英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第61話 波乱の晩餐

~グランセル城内・侍女控室~

 

「……お話はわかりました。ラッセル博士の伝言を女王陛下に直接伝えたいと……。つまり、そういう事ですわね?」

エステルとヨシュアから話を聞き終えたヒルダは真剣な表情で尋ねた。

 

「はい……そうなんです。女王様が本当に調子が悪かったらちょっと考え直しますけど……」

「それは問題ないでしょうが……。女王宮は、先ほどの特務兵によって24時間監視されている状況です。中に入れるのは、公爵閣下と大佐殿、そして身の回りの世話を仰せつかった私や侍女だけなのです。」

「ということは、やっぱり面会するのは難しそうね……」

女王に会うのがかなり難しい事をヒルダから聞いたエステルは溜息を吐いた。

 

「どうする、エステル?博士の伝言を、ヒルダ夫人に伝えてもらう手もあるけど……」

「うーん、でもやっぱり直接会って話がしたいかも……デュナン公爵の狙いにリシャール大佐の真の目的……レイア達かクローゼ、シオンがいれば、何とかなったかもしれないっていうのに…」

ヨシュアに尋ねられたエステルは唸った後、溜息を吐いた。

 

「今、『レイア』、『クローゼ』、『シオン』という名前が出て来ましたが………」

一方ヒルダはエステルから出て来たある人物の名前を尋ねた。

 

「あ、はい………どうしよう、ヨシュア?」

「ヒルダさんなら話してもいいと思うよ。」

「そうね………実は―――」

エステルらはレイアらと行動を共にしていること、そしてその過程でクローゼもといクローディア姫、そしてシオンもといシュトレオンと行動を共にしていることを明かした。

 

「レイア様にクローディア姫、シュトレオン殿下と共に、ですか………」

レイア達と旅をしている事を知ったヒルダは驚いた。

 

「あ。やっぱりクローゼはともかく、シオン達の事を知っているんだ?」

「それは勿論であります。二人の事は幼き頃よりよく面倒を看させていただいた身ですので。それに、レイア様は侍女たちの憧れみたいな存在ですから。」

「あはは……レイアの評価って相変わらず凄い事ばっかり聞くわね………とりあえずこの話は置いておいて、今は女王様に会う事ね。」

「……エステル殿、ヨシュア殿。私に少々考えがあります。晩餐会が終わったらまたここに来て頂けますか?」

「え、それって……」

「僕たちが女王陛下にお会いできる手段があるということでしょうか?」

ヒルダの提案にエステルは驚き、ヨシュアは尋ねた。

 

「そう考えて頂いても結構です。難しいかもしれませんが……試す価値があるかもしれません。ただ、いささか用意が必要なので晩餐会が終わってからでもいいですか?」

「やった、ラッキー!」

女王に会えるかもしれない事にエステルは明るい表情をした。

 

「わかりました。晩餐会が終わったら伺います。」

「お待ちしております。料理の下ごしらえが終わったのでそろそろ晩餐会も始まると思います。一度、お部屋に戻った方がいいかもしれませんね。」

そしてエステル達は自分達の客室に戻った。

 

 

~グランセル城内・客室~

 

「よう、エステル、ヨシュア。ずいぶんと遅かったじゃないか。そろそろ晩餐会が始まる時間だぜ?」

「ごめん、ジンさん。あちこち見物していたらつい時間を忘れちゃってさ~。それに、各地の市長さんたちと色々と話してきちゃったの。」

待ちくたびれている様子のジンにエステルは謝った後、説明をした。

 

「へえ、お前さんたち、お偉いさんと知り合いだったのか?」

エステルの説明を聞き、ジンは驚いた後尋ねた。

 

「ロレントの市長さんとは普段から親しくさせてもらっているんです。他の方たちとも、旅をしている時に知り合った方々ばかりです。」

「なるほどな。確かに、遊撃士の仕事をしてたらお偉いさんと知り合う機会は多いか。しかし、その様子じゃ、ずいぶん活躍してるみたいじゃないか?」

ヨシュアの説明に納得した後、ジンはエステル達がさまざまな所で活躍している話を持ち出した。

 

