違う!シンビオートが勝手に!   作:ゴランド

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リアルがめちゃくちゃ忙しい…、投稿頻度がクソ遅くなって申し訳ありません。
というわけで此処からヒーロー殺し編に突入します。


41話 違う!シンビオートが保須市に!

beep!beep!beep!

 

 晴天が広がる空に甲高い音が鳴り響く。アラームが轟く直後、銀行からそれ以上の爆音が広がる。

 

「よし!今の内だズラかれッ!」

「ちょっと待て 金を積み込むのが先だ!」

 

 ワケも分からずに逃げ惑う人々の中に一際目立つ集団がトラックに大量の金を詰め込んでいる。約6人の(ヴィラン)がトラックへと乗り込むと荒い運転で発進した。

 

「大した事なかったな!」

「所詮ヒーロー殺しが現れても、俺達に敵う奴等なんか居ねーよ!」

「ハハハ……あ、何だアレ?」

 

 運転席にて軽口を叩く敵。そんな彼等だったが前方に何かが見えた直後、目の前が白一色へと塗り潰され音が消え失せる。

 

「「はぁぁあ!?」」

 

 一瞬の出来事に対応出来ず、運転手はハンドル操作を誤りトラックは横転する事となった。

 

「ッ、なんだ!何が起きた!?」

「わからねぇよ…!いきなり前が見えなくなって…!」

 

 困惑する彼等に追い討ちをかけるかの如く、トラックのボディがバキバキと音を立てながら引き剥がされる。

敵達の目に映ったのは車体をスクラップにして行く歩行戦車、そしてソレの上に立つ1人の女性ヒーローだった。

 

「敵グループの2名確保。抵抗すれば全体の10%の骨を折る事になるぞ」

 

 脅し文句と共に手に収められた銃火器を突き付けられた2人は即座に降参の意を込めた挙手を行う。約200ある骨の内、20本へし折ると言われれば仕方の無い事かもしれない。

 

「非致死性とは言えどヴィラン相手に砲弾撃ち込むとは…」

「相変わらず鬼だなシルバー・マルテース」

「馬鹿野郎。そこがイイんじゃないか」

「えっ」

 

 そんな彼女が保有する四足歩行戦車の陰から現れる複数の戦闘員(サイドキック)。見てくれは悪の女幹部とその部下達だがちゃんとしたヒーローである。

 

「お前達は車体内に潜んでいる敵達を……っ!」

 

 その瞬間、後方の箱型の荷台から巨大な腕が出現し戦車を殴り飛ばした。

 

「やりやがったなテメェ等ッ!」

 

 複数の腕を持つ巨体な異形系個性の敵が怒号と共にトラックより降りて来る。

シルバー・マルテースの自己負担(ポケットマネー)による歩行戦車と巨大ヴィランが戦闘を行う傍らで何人かの敵が逃走を始めた。

 

「今だ、行け行け!アイツ等に気を取られてる内に───」

「何処へ行く気だ?」

 

 敵達の背後から響く声。冥界の怪物が頭を掴み地に叩き付けた。双眸から放たれる威圧に怯えながらも敵は声を振り絞る。

 

「ギャ…ギャング・オルカ……ッ⁉︎」

「まさかとは思うが我々から逃げられると思ったのか?」

 

 組み伏せられる敵達。パワーが上である異形系相手に力で勝てる道理は無く、捕まった敵達には諦めの選択肢しか残されていなかった。

 

「残って居る敵は…!」

 

 そう言いかけたオルカの横から素早い何かが飛び出した。己が視界に映ったのは猛スピードで自転車を駆ける敵の1人であった。

 

「速っ⁉︎」

「自転車ってあんなスピード出たか⁉︎」

 

 サイドキック達が驚愕する中、二輪に跨る敵が嘲笑う。

 

「俺の個性は『サイクリング』ッ!一度(ひとたび)自転車に乗れば俺は無敵のロードバイカーと化すッ!」

「逃すかッ!」

 

 シルバーマルテースが放つ銃弾か自転車に跨る敵に向かって伸びるが、軽い身のこなしによって避けられてしまう。

 

「避けた⁉︎」

「なんだあの変態立体起動⁉︎」

「速度制限に縛られず、己が手脚の一部のように動かせる高い自転車こそ至高ッ!ヒーロー共のなまっちょろい攻撃なんぞ屁でもないわッ!」

 

