人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
見滝原から訪れた2人の少女達がもたらしたのは依頼案件である。
内容は友人である美国織莉子の失踪事件に関する捜索依頼。
応接室で詳しい事情聴取をされた2人であったが、聴取を終えた者達が事務所を出ていく。
キリカと小巻の背中を外で見送る尚紀と丈二は顔を向け合って今後の対応を話し合う。
「美国…かぁ。国政政治家一族の娘の失踪…これは騒ぎになるだろうな」
「テレビやネットニュースには出ていない。恐らくは…美国本家は揉み消す構えだろう」
「政治家一族本家から捨てられた哀れな分家筋少女ってわけだな…」
「捜索するとしたら、見滝原の金持ち地区と呼ばれる郊外の五郷だな」
「彼女は見滝原の白羽女学院に通っていた人物。見滝原市内も捜索範囲に入るだろう」
「見滝原か…久しぶりに訪れることになりそうだ」
「そういや、お前の義妹が生活している街だったな?」
「ああ…あいつからも色々と事情を聞く必要がありそうだ。織莉子とは無関係ではない」
「もしかして…美国織莉子も魔法少女で、お前の義妹である佐倉杏子も…?」
「…ああ、魔法少女だ。見滝原魔法少女社会の一員として、何か知っているかもしれない」
「そこら辺の聞き込みはお前に任せる。人間の俺では魔法少女達も秘密にするだろうしな」
「いつ見滝原に移る?」
「今日中に捜査機材などを準備して、明日の午前中には現地に入れるようにしよう」
「俺も手伝う。瑠偉には見滝原の捜査拠点として使えるビジネスホテルの予約を任せるか」
2人は探偵事務所に戻り、明日の準備に追われていく。
捜査会議も行われ、終わる頃には夕方時刻。
捜査人員は2人であり、多くの機材は必要としないためクリスに乗って移動が決まる。
機材を積んだクリスは事務所ガレージに今日は置いておき、尚紀は徒歩で自宅へと向かう。
「手付金の額は十分だし、成功報酬は同じ額の500万円。大きな仕事になりそうだな…」
白女の生徒は子供なのに一千万円も使える身分なのかと考えてた時、悪魔の声が聞こえてくる。
<<ヒーホー!!>>
南凪区の通りを歩いていた時、空から聞こえてきたのはジャック・ランタンの声である。
<お前か。声をかけるなら人通りが少ない場所にしろよ…独り言を喋る変人扱いされる>
<すまんホ。出来れば、人通りが少ない場所に移動してくれると助かるホ>
<分かったよ…>
路地裏にまで移動した彼が浮遊するランタンに向き直る。
「何をしてたんだ?」
「ヒホ、俺はかりんに頼まれた人探しをやってたホ」
「…アリナの捜索か?」
「そうだホ。かりんは学校もあるし、魔法少女活動もある。暇な俺に白羽の矢が立ったホ」
「なるほどな。それで、何か当てがあるのか?」
「それがねーから声をかけたんだホ」
「…俺だって当てはない。同じように行方を捜して欲しいと頼まれたが…何処にいるのやら」
「仕方ないホ。ブラブラしながら適当に探してみるしかないホ」
「この神浜騒動のせいで悪魔の存在が神浜の魔法少女連中にバレた…その後はどうだ?」
「ヒホ…空を飛んでる俺を見つけた魔法少女達に囲まれて、悪魔の質問攻めだホ」
「だろうな…まぁ、彼女達に対して敵意はないと言い続けるしかないのだが…」
「…悪魔は人の魂を喰らう存在だホ。そのイメージがある限り…悪魔に心開くのは難しいホ」
「悪魔にとって…魔法少女のソウルジェムはこの上ないご馳走だからな…」
「俺もかりんのソウルジェムを見てると…涎が出る時があるホ。でも…我慢してるホ」
「善行を積んでる証拠だ。魔法少女のかりんを支えてやっているのか?」
「あいつ、独りで活動してるけど…誰にでも味方しに行くホ。だから魔力消費が激しい奴だホ」
「それをお前が支えてやってるんだろ?彼女の穢れを吸い出して?」
