英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

106 / 200
第77話 変則的な『実験』

ロレントでの事件が一段落し、ボースに着いたエステル達。ギルドを訪れた三人を待っていたのは、アガットたちに加えて、エステルにしてみれば意外な人たちばかり―――――クローゼ、オリビエ、ジン、ティータの姿だった。

 

 

~遊撃士協会 ボース支部~

 

「お、ようやくきおったか。」

「久しぶりね、ルグラン爺さん。」

「話は聞いておるよ。何でも、『結社』の企みを防いだそうではないか。」

「完全に防げたわけじゃないけれどね……その功績はリィンだし。」

「いや、俺自身もよく解らなかったんだ……まぁ、二人に怪我とかなくて良かったよ。」

ルグランの言葉にそう答えたエステル。事実、リィンはルシオラの幻術を瞬時に跳ね除けたのだ。そのお蔭で特に被害はなかった。

 

「お久しぶりです、エステルさん。どうやら、憂いはないみたいですね。」

「久しぶりだね、エステル君。その様子だと、決意は固そうだね。」

「クローゼにオリビエ。うん……二人にも迷惑をかけちゃったわね。」

そして、声をかけてきたクローゼとオリビエ。エステルは二人に対して申し訳なさそうに答えた。

 

「気にしないでください。エステルさんならきっと、ヨシュアさんを連れ戻すことができると思います。」

「白の姫君を救う可憐な王子様……尤も、君の柄ではないと笑いそうだが。」

「アハハ……うん。絶対に連れ戻すって約束したしね。」

『結社』の得体の知れなさに色々思うところはあるが、それでもエステルのやることは一つしかない……そのためには、立ち止まってはいられない……その思いを込めて、エステルはそう述べた。

 

「お久しぶりです、エステルお姉ちゃん!その、ヨシュアお兄ちゃんのことは私も聞いたけれど……きっと、お姉ちゃんならヨシュアお兄ちゃんを見つけられると思うんだ。」

「久しぶりだな、エステル。ヨシュアのことはシェラザードから聞いたが……お前さんが喝を入れれば、ヨシュアもお前さんを受け入れてくれると思うぞ。」

「久しぶりね、エステル。アンタなら、自分の信念を貫き通せるはずよ。だから、頑張りなさい♪」

「ティータにジンさん、サラさんまで……ありがとう、三人とも。」

続いて話しかけたティータとジン、そしてサラの励ましの言葉にエステルは素直にお礼の言葉を述べた。

 

「……ところで、貴方は?」

「自己紹介がまだだったな。スコール・S・アルゼイド……父と妹から君の事は聞いているよ、エステル・ブライト。よろしくな。」

「ラウラのお兄さんってことね。よろしく、スコール。それと、あたしのことはエステルでいいわ。」

「解った。よろしくな、エステル。」

そしてエステルの知らなかった人―――スコールは自己紹介し、互いに握手を交わした。そして、スコールはリィンの姿に気づき、声をかけた。

 

「で、久しいなリィン。」

「ああ、久しぶりだなスコール……で、アルゼイド侯爵は相変わらずなのか?」

「……お前の考えてる通りだろうな。アレを破棄するつもりはないらしい…」

「勘弁してくれ…俺はちゃんと断ったのに…」

リィンの質問にスコールは目を伏せつつも答え、それにはリィンもため息を吐いた。

 

「フム、“光の剣匠”ともあろうお方がリィン君にご執心とは……何があったのかね?」

「リィン、話してもいいか?」

「ああ、構わない。」

オリビエの疑問にスコールはリィンに尋ね、疲れた表情を浮かべるリィンは構わないと答えたのを確認して、スコールが話し始めた。

 

事の始まりは、クーデター事件の前……セリカとシオンがレグラム自治州にあるアルゼイド流の道場を訪ねた時であった。その時、テオとルシアに連れられてリィンもレグラムに来ており、顔見せ程度に道場を訪れていたのだ。そこでテオとヴィクターがいろいろ意気投合したらしく、アリシアとルシアも含めた四人で話し合った結果……

 

『てなわけで、リィン。ラウラさんと婚約することが決まった。』

『ラウラさんはいい方ですよ。きっと、リィンも喜ぶと思います。』

『父さんに母さん!?『てなわけで』とは何ですか!?事情をすっ飛ばして結果だけ言われても困るんですが!?色々意味不明ですし、それに相手の同意も得ず、いきなりそれというのは無粋過ぎませんか!?』