「えへへ……それほどでも。ジンさんは、王都に来てから何か遊撃士の仕事はやったの?たしか、他の国でも同じように仕事ができるのよね?」

「ああ、正遊撃士だったら国籍に関係なく仕事ができるが……。予選だの、大使館の手続だので仕事を受けてるヒマはなかったな。まあ、他にも遊撃士が結構いたから出る幕がなかったとも言えるがね。」

エステルの疑問にジンは溜息を吐きながら答えた。

 

「クルツさんたち四人に、レイア、シオン、アスベル、シルフィア、ヴィクターさん……確かにこれだけ遊撃士が集まったら大抵の事件はすぐ解決しそうですね。ただ、王都に集中している分、他の地方支部は大変そうですけど……」

「わはは、そうかもしれんなぁ。」

「うう、なんだか今さら申しわけない気がしてきたわ。シェラ姉、今ごろどうしてるのかしら……」

ヨシュアの言葉にジンは呑気に笑い、エステルは申し訳なさそうな表情をした。

 

「たしか前にもその名前を口にしていたが……そのシェラ姉ってのはひょっとしてシェラザードのことか。」

「え……知ってるの!?」

ジンがシェラザードを知っている様子にエステルは驚いた。

 

「はい、僕たちの先輩で昔から親しくさせてもらっています。」

「なるほど、そうだったのか。前に彼女がカルバードに来た時に知り合ったことがあってな。いい師に恵まれていたらしく、若いながらも見所がある娘だった。」

(その師って……)

(うん、父さんのことだね。)

 

コンコン

 

その時、部屋がノックされてシアが入ってきた。

「失礼します。晩餐会の支度が整いました。ご案内してもよろしいでしょうか?」

「おお、待ちくたびれちまったぜ。さ~てと、それじゃあタダメシにありつくとするかね。」

「うん、さすがに試合の後だからすっごくお腹が空いてきちゃった。さ~、食べまくるわよ~♪」

「あの、二人とも……一応、テーブルマナーなんかも忘れない方がいいと思うけど……」

ジンとエステルの様子にヨシュアは内心冷や汗を流して、苦笑しながら言った。そしてエステル達はシアの案内によって、晩餐会が開催される広間に向かった。

 

 

~グランセル城内・1階広間~

 

「えっと……。これって夕食会なのよね?どうして食器だけが並んで肝心の料理がないの?ナイフとフォークがいっぱい並べられてるし……」

目の前の光景に首を傾げたエステルはヨシュアに尋ねた。

 

「正式なディナーだからね。前菜から順番に色々な料理が出てくるんだ。あと、ナイフとフォークは外側から使っていくんだよ。」

「うぐっ……テーブルマナーってやつね。ちょっと緊張してきちゃった。」

ヨシュアの説明を聞き、エステルは唸った後、緊張して溜息を吐いた。

 

「うふふ……。あまり気にする事ありませんわ。料理というものは美味しく頂くのが一番ですから。マナーや礼儀作法は二の次ですわ。」

「そうじゃそうじゃ。聞けば、君たち二人は出席しておる者たち全員と知り合いだそうじゃないか。固くなる必要はなかろう。」

「そうそう、気にしてたら折角の料理も楽しめないぞ。」

緊張しているエステルに招待客であるメイベルやクラウス、そしてアスベルは場を和ませた。

 

「あ、それもそっか♪」

「それで納得しないでよ……」

あっさり納得したエステルにヨシュアは呆れて、溜息を吐いた。

 

「そういえば、そちらの方はナイフとフォークでよろしいんですの?東方の方々は、お箸の方が得意だと聞きましたけど。」

「ほう、よくご存じですな。ですが、郷に入っては郷に従えとも言いますからな。不調法ながらナイフとフォークを使わせてもらいますよ。」

「まあ……ご立派ですわ。さすが武術大会で優勝された達人の言葉は違いますわねぇ。」

「はっはっは。いやあ、それほどでも。」

(つくづく美人に弱いのねぇ……)

(まあ、女好きって感じじゃないと思うけど……)