「そうだホ。俺のお陰でかりんは魔獣と戦わなくてもいいってのに…猶更人助けに行く奴だホ」
「フッ…アリナとは真逆の奴なんだろうな」
「これも成仏への道…生前の悪行を差し引きゼロに出来るまで、気長に頑張ってみるホ」
「かりんによろしくな」
会話を終えたジャック・ランタンが空に飛翔していく。
「俺も手を貸してやりたいが…自分の仕事で人探しに向かう最中だ。勘弁な」
路地裏から出て来た尚紀であったが、知っている魔力を2人分見つけてしまう。
「この魔力は…令とみたまか?」
顔を向けた先にはカメラを持った観鳥令と付添人の八雲みたまの姿が見えてくる。
PRESS腕章をつけた学生服姿の令と私服姿のみたまも彼を見つけて手を振ってきたようだ。
少し話があると言われた事で3人は南凪区にあるカフェに入っていく。
「…公園で聞いてもよかったんだが、こんな場所に連れてくるということは…」
「ウフフ♪観鳥さん達、歩き疲れて喉が渇いてたんだよね~」
「丁度いいタイミングで尚紀さんを見つけられたし、大人の太っ腹に甘えたいわね~♪」
「くっ…都合がいい時だけ十代子供の特権を行使してきやがって…」
メニュー表から選んだ品を店員に伝え終えた3人が向かい合う。
「お前達も、もしかして人探しをしていたのか?」
それを聞いたみたまが俯き、令は首を縦に振る。
「うん…十七夜さんを探してた。今の神浜は物騒でも、誰かが探してあげないと…」
「そうだな…東の者だとバレない服選びは賢い判断だ。東の者だとバレたら襲われるぞ」
「危険なのは承知の上よ。それでも…十七夜を見つけてあげたい…彼女はきっと苦しんでるわ」
「もしかして、令の固有魔法の力を当てにして…?」
「ええ…彼女の固有魔法は確実撮影。望む被写体と出くわす力こそが…彼女の能力だから」
「それでも空振り三振続き…観鳥さんの魔法の力に自信がなくなってきたよ…」
「捜査は集中力と忍耐力が試される。それは探偵だろうが記者だろうが変わらない」
「その通り。根気だけなら誰にも負けない…絶対に見つけ出してあげるよ」
「私も見つけ出してあげたい…そして悪魔教育を魔法少女達に施していく…」
「…悪魔となった十七夜の帰る場所を守ってあげるための教育か?」
首を縦に振る彼女を見ればそれだけ2人の関係は深いものだと察する事が出来るだろう。
空気も重くなった頃、注文の品を届けられた事で一息つく。
何か別の話題でもして重い空気を取り除こうとした時、尚紀の視線が令のカメラに向かう。
「いいカメラだ。子供のお小遣いで買うのは難しいぐらいの高級品だな?」
「両親に我儘言い続けて…ようやく買ってもらえた初めてのカメラ。観鳥さんの宝物だよ」
「小さな頃からカメラが欲しかったのか?どうしてだ?」
自分に興味を持ってくれたのが嬉しかった彼女は少し微笑んだ後、過去を語ってくれる。
「観鳥さんはね、幼い頃から珍しい出来事に遭遇するんだ。でも…信じてもらえない」
「そうだな…SNSでさえ、持論を語ったところで誰も信じようとしない連中ばかりさ」
「人は見たいモノしか見ようとしない、信じない。だからこそ…根拠や証拠がいるんだよ」
「その証拠を用意するためのカメラというわけか?」
「…ある時、幼い観鳥さんは学校の虐め現場を目撃した。でも…証拠が用意出来ないから…」
「教師は取り合わなかったか…」
「一番辛かった出来事は交通事故の引き逃げ車のナンバーを残せなかったこと…悔しかったよ」
「……そうか」
「その悔しい感情を利用されてね…今はこの有様さ…」
「確実撮影の力か…確かに凄かったな。あの神浜テロの時にその力をいかんなく発揮した」
「普段はね、ゴシップみたいな撮影チャンスにしか巡り合えない。それが辛いとこだね…」
「新聞部の観鳥報は南凪自由学園でも評判みたいじゃない?何が辛いの?」