『その……私では不服なのか?』

『ラウラさん!?』

『何でしたら、側室でも文句は言いませんよ。ちゃんと愛してくれれば問題ありませんから。』

『うむ。これほどの婿殿、私の息子として文句はないだろう』

『アリシアさんにアルゼイド侯爵殿まで!?』

『………すまん、リィン。止められなかった……』

『何と言うか、哀れですね……冗談めいたことすら言えませんよ。』

『……(ある意味、俺も似たようなものだな……)』

 

とどのつまり、逃げ場は完全に断たれてしまった。リィンは四人に対してきちんと断りを入れたが、その断りすらも無視されてしまい………最早、リィンとラウラの婚約は決定事項となっていた。後でそれを聞いたエリゼが凄まじい威圧を放って『何してるんですか、父様に母様?』と言い放ちながら両親を睨んだのは言うまでもないが………

 

「あ、うん……ゴメン、何と言うか……どう言えばいいか、わからないわ。」

「エステルの言葉には、同意する……その、頑張れや。」

「アタシも同感ね……」

「あ、あの、えと……頑張ってください。リィンさん。」

「その歳で色々抱えてるんだな、お前さんも……」

「その、頑張りなさい。生きてればいいことあるわよ。」

「いやはや、尊敬に値するよ。僕の好敵手として認めたいぐらいだ。」

「あはは………(私も人の事を言えないような立場ですので、どう発言していいものか……)」

「ほえ~……」

エステルを皮切りに、アガット、シェラザード、ティータ、ジン、サラ、オリビエ、クローゼ、アネラスがそれぞれ思うことや言葉を述べた。“光の剣匠”ともあろうお方の御執心っぷりに引き気味だった……尤も、一部を除いてではあるが。

 

(う……優しさが痛い……)

(頑張れ、リィン……)

その優しさが逆に辛いリィンと、肩に手を置いて励ましたスコールだった。すると、ギルドの扉が開いて二人の女性が入ってきた。

 

「失礼しますわ。」

「あれ?メイベル市長……それにリラさんじゃない!」

「ご機嫌よう、エステルさん。ようやく再会できましたね。」

「……ご無沙汰しております、エステル様。」

「うん、お久しぶり。二人と会うのは、晩餐会の時以来だったっけ?」

こうして会うのは、クーデター事件の時の晩餐会以来……メイベルとリラを見たエステルは懐かしそうな表情で話しかけた。

 

「ええ、そうなりますわね。初対面の方もいらっしゃいますが……」

「初めまして、リィン・シュバルツァーです。」

「スコール・S・アルゼイドだ。よろしくな。」

「これは、ご丁寧にどうも。ボース市長を務めておりますメイベルと申しますわ。」

「……お嬢様のメイドのリラと申します。」

リィンとスコール、メイベルとリラはそれぞれ自己紹介をした後、メイベルは他の面々にも挨拶を交わした。

 

「……他の皆さんもお久しぶりです。クローゼは……もう休暇に入ったのかしら?」

「いえ、実は一足先に休学にさせて頂いたんです。メイベル先輩とリラさんもお元気そうで何よりです。」

「メイベル、先輩?」

クローゼのメイベルに対する呼び方――“市長”ではなく“先輩”という単語にエステルは首を傾げた。

 

「メイベル先輩は、王立学園の先輩でいらっしゃるんです。」

「ふふ、公の場以外では威張らせてもらってるわけですわ。」

「あはは、そうなんだ。」

クローゼとメイベルの意外な関係……『公』の場では“王太女”と“市長”、『私』の場では“後輩”と“先輩”の関係を知ったエステルは苦笑した。

 

「それと……アガット・クロスナーさん。お久しぶりですわね。」

「まあな。」

「あれ、アガットって市長さんと顔見知りだったの?」

「何度か依頼を通じてお世話になっていますわ。それと十年前に……」

「おい……嬢さん。」

エステルに説明したメイベルがある事を説明しようとした時、アガットが制止の声を出したため、メイベルはそれ以上話すのをやめた。

 

