先天的(転生)TS女子と、後天的(あさおん)TS女子による百合のようなナニカ   作:レズはホモ、ホモはレズ

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【あさおん】:『朝起きたら女の子になっていた』というロマン溢れるシチュの略称。

【あさおんする】:動詞。朝起きたら女の子になること。


それでは、闇鍋を召し上がって下さい(ニッコリ)



あさおんは男の夢(※個人差による)

 

『親友よ、あさおんってホントにあったんだな』

 

 

 とある日曜日の昼下がり。オレの携帯に突如送られてきたメッセージは、普通に見たら、全くもって意味不明としか言う他なかった。

 

 最寄りのショッピングモールへ行く途中、電車に揺られること数分。携帯を見ながらぼーっとしてたら、メッセージアプリからの通知が来てこの文面である。

 もう一度言おう。全くもって意味不明であった。

 

 とはいえ、シカトするのもなんだか申し訳ない。最近流行りの既読無視とかいうヤツにはなりたくないのである。

 とりあえず、当たり障りのない返事をするとしよう。

 

『オレはあさおんも好きだが、転生して女の子になるシチュの方が好きだぞ』

 

 訂正、オレもたいがい意味不明なことを言っているような気がする。だが今更の話だ。小学生の時に先生から『あなたって不思議ちゃんよね』って言われたこと、まだ根に持ってるんだぞ。

 

『知ってる。知ってるが、それとこれとは別だ』

 

『じゃあ何の話だよ』

 

『いやだから、あさおんってマジであったんだなって』

 

『ぱーどぅん?』

 

 普段の親友には中々ない、やけにまごついた言い方だった。

 いつもはむしろストレートに思いの丈をぶちまけるタイプだと思っていたのだが、話の本題がなかなか見えてこない。

 ただ、オレのメッセージにほぼノータイムで返信するあたり、何かしら慌てているんだなとは思えた。

 

『よく分からんが、あさおんがどうしたんだよ』

 

 あさおんあさおんって、オレが教えてやったジャンルではあるが、あいつはそんなに興味を持たなかったはずだ。

 朝起きたら突然女になるとか、ぞっとするわと言われた記憶がある。オレにとっては宣戦布告なので、三日は口を利かなかった覚えがある。

 イイじゃん、あさおん。一切の過程を無視して女の子に大変身できる奇跡のシチュじゃんか。

 

『今から言うことは、嘘じゃない。今日はエイプリルフールじゃないし、俺の気が狂ったわけでもない。多分』

 

 少しして、そんなメッセージが届く。

 

 ……ここまできて、オレも親友が何を言おうとしているのかは何となくわかってきた。

 勿論、それは二次元の話。この流れときたらこのシチュだろ、的なものだ。

 いざリアルの話として考えれば、『ありえない』とか、『そんなの創作の話だ』とか、普通の人はそう思うのだろう。

 だが、少なくともオレは──()は、ありえないことはないと思えてしまえた。

 何故といえば、オレ自身が少なからず()()に近い体験をしてきたからだろう。

 ──いわゆる転生、とかいう現実じゃあまずありえない現象。

 しかも、微かに残っているかつての記憶によれば、オレは元々男だった。まぁ、今の人生が楽しいから全然構わんがな!

 客観的に見ても自分の容姿は良い方だと思うし、恋愛対象は変わらず女だが、合法的に女の子とイチャコラできると思えばむしろ最高といえる。

 それに、以前の記憶なんて全くといって良いほど残ってないし。かれこれ十七年、今やオレは高校生。それだけ生きてれば、昔のことより今のことの方が大事になってくる。

 

 だが、それはあくまでもオレ個人の話だろう。

 皆が皆、オレと同じように男から女になっても何も思わないどころか喜ぶ変態だとは思っていない。

 だから、親友がもし本当に()()なってしまったのだとしたら、オレは──

 

 

 

 

『俺、あさおんしたっぽい』

 

『はい嘘乙ワロス』

 

 ──思いっきり煽ってやろう。

 

 

 

 ---

 

 

 

 親友の衝撃的なカミングアウトを無慈悲にスルーして、目的のショッピングモールで買い物をする。

 ウィンドウショッピングしつつ安めの衣服や下着を買ったり、薬局でなにかと消耗する生活用品を買い足したり。あとは、来週分の食料として、保存が利く食べ物や食材なんかを優先して買っておく。

