人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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113話 ナチズム

鉄塔での戦況は混迷を極めていく。

 

突撃班の前進を阻むのは、時雨と魔獣軍勢が行う狙撃布陣。

 

後方から迫りくる魔獣軍勢を迎え撃つ後方支援班とに分かれた大乱戦。

 

「みふゆ…!やっぱり遠距離魔法攻撃が無いと前進を阻まれるよ!」

 

鶴乃に後ろの戦況を伝えられ、みふゆの表情にも焦りが浮かぶ。

 

「この為の分断だったのですね…。早く後ろの魔獣たちを倒してやっちゃん達の援護を!」

 

後方から現れる魔獣に対し、みふゆは自身の魔法武器である巨大チャクラムを投擲。

 

彼女の固有魔法も合わさり、まるで分身するかのように複数のチャクラムと化す。

 

魔獣の隊列を一直線に割いていくが、次々と魔獣が現れ続けていく。

 

「この笛の音…やっぱり、鉄塔にいる魔法少女を何とかしないと……」

 

れんが鉄塔に視線を向けていた時…。

 

<<危ない!!>>

 

「えっ…?」

 

大声を出す沙優希に振り向くが、彼女が注意を促したのはれんの背後に現れた魔獣に対してだ。

 

「あっ……!?」

 

後ろを振り向く頃には、魔獣のビーム攻撃が発射されようとしている。

 

「まったく!世話が焼けますわね!!」

 

誰よりも早く援護に動いたのは阿見莉愛。

 

魔法の矢に魔力を集中させ、矢が紫の炎を纏う。

 

「行くわよ!私の力で……ベラ・スピーナ!!」

 

彼女のマギア魔法が放たれ、魔獣に直撃すると同時に内部爆発を起こして消滅。

 

「ボサッとしてるんじゃありませんわよ!この阿見莉愛様が共に戦う華麗な戦場だというのに!」

 

「あの……えっと……ご、ごめんなさい…です」

 

「そこは謝るんじゃなくて!感謝の言葉の一つでも……」

 

プンスコした表情で彼女に激を送っていたのだが…。

 

「あ、あら……?」

 

見れば彼女は自身の魔法武器である杖を掲げ、青白い魔力を放出していく。

 

「怒ることないじゃない!?」

 

杖に収束した魔力が一気に解放され、莉愛に向けて無数の魔弾が放たれてしまうのだが…。

 

「えっ……?」

 

魔弾は莉愛の後ろを通り超え、背後の魔獣たちに次々と着弾して破壊していく。

 

五十鈴れんが得意とするマギア魔法、ソウル・サルベーションだ。

 

「あの…私、あまり会話が得意じゃなくて…。でも、守ってくれた人は…守ります…はい」

 

「はぁ…不器用なりの感謝のお礼というわけね」

 

2人は再び魔獣の軍勢を相手に善戦を繰り返す。

 

彼女たちの攻勢に押し戻されるかのように後退していく魔獣軍勢。

 

魔獣たちが下がっていく後方の開けた野原には既に、伏兵とも言える魔法少女たちの姿。

 

<敵さん共を上手く誘導してくれたよ。流石は神浜魔法少女たちの実力だね>

 

一体の魔獣が後ろ足を地面につけた時、足元が爆発。

 

足首から下が破壊され、大きく倒れこむ。

 

見れば次々と魔獣たちが同じ現象を起こしていく。

 

「み、みふゆ……魔獣たちが何かの罠で倒れていくけど…これって…?」

 

「まるで……地雷原にでも入ったかのような光景ですね…」

 

魔獣たちの足を破壊していくのは、埋め火(うずめび)と呼ばれる木箱の地雷。

 

<射手、今だ!>

 

林の中に潜んでいたのは、鴉面めいた仮面で頭部を隠す和装姿の魔法少女集団。

 

彼女たちが持つ火矢筒に備えられているのは、焙烙火矢(ほうろくひや)という爆弾。

 

次々と焙烙火矢が放たれ、倒れこんだ魔獣に雨の如く降り注ぎ、爆発して破片をまき散らす。

 

「凄い……まるで漫画の忍者集団ですね…」

 

「あの子たち……神浜の魔法少女じゃないよね…?」

 

「どうして私たちを助けてくれるのでしょう……?」

 

爆発の煙が晴れるが、仕留めそこなった魔獣がいる。

 

「ちゃらー!!開けた場所だしトドメは私が……」

 

<<ここはあたし達に譲ってもらうよ!!>>

 

「えっ!?」

 

木の枝から大きく跳躍して現れたのは涼子の姿。

 

「悪鬼共、もう未練は無いだろ!」

 

彼女が持つのは、仏教の修行で肩を叩く時に使う警策(きょうさく)と似た魔法武器。

 

燃え上るような赤い和装衣装と同じく、武器が業火を纏う。

 

一気に空から下降し、地面を叩きつける。

 

「大炎魔警策茶昆!!」

 

警策の炎が地面を走り、五つの火柱が周囲を囲みながら一帯ごと魔獣を焼き払っていく。

 

「あちゃー……私のお株を奪われちゃったよ…」

 

「…あの炎魔法の力は、鶴乃さんに匹敵する程に見えます。あの子たちは一体……」

 

