違う!シンビオートが勝手に!   作:ゴランド

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 ヒロアカ5期決定したり、デジモン放送したり、ULTRAMANが放送されたりと嬉しいので投稿します。



27話 違う!シンビオートが勝手に準決勝を!

 

 アチチチチチ!?

やぁ、皆。炎を浴びてる主人公だよって、アツゥ!!

 

『なんとギリギリのところで畳返しの如く!ステージの床を引っ剥がし、炎をガードだ!面白れー防ぎ方すんじゃねぇか!!』  

 

 面白いって、こっちは必死なんですけどそれは(半ギレ)それはともかくシンビオート!こちらも攻めるよ!

 

『任せな、教育の時間だオラァ!』

 

 捲ったコンクリート製の床を轟君に向かって蹴飛ばし、それの陰に隠れるように轟君に向かって接近を行う。

 

バキバキと氷塊が発生する音が耳に入った瞬間、スライディングを行う。僕が地面とコンクリートの間を縫って通り過ぎた直後、宙に浮かぶステージの一部は氷漬けにされる。

 

そのまま下から出てきた僕に驚き固まっている轟君の股下も潜り抜けると腕にハンマーを形成し思い切り振りかぶる。

 

「らぁっ!」

「ッ!」

 

 咄嗟に出現させた轟君の氷盾とシンビオートのハンマーがぶつかり合う……が、空いた片手を使って轟君はこちらに向けて炎を放とうとして来た!

 

「おおおおおおおッッ!」

「シンビオートッ!」

 

 ベリベリと再びコンクリートの地面を剥がすとそれを盾のように扱い、至近距離から放たれる炎を弾く。

アチチチチチ!さすがキャップ!アイアンマンのリパルサーを真正面から耐えるなんて、やっぱりしゅごい……(現実逃避)

 

あ、やっぱり熱ッッ!現実逃避しても熱いものは熱いわ!

 

「防がれる……ならッ!」

「う……おおおおお⁉︎」

『何ィッ!』

 

 地面から氷柱が生えて僕等を空へ突き飛ばした⁉︎やばい、空中じゃ身動きが!

 

「これで終わりだ!」

 

 そのまま僕等に向かって轟君は燃え盛る炎を噴射させて来る。

アッアッアッ、やばいやばいやばい!死ぬぅ!燃え死ぬぅう!

 

「シンビオートシンビオート!地面、地面に伸ばして!」

『わかってる!』

 

 触手を地面に突き立てると僕等の身体が地上へ引き寄せられ、先程まで居た所に炎が通り過ぎる光景に思わずゾッとしてしまう。こんがり上手に焼けましたどころの騒ぎじゃないと思うんだけど。

 

『コラァ!少しは手加減しろォ!(悟空)』

「手加減ってなんだ……ッ!」

 

 伝説の超野菜人と化した轟君によって再び放たれる火炎。って、危なっ!ちょっと靴焦げたんだけど!後で八百万さんに新しい靴作れるか聞いてみないと……。

いや、そんなどうでもいい事は後にして。

 

やばい、轟君の本気強過ぎる!体温調節が可能となった今、長期戦で相手のスタミナ消耗は持ち込め無いしシンビオートでガードしたいけど弱点である炎を出し惜しみなく使って来る!

 

……一か八かアレを使うしかないか……ッ!

 

「シンビオート!腕の一本は壊すだろうけどカバーお願い!」

『アレか…、しょうがない。好きにやれ!』

 

「やらせるかッ!」

 

 地面に沿って剣山の如く形成される氷が襲いかかって来る。それを飛び退くと同時に指先の照準を轟君に合わせる。

 

「黒指弾・五連打ァ!」

 

BANG BANG BANG BANG BANGッ!

 

「ッ⁉︎」

 

 よし命中!隙が出来た今なら二回戦で出した"すごいパンチ(仮)"を出せるかもしれない!

 

『どうだオレ様特製の目潰しはっ!勝った死ねぃ!」

「これで終わりだ!」

 

腕を大きく振りかぶって………ッ!

