違う!シンビオートが勝手に!   作:ゴランド

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投稿が遅れてしまいました。
プライベートの都合上、色々ゴタゴタして投稿するのに時間が掛かりました。本当に申し訳ない。




10話 違う!シンビオートが勝手に宣戦布告を!

 

 

やぁどうも皆、主人公だよ。

……ちょっとごめん、今、腕が痛いから軽口は言えそうにないね。

 

 オールマイトの登場により敵達に動揺が見られる。その間に僕等が出来る事と言えば此処から避難することだ。僕等のNo.1ヒーローは最強なんだ!と言わんばかりに先生は周囲の敵を圧倒していく。

 

もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな……。

そんな無双っぷりを見せつけられると()()()()()()()()が無駄になった感じがするので色々と虚しい気持ちに包まれる。

 

うん、まぁ いいや(投げやり)

だってオールマイトだしね、仕方ないよ。あの人ってRX並の補正(?)を持っているだろうからどうせすぐに敵達を倒すだろう。

 

「それじゃ皆。早くここから逃げよう……痛たた、クソ。腕がもげそう」

 

「無理しちゃダメだよ来正君」

 

「緑谷ちゃん。それはブーメランよ」

 

 片腕が思い切りボロボロになって紫色に変色している緑谷君にそんな言葉を掛ける蛙吹さんに感謝しつつ、この場から早く離れる事にする僕達。こんな事ならシンビオートを戻しておけば良かったなぁ。

……そう言えば何か忘れている気がするんだけど気のせいかな……?

 

「……あっ」

 

「お、おい!いきなり思い出したように言葉を漏らすなよ!」

 

「どうしたのかしら来正ちゃん」

 

「いやさ、オールマイトにあの脳無ってヤツの個性を伝え忘れていたけど……伝えた方が良いのかな?」

 

「何言ってるんだよ!あのオールマイトだぜ?そう簡単にやられる訳n───

 

 

 

「ぐおおおおおおッ!shit!」

 

「いいぞ脳無。そのままだ、そのまましっかり抑えつけていろ」

 

どう言う状況!?

オールマイトが脳無を掴み、その掴まれている脳無がオールマイトを掴んでいると言う絵面、字面共に大変シュールな光景に僕は呆気に取られる。

 

……目を凝らすと敵の個性によるワープでそう見えるだけだった。なーんだびっくりしたなと安堵すると………いや、安堵してる場合じゃなくない?

脇腹から、かなり血が流れてるけどオールマイト大丈夫?

 

「これしきの事で……グォオッ!?」

 

 あ、駄目なやつだこれ。思い切りグォオッ⁉︎って言ってた上に口から血を吹き出していたし。

……えっ、これってもしかしなくてもピンチ?

 

 そんな事を思っていると隣から誰かが飛び出すのに気が付く。

ボロボロの腕を揺らしながら緑谷君はオールマイトに向かって………いや何やってんの君!?

 

「オールマイトォ!」

 

「オールマイトォ!じゃないよ!腕壊れたまま突っ込むやつがある⁉︎」

 

 やばい、このままじゃ緑谷君が怪我を負うどころの話じゃない!

最悪殺される可能性だってある事を想定した僕はシンビオートを呼び出そうとした瞬間、()()()()()

 

「どけ!邪魔だデク!!」

 

「かっちゃん⁉︎」

 

 爆音の正体は爆豪君の攻撃によるものだった。更に次の瞬間、脳無の半身が凍り付くと同時に死柄木達の元に何かが降り注ぐ。

 

「ッ!?」

 

その降り注いだ何かは爆発を起こし、周囲に煙が充満する。そんな煙幕が漂う中に死柄木に向かって人影が接近するのを僕は見た。

 

「おるァッ!!」

 

「ぐッ!?」

 

「切島君!?」

 

「加勢しに来たぜ緑谷!」

 

 よく見ると切島君以外にも八百万さん、耳郎さん。轟君に加え上鳴君も居る事に気付く。

右手を構えた轟君を筆頭に皆は口を開いていく。

 

