違う!シンビオートが勝手に!   作:ゴランド

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白き鋼鉄のXをやっていたら遅れました。スピーディーで面白過ぎるのがいけないんや。ガンヴォルトシリーズの中で一番心に来るものがあひました。
終盤の展開は正に悪魔(デーモン)の所業……!



職場体験編
32話 違う!シンビオートが勝手に職場体験を!


 

《最終チェック開始。いつでも大丈夫ですよ》

 

「分かった、起動開始と行こうかシンビオート」

『OK』

 

 彼の顔は徐々に黒の寄生生物に呑まれていく。肌色が黒に塗り潰された直後、トンと顔の側面を叩くとその上から無機質な黒のフェイスカバーが出現し瞳のような光がブワリと出現する。

 

「まず腕部から」

 

 片腕に力を込めるとメコリと力瘤が出現、続けて鎌のようなヒレが腕が飛び出る。

更にもう片方の腕に力を入れると手の甲から三本の爪のように伸びる黒の刃が形成される。

 

「耐久及び武器形成に問題無し」

「それでは続いてフットパーツのチェックを行います、適当に走ってみてください」

「走法に要望は?」

「全て一任します」

 

 足をほぐすように軽いステップを行うと、体勢を低くしながら駆け出した。ぐんぐんとスピードを上げて行き、そのまま大きく跳躍を行う。

直後、足裏にローラーが出現する。丸鋸のようにギュィインと甲高い音を立てながらビルが建ち並ぶ街道をスイスイと氷面を滑るスケート選手のように進んでいく。

 

「少し遊んでみよう」

 

 そう呟くと彼はビルの横スレスレを走行し始め、勢いを殺さずに建物の側面を地に見立て走り、駆け上がって行く。

 

「蜘蛛のように駆け上がり」

『羽虫のように飛ぶッ!』

 

 指先から伸ばした触手が別の建物に付着。ジャングルに棲まうターザンの如く黒のロープ(触手)を両手にビルの合間をスイングで突き抜けて行く。

 

「Foooooooooo!!!」

 

 直後触手を解除。そのまま片膝を地に付けズシンと音を立てながら着地を行った。

 

「ヒーロー着地!さぁ審査員の結果はいかに」

『審議の結果オール百点満点、パーフェクトだ』

 

 頭部を丸々覆うバイザーが後方へスライド。その下から来正恭生成とシンビオートが外へ解き放たれる。

 

「移動・着地時の音量減少共に脚部への衝撃緩和確認。シンビオートの崩壊も見られず……うん、上出来!」

『少し窮屈だが…いいねぇコイツは』

 

《お、上機嫌ですね。如何でしょうか!私のベイビー達は!》

「そりゃもう!とっても!最高だよ!」

 

 ヘッドギアから響く発目明の声に来正は興奮気味に返事を行う。今までの自分達が見た事のない景色が広がり、このような力を存分に発揮出来た事に彼等はテンションが上がっていた。

 

 コスチュームの力を侮っていた来正は縁の下の力持ちであるサポート科の人々の認識を改める。頭の中が実験や発明品ばかりの阿呆の集まりだと思うなかれ、彼等の力があってこそヒーローは輝けるのだ。

 

 

《それでは次は耐熱性のテストを行います。……と言うわけでちょっと溶解炉へ突っ込んで来てもらってよろしいでしょうか?》

「ぶっとばすよ?(即答)」

 

……やはりただの阿呆の集まりなのでは?

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「いやぁ、実に有意義でした。特に最後で来正さんが親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいくシーンは涙無しには見られませんでしたよ」

「ははは、何言ってんの。四方八方から火炎放射器で火達磨にして来たの間違いでしょ?」

『密閉空間で炎浴びせて来た事はまだ根に持ってるからな』

「ふ、二人とも落ち着いて」

 

 やぁ皆、主人公だよ。早々ですまないけど赤糸虫さんそこどいて。発目さんを殴れない。

 

『キョウセイの言う通りだ。今すぐにコマ切れにして一生子供が作れないような身体にしてやらないと気が済まないッ!』

「えっ、来正君流石にそれは……」

 

「違うよ?シンビオートが勝手に言った事であって僕はそんな事しようとは一切考えてないからね?」

 

 それに、発目さんだと己の手で人工的にベイビー(意味深)を作り出しそうな勢いだからなぁ……。

これが私の子供ですと言ってウルトロンを連れて来そうで怖い。

 

「……よし!申請書の方を提出完了しましたよ来正さん!」

「あ、そうなんだ。結構早いね」

「早いも何も、ネットの方で提出を済ませました。今の時代アナログでは無くデジタルの方が何かと便利ですからね」

 

