない。そして陛下たちもそれに対し何ら言うつもりもなかった。その裏にはアルマへの申し訳なさだけでなく、優輝翔を下手に怒らせたくないという気持ちがあったのは秘密である。

 

オリガさんへの謝罪を終えた陛下は、今度は優輝翔にお礼を言った。

 

 

「優輝翔殿。この度は本当に助かった。ありがとう。」

 

「いえ、お役に立てたならよかったです。ところで、実行犯役は見つかりましたか?」

 

「いや、今取り調べ中だ。だが必ず見つけ出し罰を与える。」

 

 

陛下は力強く優輝翔にそう告げた。本当なら伯爵に自供させるのが早いのだが、それはもう無理(優輝翔は伯爵は死んだと報告した)なので、仕方がない。

 

 

「さて、それはそうと優輝翔殿。余の命を救ってくれた礼として何か報いたいのだが、何か希望はあるか?無論、報酬は望むものを用意する。」

 

「うーん……今は特に…。正直お金も公爵から頂いた白金貨が半分以上残ってて何も不自由はしていないので。流石に王金貨は高望みですし、使う機会もなさそうで……」

 

 

優輝翔がそう言うと、陛下の左隣に座っていた公爵(右は王妃)が苦笑しながら口を開く。

 

 

「相変わらずだなぁ。もうちょっと何かあってもいいのだがね。報酬を弾むと言ったのはこちらだし。」

 

「言ったでしょ?公爵と俺の仲だとも。まぁ俺としても勝手に伯爵を始末してしまったので、今回は何も気にしないでください。強いて言えば、これから仲良くしていただければ幸いです。」

 

 

優輝翔の言葉に公爵はまたまた苦笑いを浮かべる。すると今度はオリガさんの正面、陛下の斜め左に座る女性、宮廷魔術師のシャルロッテさんがクスクスと笑って口を開く。

 

 

「何とも不思議な方ですね。3つも無属性魔法を使いこなしながら欲がないとは。」

 

「ん?いや、優輝翔殿はもっと多くの無属性魔法を使えるぞ。」

 

「……へ?」

 

 

公爵の一言にシャルロッテさんが固まる。優輝翔は苦笑いしながら全属性かつ無属性魔法を全て使えることを話すと、シャルロッテさんは顔を真っ赤にして口をパクパクとし、かと思ったら勢いよく立ち上がって部屋を出ていった。

 

 

「………………えっと……」

 

「すまんな、優輝翔殿。シャルロッテは魔法のこととなるとちょっとな。」

 

「いえ、大丈夫です。」

 

「そうか。それならいいんだが……ところでアルから教えられたのだが、将棋、というものは優輝翔殿が作ったのか?」

 

「ええ。興味がお有りですか?」

 

「うむ、あれは中々に面白い。」

 

 

そして優輝翔が陛下、そして公爵の3人と将棋の話に花を咲かせ始めたところで、あの人が戻ってきた。鬼の形相で。

 

 

「優輝翔さん!!こちらをお読みになれますか!!?」

 

 

そう言って鬼、もといシャルロッテさんが優輝翔に押し付けたのは数十枚に及ぶであろう羊皮紙の束だった。

 

 

「………………いや。ちなみにこの言語は?」

 

「っ!!こ、古代精霊言語です!!そそそ、そして!それを聞いたということはあの魔法もお使いになれるのですね!!?」

 

「え、えっと……まぁ多分あれですよね。「リーディング・古代精霊言語」。」

 

 

優輝翔がそう唱えるとシャルロッテさんは目を輝かせて頷いた。その様子に優輝翔は乾いた笑いを漏らしつつ羊皮紙に目を通す。

 

 

「……読めますね。大丈夫みたいです。」

 

「ほんとですか!!!??」

 

「ア、ハイ……」

 

 

あまりのシャルロッテさんの勢いに、優輝翔を持ってしても目を点にして少しひいてしまっていた。ずっと優輝翔に抱きついたままのアルマも、ビクンッと身体を跳ねさせてより一層抱きつく腕に力を込める。

 

そんな優輝翔たちの様子を察したのか、陛下がシャルロッテさんを咎める。

 

 

「シャルロッテ。少し落ち着かんか。」

 

「はっ!すす、すいません!つい夢中になってしまって……」

 

