人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
8月も過ぎていき後半に差し掛かった頃。
この時期の尚紀は神浜港のマフィア騒ぎを終えて引っ越し作業で忙しい時期である。
そんな頃のアリナはどのように過ごしていたのだろうか?
「ハァ…バットな気分。やっぱりフールガールはフールガールなワケ」
何やらブツブツ言いながら学校から下校する姿が見える。
どうやら今年もハロウィンが近づいたことでイベント企画の相談を持ち掛けられたようだ。
「アリナは季節イベント参加には興味ないんですケド」
美術室で相談されるのに辟易したのか今日は絵も描かずに帰宅中である。
「アリナが求めるハロウィンの形は…きっとフールガールは拒絶するんですケド」
彼女が求めるのはハロウィンのルーツ。
その形を妄想しながら家路についていたのだが怪しい存在を見かけたようだ。
「……誰?」
アリナの家の前には黒人神父が立っており、彼女に気が付いた神父が近づいてくる。
「貴女ハ…アリナ・グレイさんですカ?」
にこやかに笑顔を向けてくるがアリナは警戒心を示す。
魔獣とは違う魔力を感じさせ、額の左側に赤い星のタトゥーを刻むサングラス神父の姿。
どう見ても怪しい不審者だから無理もないだろう。
「……アナタ誰?アリナのファン?」
「フフッ…えエ、私は貴女の大ファンでス。アナタのアートは実二…美しイ」
「サインを描いてあげる気分じゃないワケ。出直してきて欲しいんですケド」
無視するように横をすり抜け様とするが背後から声をかけてくる。
「死と再生…それが貴女の美のテーマ。我々の団体ハ…死と再生を追い求める集団でス」
それを聞いたアリナの足が立ち止まり、黒人神父に振り返る。
「申し遅れましタ。私の名はシド・デイビス…アメリカで悪魔教会の神父を務める者でス」
「悪魔教会?どうやらサインを求めに来た奴じゃなくて…宗教勧誘だったみたいなんですケド」
「死と再生による転生を求メ、表現すル。それはまさに宗教画家達と同じでス」
「そんなアリナに…アナタ達の宗教に入れって言いたいワケ?冗談じゃないんですケド」
「話を聞くだけでもどうですカ?」
「しつこい男は…」
「アナタは死と再生を極めたイ…違いますカ?」
そう言われたアリナは押し黙ってしまい、脈があると判断したシドが続けていく。
「我々ハ、貴女の美の手助けが出来ル。貴女はそれを利用して利益とすル」
「…悪い関係にはならないって言いたいワケ?」
「お互いにwin-winの関係を築けると私は考えまス。今日のお時間が難しいなら出直しまス」
片手を口に当て考え込むが、決断を下したのかシドに向き直る。
「…手短に済ませてヨネ」
「でハ、こちらにどうゾ」
停めてあった車の後部座席に2人は乗り込み、運転手が扉を閉めて運転席に移動していく。
車が発進して直ぐアリナは横のシドに振り向くのだ。
「遠い場所は勘弁してヨネ。アリナはホームでアートを作る予定もあるカラ」
「そうですカ。郊外にある料亭の個室を用意してましたガ…そうですネェ」
少し考え込むシドであったが栄区の繁華街を窓から見ていたらいい場所を思いついたようだ。
「でハ、あそこにしましょう」
車を停め、降りてきた運転手が後部座席の扉を開ける。
地面に降り立ったアリナが見た施設とはカラオケボックスのようだ。
「ウェイト…アリナとカラオケがしたかったワケ?馬鹿にしてるなら…」
「ジャパンのカラオケはアメリカと違イ、個室で歌うそうでス。内密の話をするのに丁度いイ」
「近場で手ごろなのはここしかないワケ…?こんな場所に入るのアリナ初めてなんですケド…」
