英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第102話 鐘鳴る地の担い手

~王都グランセル~

 

各国首脳がリベールを訪れた翌日、女王生誕祭が幕を上げた。

 

第60回女王生誕祭―――その節目とも言える今年は、何時にもまして大変な賑わいとなっていた。とりわけ、先日の“再決起事件”があってか観光客の減少も懸念されていたようだが……暗いニュース続きだったからこそ、明るい話題として賑わいたいという国民の気質も相まっていつも以上の熱気に包まれていた。端の方からその様子を見つめる二人の人物―――ニコル・ヴェルヌとロイド・バニングスの姿があった。

 

「すごいですね、ロイド。カルバードでもこれほどの賑やかさはありますが、不思議な感じですね。」

「そうみたいだな。叔父さんにもいろいろ連れまわされたしな………個人的には思い出したくないんだけれど。」

ニコルの言葉に何かを思い出してため息を吐くロイド。祭りと言えば普通は楽しいイベントなのだが、彼にとって共和国の祭りは『曰くつき』のものとなっていた。その様子に心当たりがあったニコルはそれに答えるかのように言った。

 

「“彼女”のことですか……ロイドにしてみれば“天敵”みたいなものですしね。出発前にもロックスミスさんにしがみつかれてましたし。」

「はぁ……正直、俺なんかが彼女と釣り合いが取れないと思うんだけれどなぁ……美人だということは認めるけれど。」

ニコルの口から出た“ロックスミスさん”―――彼女はロックスミス大統領の実子であり、本人曰く『ろっくんの婚約者だよ~♪』とあちこちに言いふらしているようで、ロイドはその火消しに奔走していた……その行為がある意味火の中にガソリンをぶち込むぐらいのことをしでかしているということに当の本人は気付いていないが。

すると、二人に近寄る人物―――スコール・S・アルゼイドは両手に持っている飲み物が入ったカップを二人に手渡した。

 

「とりあえず、飲み物な。」

「ありがとうございます、スコールさん」

「すみません。パシリみたいなことをさせてしまって。」

「気にするな。俺にしてみれば慣れたようなものだ。」

カップを受け取った二人の言葉に、スコールは大したことなどしていないかのように答え、ニコルの横に座った。

 

「そういや、今チラリと聞こえたんだが……ひょっとして、ルヴィアゼリッタ・ロックスミスのことか?」

「ええ。共和国で最も実力の飛び抜けたピアニストにしてヴァイオリニスト……天然さも相まって、相当人気が高いです。僕にしてみれば立派な目標ですね。」

「帝国の“蒼の歌姫(ディーヴァ)”、クロスベルの“太陽の姫”と並ぶ共和国の“空の奏人(そらのかなでびと)”ねぇ。俺も雑誌で何度か顔を見たことはあるが………で、何で彼女の話が?」

ニコルの説明にスコールは思い出しつつもその説明に補足しつつ、何故彼女の話題が出たのか不思議に思って尋ねた。確かにロックスミス大統領の実子である以上、出てこないという話題ではないにしろそれを不思議に思ってしまったのだ。

 

「実はですね……彼女、ロイド君にぞっこんでして。昨日出発する際にも引き止められてましたし。」

「へぇ~……周りの人間は止めなかったのか?」

「止めないというよりは“止められない”んですよ……彼女、泰斗流の使い手ですし。止めようとしたら天井やら壁やら床に人型クレーターが量産されてしまいますし……父親である大統領閣下もその被害を被ってますし。」

「ああ………引き剥がすのに苦労したよ………」

泰斗流―――つまりはジンやリン、そしてヴァルターが学んでいた拳法を駆使するだけの実力を持つ。尤も、それを無駄な方向に使っているというのは否定しようもない事実であるが……

 

「尤も、ロイドも役得でしたよね。ラッキースケベとも言うべきですか。」

「あれは故意じゃないから!引き剥がそうとした時に誤って胸に手が触れてしまっただけだからな……」

「………」

「スコールさん!?何で黙るんですか!?」

その時に“美味しい”ハプニングがあったようであり、ロイドは疲れた表情を浮かべ、ニコルは苦笑し、スコールに至っては目を瞑って黙っていた。それを見たロイドはスコールに釈明するかの如く言い放った。

 

