異世界はスマートフォンとともに 改   作:Sayuki9284

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今話もよろしくお願いします(。ᵕᴗᵕ。)


第44話 厄介な雑魚の死に様

 

翌日。優輝翔たちはアルマを銀月に残してギルドに来ていた。そしてユミナのギルド登録を終えていざ依頼を探しに行こうとしたところで、1人の大男によってその道を断たれる。

 

 

「おい、兄ちゃん。可愛い子連れてんじゃねぇか。」

 

 

そう言ってきた男の背は約2mにも及び、腰の周りには何やらジャラジャラとした無駄に豪華な飾りがついていた。そして背中にはこれまた無駄に大きなバスターソードのようなものを背負っている。

その男は気持ちの悪いニヤニヤとした笑みを隠そうともせず、優輝翔……ではなく、優輝翔の周りにいる4人の女の子をジロジロ見ていた。そんな男にエルゼは怖いもの知らずと言うべきか、強めの口調で言い放つ。

 

 

「ちょっと。そこ邪魔なんだけどどいてくれない?」

 

「おっ、いいね。俺は強気の子もタイプだぜ。」

 

「うわっ、キモっ。」

 

 

エルゼの毒舌を男は笑って受け流す。そして優輝翔を見てこんな提案をしてきた。

 

 

「なぁ兄ちゃん。ちょっと表で手合わせしねぇか。そこの女を賭けてよ。」

 

「いいけど、そっちは何を賭けるんだ?」

 

「「「優輝翔(様)(殿)っ?!」」」

 

 

優輝翔がまさか賭けに乗るとは思ってなかったのか、エルゼ、ユミナ、八重が一斉に驚いた声を出す。そんな中、唯一声をあげなかったのがリンゼだ。エルゼはその事にも驚くが、兎にも角にも優輝翔に聞くのが先だと思い口を開く。

 

 

「ちょっ、優輝翔っ?なんで賭けなんて……」

 

「乗るかどうかは向こうの賭けるもん次第だよ。んで、そっちは何を賭けるんだ?こっちは大事な女の子を4人。生半可な物じゃ乗らねぇぞ。」

 

 

そんな脅しにも聞こえる優輝翔の声にも男は気にした素振りもなく笑いながら答える。

 

 

「そうだなぁ……それなら、俺の全財産でどうだ?そっちは手持ちの女すべて。こっちは手持ちの金を全てだ。女を食うにも金がいるだろう?」

 

 

『養う』ではなく『食う』と言った男の言葉に、リンゼたちが一斉に顔をしかめる。しかし優輝翔はそれを気にした様子もなく、男に質問をした。

 

 

「その額は?」

 

「金貨50枚だ。証拠もほら。」

 

 

男はそう言ってジャラジャラ音のする小袋を優輝翔の目の前に掲げ、すぐにそれをしまう。

 

 

「どうだ?」

 

「いいぜ。乗った。」

 

「へへっ。じゃあせっかくだし、人目につかないところまで行くか。」

 

 

男はそう言って優輝翔とともに近くの森へと向かう。優輝翔はリンゼたちは置いていきたかったのだが、それは男によって却下されたのでリンゼたちも一緒だ。

 

その道中、リンゼは念話で優輝翔に話しかけた。

 

 

(優輝翔さん。確実に勝てるからこそ受けたんでしょうが、あまりこういうことはしないでくださいね?)

 

(ん?ああ、そうか。悪いな、お前達を賭け事に使って。)

 

(いえ、それは私は気にしてませんし、むしろ私は優輝翔さんのものなんで優輝翔さんの好きにしていただいて構いません。そうではなく、優輝翔さんにあまり危険なことをして欲しくないんです。今回だって、相手の方すごく強いんじゃないんですか?)

 

(ああ、まぁな。でもそれに関しては無理だ。だってこういう奴は一度断ってもしつこいだろ?だからさ、……もうここで殺るに限るだろ。)

 

(!!)

 

 

リンゼは思わず立ち止まりそうになったのを何とか堪えるも、優輝翔の言葉に目を見開いて驚く。確かに勝負内容は手合わせだが、まさか殺すつもりだったとは思わなかったのだ。

 

まぁ、それでも、今のリンゼには優輝翔以外の人間の生死、それもこういう屑のような男の生死なんて興味の欠けらも無いので、それ以降優輝翔に何も言うことはなかったのだった……

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「さて、この辺りでいいだろう。それで、ルールはどうするんだ?」

 

 

優輝翔は立ち止まって目の前を歩いていた男にそう尋ねる。男はその言葉にゆっくり振り返ると、二ターっとした笑みを浮かべバスターソードを抜いた。

 

 

「んなもん、死んだ方の負けでいいだろうよっ!!」

 

『!!!!』

 

 

男がそう言いながら突然バスターソードを振り上げ先頭にいる優輝翔に突進してきたのを見て、後ろにいた4人は驚いて足を固まらせる。だがそんな状況でも、ただ1人優輝翔だけはまるで好都合とでも言うかのように笑みを浮かべていた。

 

 

「そうか。それは分かりやすいな。」

 

「ふんっ!」

 

 

男は優輝翔が動かないのを不意をつかれたのだと思いこみ、一撃で終わらせるつもりで優輝翔の脳天に大剣を振り下ろした。しかし、その剣は優輝翔のおでこにあたる寸前の距離で、まるで時が止まったかのように動きを止める。

 

 

「なっ!」

 

「……悪いな。軽すぎたみたいだ。」

 

 

優輝翔がそう言って2本指で止めていた大剣を押し返すと、男はそのまま数歩後ろに下がって驚愕の表情で優輝翔を見つめる。

 

 

「てめぇ……今、何しやがった……」

 

「さぁな。それより最後に言い残すことはそれか?」

 

「は……?」

 

「お前が言ったろ?死んだ方の負けって……」

 

「!!!」

 

 

その瞬間、優輝翔は一瞬のうちに男の横を通り過ぎ、とある物体だけ奪い取って男の背後に立った。

 

 

「待っ……おまえ……何を……」

 

「悪いな。俺はこういう殺し合いが大の得意分野なんだ。」

 

…ググ……パァんっ!