業火が収まると、そこには焼け焦げた五芒星ともいえる大の文字が刻まれていた。

 

警策を肩に担ぐようにして歩いてくる涼子と、後ろからは時女の魔法少女である武装集団。

 

「何なんですの貴女たち!?私の活躍ステージにいきなりの乱入なんて感心しませんわ!」

 

「そこは勘弁して欲しいかな~。あたしらはね、諸事情があって今まで姿を見せられなかったし」

 

「貴女たちは神浜の魔法少女ではありませんね?」

 

みふゆが代表して涼子の前に歩み寄る。

 

「この神浜で何を目的にして潜伏していたのですか?東の魔法少女の誘いに乗ってこの街に…?」

 

「時女と東の魔法少女とは一切関係ないから安心しな。あたしらはね、東の魔法少女を止めたい」

 

「時女……?」

 

「積もる話は後にした方がいい。この魔獣共を操る東連中を制圧するのが先だよ」

 

「そうですね…協力に感謝します。私たちは急ぎやっちゃん達と合流を……」

 

「あたし達に先んじて時女一族の魔法少女が向かっているから安心しな」

 

「貴女たちは時女一族っていうんだね?なんだか漫画の忍者っぽくて…私は感激したよぉ!」

 

鶴乃に抱き着かれ、後頭部をかく涼子の姿。

 

後方班の戦いは決し、残すは突撃班と別働班の戦いへと流れていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

やちよ率いる突撃班の進撃を押し留める時雨。

 

だが下には既に常盤ななか達が迫りくる。

 

「東の魔法少女たちは…まだこちらに合流出来ないの!?」

 

時間稼ぎを行い、東側の進軍に合わせて挟撃する手筈だったが…間に合いそうにない。

 

横の月咲に視線を向ける。

 

彼女も汗まみれの表情を浮かべながら魔力を絞り、横笛の演奏で魔獣を操り続けるのだが…。

 

「このままだと…いずれここまでこられてしまう…」

 

鉄塔の下に視線を向ける。

 

彼女の視線は下で戦うはぐむに向けられていた。

 

「お願い…東の子たちが来るまで…持ちこたえてはぐむん!」

 

下のはぐむが戦っているのは、コロニーを形成する魔獣たちを超えてきた常盤ななか。

 

「ハァァァーーッ!!」

 

「くっ!!」

 

常盤ななかの舞うような連撃に対し、長大な大剣を駆使して戦うはぐむだが…。

 

(やっぱりこの剣…使いにくい!重さに振り回されちゃう!!)

 

一撃は重いが鈍重な大剣と、威力は低くても手数が多い軽量な二刀小太刀。

 

それに加え常盤ななかは居合の段持ちである武術の使い手。

 

「えいっ!」

 

大剣で唐竹割りの一撃。

 

ななかは素早くサイドに踏み込み、回避と同時に右肘を顔面に打ち込む。

 

「くっ!!」

 

鼻骨が砕け、鼻血を撒き散らし倒れ込むはぐむ。

 

刃の先端を彼女に向けるななかの表情は、冷徹な顔つき。

 

「これだけの所業に与したのです…覚悟は出来ていますよね?」

 

その目には暗い炎が宿る。

 

「これだけの所業が起こるだけの差別を行ってきたのは…西側の人々です!!」

 

「だから暴力革命が許されるとでも?」

 

「貴女たち西側はいつもそう!自分たちが酷い目にあう番になったら直ぐ被害者側のせいに…」

 

「どんな理由があるにせよ、それを利用し社会を踏み躙る免罪符にするというなら…貴女を斬る」

 

「貴女には差別をされた苦しみは無かったんですか!?」

 

「あります。ですがそれを理由にして…私は西側の人々に暴力を振るった事は一度もありません」

 

「うっ…」

 

「私は社会主義者。個人の感情よりも社会を優先し…社会に仇成す存在を決して許さない者です」

 

「差別をされた苦しみを知ってる人なのに……どうして!」

 

「かかって来なさい。己の私欲のみを優先する者たちが、どうなるかをその身に刻んであげます」

 

立ち上がり、大剣を中段に構える。

 

「やぁぁーーーッッ!!」

 

大きく大剣を振りかぶる唐竹割りの一撃。

 

小太刀二刀流を交差させ踏み込み、唐竹割りの速度が乗る前に刃を受け止める。

 

「くぅっ!」

 

押し切られまいと大剣を押し込もうとするが…罠だ。

 

ななかは右足を素早く半回転移動させ、相手の圧を利用した回り込みで相手の態勢を崩す。

 

同時に小太刀を握ったままの左手で相手の両手首を抑え込む形。

 

「あっ……」

 

はぐむの眼前には、右手の小太刀の先端。

 

「お覚悟を」

 

人間社会の為なら人を殺す事すら何も感じないと相手に感じさせる冷淡な声。

 

「はぐむん!!!!」

 

下の光景に気が付いて大声を上げた時雨だったが…。

 

「時雨ちゃん……ごめ……」

 

はぐむの顎下から頭部を貫く一撃が放たれようとした時…。

 

<<駄目ネ!!!>>

 

コロニーを形成する魔獣の群れの中から現れ出たのは美雨。

 

