~エレボニア=クロスベル国境 ガレリア要塞~
エレボニアとクロスベルの国境…エレボニア側に建設された軍事拠点である要塞に、拠点の制圧作戦に参加する5カ国の有志たちが集っていた。各国のエリートやエース級の人材が揃い、この作戦への意気込みを感じさせるほどだ。
「僭越ながら、私が今回の指揮を執らせていただきます。」
遊撃士協会からは今回の指揮を執るA級正遊撃士“剣聖”カシウス・ブライト
エレボニア帝国からは帝国でも五本の指に入る実力者である“隻眼”ゼクス・ヴァンダール少将
カルバード共和国からはトップクラスの遊撃士である“不動”ジン・ヴァセック
クロスベル警察からは数々の実績を挙げているセルゲイ・ロウ、ガイ・バニングス、アリオス・マクレインの三人
七耀教会からは守護騎士第三位“京紫の瞬光”アスベル・フォストレイト、第三位配属の正騎士であるレイア・オルランド、第七位“銀隼の射手”シルフィア・セルナート……星杯騎士団ということを表立って名乗れないため、表面上はカシウスが推薦した協力員という形での参加である。
そして、レミフェリア公国とリベール王国からの有志にカシウスやアスベル達を除く面々は驚愕することとなる。
「レヴァイス・クラウゼル。アルバート大公とは個人的な付き合いがあり、今回は友の代理として参加させてもらう。……一応言っておくが、レミフェリアに雇われたわけではない。『友』としての個人的な協力だ。」
「ヴィクター・S・アルゼイド。アリシア女王からの要請と個人的感情により馳せ参じた。」
「なっ、何だと!?」
“猟兵王”と“光の剣匠”……その二人の登場は特にゼクスを驚かせた。かたや百日戦役で辛酸を舐めさせられた相手、かたやかつては帝国の双璧と謳われたアルゼイド家当主自らの登場なのだから。
「久しいな、ゼクス殿。ご壮健そうで何よりだ。」
「お久しぶりです、子爵殿。なぜ、貴方が……?」
「私とて、一人の親だ。今回の事は私にも参加させてもらう理由はある、ということだ。甥を持つ貴殿と同じくな。」
ヴィクターは静かに呟く。だが、それ以上に彼の内心は激情が渦巻いていた。彼の愛しい妻と一人娘が狙われたのだ。傍にいたから命に別条はなかったが、ここまでの外道に最早慈悲など必要はないと感じていた。だからこそ、今回の作戦に自ら参加する運びとなった。
一方、ゼクスお付きの帝国兵はレヴァイスに敵意を向けていた。
「“猟兵王”……!おまえさえいなければ、エレボニアは…!!」
「……ゼクス、お前の部下は『やるべきことが見えない阿呆』ばかりなのか?少しばかりはお前に同情するよ……」
「貴様、我らを愚弄する気か!?」
怒りや憎しみの感情を向ける帝国兵にレヴァイスはため息をつき、ゼクスに尋ねる。
兵士はレヴァイスを睨み、剣や銃を抜こうと構えるが、
「矛を納めろ!」
ゼクスは怒号を放ち、兵士は押し黙った。
「申し訳ない、どうにも血気盛んな輩ばかりでな……」
「気にするな。俺も少し言い過ぎたからな。おあいこということだ。」
「……貴殿の配慮に感謝はしよう。」
かつての敵と組む……エレボニアにとってみれば、納得いかない部分もあるだろう。だが、今は国同士で争っている場合などではない。相手は、国などという枠組みを超えて動いている組織……外道の輩なのだから。
「だが、一つ聞きたい。貴殿のような人間がなぜこの作戦に?」
「アンタや“光の剣匠”と同じさ。俺にだって守りたいものがある。そこに素性は関係ないだろう?幼き子を身内に抱える者同士なら、な。」
「……成程」
立場が違うとも、人らしくあろうとすることは誰もが認めることでありながらも……立場の違いというものは、それだけでも見方を決めてしまうことも事実だ。だからこそ、レヴァイスはこの作戦に協力することにした。自らの信念を示すために。
更に、リベールからもう一人…アスベル達がよく知る少年、シオン・シュバルツだった。
「久しいな、シオン」
「ああ、アスベル達もな。しっかし……そこにいる彼女も戦うのか?」
「……戦力だけで言えば、『戦鬼』クラスだ」
「は?」
アスベルと言葉を交わすシオンはレイアの姿が目に入り尋ねるが、アスベルの発言に『一体何を言っているんだ』と言わんばかりの表情を浮かべてアスベルの方を見た。
一通りの自己紹介を終えた後、カシウスは今回の概要を説明し始めた。
「さて……これより『D∴G教団壊滅作戦』を行いたいと思います」
D∴G教団…“空の女神”を否定し、悪魔を崇拝する宗教色の強い組織。その彼らが多くの子どもを連れ去った張本人。その規模は、カシウスが提示した教団の拠点の地図を見た瞬間、その誰もが驚愕の表情を浮かべた。
「カシウス殿、これだけの拠点をどうやって……」