 成る程。電子メールでやっておいた訳ね、流石サポート科なだけあって手慣れてるなぁ。

 

『それじゃあ打ち上げと行こう、夕食はチョコファウンテンにする?ポテト尽くし?ちなみにカラオケは駄目だ。鬱陶しくて堪らないッ!』「毛並みッ!もふもふッ!可愛いは正義ッ!なので猫カフェッ!!」

 

 猫カフェは外せない。それにスタンプカードもそろそろ溜まる頃合いだから打ち上げは絶対に猫ッ!これは決定事項だ(ドスの効いた声)

 

おや?赤糸虫さんが仲間になりたそうな目で見ている。

……よし!

 

「一緒に行く?」

「………?」

 

 いや何で赤糸虫さん周囲を見渡してるの?え、なに?もしかして見えない何かでも居るの⁉︎ 怖ッ、周り怪奇だらけなの⁉︎

 

「……も、もしかして僕に言ってる?」

「そうだよ?」

 

「───め、明ちょっと助k「あ、すみません今ちょっと立て込んでるので」明ィイイイッ!?」

 

『一々叫んで面倒臭い奴だな』

「で、どうする?土曜暇だったらだけど猫カフェ行く?」

 

「え、あ、う…うん、つ、都合が良かったら…あ!行く!行くよ勿論!」

「うん、分かったとりあえず落ち着こうか」

 

 何故そこまで取り乱すのかな?

……ッ!?まさか、赤糸虫さん猫が好きなのかッ!?かーっ、そうかそうか!好きで堪らないのか〜〜ッ!

いやー、でも仕方ないよね猫だから!猫好きは万国共通だからな〜〜〜ッ!

 

「おや、何やら楽しそうな様子!それはそうと朗報ですよ来正さん!」

「朗報?」

 

 朗報と言われてもピンと来ないけど……一体どうしたんだろう?

……あ、HUNTER×HUNTER再開したとか?

 

「実は向こう(サポート会社)から早くも返信が来まして、来正さんの武装関係について勝手ながら追加させて欲しいとのことですよ?」

「サ、サポート会社から?」

 

 つまり、どう言う事だってばよ…まるで意味が分からんぞ!説明しろ遊作…じゃなかった発目さん!

 

「意外にもサポート会社に来正さんのファンが一定数居たらしく、進んで作らせて欲しいと言う声が上がっているそうなんですよ」

「……あ〜〜、成る程ね」

 

 ネットで結構人気って耳郎さん達言ってたし……あ、やばい。にやけ顔が止まらない。口端が釣り上がって仕方ない。あー、すごい嬉しいなぁ!かーっ、辛いわー人気者って辛いわー(天狗鼻)

 

「そこで、来正さん直々に武装関係で何か欲しいモノとかはないでしょうか?」

 

「ん〜〜〜?そうだなぁ〜〜、盾があれば僕としては問題無いから()()()()()()()()()よ」

『おい、それでいいのか?』

 

 いいのいいの、サポート会社だしなんとかしてくれるでしょ(投げやり)専門的分野に長けている方に任せていれば全て上手く収まるんだよ。

 

「それでは、そう返しておきますね!」

「よし、ありがとうね発目さん。……ところで発目さんは打ち上げに参加する?」

「あ、すみません。私猫よりベイビー達弄っている方が好きなんで」

「は?」

「は?」

 

 この後、無茶苦茶殴り合いになった。でも仲良くなれた気がする。殴り合いの果てに友情って本当にあるもんなんだね。

……でもステゴロに対してパワードスーツ持ち出して来るの卑怯だと思うの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用禁止の身だ。落としたりするなよ」

 

 翌日、何事も無く僕等は駅に集合。各々コスチュームが内蔵されたケースと一週間分の着替えや生活用品の詰まった鞄を背負った皆の姿が目の前に広がっている。

あー、なんかワクワクするなぁ今から旅行する感じで。

 

「くれぐれも体験先のヒーローに失礼のないように。じゃあ行け」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 相澤先生に皆が返事をすると各々は行くべき列車に乗る為に改札口へと向かう。

さーて、それじゃ僕もそろそろ行こうかなっと。

 

「それじゃ緑谷君、麗日さん。僕こっちだから」 

『体験先であったら商売敵だ。その時に殺し合いになっても容赦しないからな』

「シンビオート!」

 

「相変わらずやね……」

「う、うん。気をつけてね」

 

 なんか若干引かれている気がするけど……まぁいいや。とにかくこれから一週間職場体験がんばるぞい!