「平和の象徴はてめぇらごときに殺れねぇよ」

 

「スカしてんじゃねぇぞモヤモブがぁ!」

 

「私達を甘く見ないでもらいましょうか」

 

「ウチ等はコレでもヒーロー志望だからね」

 

「ウェ〜〜……な、舐めるなよ!」

 

「皆……、コレは頼もしいよ!……一名は除いてだけど」

 

「おい、そりゃねぇだろ来正⁉︎」

 

 うーん、一瞬アホ面のままだったけど?言っちゃ悪いけど今の上鳴君はどうも頼りにならないと言うか……いや、戦力としては有り難いよね。僕自身、贅沢言える立場じゃないしね。そんな僕の元に八百万さんが駆け寄って来た。

 

「酷い怪我……、待って下さい。今包帯を創りますわ!」

 

「うん、ありがとう。出来れば緑谷君の分もお願い。あっちの方が重症だからさ」

 

 そう言うと八百万さんは鉄の棒を添え、グルグルと包帯を巻いていく。手慣れている感じからすると応急処置の訓練とか受けて来たのかな?流石はセレブ。

 

「つーか、そんな怪我してるならシンビオートに治して貰えばいいでしょ」

 

「それもそうなんだけどさ耳郎さん。今、あいつはお取り込み中により使えない状態なんだよね」

 

「ハァ⁉︎何それ!上鳴より使えないじゃん!」

 

 おっと……心は硝子だぞ。

そんなやり取りをしていると黒霧と呼ばれている敵を押さえつけている爆豪君が声を上げる。

 

「動くな!怪しい動きをしたと俺が判断したらすぐ爆破する」

 

「ヒーローらしからぬ言動……」

 

「それを言うなら来正の方がもっと酷いと思うぞ?」

 

 おっと……心は硝子だぞ?(二回目)

色々と泣きたくなって来たけど、そうこうしている間にオールマイトは脳無の拘束から抜け出す事に成功する。

横腹を抑えているけど、かなりのダメージを喰らったのかもしれない。

 

「攻略されたうえに全員ほぼ無傷。すごいなぁ最近の子供は。恥ずかしくなってくるぜ敵連合」

 

 何やらネガティブ発言を口にし始めた敵連合のリーダー。このままオールマイトに任せれば恐らく勝ってくれる筈なんだろうけど……それは得策じゃない。そう思った僕は前に出て死柄木に向かって口を開く。

 

「その通り。戦力的にはコチラの方が有利だけど……今の内に回れ右をして帰ってくれたら嬉しいんだけど……どうします?このまま勝ち目の無い戦いに挑むか、それとも逃げるを選択して体勢を立て直すか。……頭の良い貴方ならどれが最善か分かると思いますけど?」

 

 そう僕が言うと周りは驚いたような表情を浮かべる。

いや、仕方ないでしょ?確かにオールマイトが居てくれれば安心出来るけど……、オールマイトはヒーローである以前に人間だ。

怪我だってするし体調だって崩す。このまま戦わせるのも危険だと思う。

 

いや、中学校卒業したばかりの僕が何様のつもりなんだと思っているだろうけど……僕だってヒーロー志望だ。怪我人を無理矢理戦わせたくない。

 

「へぇ、……それじゃあ」

 

 瞬間、視界の隅で脳無がピクリと動くのを確認した。すると、凍り付いた身体はバラバラに崩れていき、そこから新しい肉体が植物が成長するかのように生えていく。

僕は咄嗟に皆に向かって言葉を投げかける。

 

「気をつけろ皆!あの黒い(ヴィラン)は再生能力持ちだ!」

 

「うぇっ⁉︎気持ち悪っ!」

 

「なんだあの再生スピード。半端じゃねぇ……!」

 

「その通り。脳無はオールマイトの100%にも耐えられるよう改造された超高性能サンドバッグ人間さ」

 

 僕とシンビオートが与えた以上のダメージを簡単に再生させた脳無。ハッキリ言って状況は最悪だ。こんなのにどうやって勝てば良いのか分からない。

何か抜け道があれば……!

