英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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『ふと思いついて書いていたら、こうなっていました。』

話のきっかけはこんな感じ。


第88話 二つの調査~三人の調べ事~

~飛行船公社前~

 

その頃、アガットとアネラス、そしてスコールは調査を終え、飛行船公社前にいた。

 

「ふむ、ここでも心当たりは無し、か……」

「ま、解り切っていたことだがな。とはいえ、無駄足という訳でもねえな。」

「どういうことですか、アガット先輩?」

「レンとか言うガキのことだが……俺の思い過ごしかもしれねえが、一瞬だけアイツ―――レーヴェに近しい雰囲気を感じた。」

そう言ったアガット……レーヴェと直接やり合った時に感じた雰囲気……無邪気な子どもさが前面に出ているレンではあったが、ほんの一瞬だけ彼に近い感じがした。

 

「ええっ!?……さ、流石にそれはないかと思いますよ。ほら、レンちゃんは可愛いですし!」

「何だよ、その根拠のねえ論じ方は……」

「はは……けれども、ヨシュアの事を考えれば、ありえない話ではないかと。」

「スコール君までアガット先輩の味方ですか!?」

アネラスの言い分は放っておくとして、身近にいた例―――ヨシュアが保護されたときは確か11歳。それからすれば、彼女が『執行者』であっても、何ら不思議ではない。だが、確証がない以上下手な詮索で混乱させないのが賢明だと結論付けることにした。

 

「ま、残ってるのはホテルぐらいだな。とっとと片づけちまうか。」

「そうですね。」

「む~、了解です。」

頬を膨らませているアネラスをよそに、アガットとスコールはホテルへと向かった。アネラスも渋々二人の後をついて行くように歩いた。

 

 

~ホテル・ローエンバウム~

 

「いらっしゃいませ……おや、スコール様ではありませんか。」

「久しぶりです、フリッツさん。」

「って、知り合いなの?」

「ああ。昔はアルゼイド流の門下生で、師範代を貰う前に辞めてしまったけれど……まさか、ホテルの支配人をやっているとは思ってなかったですよ。」

ホテルの中に入ると、ホテルの支配人であるフリッツがスコールに声をかけ、スコールも挨拶を交わした。アネラスはスコールとフリッツが知り合いだということが気になって尋ねると、スコールがその問いに答えた。

 

「へぇ~、そいつは凄いな。遊撃士なら間違いなくトップクラスの逸材だな。」

「ご謙遜を。私は、師範代の荷を重く感じて逃げ出した『臆病者』ですよ。それに、今の仕事は忙しいですが、やりがいを感じるとともに武の道に誘っていただいた侯爵閣下には感謝しております。」

アルゼイド家の人間が認める腕前ということにアガットは感心し、フリッツは謙虚な感じで苦笑を浮かべつつもヴィクターへの恩義は忘れていないことをスコールに伝えるかのように述べた。

 

「成程な……おっと、仕事を忘れちゃいけねえな。実は―――」

アガットは我に返って、フリッツに尋ねた用件―――脅迫状のことについて話した。

 

「そのことですか……私としても、全くと言っていいほど心当たりがないのです。」

「そうですよね。ローエンバウムと言えば、グランセルでもサービスの質が良いホテルですし……その、同業者という可能性はありそうですか?」

「そちらも私の方で当たってみたのですが……全くと言っていいぐらいになかったのですよ。寧ろ、『脅迫に屈せずにがんばれ』とエールを贈られてしまったぐらいですからね。」

そう言ったフリッツ……となると、此方で調査する分の三ヶ所で心当たりなしということとなった。こうなってくると、エステルらの聞き込みの結果次第でその脅迫状の真偽が明らかになってくる、ということだろう。

 

「そうか……協力感謝するぜ。あと、ヘイワースって名前に心当たりはねえか?クロスベル自治州の貿易商なんだが……」

「少しお待ちください……えと、およそ一か月前に宿泊されていますね。」

アガットの問いかけにフリッツはリストを確認すると、名前を見つけて三人に伝えた。

 

「一か月前というと……」

「クーデター事件の前あたりってことか。それ以降にここを訪れたことは?」

「いえ、ありませんね。ハロルドさんと言いましたか……あのような特徴的な色の髪をしている方ならば、一目見ただけで解りますし……少なくとも、偽名でここに来たということは無いですね。」

