英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第111話 銀の騎神

~ルーアン地方 ジェニス王立学園~

 

アスベル、シルフィア、レイア、シオン……それに、カリンの五人が飛行船に乗ってルーアンに、そこから徒歩で学園に着くと、彼らの姿を見かけたコリンズが声をかけた。

 

「おお、シオン君。」

「学園長。珍しいですね、こんな時間に……で、どうしました?」

「うむ。詳しい話は中で話した方がいいだろう。」

コリンズはそう言って五人を学園長室へと案内した。

 

 

~本校舎内 学園長室~

 

「鐘の音……ですか?」

何でも、コリンズが言うには……先月の旧校舎の調査から一か月後……エステルらがブルブランと対峙した後のことではあるが、その辺りから鐘の音が聞こえたというのだ。

 

だが、それが聞こえたのは全員ではなく……生徒会長のジル・リードナー、副会長のハンス・シルベスティーレ、書記のミーシャ・クロスナーの三名のみであった。彼等自身も最初は各々そのことを知らず空耳であると思っていたのだが、この前三人で遅くまで残っていた際にその音が聞こえ、三人揃ってその音が聞こえたことに首を傾げていた。念のため、コリンズに相談してきたので、コリンズもどうしようかと思っていた時であった。

 

「それで、その鐘の音が旧校舎のものではないかと三人は言っておったのだが……シオン君、その調査を頼めないか?」

「………解りました。確認してみる必要性はありそうですね。それに、こちらとしても色々世話になっていますしね。」

コリンズの頼みにシオンは頷き、旧校舎への鍵を受け取ると、学園長室を出て旧校舎へ向かった。

 

 

~ジェニス王立学園 旧校舎~

 

五人が旧校舎に着くと、その目的の建物である旧校舎の様子がおかしいことに気付く。それは、旧校舎全体が青白く光っていたからだ。

 

「旧校舎が光っている……」

「(ねぇ、これって……)」

「(可能性はありそうだな。)」

青白く光る建物。そして、旧校舎の周りを結界のようなものが覆っている。このような状況は初めてなだけに色々思うところはあるが……転生前の自分らが知っている『例の士官学院』と同じ状況になっていることを察した。となると……そう思ってアスベルは『ALTIA』を取り出す。すると、オーブメントが光っており、まるで旧校舎と共鳴しているかのような感覚が走った。

 

「これは……」

「共鳴している……『ALTIA』と旧校舎が……」

「みてえだな……」

「あの、四人とも……それは一体?見たところオーブメントのようですが……」

そして、同じように『ALTIA』を持つシルフィア、レイア、そしてシオンもその共鳴現象を見て、驚きを隠せず、一方……そのオーブメントを見たことがないカリンは驚き半分不思議半分で尋ねた。

 

「ええ、そのようなものです。どうやら……この建物の中には俺とシルフィ、レイア、シオンの四人しか入れないようです……カリンさんは学園内にて待機を。念のため、鐘の音が聞こえた三人のケアの方もお願いします。」

「……見たところ、そうするしかないようですね。解りました。四人に“空の女神(エイドス)”加護あらんことを。」

『ALTIA』を持つのは、この場面では四人しかいない……カリンはアスベルの言葉に頷き、その場を後にした。そして、アスベルらは旧校舎の中に入っていき、エステルらが行きついた地下の最奥部に向かった。

 

 

~ジェニス王立学園旧校舎 最奥部~

 

エステルらがブルブランと戦った最奥部……その場所は様変わりしていた。

 

「これは……!」

「扉………」

最奥部……いや、最奥部『であった』場所というべきであろう。その場所には光る歯車が両脇で動き、巨大な扉が立ち塞がっていた。となると、エステルらが戦った遺跡の守護者―――ストームブリンガーはこの扉の『鍵』であったと推測される。

すると、五人の脳裏に響く声。

 

 

―――時ハ至ッタ。周囲ニ<起動者>ノ存在ヲ確認。コレヨリ、『第二ノ試練』ヲ開始スル。

 

 

「ぐっ……」

「シオン!?」

「(この反応……まさか、シオンがこの先に眠っている物の<起動者>なのか?)」

聞こえた声が話し終えた直後、シオンは胸のあたりを押さえて苦しそうな表情を浮かべた。これにはレイアも驚いたが、アスベルは心配そうな表情を浮かべながらも彼の持っている『もう一つの力』ではないかと推察した。

そして、扉のロックが外れる音がした後、扉が開いた。だが、何かが渦巻いているようで、その先を確認することは出来ない。

 