彼女の飛び蹴りがななかの側面に決まり、蹴り飛ばされてしまう。

 

「何をするんですか美雨さん!?」

 

倒れ込んだななかは仲間に対し、怒りの表情。

 

「人殺しを続けてしまたら!もう()()()()()()()()()()()()()()()ネ!!」

 

その一言は、正義の魔法少女たちに恐れられ差別されてきた常盤ななかの過去を物語る。

 

「蒼海幇も…街を守る為だと言て悪いことしてきたネ。だから神浜の人々から怖がられたヨ」

 

「それは神浜の治安を守る為に行ってきた正当防衛です!」

 

「人々を守る為には武は必要ネ。でもそれだけじゃダメだと分かたから…互助組織に変わたヨ」

 

「過去に行ってきた残酷な所業があったからこそ、社会を守れたんですよ!!」

 

「でも報復されるネ。ワタシも昔、蒼海幇が潰した悪人共に拉致されて大勢に迷惑かけたヨ」

 

「秩序の名の元に行った所業によって生まれる怨恨が…新たな悲劇を呼ぶと言いたいのですか?」

 

「そうネ。あの時だてワタシは手を汚せた…でもそれをしてたら…また復讐の連鎖が生まれたヨ」

 

「それを取り締まることが法です!報復者が生まれない程のリスクある法治社会を築けばいい!」

 

「…まるでワタシの心の奥底にいる、()()1()()()()()()みたいなことを言うカ…悲しいヨ!!」

 

「社会の為なら私は…理不尽となって手を汚す存在であっても構わない!!」

 

「ななか!それだとただの()()()()()()だて……なぜ分からないカ!!」

 

2人の刃が交わり、仲間同士の戦いとなっていく。

 

「はぐむん!連中が仲間割れをしてる今のうちに早く逃げ……えっ!?」

 

遠い林から強大な魔力と風の流れを感じとり、視線を向ける。

 

一番大きな木の上にある枝に立っていたのは、両手に手斧を持つ青葉ちかの姿。

 

「吹っ飛べ~~ッッ!!」

 

双斧を同時に振り、鉄塔に向けて放たれた竜巻。

 

彼女のマギア魔法ともいえるネイチャー・リグレッションの一撃だ。

 

「キャァァーーーーーッッ!!!?」

 

鉄塔の上にいた月咲と時雨は竜巻に弾かれるようにして転落していく。

 

「威力は弱めましたから…死なないとは思いますけど……」

 

ちかはななか達に視線を送る。

 

「これだけの惨状を起こした魔法少女達をどうするかは…時女が関与するわけにもいきませんね」

 

日の本を優先する一族である時女一族。

 

もし日の本の秩序だけを優先するならば、ななかと同じく首謀者たちを極刑にするだろう。

 

かつての地下鉄サリン事件のテロ首謀者たちを日本司法は死刑に処したように。

 

「人間の善性を信じる静香さんなら……どんな裁きをあの子たちにくだすんでしょうね」

 

月咲に操られていた魔獣たちの動きが止まり、形成は一気に逆転。

 

「くっ……うぅ……」

 

地面に倒れ込んでいた月咲に駆け寄ってくる魔法少女の姿。

 

「月咲ちゃん!!」

 

姉である天音月夜が駆け寄り、彼女を抱き起こす。

 

「月夜ちゃん……ウチ……」

 

「ごめんね!月咲ちゃん達がこんなに苦しんでたのに…わたくしは水名の掟に背くのが怖くて!」

 

「いいよ…今更謝られても…もう遅いし……」

 

視線を月夜から外し、近寄ってくる魔法少女たちに向ける。

 

「制圧出来たわ。無駄な抵抗はやめなさい」

 

近づいてきたのは、西の長である七海やちよ。

 

時雨とはぐむも後から合流したみふゆ達に取り押さえられていた。

 

「ウチらを……殺すわけ……?」

 

「貴女たちを殺しはしない。でもこれだけの所業を行った以上は……罰は必要よ」

 

()()()()()でもするわけ…?はは、殺された方がマシかも……」

 

鉄塔を巡る戦いは決し…またもう一組の戦いの方も終わりを迎えようとしている。

 

「ななかさん!仲間同士で戦うなんて…もうやめて下さい!!」

 

「美雨!どうしてそこまでななかを否定するんだい!?」

 

かこはななかを羽交い絞めにし、あきらは美雨を羽交い絞めにして2人の戦いを止めていた。

 

「……仲間割れをしているうちに、どうやら向こうは終わったようですね」

 

「…みたいネ」

 

「美雨さん…私は自分の信念を信じます。そして…西の長達が彼女達をどう扱うかを見届けます」

 

「好きにするネ…。でももし…また殺そうとするなら…止めるヨ」

 

「まだ東との戦いは終わってません。私を止めたいというのなら…貴女も好きにしてください」

 

事が終わった西の魔法少女たちを遠くから見守るのは、時女一族たち。

 

「こっちは何とかなったけど…静香たちの方はどうなるんだろうな?」

 

「人間の善性を信じる静香さんだからこそ…甘い部分が出るかもしれませんね」

 

「静香には甘い部分もある。だけどな…日の本の脅威になる存在ならあいつは長として…」

 