「申し訳ありませんが、これは秘密です。情報提供者の意向でもありますので。」
教団の拠点を調べ上げたのはアスベル達だった。彼らには“七耀教会”という枠によって“国”という制約がない。その立場をフルに活用し、制圧作戦を確実に成功させるため徹底的に調べ上げたのだ。
「では、役割分担を。A班にはこの拠点の制圧を……」
カシウスが次々と担当する箇所の拠点を読み上げ、会議が終わると解散した。カシウスは会議を終えると、アスベルらのもとに来た。
「カシウスさん、お疲れ様です」
「大変なのはこれからだがな……お前たちにこの場所の制圧を任せてしまうとは、大人として失格だ。」
「無理もないだろう…『この拠点』はおそらく相当特殊。国という柵がないアスベル達や俺にはうってつけの役割だと思うことにするさ」
その拠点……流石に訳ありのため、迂闊に各国の人間を入れるとまずい事態に発展しかねない。下手をすればそこにいる人間を庇い立てする可能性もある。そこで、国という枠組みを超えている“七耀教会”の三人と“猟兵王”にこの拠点の制圧を依頼したのだ。
「ご心配なく。ただ、命の保証はできませんが。」
「ええ、その辺りも承知しています。お願いします。」
「解りました」
彼らも部屋を出て、その場に残ったのはカシウス一人だった。
「……己の欲望のために未来の可能性を摘み取る外道が。せめて、彼らの成功を“空の女神”に祈ろう。」
アスベル達が去った後、カシウスは怒気を含めて呟き、アスベル達の無事を空に向けて祈った。そして、自身も制圧作戦のためにその場を離れた。
~某所~
アスベル達は制圧する拠点の前に来ていた。悪魔を崇拝するという時点で“外法”そのものだが、それ以前に子供を誘拐した時点で“外道”である。そんなに悪魔を崇拝したければ迷惑のかからない場所で勝手にやってほしいものだ。そのようなことを言ったとしても狂信した人間相手に通じる道理などなし。
「レヴァイスさん、実力のほどは?」
「呼び捨てでいいぞ。アンタら、マリクの友みたいなものだろ?ま、実力はそれなりにあるさ。」
レヴァイスは笑みを浮かべて答える。どうやら、マリクと似た感じがしたのは気のせいではないようだ。同じ傭兵だから、というよりも本質的に似たところがあるようだ。
「えらくフレンドリーですね。猟兵ってもっと血に飢えた感じだと思ってましたよ。」
「バルデルならいざ知らず、俺は普通の人間だよ……っと、娘さんがいるところでいう台詞じゃなかったかな。」
「気にしないでください。事実ですから」
ここにいる奴らに『普通』という言葉は概念そのものが崩壊するレベルだろう。というか、実の娘すらフォローできない時点で“闘神”という人物のイメージがどんどんひどい方向に行っているのは言うまでもないだろう……
「さて制圧、の前に…隠れてないで出てきたらどうだ?『身喰らう蛇』のお二方?」
「「「なっ!?」」」
アスベルが気配に気づいて声を上げ、三人が驚く。すると、向こうから二人の人間が来ていた。黒髪と琥珀の髪の少年、そして銀髪の青年の二人。だが、その実力はかなりのものであると推測できる。
「これは驚きだな。俺はともかくヨシュアの存在にまで気付くとは……何者だ?」
「これでも気配の察知には自信があるんでな。」
「その身なり……教会の人間ということですね。」
「俺は違うんだがな……」
銀髪の青年……執行者No.Ⅱ“剣帝”レオンハルト、そして黒髪の少年……執行者No.ⅩⅢ“漆黒の牙”ヨシュア・アストレイ。だが、彼らとてアスベルの“本場仕込み”の気配察知能力には太刀打ちできないという意味を知ることなどできない。
「で、だ。ここにいるんだから協力といかないか?」
「どういうつもりです?」
「簡単な話だ。お前らはあの拠点にいる奴らを抹殺する。俺らも同じだ。『確実に』制圧するんだから、ここは協力するということで手を打たないかってことだ」
ここで互いに消耗するのは得策とは言えない。たとえ敵であろうとも、ここは休戦して目的を達成する方が無難な流れだ。
「成程……その申し出を受けよう。こちらとしても無用な争いは避けたいからな。」
「解った。二人には正面からの襲撃をお願いすることにしよう。俺らは裏側からの襲撃で殲滅する。」
猟兵、七耀教会、身喰らう蛇……一時的な協力とはいえ見るからに“異色過ぎる”面々は教団拠点の一つである≪楽園≫の制圧……いや、殲滅を開始した。
原作だけでもただでさえ豪華なメンツが更に豪華になりましたw
原作メンバーに“猟兵王”“光の剣匠”という猛者までもw
≪楽園≫制圧メンバーは更に異色過ぎることにww
制圧作戦はアルタイル・ロッジと≪楽園≫の2箇所を書きます。