人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
クリスマスが終わった頃にその事件は起きてしまう。
風華の児童養護施設で施設長の刺殺事件が起きたと尚紀は聞かされたようだ。
「あの日以来…年が開けても風華は教会に訪れないな…」
「私の家族も心配している…だが、児童養護施設の関係者で無い私達が顔を出す事も出来ない」
「そうだな…今は信じて待ってやるしか出来ることはない…」
秋の紅葉も終わり、冬の森が広がった季節。
教会周りの清掃を行っていた時、風華が訪れてくれたようだ。
「もう…いいのか?」
「………はい」
彼女の表情はとても辛そうな顔で目を伏せてくる。
「ここで話し辛い内容なら場所を変えよう」
教会の森から離れた冬の野原に向けて二人は歩んでいく。
雲が広がる空は雪が降ってきそうな天気の中、彼女が重い口を開きだす。
「私の児童養護施設は……閉鎖する事が決まったんです」
児童養護施設に関わる社会問題について彼女は語ってくれる。
「日本は児童養護施設を廃止する方針になってます…里親養育するよう一本化していくんです」
「児童養護施設を廃止して里親に斡旋だと…?何も問題がないというものでもないんだろ?」
「背景には人権団体や人権活動家達が日本の児童養護施設をバッシングする背景があります…」
左翼活動家共が時代遅れ、児童虐待の温床、悪魔的な組織と批判してくる影響が大きいという。
「偏見過ぎるだろ…?それを厚労省が真に受けて予算削減に乗っかってしまったのか…」
「こんな背景にあるのはリベラル、フェミニズムという個人主義的価値観があるんです…」
左翼の言葉は口先ばかりで無根拠意見ばかりであり、価値観を人に押し付けるものでしかない。
「現場の事を無視し、自分達が見たもの感じた事が全てと称してそれを他人に強要する連中か」
「その人達が認めるのは自分達に都合のいい意見だけ…それ以外は徹底的に攻撃されます…」
「SNSで人の声はより遠く、より多くの人々に影響を与えて人を集める力となったからな…」
彼も学生時代はSNS利用者であり、彼の友達もラディカルフェミニスト共を嫌ってたと語る。
「それが悪い方に働きだしてます…世界と日本の実情は違うのに外国の価値観を押し付ける…」
外国は里親だけでやってるのに日本は時代遅れだと左翼共が大声を上げやすくなったという。
「ラディカルフェミニスト共の身勝手な声を…厚労省や政権が取り入れようとしているわけか」
「そして今回の児童養護施設の施設長刺殺事件が…さらに追い打ちとなりました」
犯行を行ったのは元児童養護施設で過ごしていた若者。
恨みがあった施設関係者なら誰でも良かったと警察に話しているそうだ。
この事件で人権団体や左翼活動家達が猛抗議を繰り返し、施設を閉鎖しろと行政に訴える。
やはり児童養護施設は児童虐待の温床、悪魔的な組織だと奇声を上げながら叫び続けたようだ。
「屑共め…思想が自由の国の弊害を感じずにはいられないな…」
「その声を国が汲み取った形となってしまい…児童養護施設閉鎖に繋がったわけです…」
「……本当にそれだけなのか?」
「いいえ…もっと酷い裏側があるんだと…副院長先生は語ってくれました」
この背景には
人権団体や人権活動家の里親斡旋仲介によって高額な手数料が貰える狙いもあった。
♦
院長先生の刺殺の知らせを聞いた彼女は気が動転したような叫び声をあげる。
「あの人は寂しい目をしてたけど…育ててくれた恩人を殺すような人じゃない!!」
風華は若者が逮捕されてから勾留の面会が許される三日後の平日を待ち、面会に行く。
「あの人の心は…社会の現実によって絶望してしまっていたんです…」
若者は親だと思っていた人が里親で、お前は養子だと聞かされて施設に入れと追い出される。
児童養護施設は満18歳まで入所していられる期間が殆どである。