「迷わず斬れる程の…冷酷さを出せますか?」

 

「あいつには二面性を感じてた…。その狭間の中で、自分を見失わないことを願うよ…」

 

東の赤い夜空に視線を送る。

 

舞台は燃え上る神浜の街へと進んでいくのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神浜市で起こる大規模暴動は既に市警の手に負える状態ではない。

 

神浜市長は県警の応援だけでなく、他県の県警にも機動隊の派遣を要請。

 

連絡を受けた近い県の県警から派遣されてきた機動隊車両が神浜市に入ろうとしていた。

 

サイレンを鳴らしながら車列を作る機動隊車両をビルの屋上から眺める魔法少女。

 

「邪魔されちゃ…困るわね」

 

彼女の背中に背負われているのは、魔力で生み出した旧式のガトリング砲。

 

1861年にアメリカ合衆国の発明家が生み出した車輪付きのものだと思われる。

 

魔法少女衣装頭部のデザインは、その車輪部分を思わせる滑車飾りもついていた。

 

「あなた達の命運は…ここで尽きるのよ!!」

 

背中に背負った銃口から猛火が噴き出し、弾丸の雨が雄たけびを上げていく。

 

空に向けて撃たれた銃弾の雨が魔力で操られ、地上に降り注ぐ。

 

機動隊車両が次々と弾幕射撃によって破壊されていく光景が続いてしまう。

 

それはさながら、地獄の火祭り光景。

 

銃身の回転が止まる頃には既に、下の道は破壊されて炎上する車両の山。

 

「日本の根底にある腐敗の毒に蝕まれた犬共には躾が必要。それを行うのが我々魔法少女なのよ」

 

背中の銃口から硝煙の煙を浮かべたまま片方の手で顎に触れ考え込む。

 

「扇動した民衆に銃の扱いを教える教官は…私だけじゃなかった」

 

アレクサンドラに指示された彼女だったが、現地に行ってみれば他の男たちも指導を行っていた。

 

「サングラスとフードを身に着けて身元を隠した男達…。私と同じぐらい銃の扱いに長けていた」

 

手分けすることによって素早く民衆に訓練を施せたのは良いのだが、彼女は釈然としない。

 

「栗栖アレクサンドラ…一体私たちに何をさせようとしているわけ?あの子はただの人間なのに」

 

不信感を募らせていた時、渡されていたハンディ無線機に連絡が入る。

 

「…宮尾たちはダメだったのね。私も前線に向かわないと…」

 

大きな溜息を出した後、魔力で弾丸を再装填。

 

「この暴力革命で…本当に魔法少女至上主義世界を築くことが出来るわけ…?」

 

これだけの大規模テロを行えば、自衛隊の特殊作戦群が押し寄せてくるのは彼女にも予測出来る。

 

「いくら武装した民衆でも鎮圧されて終わりよ。何が目的なわけ…姫様とアレクサンドラは?」

 

不安が拭いきれず、足取りが重かったのだが…。

 

<<燦様~~!!>>

 

不安だった心を晴らしてくれるかのような元気な声。

 

声がした方に振り向けば、大きなミリタリーリュックとカバンを携えた遊狩ミユリの姿。

 

「補給品をお届けにきました~」

 

「ちょうどいいタイミングね、ミユ。グリーフキューブはあるかしら?」

 

「もちろんですよ~。この日の為に東側の子たちは沢山集めてたみたいですしね~」

 

鞄から取り出したグリーフキューブを数個手に取り、地面にソウルジェムを置いて穢れを吸う。

 

「それとですね~お腹が空いてると思って♪」

 

リュックを下ろし、中から取り出したのはミネラルウォーターと食料品。

 

「兵站は大切よ。特に医療品・食料品は兵士たちの士気と直結するし…今のうちに食べておくわ」

 

「ミユも今のうちに食べておくですぅ。まだ配達が沢山残ってますし…」

 

「後方支援ご苦労様。大切な役割を任せられてるんだから、胸を張りなさい」

 

「えへへ♪ミユも頑張りますぅ」

 

笑顔を向けながら食料品を頬張る彼女を見て、心の中の迷いが燻りだす。

 

(私…本当にこの革命に身を任せていいの?火祭りを残したい我儘にこの子まで巻き込んで…?)

 

「よし!ミユはお腹も膨れたことだし、続きの配達に向かいますね」

 

「ミユ……くれぐれも無茶をしちゃ駄目よ。貴女は緊張でトンだら暴れ狂うタイプだし」

 

「ミユは前線に行けとは言われてないから大丈夫ですぅ。それより燦様こそご自愛下さいね…」

 

「ここで命を落とす必要はない。貴女は周りが見えないタイプだし…()()()()()()()()()()()()

 

「はいですぅ!」

 

ローラーブレードで地面を走り、跳躍移動を繰り返しながら去っていく後ろ姿。

 

「…いざとなれば、撤退も考える必要があるわ。火祭りとあの子の命を天秤には乗せられない」

 

大切な仲間に元気を少しだけ貰えた神楽は跳躍し、前線の魔法少女支援に向かっていった。

 

……………。

 

大東区を離れ、工匠区にある工場廃墟。

 