「でハ、郊外の料亭に行きますカ?」
「……ここでいい」
2人は店内に入り、ついてきた運転手が受付を済ませる。
店員に案内された部屋に入った後、付き添いの運転手は扉を閉めて門番を務めるのだ。
「それで?アナタ達の宗教団体ってのは?」
「正確に言えバ、我々の団体は非公開団体。友愛結社を生業とすル…秘密結社でス」
アリナの脳裏に見滝原総合病院の院長先生が語った秘密結社のイメージが浮かぶ。
「我々の団体名ハ…フリーメイソンリーでス。私はその中の秘密サロンに所属していまス」
「その秘密結社名…アリナ聞いた事があるんですケド」
「先に貴女に語ったと聞いておりまス。貴女は出会ったはズ…ロッジマスターとネ」
「ロッジマスター…?あの男なのに女みたいな見た目のキモイ老人が?」
「彼がジャパンロッジのグランドマスターでス。世界にあるロッジには代表者がいるのでス」
「…あの老人が言ってた。アナタ達はデス&リバースを求めているって」
「フリーメイソンそのものが求めているのではなイ。内部のイルミナティ思想がそれを求めル」
「内部のイルミナティ?フリーメイソンが団体名じゃなかったワケ?」
「フリーメイソンはイルミナティを必要として受け入れタ…両者は一つの組織でス」
「…イルミナティってなんなワケ?」
それを問われたシドは詳しい経緯を語ってくれる。
イルミナティの正式名称は
創始者はアダム・ヴァイスハウプトであるが、ルーツは古く創始者は別にいる。
イルミナティはイエズス会から分派した存在であり、イグナチオ・デ・ロヨラが創始者となる。
イエズス会の初代総長を務めたその者がイルミナティ会を組織したのがルーツであったようだ。
しかしイエズス会を生み出す前にイルミナティ会を生み出した時、スペイン当局に逮捕される。
啓明結社誕生が頓挫してしまうのだが、その後を継いだのがアダム・ヴァイスハウプトなのだ。
彼はイルミナティを強くするために友愛結社フリーメイソンを利用することとなっていく。
イグナチオとアダム、この二名が掲げた政治思想こそがイルミナティ誕生のキッカケだった。
「イルミナティの理想理念とは人間の力で意識や人格、霊格を高メ、高い霊性を目指すのでス」
この思想が多くの人々から支持されたことでイルミナティはフリーメイソン内部で急速に発展。
自由と平等は誰もが享受出来ると説き、理想社会を語ったのだ。
その理想を実行した歴史こそが自由・平等・博愛を掲げたフランス革命であった。
「人はそれぞれが強き王となるべキ。それこそが現在の個人主義、自由民主主義理念となっタ」
「人は誰にも従わず…それぞれが強き王となるべき…」
「そのために実行する事とは
あらゆる概念を破壊して世界を一つの共和国とする。
それは世界のワンワールド化であり、共産党が掲げてきた世界政府の樹立なのだ。
「…アダム・ヴァイスハウプトってヤツ、狂ってない?どれだけのデスがばら撒かれるワケ?」
「人々は神にかしずくのを辞メ、
「ワールドを変革するためにオールドワールドを殺してニューリバースを生み出す…?」
「イグザクトリー。我々は世界に死と再生をもたらしたイ…そのためなら我々は喜んで死のウ」
死と再生を超え、世界を理想世界に変えるための人材として生まれ変わる。
それこそがイルミナティ・メイソンメンバー達なのだとシドは語ってくれるのだ。
恐ろしい理想を語られたアリナは体を震わせているが、恐ろしいからではない。
「誰にもかしずかない者達がワールドをブレイクしてビューティフルパワーだけが残される…」
――ビューティフルソルジャーだけのアイディアルワールド……ミレニアム・キングダム!
