英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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FC・SC第六章~天使のお茶会~
外伝 白隼の国へ集いし者たち


~レミフェリア公国 大公邸~

 

レミフェリア公国の首都、フュリッセラ……そこにある大公邸―――国家元首アルバート・フォン・バルトロメウスとの謁見を賜る、水色の髪に琥珀色の瞳の少女……ティオ・プラトーがいた。

 

「ティオ君、よく来てくれたね。忙しいところの呼び出し……良く応じてくれた。」

「いえ……アルバート大公には、私的なことに対する恩義がありますから。」

例の事件の後、ティオは実家であるレミフェリアに戻ったものの、両親との折り合いがうまくいかず……一度家出したのだ。その際訪れたクロスベルで内密に訪れていたクラトスと再会……感応力が上昇していたティオはクラトスのことを見抜いたが……事情があると察し、秘密にすることを約束した。

 

その後、クラトスの紹介でラッセル博士やティータと知り合い、一年間の修行の後、レミフェリアに戻り……国家主導で設立されたレミフェリア総合技術局(Remiphellia General technology Depatment:RGD)……その『所長』に任命された。更に、大公の仲裁で両親との関係も無事修復し……今は導力杖(オーバルスタッフ)と次世代戦術オーブメント――『第五世代』の開発で多忙な毎日を送っているが、本人にしてみれば『楽しいことをやってるだけですので』と言い切っていたが……

 

「それで、大公自らの呼び出し……もしかして、再来週の“不戦条約”絡みですか?」

「察しが良くて助かるよ、ティオ君。無論、それだけではなく……ルーアンの総合病院視察と女王生誕祭中のZCF総合展覧会……不戦条約締結時に提供されるオーバルエンジンの手続き……君には、技術折衝担当として随行してほしい。必要ならば、先に現地入りしても構わないが……どうかな?」

「………そうですね。お引き受けします。というか、断る理由もありませんので……」

国家に関わる重要な案件となれば、要職に就いている自分が出向かないわけにはいかない……それに納得して、アルバートの頼みにティオは快く返事をした。

 

「ただ、導力杖のテストをしておきたいので……早くても来週初めにはリベールに向かいます。」

「解った。飛行船の手配は私の方でしておこう。」

「え?いや、流石にそこまでしていただくのは……」

「気にしないでくれ、ティオ君。私にとっても君は家族のようなものだよ。」

「………はぁ、解りました。不躾ですが、お願いいたします。」

何から何まで親切にしてくれるアルバートに戸惑うティオだったが、有無を言わせぬアルバートの発言に反論は無駄だと悟り、ため息を吐いてその場を後にした。

 

 

~カルバード共和国 パルフィランス~

 

「リベールに?」

そう声をかけられたのは、ロイド・バニングス……兄であるガイの死後、親戚を頼る形でカルバードに移り、現在は兄のような捜査官になるべく、鍛練と勉学に励んでいた。その後クロスベル警察学校に入学し、今日は久々の休日ということでカルバードに戻ってきていた。そして、話しかけた相手は……

 

「ええ。僕がリベールに行くのは知っていると思いますが……同年代の子が周りにいなくて……てなわけで、ロイドを誘ったんです。」

「はは、その気持ちはわかるよ。でもニコル……俺はニコルのように音楽や工業系に詳しくないんだけれど……」

「それは解っています。捜査官を目指しているのですから、『護衛』ぐらいは問題ないかと……父には既に許可は取りました。」

翠の髪の少年……ニコル・ヴェルヌ。ヴェルヌ社現会長の息子にして、共和国ではちょっとした有名人……いや、ヴェルヌという肩書自体ちょっとどころではないが………後、ニコルはロイドと同い年ながらも共和国で五指に入る腕前のピアニストである。

 

「う~ん……許可が取れるかどうかは教官に聞いてみないと解らないけれど、もし許可が取れたら引き受けさせてもらうよ。」

「ありがとうございます、ロイド。」

「気にするなよ、ニコル。俺とお前の仲だろう?それに、ニコルのことは俺がきちんと守ってやらないと、ニコルのファンが悲しむしな。そう考えると、俺の責任は重大だな。」

ニコルの言葉にロイドは笑顔ではっきりと言い切った。その思い切りの良さはニコルにとってみれば羨ましいものだった。

 