 

「それじゃあまずは出入口の奪還だ」

 

 相手がそう呟いた瞬間、脳無は爆豪に向かって駆け出した。僕等が目で追えないスピードで突進をしたのだろう。

爆豪君が居た場所に脳無は立っていた。

 

「かっちゃ───」

 

「あ?」

 

「うわっ!爆豪君がワープした⁉︎」

 

「違ぇよ黙れカス!」

 

 相変わらずな辛辣に心を痛めながら僕は爆豪君が先程まで居た所に視線を移す。そこには背骨折りの状態で捕まったオールマイトの姿があった。

 

「オールマイト!」

 

「庇ったのか……、流石は平和の象徴だなぁ。脳無そのまま背骨をへし折ってやれ」

 

「ぐぉぉおおおおッ!!」

 

 何とか脱出を試みようとするオールマイトだが脇腹の傷の所為で抜け出せないらしい。爆豪君達が助けようとその場から動こうとするが死柄木はこちらに向かって言い放つ。

 

「おいおい………()()()

 

「「「ッ!」」」

 

「今、脳無はゆっくりとオールマイトの身体を反らし始めている所だ。もし動いてみろ、オールマイトは一瞬であの世行きだぜ?」

 

「ッ!テメ────」

 

 爆豪君が一歩踏み出した瞬間、脳無の腕に力が入ったのかオールマイトから声が上がる。

 

「ぐあッッ!」

 

「ハハハ、動くなって言ったろ?お前、馬鹿か?」

 

「ッ!」

 

 こちらを嘲笑うかのように両手を広げる死柄木。手を模したマスクの所為で表情は伺えないけど、ニタリと笑っているのが言動で丸わかりだ。

 

「生徒の前で醜態を晒している気持ちはどんな気持ちかなオールマイト」

 

「ぐっ───!」

 

「さて……、それじゃあどうしてやろうかな」

 

……状況は最悪だ。敵連合と言う奴等の目的はオールマイトの殺害。そして僕等はそのオールマイトを人質に取られている。僕の予想通りなら……死柄木は好き勝手やった後にオールマイトを殺す事が簡単に予想できる。

 

 だからこそ、こう言った事態に備えて保険を掛けておいた。後は時間の問題だ。いや、本当に時間の問題なんだよなぁ……。

 

「……よし、お前」

 

「………」

 

「そこで突っ立ている腕に包帯を巻いたお前だよ」

 

「あ、僕?」

 

 なんだろう、急に呼ばれたけど……あっ、なんか嫌な予感がして来たぞ?

 

「お前には死んでもらおうか」

 

「直球!?」

 

 こいつ⁉︎ストレート真ん中で攻めて来やがったッ!何とか時間稼ぎしようと思ったけどそれどころの話じゃない!

 

「お前には散々レンガを投げられたからなぁ……!」

 

「違う!シンビオートが勝手に!」

 

「だとしても連帯責任だろうが」

 

 くっ!敵なのに正論を言ってくるとは……!

だとしても死ねって直球過ぎやしませんかねぇ!?

やばい、このままだと保険が無駄になるどころの話じゃなくなるんだけど!早くしてくれないかなシンビオートのやつ!

 

「貴様ッ!私の生徒に……!」

 

「安心しろよ。ちゃんと一対一で殺してやるから」

 

 安心できる要素が一切無いのは僕の気の所為じゃないよね?クソ、少しでも時間稼ぎができればオールマイトを助けられるんだけど……!

 

考えろ。どうする?こんな時、キャップならどうする?

……あぁッ駄目だ!キャプテンなら真っ先に自分の命を捧げるぞ!自己犠牲精神凄いな流石キャップだチクショウ!

 

せめて、せめて別のキャラクターなら一体何を考える?