「何処から嗅ぎ付けたか分からない真実の暴露。観鳥さんはね…皆から犬のように嫌われてる」
「警察や探偵や記者は犬と呼ばれる。犯罪者から見れば犬のように追いかけ回す存在だしな」
「観鳥報という情報娯楽を消費するだけの人々には…貴女の辛さは理解されないわね…」
「人は証拠がなければ幾らでも詐術で逃れようとする無責任主義者…だからこそ証拠が大切だ」
「犬のように嫌われようがジャーナリストとしての生き様を貫くか…探偵として見習いたいな」
「素敵ねぇ~ほんとカッコイイわ。私も将来は~…カメラマンになろうかしら?」
それを聞かされて一瞬思考が停止した2人が、みたまに顔を向けてくる。
「な…なんで調整屋のお前がカメラマンになりたいとか言い出すんだ?」
「観鳥さんもビックリしたよ。みたまさんがカメラに興味あったなんてねぇ…」
「あら~失礼しちゃうわね。実はね~プロみたいに撮れる一眼レフカメラを衝動買いしてたの」
嫌な予感しかしなくなった2人はみたまから視線を外す。
「そ…そろそろ出よう。もう日も沈みそうだし、東の家まで車で送ってやるよ」
「えっ?仕事からの帰り道だったんでしょ?悪い気がするなぁ…」
「このご時世だから何が出るか分からない。お前らは美雨のように喧嘩慣れしてるのか?」
「してないわね~…それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかしら♪」
「少し待ってろ。事務所に戻って車のクリスを回してくる」
3人分の清算を済ませた彼が小走りのまま仕事場に戻っていく。
車に乗って戻ってきたのだが、クリスがまた文句を言い出す始末である。
「またこの女を乗せる気!?ダーリンの浮気者!!そんなにオッパイ大きい女が好きなの!?」
「こいつとはそんな関係じゃないって…何度言わせる気なんだ?」
「今度は~席をスライドさせちゃイヤイヤよ~♪」
「アタシだって!アンタを乗せるのはイヤイヤよ!!」
「ハハ…悪魔の車に乗れる日が来るなんてねぇ。これは撮影しても信じてもらえないかも…」
クリスをなだめた後、2人を乗せた尚紀が東に向けて運転していく光景が続く。
「悪いな、令。明日から俺は見滝原に出張でな…捜査機材を後ろに積んでて狭苦しいだろ?」
後ろ側の席に顔を向けるが令は笑顔を浮かべながら首を振る。
「観鳥さんは気にしてないよ。それに…探偵さんの捜査機材のカメラにも触れるし♪」
後ろで楽しむ彼女から視線を前に戻した彼は運転に集中する。
探偵の捜査機材に触れていた令であったが、自然と昔話を始めていくのだ。
「…ねぇ、聞いてくれると嬉しいな」
「何をだ?」
「観鳥さんがジャーナリストになりたいって思った…動機についてさ」
「証拠を残す大切さがキッカケではなかったのか?」
「それもあるけど、証拠を用意する仕事なら他にもある。なぜジャーナリストを選んだかさ」
「それは私も聞いた事がないわね~?私も興味があるわ」
2人に興味を持ってもらえて嬉しかったのか、遠い眼差しを浮かべながら語り始める。
「観鳥さんはね、ある歴史人物の女性に憧れを抱いたから…ジャーナリストを目指したのさ」
「女性の歴史人物?」
「その人はね、女性が社会進出して働くのも難しかった時代でも負けなかった大正時代の記者」
――帝都新聞社に勤務していたその女性の名前は…
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幕末・明治時代以降から続く女性蔑視の封建的な価値観に支配されていた大正時代。
そんな時代でも社会に進出して活躍した女性記者がいたと語ってくれる。
その者は男尊女卑を嫌い、女性の活躍も必要だと考える共産主義思想に憧れを持つ。
日本で初めてフェミニズムを掲げた平塚雷鳥に憧れ、名前の鳥を記者名に採用する。
