人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

114 / 398
113話 ナチズム

鉄塔での戦況は突撃班の前進を阻む時雨と魔獣軍勢が行う狙撃布陣によって混迷を深める。

 

後方から迫る魔獣軍勢を迎え撃つ後方支援班とに分断された大乱戦が繰り広げられていく。

 

「みふゆ…!やっぱり遠距離魔法攻撃がないと前進を阻まれるよ!」

 

魔獣と戦う鶴乃から突撃班の状況を伝えられたみふゆの顔にも焦りが浮かぶ。

 

「この為の分断だったのですね…早く後ろの魔獣達を倒してやっちゃん達の援護をします!」

 

後方から出現する魔獣共に対し、みふゆは魔法武器である巨大チャクラムを投擲する。

 

彼女の固有魔法も合わさり、まるで分身するかのように複数のチャクラムとなっていく。

 

魔獣の隊列を一直線に割いていくが、次々と魔獣が出現してくるようだ。

 

「この笛の音…やっぱり、鉄塔にいる魔法少女を何とかしないと……」

 

れんが鉄塔に視線を向けていた時、沙優希から大声を浴びせられる。

 

「危ない!!」

 

「えっ…?」

 

沙優希に振り向くが、彼女が危険を伝えたかったのはれんの背後に出現した魔獣の事だろう。

 

「あっ…!?」

 

後ろを振り向く頃には魔獣のビーム攻撃が発射されようとしている。

 

「まったく、世話が焼けますわね!!」

 

誰よりも早く援護に動いたのは阿見莉愛であり、魔法の矢に魔力を集中させて紫の炎を纏う。

 

「行くわよ!私の力で…ベラ・スピーナ!!」

 

彼女のマギア魔法が放たれ、魔獣に直撃すると同時に内部爆発を起こして消滅させる。

 

「ボサッとしてるんじゃありませんわよ!阿見莉愛様が共に戦う華麗な戦場だというのに!」

 

「あの…えっと…ご、ごめんなさい…です」

 

「そこは謝るんじゃなくて!感謝の言葉の一つでも…?」

 

プンスコした表情で彼女に注意していた時、莉愛の顔が青くなっていく。

 

「あ、あら……?」

 

れんは自身の魔法武器である杖を掲げながら青白い魔力を放出してくる。

 

「怒る事ないじゃない!?」

 

杖に収束した魔力が一気に解放され、莉愛に目掛けて無数の魔弾が放たれてしまう。

 

「えっ……?」

 

魔弾は莉愛の後ろを通り超え、背後の魔獣達に次々と着弾しながら破壊していく。

 

五十鈴れんが得意とするマギア魔法『ソウル・サルベーション』の殲滅力に莉愛は息を飲む。

 

「あの…私、あまり会話が得意じゃなくて…。でも、守ってくれた人は…守ります…はい」

 

「はぁ…不器用なりの感謝のお礼というわけね…」

 

2人は仲間達と共に魔獣の軍勢を相手に善戦を繰り返し、魔獣の軍勢を押し戻していく。

 

魔獣達が下がっていく後方の開けた野原には伏兵となる魔法少女達が潜伏しているようだ。

 

<敵さん共を上手く誘導してくれたよ。神浜の魔法少女達の実力は流石だね>

 

一体の魔獣が後ろ足を地面につけた瞬間、足元が爆発して足首を失った魔獣が大きく倒れ込む。

 

魔獣共が同じ爆発を起こしていく光景を目にしたみふゆ達は驚愕した顔つきになるだろう。

 

「み、みふゆ…魔獣達が何かの罠で倒れていくけど…これって…?」

 

「まるで…地雷原にでも入ったかのような光景ですね…」

 

魔獣達の足を破壊していくのは埋め火(うずめび)と呼ばれる木箱の地雷であろう。

 

<射手、今だ!>

 

林の中に潜んでいたのは鴉面めいた仮面で頭部を隠す和装姿の魔法少女集団である。

 

彼女達が持つ火矢筒に備えられているのは焙烙火矢(ほうろくひや)という爆弾。

 

次々と焙烙火矢が放たれ、倒れこんだ魔獣に雨の如く降り注ぎ、爆発して破片を撒き散らす。

 

「凄い…まるで漫画の忍者集団ですね…」

 

「あの子達…神浜の魔法少女じゃないよね…?」

 

「どうして私達を助けてくれるのでしょう…?」

 

爆発の煙が晴れるが、仕留めそこなった魔獣がいる。

 

「ちゃらー!!開けた場所だしトドメは私が……」

 

<<ここはあたし達に譲ってもらうよ!!>>

 

「えっ!?」

 

木の枝から大きく跳躍して現れたのは涼子の姿である。

 

「悪鬼共、もう未練は無いだろ!」

 

彼女が持つのは仏教の修行で肩を叩く時に使う警策(きょうさく)と似た魔法武器。

 

燃え上るような赤い和装衣装と同じく、武器が業火を纏う。

 

空から一気に下降しながら地面を叩きつける。

 

「大炎魔警策茶昆!!」

 

警策の炎が地面を迸り、五つの火柱が周囲を囲みながら一帯ごと魔獣を焼き払っていく。

 

「あちゃー…私のお株を奪われちゃったよ…」

 