 

「それじゃあね来正く……あ、ごめん。やっぱり言わせてもらっていい?」

「ん、どうしたの?麗日さん」

 

 

「いや、さっきから気になっていたんだけど……その巨大な荷物は何なの……?」

 

 と、緑谷君は僕が背負ったドでかいサムシングに指を差す。

…あ〜〜、これ指摘しちゃうかぁ。うん傍から見れば完璧に聖衣箱(クロスボックス)を背負ってるようにしか見えないから仕方ないよね……。

 

「うん、分からん。全然分からん」

「「えぇ……(呆れ)」」

 

 クソォ…!何が盾だよ!説明書を見させてもらったけど、これ(がわ)は辛うじて盾として残ってるけど機能的には鈍器に分類されると思うんだけど……しかも重いし!

 

「ま、まぁ…盾らしいし?別に危険物じゃないだろうから平気でしょ」

「それなら、いいんだけど……捕まったりしないように気をつけてね?」

 

 ん?それってどう言うk…あ、二人とも行っちゃったよ。

なんか捕まらないで〜とか言ってたけどハハハそんな馬鹿な。健康優良児であるこの僕がそんなヘマをする筈が……あ、ごめん。なんかシンビオート見たら自身無くなって来た。

 

とりあえず、そんな不安を抱えつつも列車に乗り込みに行きますよ〜イクイク。

 

『電車か…最近は汽笛が鳴らないのが増えたから喜ばしいぞ。嬉しみ』

「あー、始めて乗った時は電車内がシンビオート塗れになって大惨事だったからね……」

 

 ほんと、あの時は大変だった。それからシンビオート電車内では僕の体の中で籠っているようになってるから結果的に静かでいいんだけどね……と、結構席が空いてるなぁ。目的の場所には意外と時間掛かるみたいだから窓際を確保したいけど。

 

『……おい、見ろ。八百万がいるぞ』

「あ、本当だ…って、何やってるんだろアレ」

 

 八百万さんが席に座って……なんかあちこち探しているように見えるけど。よく分からないけど、高級チョコを貰った恩があるし友達だから助けるのは当たり前なんだよなぁ。

 

「やぁ、八百万さん。同じ電車とは奇遇だね」

「来正さん!」

『困ってるようだな。手を貸してやる……キョウセイがな』

 

 はいはい、シンビオートが手を貸さないのは薄々予想してたから。で、何をそんなキョロキョロと?……まさか、忘れ物をしちゃったとか⁉︎

 

「い、いえ。私このような列車の一般席に座るのは初めてで…いささか勝手が分からずにいまして……」

「あー……そういう」

 

 確か八百万さんってセレブなんだっけか。やっぱり移動手段って長い黒のリムジンなのかな?

 

「…よかったら教えようか?電車乗るの慣れてるし」

「そ、そうですか!事前に勉強していたのですがやはり実物は異なっておりまして……えーと肘掛は何処に?」

「ないです」

 

「そ、それでしたらレッグリストは…」

「ないです」

 

「リ、リクライニンg「ないです(無慈悲)」

『勉強したのが全く無意味だったな』

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、(わたくし)は…駄目な人……」

「シンビオートォ!謝れ!今すぐに弁明と謝罪を!」

 

 あぁ、もう!周りの人達が比較的少ないからいいものを、もしこの場面をクラスメイトに見られたら面倒臭い事に───

 

「あれれれーー?A組が女子を泣かせてるよォ〜?僕達より上位成績なのにおかしいなぁーーー⁉︎」

 

「もっと拗れそうなのが来ちゃった!!?」

『うわ でた』

 

 何故ここでB組ッ!?しかもそのB組屈指の面倒臭さと雄英で(もっぱ)ら評判の物間君がエントリー⁉︎

 

「酷いなぁ。泣かせてるのはそっちの方じゃないか、こんなのが僕に勝ったなんて未だ信じられないよ!あぁ全く、ヒーローとして情け無く思うy「お前の方が情け無いぞ物間」ピャッ」

 

 あ、背後から首筋に強めの手刀で崩れた。堕ちたな(確信)

そんな手刀をかましたB組の女子は物間君を……あ、隣の席に放り投げた。

 

「悪いな、ちょっとアイツお前に負けてから色々とライバル心?みたいなのが芽生えて更に扱い辛くなってな」

 

「ライバル心…」

『別にライバルでもないから困るぞ』

 

 う〜〜ん、何というか。コミックやアニメなら普通は終盤辺りでぶつかる強敵ポジションなんだけどなぁ、コピーする能力ってかなり厄介だし。

 

「あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。僕は来正恭成、こっちはシンビオート」

『Nice to meet you』

 

「別にそんな畏まらなくてもいいよ。私は拳藤一佳、そっちは八百万だろ?体育祭で活躍してたから知ってるよ……ほら、泣くなよ八百万」

「うぅ…情け無い所を……申し訳ありませんでした」

 

 おお、何というか姐さんキャラだ。皆を率先して引っ張る器の広い委員長タイプ。ウチには居ない感じで新鮮だなぁ……。

 

「何というかさ。気軽に話してくれて大丈夫だよ」

 

「あ、それ言っちゃうと……」

『そうかい、それなら機内飲料を駆け足で買ってきてもらおうか。オラあくしろよ』

 

「……なぁ、こいつ」

「拳藤さん、この世には別ベクトルで物間君以上に面倒臭い存在が居るんだよ(遠い目)」

 

 あ、拳藤さんが頭抱えた。大丈夫?秘蔵の動物アルバム見る?

……え、見ない?あっはい、そうですか(´・ω・`)

 

「ノコノコ、とても面白い子ノコ」

「ハハハそう見える?……えっ、誰?」

 

 ナチュラルに隣座ってるけど誰なのこの子!?前髪で目元が見えないからなのか少し不気味だ……!

 

「あぁ、B組(ウチん所)の小森希乃子だよ。シンビオートに興味津々らしくてね」

「へー、シンビオートに?変わってるなぁ……」

 

 拳藤さんが紹介してくれた小森さんに視線を向ける。A組とはまた違ったベクトルの人物に僕は感心を覚える。MARVELとかDCとかではこう言うキャラは見かけなかったからなぁ。

 

「シンビオート、キノコ好きノコ?」

『うん、大好きSA』(チャー研風)

「あ、僕も好きだよ(便乗)」

 

「じゃあ、"きのこの山脈(さんみゃく)"と"たけのこの(さと)"はどっちが好きノコ?」

『きのこだな』

「僕もきのこの山脈かな。あのクラッカーとチョコの組み合わせが癖になっt「今日から来正は盟友ノコ!」早ッ!?」

 

 両手を掴んでブンブンと振って来る小森さんに僕はただ、圧倒される。なんか色々と凄いねこの娘。

 

「八百万はキノコ山脈好き?」

「えっとすみません、実は食べた事が無くて」

「それならこれから好きになれば良いノコ!ほらほら、きのこチョコ沢山お食べ!」

 

 八百万さんの口内へチョコが押し込まれるそりゃ、ん〜新手の拷問方法か何かかな?

 

「と、ところで小森さんは何処のヒーロー事務所に?(話題転換)」

「私はメディア系の所を選んだの。目指すはアイドルヒーローだノコ!」

 

 アイドルヒーロー……Tiger&Bunnyのブルーローズみたいなのを目指しているのかな。

それにしても、キノコ系アイドル……歌って踊ってる最中に豹変したりしないよね?危ないキノコをキメたりしないよね?

 

『アイドル……オレもアイドルになれるか?』

「シンビオートがアイドル…?ハッ」(鼻で笑う)

『は?』

 

 いや、こんな這い寄る神話系アイドルのショゴス擬きがお茶の間に出れる訳ないって分かり切ってるんだよなぁ……。

全国報道されてる場でやらかした事今でも根に持ってるからなシンビオートこの野郎(半ギレ)

 

「メディア系ですか、実は私はウワバミの元で職場体験を」

「お、奇遇だね。私もだよ」

「拳藤さんもですか‼︎」

 

「へー、こんな事あるんだね…と、言っても同じ事務所に行くんだから同じ電車に乗っててもおかしくないかー」

「そのとーり。ちなみに来正は何処?」

「僕はギャングオルカ事務所だよ小森さん。対犯罪敵を想定した所を希望したんだ」

 

 僕がそう告げると「おー」と小森さんは口を開いた。え、なにそのリアクション?

 

「これはとっても驚いた。こっちも同じ職場先だとは思わなかったノコ」

 

 え……もしかして小森さん僕と同じくギャングオルカ事務所なの!?

 

「え?違うけど」

「あ、そうなんだ……でも同じ職場って」

 

「私じゃなくて、そっちの方に居る」

 

 と、指をさした方向には未だ気絶している物間君が────え?彼なの?