その若者も18歳を過ぎた頃には児童養護施設を出ていくのだが問題は山積みなのだ。
「あの人は…住民票も身分証も両親さえも持ってはいませんでした…」
仕事を探そうにも仕事に就く保証人もいない。
不動産屋でアパートを借りたくても保証人がいない。
「携帯さえ…未成年では親がいないと契約できなかったよな…」
「定職も住処も得られないあの人は施設に助けを求めても管轄が違うと追い出されました…」
その後はホームレスとなり、心無い人間達に痛めつけられて病院に搬送もされたと聞かされる。
「俺も暴行された事がある…連中は面白半分の悪意を社会的弱者に向けてくるんだ…」
「行き場がないと告げるとその人は入院させられないと言われて…病院さえ追い出されました」
「住み込み就職を探そうにも…家も住民票も身分証明も持たない奴を雇ってはくれないか…」
路上で寝ていても誰も気に留めないし、社会は誰も守ってはくれない。
これが両親と家というセーフティネットを持たない日本の孤児達の現実だと聞かされる。
社会に対する怒りと不安。
自分は何処に行っても普通扱いされないという苦しみ。
親がいないだけで自立さえ許されない日本社会。
そんな現実に苛まれた末の今回の刺殺事件である。
「気持ちは痛いほど分かる…俺も両親や家がない、国民だと証明する住民票や身分証も無い…」
行く当ても無く路地裏で座り込んだ時、尚紀もその若者と同じ気持ちになってしまう。
「もし風華と出会っていなかったら…俺は…最悪の災いになっていただろうな…」
「私……悔しい!!私達だって望んでこうなったわけじゃないのに…っ!!」
風華は彼の胸に抱きついて顔を埋めてくる。
「社会は守ってくれない!!誰も……私達を守ってくれないの!!」
胸の中で嗚咽が聞こえてくる。
施設出身者の中でも風華は学力も高く、神学の大学を目指すことが出来る程の人物。
そんな施設出身者は財団の夢の奨学金というものを得られるかもしれない。
しかし、それ以外の人物達はどうなるのだろうか?
施設を出た女の子の中には風俗で働いたり援助交際で生きるしかない子も当然生まれてしまう。
「どうして社会はこんなに冷たいの!顔をアザだらけにして施設にくる子供も大勢いるのに!」
「風華……」
「そんな子供達に!どうして社会は…自分達の価値観だけで理不尽に物事を決めるんです!?」
「もういい…もういいんだ…」
「里親がマシだと誰が決めたんです!?私達は社会の粗悪品の道しか用意してくれない!!」
嘲笑いながら弱者達を搾取する事しか社会はしてくれない現実に対して慟哭が木霊する。
魔法少女の運命だけでなく、社会の理不尽さえも彼女は与えられてしまうのであった。
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気がついたら空から雪が舞い降りている。
寒い冬の気温が二人の心と体も冷たくしていく。
「…児童養護施設の職員は慌てて対応に追われてます」
違う児童養護施設に子供達を移す連絡を続けているようだが状況は良くないと聞かされる。
「閉鎖を迎えるのは今年の春…施設の子供達も怯えています…行く当てもないんです…」
鬼畜の日本社会に放り出されると毎日泣き、里親の現実を知っている子供達もいるようだ。
「里親の現実だと…?」
「児童養護施設の職員のように専門的な教育を受けた存在ではないんですよ…」
良心的な里親に児童養護施設に送られた子供なんていない。
流れてきたのは里親の虐待や強制労働というケースの被害にあった子供ばかりだと聞かされる。
「児童養護施設は閉鎖を迎えて施設の子供は国や人権団体に預けられるしかないのか…」
今まで社会の犠牲となった子供のために頑張り、制度の中でやってきた児童養護施設もある。
その人々を既得権益や悪人だと決めつけ、自分達やスポンサー利益にありつきたい左翼がいる。
似非人権団体やリベラルな似非人権活動家共に為す術もないというのが日本の現実なのだろう。
