あ…ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
「感想を書いていたと思ったら、番外編を書き終えていた」
な…何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのか解らなかった…
頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
ルドガーとレンの出会いは約五年前の事だった。
~ノルド高原 ルドガーの家~
ノルド高原の奥深く……ルドガーはここに家を構えていた。変にうるさくもなく静かな場所で人並みの生活を送る……『使徒』や『執行者』にしてはかけ離れすぎているほど『人間』らしい生活を送っていた。
そこに、彼の知る人たちの来訪が待っていた。
「お邪魔する。」
「お、レーヴェにヨシュアか。」
「エプロン姿って…」
レーヴェとヨシュアが訪れた時、ルドガーはエプロン姿……時間的には丁度昼食前の時間。それにしても、『執行者』もとい『使徒』自らが料理を作るなどなかなか見られない光景である。というのも……
『ねぇ~、まだできないのかしら?』
『はしたないですよ、“深淵”殿?』
『彼の料理が逃げることなどあるまい。』
『全く、アンタの料理は世界一だな。』
『フフ、大変ですわね“神羅”殿も。』
『……ま、いつものことですよ“死線”殿。』
『使徒』の連中でまともに料理できるのがルドガーだけ……しかも、『本拠地』や彼女ら――“蒼の深淵”や“鋼の聖女”と任務で一緒になった際はいつも炊事係を担当させられる羽目になっていた。この時ばかりは、転生前に仕込まれた料理の腕をありがたく思ったのは言うまでもない……
“神羅”――『使徒』第一柱としての俺の異名。“鋼”に匹敵し、『修羅』に至りながらも己を見失っていないその強さを称えたものらしい。俺自身、異名にそこまで拘りなどないが。
「にしても、こんな辺鄙な所によく家を構えたね……」
「フ……コイツの性格からして、変に煩いところは好まないからな……」
『執行者』No.Ⅱ“剣帝”――レーヴェとはよく顔を合わすことが多い。手合わせしてほしいというのが主な理由だが、時には土産を持って来たり、泊まっていったりと友のような付き合いをしている。
「で、どうしてここに?」
「……この子を、お前に託したいと思ってな。」
そう言って、レーヴェは菫色の髪をした女の子を近くのベッドに寝かせた。彼が彼女を連れてきた理由……そして、執行者の『頂点』にいるルドガーに託す理由……それをルドガーは自ずと理解していた。
「……正気か?」
「実はな……」
ルドガーの疑問にレーヴェは事情を話した。彼女が“楽園”からの救出者であること、その施設には“教会”の人間もいたこと、そのため一番の『安全策』として、『身喰らう蛇』が引き取ること……その答えにルドガーは頭を抱えつつ、納得した。
「わかった……責任を持って預かろう。」
「頼む。」
レーヴェとヨシュアは次の仕事があるらしく、その場を後にした。この家にいるのは俺とベッドで眠る少女……別に変な気を起こすほど、人間やめたつもりなどないし、何もしないからな?俺は変態じゃねーし。
しばらくすると、少女は目を覚ます。その表情は虚ろなものだった。
「えと……貴方は?」
「そうだな……君の『家族』みたいなものだ。俺はルドガー。君の名前は?」
「レン……」
「レンか……いい名前だな。」
かくして、俺とレンの生活が始まった……
最初の頃は、本当に人形みたいな表情だった。だが、月日が経つにつれ、人らしい感情も見せるようになっていった。その間……『執行者』としてのスキル……この子が二度と理不尽な目に遭わないための『生きる術』……それを教えた。
『教団』の施設にいたためか、その人間とは思えないほどの思考能力……いわば『最適経路の明確化』……ゲームで言うところの『攻略法』を自力で見出してしまう能力というのが解りやすい例だろう。その尋常ならざる能力は俺ですら鳥肌が立ったほどだった。だが、彼女はそれを過信することは無かった。レン曰く
『物事は謙虚に、かつ確実に。楽しいことをするにしても、確実に物事を運ばないと怪我してしまうもの♪ルドガーが教えてくれたことよ♪』
とのことだ。
感情を取り戻してからはしょっちゅうルーレやユミル、ヘイムダルに遠出するようになった。ただ、俺が女性と会話すると拗ねた表情をするんだよな……何でだ?