 

「SMAAAAASH!!」

 

 

 

……………。

 

…………………。

 

………………………。

 

 

 

……あれ?

 

 

『おい!どう言う事だキョウセイ!出てないぞ!』

「そんなっ⁉︎まさか発動条件が存在するのk「どこ見てやがる」っ、しまっ───」

 

 

パキン

 

 

 しまった、脚に氷が⁉︎このまま伝っていけば全身が凍って……いやそれよりも早く氷だけを引き剥がすッ!

 

「脚を切り離せシンビオート!」

『分かってる!』

 

 ばつん! と手を斧に変形させたシンビオートは己の凍りかけた片脚を切り落とす事で全身に氷結が広がらずに済んだ。

ちなみに僕の足だけど靴先が少し掠った程度だったので大丈夫……結局八百万さんに作って貰うのは確定かぁ。

 

「っ…!よし、このまま「逃げの一手なんだろ。させねぇよ!」

 

 そんな声と同時に迫り来る焔。回避する為に飛び退いたが……一瞬遅れてしまった。

 

ぐああああああっっ!!

  

 両脚に熱と共に激痛が襲いかかって来る。炎に囲まれて絶体絶命な状況に追い込まれた事はあったが、両脚を焼かれる経験は初めてだ。

いや冷静に分析してるけど足がああああああああっっ!?

 

『命中ぅぅうう!巨大な炎を回避しきれず足にダメージ!来正立てないーーーーっ!』

 

「ぐ、……立て…ない…!」

『クソ!機動力を潰しに来たか!』

 

「やっぱ炎が弱点みてーだな」

 

気がつけば目の前に轟君が立っている。まずい、なんとかして───

 

「時間稼ぎをしなきゃか?」

「っ!」

 

「お前の両脚を治すのには時間が掛かる。早くても精々 十数秒、治った瞬間と同時に炎を叩き込む」

 

 読まれている。僕が次に何をするのか読まれている……ッ!

……いや、落ち着くんだ。読まれているなら、読まれているでそれで良い!

 

「……それじゃあ、その治る間に少し話をしようか。……轟君は夢はある?」

「………」

 

「君は言った。体育祭で一位を取るのは父親を見返す為だって 父の力を使わず勝つ。それが今までの君の目標だった」

「そうだ」

 

 何か憑物が抜け落ちたように落ち着いた轟君は淡々と答える。今までの彼なら逆上していたかもしれない。

……恐らく、今の彼にも何らかの負けられない理由が存在している。

 

 体育祭は最初は切磋琢磨し合ったり、楽しんだりと考えていた……けど、皆は夢に近づく為に戦っていた。

 

()()()()()()()()()()()()()

僕にだって、勝たなければならない理由がある!

 

「この来正恭成には夢がある…ッ!」

「ッ!」

 

 腕を天に向かって挙げた僕に反応したのだろう。轟君は炎を溜めた左手をコチラに向けようとする。

 

…あぁ、それでいい。

そのお陰で足から注意が逸れた!

 

『無駄ァ!!』

「っ、血だと!」

 

 彼の言う通り、シンビオートが僕の片脚を裂いた。それによって血が勢い良く噴出し轟君の目に直撃したのだ。

 

悶えている間にステージ端に向かって触手を伸ばし、距離を取ると改めて両脚への治癒を集中させる。

 

 

『ハッハハハハ!どうだ血の目潰しはァ!目薬代わりに丁度いいだろう!』

「おっ、おおおおお……ッッ!、シ、シンビオート…膝から血を飛ばすんなら量を抑えて…傷口開くの物凄く痛いから……!」

 

 

「そうか……両脚じゃなく"片脚"を治すのに集中して時間を短縮したかッ!」

「その通り…おかげで立つのもやっとだよ クソッタレ(半ギレ)」

 

 多分、膝がガクガク笑うどころか生まれたての小鹿のように足はボロボロなのだろう。

と言うか片脚死んでないコレ?とんでもない出血量だった気がするんだけど。

 