一体何を─────

 

 

 

「おい、そろそろ良いか?さっさt「ダンス対決だ」…は?」

 

ダンス対決だと言ってる

 

「「「「「「………えっ」」」」」」

 

 

 腑抜けた声が開始の合図と言わんばかりに僕はリズムに乗りながらその場で足踏み、手を激しく振り、体全体を回転させるなどの動きを行う。

 

「何をやってるんだお前……?」

 

「ダンス対決だよ、アンタと僕のね」

 

 自分ながら見苦しい事を呟きながら腰を振る。画面の向こう側の人達は何を血迷ったのか困惑しているに違いない。大丈夫、僕自身も多少は困惑しているからね(白目)

軽く投げやりになりながらも僕は八百万さんに向かって指をさす。

 

「よし、八百万さんの番!」

 

「えっ、あっ、はい!?」

 

「やるね!流石はお嬢様だ!」

 

 うん、流石にスターロードをチョイスしたのは今でも後悔している。相手がNGシーンのロナンようにダンス対決に乗ってくれるなら良いけどさ。これって逆に相手を怒らせるだけで終わると思うんだけど。

 

「お前……、本当に何をやっているんだ?黒霧、分かるか?」

 

「いえ……ですが警戒をする事に越した事は無いでしょう。相手は子供の中でも中々頭がキレるようですから」

 

……あれ、何か勘違いしてない?それなら好都合。ハッキリ言わせてもらうけどこのダンス自体には意味無いからね?ふしぎなおどりで相手のMPを奪う効果とか無いからね?

 

「もしかして来正君の個性……?」

「踊るのが個性なのか?」

「なんでアイツはこんな時に踊っていられるんだ?」

「気でも狂ったんじゃねぇの?」

「期待したウチが馬鹿だった」

「死ね」

 

 後半から辛辣ゥ!!中でも爆豪君はストレート過ぎるよ!控え目に言って死にたくなって来たけど、それでも僕は踊るのをやめない。いや今すぐにでもやめたいけど!

 

「……まぁ、いいか。すぐに殺せば問題無いよな」

 

 問題しか残らないと思うんですけど(名推理)

何この極端な理論⁉︎この敵の頭の中は0か100かで物事を決める訳なの⁉︎

おおお、落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない、……いや踊りながら落ち着ける訳ないんだけど……あっ。

 

「……で、お前はいつまで踊ってるつもりだ。いい加減ウザいからやめろ。て言うか何のつもりだよソレ」

 

「何って、お前の気を逸らしているんだよ。おめでたい奴だな………それと()()()()()()()()()()()

 

「上だと────

 

ゴオッ!!

 

 瞬間、頭上を警戒していた死柄木は黒い何かによって()()()()()()()

 

……あー、うん。頭上注意って言うと大抵は上以外への注意は疎かになるけど、まさか本当に引っかかるとは思わなかった。言ってみるもんだね。

 

「上から来ると言ったな。すまん、ありゃ嘘だ」

 

「き、来正!今何やったんだ?つーか騙し討ちかよ汚ねぇ!」

 

 戦っている相手の言葉を鵜呑みにしている方が悪い。なので親善大使のように言わせてもらう。僕は悪くねぇ!

まぁそんな事はどうでも良いとして、どうして急に相手が吹っ飛ばされたのかと言う切島君の疑問に答えさせてもらおう。

……と、言っても目の前の光景を見れば分かるかもしれない。

 

「馬鹿な……何故、私達を攻撃する!」

 

「どう言う事だ……、どこか欠陥があったのかよ……!」

 

 

 

 

「なんで()()()()()()()()()()()()()()ッ!?」

 

 

 

 

 目の前には死柄木に攻撃した脳無が僕等に背を向けて立っていた。

相手だけでなく、クラスの皆も驚愕の表情を浮かべていた。

そりゃあ、びっくりするよね。さっきまでオールマイトを殺そうとしていた相手が急に仲間割れするなんてさ。

 