その間、俺はレンの身元を割り出した。ヘイワース一家――ハロルド・ヘイワースとソフィア・ヘイワース、そして生まれたばかりのコリン・ヘイワース。その身元は簡単に割り出せた。なぜならば、クロスベルを訪れた際にハロルドさんの取り扱うものを買っていた。そのときは容姿と名前を偽っていたが、その時のレンとも面識があった。なので、レーヴェが連れて来た際、内心驚いたものだ。
そして、レンに留守を任せると、子どもが生まれたお祝いと称し姿を偽っていた侘びといつもお世話になっている礼も兼ねてヘイワース家を訪れた。
その家の中にはレンがいたことを思わせるような物は何一つなかった。それは当然かもしれない……レンがいなくなる前は逃亡生活をしていた身……手掛かりに繋がるようなものですら残せなかったのだろう。それが逆に、レンにとっては『自分など必要ない』と思わせるような印象を強く受けた。
「いや~、本当にすみません。」
「いえ、お互い事情があったのでしょう。それに、貴方のお蔭で借金も早く返せましたし。」
ハロルドさんやソフィアさんとは色々会話したが、娘を『忘れているわけではない』と心のどこかで思った。人の死というものは、そう簡単に割り切れるほど単純ではない。ましてや、自分が手塩をかけて育ててきた愛しき娘の事を……そう簡単に忘れられるものなのかと。
俺はハロルドさんやソフィアさんの性格は知っている。長い付き合いにもよることではあるが、一言で言えば『一途』もしくは『生真面目』。そんな人間が自分の身近な人間を失った際、どのような行動をとるか……
よく言ったとしても隠居、悪く言えば心中……だが、そのような行動をとらなかったのは、コリンの存在ゆえだろう。生まれ来る子に罪などない……かと言って、自分たちが死ねばその子の将来を看る人間がいなくなってしまう……悩んだ末での決断故に、俺にはそれを裁く権利などない。
ヘイワース家を後にする際、庭に植えられた花を見つける。カスミソウが季節外れの花を咲かせていた。その花を見て、ルドガーはヘイワース夫妻がレンを忘れていないことを確認した。
カスミソウの花言葉――『感謝』『親切』『清い心』『切なる喜び』『無邪気』
……とはいっても、これを受け入れるかは、彼女次第であることに変わりはない。そう結論付けて、ルドガーは帰路についた。
ルドガーが帰ると、レンの姿がいなかった。代わりにテーブルの上にメモが置いてあった。そのメモを見たルドガーは戸締りをしてから転移した……緊急事態でも、生活に関わることはきちんとしていた彼であった。
~十三工房 ノバルティスのラボ~
「お、これはこれは“神羅”どの。そんなに怒ってどうげふぁっ!?」
いつもは怒らないはずのルドガーが怒っていることに気づきつつも、声をかけたノバルティスだったが、次の瞬間殴り飛ばされていた。
「ノバルティス……てめぇ、人様の『家族』に何してやがる?」
「な!?私は正式な手続きに則って……」
「そんなことを承認した覚えはない。誰が承認した!『盟主』か!?他の『使徒』か!?」
俺の怒りは頂点に達していた。帰ってきてみれば、レンの姿がいない代わりに『接続実験』の生贄に使う旨のメモだけだった。ノバルティスの野郎がゴルディアス級のことでそのようなことをしていたのは知っていたので、すぐさまこの工房に飛んだ。すると、窓の向こうでは、機械に繋がれ気絶しているレンの姿があった。それを見て、最早理性など大気圏の彼方へと吹き飛んだ。俺にしてみれば、レンは家族同然の人間。それを他の連中の身勝手な都合で道具のように利用したことは、万死に値する。
「わ、私の、独断です……ですが、もうすでに実験は最終段階を……げふぉっ!?!?」
ノバルティスの言葉に偽りはなく、最早そのようであると……そして、悪魔が微笑んだのか……実験は成功した。
俺はノバルティスを壁に叩きつけると、窓を叩き割り、レンの下に駆け寄った。
「レン!!」
「ん……ルドガー?」
呼びかけにうっすらと目を開け……そして、ルドガーを見ると瞳を潤わせ、
「ひっく………うわああああああああんっ!!!」
ルドガーにしがみついて泣いていた。その光景を見て、ルドガーは優しく頭を撫でた。そして、レンの後ろにいたゴルディアス級の瞳が灯り、二人の足もとに手を差し出した。