「………っ、緑谷みてーな真似しやがる」

 

『結局は如何にして上手く戦うかが肝だ。とどのつまり勝てば良いんだよ勝てばなァ!』

「分かった。分かったから中指立てないでくれる⁉︎」

 

 全国報道してるからね?このままだと本格的に色んな方面から敵を回す事に……あっぶな!?炎が顔面スレスレに⁉︎

 

「外したか…?」

 

「あっ──ッ……!」

 

 声が出そうになるが咄嗟に口を手で塞ぐ。そうだった、目を潰したのはいいけど耳がまだ残ってる!チェンソー地面突き立て高速移動(ロマン式移動術)で躱したのはいいけど、まずは轟君の攻略法を見つけないと……!

 

 

「何も見えねぇなら、全て凍らす……!」

『「ッ!?」』

 

 地面に手を当てた瞬間、空気が冷たくなった…!八百万さんや緑谷君の時の比じゃない程の冷気!まずい!よく分からないが、嫌な予感がする!シンビオート早く逃げ───

 

 

 滅 界 凍 原 

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

「……なぁ、轟って体温調節が出来るようになったから心置きなく最大威力ブッパ出来んだよな」

「そうだな」

 

「んで、だ。地面に手を付けて氷結使った結果が……これか」

「これだなー」

 

『氷山ンンンンンンンンッ!ステージ上に氷山が出現したーーーーーーッ!』

 

 観客達は圧倒されていた。轟が第一回戦で見せた本気の一撃、それを上回る全力全開の氷結攻撃。己の周囲は銀世界と化し、氷河期が訪れたのでないかと錯覚してしまう程の寒気がステージを包み込む。

 

「自分を中心点に剣山のように鋭い氷河を無数に作り出すなんて」

「うん。炎を使う事で体温調節が可能となった今、最大限の攻撃範囲を誇る轟君の必殺技だ……」

 

 麗日の呟きに戦ったからこそ分かる緑谷は肯定する。自身の指へのダメージと引き換えに撃つ弾丸では破壊出来ない程の物量を誇るその大氷河を前に思わず緑谷は青ざめてしまう。

 

「す、すげぇな!お前はそう思うだろ爆豪よ、オメェ勝つ自身あっか?」

「……チッ(半分ヤロー、まだ奥の手隠してやがったか)」

 

 爆豪勝己はテンションの上がった切島の問いに舌打ちで返す。普段の彼ならば即座に反論からの罵倒のコンボを行うだろう。しかし今の彼にそれをする程の"確信"が無かった。

 

(クソ程気に入らねぇがさっき出した半分野郎の技は俺の爆破を遥かに上回るパワーだ……!)

 

 圧倒的なまでの実力の持ち主であり、雄英高校推薦入学者であるとと同時にNo.2ヒーローの息子、それを観客の人々は再認識させられる。

 

「来正さ、これ躱せたって言うか逃げられた?」

「脚潰されてんのにか⁉︎ 流石に無茶じゃねぇのかそれ!」

 

 

「いや、まだだよ☆」

 

 騒ぐAクラスの中、一人。青山優雅を開いた。

 

「そうなのか?俺の複製腕からでは氷河に阻まれて来正の姿が目視できないが……何故、そう言い切れる?」

「何故って?もちろん簡単な理由さ☆」

 

 

 そう訊ねる障子に対して青山はステージを睨んだままだ。探知に優れた個性を持っている訳ではない彼だが、その声と目に宿る炎に障子は『スゴ味』を感じた。

 

クラスメイトである来正の勝利を信じて疑わない。

そんな青山の『スゴ味』に

 

「彼の心はまだキラキラ輝いているから…ね☆」

 

 ちなみに嘘である。

この男、信じる以前に根拠すらない言葉をつらつらと口に出してしまった。

しかし、一度口にした言葉を訂正すれば物凄く恥ずかしいのでそれっぽい雰囲気で座っている事にした。

 

 

