異世界はスマートフォンとともに 改   作:Sayuki9284

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第5話です。いよいよ第1妃の登場です。


第5話 双子との出会い

 

「約束が違うわ!代金は金貨1枚のはずでしょ!」

 

「けっ。何言ってやがる。確かにそうも言ったが、それは傷物でなければだ。ひとつでも傷があったらアウトなんだよ!」

 

「なっ……!そんなことっ、1度も言ってなかったわよ!だいたい傷だってねぇ!…………」

 

 

路地裏の先で1人の少女とガラの悪い男2人がそんな言い争いをしている。

 

少女の方は銀髪のロングヘアで、活発な印象を受ける女の子だ。そしてもう1人、女の子がそのロングヘアの少女のすぐ後ろに隠れるようにいるのだが、その子も銀髪(こちらは短く切り揃えられているが)であることから、恐らく姉妹であろう。後ろの女の子の方からは、どこか清楚な印象も受け取れる。共に歳は10代前半といったところだろうか。

 

男達の方は……まぁ、需要なさそうなので説明しなくともよいだろう。そんな男達だが、そのうちの1人、筋肉質?な男の方の手には何やら水晶でできた透明な鹿の角のようなものが握られていた。おそらくはあれが今回の争いの原因であろう。

 

そして確かに、その角にはほんの小さな切り傷があった。

 

なるほど。確かに元の世界の場合ならこれは男達に多少分のある争いである。まぁそれがこの世界でも同じかは分からないが、仮に同じであるとすれば、優輝翔が味方すべきは男達の方になるというわけだ。

 

だが……

 

 

(まぁ、ここで男達の肩を持つのはあれだわな。)

 

 

優輝翔はそう思ってため息を吐くとと、ゆっくりと争っている4人の元に歩いていって声をかけた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~〜〜〜〜〜〜

 

 

「悪い、ちょっといいか?」

 

「「「「!?」」」」

 

 

優輝翔の言葉に4人が一斉に優輝翔の方へ顔を向ける。最初は皆一様に驚いた顔をしていたが、次の瞬間には女の子たちは混乱したような戸惑っているような顔を、男達は睨みつけるような威嚇するような顔を優輝翔に向けた。

 

 

「あぁ!?なんだてめぇ!なんか用か!?」

 

「いや、別にあんたらに用はない。俺が用があるのはそっちの方だ。」

 

「なっ……」

 

 

そう言って優輝翔が銀髪ロングの女の子の方に顔を向けると、女の子は「えっ?私っ?」と言って再び驚いた様な顔を優輝翔に向けた。

 

そんな女の子に優輝翔は頷くと、ポケットから金貨を1枚取り出して女の子に交渉する。

 

 

「ああ。提案なんだが、その角、俺に金貨1枚で売ってくれねぇか?」

 

「………………!!う、売る!売るわ!」

 

 

一瞬、女の子は優輝翔が言っていることを理解出来なかったようだが、すぐにその意味を理解すると勢いよく頷いてそう言った。

 

 

「よし、契約成立だ。」

 

「わっ!」

 

 

優輝翔はそう言って女の子に金貨を投げる。女の子は急な事でビックリしていたが、なかなかにいい反射神経で見事金貨をキャッチした。

 

優輝翔はそれを見送ると、すぐに道端の石をひとつ拾い上げて先程からワアワア喚き散らしている男達の持つ角へ指で弾いて投げつける。

 

 

パリんっ!

 

「なっ!てめぇ!!」

 

「何すんだこらァッ!!」

 

「別に、その角が俺が買ったもので、その俺がいらなかったから割っただけだ。あんたらにやる価値もなさそうだしな。」

 

「このやろっ!」

 

「覚悟しやがれっ!」

 

 

角を割られたことで怒った男達は、細身の男はナイフを、筋肉質の男は斧のようなものを取り出して優輝翔に襲いかかった。

 

対して優輝翔は素手。武器などはまだ入手はしていなかった。

 

 

だがしかし、まぁ相手が悪かったとでも言っておこう。こと対人戦に関して、優輝翔の右に出るものなど、それこそ神を除いているはずもないのだから……

 

さらに、と言うべきか、優輝翔は神様により全能力値を底上げされているのだ。それがどういう意味か、もう分からない人はいないだろう。

 