「あんな悪魔のような人達が子供を守るはずがないんです…!!」
子供が不都合を起こすだけでなく命を落としたり社会が廻らなくなっても責任などとらない。
「連中は一切責任を取るはずなんてないんです……金儲けがしたいだけですよ!!」
似非人権団体の里親斡旋とは孤児仲介手数料をがっぽり儲けたいだけの人身売買に過ぎない。
「だろうな…問題が起きようが自分達は関係ないと連呼する悪魔共なんだろう…」
既得権益のせいだとか、悪いのは里親であって制度ではないとか、言い訳を並び立てる。
そんな悪魔同然の左翼団体に対して腹の底から怒りが沸き起こってくる。
「現場で働いてる人達も…孤児達も…社会から置き去りにされてしまいました…」
「資本主義に塗れたこの国は腐ってやがるな…」
「私ね…里親に預けられるぐらいなら…働こうって思うんです」
「馬鹿な!?子供のお前が働ける場所なんてあるのかよ!!」
「もう私…自分の人生を心無い大人達に弄ばれたくないんです。私の人生は私が切り開きたい」
実の両親に生まれてすぐに捨てられてしまった女、それが風実風華。
もうこれ以上、彼女は心無い社会と大人達に弄ばれる人生は嫌だという。
「牧師になるんだろ!?神の教えを皆に伝えられる人間になりたいんだろ!」
「里親の元に預けられたらもう施設の人間じゃない…だから支援も受けられませんね…」
「里親だって…もしかしたらいい奴もいるかもしれないだろ!?」
「実の子供でもない人間に…巨額の教育費を本当に払ってくれるんですか?」
「それは……」
「里親達からしたら赤の他人がやってきただけ…下手したら飼い犬程度にしか見られません…」
「こんな事でお前の人生が犠牲になるのか?やっと見つけた信仰と夢を奪われてしまうのか!」
魔法少女として世界に呪いと災いを撒き散らす魔女になる運命まで背負うのか?
そんな運命など、彼は絶対に認めない男だ。
「尚紀…?」
彼は風華を強く抱きしめてくれる。
「風華…俺がお前を守ってやる。お前の全てを…俺が守ってやる」
「でも…尚紀だって……」
「確かに俺だって状況は同じだな…」
両親も家もなく、住民票や身分証すら持たない未成年者なのが今の尚紀の現実である。
「それでも俺には悪魔の力がある。お前の教育費や養育費ぐらい用意してやれる」
「まさか…貴方の力を使って犯罪をして稼ごうと…?そんな話なら許しませんよ!?」
疑われるのも無理はないので彼女に悪魔の力の一端を見せてあげる事にしたようだ。
「よく見ていろ、悪魔の手品を見せてやる」
自分の左掌を彼女に見せてくる。
すると一瞬のうちにダイヤモンドの宝石が出現している。
「これはいったい…!?」
ファイアー・ローズ・クッションにカットされた珍しいピンク色のダイヤモンド。
その大きさも巨大であり、550カラットはある大きさだ。
「俺の仲魔から貰った珍しい宝石だ。売ればそれなりの価格になるだろう」
彼は様々なアイテム・宝石・貴重品を自身の手の中に収容する力を持っている。
この魔法がどういったものかは彼にも分からないが、悪魔になってから使えるようになる。
この力が無ければかつての世界でリュックサックを背負って旅をしなければならなかったろう。
「戸籍も手に入れてみせる。そして…俺がお前の面倒をみてやる」
「尚紀…それって……?」
少し気恥ずかしい表情になったが、迷いのない顔つきとなって彼女に告げる。
「俺と……一緒に暮らそう、風華」
「えっ…?えっと…尚紀……それって…私と!?」
「いつまでも佐倉牧師の世話になるつもりはなかった。だから…一緒に俺と暮らさないか?」
同棲生活を自分と送って欲しいのだと彼女には聞こえてくる。
顔を赤らめて俯いてしまったが、顔を上げて尚紀に問いかける。
「私なんかで……いいの、尚紀?」
「あの路地裏でお前は俺に手を差し伸べてくれた。今度は俺の番だ」
感謝の気持ちなのだろうか?それとも哀れみか?もっと別の感情なのだろうか?