「…あの炎魔法の力は鶴乃さんに匹敵する程に見えます。あの子達は一体…」

 

業火が収まると、そこには焼け焦げた五芒星ともいえる大の文字が刻まれている。

 

警策を肩に担ぎながら歩いてくる涼子の後ろには時女の魔法少女である武装集団がついている。

 

「何なんですの…貴女達!?私の活躍ステージにいきなりの乱入なんて感心しませんわ!」

 

「そこは勘弁して欲しいかな~。あたしらは諸事情があって今まで姿を見せられなかったし」

 

「貴女達は神浜の魔法少女ではありませんね?」

 

警戒感を見せるみふゆが代表して涼子の前に歩み寄る。

 

「この神浜で何を目的に潜伏していたのですか?東の魔法少女の誘いに乗ってこの街に…?」

 

「時女と東の魔法少女とは一切関係ないから安心しな。あたしらは東の魔法少女を止めたい」

 

「時女……?」

 

「積もる話は後にした方がいい。この魔獣共を操る東連中を制圧するのが先だよ」

 

「そうですね…協力に感謝します。私達は急ぎやっちゃん達と合流を……」

 

「あたし達に先んじて時女一族の魔法少女が向かっているから安心しな」

 

「貴女達は時女一族っていうんだね?なんだか漫画の忍者っぽくて…私は感激したよぉ!」

 

鶴乃に抱き着かれながら後頭部を掻く涼子に対して時女の武装集団も微笑んでくれる。

 

後方班の戦いは決し、残すは突撃班と別働班の戦いだけとなるのであった。

 

 

やちよ率いる突撃班の進撃を押し留める時雨であるが、鉄塔の下には常盤ななか達が迫りくる。

 

「東の魔法少女達は…まだこちらに合流出来ないの!?」

 

時間稼ぎを行い、東側の進軍に合わせて挟撃する手筈だったが間に合いそうにない。

 

月咲も汗まみれの顔で魔力を絞り続け、横笛の演奏で魔獣を操り続けるが限界も近い。

 

「このままだと…いずれここまでこられてしまう…」

 

下で戦うはぐむに防衛を頼むしかない状況の中、最後まで役割を全うする覚悟を決める。

 

「お願い…東の子達が来るまで持ちこたえて…はぐむん!!」

 

下のはぐむが戦っているのはコロニーを形成する魔獣達を超えてきた常盤ななかであろう。

 

「ハァァァーーッ!!」

 

「くっ!!」

 

ななかの舞うような連撃に対し、長大な大剣を駆使して戦うはぐむだが足元がおぼつかない。

 

(やっぱりこの剣…使いにくい!重さに振り回されちゃう!!)

 

一撃は重いが鈍重な大剣と、威力は低くても手数が多い軽量な二刀小太刀。

 

それに加えて常盤ななかは居合の段持ちである武術の使い手であるため、戦力差は決定的だ。

 

「えいっ!!」

 

唐竹割りの一撃を狙うがななかは素早くサイドに踏み込み、回避と同時に右肘を顔面に打つ。

 

「くっ!!」

 

鼻骨が砕け、鼻血を撒き散らし倒れ込むはぐむ。

 

刃の先端を彼女に向けるななかの表情は冷酷な顔つきを崩さない。

 

「これだけの所業に与したのです…覚悟は出来ていますよね?」

 

その目には暗い炎が宿り、人殺しの冷たい眼差しにはぐむは恐怖するしかない。

 

「これだけの所業が起こるだけの差別を行ってきたのは…西側の人々です!!」

 

「だから暴力革命が許されるとでも?」

 

「貴女達西側はいつもそう!自分達が酷い目に合う番になったら直ぐ被害者側のせいに…」

 

「どんな理由があるにせよそれを利用し、社会を踏み躙る免罪符にするというなら貴女を斬る」

 

「貴女には差別をされた苦しみは無かったんですか!?」

 

「あります。ですがそれを理由にして私は西側の人々に暴力を振るった事は一度もありません」

 

「うっ……」

 

「私は社会主義者。個人の感情よりも社会を優先し…社会に仇成す者を決して許さない女です」

 

「差別された苦しみを知ってる人なのに…どうして!?」

 

「かかって来なさい。私欲のみを優先する者達がどうなるかを…その身に刻んであげます」

 

仲間のために立ち上がるはぐむは大剣を中段に構えてくる。

 

「やぁぁーーーッッ!!」

 

大きく大剣を振りかぶる唐竹割りの一撃が迫る中、ななかの体が揺れる。

 

小太刀二刀流を交差させて踏み込み、唐竹割りの速度が乗る前に刃を受け止める。

 

「くぅ!!」

 

押し切られまいと大剣を押し込もうとするが罠であろう。

 

ななかは右足を素早く半回転移動させ、相手の圧を利用した回り込みで相手の体勢を崩す。

 

同時に小太刀を握ったままの左手で相手の両手首を抑え込む形となる。

 

「あっ……」

 

はぐむの眼前には右手の小太刀の先端が向いている。

 

「お覚悟を」

 

人間社会の為なら人を殺す事すら出来る程の狂気が宿る冷淡な声がはぐむを恐怖させる。

 