……と、言うわけで答え合わせの時間です。

みるみる内に脳無の身体は黒い粘液状の何かに覆われていき、鋭い白眼がギロリと現れた。そのままグパリと剥き出しの牙が並んだ口が大きく開かれる。

 

ハハハハハ‼︎救世主の登場だ!!』

 

「その声……シンビオート君!?」

 

 聴き覚えのある濁声に緑谷君は反応を示す。いやぁ、それにしてもただでさえ凶暴だったシンビオートが更に凶悪な姿になったなぁ。僕に憑いていた時よりも身体が大きい。

そんな事を考えていると黒いモヤを揺らしながら敵の一人が口を開く。

 

「貴様……まさか脳無を!」

 

「お察しの通り。脳無の身体にシンビオートを取り憑かせて貰ったよ」

 

 ちなみに取り憑いたのは脳無にダガーを突き刺した時だ。刺した瞬間にシンビオートを身体の中に潜り込ませ身体を寄生させてもらった。あのままじゃ倒せないんで搦め手を取らせてもらったよ。

 

そんな僕の言葉に応えるかのようにシンビオートは腕をグルングルンと回し口端を吊り上げる。

 

『この身体は強い。が、居心地は最悪だな。薬品臭いし、身体中はバキバキだ……おっと、言っておくが主導権はオレが握っている。もうコイツに命令が届く事はないからな』

「と、まぁ。コイツの言う通り、オールマイトに加えてその平和の象徴に対する切り札もこちら側だ……もう一度言わせてもらうけど、今の内に回れ右して帰った方が良いですよ?」

 

 まぁ、無事に帰れればの話だけど。そんな事を口にすると身体中に手を付けた敵が首をガリガリと掻き始める。

 

「ああ、クソ。このヒーロー気取りのガキが……!」

 

 憎悪の篭った目をこちらに向けながら相手は駆け出す。両手を広げ確実に自分を殺そうと感情的になっているのが分かる。

 

Bang‼︎

 

「うおッ⁉︎」

 

「狙撃⁉︎……まさか!」

 

「すまない皆!先生たちを呼び出すのに時間がかかってしまったッ!」

 

 敵の腕を撃ち抜いた弾丸が飛んできた方向を見ると、そこにはプロヒーローである教師達を引き連れた飯田君の姿があった。

 

「1ーAクラス委員長、飯田天哉!ただいま戻りましたッ!」

 

「飯田君!」

『居ないと思ったら教師にチクっていたか、判断がいいな』

 

「ふざけやがっ───ッ⁉︎」

 

 死柄木の身体に向かって弾丸が無慈悲に放たれる。

やべぇよ、スナイプ先生容赦無いんだけど……!目の前で人が撃たれている光景がトラウマになりそうなんだけど……⁉︎

 

そんな事を思っていると敵は黒い靄に覆われ弾丸は別の方向へワープしてしまう。どうやらこのまま逃げるらしい。

 

「死柄木弔!!撤退を!」

 

「…今回は失敗だったけど今度は殺すぞ、平和の象徴オールm」

 

シンビオートは

レンガを 投げつけた!

 

しかし塵にされてしまった!

 

「三度目の正直だ。そう何度も喰らうと思うn

 

ごしゃ

 

シンビオートは

レンガを 投げつけた!

 

こうかは ばつぐんだ!

 

 

『三度目の正直?何言ってるんだアイツ』

「シンビオート⁉︎」

 

 隙を生じぬ二段構え⁉︎シンビオートのやつ高速で学習してるの⁉︎と言うかそのレンガは何処から持って来たんだ?……あっ、もしかして今って捕まえるチャンス?

