英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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軌跡シリーズって謎多いですよね。
一番謎に思っているのはカタカナ五文字のジャーナリストさん。
見えないはずなのに階段を難なく下りていること自体異常です。
きっとあれですね、開眼したら力が開放するとかそんな感じなのでしょう。静まれ俺の両目よっ……!!(中二)



第4話 『自分』の在り処

―ロレント郊外 アスベルの家―

 

「おかえり…って、カシウス・ブライト!?」

「おや、これは可憐な御嬢さんだ。娘の友達には何人か会っているが、君とは面識などないはずだが……」

家に戻ると、寝間着姿のシルフィアがアスベルと一緒に入ってきたカシウスの姿に驚く。

誰だって驚くことだろう。俺だって、この場にエイドスとか重要な人物が現れたら間違いなく驚くな。あの≪鉄血≫野郎が現れたら間違いなく腹パンするね。いや、村八分かな?

 

「すまないな、シルフィア。ちょっと話がしたいんだが大丈夫か?」

「なら、私も参加します。無関係とはいかないでしょうし。」

「やれやれ、こんな中年のおっさんに何を期待しているのやら……」

いや、アンタのような中年が普通にいてたまるか。仮に世界中の中年がカシウスさんレベルだったら、いろんな意味でヤバい。

チートのバーゲンセールになりかねないから。そんな世界などあってほしくないし、正直生き残れそうにない……

 

「さて、君たちに聞きたいことがある。君たちは、何をするつもりなのか?」

カシウスが真剣な表情で二人を見る。確か、カシウスの…いや、ブライト家はロレント郊外にある。この頃のカシウスは軍人であり、さらに地元となれば住んでいる人の所在などをある程度把握しているのだろう。突然住み始めた二人の少年少女(一人はアルテリアから飛ばされてきたが)に対して、この対応と言葉は至極当然ともいえる。

 

(どうする?)

(どうするったって……流石に全部信じてもらえるかどうか……)

確かに、この世界のこれから起こりうることは知っているが、それを明るみに出したり妨害したりして大幅に世界が変わるのは拙いのだ。それに、この世界で“転生”の概念があるかどうかも不透明である。だが、ある程度“こちらの世界”で信用できる人間を作ること。そして、自分たちの身の保証が急務である以上、どこかで言わなければならないことなのだ。その結果によって起こりうることに変化が生じたとしても……

 

「カシウスさん、これから話すことは信じられないことかもしれませんが、事実です……」

そう切り出してアスベルは自分たちが“転生者”であること、歳不相応の力を持つこと、元々はこの世界の人間ではないこと……シルフィアの“守護騎士”のことと、今後の事象は言えないが、異世界の人間であるということにして話した。世界が違うから異世界ということで間違ってはないはず、うん。

 

「………」

「えと、納得いきませんよね?」

「いや、逆だな。」

「逆、ですか?」

説明を聞いて驚きの表情を浮かべるカシウスにアスベルは問いかけたが、その問いに気を取り直して真剣な表情で答えを述べ、シルフィアはその答えに疑問を投げかけた。

 

「ああ。そこの御嬢さん……名前は?」

「シルフィアですが、それが何か?」

「成程、君が“銀隼の射手”か。歳がさほど娘と変わらないのには、俺でも驚きだが…」

「!?何故、解ったのですか?」

カシウスはシルフィアの名前と佇まいを見て、すぐに彼女が“守護騎士”であることを見破ったのだ。

流石、伊達に“剣聖”と呼ばれていたわけではないな。

 

「偶然だが、君が以前リベールで任務にあたっていたところを見たことがあってな。それと、あの“紅耀石”の妹が史上最年少で“守護騎士”をしているという風の噂もあった。極めつけは君の名前だ。この懸念だけは当たってほしくはなかったのだが……すまない。」

「いえ、謝る必要はないですよ。流石は“剣聖”とも言われた人物ですね。」

「ハハハ、今はしがない中年軍人の端くれだ。」

シルフィアが守護騎士だという根拠を説明してため息をつくカシウスに、シルフィアは弁解し、カシウスは苦笑を浮かべながら答えた。

カシウスさん、貴方が言うと端くれ(笑)で片づけられそうなんですが……と思ったが、ツッコミは心の中に留めた。

 

「おっと、話が逸れてしまったな。元々、この場所に人が住んでいる報告などないし、俺も時間があればここら辺に来るが、人が住んでいる気配すらなかったからな。それが、今日ここに来て人が住んでいる。君たちの言うとおりでなければ矛盾する部分が余りにも多すぎる。」

成程……ここらに詳しいカシウスさんだからこそ、急に家が建ったり人が住んだりしているのはおかしいわけで……大方、俺の思った通りか。それ以上に、カシウスの思考能力は尋常ならざるものを感じずにはいられなかった。

 

「大方の事情は分かった。君たちに対して身分の保証をするよう私から掛け合っておこう。特に、アスベル君はこの家の持ち主のようなものだからな。戸籍も準備しておこう。」

「ありがとうございます。合わせてお願いしたいことが……」

アスベルは“あるお願い”をカシウスに頼み込んだ。

 