 ついでに、福引きをやっていたので引いてみた。三回引いて、全部外れ。ポケットティッシュを3つ貰った。意外とありがたいのである。

 目的のものを全部買い、外に出てみれば、まだまだ明るい。買い物を始めた時からまだそんなに時間は経っていないみたいだ。

 

 ふと、敢えて振動機能をオフにしていた携帯を取り出して、待ち受け画面を確認する。

 メッセージの通知が、十三件。ついでに留守電が三件。

 

「ひぇっ」

 

 やべぇ、ストーカーみたいと思ったオレは何も悪くないと思う。

 恐る恐るメッセージアプリを開いてみれば、『いや』とか『待て』とか短い言葉から始まり、『頼む』『ほんとだから』『おまえしかたよれないんだ』『なあ』『おい』……と続いて以降ずっと呼び掛けのメッセージばかりである。

 見捨てられる寸前のヒモ彼氏かな? 漢字変換もしないとは、余程慌てていると見た。

 流石に可哀想だと思ったので、仕方なく、仕方なーく電話を掛けてやる。何様だって? 親友様だ。

 プルルルッ、とワンコール鳴り終わるか否かというところで即繋がった。喜べ、なにげに過去最速の反応速度だ。

 

「──待たせたな」

 

 できるだけ低い声を意識して、某段ボールの人をイメージしつつ告げる。

 だが、返事が返ってくる様子がない。微かな布擦れの音と、少し荒い息の音が聞こえるだけだ。字面だけだと変態だな。

 

『……あ、あー……もしもし。その、俺だ』

 

 数秒か、はたまた数十秒かの無言の後、『間違い電話でしたとか言って切ろうかな』と画策していた私の思考を遮ったのは、可愛らしい女の子の声だった。

 もう一度言う。女の子の声だった。やっべーマジだわ。

 

「あるぇー? 確か、オレは親友に掛けたはずなんだがなぁ。妹ちゃん、お兄ちゃんの携帯を勝手に触っちゃいかんぞぉ?」

 

 これでもかとわざとらしく、子供に向けるような甘ったるい声で煽る。私の煽りスキルは最高クラスと自負しているぜ。

 ちなみにあいつに妹はいない。一人っ子である。

 

『……俺が』

 

「んん? 何だってぇ? 可愛らしい声の妹ちゃん」

 

『だから、その……俺がっ…………』

 

 小さな声だった。何かを躊躇っているような、覚悟を決めかねているような──そして、救いを求めるような、弱々しい声。

 長い、長い沈黙が続く。その間、オレは何も言わなかった。

 

『………………俺が、明乃……なんだよ』

 

 そして、決心がついたのだろう。女の子の声の主が、自分こそがオレの親友──意澄 明乃(いすみあきの)なのだと、そう言った。

 とても重苦しい声だった。

 初めて耳にする女性の声だというのに、その声色からはどうしようもない負の感情──不安や混乱がゴチャゴチャに混ざり合ったような思いがひしひしと感じられる。

 きっと、不安だったのだろう。オレにそんな変なことを言って、信じてくれるのか、と。

 

 ──だが、オレは明乃の親友だ。

 少なくともオレにとっては唯一無二の親友である、明乃の言葉なのだ。あいつが本気なのかどうかなんて、簡単に分かる。

 まぁ煽るけど。それとこれとは別だ。

 

『……俺だって、ワケわかんねぇんだ。けどっ……けどよ……』

 

「……明乃」

 

 ちゃんと言えたじゃねぇか。なんて某ゴリラのセリフを思い出しながら、口を開く。

 

 

 

 

おけー(おk)。今からお前ん家行くから待ってろ」

 

『…………え?』

 

「安心しろ! 別に遠出じゃないからそっち行くのに大して時間はかからん」

 

『いや、おい待て。状況飲み込むの早すぎない? というかノリ軽くない?』

 

「あ、嘘だったら承知しねぇかんな!? オレはピュアなんだぜ!」

 

『いやいやいや! お前がピュアなんだったら世の中の女は全員腹黒だぞ!?』

 

「じゃ、後でな!」

 

『ちょ──!』

 