決断を下したのか彼女は立ち上がり、シドの目を真剣に見つめてくる。
「アリナ……アナタ達の宗教に入ってあげてもいいんですケド」
その言葉が聞けたシドは不敵な笑みを浮かべた後に立ち上がる。
「口で言うのは容易いでス。覚悟はあるのですカ?」
「アリナを疑ってるワケ?」
「二度と帰る事が出来ない世界に旅立つ事になりますガ…よろしいのですカ?」
「しつこいんですケド」
「人間の少女として生きた貴女の人生全てガ…死ぬことになったとしてもですカ?」
その言葉の意味を知ることになるのは奈落に身を投げてからになるだろう。
だが彼女は己の死を恐れなかった。
「アリナが求めるのはデス&リバース…強いアリナへと生まれ変われるなら本望なんですケド」
彼女の言葉に覚悟を感じたシドはその選択を尊重したのか笑顔のまま手を伸ばしてくる。
「貴女は自由な選択をしましタ。そしテ、自由であるからこその責任を背負う覚悟も語っタ」
アリナも手を伸ばして固い握手を交わすのだが、シドが最初の指導を行ってくれる。
「親指を相手の指の付け根辺りに当てて下さイ」
「どういう意味なワケ?」
「フリーメイソンには独特なハンドサインが幾つかありまス。我々の仲間だと示すためにネ」
「秘密のサインってワケ?秘密結社らしいんですケド」
言われた通りの握手の形にした後、再び握手を交わし合う。
彼女のための参入儀礼の予定を語り終えたシドがカラオケボックスから出てくる。
アリナを車に再び乗せた後、丁重に家まで送ったようだ。
後部座席から出て来たアリナに向けて窓を開けたシドは最後の言葉を送ってくる。
「貴女のために用意する参入儀礼は2つありまス」
「2つ?」
「フリーメイソン加入儀礼だけではないのでス。それよりも上の次元に辿り着いて欲しイ」
「それがフリーメイソンの奥の院と言われるイルミナティゲートってワケ?」
「大変な名誉でス。イルミナティの門を潜れるのはグランドマスター位階の者達のみでス」
「どうしてそこまでアリナを高く評価してるワケ…?有名アーティスだから…?」
彼女の疑問に対して不敵な笑みを浮かべたシドが右手をかざす。
そのハンドサインとは人差し指と小指を二本角に見立てて立てるハンドサイン。
サタンの指サインと呼ばれるコルナサインだったのだ。
「全ては我らの神の御心のまま二」
車が発進していくのだが、黙り込んでいた運転手が何かを言いたそうにして口を開く。
「私は信じられません…女であるあの娘をなぜ女人禁制のメイソンに加入させるのです…?」
「確かにメイソンは女性を原則入れませんガ、彼女は魔法少女として秘匿社会を生きた者でス」
「他の女共と違ってお喋りではないと仰られるのですか?」
「秘密結社は秘密を守れない者を見定める必要がありますガ、私から見て信頼出来まス」
「それは…彼女が求めるアートとイルミナティが求める理想が同一だからですか…?」
「我々は互いに利益関係を生み出せル。利益関係が続く間ならば問題なイ」
「では、彼女に与える死と再生とは…
サングラスを指で押し上げるシドが不気味な笑みを浮かべ始める。
「これからの彼女…いヤ、彼は名誉男性として扱われることになるでしょウ」
「フランス大東社ロッジと同じく女を受け入れることもまた平等であり博愛というわけですか」
「クックッ…平等の名の元二、彼は破壊者に変わっていくのですヨ」
今後のアリナを奈落の底に導く者となるシドは堪えきれずに笑いながら帰路についていった。
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次の週の週末。
アリナが訪れていたのは東京タワーの近くにあるフリーメイソン日本ロッジである。
迎えの運転手が後部座席を開け、彼女は地面に立った後に施設を見上げるのだ。
「今日は特別な日です。貴方のために世界の著名人として名高いメイソン達が集結しましたよ」
「そんな連中にアリナは興味ないんですケド」
ロッジ内に入ったアリナを出迎えたのは今日の礼服を用意してもらった仕立て人の女である。