「ふむ……アスベル君、剣の心得は?」

「奇しくも、刀の剣術を習っていました。」

それは、カシウスが習っていた剣術にして、軌跡シリーズを通して関わることの多い剣術……『八葉一刀流』。アスベルにしてみれば、“今まで”習ってきた剣術を表に出して揮うのは拙い……出来るだけ手の内を見せないようにするためには、別の剣術を習う方が、都合がよいと判断したのだ。

 

「そうか。わかった、俺から手紙を送って掛け合ってみることにする。(師匠(せんせい)には色々言われそうだな…)」

「お手数をおかけしますが、宜しくお願いします。」

「アハハハ……(自分が言うのもなんだけれど、どんどんチート化していくんだね)」

ため息をつきそうな表情で呟くカシウスに対して、内心剣術を学べることに嬉しさが込み上げてきているアスベル、自分もある意味同類だけれども似たような存在になる道を歩み始めたアスベルに苦笑するシルフィアだった。

 

その後、カシウスは自分の家に帰り、二人は、細かい話は明日改めて話すということで、眠りに就いたのだった。

 

 

―ブライト家―

 

「ただいま」

「おかえりなさい、あなた。今日は珍しく遅かったですね。」

家に帰ったカシウスを迎えたのは、カシウスの妻にしてエステルの母親であるレナ・ブライトだった。

 

「少し軍の任務があってな。エステルは?」

「今日はもう眠っていますよ。昼間はあれだけはしゃいでいましたから。」

カシウスは簡潔に事情を説明し、姿の見えない自分の娘の所在を尋ねると、レナは苦笑して答えた。

 

「やれやれ、元気なのはありがたいことなんだが……」

「大丈夫ですよ、あなた………エステルも、もう6歳ですね。」

元気すぎる娘の様子を聞いたカシウスはため息を吐いて呟き、レナはそれを諭すかのように答えたが、大きくなっていく娘の様子に少し曇りがみられた。

 

「レナ……あのことは、お前だけのせいではない。俺にも責任の一端はある。傍にいてやれなかった責任が…」

「ええ、それは解っています。ですが……」

「俺たちにできるのは、あの子の分までエステルを育てること。偽善かもしれないが、それがあの子に対しての『責任』だろう?」

「あなた……」

カシウスの重みのある言葉にレナは少しずつではあるが、冷静さを取り戻していった。

片方が背負っている重荷を分かち合う。嬉しさであれ、悲しさであれ、互いに支え合うのが夫婦。

 

「忘れろ、とは言えん。俺ですら忘れられん…いや、己の戒めとして覚え続けなければいけない。覚えていれば、また会えるような気がしてな……」

そう言って、窓の外を見やる。窓の外は眩い光を放つ星で埋め尽くされていた。

自分自身の願いは儚きもの……されども、その願いが僅かでも“空の女神”に届けばいいと、カシウスはそう思いながら星空を見上げていた。

 

 

―ロレント郊外 アスベルの家―

 

「…ん……」

カーテンの隙間から差し込んでくる光。目を開けると、見慣れない家具や屋内の様子。

アスベルは上半身を起こし、状況を整理する。

 

(えと、確か転生してロレントに飛ばされて、武器作って探検して、シルフィア拾ってカシウスさんに会って……濃い一日だった)

今までの人生で、かなり濃密な時間を過ごしてるな……俺

一通り、整理がついたところでとっとと着替え、朝食を作り終えると向かいのベッドに寝ているシルフィアを起こすことにした。

 

「おーい、起きろ。朝だぞ~」

「………ん~、あと5週間……」

起こそうとしたら、どこぞのぐーたら妖怪みたいなことを呟いた。寝言なんだろうけれど、そんなに寝たら死ぬからな、普通の健康な状態だったら。

中々起きないシルフィアに内心ため息しか出ない。半分あの総長とやらの策略なのでは、と勝手に想像したくなる。

 

その直後、アスベルは驚いた。

 

「…あっきー、どうして……」

「…………え?」

今、シルフィアの寝言で気になる言葉が出てきた。『あっきー』……転生前の俺、四条輝であった頃のあだ名の一つ。

そのあだ名で呼ぶことを許していたのは、幼馴染の三人だけ。ただ、その三人のうちの一人という訳ではない可能性もあるし、たまたま彼女の転生前の仲が良かった奴に『あっきー』と呼ばれた奴がいるのかもしれない。

 

そもそも、お互いに転生前の名前は明かしていない。あくまでも転生した今の姿である自分たちがこの世界における『本当』の自分なのだと……

 

「もう、とっとと起きろ」

「あうっ!?」

これ以上考えても埒が明かないと結論付けて、シルフィアにデコピンをかまして強制的に起こした。

 

「朝からひどいよ、いきなりデコピンだなんて……」

「起きなかった奴が悪い。ほれ、とっとと着替えてこい。」

そう言って、アスベルは部屋を後にした。

一方、シルフィアは右手でデコピンされた額をさすっていたが、ふと転生前のことを思い出す。

 

(あの起こしかた、あっきーにそっくりだった……って、そんなことないよね。たまたま同じようなことをしただけだって……)

ちょっと懐かしそうに思い出していたが、我に返ってすぐに着替え、リビングに向かった。

 




ブライト家のくだりはオリジナル展開です。

その意味はそのうち明らかにしていく予定です。

全然先に進まなくてゴメンナサイorz

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