「……シオン、行けそうか?」

「ああ……どうやら、俺に用があるみてえだからな……」

シオンが言うには、学園に入ってから胸の痣が痛み出したらしく、最初は病気の類とも思ったが……身体は健康そのものであるという診断結果から、何であるのかという追及は避けていたらしい。だが、時ここに至り、最早引き返せない様相であるというのは、言うまでもないであろう。何せ、ジルやハンス、ミーシャが苦しんでいる以上、引き返すわけにもいかない。

 

「行こう、アスベル、シルフィ、レイア。」

「ああ!」

「うん。」

「了解~」

シオンの言葉に三人は頷き、扉の先へと進む。

 

 

~巨(おお)イナル影ノ領域 領域ノ一→最奥部~

 

扉の先に広がる世界……もはや普通の常識で語ることができない“異空間”。その光景に四人は各々の反応を示していた。

 

「これは……」

「異空間……まるで“あの場所”みたいだね。」

「へぇ……あの場所に私達が立っているなんて、感慨深いね。」

「まぁ、気持ちは解らなくもないがな……」

確かに、自分らにとってみれば『画面の向こう側』だっただけに、いまこうして似たような場所に立っていることには感慨深いものがあるのは事実。だが……ここでのんびりしていられないのも事実だ。アスベルらは領域の仕掛けを解き、立ち塞がる魔獣を難なく退け……そして、最奥部にたどり着いた。

 

ちなみに、全員のレベルはというと………

 

アスベル:Lv.160 シルフィア:Lv.159、レイア:Lv.155、シオン:Lv.152(碧基準)

 

……原作からすると、おかしいレベルではある……だが、彼等は『潜り抜けた場数』が他の面々と違いすぎるのだ。『百日戦役』『教団制圧事件』『ギルド襲撃事件』……その他にも、大規模な組織と渡り合ったこともある。そして、『結社』とも……その経験による蓄積が、今日の彼等を形成しているのだ。だが、彼等の到達点はここではない。彼らの目指す『到達点』……それは絶対なる力を持つ『神』。それに匹敵しうる力まで磨き上げることである。

 

そして、彼らが全力を出すのは……それが必要となった時だけ。だが、慢心はしない。その甘えが自らの命を奪うことにも繋がる。故に、必要となれば全力を出すことも躊躇わない。

 

最奥部に立ち塞がるのは“扉”―――彼らの姿を見たのか、気配を感じ取ったのか……扉の中央に填められた“宝珠”が眩く光り始め、周囲に“声”が響き渡った。

 

<起動者>候補ニ告ゲル―――コレナルハ“巨イナルチカラ”ノ欠片。手ニスル資格アリシカ……『最後ノ試練』ヲ執行スル―――

 

そして、“宝珠”は更に輝き、四人は取りこまれた―――

 

 

~影ナル試練ノ領域~

 

四人が目を開けると、其処に広がるのはモノクロの世界……剣と槍が無数にも地面に突き刺さっており、まるで凄惨な戦場跡……言うなれば、ここが『影ナル試練ノ領域』ということだろう。

 

「ここが……」

「実際にこう目にすると、とんでもねえ場所だな。」

「確かに……」

「!!皆、来るよ!」

シルフィアが感じた『気配』……すると、影が集まり……一体の巨大な魔物を生み出す。

 

「ロア・エレボニウス……いや、ここはリベールだから、さしずめ『ロア・リベリニアス』って感じかな。」

「どうやら……やるしかないか。」

「ま、最初っからそのつもりだったけれどね。」

「それじゃ……はりきっていきますか!」

その魔物―――『ロア・リベリニアス』は雄叫びをあげて四人を威嚇するも、その四人はそれに怯むことなく、各々武器を構えた。その様子を見たロア・リベリニアスは仲間を呼び、周囲に小型の影の魔物が姿を現す。

 

「解析完了―――HPは………え?」

敵の解析をしたシルフィア。だが、彼女はその魔物―――ロア・リベリニアスのHP数値に驚いていた。

 

ロア・リベリニアス HP:2,000,000(二百万)

 

「ゴメン、ツッコミどころしかないんだけれど……これ、ラスボス戦だった?」

「周囲の敵も解析したが……HP二十万って……単体でエレボニウスに匹敵ってなんだこれ……」

「………全力で戦えってことね。これ。」

「だな。」

四人は頷き、『ALTIA』の機能―――『戦術リンク』を解放する。そして、各々は真剣な目つきになり、闘気を解放する。その闘気は最早、人という枠組みすら踏み越えた『力』であるということは、彼ら以外の人間がいたらそう思うことであろう。

 

「守護騎士第三位“京紫の瞬光”アスベル・フォストレイト。」

「王室親衛隊大隊長“紅氷の隼”シオン・シュバルツ!」

「守護騎士第七位“銀隼の射手”シルフィア・セルナート!」

「守護騎士第三位付正騎士“赤朱の槍聖”レイア・オルランド!」

「「「「いくぞ(わよ)(きます)!!」」」」

世界の不条理という『壁』を経験した“転生者”………その四人は今、下手をすれば神に近き力を顕現する“巨(おお)イナル影”ロア・リベリニアスに持てる力全てを懸けて挑む!