秩序(LAW)を守ろうとすればする程、天使やインキュベーターと同じ冷酷さが宿るのだ。

 

「時雨ちゃん……ごめ……」

 

はぐむの顎下から頭部を貫く一撃が放たれようとした時、邪魔者が現れる。

 

「駄目ネ!!」

 

コロニーを形成する魔獣の群れの中から飛び出したのは美雨の姿である。

 

彼女の飛び蹴りがななかの側面に決まった事で蹴り飛ばされてしまう。

 

「何をするんですか、美雨さん!?」

 

倒れ込んだななかは仲間に対して怒りの表情を向けてくる。

 

「人殺しを続けてしまたら…もう()()()()()()()()()()()()()()()ネ!!」

 

その一言は正義の魔法少女達から恐れられ、差別されてきた常盤ななかの過去を物語る。

 

「蒼海幇も…街を守る為だと言て悪い事してきたネ。だから神浜の人々から怖がられたヨ」

 

「それは神浜の治安を守る為に行ってきた正当防衛です!」

 

「人々を守る為には武は必要ネ…でもそれだけじゃダメだと分かたから…互助組織に変わたヨ」

 

「過去に行ってきた残酷な所業があったからこそ、社会を守れたんですよ!!」

 

「でも()()()()()ネ。私も昔、蒼海幇が潰した悪人共に拉致されて大勢に迷惑かけたヨ」

 

「秩序の名の元に行う所業によって生まれる怨恨が…新たな悲劇を呼ぶと言いたいのですか?」

 

「そうネ。あの時だて私は手を汚せた…でもそれをしてたら…また復讐の連鎖が生まれたヨ」

 

「それを取り締まる事が法です!報復者が生まれない程のリスクある法治社会を築けばいい!」

 

「…まるで私の心の奥底にいる、()()()()()()()()()()()()()()カ…悲しいヨ!!」

 

「社会の為なら私は…理不尽となって手を汚す存在であっても構わない!!」

 

「ななか!それだとただの全体主義独裁だて…なぜ分からないカ!!」

 

2人の刃が交わりながら仲間同士の戦いとなっていく。

 

「はぐむん!連中が仲間割れをしてる今のうちに早く逃げ……えっ!?」

 

遠い林から強大な魔力と風の流れを感じとった時雨が視線を向ける。

 

一番大きな木の上にある枝に立っていたのは両手に片手斧を持つ青葉ちかの姿である。

 

「吹っ飛べ~~ッッ!!」

 

両手の片手斧を同時に振ると緑に輝く竜巻が鉄塔に目掛けて放たれる。

 

彼女のマギア魔法とも呼べる『ネイチャー・リグレッション』の一撃だ。

 

「キャァァーーーーーッッ!!?」

 

鉄塔の上にいた月咲と時雨は竜巻に弾かれながら転落していく。

 

「威力は弱めましたから…死なないとは思いますけど…」

 

ちかはななか達に視線を送りつつも不安そうな表情を浮かべてしまう。

 

「これだけの惨状を起こした魔法少女達をどうするかは…時女が関与するわけにもいきません」

 

日の本を優先する一族である時女一族がもし日の本の秩序だけを優先すればどうなる?

 

その結末はななかと同じく首謀者達を極刑にするだろう。

 

地下鉄サリン事件のテロ首謀者達に対し、日本司法は死刑に処した判決が繰り返されるはず。

 

「人間の善性を信じる静香さんなら…どんな裁きをあの子達に下すんでしょうね…?」

 

月咲に操られていた魔獣達の動きが止まった事で形成は一気に逆転する。

 

「くっ……うぅ……」

 

地面に倒れ込んでいた月咲に駆け寄ってくる天音月夜が彼女を抱き起す。

 

「月咲ちゃん!!」

 

「月夜ちゃん……ウチ……」

 

「ごめんね!月咲ちゃんがこんなに苦しんでたのに…わたくしは水名の掟に背くのが怖くて!」

 

「いいよ…今更謝られても…もう遅いし……」

 

月夜から視線を外し、近寄ってくる七海やちよに顔を向ける。

 

「制圧出来たわ。無駄な抵抗はやめなさい」

 

時雨とはぐむも後から合流したみふゆ達に取り押さえられているようだ。

 

「ウチらを……殺すわけ……?」

 

「貴女達を殺しはしない。でもこれだけの所業を行った以上…罰は必要よ」

 

「裁判ごっこでもするわけ…?ハハ、殺された方がマシかも……」

 

鉄塔を巡る戦いは決し、またもう一組の戦いも終わりを迎えようとしている。

 

「ななかさん!仲間同士で戦うなんて…もうやめて下さい!!」

 

「美雨!!どうしてそこまでななかを否定するんだい!?」

 

かこはななかを羽交い絞めにし、あきらは美雨を羽交い絞めにして2人の戦いを止めている。

 

「…仲間割れをしているうちに、どうやら向こうは終わったようですね」

 

「…みたいネ」

 

「美雨さん…私は自分の信念を信じます。そして西の長達が彼女達をどう扱うかを見届けます」

 

「好きにするネ…。でももし…また殺そうとするなら…止めるヨ」

 

「まだ東との戦いは終わってません。私を止めたいというのなら…貴女も好きにしてください」

 