 ギュイイ!とタイヤを鳴らし敵は更に自転車の速度を上げる。誰も追い付く事の出来ないスピードで全てを置いてけぼりにして行く。

※猛スピードによる自転車運転は違反の対象になるので悪しからず。

 

「ハハハ!抜いた!抜いたッ!俺は全てを抜き去ったッ!仲間達には悪いが金は全て俺の物だッ!」

「でも今時現金なんて古過ぎない?今は電子マネーの時代だよ」

「は?」

 

 横を向く。そこにはターザンの如き単振り子運動で自身と同程度のスピードで移動する赤いマスクのヒーローが居た。

 

「やぁこんにちは」

「え?」

「これ持ってて」

 

 そのヒーロー、Vスパイダーが一気前へ飛び出たかと思うと前方正面の位置に降り立つ。急な出来事に敵はその場に急停車。彼女(Vスパイダー)の手に収められた糸が胸元に張り付けられる。

 

「え、あ?ハァーーーーーーーッ!?」

 

 粘着性を持つ蜘蛛糸によって上方へ向かって引き上げられる敵。Vスパイダーは敵が持っていた頭陀袋を「よっ」と呟きながら受け止める。

 

「こっちもOK。MJ、シャチョー達の方は?」

《既に制圧済のようです》

「ん、了解。それじゃボク達も早く行こう…と思ったけど、この自転車どうしよう?」

 

 目の前にある敵が使っていたロードバイクを持ち上げ、Vスパイダーこと赤糸虫知朱は対処に困っていた。

 

「とりあえずウェブで壁に張り付けておくのでいいかな?」

《……検索完了。これと一致する自転車に盗難届が提出されています》

「え゛ あー、えーと……ねぇー!すみません誰かー!ペン持ってる人居るー?」

 

 周囲の人々に声を掛けを行う彼女。そんな彼女の元に連絡を知らせる為の通知が鳴る。

 

《チズ、ギャング・オルカより通信が入っています》

「え、シャチョーが?とりあえず繋げてMJ」

『スパイダー、そちらの敵が持っている袋に現金は入っていたか?』

「あー、それならハイ……ちょっと待ってください」

 

 ギャング・オルカの指示通り敵が持っていた袋の中身を確認する。そこには乱雑となっていながらも大量の貨幣が詰め込まれていた。

 

「シャチョー、現金ならちゃんと入って…」

《スキャン開始───鑑査の結果、この袋に入ってる紙幣は全て巧妙に造られた偽物です》

「偽物!?」

「オイ、偽物ってどう言う事だ!……いや待て、アイツかクソッ!」

 

 宙吊りとなった敵が苦言を吐き捨てる様子に赤糸虫は勿論の事、通話越しにオルカが苛立ちの声を上げる。

 

『どうやら相手側は一枚上手だったようだな』

「え、えっと……ボクはどうすれば良いんですかシャチョー」

『捕獲した敵については警察へ引き渡せ。後は自分の頭で考えろ』

 

 逃したであろう本命の敵はどうするのか?そのような赤糸虫の疑問に鼻を鳴らす。

 

『そちらについては既に手配済みだ…ただ、奴等がヘマをしなければ良いんだがな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な奴等だ。あんな堂々と街中を逃げるからヒーロー共に捕まるんだよ」

 

 ガシャン、と音を立てながら男はビルの屋上へ足を踏み入れる。敵グループの1人だった男は自分以外の者を囮に使い、本物の現金が入った袋を手に逃亡を試みていた。

 

最近になってこの区域、保須市はヒーロー殺しによる影響で個性犯罪が減少しており、そこに目をつけた敵達は徒党を組み銀行を襲撃した。

だからといってヒーロー達がそれを許す筈も無く自分以外は全員確保されると言った結果に終わる。

 

「ラッキーだな」

 

 男は喜んだ。本来は盗んだ金は山分けと決めていたのだが、数が減ってくれたお陰で現金は全て自分のモノとなった。嬉しい誤算だ。

 

「ありがとう、そしてじゃあなマヌケなヒーロー共……⁉︎」

 

 ヒーローに感謝の言葉を述べながらその場を後にしようとしたその時、言葉が途切れる。

 

「………」

 

 敵の前方に黒い人型のナニカが壁に張り付き、こちらを凝視していた。ジッとコチラを何も言わずに視ていたのだ。

 

まるで獲物を見定める獣の如く不気味な静けさを醸し出していたヒーローを前に敵は袋から手を放し、降参の意を示すかのように両手を挙げる。

 

「ハイハイ降参──するわきゃねぇだろがッ!

