違う!シンビオートが勝手に!   作:ゴランド

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令和ファーストジェネレーション観てきました。仮面ライダー1型カッコ良かったです。父親ライダーっていいよね…(一部を除く)

恐らく今年最後の投稿になります。お楽しみください。



19話 違う!シンビオートが勝手に第一試合を!(後)

『来正恭成ノックダウン〜〜〜〜!物間寧人の一撃が決まったァ〜〜〜〜〜ッ!』

 

 物間寧人。彼の振り下ろした一撃は確実に来正恭成の意識を奪い、勝利という名の栄光を与えた。直後、物間に向けて周囲の観客席から声援が贈られる。

それもその筈、来正恭成はこの雄英体育祭で色々な意味で喧嘩を売り悪役(ヒール)として悪名を一気に轟かせてしまった。その悪役を倒したヒーローが今、この場に居る。

 

(笑えるねぇ、悪役としてイキリ散らかしたA組の主力は負け、それに対し勧善懲悪として僕は善玉の選手としてB組の勝利。随分と差がついた。悔しいだろうねぇ…!)

 

 勿論、口に出して言わない。心の中でまだだ…まだ笑うな……と自身に言い聞かせ指を指して大声を上げて笑うのをグッと堪える。

 

(悪いね、来正君。僕はどうしても君の事が好きになれないんだ)

 

 悪びれも無く心の中でそう呟いた物間はチラリと来正に視線を向けた。彼がここまでするのは何故か?確かに悪役ロールで調子に乗っていた生徒の鼻をへし折ってやろうと意気込んではいたが、物間寧人は来正恭成個人に対し罵倒雑言をぶつけていた。

 

(……何か、僕自身を見てるみたいでさ。苛々するんだよ)

 

 八つ当たりだと言うのは分かっている。行き場の無い鬱憤を彼にぶつけていたと言うのは否定しない。

ただ……、彼等を見ているとまるで一人で何も出来ない(コピーしなければ役に立たない)自分を鏡越しで眺めているかのような気分になってしまう。

 

(……あーあ、やめよう。最終的に僕が勝ったんだからそれで良いや。頭を打ったんだ。もう立ち上がる事は出来ないだろうさ)

 

 物間が静かに勝利を確信したと同時に審判であるミッドナイトが口を開き、目の前の光景に判断を下した。

 

「来正君、戦闘不能!勝者、物間k「アタマがいったぁい…」えっ?」

 

 その場に居た観客、生徒、教師陣は目を見開いた。確実に頭を打ち付け戦闘不能状態に陥った筈だ。それにも関わらず無数の視線の先によろめきながらも頭を押さえながら立ち上がる来正恭成の姿があった。

 

『おいおい!マジかよ!楽しませてくれんじゃねぇか!来正恭成復活ゥ〜〜〜〜ッ!!』

 

どうやら試合はまだ続くらしい。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 ドーモ、読者の皆サン。主人公デス。

……あー、くそ。頭が凄いグワングワンしてしょうがない。頭の打ち所が悪かったのかなぁ、意識もハッキリしないんだけど……。

 

「ッ!……まさか立ち上がって来るなんてね。執念深いったらありゃしないよ」

 

「あー……うん……そだね、ごめん。ちょっと失礼」

 

 プッと口から赤黒い血と共に鋭利な破片が吐き出される。あー、口の中がヒリヒリする。ばい菌入って来ない内に水で濯いでおきたいなぁ。

 

「気付けの為として口内にコンクリを……!」

 

「まさか掛けておいた保険が役に立つとは思わなんだ……あー、ミッドナイト先生?もしかして僕、負けですか?」

 

「いえ、判定するギリギリの所で起き上がったから負けじゃないけれど……大丈夫かしら?正直言って戦えるような見えないのだけれど」

 

「はい、大丈夫ですよ。この通r───あ、すみません。ちょっと待って貰って良いですか?頭かグラグラします」

 

 うーん、目眩が鬱陶しいな。でも不思議と頭がスッキリしてる気が……あ、気の所為だった。どっちが言うとモヤモヤするなコレ。

 

「…やめておきなよ。負けたって言うのにまだ戦うつもr「ぬ゛ん゛っ゛

 

ごっ!!!