「然り、奴の狂宴は未だ健在だ。待て、しかして希望せよ これよりは地獄の淵よりから蘇りし悪魔の逆襲だ」

 

 そこに常闇が便乗するように口を出した。彼もまた来正の勝利を願う者の一人。決して青山を倣ってカッコいい台詞を口にしたかった訳ではない。

そんな常闇にチラリと爆豪は視線を向ける。

 

(……何を口にしてるか分からねぇ鳥頭だが、野郎の言う通りだ。ヤツがこのままくたばるとは思えねぇ。それにさっきの半分野郎の必殺技 俺の見立てじゃあ、"後からクる"ヤツだ。それをアイツが狙わねぇ理由は無いからな)

 

 

「───っ、はぁ…はぁ……」

 

 視界が良好となりつつある轟。彼の口から白い息がブワリと吐き出される。

……いや、それ以外にも身体の凡ゆる箇所から白く輝く冷気が立ち昇る。

 

「くっ(凍傷覚悟の広範囲用攻撃。炎で体温調節出来るとはいえ 俺自身がここまでダメージを負うとは…)」

 

 霜で覆われた身体をすぐさま暖める為に轟は炎によって体温を上昇させる。氷結によって麻痺していた感覚も徐々に取り戻していく。

 

 しかし、だからと言って油断は決してしない。もしかすると先の技を避けているかもしれない。氷の中で攻撃の機会を窺っているかもしれない。抜け目が無い相手がどのように来るか、予測して対応する。

 

「どこだ…、ヤツは一体どこから……」

 

そう自分自身に言い聞かせながら轟は四方八方に意識を向ける。

 

 

 

ぼこり

 

 

 

「下かッ!」

 

 自身の足元に炎を放出。決して油断する事無く攻撃を行った。

 

「地面に穴を掘って避けるとはな、だが察知さられれば避ける暇は────⁉︎」

 

 言葉が途切れる。彼はミスを犯してしまった。目の前で灼いた筈の黒い物質。それがシンビオートである事は間違い無いだろう、しかし問題なのはその大きさである。

足元にある黒い物質ら手の平程の大きさしかないそれは『黒指弾』によって射出され、そのまま放置された弾丸であった。

 

 彼が犯したミスと言うのは集中し過ぎた事である。集中し過ぎた事により瓦礫に等しいソレを対戦相手だと決めつけてしまったのだ。

 

ならば本物は何処に居るか、そんな疑問を浮かべる轟の上空から突如として耳を(つんざ)くような雄叫びが響いた。

 

 

WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!

「なっ⁉︎」

 

 馬鹿な、そう轟の頭の中にそんな言葉が浮かび上がって来た。絶叫と共に空襲を仕掛けて来たソレの正体に彼は面食らってしまう。

 

『キシャァァアアアアアッッ!!』

 

意外ッ、ソレは恐竜ッ!

顎を大きく開いた体長2m程の肉食恐竜が牙を剥いて轟に襲い掛かって来たのだ!

 

「炎を…!」

『グルルシャァアアアアアア!!!』

 

 左手を前に突き出そうとした轟だが、それよりも早く恐竜が彼の腕に喰らいつくのが先であった。

深々と牙が腕に食い込み、まるで獲物を仕留めるかのように氷面と化したステージに擦り叩きつけをダメージを加える。

 

「ぐっ、あッ!やってくれたな……ッ!」

 

 右手に氷の刃を形成。そのまま恐竜の眼球に向かって突き立てようと轟は腕を振り下ろす。

しかし刃が刺さる直前に肉食竜の頭は泥のように溶け、首から上を失った竜は後方へ飛び退き距離を開けた。

 

 そして次第に首から上を形成していき、鋭い牙に謎の粘液を滴らせた舌。そして瞳が存在しない巨大な白眼が姿を現した。

 

「やっぱり、そう簡単にはいかねぇか……」

『Of Course…』

 

 直後、焼き尽くす灼熱と喉奥から黒の弾丸が同時に放たれた。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 敢えて言おう。死ぬかと思った