 

 服の下から拳銃を取り出すと同時に発砲を行う。

だが黒のコスチュームに身を包んだヒーローは飛び退き、視界から消える。

敵は物陰に身を潜めながら己の個性『偽物複製(レプリカコピー)*1を発動させ、作り出した弾丸を銃に装填する。

 

「何処だ!何処へ行きやがった…ッ!」

 

 周囲を見渡す敵。確かにそこに居る筈なのに誰も居ない、が音が聴こえる。

 

「クソ‼︎」

 

 縦横無尽に飛び回る相手に対し弾丸を撃ち込むが、どれも外れてしまう。急かす気持ちが勝ってしまったのか、相手が貯水タンクの裏側に隠れて居るのにも関わらず敵は尚も発砲を続けてしまう。

 

FLUSH(パシャァァッ!)!!

 

「う、おっ⁉︎」

 

 タンクの水を浴び、頭が冷えたのか本物の現金が詰まった袋を放り出す。金と己の身を天秤に掛けて保身を選んだヴィランは急足でヒーローから逃れようとするが、頭上から襲い掛かるヒーローは蝙蝠のように翼を模したマント(皮膜もどき)を広げ、敵の視界を遮る。

 

「おあ!?」

「フッ!」

 

 手に持った拳銃を弾き落とし、膝、腹と的確にダメージを与えた後に懐へ潜り込み投げ技を仕掛ける。

地面に叩きつけられる敵。

 

しかしその身を転がす先には壊れた柵。破砕音を鳴らしながらヴィランが屋上から飛び出てしまうその瞬間、グイッと指先から伸びる黒い紐状の物体が伸び、敵を拘束する。

 

「……」

「た、助けてくれ……!」

 

 絶妙なバランスで敵を捕縛したヒーロー、VENOM(ヴェノム)。そんな彼の手によって命が握られているヴィランは固い地面が広がる下へと落ちないよう身体を強張らせる。

 

「ま、待ってくれ…!頼む!」

 

 ガクンと身体の角度が傾き、眼前にアスファルト製の道路が近付いた。もはや自分の力で何とかなるものでは無い。

 

「俺に何をしろってんだ⁉︎」

恐れろ、恐怖を撒き散らせ

 

 その一言共に敵の身体がブワリと重力に沿って落ちる。

 

「う、うわああああああああああああああああッ!?」

 

 悲鳴が街の一角で轟く。絶叫を残しながら落下しているヴィランだったが身体が地面に触れる直前、グイッと上へ引っ張られる感覚が襲い掛かる。

 

「…ッ⁉︎ …!?」

 

 混乱する敵の眼前には先程、自分をビルの屋上から落としたヒーローであるヴェノムの姿が在った。

 

「はい、もう満足でしょ。バットマンムーブはカッコいいと思うけどリアルにやるのはNGだから」

『まだやり足りない。今度はロールシャッハって奴と同じ事をしてみたい』

「おいやめろ馬鹿」

「……?」

 

 コスチュームを身に纏った来正恭成とシンビオートの会話は第三者視点からでは独り言を呟いているようにしか見えない。

巻上機(ウインチ)のように敵を引き上げた彼等だったが、その敵を他所に口論を激しくする。

 

「本当はこんな事したくなかったんだよ!でも我儘言うから仕方なく譲歩してあげたんだよ⁉︎」

『そっちの都合中心の行動が気に入らない。こっち都合中心に変えろキョウセイ』

「いつも人の身体を乗っ取ってる癖して偉そうに言える立場じゃないでしょ君!」

 

「…おい!」

 

SNAP(ブチッ)

 

 そんなギスギスした空気に思わずヴィランが声を上げた瞬間、横から響く声により集中力が途切れてしまったのか。敵を掴んでいた箇所の部分が千切れた。

 

「は?」

『「あ」』

 

「え?……う、あああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ───」

『「………」』

 

 

 

 

『…勝手に足を滑らせたって事にしとくか?』

「それ良いアイデアかも」

 

 この後、ゴミ袋の山で気絶していた敵を無事に確保した。

 

 

 

 

 

 

「……で?申し開きはあるかヴェノム」

「違うんですシンビオートが勝手n「補導ォーーーーーーーッ!」

 

 やぁ皆、主人公だy…背中痛ァ!?…やぁ皆、巴投げされて背中が痛んでいる主人公だよ(震え声)

