英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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ネタバレだって?気にしないでください。

別にエリゼとかクレアとかサラが閃Ⅱのサブキャラになったことに対してのフラストレーションだとか……そう言うことではないですから!(真剣な眼差し)


第142話 さらば白面の教授

 

~アクシスピラー 根源区画~

 

元の場所に戻ってきたエステル達。ワイスマンは自身の状態と頭上にあったはずの“輝く環”がなくなっていることに愕然とし、最早計画が崩れ去ったことに対して認められない気持ちで一杯であった。

 

「ば、馬鹿な……“輝く環”が消えただと……………」

女神の齎した“奇蹟”を覆したのは……女神の“奇蹟”に選ばれた『起動者』の存在。『聖天兵装』……その存在はワイスマンでも聞いたことはあったが、その存在自体は確認されておらず、眉唾物だと思っていた。だが、目の前にいる面々の中に居る『三人』は奇しくもその『起動者』。しかも、その内の一人が……自分が道具扱いしていた少年であったということは皮肉という他ない。

 

完璧だったはずの計画………それが崩れ去ったことにワイスマンは叫んだ。

 

「馬鹿な……そんな馬鹿なああああっ……!!」

そして、どこかへと転移した。それを見たケビン、アスベル、シルフィア、ライナス、カリン……そして、レーヴェはどこかへと移動した。

 

「ええっ、消えた!?」

「って、ケビンさんやアスベル達もいなくなってる……(姉さんにレーヴェまで……)」

「……積もる話は後だ。アイツらも無事に合流するだろうし、俺らは早く脱出しよう。」

エステルやヨシュアの言葉や心配も尤もであるが、シオンはここからの脱出を最優先することにした。“輝く環”の行方はどこに消えたのか……それを考えるのは後にすることにした。この都市を支えていた大本が無くなった以上、ここが崩れるまでの刻限はそう遠くない。そして、それに頷いたスコールはヨシュアを担いだ。

 

「え、スコールさん!?」

「話はざっくり聞いたが、あの“白面”に操られてたんだ。それがなくなった反動を考えると、この方が無難だと判断した。」

何せ、あのワイスマンがヨシュアの深層心理に刻んだ代物だ。それがどのくらいの反動を生み出すかはわからないが、ここから脱出する際にそれが顕現されても困る……それを考えたスコールはそのような行動に出たことにヨシュアは申し訳なさそうにスコールを見やった。

 

「………すみません。」

「気にするな。元は同じ組織にいた馴染って奴だ。急ごう。」

「そうね。」

彼等は彼等でやるべきことがある……それをなんとなく察したスコールの言葉に皆が頷き、塔から脱出を開始した。

 

 

一方その頃、ボロボロの状態のワイスマンが弱った身体で進んでいた。

 

「……馬鹿な……そんな馬鹿な……。こんな事態……ありえない……。」

計画は完璧であった。その部分に綻びなど生じるはずもなかった。一体何処から歪みが生まれたというのか……“盟主”の予言にも、このような事態になるとは一切の余地もなかった。だが、そこでワイスマンは一つの結論に至る。

 

「……ま……待てよ……。た、試されたのは……この私も同じだったということか……。くっ………戻ったら問い質さなくては……「悪いけど、それは無理やね。」!?」

ワイスマンの行く手を遮るようにケビンが前から来た。そして……その傍らにいるのは、この計画に参加していた人物と、自分が道具扱いしていた人物によく似た女性であった。

 

「な、お前は…“剣帝”…それに、ヨシュアに似ているが……何者だ!?」

「カリン・アストレイ……貴方に操られたヨシュア・アストレイの姉にして、レーヴェと同じハーメル村の生き残りです。」

「何だと……」

彼の姉の存在……それに驚くワイスマンであったが、それに対しての言葉を待つ間もおかずにレーヴェが問いかけた。

 

「驚くのは後にしてもらおうか……ワイスマン。『ハーメルの悲劇』……貴様はどの程度、関与していた?貴様のやり口はよく解っている。弱味を持つ人の前に現れて破滅をもたらす計画を囁く……。そして手を汚すことなく、自らの目的を達成してしまう……。実際、主戦派の首謀者たちは当時あったという政争に敗れて後がない者たちばかりだったと聞く。もし、10年前の戦争すら今回の計画の仕込みだったのなら……全てのことに説明がつくと思ってな。」