 

あー、スッキリした……。

さっきと比べて視界良好、治療成功、気分最高。軽く血が滲んでるけど…まぁ、良しとしよう。

 

「…バカじゃないのか?無理矢理頭を打ち付けて治すなんてさァ⁉︎」

 

 物間君が何か言ってるけど、ごめん。よく聴こえなかったわ。(難聴系主人公感) まぁそんな事より試合だ試合。

 

「っしゃ…!ミッドナイト先生。無理を承知で言いますが再開の合図をお願いしていいですか?」

 

「…本来なら止める所なんだけどね、こう言う熱い展開は嫌いじゃ無いわッッ!!なので再開を許可しますッ!」

 

 えぇ……、自由にも程がありませんかねウチの学校。いやでも正直嬉しい。このまま負けるのは嫌だし。何より、僕にだって人並みに負けたくないって意地があるんだ。おじさんやクラスの皆にみっともない所は見せられないしね。

 

 

※ヒロアカの住人は特殊な訓練を受けています。読者の皆様は頭を打って目眩、気分が悪い等の症状が見られた場合は安静にする、または病院で検査を受けて下さい。

 

 

 そんなわけで、試合が途中から再開される事になりました。やったぜ(ガッツポ)

……え、頭の血を拭いとけって?あ、そうですね指摘ありがとうございますミッドナイト先生。

 

血を拭い、お互いに距離を開ける。

直後、声を上げたミッドナイト先生により戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「それでは試合再開ッ!」

 

「よし、やるか……!」

「全く、そこまでして倒れないなんて見事な執念だよ。余程君は他人を蹴落としたいみたいだね。そこまでして僕等を蹴落としt」

 

 

ごしゃ

 

 

 直後、僕が放つ飛び膝蹴りが物間君の顔面に命中。鈍い音を立てながら後方へ吹き飛ばされた……あれ?避けられるか防がれるの想定していたけどあっさり喰らった?

 

『what's⁉︎来正、いきなり不意打ちィ⁉︎ヒーローつーかヒールらしい面を全開で来たなオイ!』

 

「〜〜〜〜ッ⁉︎話してる最中に……!」

 

 悪いけどな。今の僕は脳内麻薬がドバドバ出てる所為か軽く頭がハイになってるんだ。隙を見つけ次第それを狙うから。

 

「蹴落とすとか何とか言いかけていたけどさ。それは君だって同じだ。蹴落としに来てると言う事は逆に蹴落とされるかもしれないと言うリスクを常に覚悟して来てるって訳だよね……?」

 

残念ながら、こっちはもう蹴落とされる覚悟は完了している。

けど、僕としては蹴落とされるつもりなんか全然無い。

 

「─────ッ⁉︎」

 

「あと、確かさっき……僕達と君は同類って言ってたよね」

 

 一人じゃ何も出来ない卑怯者。他に頼らないと何も出来ない。成る程、言い分は大体理解したよ。

 

「一つだけ言っておこう。君の居る場所は僕等が既に三年以上前に通過している」

 

役立たず? それはもう聞き飽きている

シンビオートに頼らないと弱い? うん、その通りだろうね

卑怯者? 否定はしないよ。実際そうなのかもしれないから

 

憧れたヒーロー達(架空の存在)のようになる為、シンビオートと一緒に胸を張れるようになる為に技術を積み上げ鍛錬を重ねたッッ!」

 

 悪いけど僕は弱点を放置しておく程、甘く無い!何年も耳にタコが出来るくらい散々言われてきた僕自身と言う名の欠点を補う為に、数年も

費やした!

 

「何を言ってるッ!無個性と同様の君(シンビオートの居ない君)に何が出来る!」

 

無個性(シンビオートがいない僕)を舐めないほうが良いよ。弓が上手いだけのおじさんに美人エージェント、コウモリスーツの億万長者だってヒーローになれるんだ。それに……」

 

 僕はファイティングポーズの体勢を取り、彼との間合いを図りつつ口を開く。

 

「ヒーローは一芸だけじゃ務まらないって授業で教わったッッ!」

 

『来正、反撃開始ィ!膝蹴りを打ち込み、そのまま接近して攻撃に移る〜〜〜〜ッッ!』

 

 駆け出す僕の姿を見て物間君は全身をコロッサスのように鉄の身体へ変化させ防御の体勢を取る。あぁ、そうだ物間君。君がその個性を使う時は殆ど、カウンターをして来るのはもう分かっている!

 

「何を───がァッ⁉︎」

 

『お、おお!?来正、物間の頭を両脚で挟んで……一回転するように地面へ叩きつけ‼︎フランケンシュタイナーが物間に炸裂したァ〜〜〜ッ!』

 

 確かに切島君と同じ防御力を上げられるとこちらの攻撃はあまり通らない。……けど、つけ入る隙はある!