自分でもこんな感情になった事は人間だった頃でさえないのだと彼は心で感じている。
風華の目から大粒の涙が溢れていき、彼女は彼に抱きついてしまう。
「素敵な人生をありがとう……尚紀」
「一緒に生きよう……風華」
彼女を抱きしめて優しく頭を撫でてあげる。
二人は自然と吸い寄せられるようにして唇を合わせていく。
(俺の感じていた感情が何なのか……今分かったよ)
佐倉牧師と初めて会った時に言われた言葉の答えも見つける事が出来たのだろう。
これが彼が見つけたこの世界で生きる新しい道。
風実風華に恋をする道であった。
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学生の冬休みもそろそろ終わりそうな冬頃。
彼と風華、それに佐倉牧師は教会の清掃作業を朝から行っていく。
あの日から風華も元気を取り戻し、教会の佐倉牧師達も安心してくれたようだ。
(……チッ、意識しちまうな)
三人は黙々と教会の掃除をしているが、尚紀の視線はどこか泳いでいる。
その視線の先には風華の姿があったためだろう。
(あの日以来…風華に強い異性を感じる。俺も男だってことかよ?)
長く透き通るほど美しい金髪、豊満な胸、抱きしめたくなる細い腰、安産型のお尻。
(俺は何を考えて…?やめよう、俺は居候の身分だしな)
不意に視線に気づいた風華が彼に向き直ると彼は赤面した顔を逸らして掃除を続ける。
お昼を食べた後は午後からの仕事だが、人手があったので片付いてしまっている。
時間を持て余した尚紀と風華は礼拝堂の椅子に座ってくつろいでいるようだ。
風華は聖書を借りて読みふけっているのだが、彼は視線だけを向けてくる。
(本を読む時は赤いフレーム眼鏡をかけるんだな…)
小さな文字の聖書を擦り切れるぐらい読んでいたのか目が悪くなってしまっている。
(……眼鏡をかけたあいつの顔も素敵だな)
視線に気がついた彼女は彼の方を振り向くが、彼は顔を反対側に背けてしまう。
小首をかしげて彼の態度に不思議そうな顔を彼女は向けていた時、元気な声がやってくる。
「尚紀!ふう姉ちゃん!あーそーぼっ!」
教会のドアを勢いよく開けた杏子とモモが入ってきて駆け寄ってくる。
「おしごとないんでしょー?あそぼーあそぼー♪」
モモは雪の塊を握ってはしゃいでいるようだ。
あの日から降り積もった雪によって外の世界は銀世界。
無邪気な子供達に対して二人も微笑み、教会の外に出掛けていく。
教会の森から離れた雪景色の野原に移動した四人は雪を使って遊んでいくのだろう。
「寒くないか?」
「尚紀の方が寒そうですよ?」
油断していたら頭に雪玉がぶつかってくる。
「雪合戦やろうよー!!」
杏子とモモが雪の塊を作り、既に準備は終わっている。
「なおきおにいたんがわたしたちとしょうぶだよー!」
「私達?つまり…俺独りで女達から集中砲火を食らうわけかよ?」
いつの間にか子供達の輪の中に風華は加わっており、雪玉を握っている。
「おいおい、勘弁してくれよ」
「駄目ですよ♪私達の雪玉をくらいなさーい!」
「くらえー尚紀ーっ!おりゃー!!」
「あははは!なおきおにいたんゆきまみれー♪」
「石入れるのはなしだぞー」
銀世界の野原で楽しそうに過ごしている四人には冬の寒さでさえ日常の温かさで感じなかった。
♦
銀世界に広がる冬の森の道を四人は教会に向かい帰宅していく。
雪合戦で冷えた手を繋ぎ合って温め合う中、尚紀は心の中でこう願う。
(こんな穏やかな日常がずっと続けばいいな…皆と共に生きられる未来が欲しい…)
人間のように穏やかな毎日を生きていき、歳をとり、昔の思い出を語り合うのが彼の夢。
「ずっと…俺の側にいてくれるか、風華?」
「ずっと貴方の側に私はいます…尚紀」
空は高く風も澄んでいた一日の中で、彼は未来の喜びを思い描く夢をみた。
読んで頂き、有難うございます。