英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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あっさり目?な感じの対面回。


第6話 白隼の女王と姫君

―グランセル城 離宮―

 

リベール女王:アリシア・フォン・アウスレーゼもといアリシア2世との対面。

二人の仮定が確証に変わったと同時に、驚きを隠せなかった。

 

「じょ、女王陛下!?」

「えと、お初にお目にかかります。アスベル・フォストレイトといいます。」

戸惑い気味のシルフィア、いろいろ驚きながらも会釈して自己紹介するアスベル。

 

「この場は私的なものです。ですので、年上の方と接する感じで構いません。何でしたら、『お祖母様』でも構いませんよ?」

「陛下……それは砕け過ぎではありませんか?」

笑みを浮かべながら話すアリシアにカシウスはため息混じりに呟くが、

 

「いざとなれば……カシウス殿、女王としての命令です。それならば文句はありませんよね?」

「はぁ、わかりました。」

不敵な笑みを浮かべて話を続けるアリシアにカシウスは折れる以外の選択肢がなかった。

上司……それも国のトップの意向であれば、部下という立場のカシウスでも逆らうことができない。それを見た二人は内心苦笑を浮かべたのは言うまでもない。

 

(あ、あれが女王陛下?)

(何と言うか、見た限りだとフレンドリーな高齢の女性というイメージしかないんだけど……)

(全くだな……)

国の象徴としての『近寄りがたさ』というか、『聖域』に触れることへの畏怖を感じる反面、一人の人間としての『親愛』を感じてしまうが故にどう接していいものか解らずにいた。そもそも、そういった部類というものは得てして扱いが慎重にならざるを得ない……のはずなのだが、どう見てもひとりの人間にしか見えないのは気のせいではないようだ。

 

「さて、お二人をお呼びした用件を話さないといけませんね。」

「用件……いったい何を?」

国のトップである女王陛下直々のお呼び立て……全くと言っていいほど、予想がつかない。

 

「まずはお二人の戸籍です。特にアスベルさんは身よりの人間がいないということでしたね。」

「そうですね……(何だか嫌な予感が……)」

「陛下、まさか……」

その用件をアリシアが述べる意味にアスベルは首を傾げ、カシウスは一つの考えに至り疲れた表情でアリシアに尋ねる。

 

「カシウスさん、貴方がアスベルさんの身元保証人となるよう手続きをお願いしました。」

「……はい?申し訳ありません、陛下。あまりの驚きで聞き逃したようです。もう一度お願いできますか?」

「貴方がアスベルさんの保証人です。手続きに関しては貴方の同意を得られればすぐに終わりますよ。あと、レナさんにはすでに同意の旨の返事を頂いております。」

「…………」

笑顔でサラリと話したアリシアとは対照的に、カシウスは唐突に告げられた事実に口をパクパクさせていた。

 

「カ、カシウスさんが保証人って……」

「ある意味ブライト家に養子に行くようなものじゃないか……」

流石の衝撃的な事柄にアスベルとシルフィアの二人も唖然とした表情で呟いた。

ただ、アスベルにとっては渡りに船のようなものだ。これから剣術を習う上で「理」に至ったカシウスの腕前は知っておくべきだし、彼の剣術の師匠である“剣仙”ユン・カーファイに師事できるようお願いしている。

 

「シルフィアさんの方はアルテリア法国に身元確認しております。向こうからは『迎えは既に送った。ただ、仕事は無期限だから頑張ってくれ』との答えが返ってきてました。」

「アハハ……(あ、姉上…!帰ったら、倍返しにしてやる……!)」

シルフィアは向こう、というか十中八九自分の義姉が言ったと思われる言葉に、表面上は苦笑しながらも内心怒りを覚え、帰ったら模擬戦でボコボコにしてやりたいと思ったとか。

 

「さて、もう一つの用件ですが……孫や孫娘と仲良くしてほしいと思いまして」

(孫娘は……アイツか)

(まぁ、彼女の事でしょうね。)