現在ここには移動指揮車両が停車し、コマンドポストとして運用されている。

 

青白いモニター室には通信を担当する男たちの姿と、後ろにはひめなとアレクサンドラの姿。

 

「革命は一度では終わりません。この革命の炎によって、新たな魔法少女革命を促します」

 

「…それによって、武装した民衆程度の兵力とは比べ物にならない革命戦力になるんだよね?」

 

「革命の目的は階級制度の破壊と、思想を共に出来る政党を生み出すこと。まだ足りません」

 

「私チャンもSNSを通して今日の日をアピっといたけど…何処まで注目されるかは分からないよ」

 

「この惨状はメディアによって世界に拡散します。世界のいたる場所で革命の炎が上がるんです」

 

「理屈は分かるけどさ…世界の国々を相手にして…本当に魔法少女の革命は成功すると思う?」

 

「ひめちゃん、どうしたんですか?随分弱気になってますね…」

 

「…しぐりんとはぐりん達が西側に捕まった。東側の進軍が遅れたせいで……」

 

「先遣隊の連絡では、西側と中央の散兵たちの抵抗にあい思うように進軍出来ないみたいです」

 

「歯がゆいよ…。ここでじっと堪えて指揮に集中してないといけないだなんて…」

 

「この暴動はキッカケに過ぎません。頃合いを見計らい我々は撤退しないといけないんです」

 

「扇動した民衆を見捨てて逃げるぐらいならいいけど…しぐりんとはぐりん達は見捨てられない」

 

「忘れないで下さい。我々は神浜の東側を今すぐ救う為に行動しているわけじゃない」

 

「全ては革命戦力を集める為の暴動。最終的な革命によって国家を転覆させればいいんでしょ?」

 

「その為にも貴重な魔法少女戦力を消耗は出来ないと考えてますね?」

 

「うん…しぐりん達は大事な戦力なのと同時に…私チャンのガチ友だし」

 

「なら、ひめちゃんが救出に向かいます?この場の指揮は私が引き続き行います」

 

「いいの?」

 

「貴女の護衛として、強力な存在を用意したのを忘れたんですか?」

 

言われて指揮車の出入り口に視線を向ける。

 

そこには、市街戦を専門とする法執行機関特殊部隊兵士のような黒装備姿の長身男性。

 

「……………」

 

頭部全体を覆う目出し帽の上に戦闘ヘルメットと戦術ゴーグルを身に着け、顔つきは伺えない。

 

「行ってください。大丈夫、彼の力なら西や中央の魔法少女など恐れるに足りません」

 

「…分かったよ、サーシャ。それじゃあ、行ってくるね」

 

通信室から出ようとした時、背中越しに声を発する。

 

「ねぇ…これだけの装備や資金、それに…悪魔なんてオーマーなヤツ用意出来る貴女は何者?」

 

彼女の背中に笑みを浮かべながら答える。

 

「この神浜革命が無事に終わった時に…教えてあげますよ、ひめちゃん」

 

答えをはぐらかすような答えに対し、顔も向けずに指揮車両の出入り口から男と共に出ていく。

 

笑顔から冷淡な表情となったアレクサンドラは、視線を壁に移す。

 

そこに飾られていたのは、時雨とはぐむが用意したルミエール・ソサエティの赤旗シンボル。

 

「…そろそろ便衣兵たちに撤退するように指示を出せ」

 

「了解です、閣下」

 

便衣兵とは、一般市民と同じ私服などを着用し民間人に偽装して各種敵対行為をする軍人のこと。

 

2019年に起きた香港民主化デモの際にも、中国共産党が多数の便衣兵を用いた事で知られる。

 

「愚かな欲望に従う魔法少女たちは、我々が行う()()()()には気が付いていないようですね」

 

「藍家ひめな。君たちの犠牲は無駄にはならないのだ」

 

【偽旗作戦】

 

あたかも他の存在によって実施されているように見せかける秘密作戦。

 

政府、あるいはその他の団体が行うように見せかけ、結果を相手に擦り付ける事を目的とする。

 

名称は自国以外の国旗、つまり偽の国旗を掲げて敵方をあざむくという軍の構想に由来。

 

戦争や対反乱作戦に限定されたものではなく、偽旗工作や偽旗軍事行動とも呼ばれた。

 

「お前たちもまたペンタグラムと同じく…悪魔の生贄となるのだ」

 

胸に手を当てて鼓動の高鳴りを感じ取る。

 

「感じるぞ人修羅…この革命によって犠牲となる人々を前にしたお前の感情の奔流が…」

 

怒り、叫び、嘆き、慟哭…。

 

身勝手な魔法少女社会に対する憤怒の鼓動が共鳴するかのように高まっていく。

 

「お前こそが、()()()()()()()()()()。悪魔と化した暁美ほむらでもここまで来れなかった」

 

目を瞑り、大いなる光である唯一神と共に在った時代を思い返す。

 

「お前もまたかつての私と同じく…()()()へと至る」

 

裁く者、それは唯一神が所有する絶対の切り札。

 

神の法と裁きを執行する権限を与えられた神霊を表す名。

 

「お前もまた…神霊サタンの領域に辿りつく者。七つの大罪の憤怒を司る悪魔だ…」

 