「英語の試験もちゃんと出来たようですね?意外と教養が高い人だと分かって安心しました」
「…アリナの力なのかは分からない。水名神社に行った日からアリナは頭が良くなってる…」
それを聞いた仕立て人の女性は笑みを浮かべてくる。
「今日をもって貴方は生まれ変わり、世界の王族や財界の重鎮達と同列の席に座るんですよ」
「それよりあの宣契文ってさぁ…メモとか用意出来ないワケ?覚え辛かったんですケド」
「出来ません。宣契の言葉はメモを用意することなく宣言しなければならない契約です」
「まぁいいんですケド…。アリナの儀式正装は出来てるワケ?」
「勿論です、こちらにどうぞ」
個室に入った後、アリナは仕立て人に用意してもらえた礼装を身に着けていく。
「…なんで女のアリナが男のタキシードなんて着ないとならないワケ?」
大きな鏡の前に立つのは男装の麗人を思わせる姿となったアリナである。
長い後ろ髪は括られており、傍から見れば美少年に見えなくもないだろう。
「フリーメイソンは本来、女性は入会出来ません」
「ならなんで女のアリナを勧誘しにきたワケ?」
「今日この日より貴女は生まれ変わる。女であった貴女は死に、男として生まれ変わるのです」
「……これからのアリナに男として生きろってワケ?冗談キツイんですケド」
「貴方は死と再生による生まれ変わりを望んだはずです。今更後には引けませんよ?」
厳しい表情を向けてくる仕立て人の女性を見たアリナの表情が変わっていく。
「…そうだったワケ。口から出した以上は…アリナは逃げないカラ」
「その意気です。ではタキシードの上から纏うお召し物を纏ってください」
タキシードの上から纏ったのは儀式正装である子羊の皮で作った刺繍エプロンの前掛け。
元石工組合であったフリーメイソンは作業着として使ってきたエプロンを礼服にする。
また子羊は潔白と純粋の象徴するものとして扱われておりキリスト教ではキリストを表す。
エプロンは役職を示すものであり基本階級の徒弟・職人・親方という序列が生まれるのだ。
フリーメイソン組織は他にも階級制度があり、スコティッシュライト式では33階級。
ヨークライト式では13階級と言う風に各国メイソン組織によって階級制度も変わってくる。
アリナが身に纏った前掛けエプロンは入門者である徒弟を表していたのだ。
それ以外にもコンパス三角を模した装飾タイネックレスに胸には徽章となる装飾バッジがある。
「このバッジ…ドラゴン?それも二つに首が分かれた…?」
フランス大東者ロッジの33位階グランドマスターの双頭の鷲バッジとよく似ているデザイン。
しかしこんなバッジは正規のものではないのだがアリナのために誰かが用意したのだろう。
「そのバッジは我らの神が貴方に贈る品。今までのメイソンバッジではないオリジナルです」
「我らのゴッド?どういう意味なワケ…?なんでアリナがゴッドに気に入られて…」
「そのバッジは啓蒙の神の威光そのもの。それを身に着けた者を他のメイソンは否定出来ない」
「…なんだか期待され過ぎな気がしてならないんですケド」
「ええ、異常過ぎる程の期待です。普通の人間なら耐えきれずに自殺してしまう程のね」
異常な程の高待遇を前にした彼女も流石に顔を青くしてしまう。
「貴方を推薦した御二人、それこそが我らの神である御方達なのだと肝に銘じなさいね」
不敵な笑みを浮かべた仕立て人の女を見ていたアリナであるが、ようやく正体に気が付く。
「アナタ…アリナの夢の中に現れたヤツでしょ?」
「フフッ、私は貴方の導き手よ。でも、この地獄の道を進みきれるかどうかはあなた次第ね」
着替え終えた彼女は廊下を進み、秘密の儀式の間に入る。
そこで待っていたのはアリナと同じ衣装を纏う世界中のメイソン達なのだ。
しかし彼らはアリナを歓迎する言葉を出すどころか無言のまま睨んでくる。
周りの人々が彼女に向ける視線に込められた感情とは明らかなる敵意なのだ。
(女人禁制の我らの結社に…女を入れろというのか?)
(名誉男性として生まれ変わるというけれど信用出来ないな)
(それに見ろ、彼女は成人すらしていない子供ではないか?)