現在、僕は保須市にてヒーロー活動の職場体験をさせて貰ってます。今?今はギャングオルカに折檻されてます。まぁ事故とは言え敵を落としちゃったし仕方ないよね。

 

「来正君、大丈夫?」

「ヘーキヘーキ大丈夫…あ、ごめん待って。結構痛むから手貸して貰っていい?」

「うん」

 

 赤糸虫さんに手を貸して貰いながら立ち上がる。コンクリートの上で背負い投げは流石にアレだと思いますシャチョー。咄嗟にシンビオートを展開して衝撃を和らげてなかったら背骨にヒビが入ってたと思いますよシャチョー。

 

《相変わらず苦労なされている様子ですね。キョウセイ》

『結果的にオレ達が捕まえたからな。名誉の負傷って事で誇れ』

《その救い難いポジティブ精神、反面教師として見習わせてもらいます》

『ファッキュー』

《控えめに言ってタヒ()ね》

 

「ねぇ来正君。最近MJの言語学習プログラムについて色々と言いたい事があるんだけど」

「いや違うから、シンビオートが勝手に…」

「ちゃんとボクの目を見ながら言って欲しいんだけどな」

 

 これ絶対に僕の所為じゃないからね?百歩譲ったとしてもシンビオートの方に責任があるから(震え声)

だからそんなギラギラした目で見つめないでくださいお願いします。

 

「お前等の相棒達、相変わらず面白い漫才してるじゃねぇか。どうだ?これを機にチームアップを視野に入れてみたらどうだ?」

「チームアップ…ですか?」

 

 僕らに向かって放たれるイグニッションの言葉に赤糸虫さんは首を傾げた。チームアップと言うのは、簡単に言えば個人のヒーローが他のヒーロー複数人達と組み、X-menやAvengersのように団体(チーム)として活動する事…うん、まぁ文字通りそのままの意味だね。

 

でもそっかぁ、チームアップかぁ……。

 

「チームアップかぁ…えへへ…」

「えーと、とりあえず保留ですかね」

「えっ」

 

 驚愕する赤糸虫さんを他所に僕は言葉を続ける。

 

「チームアップと言ってもそれぞれ特性の違う個性を持ったヒーローと協力するのは難しいですし、パッと決めるのは良くないと思うので」

「成る程ねぇ…」

「まぁ1番の理由はシンビオートと息が合いそうな人と組めるか?って所なんですけど」

「「…あぁ(納得)」」

 

 うーん、イグニッションと赤糸虫さんが腑に落ちたような表情を浮かべてるけど、せめて否定して欲しかったなぁ(願望)

まぁでも、そもそもの話ギャング・オルカの元に来たのは確実に不足しているであろう協調性を学ぶ為だし仕方ないよネ、うん。仕方ない。

 

ppppp……!

 

『オイ、電話鳴ってるぞ』

「あ ホントだ。すみませんシャチョー、イグニッション。ちょっと失礼します!」

「手短かに済ませろ。あと今後ヒーロー活動中はマナーモードにしとけッ!」

「サーイエッサーッ!……あ、もしもし?」

 

『はぁい、どーも来正さん!私との共同開発で誕生したベイビーの調子は如何ですか⁉︎』

 

 この声、発目さんか!え、何で急に電話掛けて来たの?てっきり発明品(ベイビー)の制作に没頭してると思ってたんだけど。

 

『いやいや、私のベイビーが活躍していると思うと居ても立っても居られなくてですね!ちなみにコスチュームの方はどうでしょうか?』

「うん、バッチリだよ。寧ろ良好過ぎるくらい。正直言って今の僕等は誰にも負ける気がしない…ってのは言い過ぎだね」

『おお!それは手によりを掛けた甲斐があると言うものですね!』

「いやホント助かったよ。超高温の蒼炎に包まれたり、ブラキオサウルスに踏み潰されたり、盾(と言う名前のトンデモ兵器)でブン殴ったりと色々あったけど、めちゃくちゃ使えるねベイビー」

『来正さん…とりあえず帰ったら一発殴ります』

「えっ」

 

 直後、ブツリと無理矢理通話が切られてしまった……えっ、なんで?

 

「来正君、どうしたの?」

「発目さんから電話が来た」

「メイから?何の用だったのかな?」

「帰ったら殴ると言われたんだけど」

「え、なんで?」

「僕も知りたい」

 

SLAM!!