 

『は? おい今すぐにこの物真似クソ野郎を窓の外へ放り投げるぞ』

「シンビオート⁉︎まずいですよ!」

 

「いやいや、そっちじゃなくてさらに奥の方の席に座って居る」

「え?奥の方にって言われても………あっ」

 

 僕が小森さんの指差した方向。倒れた物間君よりも先に向けられた箇所には……座席からひょっこりと顔を出してコチラを見つめる赤糸虫さんの姿があった。

 

………えっ、マジで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか赤糸虫さんが僕と同じ事務所先だとは思わなかったよ」

『こりゃたまげたな』

「う、うん……偶々指名が来ていて…」

 

 あの後、拳藤さん達と別れ最寄り駅に降りた僕達は街道を歩いていた……そう言えば物間君あの後ずっと気絶してたけど大丈夫なのかな?目的の駅に降り過ごしてないといいんだけど。

 

……と言うか

 

「なんで赤糸虫さん僕の後方3mを常にキープし続けてるの?」

「いっ、いや!?べ別に、そう言う……ちょっと相手の後ろを歩くのが好きだから!」

「あ、うん」

『なんだコイツ』

 

 シンビオートがそう言うのも仕方のない事だ。初対面時と比べてものすごくビクビクしている印象だ。何でそんな態度を取っているのか僕には全く分からな────あ、待てよ?

もしかして体育祭の時に超パワーで殴ったからそれがトラウマになっているんじゃ(震え声)

 

「ごめんなさい…ほんとごめんなさい……」ブツブツ

「い、いやよく分からないけど気にしなくていいからね?」

『面倒臭いなコイツ等』

 

 うーん、よく分からないけど どうやら赤糸虫さんが僕を避けてる理由は別にあるようだ。

……と、そんな事をしているウチに目的地に到着した。

 

「ここが……」

「うん。敵っぽい見た目ランキング3位にしてヒーロービルボードチャートJP10位のギャングオルカヒーロー事務所!」

 

 ゴゴゴゴゴゴと今にも威圧感を表す擬音が出てきそうな程の迫力だ。これがプレッシャーと言うものか……くっ!

 

「……来正君、何してるの?」

『たまに頭悪くなるだけだ。気にするな』

 

 ねぇ知ってる?乗ってくれないと精神的ダメージが凄まじいんだよ?スルーされるのが一番辛いんだよ?

 

「と、とにかく……これからシンビオートは余計な事は喋らないでね?」

『……OK(不服)』

 

 ヨシ!(現場猫) これで不穏分子は排除完了ッ!待ってろギャング・オルカ!そのシャチ肌を撫でてやるからなぁ!

と言うわけでイクゾー! デッデッデデデデ!! カーン!(扉が開く音)

 

 

 

「「「「「「「「ようこそ おいでくださいました!」」」」」」」」

 

 

 そんな意気揚々と扉を開けた僕達を迎えたのは、腕に取り付けられた銃砲をこちらに向けた数十人もの黒尽くめ達だった。

 

…………?????(宇宙猫状態

 

「ん、……ん゛!?え、何?どう言う状況なのこれ?」

「」←(放心)

 

 あ、駄目だ。赤糸虫さんに至っては魂が何処かへ飛んでいってしまってる。

……おや?一人が僕達の元に寄って来たけど一体何の用かn

 

「申し上げます、死ね!」

「え?」

 

BANG!!

 

 直後、真正面にいた全身黒スーツの戦闘員らしき人物の銃砲から何かが放たれ────って⁉︎

 

「危な────ッ!」

「うきゃあ⁉︎」

 

 彼女を押し倒し、迫り来る弾丸を回避!そのまま受付カウンターを盾にし身体を滑り込ませるように隠れるッ!!

 

「撃て撃てェーーー!蜂の巣にしてやれーーーーっ!!」

「うおおおおおお!?」

 

BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!

 

 やばい!やばいやばいやばい⁉︎何なのこのアメリカンギャングの抗争に巻き込まれたような状況!と言うか顔真っ赤にしてないで戻って来て赤糸虫さん!