――人修羅がサタンとして完成したその時こそ、私はかつて引き裂かれた半身を取り戻せる。

 

――怒れ、古き神の名で呼ばれし人修羅…法の番人として。

 

――愚かなる魔法少女たちに…火水(かみ)の裁きを下せ。

 

――お前もまた混沌であると同時に…闇を照らす光明なのだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

参京区では現在、このは達と合流した東の魔法少女の奮戦によって東側の進行を食い止めている。

 

手薄となっているのは、みたまとかりんが守る栄区方面。

 

燃え上る神浜の空を飛び交い、街の情勢を伝えるのは報道ヘリだけではなかった。

 

ビルの上を跳躍し、手薄となっている栄区の応援に向かうのは静香とすなおとちはる。

 

「空から監視してくれる魔法少女が時女にいてくれてよかったよぉ」

 

「情勢は彼女が逐一念話で報告してくれます」

 

「私たちは手薄となっている栄区を守る為に動くわ」

 

「殆どの時女の子は涼子ちゃん達に回しちゃったけど…私たちだけで大丈夫かなぁ?」

 

「仕方ないわ。地雷を設置する為の穴掘り作業だって人手が沢山いるし」

 

「私たちの任務は、東側と東に合流した他所の魔法少女たちの制圧で間違いありませんね?」

 

「殺してはダメよ。神子柴様に対する言い訳が通用しなくなるから」

 

「せっかく尚紀先輩と仲良くなれたのに…」

 

「ちゃる、それはこの騒動を終息させてから考えましょう」

 

「う、うん…」

 

前方に跳躍移動を繰り返していた時…。

 

「っ!?待って二人とも!!」

 

静香が大声を上げ2人を静止させる。

 

「この魔力…おそらくは藍家ひめなよ」

 

「ち、近づいてきてる!?」

 

「敵側の大将が自ら単独で動く…?何を目的にしてるのでしょうか?」

 

「鴨が葱を背負って来るとはこのことよ。私達が敵側の大将を拘束し、東側に降伏勧告を出すわ」

 

眼前の屋上出入口の屋根に着地して現れたのは、天女の衣を纏う魔法少女。

 

「ここらじゃ見ない子達だけど…貴女達がサーシャが言ってた潜伏している魔法少女一族ね?」

 

「ど、どうして神浜の街に…こんな酷い暴動を巻き起こしたのさ!」

 

「ギラつく?興味あるなら秒で終わらせる程度には説明してあげるけど…」

 

「貴女たちの目的は…魔法少女至上主義を用いて社会の変革を促す…違いますか?」

 

「潜伏してた間、遊んでたわけじゃなさそうだね。それとも、都会の遊びは分からない田舎者?」

 

おどけて相手を挑発する態度。

 

時女の長となる魔法少女、静香が前に出て口を開く。

 

「私達は時女一族であり、私は時女一族の長になろうとする者…時女静香よ」

 

「時女一族…?それって何さ?」

 

「日の本を守る為にのみ存在する魔法少女一族と言えば理解出来る?」

 

日の本を守る…その言葉を聞き、興味深い表情を静香に向ける。

 

「日本を守る一族?時代がかった響きだけど…それって人里離れた忍者一族みたいな連中?」

 

「時女の使命は魔獣と戦うだけでなく、日の本社会に害を成す魔法少女を止めることでもあるわ」

 

「へ~?…さっき日の本を守る為にのみ存在する一族だって言ってたけど…聞いてもいい?」

 

「何よ?」

 

「貴女たち時女一族の魔法少女たちはさぁ……」

 

――国家・社会に尽くす以外に選択肢がない…()()()()()()()()()()()()たちなわけ?

 

その一言を聞き、眉間にシワが寄っていく。

 

「私たち時女の魔法少女たちの…覚悟を疑うわけ!?」

 

「気持ちは一つって勝手に思ってるだけでさ、本当は自由を楽しみたいと考える子はいないの?」

 

「いるわけないじゃない…!」

 

ひめなの質問を聞き、すなおの手が握り締められていく。

 

(里の子たちの善性を信じたい静香は見ていない…あの子たちもまた、自由に憧れていたのよ…)

 

時女の里の指導者的立場である神子柴家と時女本家。

 

その二つに逆らえる時女の魔法少女たちなど、いなかった。

 

「時女の血は日の本の血!ただ一つの誇りを胸に抱きながら悪鬼と戦う者たちなのよ!」

 

「社会正義の味方ってわけ?それ以外の自由な価値観は許されなかったの?」

 

「くどいわ!最期の時まで日の本を穢す悪鬼(魔獣)から人々を守る使命に疑いなんてない!!」

 

「死ぬまで国や社会の為に戦わされる?それってさ、ただの()()()()()()()()()()()()だよ」

 

「国家社会主義…ナチズム?」

 

「ナチスや大日本帝国のような極右が掲げた政治。個人よりも国家・民族を優先する全体主義よ」

 

「個人よりも…国家と民族を優先する…全体主義?」

 

「それは独裁なの。全体主義は多元主義を認めず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「違う!時女本家は時女の子たちに使命を強制させてなんていない!みんな理解してくれてる!」

 