(そっか……お前も、レンを守ってくれるんだな。)
その行動にルドガーは今までの怒りを収め、レンを抱っこするとゴルディアス級の手に飛び乗った。そして、ロックが外れたのか人形の上部のハッチが開いていく……そして、全て開き終えると、ブースターを吹かして上昇し、ラボを後にした。
~十三工房 ラボ上空~
「う……ひっく……」
「まったく、まだまだお子様だな。」
「うぅ……そんなことないもの……」
『!!』
「って、貴方まで!?むぅ……」
未だに泣き止まないレンに苦笑を浮かべるルドガー、それに反論するレンだったが、人形の電子音――『感情表現』にレンは頬を膨らませる。
「というか……名前を付けてやらないとな。レンと意思疎通ができるみたいだし……『パテル=マテル』……それが、これからのお前の名前だ。」
『!!』
「ウフフ、パテル=マテルは喜んでいるみたい。素敵な名前をありがとうって。」
いつか、レンが自分の両親と向き合うために……その名前に『父親と母親』とは少し皮肉かもしれないが……
「そして、ルドガー……助けに来てくれてありがとう。」
「……レンは、俺の家族みたいなもんだからな。」
「そう……うん、お礼をしないとね。」
「お礼?」
そして俺は、レンの次の行動に驚くこととなる。
「んっ……」
「!?」
キスされました……しかも、唇に。おまけにファーストキス。
「もう………レンの気持ちに気付かないなんて、本当に鈍感ね♪」
「………」
すみません、状況整理が追い付いていません………ああもう、俺フラグなんて立てた覚えなんてねぇぞ!!(←超鈍感)
……ルドガーは気付いていないようだが、男女が一つ屋根の下で生活して、容姿もいい、家事もできる、性格もいい、腕っぷしもある……かなりの『超優良物件』と生活をともにすれば、フラグが立つのはある意味納得の光景なのだが、肝心の本人は超が付くほど鈍感だった。
「だから、その罰としてルドガーはレンの婚約者ね♪」
「何でそうなる!?」
この後、家に帰り、パテル=マテル専用の格納庫をノバルティスの野郎に作らせた。機体の整備は俺が基本的に行い、部品はノバルティス経由でやってもらう。家族を危険に晒したのだから、これぐらいはただでやってもらわないと困る。
この後、事の次第を聞いた他の連中は……
「あっはははははははははは!!あ~、お、お腹が!お腹が痛いわ!!」
「ま、まったくですよ!!これはまさしく喜劇というものですよ!!」
「いやあ~、ネタの提供に事欠かないね、君は!!」
「そのまま笑い狂って死んでしまえ、コメディアンども。」
第二柱“
「その……頑張れ。」
「頑張ってね」
「……頑張って頂戴。」
「その優しさが辛いわ……」
No.Ⅱ“剣帝”レーヴェ、No.Ⅵ“幻惑の鈴”ルシオラ、No.ⅩⅢ“漆黒の牙”ヨシュア・アストレイに憐れまれ、
「フ……ルドガー、貴公とは良い酒が飲めそうだ。」
「……その仮面ごとぶん殴ってやろうか♪」
「お、珍しく気が合ったな。後で一杯奢るぜ。」
No.Ⅹ“
「……私との約束、守ってくれるのではなかったのですか?」
「いや、約束した覚えすらないし、理不尽じゃね!?」
第七柱“鋼の聖女”アリアンロードからは訳の分からない言葉で殺意を向けられる羽目になった。
あと、“博士”ノバルティスの野郎は俺を見るたびに逃げるようになった。ま、いいんだけれど。こっちから顔を合わせたくねーし。
………ちなみに、盟主は
『面白そうですし、見届けさせていただきます。』
だそうだ。
いつか腹パンをお見舞いする…たとえ、相手が『神』であったとしても…そう心の中で誓ったルドガーだった。ただ……その前に自分の苦労はいつ終わるのか……せめて、俺の理解者ぐらいは欲しい……そう切実に願った。
てなわけで、第二章で番外編二発目です。
クルルは脱退済み、シャロンは執行者の仕事が休業中だったため、出てきていません。第四柱と第五柱は姿が判明していないため未出演扱いに。
書きたくなったから、書きました。だが私は後悔しないw
こうしてみると、結社ってイロモノばっかですね、これ。閃をプレイしていてブルブランが出てきたときはその顔面にそげぶパンチしてやりたかったです(黒笑)
頑張れルドガー(他人事)