「いや、その女難っぷりというか……ロイドの兄にそっくりだよ。」

「ロイドのお兄さんというと……」

そして、スコールが口を開くと……そこから出た言葉にロイドのみならず、ニコルも目を丸くした。

 

「兄貴をご存じなんですか?」

「ああ……最後に会ったのは四年前ぐらいかな。それ以前も交流はあってな……尤も、あの御仁を射止めたセシルも相当苦労していたようだし。」

そう言って、スコールは話し始めた。

 

スコールとセシルの出会いはクロスベルの日曜学校だった。当時のスコールは結社を抜けたばかりで、自らを高めるための鍛練をするために父の紹介でクロスベルの遊撃士協会支部に顔を出していた。その際通うことになった日曜学校でセシルや彼女の親友であるイリア・プラティエとも仲良くなり……そして、セシルの紹介でガイと知り合うことになった。その時、ロイドとも面識があり……それを聞いたロイドが思い出してスコールに問いかけた。

 

「あ……あの時の少年がスコールさんだったんですか!?」

「ご明察。ようやく思い出してくれたな……ロイドは当時から魔性の魅惑を纏っていたが。毒牙に掛からなかったのはロイドの幼馴染ぐらいか。」

「毒牙って……というか、魔性って何ですか……俺にそんな大層な魅力なんてないですから。」

本人はこう言っているが、彼と仲の良かった友達の男女比はやや女の方が多めだった。それにはガイも頭を抱えたくなったが、『貴方が言えた台詞ではないですよ』という表情を浮かべたセシルの姿にスコールの中で冷や汗が流れた。事実、ガイが関わっていた人物……彼に対して恋愛感情を抱いていた人物は結構いたらしい……知らぬのは本人ばかりなりといったところであるが。

 

「成程……結構天然と言われるルヴィアさんを落としたのは、お兄さん譲りとも言えるロイドの魅力なんですね。」

「だから……俺にそんな魅力はないし、彼女の心を動かすような大それたことなんてしてないのに……」

「(自覚なし、か……コイツの妻は一体何人に増えるんだか……)」

ゼムリアの世界では、一夫一妻という縛りは存在しない。一応その辺りの決め事に関しては国ごとの対応―――『民法』という形で取り決めがなされているが、一夫多妻ということに関しては禁止しているところが少ないのだ。尤も、そのことを認識しているのは貴族位であり、この数百年間もの間に“一夫一妻”という考え方が定着し、そういった取り決めになっていることすら忘れ去られているのが実情である。

 

「にしても、ニコルはいいのか?どこか行くのならばついて行くことぐらいはするのに……」

ちなみに、ジンとサラは大統領の護衛ということでグランセル城に向かった。どうやら、アリシア女王との首脳会談のため……らしい。

 

「そうですね……ただ、博覧会のときに演奏イベントがありまして……それの練習で時間が取れなさそうなんです。」

「演奏イベント?」

「女王陛下の計らいだそうです。各国の著名人を招待して、四か国合同の演奏会を開催するんです。僕が随行しているのはその辺りもあったりしますし。」

ニコルの話によると、各国のアーティストや音楽院の生徒らも招く形で合同演奏会を開く催しとのことらしい。それを聞いたスコールは一つの疑問をニコルにぶつけた。

 

「待てよ……ニコル、それって彼女も来るということなんじゃないのか?」

「いえ…ルヴィアさんは共和国での音楽イベントが丁度重なっていますので、こちらに来ることは無いかと。」

「それは本当にありがたいよ……こんなところにまでルヴィアさんが来たら洒落にならないし……」

幸いにして、ロイドの精神的疲労の種はなさそうである。『今のところは』という前提が付くことになるが……すると、ロイドらには見慣れない組み合わせの三人組がスコールの姿を見つけて近づいてきた。

 

「あ、スコールさん。」

「ん?おお、ティオっち。久しいな。それと……何か異色の組み合わせだな。」

そう言ったスコールの言葉はある意味的を射ていた。なぜならば……

 

「えと、お久しぶりね。スコール。」

「まさか、アンタとここで出くわすことになるたぁな。“影の霹靂”さんよ。」

パールグレイの髪の少女、エリィ・マクダエル。そして赤髪の青年、ランディ・オルランドの姿だった。これにはスコールのみならず、ニコルやロイドも驚いていた。

 