アリシアの孫娘については察しが付く。だが、孫の方は聞いたことがない。

 

「ふと気になったのですが、孫って……」

「正確に言えば、義理の孫ですね。私にとっては孫同然ですよ。」

この言葉を聞いた二人は、その『孫』は最終的に『孫娘の婿候補』として考えているのでは、と頭が過った。おそらく拾い子であると思われるが、幼い頃から教育環境の整った場所で育てば、余程のことがない限りかなりの博識を得た人間に成長するだろう。その孫とやらにある意味同情を禁じ得ないが…代わりたいとも思えないのが、二人の結論だった。

 

「まぁ、いいですよ。俺も仲良くしたいですから。」

「そうですね。歳が近いのならば話も弾みそうですし。」

半分打算的なのには、心の中で苦笑したのは言うまでもない。

 

 

―グランセル城 中庭―

 

アリシアとカシウスは話があるということで、アスベルとシルフィアの二人でアリシアが仲良くしてほしいと言っていた二人がいるという中庭に来た。そこに来た二人の耳に入ったのは……

 

―――キィン!――ガキッ!―――キンッ!!

 

金属音。しかも、不定期に何度も聞こえる。よく耳を澄ませると、剣劇の音のようである。しかし、周囲に魔物の気配はないようだ。それに騒ぎとなっている様子もなく、大方模擬戦でもやっているのだろう。

 

「……片方は、あの人の可能性が高いな。」

「そうだね。もう片方はどっちなのか……」

互いに推測の言葉を呟いていると、後ろから誰かが何かを持って近づいていることに気付く。

 

「ん?君は……」

アスベルが振り向くと、青紫の髪の少女がいた。

 

「えと、どちらさまですか?」

一方、少女は普段見慣れない出で立ちをしている二人を見て困惑している。まぁ、無理のないことであり、至極当然の反応である。カシウスの理解力がおかしいだけで、それ以外の普通の人ならば困惑するのは当然の結果だ。

 

「どう説明していいものか……えと、私はシルフィア・セルナート。貴女のお祖母様にお願いされたというか、何と言うか……」

「俺はアスベル・フォストレイト。えと、ジークからは何か聞かなかったかな?」

「えと……あ、貴方たちがジークの言っていた『ともだち』ですね。」

二人の説明でジークに言われたことを思い出したようで、少女は納得した表情を向けていた。

しっかし、自分たちが言えた台詞ではないが、6歳にしては相当教養が高い。その少女の教育係がいかに優秀なのかを窺わせる一端だろう。

 

「クローディア・フォン・アウスレーゼといいます。よろしくお願いします、フォストレイトさんにセルナートさん」

「………てい」

 

―――ビシッ!

 

「はうっ!?」

(やれやれ、この時点でも随分他人行儀な感じだな。流石に同年代の子と交流する機会が少ないからな。)

クローディアの自己紹介に納得いかなかったシルフィアは、軽めのチョップをクローディアにかました。無論、クローディアの持っているものを落とさない様フォローしつつ。不満そうな表情を浮かべるシルフィアに対して、何がいけなかったのか困惑した表情を浮かべるクローディア、頭を抱えて疲れた表情を浮かべるアスベル。

 

「あのねクローディア、私らはアリシアさんに『友達になってほしい』ってお願いされたの。同年代の友達は貴重だしね。その友達に『他人行儀』はしてほしくないの。」

「で、でも、王族たる者皆に尊敬される人になれって……」

「『王族』である前に『クローディア』という人間でしょ、君は。俺らはさっきアリシアさんに会ったけれど、とても気さくな方だった。それでいて、女王たる風格を滲ませていた。それは、リベール王国を統べる『女王』であるとともに、『アリシア・フォン・アウスレーゼ』という人間であるということを自覚していないと、できないことなんだ。」

『王』という象徴たり得る存在が『人間』であるということと両立するのは並大抵の話ではない。過去の国を統べた王の中には、己の欲に憑りつかれて悲惨な末路を歩んだものも少なくない。時には国民の安寧のために自らの信念を押し殺すこともある。己の理想を現実化し、己の力量を理解して最大限に発揮できることこそ、王になりし者が目指す到達点であり、一番の難題なのだ。