「……失礼しました。今日のところは、皆さんがいらっしゃったと聞いたので挨拶に伺わせていただいたのです。聞けば、国際犯罪組織を追ってらっしゃるのだとか?」

「こ、国際犯罪組織……」

「少し雰囲気は違うけれど、そう思ってくれて構わないわ。」

『結社』の呼び方にエステルは若干驚き、シェラザードは真剣な表情で頷いた。

 

「ボース市としても、犯罪組織の暗躍は他人事ではありません。可能な限りの協力をさせて頂きますわ。」

「うん、その時はよろしくお願いします。」

「……ま、せいぜい期待してるぜ。」

何かあれば市長邸まで来ていただければ対応いたします……という言葉をかけた後、メイベルとリラはギルドを出て行った。その後、ルグランは溜息を吐いてアガットに先程の態度に関して指摘した。

 

「アガット。お前さん、もう少し愛想良くはできんのか?」

「悪いが、これが俺の地なんだよ。生憎、遊撃士はサービス業じゃねえんだ……その辺は勘弁してもらうぜ。」

「確かにアガットって(一部を除いて)誰に対しても横柄だけど……対応そのものは丁寧な感じがするのよね。でも、さっきの市長さんには素っ気なく感じたんだけど。」

「それはお前の気のせいだと思うんだが……爺さん、とりあえず魔獣の事を報告するぞ。」

ルグランの指摘には『これが俺』だとでも言いたげに反論したアガット。だが、いつものアガット……今までの言動と先程の言動を比べると、素っ気無さが強調された物言いにエステルは不思議に思いながらも呟き、それには気のせいだと言葉を返しつつ、アガットは魔獣の事についての報告をし始めた。

 

(そういえば……あの女性とあの女の子……一体なんだったんだろう……)

ルシオラとの一件……それ以降、エステルは自分の中に不思議な存在を感じるようにもなった。エステルが見た夢の中に出てきた、『自分の知らない人達の夢』……銀髪の女性と金髪の少女の存在……それが何なのかは、解らずにいた。考えても埒が明かないと思い、それはひとまず置いておくことにした。

 

そして、アガットの報告では……魔獣はやたらと怯えていたり、暴れていたらしい。それも、その範囲はパルム南部とボース北部……丁度旧国境線を通る山脈あたりに集中していることが判明したのだ。

 

「ふむ……何とも気になる話だのう。」

「そういえばアガット先輩。前にもボース地方で同じようなことがあったとか言ってましたよね?」

「む、そうなのか?」

アネラスの話―――アガットが以前にも似たような現象を目の当たりにしたこと……それを聞いたルグランはアガットに尋ねた。

 

「まあな。つっても、爺さんがボースに来る前の話さ。」

「あれ、ルグラン爺さんって前からここにいるんじゃないの?」

「わしがこの街に来たのは『百日戦役』が終わった後じゃよ。かつてリベールの遊撃士協会はグランセルにしかなくてな……各地方に支部が作られたのは戦争が終わってからなんじゃ。ちなみにわしは、10年前までは王都支部の受付をしてたんじゃよ。」

リベールでの遊撃士協会の歴史……その変遷は『百日戦役』後、元々のグランセル支部に元帝国領であるセントアーク支部、レグラム支部がそのままリベールの協会として移管され、それらの支部に近いパルム、アルトハイム、ロレント、ボースに支部が開設され、続いてツァイス支部、最後はルーアン支部が開設された。

 

「……その『百日戦役』の直前だ。魔獣の様子がやたらとおかしかったっていうのはな。」

「へ……?」

「なんじゃと……?」

アガットの説明を聞いたエステルとルグランが首を傾げたその直後、轟音が鳴り響いた。

 

「わわっ!?」

「なっ!?」

「なんじゃ、この揺れは!?」

そして、その直後に地響きのような震動が起きて、叫んだ。ただ事ではないという事態に、すぐさまエステルらは外に出ると……

 

 

~ボース市~

 

「なあっ!?」

「な、何て大きさなの!?」

「こいつは……竜か!?」

マーケットの屋上に普段は見ない……いや、一般人はおろか遊撃士でもその存在を見る機会がないに等しい大型生物―――竜が居座る形でその存在感を露わにしていた。

 

「はい……古代竜です!昔からリベールのどこかに棲息していると伝えられていましたが……」

「いやはや、たまげたねぇ。」

「これほどの竜がいるとはな……」

クローゼはジンの言葉に頷きながら、不安そうな表情を浮かべ、オリビエとスコールは感心したような言葉を言いながらも、真剣な表情で竜を見ていた。

 