「(相変わらずですね、ロイド……)そう言えば、この前ロイドのファンという人から手紙が何通かきていましたよ?」

「う……勘弁してくれよ。ちゃんと断りの手紙を書いたはずなのに……」

……実は、前に助っ人としてロイドに手伝ってもらった後……彼の姿に『母性本能がくすぐられる』という感じの内容のファンレターが届くようになった。最初は少数で、ロイドは丁寧に断りの手紙を書いたのだが……それが逆に火をつけてしまったようで、今では数十通……中には若手著名人まで含まれていた。

 

(まぁ……彼の事ですから、断っているつもりが無意識的に口説き文句を書いていると思うんですよね……僕ですら、恥ずかしいことを臆することなくよく書けますよ……)

ロイドの言語能力……無意識的な口説きは最早修正不可レベルであった。

 

その後、ロイドはニコルの護衛についてどういう扱いになるかその教官に連絡したところ、『せっかくの機会だから、実際に行って見てこい。お前さんにもいい勉強になるだろうしな。』という返答が帰ってきて……その翌日には、警察学校から課外活動許可届の書類が届くほどの手際の良さにはロイドも面食らったという……ともあれ、急いで書類を書き終えて叔父の認印を貰ってクロスベル警察学校宛に提出し、そのことをニコルに報告した。

 

 

~ルーレ市 ラインフォルト社 会長室~

 

エレボニア帝国では主なシェアを誇り、カルバード共和国のヴェルヌ社、リベール王国のツァイス中央工房、レミフェリア公国の総合技術局のように国を代表する企業―――ラインフォルト社の本社ビル。その一角の会長室には四人の人間がいた。現会長のイリーナ・ラインフォルト、会長秘書のシャロン・クルーガー、副会長のバッツ・ラインフォルト……そして……

 

「……私が、ZCFとの技術折衝役!?」

バッツとイリーナの娘……アリサ・ラインフォルトの姿であった。彼女はイリーナから言い渡された『総合博覧会での技術折衝役』を言い渡されたことに驚きを隠せずにいた。

 

「ええ。その時期は丁度『先約』の関係で動けないの。シャロンは私の随行、バッツは本社での取りまとめがある……となれば、貴方に行ってもらうのが丁度いいってことよ。」

「その意見は正論だけれども……私にそこまでの成果を期待されても困るわよ?」

「それは解っているわ。でも、貴女だからこそ行ってもらう意味があるのよ。」

イリーナの説明に色々納得はしたものの、『アリサだからこそ』というイリーナの言葉の意味が解らず、首を傾げた。その理由をシャロンとバッツが説明した。

 

「ZCFが誇る天才博士、アルバート・ラッセル博士。彼の孫娘であるティータ・ラッセルとのパイプを作り、ひいてはラッセル博士とのコネクションを持つのが目的ですわ。」

「………」

「あまり気が進まない表情だね、アリサ。だが、今のラインフォルトが置かれている状況は厳しい。内外に敵は多い……それを打破するための、切り札が足りない。」

そう言い放った理由……ラインフォルト社内の派閥関係もあるが、それ以上に西ゼムリア四ヶ国における技術的優位性のバランスが大きく変わったのが、先程バッツが言い放った『厳しい状況』ということに他ならない。

 

常に時代の最先端をひた走り……秘匿されているが、『功労者』―――アスベルらによって、既に三世代先の水準まで到達しているツァイス中央工房。その権威であるラッセル博士の教えを継いだティオが主導し、ZCFには遠く及ばないが、その時代の最先端技術力を有するレミフェリア総合技術局の販売部門であるフュリッセラ技術工房……その二つの製品シェアは各々の国内ではほぼ100%……それだけにとどまらず、クロスベル自治州の導力製品シェアの8割……帝国や共和国でもニつの製品シェアを合わせれば2割超のシェアを持っているのだ。大量生産ではなく安全性と耐久性を売りにしているその二つに対抗するためには、彼等の技術力を実際に見ることが不可欠である……その結論に達した。

 

「……気が進まないのは正直な感想だけれど、やるしかないじゃない。いいわ、引き受けようじゃない。」

「ありがとうございます、お嬢様。そう言っていただけると信じておりましたわ。」

「決まったわね。出発は来週初め……帝都知事に同行することになっているから、失礼のないようにね。」

「衣装は私が誠心誠意を以て選んで差し上げますわ。」

「いや………パーティーに行くんじゃないんだから、シャロン……」

「あはは、頑張ってくれアリサ。」

ラインフォルトで働く知り合いを路頭に迷わせたくないとはいえ………もはや『どうにでもなれ』と言った心境しか出てこないアリサであった。

 

 

~バルフレイム宮 宰相執務室~

 