 

「ぐ、この……ッ!」

 

 大振りの蹴りを屈んで回避すると同時に足払いで体勢を崩す。やっぱり思った通りだ。物間君は個性のコピーこそするがまだ扱い切れてない!全身鉄になる個性は切島君みたく動きが鈍くなるんだ!そこに付け込めば攻略法は自然と見つかる!

 

「チェストォ!!」

「ぐッ………!」

 

 体勢を崩した物間君の頭に向かって殴り付けるとそのまま地に向かって顔面が叩きつけられる。ダメージを喰らっているのは試し割りの原理と同じであり、この場合は彼の頭にアスファルトをぶつけている事になる。痛そうだけど、さっきまで僕の頭に鉄の拳で殴っていたからお互い様だ。

 

「もういっぱt「この……いい加減にしろよ!」ぐっ……⁉︎」

 

 すると僕が殴ろうとした側の腕と首元に物間君の髪が巻き付き、急激なスピードで締め付け始めた。しまった!落とされるッ⁉︎

 

 

「ぐ、あ……ッ!」

 

 

 

『首に巻き付いたぁ〜〜ッ!勝負あったか〜〜⁉︎』

『いや、まだだ。首に巻き付く直前に自分の腕を差し込んで圧迫される所をギリギリのところで防いでいる』

 

 

「来正君!」

「あのままじゃ落とされるぞ!」

 

「尾白、お前柔道とか経験あるだろ?あれって抜け出せられないのかよ!」

「いや、完璧に決まった締め技は易々と解く事はできない…それに加えて植物のように伸縮する髪から抜け出すなんて意識が無くならない限り無理だ」

「そんな!」

 

 

「う……あ────」

 

 この、無理矢理でも抜け出して……あ、無理だコレ(手の平返し)シンビオートじゃないと抜け出せねぇわ。そのま僕の視界はぼやけて行く。するとガクリと身体全体の力が抜け僕はそのまま意識を手放した。

 

『き、決まったぁ〜〜〜ッ!来正恭成惜しくも物間の攻撃に成す術も無く意識を刈り取られてしまった〜〜〜ッッ!』

 

「全く、個性が使えない状態で戦おうとするからだよ。まぁ時間内で勝負をつけられたから問題は無いけどね」

 

 そのまま首のツルが緩んだ瞬間、僕は髪から抜け出すと彼の顔面に向かって己の頭をぶつけた。

 

意識を手放したと言ったな。すまん、ありゃ嘘だ。

 

「がっ、〜〜〜っ⁉︎」

 

『復活からの頭突き⁉︎泥臭い戦いじゃねーか!』

『わざと気絶したフリをする事により拘束から抜け出したか。やり方はアレだが効率的だな』

「泥臭いのいいじゃない!私大好きよ!」

 

 あっはい。ぐっちょぐちょの泥臭い戦い(意味深)ですね分かります。それにしても危なかった。あと数秒緩むのが遅かったら演技じゃなくて本当に気絶するところだった。

 

「しつこいんだよ!一人じゃ何もできない癖して!」

 

 鉄の拳が迫る中、僕はダメージを最小限に抑える為に体を回旋させながら防御を行う。

 

「必死にしがみ付いてもお前は評価される訳じゃないんだぞ!」

 

 そこから来る貫手をギリギリの所で躱すが、耳元をガリッと抉れるような痛みが襲い掛かった。避け切れなかった───ッ⁉︎

 

「もう諦めろよ!」

 

 僕は物間君の正面から来る正拳突きに対応できず、痛みと衝撃が胸部から体全体へ伝達するように襲い掛かった。

 

「〜〜ッ!」

 

「終わりだ。そして僕達の勝利だA組!」

 

 顔面に向かって突き出される拳。ダメージの蓄積により回避するのは不可能だ。このまま当たれば確実に負ける。

 

……けど出来る限り時間は稼いだ。物間君には悪いけど、やっぱり一人じゃなくて、()()で戦う方が性に合っている。

 

ほら、君の出番だ。

 

 

 

 

 

あぁ、やっとオレの出番だ

 

 鉄の拳が顔面を捉えた。そう誰もが思った瞬間、僕の口の中から生えた黒い腕が物間君の拳を受け止めていた。驚愕する彼を黒の腕は投げ飛ばした。

そのまま僕を包み込むかのようにそれは出現した。

 

『待たせたな!真の主役の登場だぁ!!』

 

 やっと来たかシンビオート……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ごめん、出来れば今後からは別の場所から出て来てくれない?口の中からは絵面的にアレだし呼吸し難いんだけど(半ギレ)

 

『ハッ、オレ様の登場シーンに嫉妬する気持ちは分かるが……その話はコイツを負かしてからだ』

 

 そんなシンビオートは悪びれもせずに投げ飛ばした物間君に視線を向ると口端を吊り上げた。無視しないでくれない?