「まさか……こいつも『結社』の仕業か!?」

「……まぁ、否定はしない。」

アガットの叫びに答えるかのように聞こえた声。竜の傍らにいた人物……その人物の姿を一度見たことのあるエステルらはその彼を見て驚いた。

 

「なっ!?」

「あ、アンタは、ロランス・ベルガー!?」

「フ、久しい面影に初対面の者もいるな……言っておくが、その名前は偽名だ。『身喰らう蛇』が『執行者』No.Ⅱ“剣帝”レオンハルト……お前たちとは短い付き合いかもしれないが、お見知りおき願おう。」

エステルの言葉に反応して、ロランスは口元に笑みを浮かべて答えた。そして、改めて自らの“正体”を名乗った。

 

「“剣帝”………レオンハルト」

「成程、『果敢なる獅子(レオンハルト)』か。すると『獅子(レーヴェ)』というのは君の愛称だったわけだね。」

「俺としてはいささか不本意だが、仲間内ではそう呼ぶ者は多いな。まあ、お前たちも好きなように呼ぶがいい。」

「……舐めやがって……」

リィンはレーヴェの本名を呟き、オリビエは納得した表情で言った。そして、その愛称で呼ばれることに少々不服ではあるが……というレーヴェの言葉を聞いたアガットはレーヴェを睨んでいた。

 

「……今回の実験は少しばかり変則的でな。正直、お前たちの手に負える事件ではない。王国軍にでも任せて大人しくしておくのだな。」

レーヴェはその睨みも介せずアガット達に答えた後、竜を舞い上がらせ、エステル達に背を向けた。そして、レーヴェを乗せた竜は飛び去って行った…………それを見たアガットは何か思いつめたような表情をしつつ、エステル達に言った。

 

「………俺はアレを追う。お前らは軍が来るまで被害状況の確認とかをやってろ。」

「えっ……!?」

「アガット?」

「後でまた連絡する!」

エステルとシェラザードの返事すら待たずに……アガットは走って、竜が飛び去った方角に向けて走り出した。

 

「ア、アガットさん!?」

その光景にティータは慌てふためくが、更なる事態が彼等を直面することとなる。マーケットから出てきた市民の一人がエステル達に近づいて来た。

 

「き、君たち!いい所にいてくれた!頼む、手を貸してくれ!瓦礫の下敷きになった人や逃げ遅れた人がいるんだ!」

「なに!?」

「(ええっ!?)……うん、解ったわ。案内して!!」

「エステル!?」

市民の説明にジンが驚き、エステルも内心驚いていたが……すぐさま気持ちを切り替えて、誘導をお願いした。その言動には流石のシェラザードも驚きを隠せなかった。

 

「今の状況だと、人手は多い方がいいし…幸いにも被害はマーケットだけのようだし、周囲に火災は起きていない…竜に関しては、アガットを信頼して待ちましょ。」

「………」

「ど、どうかしたのシェラ姉?」

「いや、それはあたしの台詞よ。あんた、熱でもあるの?」

「あたしはいたって健康よ!!ほら、一刻を争うんだから!皆行くわよ!!」

冷静に状況判断をしたエステルに目を見開いて驚いていたシェラザード……熱でも出して気が狂ったのかと思ったが、エステルはその推測をすぐさま否定し、先導してボースマーケットに急いだ。

 

(………今までのエステルにはなかった思慮深さに状況判断……まさか、ロレントでの一件で、エステルの身に何かあったのかしら?)

どちらかといえば直感で行動することの多かったエステルの先程の言動は、今までになかった彼女の兆候だった。それには疑問を浮かべたシェラザードだが、今は人命救助が先だということに気持ちを切り替えて、マーケットに急いだ。

 

 

~ボースマーケット~

 

マーケットの内部は凄まじい惨状と言わんばかりの状態だった。崩れ落ちた瓦礫、怪我で動けなくなっている人々……建物が全壊していたらと思うと、ゾッとする………エステルらは、すぐさま気持ちを切り替えて事の収拾にあたることにした。

 

クローゼ、シェラザード、ティータには逃げ遅れた人々の誘導を……サラとアネラスには三人のサポート――万が一瓦礫が落ちてきたときのフォローをお願いし、エステルとジン、オリビエとリィン、スコールで瓦礫の撤去を行うことをエステルが素早く指示し、速やかに分散して事の収拾にあたり始めた……その矢先、メイベルの叫びがエステルらに聞こえた。