 

 そんな事を話している傍ら、音が響いて来た方向に僕等は注目する。そこには手錠を付けたままメイデンをこじ開けるヴィランの姿があった。

 

「こんな所に居られるかッ!」

 

 そう吐き捨て、敵は大きな跳躍を見せその場から逃げ去ろうとしてしまう。シャチョーのサイドキックの皆さんが撃ち落とそうとセメント弾を放つが一向に当たる気配が無い!

 

「…っ、シャチョー!」

「先の失態を挽回しろ。でなければヒーローとして恥を晒すまでだ」

 

 僕の言葉にギャング・オルカがそう応える。流石シャチョーっす!イケメン!素敵!抱いてください、その肉体で抱擁してください(真顔)

 

うん、取りあえず行くぞシンビオート!

 

『興奮して来たな…第二ラウンドの開始だ!』

 

 シンビオートの力によって脚にスプリングを形成し一気に跳ぶッ!

 

「あ、待って来正君!ボクも行くよ!」

「赤糸虫さん!」

『精々オレ達の足を引っ張ってくれるなよ?』

《コチラの台詞です》

 

「な!?着いて来んなッ!」

『やだね』

 

 驚愕の表情を浮かべる敵に向かって真っ直ぐ腕を伸ばす…が、その直後ヴィランが横方向へと軌道を変えた!?

 

『What's⁉︎ なんだ?アイツ何をした?』

「空中なのに、いきなり横へ飛んだ!?」

「ただ空を飛ぶ個性…って訳じゃなさそうだね!」

 

 こちらは追い掛ける形で建物の壁面を蹴りながら移動、糸によるスイングでの移動に対し相手側は空中を飛ぶ形で逃走を行なっている。

赤糸虫さんの言う通り、ただ空を飛行する個性としてなら先程の行動はあまりにも不自然だ。

 

先の違和感に訝しみながらも、僕は背中マウントしてあるデスペラードに手を伸ばす。

 

「個性を見極める為に色々やってみよう。赤糸虫さん、糸を沢山飛ばす事できる?」

「大丈夫!MJ、連射ウェブモード起動!」

《ウェブシューター、連射モードに変更します》

「空中だと踏ん張る地面が無い…最初から当たらない定で行くぞッ!」

『OK』

 

 照準を相手の背に合わせ、引き金に指を掛ける。

 

『SET』

「デスペラード式『黒指弾・乱射』ァ!」

 

BRRRRTTTTTTTTTTTTT!!!

 

「うおおおおおおおっ!?」

「うわ なんだあの動き、気持ち悪ッ!」

 

 僕と赤糸虫さんの攻撃は悉く避けられる。しかし、相手側の動きがなんか色々と凄い。変態的な立体起動で縦横無尽に宙を駆け回ってる感じだ。

アレ大丈夫なの?胃袋の内容物がシェイクされて色々とヤバそうに見えるんだけd…う゛、ヤバい。見ているこっちが酔ってしまいそうだ。

 

「ごめん赤糸虫さん」

「来正君?」

「マスクの中がビチャビチャでゲロで目前に差し掛かってる」

「来正君!?」

『オイやめろ、そんな汚いモノ オレにぶっ掛けるな』

 

 と、とにかく…!一刻も早く敵を捕まえた後にどっかの物陰で吐き出すとしよう。

 

「赤糸虫さん!先回りして(蜘蛛の巣)張っておいて!」

「分かった!」

「シンビオート、遠距離攻撃は難しい。なるべく近距離で勝負仕掛けるぞ!」

『空中戦は新鮮だ。興奮して仕方ないなァ!!』

 

 片腕が金砕棒に変化させ振るう。が、しかしそれを容易に躱す相手。今度は鎌を形成し切り裂こうとするがそれも回避される。ならばとシンビオートが牙を剥き出しにした顎を開き、噛み付きに行く。

だが、グン!と相手の飛行スピードが急激に上昇しガチン!と牙と牙が噛み合わさる音を残す結果となる。

 

『……がァァァァァアッ!!もう良いもう沢山だ!アイツは殺す!』

「落ち着け!まだ3発攻撃を躱されただけだぞ!」

『3発"も"だッ!』

 

 直後、シンビオートが2本の触手を左右のビル壁面へと伸ばし付着。グッと反動を付け、パチンコの要領で……あ、待って。それ今やるとやばああああああああああああああああああああああああああああああああああ゛ああああ゛あああああああっ!!!