 

「シンビオート逃すな!触手で捕らえるんだ!」

『よし来た!』

 

 そう応えながら植物のように腕を伸ばし敵を掴む事に成功する。

……が、ワープホールが途切れブツンと音を立てながら伸ばした腕は千切れてしまった。

 

『逃げられたな』

「……駄目か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事の顛末を話そう。

あの後、教師達が残った敵達を制圧して負傷者は僕と緑谷君の二名となっており他はそれほど大した傷も無く全員無事と言う結果に終わった。

あと脳無についてだけど、何故か不気味な程に静かで抵抗も無く警察に引き取られる事となった。シンビオートが脳を突いたりしていたけど……まぁ、それは良しとしよう。

 

ところで相澤先生、13号先生。そしてオールマイト先生の怪我について。13号先生とオールマイト先生については安静にしていれば問題無いらしいけど、相澤先生は頭部へのダメージが凄まじく目に後遺症が残るらしい。

……今でも思うけど僕はあの時、先生よりも緑谷君達を優先してある意味で見捨てる形となってしまった。

シンビオートは気にするなと言ってるけど………僕は罪悪感で胸を締め付けられる事となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………そんな事件から臨時休校を挟み2日が経過した。

教室に入った僕は皆が無事だと言う事実に安堵すると同時に僕は何処か戸惑いを感じていた。そんな僕に気付いたのか上鳴君が肩に腕を回して来た。

 

「おいおい、なに暗そうな顔してるんだよ!敵達を相手に大活躍した主役なんだからもっとテンション上げていこうぜ!」

 

「あ、うん……そうだね。ありがとう上鳴君」

 

「……ねぇ、どうしたのさ来正。アンタちょっと暗過ぎるよ?」

 

そんな僕に見兼ねたのか耳郎さんが声を掛けて来る。

 

「あぁ、いや………」

『気にするな。コイツはあの後、ナーバスになってるだけだ。もっと救えた〜とかもっと戦えたとかウジウジ呟いてな』

 

「……はぁ? 何それ自惚れてんの?」

 

 シンビオートの言葉に耳郎さんは呆れたような表情を浮かべる。

……おぉう、なんて言うんだろう。これが養豚場の豚を見るような目と言うんだろうか。心に物凄く突き刺さって辛い……。

 

「アンタさ、私達や先生も助けた上に敵達と戦ったんでしょ?それって十分に凄い事じゃん」

 

「……えっ?」

 

「確かに先生は大怪我負ったけどさ。アンタが助けに来なかったら私や八百万。あとついでにこいつ(上鳴)もどうなっていたか分からなかった。……素直に来正は凄いと思うよ。だからそれでイイじゃん」

 

「………耳郎さん」

 

 耳郎さんの言葉を聞いて僕は心の何処かで温かいものを感じる。

……そうか、ちゃんとヒーローらしく助ける事が出来たんだね。

 

「……ありがとう、なんかスッキリしたよ」

 

「いいよ、お礼なんて。て言うか逆にこっちが言う側でしょ」

 

「……ハハッ、そうだね」

 

「なになに〜〜〜?」

「なんかイイ感じの気配をキャッチしたぞ〜〜〜〜?」

 

 

 ニッと笑う耳郎さんに釣られて僕も笑っていると背後から何者かが忍び寄って来る。振り向くとニヤニヤと不敵な笑みを浮かべた芦戸さんと葉隠さんが立っていた。……いや、葉隠さんは透明だから分からないけど。

 

「やめてよ二人共。そう言うんじゃないから!」

 

「その通りだよ二人共、現時点で耳郎さんに対してはそう言った感情は抱いてないからさ」

 

「その通r───待って、それはそれでムカつくんだけど」

 

「皆!朝のホームルームが始まる!私語を慎んで席に着け!」

 

「あー、飯田君。残念なお知らせだけど……座ってないの君だけ」

 

 僕がそう言うと悲しそうに飯田君は席に座る。

……うん、なんと言うかさ、頑張ってるけど空回りしてる感じが否めないね。

 

「そう言えば、今日のホームルーム誰がやるんだろ?」

 

「そうね。相澤先生はケガで入院中のはずだし…」

 

 芦戸さんと蛙吹さんの会話が耳に入って来る。それを聞いて僕は不安に……いや、さっき耳郎さんに言われた通りだ。後から何か出来たと悔やんでいても仕方の無い事なんだ。

 

先生は僕等を守ってくれた。なら僕等に出来るのは、これからも先生の教えをこれからも守っt───「おはよう」

 

「「「「「先生復帰早ええええッ!」」」」」

 

 視線を向けた先には全身を包帯でグルグルに巻いた相澤先生が。

……よし、ちょっと理不尽かもしれないけど言わせてもらうよ?