 

(……遅い。)

 

 

まず感じたのはそれだった。優輝翔は男達との距離を2mとちょっとくらいまで詰めていたが、それでも男達が自分に攻撃を当てるまで、優輝翔としては男達を誇張なく3桁は殺せる時間があったように感じた。

 

そして男達たちの攻撃が優輝翔に届きそうになったところで……動く。

 

 

「なっ…カハっ!」

 

「!!……ガっ!」

 

 

男達にはいきなり動き出した優輝翔は消えたように見えたであろう。実際には優輝翔は全力のぜの字も出してないのだが、まぁそんなことはどうでも良いか。

 

優輝翔は男達の攻撃を一瞬のうちに躱した後、それぞれ首筋と鳩尾に衝撃を与え気絶させた。最初は殺そうかなとも考えたのだが、それは流石に目の前で血を見せられる女の子たちが可哀想だろうと思いやめたのだ。もし仮に優輝翔が冷静でなかったのなら、優輝翔は女の子の前であろうと関係なく男達を殺していただろう。男達にはこれでもまだ運が良い方だと思ってもらいたい。本当に。

 

そして優輝翔は男達が2人とも気を失っているのを確認すると、改めて女の子の方へと向き直って目の前まで歩く。

 

 

「すごい…。強いのね、あなた。」

 

 

優輝翔が目の前まで行くと、先程男達と言い争っていたロングヘアの女の子が目を輝かせながらそう言った。

 

心成しか、ショートヘアの子も顔を赤くして自分の方を見つめているように思える。

 

 

「まぁ、少なくともあれくらいはな…。ちなみに、俺は白鷺優輝翔だ。優輝翔が名前だからそっちで呼んでくれ。」

 

「分かったわ。私はエルゼ・シルエスカ。こっちは妹のリンゼよ。」

 

「リンゼ……シルエスカです//」

 

 

姉の紹介にショートカットの妹も照れながら頭を下げる。ちなみに2人は双子で、歳は共に13歳だそうだ。

 

 

「にしてもほんとに助かったわ。改めてありがとね、優輝翔。」

 

「ありがとうございます//」

 

「いや、別に気にしなくていい。ただこれからはもう少し気をつけるようにした方がいいと思うぞ。」

 

「そうね。今回のでよく分かったわ……」

 

 

優輝翔の忠告に、エルゼが少し反省したような顔色を見せる。しかしすぐに元に戻すと、ふと思い出したかのようにポケットに手を突っ込んで金貨を1枚(恐らく先程優輝翔が渡したやつを)取り出した。

 

 

「はい、これ。危うく返すの忘れる所だったわ。」

 

「はっ?なんで返すんだ。俺は確かに角を買ったぞ。」

 

「えっ、だってそれは私たちを助けるための口実じゃ……」

 

「角もすぐに割っていましたし……」

 

 

2人の言葉に優輝翔は首を横に振ると、金貨を差し出しているエルゼの手を押し返すようにして告げた。

 

 

「口実でもなんでもいいから、それは持っとけ。別に金には困ってねぇしな。それにあれは俺が助けたかったから助けただけだ。気にすんな。」

 

「でも……」

 

「いいから。それより、2人はこれからどうするんだ?」

 

 

優輝翔が話題を変えたことに2人は顔を見合わせると、エルゼは金貨を再びポケットにしまった。

 

「ありがとう//これからのことに関しては、とりあえず宿を取ろうと思ってるわ//」

 

 

「ありがとうございます//」

 

 

「ああ。それと宿に関してだが、良かったら俺の泊まってる宿に来るか?1泊前払い3食付いて銅貨2枚だ。ちなみに俺は今日から1ヶ月泊まる予定だが……」

 

 

優輝翔がそう言うと2人は顔を輝かせて同時に頷いた。

 

 

「ええ!お願いするわ!」

 

「よろしくお願いしますっ。」

 

 

「よし、なら行くか。」

 

 

そう言って優輝翔は2人を『銀月』まで連れて帰る。ミカさんは優輝翔がさらに新しいお客さんを連れてきてくれたことで嬉しそうにエルゼたちを歓迎し、そしてその日の夜は、みんなに少し豪勢な夕食が出てきたのだった……

 

 

 


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