 

「!!…………」

 

 

優輝翔が目の前で奪い取った物体を握りつぶすと、男は目を見開いてそのまま地面へと突っ伏してしまった。起き上がることは無い。なぜならその男は、もう2度と身体中に血を巡らすことが出来ないのだから……

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

『……………………』

 

 

目の前で倒れた男を4人は呆然と見つめる。恐怖はない。ただ、こんなに呆気なく勝負がついたことに驚きを隠せないでいるのだ。

 

 

「さすが……優輝翔さんですね……」

 

「ええ…。だって、この男……別に弱くはなかったわよ…。」

 

「拙者もそう思うでござる…。大剣を持った上でのあの速さ。体格も考えて実力は相当でござった…。」

 

「その上あの不意打ち…。優輝翔様……こんなに強かったのですね……」

 

 

ユミナはそう言って目の前で死んだ男の私物を漁っている優輝翔を見つめる。死んだ人の私物を奪うのはどうかとも思うが、今回は完全にこの男が悪なので、4人は誰一人何も言うことはなかった。

 

そんな中、真っ先に動いたのはやはりこの子である。

 

 

「優輝翔さん。そう言えばお怪我などは……」

 

「ん?ああ、大丈夫だ。あの程度なら怪我するまでもなく終えられる。」

 

「そうですか。ところでさっきからずっと漁ってますけど、もしかしてお金以外も貰うつもりですか?」

 

「まぁな。奪えるもんは奪っとこって策だ。どうせほっといても盗賊に奪われるんだろうし。」

 

 

優輝翔はそう言って男の持っていた全財産(金貨53枚銀貨16枚銅貨2枚)と宝石類、あとは武器や上着など奪えるもんはとことん奪い取り、みんなにも持ってもらって「ゲート」で王都へと向かった。何故リフレットじゃないかと言うと、王都の方がよりいい値段で売ることが出来ると思ったからだ。

 

そして順番に売って回り、結果総額が金貨20枚以上と大儲けをして、優輝翔はそれを詫び賃込で全員に均等に分けた。

 

 

「さて、じゃあこれからどうする?このまま王都のギルドで依頼を受けるか?」

 

「そうね。せっかく王都まできたし。ユミナもそれでいい?」

 

「はい。それで構いません。」

 

 

エルゼの言葉にユミナが頷く。ちなみに敬語を使わないのかと思うかもしれないが、これに関してはユミナが4人と仲良くなる際に「同じ婚約者に上下関係などないので敬語はいりません。」と最初に告げていたのだ。まぁそれでもリンゼとアルマだけは癖で敬語を使っているが……

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

『キングエイプ × 5 討伐(金貨2枚)』の依頼を選んだ優輝翔たちは、指定された森の前へとやってきた。そこでユミナが召喚獣を呼び出すと言うので、優輝翔たちはそれを後ろから見守る。

 

 

(何気に闇魔法を使う瞬間を直で見るのは初めてだな。トカゲの時は距離も含めて色々邪魔でほとんどまともに見れてなかったし……)

 

 

優輝翔がそう思いながら少し目を輝かせていると、ユミナが詠唱を始めだした。

 

 

「闇よ来たれ、我が求むは誇り高き銀狼、シルバーウルフ」

 

 

ユミナがそう唱えた瞬間、ユミナの目の前に紫色の直径2mくらいの魔法陣が浮かび上がり、そこから5匹の銀狼が現れた。ユミナはその中央の一際大きな体を持つ、額に十字架の傷のある銀狼の頭を優しく撫でる。

 

 

「お願いしますね。」

 

「ウォンっ」

 

 

ユミナの声にリーダーは一声鳴くと、他の銀狼とともに森の中へと入っていった。

 

 

「あの子達がすぐに見つけてくれると思います。」

 

「そうか。なら適当に森の中を彷徨いて時間を稼ぐか。ここでぼーっとしてるのもアレだしな。」

 

 

優輝翔の案にみんなが頷き、5人は森の中へ足を踏み入れる。そしてしばらく歩いたところで、ユミナから銀狼たちが獲物を見つけたと報告があった。だが……

 

 

「数が多い?」

 

「はい。どうやら見つけたのは小さな群れみたいで……合計11匹いるみたいです。」

 

「じゅういちっ?!」

 

「さ、流石にその数は予想外でござるな……」

 

「元の倍以上ですね…。どうします?優輝翔さん。」

 

 

リンゼがそう尋ねると、優輝翔は少し考え込んでから、やがて結論を出したように頷いた。

 

 

「よし。迎え撃とう。エルゼと八重が前衛、リンゼとユミナが後衛だ。」

 

「優輝翔様はどうされるのですか?」

 

「俺は遊撃に回る。前衛をフォローしつつ、後衛までは敵を行かせない役割だな。」

 

「ふーん。……ところでさ、優輝翔。アレは使っていいの?」

 

「ああ。思いっきり暴れて来い。」

 

 

優輝翔の返しにエルゼはニンマリと口角を上げる。他の3人は意味を理解できず首をかしげていたが、やはりと言うべきかリンゼだけは、すぐにハッと気づいて笑みを浮かべたのだった……

 

 

 




今回はちょっととあるアニメのあのキャラが使ってた暗殺術を引用しました。気づいていただけましたか?

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