ドミトリの目の前には薬品保管庫と表記されたドアが地面に倒れていた。しかも外から蹴飛ばしたかのように部屋の中に倒れている。
三人で部屋の中を見てみると、薬品や書類、その他色々なものが散乱している光景が広がっていた。
「おい、これ大丈夫か?」
「運がよければあるかもしれない。探すぞ」
僕は改めて薬品の名前と色、瓶の記述を予め聞いていたのを二人に伝えた。
「……あー、これか?」
数分もしないうちにネイサンが鍵のついた薬品保管用の棚を指差す。
「鍵穴に鍵が刺さったままだ」
棚はコンビニにあるような冷蔵庫をひとつだけ切り取ったような外観で、扉は二重扉になっていて枠以外が透明な材質だ。
おそらくは換気が必要なのであろう、上下に何かしらの機械が組み込まれている。
「早いですね……」
鍵がついているのは一枚目の扉で、二枚目の扉は別の方法で開くようになっている。
僕が昔やったサルベージ依頼の際に見た機械とほぼ同じだったから、もう一枚の扉を開く方法はある程度の目星はつく。
緊急時のために付いている初期化ボタンを探しに棚の裏を覗くと、電源コードが何かに噛まれたように切れていた。
「うわ、冷蔵なのに壊れてますよこれ」
「下手すると薬品は劣化してるな」
「えぇ……」
「ここの連中、部屋の様子的にも相当焦っていたようだな」
鍵も空いていて電源も落ちているが、万が一のトラップを想定して慎重に戸を開くが特に何もなく、あっさりと薬品を入手できた。
「よし、これでもう目的の植物の所に」
そうネイサンが廊下の方を向いた瞬間、僕の視界が揺れ始めて思わず膝をついてしまう。
「大丈夫か?やっぱり休んでた方が」
「いえ……ただの立ちくらみですから大丈夫です」
食い気味に僕は言う。
ついでにヘルメットのディスプレイに負荷限界値がなんだとか色々と表示されたが無視する。
「無茶はするなよ。普通なら寝たきりになるような毒を食らったんだ」
ネイサンに言われ僕は頷く。
「大丈夫です。お荷物にはなりませんよ」
「そう言うわけじゃないんだよなぁ……」
僕たちは足早にエレベーターシャフトへと戻り、またジャンプキットで上を目指すが
「あー、これ無理ですね」
「シャフトに蔦が詰まってやがる」
道中エレベーターシャフトが蔦に覆われて先に登れないことに気づき、途中のフロアに出た。
「っ!」
フロアに出た瞬間に壁から猛烈に嫌な感じがして思わず振り向く。
規則性のある白黒のモザイク、まるでバーコードやQRコードの用にも見える模様がスプレーらしき物で書かれているのを視認してしまった。一気に吐き気と視界の歪みが現れ
何が何だかわからなくなりそうになった瞬間、ヘルメットが自動で対抗措置の画像処理を施す。
一瞬の出来事だったが故の油断、二人を見るとドミトリは虚な目でうわ言を叫びながら銃口を顔に押し当てている。
ネイサンは片腕でドミトリの銃を顔から反らせようとし、もう片方の腕が自分の顔に向かないように両足で押さえつける。
「待て待て待て待て!」
ネイサンは対抗できているが、自分と同じ対抗処置をしなければ危ない。
ドミトリを抑えているネイサンの負担を軽くするためにパワーアシストを最大にし、二人の銃を持っている腕を抑えつけ、ヘルメットの視線トラッキング操作を使って二人のHMDにプログラムを適用させる。
「絶対にHMD外さないで下さいね!これ画像処理してるだけなんで!」
「ンハッ!」
「っぶな……助かった」
二人ともなんとか正気を取り戻し、ほかに汚染などがないかチェックをかける。
「にしても、アレはなんだ?」
とネイサンが僕に問いかけた。
「あー、アレですか……正直僕もよくわかりませんが"見ると死ぬ絵"って話がネットであるじゃないですか」
「あぁ、昔あったらしいな。ネットで出てる有名なジョークだろ」
そう答えていたネイサンが少しだけ言葉を詰まらせる。
「……そこにあるやつがそうか?」
「ホンモノバージョンです」
oh……となんとも言えない声を出したあと、ちょうど三人の汚染チェックが終わる。
何も異常な点や汚染は確認されなかった。せいぜいさっきの無茶で三人全員パワーアシストに負荷がかかった程度だった。
「ともかく、階段なり上に登る手段見つけないとですね」