「帝都新聞社で働いていた、その朝倉タヱの何処に憧れたんだ?」
「社会の理不尽にも負けず、その人は平等を求めて頑張れた…鳥のように羽ばたけたんだよ」
「そういえば、貴女も苗字の中に鳥があるわよね~?繋がりを感じちゃったんだ?」
「葵鳥というペンネームで働いていた朝倉タヱという人物は…何をした人なんだ?」
「葵鳥さんを知ったのは、報道と新聞記者っていう書籍を小さい頃に読んで知ったのさ」
葵鳥の歴史活躍をまるで自分の事のようにして語ってくれる。
帝都新聞社に勤務していた女性新聞記者、朝倉タヱ。
当時流行の先端であった
如何にも大正時代のモダンガールといった雰囲気を纏っていた人物である。
美人で気の強いしっかり者であり、頭脳明晰で心優しく勇気と行動力に溢れると長々話す。
「おい…なんか話が脱線してきているぞ?」
「そうねぇ、タヱさんの容姿や内面の自慢話になっちゃってるわよ~?」
「タヱさんじゃない、葵鳥さんだよ。そうだね…嬉しくなって…つい彼女の自慢をしちゃった」
「その女性記者は報道の歴史に名を遺す程の記者だったんだろ?どんな記事を残せたんだ?」
「その部分が大事だね。女性記者として歴史の生き証人となった彼女が残した記事がある…」
それは帝都書生であったデビルサマナーと共に生きた歴史でもある。
次々と語られていく歴史事件内容は学校で教えてくれない内容ばかりであろう。
「超力兵団事件…アバドン王事件…コドクノマレビト事件…どれも都市伝説の記事じゃない?」
「観鳥さんも最初はオカルト記者なのかと思ったけど…魔法少女になってから事実だと考えた」
「もしかして、その事件の数々も私達のように秘匿しなければならないものだったの?」
「この事件の数々は科学では説明出来ない現象の破壊痕跡ばかり。それに記事の中には…」
――悪魔の仕業という部分まで記されていたんだ。
悪魔の存在ならば目の前にいるし、今乗っている車とて同じ存在。
だからこそ令は確信し、朝倉タヱが追いかけた悪魔という都市伝説は実在したと分かるのだ。
「オカルト記者という不名誉な記者として歴史に残ったけど…彼女は負けなかった」
「男尊女卑の差別に負けず、オカルト記者だと馬鹿にされても負けなかった…強い人なのね」
「共感したんだな?神浜東西差別に苦しむ立場でもタヱのように負けない女性になりたいって」
「タヱじゃなくて葵鳥さん。うん…その部分が一番共感した。だから記者を目指したい」
「そうか…お前なら絶対になれるさ。お前の行動力や頭脳明晰っぷり、それに心優しさ…」
――どれをとっても、21世紀の朝倉葵鳥そのものに見えたよ。
真顔でそんな事を尚紀が呟くものだから、令は顔を真っ赤にしながら窓に視線を逸らす。
「え、えっと…その…観鳥さんも、葵鳥さんに見えた?凄く…嬉しい言葉だよ…ありがとう」
前を見れなくなった後ろの彼女に視線を向けていたみたまが尚紀に向き直る。
「ねぇ、尚紀さんってさぁ…女たらしって言われたことがあるでしょ~♪」
「言われたことなんてねーよ」
「も~自覚してないのね~…朴念仁♪」
「それより、何処まで走ればいいんだ?」
「ほら、目の前に大きな団地ビルディングが見えるでしょ?あそこの団地街で暮らしてるの」
「そうか、ならあそこで停めてやるよ」
車を団地街入り口で停め、みたまを下ろす。
手を振って見送ってくれる彼女を後にした尚紀は令の家まで送っていく。
気まずい雰囲気なのか、彼女は未だに赤面しながら窓の景色だけを見ている。
しかし尚紀は聞かされたオカルト記事の内容が気になるのか質問してくる。
「なぁ…葵鳥が書いた記事の中で、気になる部分があったんだが」
「えっ?気になる部分…?」
「超力兵団事件、アバドン王事件、コドクノマレビト事件。どれも共通して書生が登場してる」