少なくとも、フリッツが嘘を言っているとは思えない。だが、レンがエルベ離宮にいたことを考えた場合、グランセルのどこかに宿を取っている可能性が高い。それを察したのか、フリッツが三人に提案をした。

 

「それでしたら、同業の仲間にも聞いてみます。もしかしたら、見かけている人がいたかもしれません。もし見かけたらギルドの方にご連絡いたしますので。」

「ああ、解った。協力感謝する。忙しいと思うが、頼むぜ。」

「ええ。そちらも頑張ってください。」

「フリッツさんも頑張ってください。」

「失礼しました。」

フリッツの厚意に感謝しつつ、三人はホテルを後にした。

 

 

~遊撃士協会 2階~

 

ホテルから戻った三人はエルナンに報告を済ませようとしたが、エステル達が戻ってきてからの方がよいということで、2階に上がって休憩していた。ちなみに、サラは手配魔獣の依頼で街道の方に出かけているとのことだ。

 

「さて、これでこっちの担当分は片付いたな。」

「意外にも早く終わりましたね。そういえば、クルツさんたちはまだこっちに来ないのですか?」

「それなんだが……どうやら、ボースの方で動きがあったらしくてな。クルツとカルナ、グラッツはそっちに行ってるらしい。」

アガットの話―――エルナンから聞いた話によると、クルツらは当初の予定通りルーアンとツァイスを回る予定だったが、ボースからの応援要請を聞いてそちらに向かったとのことだ。王国北部の方はラグナとリーゼロッテ、リノアにトヴァルが担当を受け持って仕事をこなしているらしい。

 

「何でクルツさんらが?」

「エルナンの判断だそうだ。こっちは生誕祭に博覧会、調印式というでかいイベントが控えてやがる以上、下手に人手は減らせない……その判断らしい。」

「まぁ、正論ですね。」

今回の事も含め、調印式まで軍の手伝いを受け持っている以上は人手が足りなくなることは避けたい。そのため、エルナンは適材適所という形でクルツらに救援を頼むよう指示したのだと考えられた。

 

「成程……あれ?スコールさん、その指輪……」

ふと、アネラスはスコールの首―――ネックレスのチェーンに括り付けられている指輪が目に入った。ただのファッションの一環にしては不釣り合いなほどに高価そうなもの……それを尋ねられたスコールはその問いに答えた。

 

「ん?ああ、これか?こう見えても既婚者だしな。」

「へっ!?只のファッションじゃないんですか!?確かに傍から見ても高そうな指輪でしたけれど……」

「はあっ!?確かお前、俺よりも年下だよな!?」

「こう見えて今年で20になるけれどな。というか、今まで聞かれなかったのが不思議なくらいだ。」

あっさりと言い放ったスコールの言葉にアネラスとアガットは驚愕した。目の前にいる人間が既婚者……しかも、彼は貴族であるアルゼイド家の人間……そのお相手がどうも気になり、アネラスが尋ねた。

 

「えと、ちなみにお相手は誰なんですか?」

「話すも何も、お前らも会ってる人物だぞ?」

「俺らが……?」

アネラスの問いかけに首を傾げつつ、二人の知り合いだと言い放ったスコールに、アガットは考え込んだ。少なくとも、アガットやアネラスが知る……つまりは遊撃士か協力員の誰か……それでも答えの出てこない二人を見かねて、スコールは言い放った。

 

 

 

「………サラ・バレスタイン。今の名前で言うと、サラ・バレスタイン・アルゼイド。俺の妻だ。」

 

 

 

「「はい!?」」

アガットとアネラスは二人そろって驚愕した。見るからにグータラなサラが結婚していたことも驚きだが、その夫が貴族であり、武の名門であるアルゼイド家の人間だという事実には驚きしか出てこなかった。

 

「あの酒飲みが既婚者ぁ!?」

「しかも、スコールさんとですか!?」

「うん、まぁ……その反応はある意味真っ当だから困る。でも、事実なのには変わりないが。」

意外な反応とでも言わんばかりに困惑する二人を見て、スコールは慣れたように言葉をつづけた。

 