メイベルに感心され、照れているジンを見てエステルとヨシュアは苦笑した。

 

「というか……アスベル、遊撃士だったのには驚きよ。」

「ま、聞かれなかったしな。にしても、エステルにヨシュア。噂は色々聞いてるよ。」

「いや……アスベルから比べたらまだまだだよ。」

「まったくよ。あんな試合を見せられたら、同じ人間なのかって疑っちゃうわよ。」

「いや、人間だからな。」

アスベルの言葉に苦笑しつつも答えるヨシュア、あの試合の感想を言いつつジト目でアスベルの方を見るエステル。あんなのが普通の人間のやることじゃないと思っていた。それにはさすがのアスベルも目を伏せつつ答えた。

 

「それにしても……公爵閣下はずいぶん遅いですな。いったい何をしてるんでしょう?」

「ふむ……確かに。それと上座は公爵閣下として、そこの席は誰が座るのでしょうね?」

(……クローディア姫は考えられない。となると、『例の御仁』かな。)

マードックの呟きを聞き、フィリオも首を傾げた。そして、内情を知るヴィクターは大方の予測を立てた。

 

「そうですな……クローディア姫という可能性もあるかもしれないが……」

コリンズはクラウスの言葉に頷きながら、推測をした。

 

「皆様……大変長らくお待たせしました。公爵閣下、ご入室でございます。」

そこにフィリップが入って来て、礼をした後、入口の傍に控えた。するとデュナンを始めとし、リシャール、カノーネが入って来た。

 

「いやはや、諸君。待たせてしまって申しわけない。少々、打ち合わせが長引いてしまったものでな。彼はリシャール大佐。王国軍情報部の責任者でな。テロ事件を解決するために日夜、尽力してくれているので礼の意味も込めて招待した。」

「お初お目にかかります。王国軍情報部のリシャールです。公爵閣下の格別のご厚意で晩餐会に招待していただきました。

無粋な軍服で失礼ですがどうか同席をお許しいただきたい。」

デュナンはリシャールを紹介し、紹介されたリシャールは丁寧に自己紹介をした。そしてデュナンはフィリップを後ろに控えさせて上座に座り、リシャールはマードック達が気にしていた空席に座り、カノーネはリシャールの後ろに控えた。

 

(ま、まさか大佐と一緒のテーブルで食事するなんて……)

(予想はしていたけど、やっぱり少し緊張するね……)

リシャールが現れた事にエステルは嫌そうな顔をし、ヨシュアは表情を引き締めた。

 

そうして晩餐会が始まった……………豪華な料理が次々と運ばれ、エステル達は滅多に食べれない料理を楽しんだ。

 

 

「はっはっは、いや、愉快愉快。どうかね、メイベル市長。王城のグランシェフの腕前は?ボースの『アンテローゼ』にも負けずとも劣らずの味ではないか?」

「ええ、素晴らしい腕前ですわ。ワインとの相性も完璧ですし、思わず引き抜きたくなりますわね。」

「はっはっは、そなたが言うとあながち冗談には聞こえないな。どうだ、ジンとやら。東方人のそなたの口には合うかな?」

メイベルの賛辞にいい気分でいたデュナンはジンに尋ねた。

 

「いや、大変結構ですな。不調法な自分の舌にも判る洗練された深みと味わい……リベール料理の真髄を味わっているような心境です。」

「うんうん、そうだろう。どうだ、若き遊撃士たちよ。こんな豪勢な料理は今まで食べたことがなかろう?」

感心しているジンを見て、デュナンは頷いた後、今度はエステル達に尋ねた。

 

「うーん、確かにメチャメチャ美味しいです。招待してくれた人はともかく、料理だけはホンモノかも……」

「はっはっは。そうだろう、そうだろう……。……ん?」

エステルは笑顔で料理を褒めたが、サラッと遠回しにデュナンを悪く言い、デュナンはエステルの賛辞に若干引っ掛かった。

 

「素晴らしい料理を振る舞っていただけるとは、招待してくださった閣下には感謝しなければなりませんね。」

「ほ、本当に素晴らしい料理ですね。それに今まで、こういう正式な席に呼ばれる機会が無かったのでとても勉強になります。招待してくださって本当にありがとうございました。」