 

「───はっ!?ど、どうなってるの⁉︎ここヒーロー事務所じゃ…」

「分からないッ!分からないけど、なんとか打開しないと……ってあれ?シンビオートは?」

 

 さっきから静かだけど、どうした?まさか敵の攻撃を受けたのか⁉︎

 

『……いや、余計な事は喋るなと言われたから』

「あ、うん。ごめん余計な事喋っていいよ」

『OK(喰い気味)!さぁ、あいつ等をどう調理してジュースにしてやろうか!』

 

 そんな辺り一面鉄の匂いがするトマトジュース(ピューレ状)は遠慮願いたいよ。いや、そんな冗談はともかくこの窮地を脱さないといけない。それに加えて隣の赤糸虫さんはヒーローだけど女の子だ。優先的に守る必要がある。

 

この窮地を乗り切る、赤糸虫さんも守る。両方やらなくちゃいけないのが『ヒーロー』のツライところだなぁ……。

 

「フハハハ!人間共よ!恐れ慄くが良い!フハh『うっせぇ!』ぐぼぁ⁉︎」

『ハッ、大した事ないな!キョウセイ、オレ様が何か投げて迎撃する。その間に何か考えろ』

 

 無論、任せてシンビオート。

……と言ってもやる事は外部連絡(通報)一択だけどね!免許も無ければ戦闘許可を得てないし。

 

「よしスマホを……あれ?無い⁉︎無いよォ!スマホ無いよォ⁉︎」

「えっ……あ、ボクのも無い⁉︎」

 

 嘘でしょ!?此処に来るまでちゃんと持ってた筈だよ?なのにどうして────ん、待てよ?

 

「あのさ、シンビオート。さっき敵の一体倒した時に何を投げた?」

『何ってそりゃスマホだ。最近のは頑丈に出来てるお陰でそれぞれので二人倒せたぞ。ほら褒め称えろ』

 

「ハハッ!面白い奴め、何してんだこの阿保ッ!?

 

 馬鹿じゃねぇの!?馬鹿じゃねぇの!?(二回目) 何で大事な連絡手段を武器に応用してるの⁉︎ あぁ、クソ!こうなったらプラン変更だ!

 

「よし赤糸虫さん!"助けてー"だ!」

「た、助けて?」

『どう言う事か説明しろキョウセイ』

 

「うん、まずは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃ち方やめェ!」

「ハッ!話題のヒーロー候補も大した事ないな!シャチョーに連絡しろ!ヤツ等はビビって手も足も出な───「助けてぇぇええ!」……ん?」

 

 銃弾の雨霰が止み、受付カウンターの影から頭から血を流した患者を背負う赤糸虫が現れる。

 

「助けてぇーー!来正君がッ…!来正君が大怪我をッ!!」

『クソッ、出血多量だ!オイお前等、キョウセイを助けろ!』

 

 そんな必死の形相に戦闘員達はざわざわと騒ぎ始める。

 

「何ーーーッ!?頭から血を流してるぞ⁉︎」

「なんで非殺傷のセメント弾でダメージ食らってるんだアイツ!くそっ、おい!誰か個性で傷を塞いで…」

「……あれ?それじゃ何でアイツは頭から血を流して……?」

 

 騒めく戦闘員達だったが、その中で一部疑問に思う者が現れる。

何故、あのような怪我を負ったのか? そして何故、頭から血を流しているにも関わらず応急処置を行わずに堂々と前に出て来たのか?

 

……その答えは

 

「助けてェ!助けてぇえ!助け……てぇぇぇええいッ!!」

 

「なっ───投げ飛ばしただとォ!?」

 

 演技だったからだ───って、背中痛ァ!?赤糸虫さん強く投げ飛ばし過ぎィ!数名巻き込んだけどもう少し着地の事考えて!

……って、そう言ってる暇はないか!

 

「くそっ、演技か!騙しやがって!」

 

「シンビオート、マスクッ!!」

『騙される方が悪いのさ!まんまと出し抜かれた過去の自分を恨むんだな!』

 

 直後、近くの戦闘員を全身に纏わり付いたシンビオートが掴むとヌンチャンクの如く振り回し他の戦闘員達を薙ぎ倒して行く。

よしそのまま……お、足元に僕等のスマホ落ちてんじゃーん。

 

「赤糸虫さん!外部へ連絡を!」

「うん、分かっ────後ろ!」

 

 赤糸虫さんへスマホを投げ渡した瞬間、そう告げられる。

後ろ?後ろに何か───って、うおおおおおお!?またセメント弾を撃って来た!?

 

『fuck、クソ面倒臭いな。いくらオレが強くても当たれば動けなくなるぞ』

「せめて盾があれば楽なんだけど───って、そう言えばあったよ盾が!赤糸虫さん!君のとこにあるデカイ箱を!」

 

「こ、これ?分かった!受け……取ってぇえ!」

 

 僕が赤糸虫さんに声をかけた直後、彼女は箱を投げ渡して来た。って、投げれるの!?それかなりの重量だけど!?

まぁ、それはともかく でかした!