 一方的にそう言って、プチッと容赦なく通話を切る。

 うむ、ああやって思わずツッコむだけの余裕があるんだ。しばらくは大丈夫だろう。別に気を紛らわせるとかそういう狙いではなかったけど。

『やはりあいつのツッコミはキレがあるな……』とか心の中で師匠面しつつ、肩に掛けた買い物袋を掛け直す。

 やっぱ、いつもより買いすぎたかね。全くもって重いのなんの。

 

「……さてと、ちょっと急ぐとするか」

 

 まあ、ああ言った手前、『荷物が重かったんでやっぱり行くのやめます』とか言ったら流石に鬼畜が過ぎると思うので、あいつの自宅に向かうとするか。

 

 

 

 ---

 

 

 

 オレの親友たる明乃の家は、オレの自宅からそう遠くない位置にある。一般家庭としては普通の、よくある二階建ての一軒家だ。

 さっき電話をしてからだいたい20分ほど。家に帰らずにそのままここへ来たので、さっき買った荷物も持ったままだ。

 

『意澄』と書かれた表札の側にあるインターホンをポチッとな。ついでに備え付けのカメラに向かってダブルピースをしておく。かわいい(自画自賛)

 少しして、玄関の扉が開かれる。出てきたのは、顔の所々にしわのある、朗らかな顔をした女性だった。明乃の母さんだ。オレは親しみを込めておばさんと呼んでいる。

 

「碧葉ちゃん、いらっしゃい。今日も遊びにきたのかしら?」

 

「ちわっす、おばさん。ええ、性懲りもなく遊びに来ましたよ」

 

 冗談っぽくそう言ったら、おばさんは軽く笑って口元に手を当てる。

 ちなみに碧葉というのがオレの名前だ。瀬戸 碧葉(せとあおば)。それが今のオレである。

 

「あらあら、別にお邪魔じゃないから気にしなくて良いのよ? ささ、上がって上がって」

 

「それなら、遠慮なく」

 

 お邪魔します、と言って家に上がり、いつものようにリビングに通される。

 おばさんはこなれたようにお茶を用意している。かくいうオレも、この家には何度も来ているので、もうひとつの我が家のような感覚だ。荷物を一旦床に置き、ダイニングテーブルに向かって座る。

 

「でも、ごめんなさいねぇ」

 

「ん、どうかしたんですか?」

 

「明乃ったら、今日は中々部屋から出てこなくってねぇ。休みの日だから、また夜更かしして寝ちゃってるだけかもしれないけれど」

 

「ああ、あいつ集中し出すと止まらないタイプですもんね」

 

「そうなのよ、全く……」

 

 おばさんからお茶を受け取りつつ、いつものように軽く話をする。

 聞いている限りだと、明乃に異変があったとか、そういう雰囲気ではなさそうだった。

 ワンチャン、夜更かしのしすぎであいつの気が狂っただけじゃね? とか失礼なことを思いつつ、お茶を啜る。

 

「──()()()なんだから、もうちょっと身体に気を付けて欲しいんだけどねぇ」

 

「ブッフォ」

 

 ……ワッツ? ホワイ? 女の子? 

 今、おばさんは『女の子』と言った。オレの耳がイカれてなければ、確かに『女の子と』言っていた。驚きすぎて思わずお茶吹いちまったじゃねぇか。

 

「あら、大丈夫? 噎せちゃった?」

 

「え、ええ。すみません、直ぐ拭きますんで。いやホントすみません」

 

 都合良くお茶を吹いた理由を勘違いしてくれたおばさんから雑巾を頂き机を拭く。

 とりあえず、落ち着いて思い出せオレ。脳内会議の時間だ。議題は勿論『明乃は女であったか?』である。

 というか会議するまでもねぇ。あいつは男だ。

 そもそも、もし女だったら『幼馴染みで親友ポジの女の子とかそれもう手を出しても良いよね?』とか馬鹿なことを想像しているに違いない。それをしなかったのは、あいつが紛れもない男だったからだ。

 

 だが、ここでおばさんに『え? あいつ男ですよね?』とか言ったら変な目で見られること間違いなし。おばさん自身が明乃のことを女の子と言ったんだから、おばさんにとってはそれが当たり前の認識なんだろう。

 つまり、早急に事の状況を確認する方法は、唯一つである。

 