デュナンの様子を見て、アスベルが内心皮肉めいた感じでフォローし、ヨシュアは慌てて取り繕った。

 

「はっはっは。なかなか殊勝でよろしい。しかし、執事から言われてようやく思い出したのだが……。そなた達とは、ルーアンの事件で一度顔を合わせていたのだな。何とも奇妙な縁があったものだ。」

「は、はあ……そーですね。(執事さんから言われるまで思い出せなかったわけね。あの様子じゃあ、シオンの事やヴィクターとの事も覚えてなさそうね………)」

エステルは自分の事をすっかり忘れているデュナンに内心呆れた。

 

「さあ、今夜は無礼講だ!料理も酒もたっぷりあるから、遠慮なく追加を申し出るがいい!」

「公爵閣下……その前に、例の話を済ませてしまっては如何ですか?」

デュナンが張り切っている所をリシャールが遠慮気味に申し出た。

 

「……おお!そうだ、その話があったか。実は、王国を代表する諸君らに集まってもらったのは他でもない……。この晩餐会の席を借りてある重大な発表をしたかったのだ。」

リシャールの申し出にデュナンはエステル達や招待客達にある事を申し出た。

 

「ほう、重大な発表……」

「それは一体……どのようなお話でしょうか?」

デュナンの言葉にヴィクターは驚き、フィリオは警戒するような表情で尋ねた。

 

「うむ。ここから先は、私の代わりにリシャール大佐に説明してもらおう。」

尋ねられたデュナンはリシャールに説明をするよう、促した。

 

「……恐縮です。女王陛下が御不調なのはすでにご存じのことかと思います。ですが、徐々に回復なさっているため、すぐに元気な姿を見せてくださるでしょう。」

「おお……それは良かった。」

「では、陛下へのお見舞いは許していただけるのかしら?」

リシャールの説明にクラウスは安心し、メイベルは女王への見舞いの許可を尋ねた。

 

「あいにくですが、陛下のご意向でそれは遠慮して欲しいとのことです。ただ数日中に、王都周辺を騒がすテロリストどもは一掃できる公算です。その事と合わせて、女王生誕祭は予定通りに執り行われるでしょう。」

「ふむ……陛下のお顔を拝見したかったが……次の機会にお預け、ということか。」

今は大事な時期である、と言いたげなリシャールの言葉にヴィクターは少し残念そうな表情を浮かべた。

 

「ふむ……市民も楽しみにしているだろうからめでたいことではありますな。だが、話というのはそれだけではないのでしょう?」

「……確かに、それだけならば連絡してくれれば済みますからな。」

コリンズの疑問に同意するように、マードックは頷いた。

 

「フフ、察しが良くて助かります。女王陛下が回復されつつあるのは先ほど述べた通りなのですが……。陛下は、今回のご不調を理由にある決断をなされたのです。その決断とはすなわち―――」

コリンズの疑問にリシャールは口元に笑みを浮かべて頷いた後、一端言葉を切り、表情を真剣にして、ある説明をした。

 

「ご自身の退位と、こちらに居られるデュナン公爵閣下への王位継承です。」

「な、なんですと!?」

「ほ、本当ですの!?」

リシャールの説明にマードックやメイベルは驚きの声を上げた。また、他の招待客達も驚きを隠せていない様子だった。だが、その中で違う驚きを浮かべているものがいた。

 

(ふむ……先日頂いた手紙の内容とは違うね……これは、問いただす必要がありそうだ。)

(やはりと言うべきか……つくづくいい芝居をするな。アラン・リシャール。)

(……ま、これも茶番でしかないのだけれど。)

食い違いに違和感を覚えたフィリオ、そして内情を知っているヴィクターとアスベルは内心笑みを浮かべた。

 

(ヨシュア、これって……!)