 

「さぁ、みんな……油断せずに行くぞ!!」

「ああ!」

「ええ!」

「オッケー!」

アスベルの掛け声にシオン、シルフィア、レイアは力強く頷き士気を高める。

 

「!!」

ロア・リベリニアスはエネルギーを収束させ、四人のもとに光の奔流を放つ。その光をかわすように四人は散開した。

 

「そんじゃまぁ……最初からクライマックスで行くぜ!ミラージュ・ブレイク!!」

先鋒はシオン。防御能力を低下させ、遅延効果を発生させるクラフトを放ち、ロア・リベリニアスと周囲の敵は容赦なくその攻撃を受けた。シオンはそれを確認すると、次の攻撃の準備のためにオーブメントを駆動させ、いったん下がる。

そこに入ってくるのはアスベル……ここから彼が振るうのは、八葉一刀流九つ目の型“破天”―――八つの型の技巧を組み合わせた技を繰り出す。

 

「九頭竜、業炎刃!」

一の型“烈火”と六の型“蛟竜”の混成技、『九頭竜業炎刃』をフィールド全体に放ち、荒れ狂う九つの斬撃は竜の如く敵を飲み込んでいく。だが、ロア・リベリニアスはそれに怯むことなくアスベルに襲い掛かるが、アスベルはそれを見越して次の技の準備を“終えていた”。

 

「絶氷瞬迅剣!!」

三の型“流水”、四の型“空蝉”……そして、七の型“夢幻”を用いたカウンター技『絶氷瞬迅剣』を至近距離から叩き込み、ロア・リベリニアスを怯ませることに成功する。それを見たアスベルはロア・リベリニアスの背後へと回り、ロア・リベリニアスの左側面に退避していたシルフィアがアーツを放つ。

 

「いきます!『ALTIA』同時駆動、『エクスクルセイド』『アルテアカノン』発動!!」

空属性全体攻撃アーツ『エクスクルセイド』『アルテアカノン』を放ち、先程アスベルの攻撃でダメージを受けたロア・リベリニアスと周囲の魔物に直撃し、魔物はその攻撃に耐え切れずに消滅する。それをみたロア・リベリニアスはまたもや影の魔物を呼び出し……そして、散らばった四人に対して全体の薙ぎ払いでダメージを与えようとするが、

 

「「「「アースガード!!」」」」

予め準備していた『アースガード』で完全防御し、その場をしのぐ。だが、ロア・リベリニアスは更にエネルギーをチャージさせ始めた。次も『アースガード』で凌げたとしても、正直いたちごっこになるのは目に見えている。

 

 

ならば―――彼等の『持ちうる力』全てを叩き込めば、勝機はある。

 

 

―――我が深淵にて煌く、紫碧の刻印よ。我が求めに応え、七耀に聖別されし力の鍵となれ。

 

 

「はあっ!せいやっ!!これで、決めてやるっ!!」

アスベルは<聖痕>を発動させ、それを『鍵』として自身の中に眠る『七の至宝』が一つ『刻の十字架<クロスクロイツ>』を顕現させる。そして、太刀に収束するは時属性の力……アスベルはそれを鞘にしまい込んで駆け出し、ロア・リベリニアスと魔物を蹴りで叩き落とし、蹴り飛ばす。そして、自身も蹴り飛ばされた魔物の群れに飛び込み、EXクラフトを発動させる。

 

 

「斬空刃無塵衝……九十九之神(ツクモノカミ)!」

 

 

最早人智すら超えた―――歩法“刹那”を用いて、一つの斬撃がSクラフトに匹敵する九十九連撃の斬撃技。アスベルが咄嗟に思いついたSクラフト『斬空刃無塵衝-九十九之神-』により、かなりの体力を持っていたロア・リベリニアスもかなりのダメージを負わせることに成功した。だが、その反動でアスベルも疲れでその場に膝をついた。

 