「久しぶりだな、エリィ。あとランディ、その異名で呼ぶな“赤いヘタレ”」

「本来の異名よりもひでえな、オイ!それならちゃんとしたほうがマシじゃねえか!」

「五月蝿い。ある意味家出した奴をヘタレ扱いして何が悪い……エリィ、ティオっち。説明を頼む。」

ランディの言葉に不機嫌な表情を浮かべつつ皮肉ったスコールの言葉にランディは反論するも、息をつかせぬ物言いをしつつ、エリィとティオに説明を求めた。

 

「実はですね……アルバート大公の方はアガットさんやティータさん、レイアさんらとともに病院の視察に行ったのですが……私は魔導杖のテストもありますし、ちょうど来ていたエリィさんのお誘いを受ける形で一緒にいるんです。」

「俺はオッサンの頼みでな。それに、温泉と聞けば美味しい酒もあるに違いないという理由で引き受けたのさ。」

「まぁ……ランディが言ったけれど、エルモの方に行くことになったの。お祖父様の日頃の疲れを癒す場所としてエルモならいいかと思ってね。」

どうやら、各々の事情があっての行動……ランディのほうは私情入りまくりであるが。だが、何故スコールのもとを訪れたのかが気になった……それに答えるようにエリィが説明を続けた。

 

「で、スコールのところに来たのはアスベルから誘うように頼まれたのだけれど……」

「アイツか……ま、悪い気はしないし。受けることにするよ。(大使館に伝言ぐらいしておくか……)」

その依頼主を聞いて特に疚しいことではないと判断し、スコールは頷いた。そして、後で大使館に連絡をしておこうと思いつつ、ニコルとロイドの方を向いた。

 

「何だったら、ニコルとロイドも来るか?」

「え?ですが……」

「堅いこと言わねえの!たまには音楽以外のことで思い出位作らねえと後悔するぞ!というわけで、ニコルとロイドは参加(確定)だからな。」

「「拒否権なし!?」」

珍しくも強気かつ強引な物言いに二人は何も言い返せず、ニコルとロイドも参加することとなった。

そして、ロイドが自己紹介をした。

 

「えと、初対面だから自己紹介だな。ロイド・バニングスだ。出身はクロスベルなんだが、事情があって共和国で暮らしてる。よろしくな、三人とも。」

「え……」

「へっ……?」

「へぇ~……」

その自己紹介にエリィは目を丸くし、ティオは聞き覚えのある名字に首を傾げ、ランディはロイドの名前を聞いて興味深そうな感じでロイドの方を見ていた。

 

「あれ?なんかおかしいこと言ったかな?」

「ううん、違うの……私はエリィ・マクダエル。貴方と同じクロスベル出身よ。」

「レミフェリア総合技術局長ティオ・プラトーです。よろしくお願いしますロイドさん。」

「俺はランディ。ランディ・オルランドだ。堅苦しいのは嫌いだから、言葉遣いはタメ語で頼むぜ。」

その反応に戸惑ったロイドだったが、それを取り繕うように三人は改めて自己紹介をした。

 

「やれやれ……ニコル・ヴェルヌといいます。よろしくお願いします、エリィさん、ティオちゃん、ランディさん。」

「ええ、宜しくね。」

「こちらこそ、宜しくお願いします。」

「おう、よろしくな。」

ため息を吐きつつ、ニコルは自己紹介をしつつ挨拶を交わした。

 

スコール、ニコル、ロイドは一度三人と別れて大使館に説明した後、ある程度の荷物を持って三人と合流し、他の面々との合流場所―――現地集合という形ではあるが、飛行船に乗ってツァイスに降り、そこから徒歩でエルモに向かうこととなった。

 

~ツァイス市 南側入口~

 

一行は南側の入り口―――リベールの名所の一つであるエルモ温泉とカルバード共和国を結ぶ関所、ヴォルフ砦へ行く道があるトラット平原へとつながる場所に着くと、一度立ち止まってスコールが問いかけた。

 

「さて、この先の街道には魔獣が出てくるわけだが……話を聞いているエリィやティオっち、それとランディはいいとして、ロイドとニコルは?」

「後方支援位なら何とか……」

「武術ならそれなりには……こう見えて捜査官を目指している身ですから。」

スコールの問いかけにニコル、ロイドが答える。

 