 

チュートリアルさえしてないってのに実戦で初使用なんて…あぁ、あとで怒られないといいなぁっ!(投げやり)

 

「新武装のお披露目だッ!そっちが攻撃仕掛けて来たから正当防衛って事で痛いのは許してよね!」

 

 と、誰に向けて言い放ってるか自分でも分からない言い訳を

口にしながらケースのロック解除を行う。

すると、勢い良くケースの中から直径1m程の"盾らしき物体"が飛び出して来る。

 

「なんだありゃ!鈍器か⁉︎」

「いや、墓石!?」

 

「盾だよッ!!」

『盾って言う割にはかなりの重量だがな』

 

 十字架を模したような形状をした盾。それを手にした僕はそれに取り付けられている特殊挿入口にシンビオートの触手を押し込んだ。

 

「アイツ、謎の武器で何をして……!」

「撃て!何をするか分からないぞ!」

「その前に無力化するんだ!いや此処荒らされたらシャチョーにシメられるから勘弁して!(切実)」

「止めろォ!ヤツを止めろォ!!(必死)」

 

 飛んでくるセメント弾を手にした盾を前に出し、防ぐ。だからこれは盾と言っているだろうに……!いや、僕自身も盾かどうか分からなくなって来たけどさぁ!

 

まぁいいや、もう既にチャージは完了したしね。

 

『接続完了、全弾丸装填』

GUNGRAVE(ガングレイブ)UNIT起動開始」

 

 直後、僕が手にした巨大な盾はガシャガシャと形状を変えて行く。

これこそサポート会社に武装を一任してしまった結果、送られてきた頭がおかしくなりそうな盾(と言うなの何か)!

 

その名も『過剰武装多目的巨盾型特殊機構兵器』

Desperado(デスペラード)

 

 色々言いたい事があるけど、今は取り込み中ので一つだけに絞ってして言わせてもらう。

 

「武装にも限度があるでしょうがぁぁああああッッ!!(マジギレ)」

 

BRRRRRRRRRTTTTTTTTTTTTTTTTTT!!

 

 直後、盾に仕込まれた機関銃(ミニガン)から放たれる弾丸状のシンビオートが次々と戦闘員達に向けて放たれる。

 

……うん、やっぱりコレ盾じゃねぇわ。トライガンのパニッシャーだよね?形状が十字架になってる辺りから嫌な予感してたけどトンデモ兵器だよねコレ。下手したら銃刀法とかに引っかかりそうだなぁ(震え声)

 

「なんだコイツ⁉︎銃を持ってるぞ!」

「盾です(震え声)」

「学生なのにそんなの持っていいのか⁉︎」

「盾だからへーきへーき(震え声)」

 

 それに分類としてはこの武装は弾丸では無くあくまでシンビオートを撃ち出す為の射出機(カタパルト)となっているので犯罪にもならないし、ヒーローが持っていても何ら問題は無いのである。

 

……と、説明書に書いてあった。

うん、まぁそれはそれとして。

 

「もう既に警察とヒーローへの連絡は済んでいる、大人しく投降しろ」

『投降しないならボーナスゲーム再開だ 一人10点で骨をへし折ったらプラスでもう10点。眼球潰せば30点で皮を剥いだら50点だ』

「もう一度言う!お願いだから大人しく投降しろォ!(懇願)」

 

 いやホント、そっちの生命に関わる事だから大人しくヒーローに捕まって⁉︎お願いだから!これ以上罪を重ねたくないの!

 

「おい、どうする?」

「いやでもシャチョーがそんな事を許s「そこまでだ」ッ!シャチョー!」

 

 僕と赤糸虫さんは咄嗟に声が聴こえてきた方向に視線を移す。そこには荒々しい海を征し、食物連鎖の連鎖の頂点に立つ捕食者の姿が在った。

そしてその捕食者であり僕等が求めていた人物であるヒーロー『ギャング・オルカ』は凶悪な牙が並ぶ口を開いた。

 

 

「来たな、便所のカスにも劣る薄鈍共ッッ!!」

 

「「ッ!!」」

 

 ビリビリと放たれるプレッシャー、僕等はただその強者の放つ圧に身体の自由を奪われてしまう。

 

「来正恭成ーーーーッ!!貴様が此処に来た理由はなんだッ!」

「サーッ!此処に来たのは心身共々徹底的にシゴキ上げ、より強いヒーローとなる為ですッ!」

「来正君!?」

 

 赤糸虫さんが隣で驚愕しているけど……ごめん!今、フォローできる余裕が無いんだ許して欲しい!