戦いが終わった西の魔法少女達を遠くから見守るのは時女一族達であろう。

 

「こっちは何とかなったけど…静香達の方はどうなるんだろうな?」

 

「人間の善性を信じる静香さんだからこそ…甘い部分が出るかもしれませんね」

 

「静香には甘い部分もある。だけどな…日の本の脅威になる存在なら…あいつは長として…」

 

「迷わず斬れる程の…冷酷さを出せますか?」

 

「あいつには()()()()()()()()…その狭間の中で自分を見失わない事を願うよ…」

 

やりきれない顔つきのまま涼子は東の赤い夜空に視線を向ける。

 

戦いの舞台は燃え上る神浜の街へと進んでいくのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神浜市で起こる大規模暴動は既に市警の手に負える状態ではない。

 

神浜市長は県警の応援だけでなく、他県の県警にも機動隊の派遣を要請する。

 

連絡を受けた近い県の県警から派遣されてきた機動隊車両が神浜市に入ろうとしていく。

 

サイレンを鳴らし車列を作る機動隊車両をビルの屋上から眺める魔法少女は不気味に笑うのだ。

 

「邪魔されちゃ…困るわね」

 

彼女の背中に背負われているのは魔力で生み出した旧式のガトリング砲。

 

1861年にアメリカ合衆国の発明家が生み出した車輪付きのものだと思われる。

 

魔法少女衣装頭部のデザインは車輪部分を思わせる滑車飾りもついているようだ。

 

「あなた達の命運は…ここで尽きるのよ!!」

 

背中に背負った銃口から猛火が噴き出し、弾丸の雨が雄たけびを上げていく。

 

空に向けて撃たれた銃弾の雨が魔力で操られながら地上に降り注ぐ。

 

機動隊車両が弾幕射撃によって次々と破壊されていく地獄が生まれてしまうのだ。

 

それはさながら地獄の火祭り光景であろう。

 

銃身の回転が止まる頃には既に破壊されて炎上する車両の山が築かれている。

 

「日本の根底にある腐敗の毒に蝕まれた犬には躾が必要よ。それを行うのが我々魔法少女なの」

 

背中の銃口から硝煙の煙を浮かべたまま片方の手で顎に触れながら考え込む。

 

「扇動した民衆に銃の扱いを教える教官は…私だけじゃなかった」

 

アレクサンドラに指示された彼女だったが現地に行けば他の男達も指導を行っている。

 

「サングラスとフードを身に着けて身元を隠した男達…私と同じぐらい銃の扱いに長けていた」

 

手分けする事によって素早く民衆に訓練を施せたのはいいのだが、彼女は釈然としない。

 

「栗栖アレクサンドラ…一体私達に何をさせようとしているわけ?あの子はただの人間なのに」

 

不信感を募らせていた時、渡されていたハンディ無線機に連絡が入る。

 

「…宮尾達はダメだったのね。私も前線に向かわないと…」

 

忌々しい表情を浮かべながら魔力で弾丸を再装填する中、不安がこみ上げてくる。

 

「この暴力革命で…魔法少女至上主義世界を築く事が…本当に出来るわけ…?」

 

これだけの大規模テロを行えば自衛隊の特殊作戦群が押し寄せてくるのは彼女にも予測出来る。

 

「いくら武装した民衆でも鎮圧されて終わりよ。何が目的なわけ…姫様とアレクサンドラは?」

 

不安が拭いきれず足取りが重かった時、安心させてくれる元気な声が聞こえてくる。

 

<<燦様~~!!>>

 

声がした方に振り向けばミリタリーリュックとカバンを背負った遊狩ミユリが現れたようだ。

 

「補給品をお届けにきました~」

 

「ちょうどいいタイミングね、ミユ。グリーフキューブはあるかしら?」

 

「勿論ですよ~。この日の為に東側の子達は沢山集めてたみたいですしね~」

 

鞄から取り出したグリーフキューブを数個手に取り、地面にソウルジェムを置いて穢れを吸う。

 

「それとですね~お腹が空いてると思って♪」

 

リュックを下ろし、中から取り出したのはミネラルウォーターと食料品である。

 

「兵站は大切よ。特に医療品・食料品は兵士達の士気と直結するし…今のうちに食べておくわ」

 

「ミユも今のうちに食べておくですぅ。まだ配達が沢山残ってますし…」

 

「後方支援ご苦労様。大切な役割を任せられてるんだから、胸を張りなさい」

 

「えへへ♪ミユも頑張りますぅ」

 

笑顔を向けながら食料品を頬張る彼女を見ていると心の中の迷いが燻りだす。

 

(私…この革命に身を任せていいの?火祭りを残したい我儘に…この子まで巻き込んで…?)