そういった点から、『施政者』でありながらも『人』であるということを忘れずに国を治めているアリシア。その影響はリベールに住む人の心に深く影響を与えているのは間違いない。

 

「というわけで……貴女の事はクローゼって呼ぶことにするね。私の事はシルフィでいいよ。アスベルもそう呼んでいいから。」

「ま、従っておくのがいい。よろしくな、クローゼ。」

「あ、はい。その、いきなりは出来ないかもしれませんけれど、宜しくお願いします。シルフィさんにアスベルさん。」

お、ようやく笑顔になった。こうして笑うと年相応なのだが……まだ6歳でこれって、いろいろ大変かもな。

3人で話していると、向こうから2人が近づいてきた。どうやら、模擬戦は終わったようだ。

 

「くそ、また負けた!ユリ姉強すぎるよ。」

「そう簡単に負けては立つ瀬がないのだがな……おや、姫様。その者らは…」

「って、シオン!またユリアさんと模擬戦だったんですか!?」

その二人……見るからに歳の離れた姉弟で、弟の方はクローゼや俺らと同じぐらいの年だろうと思われる。クローゼはその男子の様子を見るや否やかなりの声量で食って掛かっていた。

 

「いいじゃないかよ、強くならなきゃ立つ瀬がないし。」

「そういう問題じゃないの!いっつもユリアさんとばっかり!」

「クローゼ相手だと申し訳ないからだよ。」

「何?私相手じゃ駄目なの?」

「仕方ないだろ……手加減しないと対等に戦えないし(万が一クローゼに怪我させたら、ユリ姉が怖いんだよ!)」

クローディアと、ユリアと呼ばれた女性の隣にいた少年――シオンとのやり取りが、ある意味痴話喧嘩に見えた気がしたのは俺の気のせいだろうか?それとも、単純に疲れているだけなのだろうか?

 

「「………」」

アスベルとシルフィアはその様子に呆気にとられていた。

 

「何と言うか、すまないな。あの二人は顔を合わせるといつもあんな調子で……申し遅れた。王室親衛隊、ユリア・シュバルツだ。至らぬ身ではあるがクローディア姫とシオンの教育係をしている。」

「アスベル・フォストレイトです。」

「シルフィア・セルナートです。」

緑髪の女性、ユリアと互いに自己紹介し、秘密に触れない程度で経緯を説明した。

 

「なるほど、ジークが気に入ったのも頷けるな。私からもお願いしたい。あの二人の友達となってほしい。」

「畏まらないでください、ユリアさん。こちらとしても同年代の友達と会える機会なんて中々ないでしょうから」

「それはありがたい話だな……お二人と話していると、とても姫様やシオンとは同世代と思えないな……」

「あははは……」

ユリアの言い分は尤もである。アスベルとシルフィア、中身というか精神年齢は10代後半、肉体年齢は10歳にも満たないのだ。小学生の身なりで高等教育並の知識を持っているのは飛び級とか異常なまでの天才ぐらいだろう。

 

「今休憩に入ろうと思うのだが、お二人はどうかな?」

「ありがたく招待にあずかろうと思います。」

「右に同じです。」

「解った……姫様にシオン、休憩しましょうか。」

「あ、はい。」

「ったく、しょうがねえな……(た、助かった……サンキュー、ユリ姉)」

ユリアの提案に、我に返ったクローディアと渋々ながら承諾しつつも内心はユリアに感謝していたシオンだった。

 

 

 

 




はい、また一人オリキャラ追加ですw男です。

言っておきますと、主人公はアスベルです(確定事項)

オリキャラ自体はそれほど多くはありません。多分。

今回で出会い編完結させる予定ができませんでしたorz次こそ、次こそは!(淡い希望)

オリキャラのステータスって需要あるのかな?(オーブメントのラインとか決めてません)

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