「時女の長という絶対君主制を敷かれて、里の子たちの自由な叫びは踏み躙られてきたわけ?」

 

「違う…違う…私は…みんなの自由を踏み躙ってなんて…」

 

「独裁は民衆から支持されてこそ基盤が作れる。時女の長さんは、民の利益を優先してくれた?」

 

「そ、それは……」

 

「自由を踏み躙るだけでさ、国や民族の為に魔獣と戦う事を強制させてきただけでしょ?」

 

「……………」

 

「基本的人権である言論と信教の自由さえ与えられず、政治の統制下に置かれた恐怖政治社会」

 

――それが……()()()()なんだって、私チャン理解出来たよ。

 

時女一族社会。

 

それはまさに、嘉嶋尚紀と常盤ななか達が望むであろう理想的全体主義社会体制。

 

時女一族もまた、社会主義カラーである赤旗を掲げる一族であった。

 

両膝が崩れ、膝立ちとなる静香。

 

時女一族が行ってきた政治がただの独裁であり、全体主義だということに衝撃を受けたようだ。

 

「独裁的な政治体制の下では体制批判は許されず、個人の自由は著しく制限される」

 

「母様…私たちは…間違っていたの……?」

 

――時女の使命、それは自由民主主義国家たる日の本の安寧を支えること。

 

――そこには自分の感情の善悪たる固定概念を作ってはならない。

 

――ただ日の本社会の安寧のみを支える秩序となるのよ。

 

かつて母に言われた言葉が、脳裏を過る。

 

「私の使命は…自由民主主義国家である日の本の安寧を支える事が正しいって信じてたのに…」

 

「自由民主主義を掲げる日本を守る一族が、()()()()()()()()()()()()()()()()…皮肉だよね」

 

「うぅ……あぁぁ……あぁぁぁぁぁーーーーッッ!!!!」

 

地面に蹲り、泣き崩れる姿。

 

自分が以下に世間知らずであったのかを、藍家ひめなに突き付けられた。

 

「ち、違うよ!静香ちゃんは何も悪くない!!」

 

「そうです!静香のみんなを救いたい願いは…そこまで否定されるものではありません!」

 

「願うだけなら自由だけどね。それを周りに強制してる時点でさ、ただの独裁だよ」

 

「静香ちゃんは独裁者なんかじゃない!全部神子柴が決めてるんだよぉ!!」

 

「私たち時女の魔法少女たちは…神子柴様とヤタガラスの命令からは背けないのです!」

 

「都合が悪くなったら誰かのせいにするんだ?それを変える努力をしなかった事を棚上げして?」

 

「それは……」

 

「くっ……」

 

「行動で示せてこなかった連中の言葉なんてね、何も響いてこないからね」

 

援護する言葉もなくなり、泣き崩れたままの静香に2人は視線を向ける。

 

「ごめんなさい……ごめんなさいぃぃぃ……あぁぁぁーー……!!!」

 

最期の時まで世の為・人の為に戦う道こそが正しいと信じ、周りもそうあるべきだと信じた。

 

その純粋な願いそのものが、周りの基本的人権を踏み躙る結果を生む。

 

まさに、地獄への道は善意で舗装されているという諺通り。

 

――原因は常に自分の中から生み出される。

 

――都合が悪くなったら、周りのせいにする。

 

――余りにも人間は理不尽だ。

 

屋根の上から飛び降り、静香に歩み寄るひめなの姿。

 

「自分の歩んできた因果にも気が付けたことだしさ、提案があるんだけど?」

 

「グスッ……ヒック……提案…?」

 

「日の本の為にこそ戦う自分たちに誇りを感じてたんでしょ?それまでは否定はしないよ」

 

「……………」

 

「でもさ、周りもそうあるべきだと考える時点でね…()()()()したいだけなの」

 

「人為選択……?」

 

「生物を人為的に望む形態に誘導する。みんなそうあるべきってね、ただの品種改良なの」

 

「私の願いは…家畜を品種改良するのと同じ…?」

 

「魔法少女至上主義者もそれを望む。人の根底にある悪意を取り除く人間品種改良を行いたい」

 

「な、なにが言いたいの……」

 

――ルミエール・ソサエティと時女一族、一緒に手を組まない?

 

――苦しむ人に尽くす道こそ正しい、それを特別だと感じてるなら虐げられる人々と通じ合える。

 

――私チャンと時女って、ワンチャン似てると思うんだよね。

 

「私と貴女は……同じ矜持を持てるというの…?」

 

「まぁ、さっきの理屈は私チャンの彼ピの考え方なんだけどね」

 

「考え方……?」

 

「魔法少女が誰よりも優れている存在と知らしめる。だからこそ、人も社会も変えられる」

 

「それは……誰かを守る道だというわけ……?」

 

()()()()()()()()()よ。その為にこそ、私チャン達は革命を成功させなければならないの」

 

将来的、その言葉を耳にしたすなおとちはるが静香の前に出る。

 

「騙されないで下さい静香!この者は目的と手段を履き違えてます!!」

 

「そうだよぉ!これだけの惨劇を起こして…それでいて誰かを将来的に救うなんてありえない!」

 

「行動が伴わないのは互いに同じです!だからこそ、私たちもまた貴女を信じられない!!」

 