 

「よし!ミユはお腹も膨れた事だし、続きの配達に向かいますね」

 

「ミユ…くれぐれも無茶をしちゃ駄目よ。貴女は緊張でトンだら暴れ狂うタイプだし…」

 

「ミユは前線に行けとは言われてないから大丈夫ですぅ。それより燦様こそご自愛下さいね…」

 

「ここで命を落とす必要はない。貴女は迂闊なタイプだし…足元をすくわれないようにね」

 

「はいですぅ!」

 

ローラーブレードで走りながら跳躍移動して去っていく後ろ姿を黙って見送る。

 

「…いざとなれば、撤退も考える必要があるわ。火祭りとあの子の命を天秤には乗せられない」

 

大切な仲間に元気を少しだけ貰えた神楽燦も跳躍し、前線の魔法少女支援に向かっていった。

 

 

工匠区にある工場廃墟では移動式車両が停車し、コマンドポストとして運用されている。

 

青白いモニター室には通信担当の男達と後ろにはひめなとアレクサンドラがいるようだ。

 

「革命は一度では終わりません。この革命の炎によって、新たな魔法少女革命を促します」

 

「…それによって、武装した民衆程度の兵力とは比べ物にならない革命戦力になるんだよね?」

 

「革命の目的は階級制度の破壊と思想を共に出来る政党を生み出すこと。まだ足りません」

 

「私チャンもSNSを通して今日の日をアピっといたけど…何処まで注目されるか分からないよ」

 

「この惨状はメディアによって世界に拡散する。世界のいたる場所で革命の炎が上がるんです」

 

「理屈は分かるけどさ…世界の国々を相手にして…本当に魔法少女革命は成功すると思う?」

 

「ひめちゃん、どうしたんですか?随分弱気になってますね…」

 

「…しぐりんとはぐりん達が西側に捕まった。東側の進軍が遅れたせいで…」

 

「先遣隊の連絡では西側と中央の散兵達の抵抗に合い、思うように進軍出来ないみたいです」

 

「歯がゆいよ…ここでじっと堪えて指揮に集中してないといけないだなんて…」

 

「この暴動はキッカケに過ぎません。頃合いを見計らい、我々は撤退しないといけないんです」

 

「扇動した民衆を見捨てて逃げるぐらいならいいけど…しぐりんとはぐりんは見捨てられない」

 

「忘れないで下さい。我々は神浜の東側を今すぐ救う為に行動しているわけじゃない」

 

「全ては革命戦力を集める為の暴動…最終的な革命で国家を転覆させればいいんでしょ?」

 

「その為にも貴重な魔法少女戦力を消耗は出来ないと考えてますね?」

 

「うん…しぐりん達は大事な戦力なのと同時に…私チャンのガチ友だし…」

 

「なら、ひめちゃんが救出に向かいます?この場の指揮は私が引き続き行います」

 

「いいの?」

 

「貴女の護衛として強力な存在を用意したのを忘れたんですか?」

 

そう言われたひめなは指揮車の出入り口に視線を向ける。

 

そこには市街戦を専門とする特殊部隊兵士のような黒装備姿の長身男性が佇んでいる。

 

「……………」

 

頭部全体を覆う目出し帽の上に戦闘ヘルメットと戦術ゴーグルを身に着け、顔つきは伺えない。

 

「行ってください。大丈夫、彼の力なら西や中央の魔法少女など恐れるに足りません」

 

「…分かったよ、サーシャ。それじゃあ、行ってくるね」

 

通信室から出ようとした時、背中越しに声をかけてくる。

 

「ねぇ…これだけの装備や資金、それに悪魔なんてオーマーな奴を用意出来る貴女は…何者?」

 

彼女の背中に笑みを浮かべながらアレクサンドラはこう答える。

 

「この神浜革命が無事に終わった時に教えてあげますよ…ひめちゃん」

 

答えをはぐらかすような態度に対し、顔も向けずに指揮車両の出入り口から男と共に出ていく。

 

笑顔から冷淡な表情となったアレクサンドラは視線を壁に移す。

 

飾られていたのは時雨とはぐむが用意したルミエール・ソサエティの赤旗シンボルのようだ。

 

「…そろそろ便衣兵達に撤退するよう指示を出せ」

 

「了解です、閣下」

 

便衣兵とは市民と同じ私服などを着用し、民間人に偽装して各種敵対行為をする軍人である。

 

2019年に起きた香港民主化デモの際にも中国共産党が多数の便衣兵を用いた事で知られる。

 

「愚かな欲望に従う魔法少女達は我々が行う()()()()に気が付いていないようですね」

 

「藍家ひめな…君達の犠牲は無駄にはならないのだ」

 

偽旗作戦とは、あたかも他の存在によって実施されているように見せかける秘密作戦である。

 

政府、あるいはその他の団体が行うように見せかけ、()()()()()()()()()()()事を目的とする。

 

名称は自国以外の国旗、つまり偽の国旗を掲げて敵方を欺くという軍の構想に由来するという。

 

戦争や対反乱作戦に限定されたものではなく、偽旗工作や偽旗軍事行動とも呼ばれるようだ。

 

「お前達もまた…ペンタグラムと同じく悪魔の生贄となるのだ」

 

アレクサンドラを演じる謎の少女は胸に手を当て、鼓動の高鳴りを感じていく。

 

「感じるぞ…人修羅。この革命によって犠牲となる人々を前にした…お前の感情の奔流がな」

 

怒り、叫び、嘆き、慟哭の高鳴りを謎の少女は感じた事で不気味な笑みを浮かべていく。

 

身勝手な魔法少女社会に対する憤怒の鼓動が共鳴するかのように高まるのを喜んでいる。

 

「お前こそが()()()()()()()()()()…悪魔と化した暁美ほむらでもここまで来れなかった」

 

