人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
1月28日。
風実風華は嘉嶋尚紀と一つの約束をしている。
二度と魔法少女にならずに人間として普通の人生をこれからは送って欲しいと約束したのだ。
「魔法少女の使命である魔女との戦いは全て自分が引き受けると言ってくれた…」
彼女は普通の女の子として生きてくれとお願いされてしまう。
日常で生きるための魔力は全て彼が用意する。
二人でこれから末永く生きたいからこそ戦いの世界から遠ざかってくれと言われたようだ。
「必死の願いに負けて約束を交わした…まるで…大切な人を失い続けた過去があるような…」
悲しみを背負った彼の顔を見た彼女は魔法少女の矜持を押し通す事が出来ない。
風華は彼の力を疑ってはいないが、再び人間の頃のような生活に戻れるのか疑問を感じている。
「彼が魔女に負けるはずがない…だから私は普通の女の子として生きていくべき…」
それで彼が満足してくれるなら、それでもいいと彼女はその時に言ってくれたようだ。
今日の彼女は佐倉牧師に頼まれた所用を片付けるために市内の繁華街に来ている。
用事も終わり、教会への帰路につこうとしていた時、魔女の魔力を感じ取ってしまう。
「凄く強大な魔力…ここからそう遠くは離れていない…?」
約束を思い出して魔女と戦う事を戸惑ってしまうのだが、彼女には彼女なりの信念がある。
「もし…魔女が誰かを犠牲にしようとしていたら…私は見捨てた事になる…」
近くにいるのは自分しかいない。
彼女は心の中で彼に謝りながら魔女の魔力を感じる場所に向かって行く。
繁華街からそう離れていない場所には市が管理する風見野霊園がある。
ソウルジェムを使って魔女の魔力を確認する風華の姿が霊園内に現れてしまう。
「近くにいる…それにあの人はもしかして…魔女の口づけ呪いを受けた人…?」
喪服の老女が霊園を虚ろな表情で歩みながら魔女の結界に向かって歩いていく。
「爺さん…あたし疲れたよ。そっちに行かせておくれや…」
「いけない…魔女の結界にとり込まれてしまう!?」
荒っぽくはあったが彼女は一気に詰めより、老婆の首浦に当身を入れて昏倒させる。
倒れこんだ老婆を寝かしつけた後、目の前の魔女結界入り口に向き直る。
「今まで出会ったことがない程の魔力…余程の魔女がこの街に流れ着いたんですね…」
この戦いは激戦になるという事なら魔法少女として経験を積んだ彼女なら分かるはず。
「それでも…今この場で戦える存在は…私一人だけ…」
この魔女を放置して逃げ出してしまったら大勢の人間が犠牲となる事は分かりきっている。
「ごめんなさい…尚紀。私は約束を守れませんでした…」
ソウルジェムを掲げて魔法少女に変身する。
「やっぱり私は…人々を見捨てることなんて……出来ません」
意を決して彼女は魔女の結界へと足を踏み入れていった。
♦
魔女の結界が消失していく中、かつてない程の激戦を制した魔法少女が現れる。
「危なかった…魔力が底をつきかける程の戦いなんて、私も初めてでしたね…」
それでもなんとか魔女を倒せた風華はホッとした顔つきとなるだろう。
空はいつの間にか曇り空になり、雪が降りそうな空模様。
転がっている魔女のグリーフシードを拾い上げていた時、彼の魔力を感じてしまう。
「この魔力……尚紀が近づいてきている?」
彼の魔力を感じとった事で彼女は後ろめたい気持ちに支配され、注意力が散漫となっていく。
「私の魔力に気が付かれちゃったんだ…怒っていますよね。ごめんなさい…約束破っちゃって」
これを最後にするとし、グリーフシードをソウルジェムに近づけようとした時に悲劇が起きる。
「えっ……?」
背後には桁外れの力を感じさせる二人の魔法少女の魔力が屹立する。
「全ては
彼女が後ろを振り返ろうとした瞬間、その悲劇は起こってしまうのであった。
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同日。