(うん……。レイア達の情報通り、とうとう陰謀が姿を現したね。)

一方エステルは小声でヨシュアに話し掛け、ヨシュアは小声で頷いた。

 

「……私も戸惑ったのだが陛下が存外、弱気になられてな。無理もない、四十年近くもの間、激動の時代に翻弄されたリベールを女性の身で導いてくださったのだ。そう思うと、この生誕祭を最後に俗事から解放させてさしあげたい……王位継承権を持つ身としてはそう決意した次第なのだよ。」

「なんと……陛下がそこまでお悩みになっておられたとは……毎年、お会いしているというのに気付けなかったとは情けない……」

「し、しかし……。このような酒の入った席で聞くにはあまりにも重大な内容ですわ。失礼ですが、どこまで現実性のあるお話なのでしょう?」

デュナンの演説を聞いたクラウスは自分自身を嘆いたが、メイベルは反論した。

 

「む……」

メイベルの反論にデュナンは不満そうな表情をした。

 

「ふむ、メイベル市長。閣下のお言葉が信用できないと……そう仰られるか?」

リシャールはメイベルに尋ねた。

 

「そ、そうは言ってません!ただ、市長には選挙があるように王位継承にもしかるべき手続があるのではないかという事です。」

「そうですな……」

「できれば、陛下から直接、今の話をお伺いしたいものです。」

メイベルの主張にコリンズやマードックは頷いた。本来であるならば、女王陛下と公爵、それと各地方の長……それらが揃っている状態ならば、納得できる理由なのだが……今回のこのような席での発表には、疑問を感じないはずがない。

 

「う、うーむ……」

市長達の様子にデュナンはたじろいだ。

 

「皆さんの動揺も理解できます。ですが、どうか冷静になって今の話を受け止めていただきたい。先ほど申し上げたように生誕祭には陛下ご自身の口から発表されることになるでしょう。真偽はその時に確かめれば済むことではありませんか?」

「そ、それは……」

「………………」

リシャールの言葉を聞き、マードックやコリンズは何も言えなくなった。

 

「問題なのは、この件が発表された時に一般市民にどう影響を与えるかです。いたずらな混乱を避けるためにも各地の責任者である皆さんに前もって事を伝えておきたい……。公爵閣下はそう判断なさったのです。」

「ゴホン……うむ、まあそういう事だな。」

リシャールの説明に同意するようにデュナンは咳払いをして頷いた。

 

「そして、陛下の退位ともなれば事態はリベール国内には留まりません。大陸諸国の目、とりわけ北の脅威たるエレボニアや東のカルバードの反応も気がかりでしょう。まさに、ここにいる我々が新たなる国王陛下を盛り立てながら一致団結をしなくてはならない……そんな時期が迫っているのです。」

(な、何かもっともらしい事を言ってるんですけど……)

(うん……。大したアジテーターだね。)

リシャールの演説をエステルは怪しいものを見るよう表情で小声でヨシュアに言い、ヨシュアはエステルの言葉に静かに頷いた。

 

「正式決定は、生誕祭の時に陛下から直接伺うとして……心の準備をしておくようにと。つまり、そういう事ですか?」

「フフ……。理解していただいて幸いです。」

ヴィクターの確認にリシャールは表情を笑みに変えて答えた。

 

「うーむ……確かにそういう事になったらわしらも忙しくなりそうじゃな。」

「そうですわね……市民へのアナウンスもありますし。」

クラウスやメイベルが納得しかけた時

 

「……1つお伺いしたい。」

コリンズが尋ねた。

 

「公爵閣下に王位継承権があるのは私も存じておるが……たしか、同位の継承権を持つ方が他にもいらっしゃったはずですな?」

「そ、それは……」

コリンズの疑問にデュナンはすぐに答えられず、戸惑った。

 

「陛下のお孫さんにあたるクローディア殿下のことですね。確かに、王室典範上の規定では公爵閣下と同位ではありますが……。まだ年端もいかないという理由で陛下は閣下の方を推されたようです。先ほどの話にもありましたが……。女性の身に余るほどの重責を姫に負わせたくなかったのでしょう。クロ―ディア殿下はまだ成人もしていない………女王陛下も悩んだ末、クロ―ディア殿下への王位継承を見送ったのです。」

「そうそう、そうなのだ!まあ、クローディアには良い縁談を探してやるつもりだ。非公式だが、すでに他国の王家から何件もの申し入れがあってな……。ひょっとしたら今年中にも縁談が実現するかもしれんのだ。」