目を瞑りながら大いなる光である唯一神と共に在った時代を思い返す。

 

「お前もまたかつての私と同じく…()()()()()()()

 

裁く者、それは唯一神が所有する絶対の切り札。

 

神の法と裁きを執行する権限を与えられた神霊を表す名であろう。

 

「お前もまた…神霊サタンの領域に辿りつく者。()()()()()()()()()()()()()()…」

 

人修羅がサタンとして完成した時こそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()と語っていく。

 

「怒れ…古き神の名で呼ばれし人修羅。法の番人として愚かな魔法少女達に火水(かみ)の裁きを下せ」

 

――お前もまた混沌であると同時に…()()()()()()()なのだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

参京区では静海このは達と合流した東の魔法少女の奮闘によって東側の進行を食い止めている。

 

手薄となっているのは八雲みたまと御園かりんが守る栄区方面であろう。

 

燃え上る神浜の空を飛び交い、街の情勢を伝えるのは報道ヘリだけではない。

 

ビルの上を跳躍し、手薄となっている栄区の応援に向かうのは静香とすなおとちはるのようだ。

 

「空から監視してくれる魔法少女が時女にいてくれてよかったよぉ」

 

「情勢は彼女が逐一念話で報告してくれます」

 

「私達は手薄となっている栄区を守る為に動くわ」

 

「殆どの時女の子は涼子ちゃん達に回しちゃったけど…私達だけで大丈夫かなぁ?」

 

「仕方ないわ…地雷を設置するための穴掘り作業だって人手が沢山いるし」

 

「私達の任務は東側と東に合流した他所の魔法少女達の制圧で間違いありませんね?」

 

「殺してはダメよ。神子柴様に対する言い訳が通用しなくなるから」

 

「せっかく尚紀先輩と仲良くなれたのに…」

 

「ちゃる、それはこの騒動を終息させてから考えましょう」

 

前方に跳躍移動を繰り返していた時、静香が大声を上げながら仲間を止める。

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

「この魔力はおそらく…藍家ひめなよ」

 

「ち、近づいてきてる!?」

 

「敵側の大将が単独で動く…?何を目的にしてるのでしょうか?」

 

「鴨が葱を背負って来るとはこの事よ。私達が敵側の大将を拘束し、東側に降伏勧告を出すわ」

 

目の前の屋上にある出入口の屋根に着地したのは天女の衣を纏う魔法少女である。

 

「ここらじゃ見ない子達だけど…貴女達がサーシャが言ってた潜伏している魔法少女一族ね?」

 

「ど、どうして神浜の街に…こんな酷い暴動を巻き起こしたのさ!」

 

「ギラつく?興味あるなら秒で終わらせる程度には説明してあげるけど…」

 

「貴女達の目的は…魔法少女至上主義を用いて社会の変革を促す…違いますか?」

 

「潜伏してた間、遊んでたわけじゃなさそうだね?それとも都会の遊びは分からない田舎者?」

 

おどけて挑発する態度であるが、時女の長だと期待される静香が前に出てこう告げる。

 

「私達は時女一族であり、私は時女一族の長になろうとする者…時女静香よ」

 

「時女一族…?それって何さ?」

 

「日の本を守る為にのみ存在する魔法少女一族と言えば理解出来る?」

 

日の本を守るという言葉を聞いたひめなは興味深い表情を静香に向けてくる。

 

「日本を守る一族?時代がかった響きだけど…それって人里離れた忍者一族みたいな連中?」

 

「時女の使命は魔獣と戦うだけでなく、日の本に害を成す魔法少女を止める事でもあるわ」

 

「へ~?日の本を守る為にのみ存在する一族だって言ってたけど…聞いてもいい?」

 

「何よ?」

 

「時女の魔法少女はさぁ…国家社会に尽くす以外に選択肢がない()()()()()()()()()()?」

 

ひめなの質問内容に対し、静香の眉間にシワが寄っていく。

 

「時女の魔法少女達の覚悟を疑うわけ!?」

 

「気持ちは一つと勝手に思ってるだけでさ、本当は自由を楽しみたいと考える子はいないの?」

 

「いるわけないじゃない!!」

 

ひめなの質問を聞かされたすなおの手が握り込まれていく。

 

(里の子達の善性を信じたい静香は見ていない…あの子達もまた…自由に憧れていたのよ…)

 

時女の指導者である神子柴家と時女本家に逆らえる魔法少女などいなかったと彼女は知る者だ。

 

「時女の血は日の本の血!ただ一つの誇りを胸に抱きながら悪鬼と戦う者達なのよ!」

 

「社会正義の味方ってわけ?それ以外の自由な価値観は許されなかったの?」

 

「くどいわ!最期の時まで日の本を穢す悪鬼から人々を守る使命に疑いなんてない!」

 

「死ぬまで国や社会の為に戦わされる?それってさ…ただの()()()()()()()()()()()()()()()

 

「国家社会主義…ナチズム?」

 

「ナチスや大日本帝国のような極右が掲げた政治。個人よりも国家民族を優先する全体主義よ」

 

「個人よりも国家と民族を優先する…全体主義?」

 

()()()()()()()。全体主義は多元主義を認めず唯一のイデオロギーを奉じて周りに強制する」

 