ステージごと凍らされる直前に赤糸虫君…じゃなかった、赤糸虫さんがやったように会場上方に存在する開閉式屋根に向けて触手を伸ばしたのだ。

正直言って作戦や戦法、賭けにも至らない成行き任せの御座なりに等しい行為。

 

確かにシンビオートの触手を伸ばせる範囲は長い方だろう。しかし、あくまで客観的に見ての話だ。触手の射程距離は過去最高記録では120m程……そう、()()()1()2()0()m()なんだ。

その程度の長さの触手で遥か上方に位置する開閉式の天井に触手を伸ばせる筈も無い。

僕はその事を失念して赤糸虫さんのように触手を伸ばした。

 

……そしたら信じられない事に、触手が粘着性の黒い繊維状のモノへ変化した上に射程距離が大幅に伸びたんだ。

まるで赤糸虫さんの糸のように。

 

おかげであの必殺技を回避出来たからいいけど。

 

 

 何が起きたか分からない。でも、チャンスが巡って来た。神様か閻魔様かはたまた第四の壁を乗り越えてコミックの神様が力を貸してくれたのか。

 

 僕はこの好機を逃しはしない。シンビオートは不定の体を持つ生命体。

ならば それ即ち、シンビオートは千変万化の凡ゆる形に変わる自由自在の姿への裏返しだ!

 

「今までのシンビオートだと思うなよッ!」

『スケアリィィイイモンスタァァアアアッッ!!』

 

 口内から発せられた黒い弾丸と炎がぶつかり合う。けど打ち勝つのはアッチ側の攻撃だと知っていた為、別の氷山へ小型恐竜の如き跳躍力ですぐさま移動する。

 

『おい、ヤツを倒す方法は思いついたか?』

「……それについてだけど。まだ確信は出来ていない」

 

『そうか、つまり残りのピースを埋めればイイって事になるなァ!』

 

 雄叫びを上げながら鋭利な強靭な爪を轟君の背後に向かって振るう。しかし察知していたのか氷壁が出現し攻撃は阻まれてしまう。

 

すると、氷壁の向こう側から何か来るのを察知したシンビオートは咄嗟にその場から離れる。直後、先程まで居た所に火柱が立ち上がる。

 

『厄介だ』

「そうだね、だけどもう少しだけ粘って欲しい」

『All right』

 

 現状、両脚が使い物にならずシンビオートに身体の主導権を譲っている僕は指示するくらいしか出来ない。

 

今はとにかく炎を受けず、轟君に攻撃を命中させる事が肝心だ!

 

『GURUUUAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

 威嚇行動でもある咆哮を行いつつも肉食竜特有の動きで(図鑑、マスメディアより)相手を翻弄、攻撃を回避しながら接近を行う。

 

「氷結…いや、ここは炎をッ!」

『出させると思ったか!』

 

 例えステージが滑りやすい氷面だとしても強靭な鉤爪によってスピードは落ちる事はない。俊敏を意味するラプトル形状のシンビオートによる体当たりを轟君はマトモに受ける。

 

「このッ!」

『V、VOOOOOOOOOOOOOOOOOッッ⁉︎』

 

 しかし負けじと轟君はシンビオートの頭部にしがみ付きつつも身体から炎を発生させる。

炎が発動する瞬間、頭部を分離させたお陰で致命的なダメージは回避出来たもののシンビオートはその熱量に悶えている。

 

『クソッ、クソ クソクソッッ!やってくれたなッ!』

「ハァ…ハァ…、それはお互い様だ……!」

 

 毒を吐くシンビオートと肩で息を行う轟君。お互いほぼ満身創痍に近い……いや、実際の所こちらが不利に近い。

轟君の炎は申し訳ないくらいに相性が悪過ぎる。もし後一発でもマトモに食らってしまえばコチラの負けは確定だ。

それに加えて……!