「うん…そうだね。その書生が気になったんだ?」
「これは静香から聞いた話だ。この人物がその書生かは分からないが…お前も知っておけよ」
「う、うん…教えてくれるならありがたいよ」
静香が語った人物とは、退魔組織であるヤタガラスの歴史において最強のデビルサマナー。
その者の名は、
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日本の悪魔召喚師の中でも名高い存在こそが葛葉一族。
悪魔を用いて人の世の霊的調和を保とうとする一族の名称である。
平安時代以来の占術や呪術によって自然の流れを読み、和らげ、世の中を守る陰陽師とされる。
さらにその中でも伝説的存在であるのが安倍晴明であろう。
晴明は謎が多いゆえに多くの伝説が伴っている。
彼の母親が信太の森(現在の大阪府和泉市周辺)の霊狐、葛葉だとする伝説が有名であろう。
葛葉一族は宗家と呼ばれる者と宗家と共に飛鳥時代に一族を興したとされる4人が始祖となる。
一族の中心となるその5人の名は一族の中核を成す者達に代々受け継がれていく。
宗家に連なる4人の高弟達は後に葛葉四天王と呼ばれることになったという。
その4人の高弟の中でもっとも名を上げた高弟の名が葛葉ライドウ。
それを成したのが数えること14代目に当たる14代目葛葉ライドウであった。
「14代目葛葉ライドウ?その人物と葵鳥さんが書いた記事の書生が同じだと思うの?」
「14代目の葛葉ライドウは大正時代の帝都を守ったデビルサマナーだ」
「だとしたら…葵鳥さんが記者として生きた時代と重なる。それに同じ帝都で生きた人だし」
「恐らく…その書生というのは葛葉ライドウだと俺は考える。
「記事に書かれていた書生も弓月の君高等師範学校の学生。観鳥さんも同一人物だと思うよ」
「葵鳥の記事に書かれていた悪魔という存在…悪魔の影があるならデビルサマナーの影もある」
「この数々の事件を解決に導いたのが…14代目葛葉ライドウなのかな…?」
「そいつは秘密結社に所属していた奴だ。この国の霊的脅威を滅ぼす結社にな」
「ヤタガラスかぁ…都市伝説だとばかり思ってたけど…そこに所属してたのが静香達だし…」
「追いかけるのはやめとけよ?闇の暗部を担う存在共の証拠を求めるなら…対価は命となる」
「この国の政治や行政、司法界隈には不審死が多いって知ってる。記者も不審死が多いんだ…」
「ジャーナリストだって人間だ。命は一つしかない…大切な家族や仲間達のためにも早まるな」
「そうするよ。ヤタガラス…その秘密結社は霊的国防だけを担う秘密結社だったのかな…?」
重い沈黙が続いていたが、令から案内された家が見えてくる。
家族に見つかると勘繰られると判断した彼は家から離れた位置で停車させる。
車から降りた令であったのだが、彼女は運転席の窓にまで近づいてくる。
「どうした、令?車の中に忘れ物か?」
窓を開けて彼女を見つめる尚紀であったが、彼女は赤面しながら視線を逸らす。
それでも息を飲み込んだ後、彼と視線を合わせた令が質問してくる。
「ね…ねぇ、嘉嶋さんてさ…23歳なんだっけ?」
「…事情があって、俺は3歳年齢を偽ってきた。実年齢は二十歳だ」
「そ、そうなんだ…?観鳥さんとは5歳差かぁ…別に普通だよね…?」
「…何の話をしているんだ?」
手をもじもじさせる子供っぽい仕草のまま頬を染めていたが、聞きたい話を語ってくれる。
「嘉嶋さんってさ…か、彼女とか…作る気は…ないのかなぁって…思って…」
赤面したまま尚紀を見つめているのだが、彼は顔を俯けながらこう告げる。
「…今の俺には、そんなことを考えている余裕はない」
拒絶とも肯定ともとれない曖昧な返事を返してくる。
将来に期待してもいいのかと考えた令はそれ以上の追求はやめたようだ。