 

『よぉ、さっきぶりだな。よくもまぁ散々やってくれたなぁ』

 

「ん?君はどこかで見た事あるな……あー、思い出した!大見得切って僕に負けたシンビオート君‼︎イキリ散らかした癖して無残に僕に負けたシンビオート君じゃぁないか‼︎今頃出て来てどしたんだい⁉︎僕だったら恥ずかしくて外に出歩く事すらできないよ!アハハハハ!凄いね君の個性!アハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

『……で、言いたい事は終わったか?』

 

 あれ?流した……えっ⁉︎あの畜生寄生生物のシンビオートが挑発をスルーした⁉︎ シンビオート頭大丈夫?ちょっと保健室で休んでくる?

 

『それはお前の方だろ。まぁいい……で、だ。"つまらないな"お前。何もできない、卑怯、頼らないと役立たずと。さっきから口に出してるが……そりゃぁ、お前も同じなんだろ』

 

 図星を突かれたのか物間君がピクリと眉を動かした。そんな反応を見てニヤリとシンビオートが指を突きつける。

 

『クク、違うと言いたい顔をしてるな……まぁ、そんな事はどうでもいいんだ。要はお互い勝てばいいんだ。勝った方が正しい。勝った方が正義と言う事だ。どうだ?簡単な話だろう』

 

「なんだい?勝った方と言ってるけど、君は負ける事を想定してないじゃないか。まさか、もう勝った気でいるのかな」

 

『無論だな。お前のような屑で罵倒雑言を好き放題に口に出す阿呆がオレ達に勝てる道理があると思っているのか?』

 

 オーゥ、思いっきりブーメラン。星を一周して背中に突き刺さってるよ。屑で罵倒雑言言い放題の阿呆のシンビオートに思い切り刺さってるからね?

 

…まぁ、そんな話は置いておこう。

 

「それじゃ物間君 第二ラウンドだ。臭い事を言わせてもらうけど……()()()()()()()()()()()

『さぁて、倍返しと行こうか!』

 

その直後、黒い腕を伸ばし物間君に向かって拳が迫る。

 

「無駄なのが分からないのかい?僕の防御を崩してから言いなよ!」

 

 知ってる。だから馬鹿正直に真正面からじゃなく、不意に攻めさせてもらうよ。

そのまま伸びた腕は直撃する寸前にクンッと方向転換する。そのまま彼の首に巻き付くとシンビオートが笑みを浮かべた。

 

『人間ハンマーのショーだ!』

 

巻き付けたまま地に何回も叩きつける。

 

「ぐ、く……そ……ッ⁉︎」

 

 巻き付いたシンビオートが解かれると、物間君の額から鉄の体から赤い液体が流れていた。その事に彼自身酷く驚いているのが分かる。

 

「やっと金属疲労が来たか…!鉄は確かに硬いけど決して折れないなんて事は無い」

『まぁ、もっとも……お前の身体よりも先に心の方をボギリと折ってやるがなぁ!!』

 

「そうかい!」

 

 そう叫びながら物間君は側に落ちていたコンクリートの破片をこちらに投げて来る。その破片は数秒も経たない内に大きくなり、こちらへ飛んで来る。

 

「やべぇ!かなりの量の岩石いや、コンクリート!」

「避けられるか…⁉︎」

「いや、今の来正達は避ける必要も無い」

 

 後方で(A組)の声が響く中、僕は武器を形成するとその場で大きくのけ反った。アレをやるぞシンビオート!!