 

シ リ ア ス 返 せ

 

『なぁ、どんな気持ちだ?気持ちを一新にしようとしたら台無しにされたのはどんな気持ちだ?』

「何度も言うけど言わせてもらうよ。心は硝子だぞシンビオートォ!」

 

「うるさい静かにしてろ」

 

「あ、すみません」

 

 怒られてしまった 解せぬ。

 

「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねぇ」

 

「まだ!?」

 

「まさか敵の襲撃が⁉︎」

 

「何が始まるんです?」

 

『大惨事大戦だ』

「コマンドーは確実に関係無いからね」

 

 僕等の疑問に相澤先生は包帯の下から見える眼差しを細め呟く。

 

「……雄英体育祭が迫ってる」

 

「「「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!!!」」」」」

 

……あぁ、そう言えば雄英の体育祭ってこの時期に開催されるんだっけ。オールマイトが教師になったり敵連合が攻めて来たりと色々な事があったからすっかり忘れてたよ。

 

 どうやら敵に侵入された事により今年は今までのと比べ警備を五倍に強化するらしい。まぁ、オリンピックに代わるビッグイベントに加えて雄英の危機管理体制が盤石だと示すって考えなら納得だね。

 

「年に1回、計3回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ。その気があるなら準備は怠るな!」

 

「「「「「ハイッ!!」」」」」

 

 相澤先生の言葉に僕を含めたクラス全員の声が室内に響く。ヒーローとしての第一歩を踏み出す為、僕等は気持ちを一新にするのであった。

 

『今度はちゃんと格好付けられて良かったな』

「よしシンビオート黙っていようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み。体育祭を目前にしてクラスの皆はどのように目立とうするか計画を立てたりソワソワと落ち着かない様子の者が居る。

ちなみに僕はソワソワと落ち着かない部類に入る。だってめちゃくちゃ緊張するし、さっき相澤先生に「選手宣誓するだろうから何言うか考えとけ」って言われたし。

 まぁ、それは置いておいてこんなタダでさえキャラの濃いクラスの中で異彩を放つオーラを纏う者が一人。

 

「デク君、飯田君、来正君、頑張ろうね体育祭」

 

麗日さんである。

もう見た感じから色々と様子がおかしい。なんと言うか覚悟ガンギマリして今にもジョジョ風の擬音が出てきそう(小並感)

話によると麗日さんは金銭目的でヒーロー科に入ったらしい。第三者から見ると志はみっともないかもしれないけど、言い換えれば貧乏な家族の為に頑張ってくれている良い人柄とも言える。

 

「そんなにお金に困ってるならバイトでもしたらどう?」

 

「うーん、そうなんだけどここら辺に良いバイトが無くて……」

 

『文字通り身体で稼ぐバイトはどうだ?短時間の上に高給料だ』

「シンビオート!?」

 

「ちょっと、それについて詳しく」

「麗日さん!?」

 

 

 そんなやり取りがあった昼休みも過ぎ、放課後の時間となる。先生の話が終わり教科書を鞄の中へ詰めていると麗日さんの声が室内に響く。何だろう?と視線をそこへ向けると廊下に多数の生徒が教室を覗き込んでいたのだ。

 

「出れねぇじゃん!何しに来たんだよ!」

 

「敵情視察だザコ」

 

 あぁ、成る程。体育祭を前にして話題になってる僕等を見に来たって感じね。ナチュラルに雑魚呼ばわりされてる峰田君ェ……。

廊下の生徒達に向かって爆豪君が煽りまくってるけど止めた方が良いよねコレ。そう思ってると人混みを掻き分けて気怠そうな生徒が前に出てくる。

 