「そうなの……よろしくお願いしますね。」

「敬語はいいよマクダエルさん、見たところ年も近そうだし。」

「そう?ちなみに私は16だけど。」

「ああ、それなら俺やニコルと同い年だ。」

敬語で話したエリィにロイドは歳がそう変わらないことを確認して、続けて言葉遣いや呼び方もタメ語でいいと伝えた。

 

「それでしたら僕の事は名前でいいですよ、エリィさん。」

「なら、私の方も名前でいいわよ。よろしくね、ロイドにニコル。」

「ああ、こちらこそな、エリィ。えっと、あなたたちは………?」

エリィの答えを聞いて頷いたロイドはランディとティオを見回して尋ねた。

 

「俺は19だが、堅苦しいのは苦手だからタメ口でいいぜ。よろしくな、ロイド、エリィ、ニコル。」

「ええ、こちらこそ。」

「ああ、よろしく頼む。」

「よろしくお願いします。」

尋ねられたランディは答え、ランディの言葉に頷いたロイド、エリィ、ニコルの三人はランディと共にティオを見つめた。

 

「………えっと……それで、君の方は………?」

「12ですが、問題が?」

「い、いや、別に問題があるわけじゃ………って、12歳ッ!?」

あっさりと出てきたティオの答えを聞き、ロイドは苦笑しながらティオを見つめたが、すぐに驚きの表情で叫んだ。

 

「ハハ、なんだ。見た通りの歳ってわけか。」

「驚いた………そんな若いのに、局長だなんて……」

ランディは笑みを浮かべ、エリィは驚きの表情で見つめた。

 

「いやいや、普通に考えたら常識外れだし!労働基準法とかそこら辺はどうなってるんだよ!?」

「まぁ、よく言われますよ。けれども、ティータさんだって同い年にして導力技術にかなり長けていますし、別に変なことではないかと思いますが?」

驚きを隠せない様子にティオは慣れたような表情を浮かべつつ素直に反論した。

 

「ティオっち、それは比較すべき対象がおかしいから。ちなみに俺は20だ。ま、タメ口でいいわ。俺自身年上にタメ口使うこともあるしな。」

それには『その説明はおかしい』とツッコミを入れつつも、スコールも自分の年齢を述べた。そして、スコールは言葉をつづけた。

 

「とりあえず、互いの戦闘スタイルは確認しておくか……俺の得物はこれだ。」

そう言ってスコールが取り出したのは二丁の銃。そのフォルムは他の導力銃から見てもどこかしら重厚的かつ未来的な印象を感じさせる形をしている。

 

「へぇ、双銃とは珍しいな。」

「まぁ、厳密に言えばコイツは単なる銃じゃない……ブレード展開。」

感心するようなランディの言葉に笑みを浮かべてスコールがキーワードのようなものを呟くと、二丁の銃は変形して二本の片刃剣―――銃に剣を組み合わせたような形状に“変形”した。更には、その二つを組み合わせると一本の大剣へと“合体”したのだ。

 

「へ……武器が変形に合体!?」

「凄いわね……」

「そんな武器……見たことも聞いたこともありません。」

「オイオイ……凄いってレベルじゃねえぞ。」

「驚きしかないですよ……ヴェルヌ社でも作れない代物です。」

その武器にロイド達は最早驚きしか出てこない様子であった。無理もない……現行の技術水準で行けば『ありえない』部類の武器だからだ。

 

「魔導双銃剣『エグゼクスレイン』…出所に関しては俺もよく解らないが…俺にしか扱えない、俺専用の武器さ。(というか、コイツの出所は流石に明かせないからな……)」

スコールの持っている武器……盟主から齎された“外の理”の魔剣と『十三工房』の技術を組み合わせた代物。銃・片刃剣・大剣の三形態を駆使することで、どの距離にも対応した代物であり、総合武術である“アルゼイド流”の師範代であるスコールだからこそ、この武器を余すところなく使いこなすことができるのだ。

 

「ま、状況に応じて“遊軍”ができるということだな。ティオっちはその『魔導杖』か?」

「ええ……ちなみに、皆さんの武装は何ですか?」

「僕はこれですね。」

ティオの問いかけにまず反応したのはニコル。取り出したのは魔導弓(オーバルアーチェリー)であった。

 