「嘉嶋さんは多忙な人だし…いつか余裕が出来たら…その…観鳥さんね…期待してるから!」
その先を言う勇気は出せない彼女は家に向かって走り去っていく。
ポカンとした表情を浮かべていたのだが、車のタイヤの異変に気が付く。
「……ダーリン」
今の今まで黙っていたクリスの恐ろしい嫉妬が込められた低い声が聞こえてくる。
それと同時にタイヤが雷の発光現象を伴っていくのだ。
「ク…クリス……!?」
「ダーリンの…バァカーーーーーッッ!!!」
車内に目掛けて嫉妬の放電現象が迸った事で運転手は感電してしまう。
「アバババババーーーッッ!!?」
運転席側の扉が開き、黒焦げとなった尚紀が車外に向けて倒れ込む。
黒のトレンチコート内に入れていた買ったばかりのスマホもおじゃんであろう。
「ダーリンのバカ!!浮気者!!女たらし!!アタシの事も遊びだったんでしょー!!?」
「ち…違う…!!何を誤解してるんだよ…クリス!?」
「もうダーリンなんて知らない!!アタシは他の男を求めて旅立つからーっ!!」
捜査機材などを載せたクリスが勝手に発進してしまう。
「待ってくれ、クリスーッ!?お前がいないと俺の生活が成り立たないんだよーっ!!」
彼の叫びも空しく、クリスに置き去りにされてしまう。
秋の冷たい夜風に吹かれながらも這い這いの姿でクリスを追いかけていく哀れな男。
女性を傷つける事は結果として自分を傷つける事にも繋がるのであった。
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大正二十年とは和の文化に刺激的な洋の文化が流入した事で急速に発展した時代。
悪魔と呼ばれる異形の者達が帝都を脅かしつつあった時代でもあったのだろう。
悪魔召喚師として十四代目葛 葉ライドウを襲名した男は葛葉の里にいる。
そこは葛葉一族の御神木を祭る巨大社。
社の神域奥の大広間には葛葉一族を見守ってきた巨大三本松が屹立している。
三本松の下側は拝殿の作りをしており、大きな篝火が暗い社内を照らす。
拝殿の前では黒い学生服と学生帽を纏う人物が正座しているようだ。
<<満点に輝く日輪は、大地に暗い影を落す>>
老人の声が神域内に響く。
まるで葛葉御神木である三本松から響いてくるかのようだ。
<<そは天の理、大地の法…>>
静かに清聴している書生姿の少年の前には刀と銃と召喚管が置かれる。
それに黒い外套が畳まれているようだ。
<<同じ定めとして、人ある所に闇生まれん。その闇を討つ為に、我らが在る>>
瞑想したかのように目を瞑る書生は微動だにせず清聴している。
<<新たな召喚士を目指す者よ。先ずは汝の名を告げるがよい>>
書生の目がカっと開かれ、自らの名を口にする。
地面に置かれた刀と銃と召喚管を学生服の上から纏う白いベストやガンベルトに身に着ける。
畳まれた黒い外套を手に持ちながら立ち上がり、纏った重装備を隠すように上から纏う。
踵を返した彼は三本松から与えられたデビルサマナーの試練に向かうために進んでいく。
後に14代目葛葉ライドウの名を襲名した少年は帝都に向かう事になるだろう。
その者は人修羅と同じく探偵職に就き、学生生活も行う仮初の人生を生きるようになる。
しかしその者の本当の姿とは、悪魔召喚士であるデビルサマナー。
超國家機関ヤタガラスに席を置く退魔師なのだ。
21世紀に生きる者達にとっては大昔の出来事であるが、彼は多くの伝説を残す者となる。
その伝説が始まった最初の事件こそが超力兵団事件であろう。
帝都を脅かす異形の存在、怪人赤マント達。
ライドウが席を置く探偵社に現れた謎の少女。
謎の少女の家に根ずく奇怪な伝承の謎。
事件の背後に潜む怪しげな影の存在と国軍である陸軍の暗躍。
行く手を阻む数々の怪異を仲魔を駆使して切り抜けるライドウ。