「失礼します。」

「来たか……お呼び立てして申し訳ない、知事閣下。」

そう言って部屋に入ったのは帝都知事であり帝都庁長官であるカール・レーグニッツ。その姿を見た帝国政府宰相“鉄血宰相”ギリアス・オズボーンは立ち上がってカールの下に歩み寄った。

 

「いえ、お気になさらず。私は前準備のため来週初めにはリベール入りいたします。」

「カルバードからロックスミスが出る以上、本当ならば私自身が出向くところではあるが……知事にはこのような“微妙な時期”に大変な仕事を押し付けてしまい、申し訳ない気持ちで一杯……といったところではあるがね。」

「宰相の名代……大変名誉なことです。その名に恥じぬよう任を全ういたします。」

今回の不戦条約締結に際して……エレボニアは宰相名代としてカール帝都知事、カルバード共和国からはサミュエル・ロックスミス大統領、レミフェリア公国からはアルバート大公が出席する運びとなっている。更には、特別招待客としてクロスベル自治州からヘンリー・マクダエル市長をお招きする運びとなっている。

 

「その代りの計らいとしては少々物足りないものではあるが、知事閣下の息子さんも同伴させてはどうかね?」

「よろしいのですか?」

「元々派遣の人数に空きはある。一人増えたところで問題はない。」

「……わかりました。閣下の計らいに感謝いたします。」

一通り話し終えてカールが部屋を後にすると……窓際に移動して、外の帝都の風景を見ながら口元に笑みを浮かべた。

 

 

「ここまでは順調……リベール王国、その力の真価……見せてもらうとしよう。」

 

 

 

~アルトハイム自治州上空~

 

リベール行きの定期飛行船……その中の座席に座る一人の青年がいた。

 

「ったく……親父の奴、家出する俺にとんでもねえ仕事を押し付けやがって……」

そうぼやいたのは、鞄を持ちオレンジのコートを着た赤毛と翡翠の瞳の青年……ランドルフ・オルランドの姿だった。ランドルフもといランディは三日前、『赤い星座』を抜けた……その事情は本人しか知りえないことであるが……元々クロスベルに向かう予定だったが、『家出』の際にバルデルとシルフェリティアが

 

『ランドルフ……リベールに行って来い。』

『はぁ!?』

『フフ……きっと、ランドルフにとってはいい経験になりますよ。』

 

と言われ、更には『然るべき時までのリベール滞在』を言い渡される形となったのである。尚、その間の身柄の預かりは『剣聖』と呼ばれる人物にあるとまで言われ……下手に逆らえば怖い予感しかしなかったため、已む無くリベール行きの飛行船に乗っていた。

 

(けど、何でだ……冷や汗が止まらねえぞ………)

だが、リベールに向かおうとすればするほど、ランディの冷や汗が止まらなくなっていた。これにはランディもその原因がよく解らなかった。すると、一人の少女が彼の姿に気づいて声をかけた。

 

「あ、ランドルフ・オルランド。」

「ん?って、フィー・クラウゼル!?」

互いに異なる猟兵団に属する人間……厳密に言えば、ランディは抜けた人間ではあるが……そのことを知っていたフィーは隣に座って、話をつづけた。

 

「話は聞いてるよ。団を抜けたって。」

「ったく、あの親父……にしても、てめえが何で飛行船に乗ってるんだよ……」

「帝都に野暮用があったから。ところで、ランドルフは観光しにでも行くの?」

「親父が仕事を押し付けやがったんだよ……あと、俺の事はランディと呼べよ。」

「ん。」

互いに妙な立場でありながらも……ここで争う雰囲気などなく……呑気に会話をしていた。

 

 

 




新章……この章ですが、オリジナルの依頼のオンパレードです。今までキャラが薄目だった人たちがてんやわんや状態になります。

そして、零の軌跡メンバー……文章内でちょろっと触れていますが、一足先に空の面々と色々活躍してもらいますw

補足説明ですが……

レミフェリア公国の首都→オリジナル設定です。

ティオの両親絡み→解決しています。なので、ロイドとの設定もちょっといじりますw

ニコル・ヴェルヌ→共和国側のオリキャラです。イメージはニコル・アマルフィ(SEED)です。

アリサ→父親生存、イリーナが会長なのは変わりませんが、副会長に父親(バッツ)になっています。理由はその内明かすと思いますw


というか……空の時点でエステル・ロイド・リィンの三人を出す私はどうかしているようですw(すっごく今更感満載)

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