戸籍を手に入れる方法を求めて図書館のインターネットを利用し、尚紀は情報を集めている。
「俺の存在はこの国に一切の痕跡が存在しない。この国の人間だと証明する事さえ出来ない…」
そうなれば外国から来た不法入国者扱いされても文句は言えない立場であろう。
そんな彼が役所に赴き、戸籍が欲しいなどとは言えるはずもない。
それでも戸籍を手に入れる方法を考えるとしたら非合法なもの以外は考えられないはず。
「ニンベン師という存在を聞いたことがある…そいつと連絡さえつける事が出来たら…」
ニンベン師とは公的証書や紙幣を偽造する事を生業とする闇の職人。
健康保険証、パスポート、運転免許証などの公的証書を偽造出来るなら彼の戸籍も生み出せる。
そう考え付いた彼はネットを使って情報を集めていたのだが、全く見つからない。
「非合法な職人と縁がある者達を考えるとしたら…反社会的勢力と接触するしかないな…」
悪魔の力を売り込み、その見返りにニンベン師に戸籍を用意してもらう結論に至っていく。
「きっと風華はいい顔しないだろう…俺一人でやるしかない」
図書館から出た彼が空を見上げれば雪が降りそうな天気になっている。
天気の悪さに嫌な予感を感じていた時、風華の魔力を感じてしまう。
「馬鹿な!あいつは俺の約束を守らなかったのか!?」
図書館の裏で悪魔化した彼は魔力の出処に向かってビル郡を跳躍しながら駆け抜ける。
「近くに魔女の魔力も感じる…間に合ってくれ!!」
気持ちがいい風が吹く風見野市の今日は風一つ感じない不気味な日。
霊園に辿り着いた頃には魔女の魔力は消えていたようだ。
「たとえ魔女を倒したとしても許すつもりはない…もう二度と失うのはごめんだ…」
霊園内に入った時、彼は別の魔法少女達の魔力まで感じ取ってしまう。
「なんだ…この強大な二つの魔力は!?何が起きている…風華……風華ぁ!!」
現場に辿り着いた彼の目に映った光景こそ、悪魔人間が夢見た儚い夢の終わりの光景。
「あ……ああぁ………ッッ!!?」
五本貫手で心臓を串刺しにされた風華の姿がそこにはあるのだ。
「風華ぁぁぁぁぁーーッッ!!!」
彼の存在に気づいた魔法少女は貫手を体から引き抜く。
風華の体が倒れていく光景が鈍化した世界のようにして彼には見えてしまう。
駆け抜けてきた彼が風華を抱き留める。
「尚紀……ゴフッ!ゴハァ!!」
大量に吐いた吐血のせいで魔法少女衣装が赤黒く染まってしまう。
「喋るな…風華!!」
明らかに生命を終わらせる程の致命傷。
彼女の十字架の形をしたソウルジェムが濁りきり、亀裂が入っていく。
大切な人を死に至らしめる憎い存在達に対してありったけの呪いを込めて睨みつける。
「イキマショウ、チェンシー」
滑舌の悪い日本語を喋る褐色姿の魔法少女が掌をかざす。
後方空間に大きな空間転移魔法陣を生み出した魔法少女がその中に消えていく。
チェンシーと呼ばれた者も踵を返し、魔法陣の中へと消えた後に魔法陣が消滅したようだ。
「尚紀っ……ゴホッ!……私、貴方に伝えたい事が……」
「やめろ……やめてくれ……縁起でもない言葉を吐くなぁ!!」
「貴方のお陰で…魔法少女だけど夢を見れた…人間として…幸せに生きられる…喜びの夢を…」
(俺は…魔法少女の末路を知っている…)
「短い間だけど…普通の恋愛をする事が出来た…。貴方に出会えて…本当に良かった…」
「嫌だ……嫌だぁぁぁ………っ!!」
「最後に…約束してくれますか……?」
「約束……?」
「貴方のその力を…
「……ああ、約束する!だから…だから…死なないでくれ…風華…ッッ!!」
「ありがとう……尚紀……」
「俺を…独りにしないでくれぇぇぇぇぇ……ッッ!!」
「わた…し……あなた…を…あ……い……し……て……」
「風華ぁぁぁぁーーーーーッッ!!!」
手に添えた風華の手が落ちてしまう。
彼女のソウルジェムが砕け散り、どす黒く穢れた感情エネルギーが周囲に放出されていく。
そして、その存在は現れてしまうのであった。
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【白鳥の魔女】