潜在的な帝国と言う脅威……それを持った状態で内政を混乱させる。事実、リシャールも弱みに付け込まれてクーデター事件を引き起こした。そして、脅威となりうるカシウスを国外へと誘い出すためにギルド襲撃事件を起こした。そう考えれば、ハーメルの一件はそれに関わるキーとなった可能性にワイスマンは凶悪な笑みを浮かべた。

 

「概ね指摘通りと言っておこう。もっとも私がやった事は、彼らに猟兵くずれを紹介してハーメルの名を囁いただけさ。それだけで事態は動きだし、瞬く間に戦争へと発展してしまった。クク……人間の業を感じさせる実験結果だったよ。」

「なるほど……。大方、予想通りということか。」

一方、レーヴェは冷静な様子で答えた。その様子に首を傾げつつワイスマンは尋ねた。

 

「……おや、意外と冷静だね。私としてはもう少し、憤って欲しいところではあるが。」

「俺はそれが聞きたかっただけだ……それに、貴様の処刑は適任者に譲ることにする。」

「どういう……貴様らは!?」

このような人を人とも思わない人間に憤った所で力の浪費にしか成り得ない……誰よりもそれを知っていたからこそレーヴェは一歩下がる。その様子を不自然に思ったワイスマンは来た道の方を振り返ると、其処に立っていたのは三人の人物。

 

「久しいね……ゲオルグ・ワイスマン。」

「話は聞いていたが、まさかこんな形でお目にかかるとはな……」

「ま、私に関しては姉絡みかもしれないけれどね。」

ライナス・レイン・エルディール、シルフィア・セルナート……そして、アスベル・フォストレイトの姿であった。

 

「“翠銀の孤狼”、“銀隼の射手”……それに、“紫炎の剣聖”だと!?この私を滅するのに“二人”の守護騎士を送り込んだというのか!?」

「驚くのも無理ない話だな……だが、僕は個人的に恨みがある。貴様によって“殺された”両親の仇……それを晴らさせてもらう。」

ライナスとワイスマンの因縁……正騎士となった十数年前、帰省したライナスを待ち受けていたものは……変わり果てた姿の両親。彼らに刻まれた“聖痕”の刻印……そして、悲しんだ彼の目の前に浮かび上がったのは、翠銀の刻印。彼は、幼馴染であった“紅耀石”の部下から、彼女と同じ立場へと変わった。そして、独自に調べた結果……ゲオルグ・ワイスマンの存在が浮かび上がった。そして、ようやく対面することができた。普段の彼からは見ることのできない表情に、ケビンらも驚きを隠せなかった。

 

「どけ……貴様らのような奴らに関わっている場合ではない……!」

それを見たワイスマンはクラフト――真・魔眼を放ったが、ケビンらは星杯の紋章を掲げ、自分自身に結界をはって魔眼を無効化した。紋章を持たないレーヴェに関しては、カリンが目の前に立って紋章を掲げることで無効化した。

 

「……貴様ら……“魔眼”が効かないのか!?いくら教会の騎士とはいえ新米ごときに防げるわけが……それに、“紫炎の剣聖”……なぜ貴様がその紋章を!?」

これにはワイスマンも驚愕した。その力を無効化できるとは思えなかった……だが、ケビンは笑みを零しつつ呟いた。

 

「あー、スマン。ちょいと三味線弾いてたわ。オレは騎士団の第五位。それなりに修羅場は潜っとる。それに……一つ訂正しとくわ。ここにいる守護騎士は……五人。つまり、“剣帝”を除く全員や。」

「何だと……!?」

その言葉にワイスマンは周りを見回すと、各自苦笑を浮かべていた。

 

「どこがそれなりなんだか……守護騎士第三位“京紫の瞬光”アスベル・フォストレイト。」

「第六位“山吹の神淵”カリン・アストレイ。貴方を滅するために、派遣されました。」

「…ば、馬鹿な……」

その言葉には最早驚きしかなかった。守護騎士五人がこの国にいる事実……そこまでワイスマンの古巣である“七耀教会”を本気にさせてしまったということだろう。

 