「ソイツは弓だな……」

「ええ。導力ユニットを搭載していますから、矢に属性を持たせることもできます。ただ、ZCF製のものには勝てませんが……」

「愛着のある武器で戦う……それも悪くないと思うわ。」

「でも、後方支援としては問題ないですね。ロイドさんはどんな武器を?」

ランディが感心したようにそれを見、ニコルが魔導弓の説明した。武器の使い込みの度合いを見てエリィは笑みを浮かべ、似たような戦闘スタイルだと思いつつ、ティオはロイドに尋ねた。

 

「ああ。俺の得物は、これだよ。」

尋ねられたロイドは自分の武器―――“トンファー”を見せた。

 

「それは、警棒の一種……?」

「トンファーか。東方で使われる武具だな。殺傷力より防御と制圧力に優れているらしいが……」

「普通のトンファーならそうですが……ロイドの使っているトンファーはヴェルヌ社製の特殊なトンファーです。」

「特殊、ですか?」

エリィがその出で立ちに首を傾げ、ランディが思い出すかのようにその武器の事を述べ、ニコルはそれに説明を加える形で言い、ティオがそれに問いかけた。

 

「ああ……何でも、衝撃を蓄積・解放する機構のテストタイプを搭載しているんだ。スタンハルバードに近い感じかもしれないな。」

トンファーへの衝撃を全て内蔵された特殊な結晶回路内に蓄積し、それらを威力として変換して打ち出す機構……スタンハルバードの変換ユニットに近い印象だが、これを装備したことによる使用者への“反動”の関係から今のところロイドにしか扱えない代物と化している状態……ロイドはテスト要員としてこのトンファーのデータを取るために使っているとのことだ。

 

「それでエリィの得物は?」

「私が主に使う武器はこれね。」

「導力銃……少し古いタイプですね。」

「ずいぶん綺麗な銃だな………」

ロイドに尋ねられたエリィは導力銃を見せた。

 

「競技用に特別にカスタムしてもらったものよ。旧式だけど、狙いの正確さは期待してくれてもいいと思う。で、ランディはどういう武器なのかしら?」

「ん?ああ。俺の得物はコイツだ。」

エリィに言われたランディは自分の武器―――スタンハルバードを見せた。

 

「それは………ずいぶん大きな武器だな。」

「以前、財団の武器工房で見かけたことがあります。導力を衝撃力に変換するユニットが付いていますね。」

「ああ、スタンハルバードだ。ちょいと重くて扱いにくいが一撃の威力は中々のもんだぜ。」

「スタンハルバード……成程、レイアの使っていた武器と同じ系列なのね。」

ロイドらの言葉にランディは説明し、エリィはそれを使いこなしていた人物―――レイアの名前を出した。すると、それに反応したのは他でもないランディであった。

 

「へっ……お嬢、今『レイア』って……」

「お、お嬢って……ひょっとして、ランディがレイアの言っていた『お兄さん』なのかしら?」

「ああ……レイアは俺の妹でな。アイツの膂力は半端ねえからな……」

ランディのエリィに対する呼称に困惑しつつも以前レイアから聞いていたことを尋ねると、ランディは疲れたような表情を浮かべつつ頷いて答えた。

 

「ええ。魔獣をホームランするぐらい、朝飯前だったわ。」

「……はい?」

「身近に『非常識』がいるなんて、凄いですね。」

「……正直ありえないと思いますが。」

「アイツなら平気でやりかねないのがなぁ……」

エリィの言葉にロイドらは各々の反応を返す。ただ、彼女の事をよく知るランディを除いて共通していることは『人間業じゃない』という思いで一致していた。

 

「色々凄いな………まぁ、ティオの杖が、どういうものかわからないけど………魔獣との戦闘になったらバランスよく戦えそうだな。」

色々説明を聞いたスコールは頷いた後、エリィ達を見回して言った。

 

そして、一通り確認し終えた後、スコールらはトラット平原へと向かった。

 

 




オリキャラ一人増えましたw共和国勢の印象薄かったので、強烈なキャラを持ってくることにしました。
『どこかしら天然っぽい』『武術に秀でてる』……あと『CV=ミスティの中の人』。イメージについてはお察しください。

次回、特務支援課組戦闘の巻。

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