「サラとの出会いだが……俺はかつて、『結社』に所属していたことがあった。六年前まではな。」

「『結社』に?っつーことは……」

「レーヴェやヨシュア……二人とも面識はある。俺のかつての異名は『執行者』No.ⅩⅥ“影の霹靂”……その時に、サラと出会ったのさ。」

 

『初めまして、と言っておこうか。俺はスコール。『身喰らう蛇』に属するものだ。』

『『身喰らう蛇』……』

最初に出会ったのは七年前。場所は帝都の郊外……こちらとしてはさしたる用件でもなかったのだが……歳にしては不相応の実力……それを感じた俺は、その後も気に掛けるようになっていた。その一件以降、幾度となく出会うこととなり、幾度も剣を交え………そして、気が付けば

 

 

『はぁはぁ……強すぎるじゃない、アンタ。』

『気に入った。俺と付き合う気はないか?』

『何よそれ……アタシに『結社』に入れとでも?』

『いや、今回の件で『結社』から抜ける。お前とは、恋人として付き合いたい。』

『………はあ?』

 

 

一目惚れだった。サラも最初は呆れていたが、彼女の仕事を手伝ううちに色々と彼女のことを知り、ますますその気持ちが強くなっていった。年上好きだと公言してスコールのことなど全く相手にしていなかったサラであったが……それから五年後、

 

 

『ねぇ……アンタ、キスの経験は?』

『いや、ないな。それが……ん!?』

『……これが、アタシのファーストキス……スコールのせいなんだからね。年上好きだったアタシを変えた責任、ちゃんと取ってもらうわよ。』

 

 

サラの方が根負けして、恋人として付き合うようになり……そして、その一年後に籍を入れた。ただ、本人は遊撃士として活動したいと言っていたことと、リベールではあまり気にされていない貴族と平民の結婚……それがお隣のエレボニアでは煩かったため、今でも“アルゼイド”の名は名乗っていない。

 

「とまぁ、こんな感じだな。」

「……帝国出身の奴らがきいたら、驚くだろうな。」

「恐らくな。」

「いやいや、アガット先輩!?何で感心してるんですか!?元とはいえ『執行者』がいるんですよ!?」

互いに複雑な表情をしているアガットとスコール……それとは対照的に慌てふためくアネラス。

 

「アネラスの言い分も尤もだが、コイツを倒したらサラが本気で怒るだろうからな……それに、今は俺達の協力者なんだろ?」

「ああ……その気持ちに嘘偽りはない。」

確かに元『執行者』がここにいること自体異常なのかもしれない。だが、彼の戦いを見ていたアガットからすれば、彼の意志に嘘偽りはない……アガットの遊撃士としての勘がそう告げていた。

 

「後は……女性を怒らせると怖い……俺は二度体感してるしな。そんな思いはもうごめんだ。」

「アガットさん?その、顔が青ざめてますが……」

「(えと、もしかしてエステルちゃんのことかな?)」

尤も、女性を怒らせると碌な目に遭わない……エステルと自分の妹であるミーシャのことを思い出したアガットは顔が青ざめ、それを見たスコールは気遣うように声をかけ、アネラスは冷や汗をかきつつもその片割れの心当たりが自分のライバルと公言している彼女―――エステルのことではないかと推測した。

 

……ちなみに、これはアガット達に言わなかったことではあるが、スコールの母親であるアリシア・A・アルゼイド……いや、アリシア・ライゼ・アルノール・アルゼイド……エレボニアの現皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノールⅢ世の実妹であり……つまり、ユーゲントの子であるセドリック皇太子、アルフィン皇女、オリヴァルト皇子とアリシアの子であるラウラとスコールは従兄弟の関係にあたる。

 

 




突発的に思いついたネタ。そして、原作×オリキャラのカップリング第一号。

てなわけで、初っ端救済?しちゃいましたwあと、スコールに『執行者』設定を加えました。

そして、彼女が姓を変えずに行動しているのも帝国の特性故、という理由付けもあっさりできましたw後は……この繋がりがあれば、オリヴァルト皇子からの誘いがあったという理由も生きてくると思いますのでw



私は悪くねぇー!!(責任転嫁)


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