「ま、それでも本調子のあんたに勝つのは難しかったけど……。今なら付け入る隙があるからな。」

「なに………」

ケビンの言葉にワイスマンが驚いたその時、ケビンがボウガンの矢をワイスマンに放った。

 

「くっ……」

弱っていたワイスマンは身体もろくに動かせず、矢に当たり、呻いた。

 

「……オレの本当の任務は“輝く環”の調査やない。最悪の破戒僧、ゲオルグ・ワイスマン―――あんたの始末というわけや。」

「クク……なるほどな……。だが、この程度の攻撃でこの“白面”を滅するなど……な……なんだ……」

ケビンの冷たい視線を見たワイスマンは凶悪な笑みを浮かべていたその時、瞬く間にワイスマンの身体が白く固まり始めた。その現象からワイスマンはすぐに、それがアーティファクトの一端であることを見抜いた。

 

「し、『塩の杭』……。かつてノーザンブリア北部を塩の海に変えた禁断の呪具……。私一人を始末するためにこんなものまで持ち出したのか!」

「あんたは少々やりすぎた。いくら教会が中立でも、もはや見過ごすわけにはいかん。大人しく滅びとき。」

信じられない表情で叫んでいるワイスマンにケビンは冷たい視線を向けたまま、淡々と言った。

 

「おのれっ……この“白面”を舐めるなああああああっ!!」

しかしワイスマンは叫んだ後、自分自身に法術を放って、塩化を止めようとした。それを見たライナス、アスベル、シルフィア、カリンは背中に刻印を顕現させた。

 

『―――我が深淵にて煌く(翠銀/紫碧/白銀/琥珀)の刻印よ……』

 

「巨(おお)いなる大地の力にて、汝を飲み込み、後悔の念も与えぬまま全てを塵に帰(き)せ……断て、ガイアクラッシャー!!」

ライナス・レイン・エルディールのアーティファクト、『大地の破錠(はじょう)(ガイアフォース)

 

「深焔の業火となりて、悪しきものを滅し、その魂まで融かし尽くし、全ての意義を灰へと帰(かえ)せ……轟け、業魔灰燼(ごうまかいじん)!!」

アスベル・フォストレイトのアーティファクト、『天壌の劫火(アラストール)

 

「その悪しき魂、全て奪い、汝の行いを永劫まで後悔しなさい………凍てつけ、エターナルコフィン!!」

シルフィア・セルナートのアーティファクト、『氷霧の騎士(ライン・ヴァイスリッター)

 

「聖なる輝きを以て、悪しき汝に聖なる罰を………輝け、セイクリッドハイロゥ!!」

カリン・アストレイのアーティファクト、『熾天使の輪(セイクリッドハイロゥ)』……四人の放った技が次々とワイスマンに襲い掛かり、弱っていたワイスマンの体力や精神力を根こそぎ奪い尽くしていく。

 

「があああああっ!?」

「………やれやれ。そのまま大人しく滅びとけば、そのように苦しまずに逝けたものを。………ええやろ。あんたを最高クラスの“外法”と認定し、オレ自身が徹底的に狩ったるわ。………おおおおおおおっ…………ハアッ!!」

そしてケビンは自分の背中に何かの紋章を顕現させた。それは、四人が顕現させたものと同じ刻印。

 

「な………!?」

それを見たワイスマンは驚いた。なぜならそれは……ライナスやシルフィアと同じような刻印……自らがヨシュアに刻んだものと同質でありながらも異なるもの。“聖痕”を持っていた。つまり、彼はライナスらと同じく、“守護騎士”であるという証でもあった。

 

「クク………まさかオレにコイツを使わせることになるとはな…………祈りも悔悟(かいご)も果たせぬまま!千の棘をもってその身に絶望を刻み!塵となって無明の闇に消えるがいい!!」