「ちゃる……すなお……」

 

「静香…貴女が今までの時女一族を疑問に思い、変えようとするも貫くも構いません」

 

「それでもね、貴女に付いていく私たちなら…こう考えるよ…」

 

――弱者に尽くせる貴女みたいにカッコいい()()()()()()()が出来る、魔法少女になりたいって。

 

その一言を聞き、幼少時代に見た剣術稽古中の母の姿を思い出す。

 

彼女もまた、日の本の為に戦う母の背中がカッコよかったから…この道を選んだのだ。

 

「全員が同じ答えに辿り着くとは思えない…そもそも、それを願うことそのものが傲慢だよ」

 

「それでもね、憧れを抱く気持ちなら同じです」

 

「みんながついていきたくなる生き様を見せてくれる背中に…ついて行きたいって」

 

「ふ……2人とも…こんな私に…ついてきてくれるの?」

 

「もちろん♪」

 

「フフッ♪私とちゃる、それに涼子さんやちかさんももう決めてます」

 

――時女静香こそ、時女一族の長になるべき者だって。

 

両目から大粒の涙が溢れ、両手で顔を覆い嗚咽を堪える静香。

 

「…テンサゲ。あと少しで協力出来そうだったのに…」

 

大きな溜息をつき、視線を隣ビルの屋上に向ける。

 

ビルの屋上には、ひめなの護衛としてついてきていた男の姿。

 

その両手にはSIG SAUERのMG338軽機関銃が持たれ、サイトは静香たちに向けられている。

 

「この悪意の臭い……隣ビルの屋上だよぉ!!」

 

ちはるが大声を上げた瞬間、分隊支援火器の猛火が噴きあがる。

 

「危ない静香ぁ!!!」

 

2人は崩れた静香を抱えて跳躍、追い詰める銃撃を回避していく。

 

銃撃が止み、隣ビルの屋上から跳躍してきた特殊部隊姿の男。

 

「交渉術に長けていたようだが、子供の純粋さに負けたようだな」

 

耳障りなハスキーボイスでひめなを皮肉る。

 

「フン、過程ばかりを気にして何も出来ない連中なら、私チャン達には必要ないよ」

 

「ならばこの者たち、我の死霊軍団の一部に加えてもいいのだろうな?」

 

「出来るものならやってみなさいよ。あなたが悪魔だっていうのなら楽勝なんでしょ?」

 

「よかろう、見ているがいい……」

 

銃をスリングで背中に回し、悪魔と呼ばれる男は両手を広げながら構える。

 

「悪魔ですって!?」

 

「そんな……ルミエール・ソサエティは、悪魔を従えていたのぉ!?」

 

支えられた静香が二人の肩を掴む。

 

「……私はもう大丈夫。悪魔が相手なら…私はもう迷わない」

 

彼女も剣の柄を握るかのようにして構える。

 

周囲から炎の柱が噴きあがり、両手には魔法武器である七支刀が握られていた。

 

「ルシファー様の実働部隊であるエグリゴリの堕天使の力…とくと見るがいい!!」

 

禍々しい光を全身から放ち、周囲が暗闇に包まれる。

 

「これは…悪魔の結界!?」

 

「やっぱり…悪魔が相手なんだね…」

 

「2人とも……ありがとう。そして…これからもよろしくね」

 

3人は頷き合い、武器を構える。

 

周囲は悪魔結界である異界化し、禍々しい光の中から巨大な鳴き声が響く。

 

次の瞬間、大きな翼が広がりを見せ禍々しい光の中から飛び出してきた翼獣と騎士の姿。

 

「あ……あの巨大な翼獣は……」

 

「グリフォン!?」

 

両翼で飛び、主を乗せたグリフォンが威嚇する鳴き声を放つ。

 

その背に乗る冠を被った騎士悪魔こそ、ルシファー直属の堕天使部隊の一員。

 

<<我が名は堕天使ムールムール!!死霊にして躍らせてくれよう!!>>

 

【ムールムール】

 

ソロモン王に封印された72のデーモン達の一柱に数えられる地獄の大公。

 

グリフォンを駆る緑の騎士の姿で描かれ、召喚者に哲学に関する知識を授ける。

 

また優れたネクロマンサーでもある強力な堕天使。

 

どの死人からでも死霊を呼び出すことが出来る存在であり、彼の使い魔となった。

 

「魔法少女とやらは、死ねば円環のコトワリに導かれる。その前にソウルジェムを喰わせて貰う」

 

グリフォンの口が開き、巨大な火球が放たれようとしている。

 

「桁外れの魔力……。わ…私チャンは邪魔になりそうだし、遠くで観戦してた方がよさそう…」

 

跳躍して離れたひめなの後に残るのは、日の本の為に戦う決意を崩さない魔法少女たちの姿。

 

「生き残れたら私……絶対に時女一族の在り方を変える努力をしてみせるわ」

 

「何処までもついていきます……私たちの長よ」

 

「絶対に生き残って……静香ちゃんを私たちの長にしてみせるよぉ!!」

 

今ここに始まるだろう。

 

堕天使の力の恐ろしさにも負けない、日の本が如き光明の信念を持つ魔法少女たちの戦いが。

 




読んで頂き、有難うございます。
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