「違うわ!時女本家は時女の子達に使命を強制させてなんていない!皆が理解してくれてる!」

 

「時女の長という絶対君主制を敷かれた末に里の子達の自由な叫びは踏み躙られてきたわけ?」

 

「違う…違う…私は…皆の自由を踏み躙ってなんて…」

 

「独裁は民衆から支持されてこそ基盤が作れる。時女の長さんは民の利益を優先してくれた?」

 

「そ、それは……」

 

「自由を踏み躙るだけでさ、国や民族の為に魔獣と戦う事を強制させてきただけでしょ?」

 

「……………」

 

「基本的人権である言論と信教の自由さえ与えられず、政治の統制下に置かれた()()()()()()

 

――それが時女一族なんだって、私チャン理解出来たよ。

 

時女一族社会こそ、嘉嶋尚紀と常盤ななか達が望むであろう理想的な全体主義社会体制。

 

時女一族もまた社会主義カラーである赤旗を掲げる一族であったと突きつけられる。

 

ショックを隠せない静香の両膝が崩れて膝立ちとなってしまう。

 

時女一族が行ってきた政治はただの独裁であり、恐怖政治なのだと突きつけられたのだ。

 

「独裁的な政治体制の下では体制批判は許されず、個人の自由は著しく制限される」

 

「母様…私達は…間違っていたの……?」

 

かつて母から言われた言葉が脳裏を過っていく。

 

「私の使命は自由民主主義国家である日の本の安寧を支える事が正しいって…信じてたのに…」

 

「自由民主主義を掲げる日本を守る一族が、()()()()()()()()()()()()()()()()…皮肉だよね」

 

「うぅ…あぁぁ…あぁぁぁぁぁーーーーッッ!!!」

 

地面に蹲りながら泣き崩れる静香は自分が如何に世間知らずだったのかを思い知らされる。

 

「ち、違うよ!静香ちゃんは何も悪くない!!」

 

「そうです!みんなを救いたい静香の願いは…そこまで否定されるものではありません!」

 

「願うだけなら自由だけどね。それを周りに強制してる時点でさ、ただの独裁だよ」

 

「静香ちゃんは独裁者なんかじゃない!全部神子柴が決めてるんだよぉ!!」

 

「私達時女の魔法少女は…神子柴様とヤタガラスの命令からは背けないのです!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()それを変える努力をしなかった事を棚上げして?」

 

「それは……」

 

「くっ……」

 

「行動で示せてこなかった連中の言葉なんてね、何も響いてこないからね」

 

援護する言葉もなくなり、泣き崩れたままの静香に視線を向ける。

 

「ごめんなさい…ごめんなさいぃぃぃ…あぁぁぁーー……っ!!」

 

最期の時まで世の為人の為に戦う道こそが正しいと信じ、周りもそう在るべきだと信じてきた。

 

その純粋な願いそのものが、周りの基本的人権を踏み躙る結果を生む。

 

地獄への道は善意で舗装されているという諺通り、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして都合が悪くなったら周りのせいにする、余りにも人間は理不尽だ。

 

そんな言葉を十咎ももこに語った存在こそ、有史以来魔法少女を見てきたキュウべぇである。

 

屋根の上から飛び降り、静香に歩み寄るひめなはこんな話を持ち出してくる。

 

「自分の歩んできた因果にも気が付けたことだしさ、提案があるんだけど?」

 

「グスッ…ヒック…提案…?」

 

「日の本の為にこそ戦う自分達に誇りを感じてたんでしょ?それまでは否定しないよ」

 

「……………」

 

「でもさ、周りもそうあるべきだと考える時点でね…()()()()()()()()()なの」

 

「人為選択…?」

 

「生物を人為的に望む形態に誘導する。皆そうあるべきってね、ただの品種改良なの」

 

「私の願いは…()()()()()()()()()()()()()…?」

 

「魔法少女至上主義者もそれを望む。人の根底にある悪意を取り除く人間品種改良を行いたい」

 

「な、なにが言いたいの…?」

 

「ルミエール・ソサエティと時女一族、一緒に手を組まない?」

 

苦しむ人に尽くす道こそ正しい、それを特別だと感じてるなら虐げられる人々と通じ合える。

 

「私チャンと時女って、ワンチャン似てると思うんだよね」

 

「私と貴女は…同じ矜持を持てるというの…?」

 

「まぁ、さっきの理屈は私チャンの彼ピの考え方なんだけどね」

 

「考え方……?」

 

「魔法少女が誰よりも優れている存在と知らしめる。だからこそ、人も社会も変えられる」

 

「それは…誰かを守る道だというわけ…?」

 

()()()()()()()()()()。その為にこそ、私チャン達は革命を成功させなければならないの」

 

将来的、その言葉を耳にしたすなおとちはるが静香の前に出る。

 

「騙されないで下さい!この者は目的と手段を履き違えてます!!」

 

「そうだよぉ!これだけの惨劇を起こし…それでいて誰かを将来的に救うなんてありえない!」

 

「行動が伴わないのは()()()()()です!だからこそ、私達もまた貴女を信じられない!!」

 

「ちゃる……すなお……」

 

「静香…貴女が今までの時女一族を疑問に思い、変えようとするも貫くも構いません」

 