「えーと……オレが明乃の様子見てきますよ。元々あいつに用があったんで」

 

 明乃に直接会って確かめる。それしかないだろう。

 それに、あいつ自身の言葉もある。

 女の声で、自分のことを『明乃』だと言った彼女。あれは電話越しとはいえ、聞き間違いなどではなかった。

 本当に、あいつは女になってしまったのか。未だにちょっと疑念を抱いていたそれが、確信に近いものになっていく。

 

「ええ、そうしてくれると助かるわ。それと、本当に夜更かししてたんだったら、注意しておいてね。ホント、あの子ったら碧葉ちゃんの言葉は素直に聞くんだから……」

 

「……分かりました。言っておきますね」

 

 吹き出したお茶を綺麗に拭いた後、荷物を持っておばさんに会釈をしてリビングを出る。明乃の部屋は二階だ。すぐそばにある階段を上って、あいつの部屋の前に立つ。

 

 当然というか、扉は閉まっていた。鍵は無いタイプだが、無遠慮に開くほどオレは礼儀知らずじゃあない。

 

「おい明乃、オレだ。お前の親友にして美少女幼馴染みの碧葉様だぞ」

 

 ………………。

 返事はない。代わりに、部屋の中からゴソゴソと物音がする。

 いつもなら、『お前何様だよ』とか『腹黒美少女の間違いじゃねぇの』とか辛辣なツッコミが入室許可の合図なのだがね。

 ふむ。こうなりゃドーンと思いっきり部屋に侵入してやろうか。よししてやろう。え、礼儀はどうしたって? まあいいでしょ、緊急事態だし。

 

「返事しないのは許可と受け取った! 安心しろ、疚しいモノは見なかったことにしといてやる!」

 

『え、ちょっと──』

 

 扉の向こうから慌てたような女の子の声が聞こえた気がするが、無視だ無視! 

 

「ほーれじゅーう! きゅーう! ヒャア、がまんできねぇ! 失礼するぜ!」

 

『おい待て嘘だろ!?』

 

 ドアノブを捻り、勢い良くドアをバーンする。大丈夫、壊さないように手加減はした。一応人ん家だしね。

 

「さーてさーて、明乃よ。あさおんしたらしいなぁ! マジか? マジなのか!?」

 

 勝手知ったる親友の部屋。ズカズカと踏み入って、部屋の中を見回してみる。

 以前ここに来たときよりも多少部屋が荒れているが、置かれている物は大して変わっていない。普通の男子高校生の部屋って感じだ。

 そして、壁際に置かれたベッドを見やる。

 

 ──果たして、そこにいたのは、怯えるように布団にくるまって頭だけを出した一人の女の子だった。

 

「…………よ、よう、碧葉。俺だ、明乃だ。分かるか……?」

 

 自分を明乃と言った女の子は、小さな声で、確かめるようにオレの目を見つめる。その眼差しは、不安げに揺れていた。

 

「───……なっ」

 

 それを見て、オレは──マトモに声が出なかった。

 それは、驚きというか、予想外というか、とにかく、目の前の光景を改めて認識して、思考が固まったのだ。

 

「……あ、碧葉?」

 

「これは、まさか……嘘だろ……」

 

『なんてこった』。それが今のオレの気持ちを表すのに一番適切な言葉だろう。

 震える手で、彼女の困惑する顔を指差す。

 

「……あ、明乃、お前……」

 

 男の時と変わっていない、ややつり目気味の目元。

 黄金比とも言える、スラリとした目鼻立ち。

 肩まで伸びる、ウルフヘアーのように所々跳ねた黒髪。

 全体的に、可愛いというより格好良いという印象を受ける凛とした顔立ち。

 それ即ち──

 

 

「──お前、めっちゃオレのせいへ──いや好みにドストレートじゃねぇかよォ!!」

 

 いわゆる──イケメン系女子。オレの大好物なのである。

 

 

 

 

「…………やっぱり変態か……」

 

 明乃の呆れるようなため息が、やけに部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 




殴り書きなので、変なところがあったら直します。というかストーリーの設定自体が変ですが。

ちなみに次回は……ナオキです

8/2─冒頭に出てくる曜日を、『土曜日』から『日曜日』に変更しました。話の展開に影響はありません。
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