 

TOMAHAAAAWK(トマホ───ク)ッッ!!』

「ブーーーーメランッッ!!五連だ(グォレンダァ)!」

 

『来正と物間の投擲が互いの攻撃を打ち消す〜〜〜!いや、違う!一本だけ斧が物間に向かって飛んで行ったァ!』

 

 一本だけ飛んで行ったトマホークだが、物間君はギリギリの所で身を翻した。くそ当たらなかったか。

 

『Hey!どうした焦りが見え見えだぜパクリ人間!……それとも、時間が近づいて来ているのかな?』

 

「ッ!?」

 

「図星みたいだシンビオート!彼のコピーする個性は恐らく制限時間付き!このまま行けば勝てるぞ!」

「ああ最悪だね!何も出来ない相手に一方的に暴力を振るうなんてヒーローらしくないね君!」

 

 ごめんね物間君。そう言われてもさコレ(試合)って蹴落とさないといけないから仕方ないし、既に僕等って悪役のイメージが付いてるから今更言われてなぁ…って感じ。

あ、もう一言付け足すけどさ。お前が言うな

 

「代わりに答えてあげてシンビオート」

『ああ、楽しいね!逆にお前は鍛え上げて身につけた強大な力で相手を思うようにあしらう時気持ちよくはないのか?優越感を感じないのか?つまりはそう言う事だ!』

「ごめん物間君。僕等ってもしかしたらヒーローは愚か悪役どころか大魔王かもしれない」

 

 今度から代わりにシンビオートに答えてもらうのはやめておこう。まぁ、もう手遅れだけどね(自虐)

 

「それじゃ…これで終わりだッ!」

 

 なんだ、一体何をしているんだ?ステージの地面に手を付けて何を……ッ⁉︎

 

「まずいッッ!シンビオート!!急いで走るんだッ!」

『どう言う事だキョウセイ説明しろ!どうしてオレ達やアイツは一切動いていないのに()()()()()()()()()()()()()⁉︎』

「いいから物間君に向かって走るんだッ!でないと、場外判定となるッ!」

 

『これは……ッ⁉︎特製のステージがどんどん大きくなっていく〜〜〜ッ!?』

『恐らく物質を大きくする個性。それによりステージその物を大きくしているんだろうな』

 

 まずい。このステージは中央部に居る物間を基点にして大きくなっている!もし最大限まで大きくされた後、元の大きさに戻ればテーブルクロスを引き抜くように僕等は場外判定とされてしまう!

 

(こんなやり方はしたくなかったけど、制限時間がせまってるんだ。悪いね、勝つのは僕だ!)

 

「シンビオート、これは罠だ。確実にアリジコグに向かって突っ込めと言ってるのと同じだ」

『だろうな』

 

「でもどうせ言っても聞きやしないんでしょ?」

『ああ、その通りだ』

 

ですよね。……でも、それしか方法が無いんだから仕方ないね!そんな事を思いながら中心である物間君に向かって駆け出した。

 

(そう来ると思ったよ。無駄だ!至近距離に持ち込んだ瞬間にもう一度金属音を打ち込めば…!)

 

「はい目潰し」

 

 そのまま僕は指先からシンビオートの一部を彼の顔面に向かって飛ばした。罠が張ってあるならその罠自体を潰せばいいよね。えっ、卑怯?うん、今更だね(白目)

 

まぁ、これで……技のタメを作る時間は稼げた!

 

「この……ッ⁉︎なんだよその構えは!」

 

「うん。ちょっと、やってみたい事があってね(シンビオートが破裂した瞬間、凄まじい勢いで飛び散る破片は強固な弾丸と化す……!)」

 

 僕は両手の中でブクブクと膨れ上がる黒い液体を必死に抑え付ける。

 

(なんだアレは?ここは回避…を……!)

 

『まぁ、別に逃げたければ逃げればイイぜ。ほら右回ってさっさと背を向けろよ。そうした方が攻撃しやすいからなぁ…!』

 

「(いや……迎え撃つ!)へぇ、それじゃあ撃って来なよ!その自信溢れる攻撃って奴をさぁッッ!」

 

 

 そのまま物間君は全身を鉄に変え、こちらに向かって来る。かかった!彼なら確実にシンビオートの挑発に乗って来るものだと信じていた!ありがとう。シンビオート、そして物間君。この技は()()()()()()()

 

 

……それにしてもさぁ、あの時のさぁ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

『……カカオの宝石箱ビックバンや』

 

「は?」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「(まさか16話(昼辺り)に出たくだらないワンシーンが必殺技習得の伏線になるとは思わないだろッッ!!)捉えた!半径5m(メートル)!全弾喰らえッ!」

 

 両手に溜めたエネルギーを破裂させ、飛び散るシンビオートを弾丸に変えて放つッ!これぞ僕の必殺技(仮)!!

 

SYMBIOTE(シンビオート) SPLASH(スプラッシュ)ゥゥッ!