 

「お願い!返事をしてちょうだい!」

「くっ……駄目だ……」

「僕たちだけの力じゃ……」

市民達が瓦礫をどけようとしたが、見た目に反してかなりの重量の瓦礫のようで……大人二人がかりでも歯が立たず、ビクともしなかった。

 

「メイベル市長!」

「き、君たちは……!」

「エ、エステルさん!リ、リラが……リラがわたくしをかばってこの瓦礫の下に……!」

「!ジンさん、何とかできそう!?」

その声を聞いて駆けつけたエステル達。悲痛な叫びとも言えるメイベルの説明を聞いたエステルは驚いたが、すぐさま救助することに気持ちを切り替えた。

 

「ああ、これぐらいの瓦礫なら……お二方、ちょいとそこから離れてくれ。」

「あ、ああ……」

「た、頼みます。」

「……フンッ!!」

ジンの言葉に頷いた市民達は瓦礫から離れ、そしてジンは瓦礫の下に手を入れ……瓦礫を持ち上げた!

 

「スコール!」

「了解……そらっ!!」

ジンの声にスコールは剣を抜くと、被害の及ばない場所に瓦礫を殴りつけて吹き飛ばした。

 

「リラ!?」

「う……あ……お嬢……さま……」

メイベルが驚きの声を上げた相手―――所々傷を負い、血を流しているリラは、見たところ傷を負っていないメイベルの姿を見て、安堵の表情をした後、気絶した。

 

「おお、生きてるぞ!」

「ああ、リラ!!」

「ともかく、一刻も安全な場所に運ばないと……オリビエ、リィン。手伝って!!」

「ああ、解った!」

「フッ、心得た!」

エステルはオリビエとリィンに協力を仰ぎ、リラの応急処置ができる安全な場所へと運び出した。すると、そこにシスター服とは異なる衣装に身を包み、『星杯』のペンダントを持つ人物―――金色の長髪に紺青の瞳の女性が現れた。

 

「皆さん、無事ですか!」

「えと、貴方は……そのペンダント。丁度よかった!この人の手当てをお願いできますか?」

「その紋章……解りました。お引き受けします!」

その女性にエステルは疑問に思ったが、彼女の持っているペンダントが目に入り……ここは『専門家』に任せた方がいいと判断し、リラの応急処置を頼む。そして、その女性もエステルの身に付けている遊撃士の紋章が目に入り、各々の分担を即座に察して頷いた。

エステルがオリビエ、リィンを連れてその場を離れると……女性はリラの状態を確認し、周りに人がいないことも合わせて確認した後、ペンダントを掲げて言葉を呟いた。

 

―――我が深淵にて煌く琥珀の刻印よ。癒の緑耀、治の青耀……大いなる息吹を以て、かの者の命を繋ぎとめたまえ。

 

彼女が言葉を呟くと、その背中に煌く琥珀色の紋章……その輝きが一層増し、リラの周囲を優しい力が覆い……その光が収まると、リラの傷は見る影もなく完全に消え去っていた。

 

「……これで、傷の方は癒えましたが……あとは、この方の精神力に期待するしかありませんね。(それと……やはり、彼らに連絡を取ってみましょう……)」

女性はそう呟くと、近くにいた市民にリラの事を頼み、彼女がマーケットから運ばれていくのを見届けた後、何かを確認するためにその場を去った。

 

その後、エステル達は引き続き市民達をボースマーケットから避難させたり、最低限ではあるが応急処置を施した後、その報告の為にギルドに戻った。




ロレント編、すっ飛ばしました。何故かって?そもそもシェラザードはともかく……

エステル→母親が生きているので、夢を見る必要性が……

リィン →アスベルのせいで色々克服しているので……

てなわけで、あっさり退場に……この分は他のところで見せ場を作るつもりですが……場合によっては、ルシオラだけでなく他の執行者にも色々クラフトを追加する予定です。技の数的にオリキャラの連中がずば抜けてますがw

あと、例の女性……お察しください。

それと、今のところ原作とは異なる順序で進めていますが、出来る限り原作に沿った流れに持っていく予定です……いろいろ変わっている時点で原作ブレイクなのは否定しませんが。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。