「きっかけはできた………三人とも、一気に行け!!」

その掛け声に三人は頷き、自身の考えうる最高のSクラフトを放つ。

 

「先鋒は私……我が深淵にて煌く白銀の刻印よ。全ての敵を討ち貫く数多の刃となりて、汝を討ち果たさん!」

シルフィアの背中に現れる<聖痕>。それが眩く光り輝くとともに、シルフィアの周囲に顕現する光の刃。だが、次の瞬間にはロア・リベリニアスの周囲に顕現する―――そして、シルフィアは指を鳴らすと、容赦なくその刃はロア・リベリニアスを襲う。

 

「聖天、百花繚乱!!」

シルフィアの<聖痕>によって強化されたEXクラフト『聖天・百花繚乱』が放たれ、ロア・リベリニアスもダメージを負う。その隙を見逃さないようにレイアが既に待機していて、シルフィアはそれを瞬時に察してその場を離れる。

 

「我が名は“槍聖”。全ての敵を討ち貫くものなり。」

掲げた魔導突撃槍に集う闘気の渦。それをロア・リベリニアスに撃ち出し、ロア・リベリニアスと周囲の敵は完全にロックされる。それを確認すると、膨大な闘気を纏って槍を掲げると、一気に加速する。

 

「絶技、グランドクロス!!」

レイアが今持てる力の全て―――全力のSクラフト『絶技グランドクロス』を受け、魔物は散り、ロア・リベリニアスもかなりのダメージを負った状態にまで追い込んだ。

 

だが、彼等の攻撃はまだ残っている。アスベル、シルフィア、レイア……そして、この試練で試されているであろうこの人物が。

 

「サンキュー、三人とも……ハアアアアアアアアアアアァッ!!!」

シオンは目を見開き、力を覚醒させる。白銀の髪にかつての色であった『真紅』の瞳。そして、彼が繰り出すのは……かつて使っていた技。剣の師匠からは使用を封じられ、アスベルにも破られた技。それをより高めたシオンが繰り出すSクラフト『絶技ディバイン・クロスストーム』をも超えたEXクラフト―――白隼の血族に生まれながらも過酷な人生を歩んできた彼だからこそ完成できた戦技が炸裂する。

 

「王家の血筋、その身に焼き付けろ!この技で沈め!アカシック、ノヴァァァァァッ!!」

膨大な闘気は隼の姿を顕現させ、その闘気と刃を相手にぶつける突撃技。シオンが今持てる全ての力を込めたEXクラフト『アカシック・ノヴァ』がロア・リベリニアスにぶつけられた。

 

その奔流にロア・リベリニアスはその原型すら保てられず………影は次第に崩れ落ちはじめた。

その中で、四人に再び声が聞こえた。

 

 

―――コレニテ『最後ノ試練』ハ完了。<起動者>ヨ、覚悟セヨ。コレナルハ“巨イナルチカラ”ノ欠片。世界ヲ呑ミ込ム“幻”ニシテ“牙”ナリ―――

 

 

その声と共に、四人の視界は白く包まれた………。

そして、四人が目を覚ました場所は最奥部の扉の前だった。

 

 

~巨イナル影ノ領域 最奥部~

 

「……大丈夫か?」

「ああ。」

「そうだね。」

「まぁ、何とか……」

一番最初に目を覚ましたアスベルが三人を起こすと、三人も目を覚まして無事を確認する。

 

それ以外の変化とするならば、扉にあったはずの宝珠が無くなっていることぐらいだろう……すると、扉が静かに開きはじめ……完全に開ききると、灯る光。そこにあったのは………一体の兵器。それも、『結社』の持っている物とはフォルムが異なり、流線形のデザインとなっていた。

 

「『騎神』……」

「しかも『銀の騎神』か……まぁ、<起動者>に関しては該当者一名だが。」

「解ってるから……“銀の騎神”『イクスヴェリア』……それが、コイツの名前だ。」

「『イクスヴェリア』……これはまた、凄い名前だね。」

 

 

シオンの剣となる銀の騎神。その出番が来るのは、そう遠くない未来なのかもしれない。

 

 




アスベル達が本気出したら、あれぐらいのHPぐらい削れるのでは……そう思って書きました、ハイwだから策に徹していたり、クラフトで済ませたりしてるわけです。

今回の話の発端はSCでのストームブリンガーですね。しかも、建物の出で立ちが数百年前からあるとかなんとか……あれ、空シリーズだとそこら辺触れられてなかったような……ということで、書きました。


……まあ、これでオーバルギアの強化フラグも立ちました。頑張れ、アガットさん(他人事)

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