 

 

『なんとーーっ!黒い弾丸の雨霰が放たれ、今、物間に襲い掛かるゥーーー!』

 

「なんつー威力!まるでショットガンじゃねぇか!」

「いける!いけるぞ来正ィーー!」

「やっちまえぇぇえええ!」

 

(フン、この程度、スティールの前じゃ霧雨も当然。全然痛くも痒くも───ッ⁉︎)

 

 そうだ、ただの勘だけどさ。そろそろ時間切れなんじゃないのか?もう個性の制限時間限界を迎えるんじゃないのか?

 

「(まさか、時間切れ⁉︎)う、おおおおおおおおッ!」

 

 ガガガガガガと黒の弾丸が物間君に襲い掛かる。恐らくかなりのダメージが入っている筈だ。

 

(ここまで来て負けられるか!ここまで来て───ッ!)

 

 身体中に直撃し、あと一歩で倒せる。……筈なんだけどね、もう弾切れだ。

 

「は、……はは!オイオイオイ!どうしたんだい君ィ!何が必殺だよ!何がシンビオートスプラッシュだよ!まさかさっきのが必殺技だと言うのk『残念だったな』…ひょ?」

『まだオレ達のバトルフェイズは終了してないぜ?』

 

 まぁ、必殺技(仮)だからね。普通に考えたら編み出したばかりの技で倒せるとは限らないから。確実に倒せるやり方を取らせて貰ったよ。

 

「脚が動かない……ッ⁉︎」

 

 さっきのシンビオートスプラッシュは目眩しを兼ねた拘束技だよ。威力とか見ると改善点多有りだね。

 

『さて、どう料理してやろうか?人間シェイクの刑か?高い高いの刑か?それともタイムショック時間切れの刑か?』

「全部高確率で吐くヤツじゃん」

 

 そう呟きながら僕はシンビオートによって拘束された物間君の前に立つ。うん、もしも相手が女性だったら確実に全国に報道できないヤツだコレ。

さて……どうすべきか。

 

「まさかだけど…怒ってる?」

「はははそんなまさか……でも散々罵倒雑言をぶつけられて苛立たない人が居ると思う?」

 

 少なくとも爆豪君ならすぐさま爆破させに来るよ?轟君の場合は速攻で凍らせて来るね。

 

『……そう言えば、こいつの名前は何文字だ?』

「6文字だった筈だけど」

 

『も、の、ま、ね、い、と……天国、地獄、大地獄、天国、地獄、大地獄……ギャハハハハーーーッ!コイツ大地獄行きだぜぇーーーーーッッ!』

 

 大地獄行きね……や っ た ぜ

 

「うん、完璧に怒ってるよね」

「怒ってないよ(半ギレ)」

「嘘つけ!フットワークがボクシングのヤツになって呼吸も鋭くなってるじゃな─────」

 

 瞬間、僕は拳を叩き込んだ。胸に、顎に、肩に、腹部に。とにかく殴って殴って……殴り続けるッッ!!

 

「オラオオラオラオララオラオラオラオラオラオラオラオオラァァーーーッ‼︎」

 

「ぐ、ぎゃ…ぁあーーーーーーッッ!!」

 

 最後の締めであるアッパーカット。それによりシンビオートの拘束が解ける。同時に物間君が後方へ綺麗に吹き飛ばされた。

 

 

(これが君達の強さ……か……、僕と同じだと思ったけど、来正君。君は僕よりも先に居たんだね。……この勝負、君の勝ちだ………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……なーんて、言うかと思ったら大間違いだよボケがッッ!やられたフリをして隙を見計らって場外に叩き出してやる!その隙だらけの身体に一撃叩き込んで───『速攻魔法バーサーカーソウルッ!』……ん?)

 

『全てドロー!モンスターカードッ!』

 

 直後、宙に舞う物間君に向かって黒い触手が伸びて行く。そのまま繭のように包まれた物間君をシンビオートがこちらへ引き寄せたのだ。

 

『この辺りか?』

「そう、そこだ」

 

「「「「「「「えっ」」」」」」」

『えっ』

「……え?」

 

生徒や先生方含めた観客席から聞こえる声を他所に狙いを定めた。

 

『「ここが一番、拳を叩き込みやすい角度ッ!」』

 

 僕等は両腕に目一杯の力を殴り易い体勢を取り、拳を突き出す。

だってシンビオート言ってたよね?倍返しにしてやるって。

 

ただし倍返しは倍返しでも()()()()()だがなぁ!!