「それでもね、貴女に付いていく私達なら…こう考えるよ…」

 

――弱者に尽くせる貴女みたいにカッコいい英雄的な在り方が出来る魔法少女になりたいって。

 

その一言を聞かされた静香は幼少時代で見てきた剣術稽古中の母を思い出す。

 

彼女もまた日の本の為に戦う母の背中がカッコ良かったからこそ、この道を選んだのだ。

 

「全員が同じ答えに辿り着くとは思えない…そもそも、それを願う事そのものが傲慢だよ」

 

「それでもね、憧れを抱く気持ちなら同じです」

 

「皆がついて行きたくなる生き様を見せてくれる背中に…ついて行きたいって」

 

「ふ…2人とも…こんな私に…ついてきてくれるの?」

 

「もちろんだよぉ♪」

 

「フフッ♪私とちゃる、それに涼子さんやちかさんはもう決めてます」

 

――時女静香こそ、時女一族の長になるべき者だって。

 

両目から大粒の涙が溢れだし、両手で顔を覆いながら静香は嗚咽を堪えていく。

 

「…テンサゲ。あと少しで協力出来そうだったのに…」

 

舌打ちしたひめなは視線を隣ビルの屋上に向けると彼女の護衛を務める男が立っている。

 

その両手にはMG338軽機関銃が持たれており、サイトは静香達に向けられているのだ。

 

「この悪意の臭い…隣ビルの屋上だよぉ!!」

 

ちはるが大声を上げた瞬間、分隊支援火器の猛火が噴き上がる。

 

「危ない!!静香ぁ!!」

 

仲間達は崩れた静香を抱えながら跳躍し、追い詰める銃撃を回避していく。

 

銃撃が止んだ後、隣ビルの屋上から跳躍してきた特殊部隊姿の男がひめなに顔を向けてくる。

 

「交渉術に長けていたようだが、子供の純粋さに負けたようだな?」

 

耳障りなハスキーボイスで皮肉る態度をしてくる存在に対し、両手をオーバーに上げる。

 

「フン、過程ばかり気にして何も出来ない連中なら、私チャン達には必要ないよ」

 

「ならばこの者達は…我の死霊軍団の一部に加えてもいいのだろうな?」

 

「出来るものならやってみなさいよ。あなたが悪魔だっていうのなら楽勝なんでしょ?」

 

「よかろう、見ているがいい……」

 

銃をスリングで背中に回した後、悪魔と呼ばれる男は両手を広げながら構えてくる。

 

「悪魔ですって!?」

 

「そんな…ルミエール・ソサエティは悪魔を従えていたのぉ!?」

 

驚愕するちはるとすなおであったが、支えられた静香が仲間達の肩を掴む。

 

「……私はもう大丈夫。悪魔が相手なら…私はもう迷わない」

 

彼女も剣の柄を握るかのようにして構える。

 

周囲から炎の柱が噴きあがり、両手には魔法武器である七支刀が握られている。

 

「ルシファー様の実働部隊であるエグリゴリの堕天使の力…とくと見るがいい!!」

 

禍々しい光を全身から放ち、周囲が暗闇に包まれる。

 

「これは…悪魔の結界!?」

 

「やっぱり…悪魔が相手なんだね…」

 

「2人とも…ありがとう。そして…これからもよろしくね」

 

頷き合いながら武器を構える中、周囲は異界化し、禍々しい光の中から巨大な鳴き声が響く。

 

次の瞬間、大きな翼が広がりを見せ、巨大な翼獣と騎士が禍々しい光の中から飛び出してくる。

 

「あ…あの巨大な翼獣は……」

 

「グリフォン!?」

 

両翼で飛びながら主人を乗せたグリフォンが威嚇する鳴き声を放つ。

 

冠を被った騎士悪魔こそ、ルシファー直属の堕天使部隊の一員なのだ。

 

<<我が名は堕天使ムールムール!!死霊にして躍らせてくれよう!!>>

 

【ムールムール】

 

ソロモン王に封印された72の悪魔達の一柱に数えられる地獄の大公。

 

グリフォンを駆る緑の騎士の姿で描かれ、召喚者に哲学に関する知識を授ける。

 

また優れたネクロマンサーでもある強力な堕天使なのだ。

 

どの死人からでも死霊を呼び出す事が出来る存在であり、彼の使い魔となった。

 

「魔法少女とやらは死ねば円環のコトワリに導かれる。その前にソウルジェムを頂こう」

 

グリフォンの口が開き、巨大な火球が放たれようとしている。

 

「桁外れの魔力ね…わ…私チャンは邪魔になりそうだし、遠くで観戦してた方が良さそう…」

 

跳躍して離れたひめなの後に残るのは日の本の為に戦う決意を崩さない魔法少女達の姿。

 

「生き残れたら私…時女一族の在り方を変える努力をしてみせるわ」

 

「何処までもついていきます…私達の長よ」

 

「絶対に生き残って…静香ちゃんを私達の長にしてみせるよぉ!!」

 

今ここに始まるのは魔法少女と堕天使との戦い。

 

敵の力は余りに強大であろうとも、彼女達の愛国心が両足を奮い立たせるのであった。

 




読んで頂き、有難うございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。