その事件は国家を揺るがすことになる真相へと迫っていくのだ。
栄えある葛葉四天王の名を継いだ書生は葛葉の使命を果たすために行く。
そしてヤタガラスの使命を果たすために戦い抜く者となるだろう。
その者は旅の途中、葛葉の里から付き合いをしてきた仲魔ともいえる黒猫を失うだろう。
悲しみさえも踏み躙るようにして帝都に現れるのは超力超神の如き機械の神。
恐ろしき魔の手を打ち祓い、帝都を救う事になった葛葉ライドウ。
だが決着の場となったのは幾多の分岐世界へと進む事が出来るというアカラナ回廊である。
ライドウは時間渡航者として回廊を駆け抜ける。
その先の分岐未来の果てに生まれてしまったという、世界が崩壊してしまった世界へ向かう。
その世界で葛葉ライドウの名を継いだ者との決着を迎える事になるだろう。
機械の神との再戦さえも乗り越え、今ここに14代目葛葉ライドウの伝説を築き上げるのだ。
戦いに勝利したところで、失った悲しみは癒えることはなかったろう。
そしてこの未来はライドウが望む未来などではなかったのは言うまでもない。
このような崩壊世界の未来を築き上げまいと心に誓い、大正時代に戻るために回廊を歩く。
ふと彼はアカラナ回廊の中で蠢く可能性の世界の一つへと目を向ける。
その世界を表す時空の砂時計が見せるのは時空の歪み。
その光景の先に見えたのは21世紀の日本であろう。
「おや、時間渡航者として…まだ長居をしているのですか?」
「……自分は」
「この可能性世界が気になるようですね?」
「…………」
「悪魔として言えることは、人の一生など花のように儚く、短いということ」
「…………」
「後悔する生き方だけはやめておきなさい。たとえ秩序の守護を担う者でも、貴方は人間だ」
「……許されない」
「貴方は何者なのか…言ってみなさい」
「…自分は、葛葉ライドウの名を継いだ者。デビルサマナーとして…世界の安寧を守る者」
「分かっているのならば、行きなさい」
「なぜ?」
「世界の安寧とは、自分だけの世界を守るということですかな?」
「……違う。自分の戦いによって、壊れた未来の世界さえも救うことだ」
「時空の歪みに現れた世界は1人の悪魔と、大魔王の顕現によって…先程の未来と同じになる」
「…………」
「貴方は先ほど…何を誓ったのです?」
「……あのような未来になど、決してさせない」
「その誓いの言葉は…この世界の未来にも言えることなのでは?」
「……その通りだ」
「このアカラナ回廊は幾多の時間が連なる領域。アマラの地図でもあるアマラ経絡と対をなす」
「並行宇宙に干渉出来るのか?」
「その干渉によって、世界の流れそのものを変える事さえも出来ますでしょう」
それを聞いたライドウの右手が強く握り締められていく。
「ヤタガラス任務とて時間の流れを過去に向けて辿れば…この世界に干渉した事も分からない」
「……自分は、行っていいのか?」
「人生は一度しかありません。悔いのないように生きなさい、14代目葛葉ライドウ…いや…」
――人々を守りし、デビルサマナーよ。
悪魔の言葉によって決意を与えられる。
意を決した葛葉ライドウは時空の歪みに向けて歩みを進めていく。
その姿は時空の歪みに飲み込まれていきながら消え去ったようだ。
彼を違う時間軸世界に流し込んだ悪魔は溜息をつきながらこう語ってくる。
「閣下…この世界の未来に何を望まれます?この書生を送り込む事に何の価値があるのです?」
概念存在である悪魔とて並行世界の異物が混じり込んでしまった世界の未来を視通すのは困難。
因果律は乱れ、その乱れた世界が再び定まっていくタイムラインの変動を視るのは至難の業だ。
「この世界に新たなる千年王国を築くのが我らの悲願…それを邪魔しかねない輩を招くなど…」
――任務とはいえ…不快極まりませんでしたぞ、閣下。
読んで頂き、有難うございます。