 

 

『「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァッ!!」』

 

「ぐ、ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!??」

 

 

 

「物間君、戦闘不能!勝者、来正君!」

『け、決着ゥ〜〜〜〜〜〜〜ッ、波乱の第三試合!勝利を収めたのは来正恭成だぁ〜〜〜〜〜〜〜ッッ!」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 観客達の声が会場内に響き渡る中、物間寧人が感じていたものは虚無感だった。

 

「あぁ、……結局、こうなるのか」

 

 B組全体と連携し打倒A組と意気込んだ結果がこれだ。自身の個性は結局他人に頼らなければ使えない。負ければ他人の力に頼ってるからだと言われ、勝てたとしてもそれは他人のお陰だと言われる始末。

 

こうなるんだと薄々分かっていたのかもしれない。頑張れたとしてもそれは他人がいるから。自然と一人で戦う事となるトーナメントでは負けてしまうんだと彼は思ってしまう。

 

「……で、僕に何かようかい?勝ち誇りに来たならさっさと自分の観客席に戻って勝利の美酒に酔いしれた方が良いと思うよ」

 

そんな強がりを言う彼に来正は告げた。

 

「大丈夫?結構強めに殴っちゃっけど……」

 

「は?」

 

 不意に声が出た。彼は物間に向かって手を差し出した。殴ろうとした訳でも指をさして笑いものにしようとした訳でもない。ただ、純粋に心配しに来たのだ。

 

「は…はは!そう言う事か!皆の前でカッコいいヒーローアピールか!さすがはこの場の主人公様が言う事が違うn「はよ立てや」んがっ⁉︎」

 

 無理矢理首根っこ掴まれ立たされた物間。そのまま来正に肩を貸される形で連れられて歩き始める事となる。

 

「……ッ⁉︎おい、これは何の冗談だい……?と言うかそこまでして善人面しないと気が済まないのかな君はぁ!」

「えっ……何言ってるの物間君?既にイメージが最底辺に落ちた僕が今更善人アピールしても遅いと思うんですけど(超推理)」

 

「それじゃあ強者アピールかい⁉︎自分の強さに酔いしれたいのかなぁ⁉︎一人じゃ何もできない僕と違ってさぁ!!」

「何言ってるの?君の"個性"は集団戦向き。一人じゃ何も出来ないんじゃなくて、皆が居て真価を発揮できる強い個性だと思うんだけど」 

 

 なんだコイツは……?物間の頭の中には疑問符で一杯になっていた。何故ここまでして他人の心配なんかをする?メリットを得られる訳でも無いと言うのに。どうして拒もうとしない?そんな考えが過ぎる中、物間は更に口を開く。

 

「口では何とでも言えるよ。結局の所、君にとって僕はただのやられ役に過ぎないんだからさ」

「えぇ、コピー個性持ちがやられ役って……制限ありとは言えクロロ団長やカカシ先生みたいな強い個性を持ってる人なんて嫌でも印象に残るよ?どっちが言うとそれ強敵ポジションでしょ」

 

 彼の言葉に対し呆れながらも来正がそう答えると無理矢理引き連れるように再び歩き始めると、観客席のあちこちから声が上がった。

 

「やるじゃねぇかB組!」「凄かったわ!見直した!」「オイオイオイ、A組と同じくらい将来有望な生徒いるじゃん」「こりゃ要チェックだな…性格アレだけど」「黒い方引っ込めー!」「がんばったなぁ!お疲れ様ーー!」「来年期待してるぞーーー!」

 

 

『見ろよ来正!オレ達を崇め奉ってるぞ!ハハハハ!』

「ごめんシンビオート。よく聞いて?これ殆どが物間君に向けての声援だから。僕等に向けてのほぼ無いからね?」

『マジかよ』

 

 呆然とする物間だが、突如として聴き覚えのある声が耳に入った。

 

「おーい物間!ドンマイ !」

「惜しかったけどナイスファイト!」

「さっさと上がってこいよ!」

「仇は俺たちが取ってやるからな!」

 

「ハハハハ!流石だな物間!」

 

 B組の生徒達が物間に向けて言葉を投げ掛けてきた。彼を信じたクラスメイト達に続きいつの間にかB組の観客席に移動して来たブラドキングが声を荒げる。

 

「周りを見ろ、そして耳を傾けろ!確かにお前は試合では負けたかもしれんが、俺はそうは思わない!この圧倒的な声援!お前は勝ったも同然だ。今に見ていろA組!次に勝つのは我々B組だ!」

 