神の信仰の道を見つけ、人々のために戦った者から生まれた魔女。
その性質は夢である。
この魔女は生前夢見た理想を求めている。
好きな人と結ばれたり、良き出会いに恵まれる事を夢見ている。
夢が叶う願いを込めて魔女は首に青薔薇の花輪をつけていた。
「風華……」
湖の浅瀬には白鳥の魔女が繋がれている魔女の結界世界。
『王子は王冠をいただいた一羽の白鳥を見つけた』
『娘は
首にある薔薇の茨の棘が深々と突き刺さり、魔女は苦しんで暴れ続ける。
羽ばたく翼から暴風が生まれていき、湖のほとりにいる彼を襲う。
『娘は永遠の愛を望んでいた』
遺体を抱きかかえたまま、彼は壁に打ち付けられている。
「なんで…こうなっちまったんだろうな……」
『悪魔の呪いは永遠の愛によってしか解けない』
遺体を優しく寝かせた後、暴風を撒き散らす白鳥の魔女に対して歩みを進める人なる悪魔。
「愛した人がいた…その人と幸せになる夢を見た…。でも、それは叶わなかった……」
『白鳥の娘を愛する王子は永遠の愛を望んだ』
「風華……約束する。お前の意思は……俺が引き継ぐ」
社会に必要とされなくても皆の笑顔のために戦い、笑顔を与える夢を抱いた少女がいた。
それを知る人なる悪魔は彼女を呪いと災いを振り撒く末路になど、決してさせないはず。
『王子は悪魔の呪いを解いてあげることにした」』
居合抜きのように低い姿勢で光剣を構える。
『白鳥の娘は王子に惹かれて恋をした』
「愛してる……風華。そして……さようなら」
腰から光の剣を一気に引き抜く抜刀術を行うと光の一閃が全てを切り裂く。
『死亡遊戯』の一撃によって白鳥の魔女はその首を切り落とされてしまうのだ。
『二人の永遠の愛によって白鳥は呪いから開放されましたとさ』
♦
おびただしい流血と血の噴射を始める魔女の遺体が湖を真紅に染めてしまう。
白鳥の魔女は最後に空に飛び立とうと翼を広げたまま真紅の湖に沈んでしまうのだ。
願いは叶うと魔女が信じた青薔薇だけが真紅の湖に浮かんでいる。
風華の遺体を抱きかかえた人なる悪魔である人修羅は魔女の結界から外に出てくる。
「見ろよ風華……雪が降ってきた」
結界から外に出たら空から雪の粉が舞い降りる。
悪魔の両膝には力が入らず、遺体を抱いたまま崩れてしまう。
「勇も…千晶も…祐子先生も…風華も…誰も守れない…何が悪魔の力だ…無力じゃないか…」
遺体を抱きかかえた彼の形相は涙を流す鬼神の如き顔つきになり果てていく。
「ふざけるな…ふざけるな!!なぜ俺は誰も守れない!?どうして風華がこんな目に合う!?」
皆の幸せを願っただけの少女がどうして災いにならなければならないのだと彼は世界を罵倒する
「何が宇宙の秩序だ!!こんな子が呪いにならなければならない宇宙など…滅びてしまえ!!」
喜びの夢を見せてあげたかった。
人間として生きられる可能性を与えたかった。
それを願う悪魔の心は裁かれなければならない程に罪深いものなのか?
「呪うなら俺達悪魔を呪え!!世界の災いは…俺達悪魔だけで十分だ!!」
――世界の運命を支配する大いなる神よ!!貴様を呪ってやる!!!
「永遠に……呪ってやるぅぅぅぅーーーーッッ!!!!」
大切だった人の顔に冷たい雪の粉が落ちてくる。
唯一神が与えた理不尽極まりない運命を力の限り罵倒していた彼であるが力なく項垂れる。
「なんでだよ……なんで雪が溶けない……?」
もう風華の体は生命の温もりを完全に失っている。
「どうして…風華……風華……ふうか……ふうか………」
――あなたの事が心配です。風邪……ひきますよ?
――いきましょう、尚紀!
――風は実りを運んで華を咲かせるんですよ。
――人は愛されたいから生きているんです。
「あああああ…………」
――すてきな人生をありがとう……尚紀。
「あああああぁぁぁ……うおおおおおぉぉぉああああぁぁぁぁぁーーッッ!!!!」
神の家に導かれた悪魔は唯一神の運命によって絶望という名の神罰が下されるのであった。
読んで頂き、有難うございます。