 

「うお、危ねっ」

 

 しかも捨て身の特攻、簡単に避けられたし!いやちょっと待てよ?確かこの先って赤糸虫さんが糸を張り巡らせて待機してたような────

 

「よし!来正君、こっちは罠張り終え…「ぐばあっ⁉︎」…たんだけど、なんで蜘蛛の巣に突っ込んで来たの?」

「チギャウ…チギャウ。シンビオートが勝手に……」

 

 ヤバい、糸が発目さんお手製のスーツにへばり付いて中々剥がれないんだけど!あと赤糸虫さん、マスクしてるけどそんな冷たい視線を送るのはやめてくれマジで(被害妄想)

 

「なんだコイツ等…(呆れ) まぁ良い。さっさと逃げさせて貰う!」

「ああ、クソ!赤糸虫さん追跡を───」

 

 そう言おうとした瞬間、側方面より猛烈な勢いで飛んで来た何かが敵を蹴り飛ばした。アレは…!?

 

「ちょっと立ち寄ってみりゃぁ、肩慣らし相手には丁度良いじゃねぇか」

 

 白を基調としたスーツに黄色のアーマーとマフラーを羽織った小柄の老人。だがその俊敏さはとても老いているようには見えない。

そんな光景に僕等は驚愕の表情を浮かべていると、その高齢のヒーローはコチラに気付く。

 

「おい、そこの。これ()はお前等の獲物か?」

「えっ、あ、うん。はい」

「そうか、んじゃ悪いがコイツは俺達が貰って行く」

「ええ!?」

 

 そのヒーローの言葉に赤糸虫さんが声を上げる。いやすみません勘弁してください。ソイツ僕が捕まえないとシャチョーに折檻喰らうんです……いや、待てよ?今さっき俺"達"って……。

 

「く…そ、何なんだよテメェ等!よってたかって俺を囲みやがって……ッ!」

 

「───すみません、でも貴方は捕まえさせて貰います!」

 

 その声と共に飛び出して来たのは見覚えのある姿。彼は腕に力を込めて、一気にエネルギーを解き放つ。

 

SMAAAAASH!!

 

 エネルギーを纏った拳を振るうのは緑谷出久ことヒーロー『デク』。彼は力一杯のパンチをヴィランに向けて放ったのである。

緑谷君!緑谷君じゃないか!

 

『ようデク、オレ達の獲物を横取りとは良い度胸だな』

「え、シンビオート君?…って、もしかしてそこに居るのは来正君⁉︎」

「やぁ緑谷君、此処で会うとは奇遇だね。それとなんで蜘蛛の巣に引っかかってるのかは聞かないでマジで(懇願)」

「あ、うん」

 

 緑谷君は何か察したような表情を浮かべる。そう言えばお互いに新しいコスチュームを見るのは初めてだっけか。

うーん、僕のって瀬呂君や飯田君みたいに素顔が見えないタイプのスーツだからなぁ。そりゃパッと見は誰だか分からないよね。

 

「クソ、寄ってたかって俺を囲みやがって!」

「あ、逃げた!?」

 

 え、緑谷君の打撃をモロに受けてたのに まだ動けるのか⁉︎

ええい。今はそんな事どうでも良い!とにかくこっちが先に捕まえるチャンスだッ!

 

「うおおおおおッ!っし、剥がせたッ!シンビオート追いかけるぞ!」

『倍返しにしてやる!』

「倍返しって言うか自業自得だけどね」

 

 僕と並ぶように緑谷君も同じく飛び出す。ヒーロー志望同士、やっぱり考える事は同じだね!

そう考えていると緑谷君がコチラに声を掛けて来る。

 

「来正君、相手の個性は!?」

「ごめん分かんない!まだデータベースとの照合が済んでない上に情報が少ない!」

 

 警察側から敵の個性情報を送られる筈なんだけど、どうやら手間取ってるらしい。

 

「とりあえず、情報を引き出しながら戦うって事で!」

「勿論!」

『今は協力してやる。だがお前を蹴落としてやるからな!』

「シンビオート?」

『背後には気を付けるんだな。いつ刺されても大丈夫なように防刃チョッキでも買っておくんだな!』

「……来正君」

「違うから!シンビオートが勝手に!」

 

保須市にて、哀しそうなモノを見るような視線を送る緑谷君を前に僕は大きな声を上げる事となった。

*1
本物そっくりのコピーを作り出す個性。ただしオリジナルと比較しすると廉価版となってしまうぞ




この緑谷君は原作と比べて体育祭でフルカウルを習得してるので、肩慣らし目的でグラントリノと共に保須市に来ています。
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