「噂のA組どんなもんかと見に来たが随分と偉そうだよなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」

 

「あ、いえ違う違う。爆豪君はヒーロー科の中でアレな部類なだけなので」

 

「あ゛?」

 

『ハハハ!アレな部類だと!もっと言ってやれキョウセイ!』

「……この黒いのもアレな部類です」

『!?』

 

「ふーん……知ってた?そんな俺らにも学校側はチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしい」

 

 知 っ て た

……と言うより、それよりも酷い目(初日から除籍処分)に遭いかけたんですけど(半ギレ)

とにかくコレって挑発しているけど……宣戦布告って捉えて良いのかな?それならあまり刺激しないようにしn……

 

『宣戦布告のつもりだな、それなら今この場で手脚が無くなっても問題無いよなぁ!!』

 

「うぉッ!何だコイツ!?」

 

何やってるのシンビオート!?

 全身から鎌とか斧とか色々生やして今にも襲い掛かりそうな雰囲気だ。いや、こうなる事は薄々分かっているつもりだった!だって多数に挑発されて我慢出来る訳ないしね!……いや、納得してる場合じゃないよ!

 

「やめろ!落ち着けシンビオート!」

『そう言うな、これからが良いところなんだ……さぁて、三枚下ろしに挽肉、ミキサー。好きなのを選ばせてやるぞ』

 

「ぐっ、やめろ!このッ……"落ち着け"ッ!」

 

『落ち着いた』

「うわぁ!いきなり落ち着くな!」

 

 あ、なんか屋内訓練の時でもこんな事あった気がする。と言うかいきなり落ち着いてどうしたのさシンビオート。

 

「大丈夫?チョコ食べる?」

『…………』

 

 へんじない ただのしかばねのようだなんで黙ってるかはさて置き、生徒数名がコチラにヘイトを向けているのが分かる。

たった数名か……うん、今のところその程度で済んで良かっt

 

「上にあがりゃ問題ねぇ」

 

「隣のB組のモンだけどよぉ!ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思ったんだがエラく調子づいちゃってんなオイ!」

 

「るせぇ、引っ込んでろ」

 

………っと、十数名に増えたけど予想の範囲内。

ほとんどが爆豪君に対するものだからコチラとしては問題はn

 

『おい、そこをどけ有象無象共。お前達は眼中に無い、さっきのヤツは何処だ!見つけ次第ミンチにしてやるぞ』

「シンビオート⁉︎」

 

「有象無象?」「俺達は眼中無いだと?」「なぁ、アイツ生意気じゃね?」「どうする処す?処す?」

 

「違う、シンビオートが勝手に!……ほらシンビオート謝って!どう見ても100%怒ってるから!ほら!謝って!」

 

 例え相手が起こっても僕等は同じ人間に加えて日本人!争いではなく話し合いで解決するのが一番!だから頼むからこれ以上刺激する事は言わな……待って、どうしてシンビオート笑ってるの?

なんでそのままコッチにサムズアップするの?ねぇ、待って頼むからそれ以上何もしないで?あ、ちょっと!待てストップ!やめて!

お願いだから待っ────

 

 

『FUCK YOU‼︎』

 

「「「「「体育祭を楽しみにしとけ……」」」」」

 

 

「違うんですシンビオートが勝手に!!」

 

体育祭荒れるだろうなぁ(血反吐)

 

 







事件後も 態度変わらぬ 寄生体

恭成 心の俳句。




〜〜用語紹介〜〜

『ロナン』
別名ロナン・ジ・アキューザー。人為的に強化された肉体を持つクリー人。MCU版ではキャプテン・マーベル相手に逃げたり、パワーストーンを手に入れサノス相手にイキったり、スター・ロードにダンス対決を申し込まれたりしている。
ちなみに妻はインヒューマンズのクリスタルだったりする(現在、離婚中)




次回は日常だったらいいなぁ。

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