 

「…待ってくれ、ちょっと止まってくれないか」

Don't stop me(俺は止まらねぇからよ)

 

 腰がぁ…ッ!これ無理な体勢でシンビオート纏ってるから腰への負担が尋常じゃないレベルで襲いかかって来るぅ……せめてゴ、ゴジラやグレイモン系統の骨格にしておくべきだった……!!

シンビオートを纏ってる僕自身にも負担がかかるんだよ。人間はディノニクス系統の小型肉食恐竜の体勢を保つような構造じゃないからそろそろ限界に近い。

 

……でも、やっとだ。やっと見えた。

 

「シンビオート」

『なんだ』

 

 勝利の筋道が見えた。そう伝えるとシンビオートは勝を確信したかのように喉を鳴らした。

轟君、君は本当に強かったよ。お世辞じゃ無く本気と書いてマジで強かったよ。

 

 ハッキリ言って氷結のみでも冷汗モノだったのにそこに炎の力なんてチートめいた力を持ってる君に最初は勝てるイメージが湧かなかった。

これから行う戦法は決して正々堂々と言えたモノじゃない……いや大体最初から正々堂々とはしてないけど。

 

それでも、僕には。

この来正恭成には誰にも譲れない夢があるッ!

 

「陳腐で臭い台詞を言わせて貰うけど───勝利の法則は決まった!」

『Ready Go!』

 

 刹那、口内から無数の弾丸を射出する。当然それを轟君は氷を盾代わりにして防ぐ。

まだだ、まだ終わらない!

 

「シンビオート、轟君を軸に旋回しながら撃ち続けろ!」

 

「ッ、反撃させない気か!」

 

 マシンガンのように放たれる黒の弾丸に対し轟君はドーム状の氷を張る事で防ぐ。

もっとだ、もっともっとぉぉおおおおお!

 

「黒指弾ありったけをッ!!」

 

 恐竜の短い前足を無理矢理標的に向けて弾丸を放つ。今はとにかく攻撃をし続けろ。次第にシンビオートの身体が小さくなっていき機動力も削がれていく。構うものか、もっと轟君に()()()使()()()()

 

「……それ以上撃っても無駄だ。お前の身体が無くなるぞ」

『なに、無くなる? ハハハそう言うならお前がトドメを刺してみろよNo.2の七光り』

「……っ」

 

ピクリと轟君は反応する。これは本気でやりたくなかった。

 

『親の七光りで生きてて恥ずかしくないのー⁉︎オレなら恥ずかしくて喉を掻き毟って死ぬね!』

「……違う」

 

ポツリと轟君は呟く。何度も言うけど現状思いついたのがコレなだけで決して彼を貶めようとは思っていない。いや本当に。

 

『Hey、どうした。怖がってるのかい七光りのお兄ちゃーん。オレ達をブッ飛ばしたいんだろ。オレ様をその炎で炙って痛め付けたいんだろう!』

「…そうだ」

 

『両脚をやられた、お前でも勝てる……氷結なんか捨てて かかってこい』

「やってやる…!」

 

『楽に殺しちゃつまらんだろう。ありったけの炎を放って、オレが苦しみもがいて、やられてく様を見るのが望みだったんだろう……さぁ来いよ!半分七光り坊ちゃん。それとも怖いのかい?』

 

 瞬間、ステージの氷山が溶け始める。それは彼の、轟君の炎を放つ準備段階を意味する。

そして、あまりの熱により蒸気の影に隠れた彼の口が開かれる。

 

野郎、ブッコロしてやる…!

 

 当然の結果である。逆鱗に触れ地雷原をタップダンス。火に油とガソリン、ヤバい燃料を混ぜ合わせたモノをブチまけるシンビオートの煽りスキルは凄まじいモノだと改めて認識させられる。

 

「一応言っておくけど違う、シンビオートが勝手に──いや、後は腹を括るしかないか…シンビオート!覚悟を決めろ!」

『あぁ、コレで失敗したら末代まで呪ってやるからな』

 

 うわ、恨みのレベルが半端じゃない。そう考えながら恐竜の姿を解いたシンビオートと僕はとてつもない熱量を帯びた轟君の()()()()()()()()()()()

 

『な、何ぃーーーーッ⁉︎ 来正&シンビオートまさかの正面突破ァアア!?盛り上げてくれるじゃねぇか!!』

『果たして無謀か、それとも考え有りきの策か…』

 

 マイク先生達の実況を他所に僕は彼に向かって走る。正直熱過ぎる。まだ距離があるのにここまで熱が届くとは……!