そしてケビンは凶悪な笑みを浮かべた後、ボウガンを構え詠唱を始めた。すると、異空間から無数の魔槍がケビンの周りに現れ、そしてケビンのボウガンにも魔槍が装着された。そしてケビンは装着された魔槍を放つと、ケビンの周りに浮かんでいた無数の魔槍達もワイスマンを襲った。

 

「砕け………時の魔槍!!」

「おのれえええええ――――!狗どもがあああっ―――――――!!」

聖痕の力を解放し、アーティファクト、“ロアの魔槍”を放つケビンのSクラフト――魔槍ロアを受けたワイスマンは最後の叫びを上げながら、身体は塩化し、さらにまだ塩化していない部分は魔槍に貫かれ、さらにワイスマンの周りに刺さった魔槍達は大爆発を起こして、ワイスマンを肉塊の一欠けらもなく滅した。

 

「狗か……ま、その通りだけどね。」

「………」

「それには同意しますが………ヨシュア君、君は運がいいで。オレなんかと違ってまだまだやり直せるんやから。」

「ケビンさん……」

ワイスマンが消滅した後を見つめてケビンらが呟いた。すると、アスベルとレーヴェは揃って妙な気配を感じ、アスベルはワイスマンの杖を回収しつつそちらの方を見やる。

 

「同意はしたいが……それよりも、もう一人いるようだが。」

「この感じだとすると……“道化師”か。」

「フフ……流石は“京紫の瞬光”に“剣帝”。やっぱバレちゃうか。」

その時、カンパネルラが現れた。

 

「第二位“翠銀の孤狼”、三位“京紫の瞬光”、六位“山吹の神淵”、七位“銀隼の射手”に……守護騎士(ドミニオン)第五位―――“外法狩り”ケビン・グラハム。うふふ……噂に違わぬ冷酷ぶりじゃない。」

「『執行者』No.0“道化師”カンパネルラ……悪いけど……彼の方は手遅れやで。」

「フフ……聞いてるかもしれないけど僕の役目は『見届け役』なんだ。計画の全プロセスを把握し、一片の例外もなく『盟主』に報告する。教授の自滅も単なる結果であって防ぐべき事態じゃないんだ。」

ケビンの言葉を聞いたカンパネルラは不敵に笑った。つまり、今回の事態に関しては成功しようがしまいが……あくまでも“結果”ではなく“過程で起きた事象”を見るためのものだと言い放った。これにはケビンもその組織の底知れなさを感じつつ笑みを浮かべた。

 

「なるほどな……。『身喰らう蛇』―――まだまだ謎が多そうや。その辺は“剣帝”にでも聞いてみるか。」

「フ……お前たちが知っている以上の事は俺でも知らないがな……今回の件で『結社』を抜ける。これは餞別として貰っていくつもりだ。」

ケビンの言葉にレーヴェは笑みを零しつつも、カンパネルラに対して魔剣である『ケルンバイター』を構えつつ、カンパネルラに言い放った。

 

「フフ、君たち騎士団だってそれは同じだと思うけどねぇ。さてと……これで僕の役目も終了だ。ホント、余計で大迷惑な事をしてくれたよ………“絶槍”“影の霹靂”に続いて“痩せ狼”と“剣帝”は引き抜かれちゃうし、“グロリアス”は強奪されたし、落し物も回収どころか、完全に“吸収”されちゃったしねぇ………」

「なに……!?」

カンパネルラの言葉にケビンらが驚いたその時、カンパネルラは指を鳴らした。するとカンパネルラは消えようとした。

 

「あはは!それではどうもご機嫌よう!次に滅するのは君達にとって最高の罰当りと言ってもおかしくない行為をした少女かな?また次の機会に会えることを祈っているよ!」

そしてカンパネルラは消えた。

 

「落し物って……まさか……」

「………これ以上はオレの権限外や。急いでエステルちゃん達と合流せんとな……」

「そうだな……(“吸収”された?……一体何処にだ?)」

カンパネルラの言葉を聞いたケビンは信じられない表情で呟いた後、エステル達と合流するため急いで引き返していった。

 




さようなら、ワイスマン。てめえのことは3rdぐらいまで覚えておきます。名前とその性格だけ(何!?)

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