 

「あのような危険物を扱うような敵予備軍がヒーローになれると思ってるのかァ!!」

「ノーサー!全く持ってオルカの言う通りでありますッ!」

「それを知った上での判断が屋内での乱射か!気に入った!お前は徹底的にシゴキ、性根を叩き直してやろう!拒否権は無い、いいなッ!」

「サーッ!イェッサー!むしろご褒美でありますサーッ!」

 

「来正君!?「赤糸虫知朱ッ!貴様は何をしに此処に来たッ!」

「えっ?あっ、その、職場体験に……」

「指導ーーーッ!!」

 

 赤糸虫さんが投げ飛ばされたーーと、思ったら戦闘員達にキャッチされた。マスクを外しているけど、あの人達何処かで見たかと思ったらオルカのサイドキックの面々だ……。

 

『おい、なんであのシャチ相手にかしこまってるんだ』

「くれぐれも言っておくけど喧嘩売るのはやめなよシンビオート。オルカは音波攻撃得意だから相性最悪だ」

 

 そう告げると不服そうな表情を見せ、渋々と体の中へ引き篭もってしまった。この職場体験を通して性根が改善してくれればなと思っているとギャングオルカから号令が掛かる。

 

「職場体験だからと言って俺は容赦はせん!早速コスチュームに着替えて来い!いいなッ!」

 

 そう言うとギャングオルカは外へ出て行く。口は悪いけどあの人は僕等をヒーローの一人として見てくれているのだと言う意思を感じる。

期待に応えられるように、そしてより上へ目指す為に僕は改めて気合を入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、さっきは何も言わずにセメント弾撃ってごめんよ」

「あっ、お疲れ様ですッ!先程の戦闘員の方ですよね!こちらも乱射してすみませんでした」

 

「いいよ、気にしないで。それにしてもサイドキック相手に目玉とか皮剥とかを堂々と言えるとは……さすが噂に違わぬヒーロー生だね!」

 

「違うんです!あれはシンビオートが勝手に!!」

 

 

 




 

次回より職場体験編に突入。でも番外編を投稿したり、新しいネタ思いついたから色々試し書きしたりと更新が遅れるかもしれません。


『赤糸虫知朱』
ギャングオルカ事務所を選んだ理由は発目にオススメ(故意100%有)され流れるままに。
実は職場体験編は来正では無く赤糸虫くんちゃん中心になるかも。

『物間寧人』
B組の雄英の負の面とも呼ばれるキャラ。来正&シンビオートをライバル視。ちなみにそのまま気絶したまま目的地への最寄り駅を逃したのは言うまでもない。

『拳藤一佳』
個性はミズ・マーベルっぽいB組の姉御キャラ。サイドテールで照れ隠しですぐに手が出るようなキャラクターいいよね……。

『小森希乃子』
キノコを愛するB組女子生徒。前髪で目が見えないキャラって大体可愛いと相場が決まってるけどこの娘は大当たり中の大当たり。
隠キャかと思いきや陽キャでアイドル目指してるなんてファンになるしかないじゃないか……(サイリウム購入)

『ギャングオルカ』
主人公達の実力を測る為にわざわざサイドキック達をスタンバらせておきました。ヒーローになるのならばそれ相応の経験を積ませる必要があると考えた結果がこれである。



〜〜用語紹介〜〜

『助けて』
元ネタは『マイティ・ソー バトルロイヤル』。
ソーとロキが協力して敵に近づく作戦であり、その内容はソーがロキを背負いながら助けを懇願。相手に情に訴えながら接近しそのままロキをブン投げると言うほぼ勢いだけの策。
ちなみに撮影当日に思いついたアドリブらしい。


要らないと思いますが挿絵描きました。
 ↓


【挿絵表示】


描いてみた結果アーカムナイトっぽい?




『過剰武装多目的巨盾型特殊機構兵器』
Desperado(デスペラード)

基礎の巨盾形態に加え、搭載されたGUNGRAVE UNITにより武装形態へ変形。各所に埋め込められた

・アサルトライフル
・機関銃(ミニガン)
・単発式狙撃銃
・グレネードランチャー
・射出型アンカーボルト
・シザーグラップル(ハサミ)

と言った武装が状況に応じ展開される事で低威力として懸念されていた黒指弾の強化を図っている。
ちなみに銃刀法に引っかかりそうだがあくまでシンビオートを組み込み、撃ち出す装置であるので銃刀法に引っかからない(と願いたい)
アウト寄りのセーフである(震え声)

モチーフはトライガンより『パニッシャー』さらにガングレイブから『デス・ホーラー』。デカくて武器をこれでもかと積み込んだロマンの塊。


作者は法律面はダメダメなので粗があるのは許して(懇願)


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