けど、子供の頃の炎と比べれば耐えられる!!

 

「真っ直ぐ向かって来るかよ……なら望み通りやってやる!」

 

「いいぞ焦凍ォォォオオオ!!お前の底力見せてやれぇええええええッッ!!」

 

 

 残り数メートル。炎が放たれれば確実に避けられない距離まで来た。それでも尚、轟君が焔を放たないのは確実に僕等を倒す為だと察せられる。

 

「それならこっちも真っ直ぐ、向かって、殴り倒すッッ!」

 

 接触する距離まで残り5m、4m、3m…!!

 

「燃え尽きろッッ!」

 

 その言葉と共に至近距離から凄まじい熱量を誇る轟君の爆炎が放たれた────

 

 

 

 

 

 

────"空中に向かって"

 

 

 

 

 

 

『な、何とぉぉおおおお!外したぁぁああッッ!轟焦凍 会心の一撃が明後日の方向に逸れてしまったぁぁあああ!!』

『……そうか、そう言う事か』

 

 

(っ、目の前が揺れて上手く立てない?…いや、体に力が入らないのか⁉︎)

 

「そう来ると思った。正面から来れば弱点である炎を使って来ると思っていた」

 

 轟君は驚愕が混じった表情でこちらを向く。彼ははこれまで炎と氷結を切り替えて使用していた。炎を攻撃に、氷結を防御や補助に君は断続的に使い続けて来た。

 

 けど、君はこれまで氷結と炎を交互に使って来た事があるのか?これまで炎を封印して来て、体温が急激に変化する事に耐性を持っているのか?

 

そこで僕は一つの疑問が浮かんだ。もしも彼の体温が激的に変化してしまうとすればどうなるのか?それも一度でなく、何度も何度も体温の上昇と低下を繰り返せばどうなるのか?

 

『そう言う事って、どゆこと?』

『轟の使う個性は身体にも少なからず影響を及ぼす。来正はそれを見越してわざと身体へ負担が大きい技を使わせるように誘導したんだよ」

 

先生達の言う通りだ。結果はご覧の通り、読みが当たった!

 

 

「寒暖差による疲労蓄積だとォ!これを狙っていたのかッッ!」

 

 

 エンデヴァーの大声が響く中、僕の片腕にシンビオートが纏わせ肥大化、硬化させていく。

あとついでに二人の仇も取らせてもらうッ!

 

「即興必殺……!」

黒曜剛拳(こくようごうけん)……!』

 

『「DESTROY(デストロイ)REVOLVER(リボルバァアア)!!」』

 

 

ゴォッ!!

 

 一撃目、黒の巨拳は轟君の腹部を捉え

 

「がっ────」

「撃ち…抜くッッ!!」

 

バゴォンッッ!!

 

 二撃目、パイルバンガーの如く拳が再び撃ち出され彼はステージの外へと吹き飛ばされた。

 

 

「そこまで!轟君場外、来正君 決勝戦進出!!」

 

 

WOOOOOOOOOOOOOOO!!