リシャールの説明にデュナンは頷いた後、クロ―ディア姫の現状を説明した。

 

「まあ……!」

「……ふむ、お話は判りました。そうなるとお目出たい話が2つも続くというわけですな。」

「ううむ……姫様が……。ご結婚されるには少々若すぎるとは思うが……」

デュナンの説明を聞いたメイベルは驚き、コリンズは一応納得し、クラウスは成人もしていないクロ―ディア姫が結婚する事に戸惑った。

 

「……ちょいと失礼。1つ質問してもいいですかね?」

そこに今まで黙っていたジンが話に入って来た。

 

「ジ、ジンさん?」

突然話に入って来たジンにエステルは驚いた。

 

「ほう……?構わん、言ってみるがいい。」

話に入って来たジンをデュナンは以外そうな表情をした後、続きを促した。

 

「失礼だが、今耳にした話は自分たちのような部外者が聞いていい話とは思えません。まして、自分は王国人でもない。なのに、何故このような席でわざわざ発表されたのでしょう?」

「それは、優勝した君たちが偶然にも遊撃士だったからだ。陛下の退位という重大な情報はギルドにも事前に伝えたかった。そう私が閣下に提案したので聞いてもらう事になったのだよ。」

「なるほど……リベールでは、軍とギルドが良い関係を結んでいるという話はどうやら本当だったようですな。」

リシャールの説明を聞いたジンは納得した。

 

「はは、エレボニア帝国やカルバード共和国ほど軍事力が充実していないからね。手を結ばざるを得ないというシビアな現実があるのだが……いずれにせよ、真意はご理解いただけたかね?」

「ふむ……了解しました。今日、この席で知った情報は王都支部にも伝えておきましょう。」

リシャールの確認するような言葉にジンは頷いた。

それらの疑問が一通り出尽くしたところで、フィリオが声を上げた。

 

「……公爵閣下、無礼を承知でお尋ねしたい。私は父からの御縁で女王陛下と手紙の遣り取りをしているのだが……陛下が体調を崩されたのは、『何時』の話なのですか?」

「そうですね、正確には……」

「アラン・リシャール大佐。私は貴方の言葉が聞きたいのではない。女王陛下から王位継承を賜ったデュナン公爵閣下に聞いているのです。陛下に対して親身でなければ、直々に王位継承はなされないでしょう。……それで、何時の話なのですか?」

先ほどエステルらと会話した時とは異なる、真剣な表情と口調……その威厳は、まさしく“長”足りえるもの。リシャールの言葉すら許さず、真っ当な正論をぶつけてデュナンに問いただした。

 

「う、うむ……体調を崩された兆候は一か月前の話だ。その頃から物思いにふけったような表情を浮かべておってな。そして、今回の事に至ったという訳だ。理解していただけたかな?」

「ええ。『理解』はいたしました。ただ、事が事ゆえ後々公爵閣下……いえ、次期国王陛下とはいずれたっぷりとお話しさせていただきたいですね。」

「フム、中々わかっておるではないか。正式に国王になった暁には、貴殿を宰相の位に就かせよう。」

(……どうしてだろう。フィリオの言葉が凄く厭味ったらしく聞こえるんだけど。)

(それは僕も同感だね。というか、フィリオさんは何か知ってそうだね。)

笑顔を浮かべつつも棘が入りまくったフィリオの言葉に何も気付いていないデュナン、そのやり取りを見ていたエステルは内心冷や汗をかき、ヨシュアもそのやり取りを冷静に分析しつつ、彼から情報を得ることも視野に行動することを決めた。

 

そうして晩餐会の時は流れて行った………………

 

 




……全ての事が終わった際、『茶番だーー!!(ガビーン)』とか言われる晩餐でしたw

というか……デュナン、テメーは詰んでいる。

そして、晩餐に参加しなかった一部メンバーですが、既に色々動いています。

サラは色々愚痴りそうですがねw一応、晩さん会に参加したのは優勝チームと準優勝チームの代表という解釈でお願いしますw

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