「あのブラドキング先生。A組の僕がいる前でガッツリ贔屓するのやめてもらえません?」

 

「フ、物間に勝ったからといって調子に乗らない方が良い。次の対戦相手である赤糸虫はお前を負かす!」

 

「サラッと負けた事にされてる芦戸さんェ……」

 

 そんな来正の脇腹に向けて肘で小突くと同時に物間は口を開く。

 

「君さ、本当に空気読めないね。負けた相手に同情するのは屈辱以外何でも無いよ?ほら、さっさと僕を連れてってよ」

「えっ、あ うん、ごめん(勝ったのにこの仕打ち。解せぬ)」

 

 

『それでは会場のリスナー諸君!!拍手で二人をお送りください!!……なぁ、もうこれで体育祭終わりでよくね?』

『そうしたいものは山々だが、まだ3試合目だからな?』

『それマ?』

 

 会場内に響き渡る拍手。それを受ける物間はチラリと先程まで戦っていた彼に視線を移す。 

全く持って屈辱だ、コイツに情けをかけられるなんて。その筈なのに……。

 

(君の事は好きになれないけど……悪いヤツじゃないみたいだ)

 

 そのまま二人はステージを後にする────直前、物間は地面とキスする事となった。

 

「「あ」」

「あっ」

「……は?」

 

 恐る恐る視線を向ける先は来正のすぐ横。来正自身もそこに顔を向けると手を突き出したシンビオート(黒塗りイキリ畜生寄生生物)がそこに居た。要はステージから突き落とした犯人コイツです。

 

「………シンビオート?」

『悪い手が滑った』

シンビオートォ⁉︎

 

「フフ、ハハハハ!……やっぱり君の事嫌いだァ!」

 

違うぅ!シンビオートが勝手にぃ!

 

 




【おまけ】


ミッドナイト「正直興奮した。ヒャアたまんねぇ!全く…中学生上がりたての生徒は最高ね!これだから教師はやめられないのよ!」
主人公「………」


A組クラスメイト達『シンビオートのヤツいつも通りやりやがった!』
爆豪「パクリ野郎ザマァァアアーーッ!!(歓喜)」
主人公「( ゚д゚)」


爆豪「おい。もっとバレないようにやれや」
シンビオート『そうだな。今度はもっと気をつけてるか』
主人公「君等、本当は仲良いだろ」



〜〜キャラクター紹介〜〜


『来正恭成』
この作品の主人公。
僕は主人公だ。誰が何を言おうと主人公だ
幼少期からシンビオート頼りでオメェ弱いだろと言われ続けて早数年。キャップのシールド投げや棒術等の架空のヒーロー達の技術を模倣、鍛錬を繰り返す事により肉体は鍛えられていった。
頭を打つと覚悟ガンギマリスイッチが入るらしい。

SYMBIOTE(シンビオート) SPLASH(スプラッシュ)
16話、八百万から貰った高級チョコを摂取した事によりシンビオートが新たに習得した過剰膨張破裂を利用し、弾丸と化したシンビオートをぶつける技。
元ネタはジョジョの奇妙な冒険より花京院典明のスタンド能力ハイエロファント・グリーンの必殺技『エメラルドスプラッシュ』
しかし一度もエメラルドスプラッシュで倒せた敵が一人も居ないと言うのに必殺技とは……。


『物間寧人』
幼少期の頃から他人に頼らないと使えない個性により人格が歪んだ雄英の負の面。光堕ちすると思いきや、シンビオートの妨害によりそんな事はならなかったぜ。おのれシンビオート…



〜〜用語紹介〜〜

『コロッサス』
X-MENメンバーの一人。肉体を生体金属で覆う能力を持ち、その防御力は全マーベルヒーロー中トップクラス。

『トマホークブーメラン』
ゲッターロボ(ゲッター1)が使用する格闘武器。叩き斬る、投げる、突き刺す等を行い、その後のゲッター系統のロボットもトマホークを使用している。

『速攻魔法バーサーカー・ソウル』
手札を全て捨て、効果発動。このカードはモンスターカード以外のカードが出るまで何枚でもドローし、墓地に捨てるカード。そしてその数だけ、攻撃力1500以下のモンスターは追加攻撃ができる
「覚悟しろよこの虫野郎!」



 読者の皆様方、自分の小説を読んでくださり誠に感謝します。新年、幸多き年になりますよう祈るばかりです。新年を明けてからの投稿は恐らく番外編になるかと思いますがご了承をお願い申し上げます。

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