 

 

 拍手喝采、声援、僕の勝利を讃美する嵐が会場内に駆け巡る。

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

「負けたようだな」

「……あぁ」

 

 舞台と会場内を繋ぐ通路。そこに二人の男が居た。一人は来正恭成に負けも敗退となってしまった轟焦凍。もう一人はその父親でありヒーローでもあるエンデヴァーだ。

 

「気にする事は無い。今のお前より奴等の狡猾さが一枚上手(うわて)なだけだ、鍛えればすぐにでも奴等を超す事が───」

 

 そんな父親の言葉が耳に入っていないのか、轟焦凍はそのまま通路を進む。

 

「ガン無視はやめろ焦凍ォ!!」

「俺は……」

 

 ポツリと轟は呟く。

 

「俺は俺の行きたい道へ進む それだけだ」

「………」

 

 そんな言葉を残しそのまま観客席へ向かって歩いて行く。憑物が落ちた我が子を見てエンデヴァーはフンと鼻を鳴らす。

 

「成る程、『来正恭成』と言ったか……」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「YEAAAAAAAH!!サインだサインだエンデヴァーのサインだぁぁああッ!」

「フン、そんな色紙など幾らでもくれてやる」

 

「マジですか!?それなら観賞用と布教用にもう二枚サイン貰う事できますか?」

「欲張りだぞ貴様ァ!それよりもさっきの事は内密にしておけよ!」

 

「えっ、差し入れ(おにぎりとお茶)の事ですか?そもそも轟君信じないと思いますけど……まぁ、でもいいや。なんたってNo.2ヒーローのサインなんてオールマイト以上の価値がある国宝を貰っちゃったんですから!内密にしますよそりゃあ!ヒャア、流石エンデヴァーのサイン力みすぎィ!」

「むぅ……」

 ↑

(真正面から褒められる事に耐性の無いヒーロー)

 

「あ、それじゃそろそろ試合なので失礼します!あとヒーロー活動応援してますからー!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「全く……調子が狂う奴だ」

 

 思い起こされる数分も満たない出来事。エンデヴァーはくだらんと一蹴すると身体の炎を燻らせながら観客席へと足を運んだ。

 

 

 




〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭成』
相手のトラウマ(逆鱗)をわざと突きやがって…それが人間のやることかよォ!と卑劣な策を講じた主人公。ケモナーだがそれ以前にヒーローのファンである。

『シンビオート』
いつもの黒塗り畜生寄生生物。今回はいつもよりイキイキしてる気がした(小並感)

「小型肉食恐竜形態」
ラプトル(例としてディノニクスなど)をモデルに俊敏さ、流動体による筋肉から生み出されるパワーが特徴的な形態。しかし中の人が体勢的にキツイため持続性が低い。

「DESTROY・REVOLVER」
己の腕をパイルバンガーに見立て殴るシンプルな技。緑谷のSMASHと八百万の杭撃機を参考にしている。


『轟焦凍』
付け加えた圧縮言語キャラは何処へ行ったのか。負けこそしたものの、どこかスッキリしたような顔で観客席へ戻って行った。

「来正は…俺のお母さんだ」
Aクラスの皆『ッ⁉︎』

修羅場予測可能回避不可能。大体エンデヴァーが悪い。

「滅界凍原」
オリジナル必殺技。強力な冷気で周囲をツンドラ地帯に変える技。しかし後から炎で体温を戻す事を前提とした技である為、使った後は機動力や身体が凍傷になる等のデメリットが存在する。


『エンデヴァー』
ファンに対して塩対応をしていた所為か、真正面から凄く褒められる事に耐性が無い設定が生えてきた。

主人公「エンデヴァーいいよね……」
羽が生えた人(CV:中村○一)「いい……」

職場体験でこんな会話があったらいいなぁ。



〜〜用語紹介〜〜


『伝説の超野菜人』
一人用のPODや親父ィなどニコニコで人気なお方。ちなみに作者は旧と新どっちも好き。

『すごいパンチ』
元ネタはとあるシリーズより。削板軍覇の謎パンチ。大体これとおんなじくらいの威力出てると作者は思い込んでる。ちなみに原因は不明だが不発に終わった。

『ゴジラ、グレイモン系骨格』
ティラノサウルスの初期復元図のように尻尾を引き摺った垂直姿勢。恐竜よりは怪獣のイメージが強い。
ちなみに最近のティラノサウルス復元図が羽毛でフワフワしてる事にビックリした。
今での恐竜イメージががががが。



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