―????―
「……ん…」
視界が真っ白になったと思いきや、真っ黒になり……瞼を開けると、木々の木漏れ日と鳥のさえずり、吹き抜ける爽やかな風。目覚めた場所が『森の中』であることにすぐ勘付くことができた。
「えっと、ここはどこ、というか、確認してみるか……」
まず、自分の置かれた状況をいろいろ確認してみる。
服は……この世界に合わせた物なのだろう。イメージ的にはTOGのアスベルっぽい感じの外見に衣装。年齢は8歳ということで、容姿はそれに見合った感じだ。アイテムは無限に出せるみたいだし。えっと、武器は……刀…ん?これって
「なになに……」
ふと、刀に挟まっていた紙を見つけ、それを広げてみる。
『えと、その刀は私からの誠意です。その世界でいう≪外の理≫で出来ていますので、その気になれば神様だって殺せちゃいますよ♪』
おいおいおいおい!!アンタ、神様でしょ――!?下手すりゃ≪神殺し≫すら出来る武器を初期装備してもいいんですか!?バランスブレイカーどころかワールドブレイカー……チートという言葉が安く感じるのは俺だけなんだろうか。そもそも、どっかのアイス好きの奴みたいに『生きているのなら、神様だって(ry』とかやるつもりないし………
神様―――クロノスと名乗っていた少女の置手紙?に驚愕どころか声に出してツッコミ入れたくなるぐらいの勢いで、心の中でツッコミを入れた。平穏な生活が遅れると思ったのに、どうしてこうなったんだか……
と、そこまで思って一旦冷静に返った。
≪外の理≫という言葉……その言葉を使っている世界は、俺が知る限り一つしかない。
「ともかく、近くに住める場所……ん、何だろう?」
周りを見渡すと、奥の方に建物らしき物影を見つける。
その方向に歩くと、目の前に見えてきたのは一件の建物。サイズ的には3~4人程度が住める平屋だ。
中は綺麗に片づけてあった。
一応備え付けの機材やら確認してみたが……そのまま住み始めても、特に問題はなさそうだ。
「さて、と……」
机の上に置かれたのは、戦術オーブメント、説明書らしきもの、そして地図。
その地図を見て、彼の中にあった仮説が根拠となった。いや、戦術オーブメントの時点で確定的になったのはいうまでもないが……つまり、この世界は「英雄伝説」……その中の一つである「軌跡シリーズ」の世界ということで概ね間違いないだろう。
ゼムリア大陸……その広さは西ゼムリア地方だけでも広大な広さを誇る。
自分が今いるのはリベール王国という小国だが、「導力」と呼ばれる技術の発展、それらを先導している『ツァイス中央工房』により、国境を接する二つの大国以上の技術力を誇っている。
リベールの北には黄金の軍馬の紋章を掲げ、軍事大国と称される『エレボニア帝国』、東側は移民によって多様な文化を構築する大国『カルバード共和国』の二大国があり、この二国は西ゼムリアにおける覇権を争っている。
リベールの北東には、エレボニア・カルバードの両国の承認を受けて独立した50万人の貿易都市クロスベルを有する『クロスベル自治州』、クロスベルのさらに北東側には、医療技術が発展した『レミフェリア公国』が存在する。
ゼムリア大陸には他に、農業が盛んな『オレド自治州』、“とある災厄”によって壊滅的な被害を受けた『ノーザンブリア自治州』、遊撃士協会の本部とエプスタイン財団の本部がある『レマン自治州』、七耀教会――『空の女神』を崇める組織というか、現実世界における一神教の母体の本部がある『アルテリア法国』などがある。
そして、導力―――七耀脈と呼ばれる鉱脈のような場所から算出される七耀石<セプチウム>の持つエネルギーのことであり、一種のエネルギー……だが、導力の大きな特徴は『時間が経てば自然回復するエネルギー』である。
たとえば、石油や石炭などのような燃料は一度燃やすとその過程で生成される物から再利用するのはいくつかの過程を踏まなければならないもので、それでも100%元通りになるという訳ではないし、そもそも効率が悪すぎる。現実世界におけるエネルギー効率は大方2~3割程度。これは摩擦や金属といったエネルギー部分でのロスが大きく影響している。
だが、導力は七耀石の持つエネルギーで、回復量自体はあまりよく解らないが、いくつかの石を用いて導力として動かせば、『永久機関』が理論上可能である。しかも、化石燃料のように再利用するための機関すら必要なくなるのだ。
元々使っていたエネルギーが自然回復して、全く同じエネルギーがまた生み出される…さらに、内燃機関での副産物とも言える『環境汚染』の心配がなくなる…そうなれば、一度消費するとなくなる燃料から導力によるものへの転換が行われるのは必然であり、それが「導力革命」に繋がっている。
結果として、日常的に使っている衣食住の殆どに導力を用いたものがあふれることとなる。
照明や暖房といった日用品、通信機器、自動車や鉄道、飛行船の動力源……軍需の部分でも導力を用いることが多い。その反面で、石油や石炭を用いる内燃機関の衰退や、火薬を用いた旧式の銃はあまり使われなくなっていったのである。
その導力を戦闘力として用いるのが「戦術オーブメント」である。使用者や周囲の味方への身体能力強化などの支援・敵に対しての攻撃や妨害を行う導力魔法(オーバルアーツ)を使用するためには必要不可欠である。ただ、強力なアーツを行使するためにはそれだけ待機時間もエネルギーも必要となり、アーツを使うための七耀石の結晶回路<クォーツ>の入手には七耀石の欠片<セピス>が必要となる。
つまり、
敵を倒したり、宝箱からセピスを手に入れる→クォーツに合成してもらう→オーブメントにセットする
の手順を踏む必要があるのだ。
まぁ、経験値稼ぎはどの道必要だし、セピスはそれなりに手に入るでしょ。
「前の世界でも、電気は身近なものだったからな……それと似たようなものか」
前の世界の事をしみじみ思いながら、説明書らしきものを確認する。説明書らしきものの内容は、自分が転生された場所の周辺の状況と時代の簡潔なまとめが記されていた。
自分がいる場所はリベール王国の『ロレント』という街の近くにある森。今は七耀暦……ようするに、西暦みたいなもので、転生先は七耀暦1192年4月ということらしい。
「確か、百日戦役が11月ぐらいに終戦だから……それを差し引いても三か月弱ぐらい……6~7月くらいに開戦ということか。」
それだけの時間があるなら、鍛練と強化は存分にできる。
だって、零・碧の連中はおおよそ1年ぐらいでLv150ぐらいまでいってるんだから、行けない道理などない(謎理論)
そして、その説明書の一番最後のページに、気になる文章があった。
『記憶は残りますが、基本的にはその転生した人物に精神が持っていかれますので。あと、貴方と同じように転生した人がいますので、頑張ってくださいね♪ 追伸 この説明書は読んだ後にきちんと燃やしてくださいね』
自己判断に任せるんかい!!いや、どっかのスパイ映画のように『この文章は自動的に消去されます』みたいなことじゃないから、いいのかもしれないけれども。勝手に燃えて、火事騒ぎは御免こうむりたいし……そんなことを内心思っていると、ページに一つ書き込みが加わった。
『やっぱり、それはお約束ですか?』
「違うから!?ちゃんと責任もって燃やしておくから!!」
転生前後通して、生まれて初めて本にツッコミを入れる羽目になった。
クロノス―――彼女は、本当に神様なんだろうかと、ほんのちょっぴり思ったことは言うまでもない。
オリキャラの名前は考察中。カップリングも考察中。
でも、ヨシュアの受難は確定ですけれど(黒笑