「まあ、気持ちはわからんでもないが、少し焦りすぎだ。優輝翔殿も少しひいとるぞ。優輝翔殿の腕の中にいるアルマ殿も怖がっている。後にしなさい。」

 

「うぅ……本当に申し訳ございません……//」

 

 

シャルロッテさんは流石にやりすぎだと思ったのか、綺麗にぺこりと頭を下げて謝ると、とぼとぼとどこかへ帰っていった。

 

 

「あー、えっと、陛下。すみませんがグラスを1つだけ頂いてよろしいですか?」

 

 

優輝翔が遠慮気味にそう聞くと、陛下は首をかしげながらも頷いて優輝翔にグラスを渡した。

 

優輝翔はそれに「モデリング」という物質変形魔法をかけ、眼鏡の形へと変える。

 

 

『おぉー!』

 

「エンチャント・リーディング・古代精霊言語」

 

 

優輝翔はさらに付与魔法をかけると、出来上がった眼鏡を陛下に渡した。

 

 

「これを後でシャルロッテさんにお願いします。必ずお役にたつはずですから。」

 

「ほぉー。よし、では余が後ほど渡しておこう。」

 

「ありがとうございます。ついでにもし城の外に出してもいい研究資料があるなら俺に回して欲しいんですが、お願いできますか?俺も少々興味があるので。」

 

「それくらいならよいだろう。優輝翔殿ならばら撒いたりせんだろうし。」

 

「ありがとうございます。」

 

「なに。こちらこそ騒がしくてすまんな。あの子は夢中になると他のことが見えなくなるのだよ。魔法に関しては我が国随一の天才なのだがな……」

 

「あら、そこがあの子のいいところですわよ?」

 

 

王様のため息をつきながらの発言に、横にいたユエル王妃がクスクス笑いながらそう言った。優輝翔も乾いた笑いを漏らして紅茶を手に取る。

 

 

「美味いな。」

 

 

いつぞやと同じ言葉。まぁ流石にあの時より味は落ちるものの、流石に一級品だけのものはあると思える味だった。

 

 

「アルマも飲むか?」

 

「コクン//」

 

 

優輝翔が自身の飲んだ紅茶をアルマの目の前に持って行ってそう聞くと、アルマは頬を染めて小さく頷いた。そんなアルマの頭を優輝翔は片手で軽く撫でると、そのままカップをアルマの口にあて、ゆっくり傾ける。

 

 

「……コクッ……コクッ……ぷはぁー……//」

 

「美味いか?」

 

「コクン///」

 

 

優輝翔と同じところから飲んだせいか、さらに顔を赤くしながら頷くアルマ。優輝翔は紅茶を置くと、そんな純粋で可愛らしいアルマを愛おしげにぎゅっと抱きしめる。

 

そしてそんな2人の様子を、オリガさんだけでなく、この場にいたほぼ全員が温かい目で見守っていたのだった。

 

ただ1人を除いて……

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「あの……//」

 

 

そう声を上げたのは、先程から優輝翔の隣に座りじーっと優輝翔を見つめ続けていたこの国の姫、ユミナ姫だ。

 

 

「ん?どうかしましたか?」

 

「あ、はいっ//えっと……その……//ア、アルマさんとは深い仲なのですか…?//」

 

 

ユミナ姫が少し頬を染めながらそう聞くと、アルマはまたビクンッと身体を震わせた。そして少し潤った目で自分を見上げるアルマを見て、優輝翔は少し考えるように目を閉じてから口を開いた。

 

 

「……まぁ、まだ深くはないな。」

 

「まだ……?」

 

 

ユミナ姫が首を傾げながらそう繰り返すと、優輝翔は頷いてアルマを見た。

 

 

「ああ。だが俺はアルマさえよければ、アルマを3人目の婚約者にしたいと思っている。」

 

『!!』

 

「えっ……///」

 

 

優輝翔のツッコミどころが複数ある言葉に皆一様に驚きを示し、アルマはアルマで時が止まったように声を漏らして優輝翔と見つめあった。

 

 

「あの……優輝翔さん…//それって……///」

 

「まぁ、アルマがよければ//」

 

「………っ!///」

 

 

アルマは涙を流しながら力いっぱい優輝翔に抱きつく。言葉にならない感動の中で、それがアルマにとっての精一杯の意思表示だった。

 

そんなアルマを優輝翔は優しくそっと抱きしめる。力は優しくとも、決して離さないという想いを込めて……

 

 

 

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