(女はお喋りな生き物。秘密をべらべら喋るような存在をどうして我らが受け入れられる…)
憎しみの声が響く空間であるが、その中の1人が彼女の胸につけられたバッジを見て戦慄する。
「あ……あれは
「2人の啓蒙の神を表し…ローマ帝国と皇帝を表す印!?」
「エンキ神の紋章とも呼べる代物を…どうしてあんな小娘が!?まるで女神イナンナ神話だ!」
「我らの神ルシファー様とサタン様を表す紋章だと聞かされたが…」
「それでは…あの小娘はルシファー様とサタン様が認めた存在だとでも言うのか!?」
どよめきに包まれる空間を埋める人々の反応など興味無さそうにして周囲を観察していく。
「ブルー…天井から床までブルー色ばっか…」
床はモザイク模様のじゅうたんであり、天井はドーム型で星空が描かれている。
ブルーロッジと呼ばれる空間の中央にアリナは視線を向けてみる。
「四角い石台の祭壇と…三つの角にろうそく立てが3本…ピラミッド?」
コンパスと定規、神を表すGが描かれたフリーメイソン紋章が描かれた祭壇の奥に目を向ける。
「G…ゴッド…それに元建築集団だから…ジオメトリー(幾何学)なワケ?」
建築学は数学と科学の産物。
メイソン達は自己の建築技術を通して神と科学の融合を目指す意味が込められていたようだ。
「あの祭壇に置かれたバイブルみたいな分厚いブックに片手を置いて宣契しろってワケね」
3段高くなった壇の中央には一際大きく威厳のある椅子と机が鎮座している。
机の前には二つの石が置かれており、左は原石、右はそれを加工して綺麗にしたものだ。
原石は人間の荒々しさを表すものであり、加工した石はメイソンに生まれ変わった証である。
「どうやらあの二つのストーン…アリナを削り取るって意味なワケね」
もう直ぐ儀式の時間も迫っており、周囲の人々も静まりかえっていく。
周囲に視線を向けていた時、テレビで見たことがある存在を見つけたようだ。
「アイツらって……この国の総理大臣に、内閣の大臣連中…?」
空間の外側に並べられた椅子に座っていた人物達とは八重樫総理と西大臣と門倉大臣である。
アリナと目が合った3人は笑みを浮かべながら頷いてくれる。
周囲に座る人々に目を向ければ世界中の王家・権力者・大金持ちの面々が連なっているのだ。
「アリナは今日、生まれ変わる…。そしたら、この連中と同列となるワケね」
最後に中央祭壇奥の椅子に座る人物にも目を向ける。
日本ロッジの代表を務めるのは彼女を診察した見滝原総合病院の院長先生であった。
「準備をしてきなさい。そろそろ儀式の時間だよ」
踵を返したアリナは儀式の間を後にする。
フリーメイソンロッジ内で起こる儀式、それはロッジ内だけで完結して表には出てこない。
儀式はグランドマスターの進行の元に行われるもの。
偉大な建築家の死を追体験するような寸劇と宣契の誓いによってアリナは生まれ変わる。
フリーメイソンという友愛団体の輪に入った彼女は今までの自分を殺す事になるのであった。
……………。
秘密の儀式が終わった後、彼女はロッジ内の個室に案内される。
「お疲れ様。これで貴方は男となり、メイソンとなったわ」
出迎えてくれたのは仕立て人の女であるが、アリナは眠たそうな顔をしている。
「退屈な儀式だったんですケド」
「これで貴方は世界中の王族や財界の重鎮達が味方となることになったのよ」
「どういう意味?」
「メイソンは仲間を決して売らない。真実を語り仲間を売るぐらいなら虚偽を貫くのが掟よ」
「フン、顔も知らない連中に仲間意識を持たれても嬉しくないワケ」
「安心は出来ないわ。周りが仲間として扱う以上は…貴方も仲間を裏切ったら許されない」
「裏切ったら…どうなるワケ?」
にこやかな笑みを浮かべた後、仕立て人は右手を首に持ち上げながら水平にして首に当てる。
そしてナイフで首を掻き切るかのようにして横に滑らせるのだ。
「アインとなるわ」
「アイン…?」
「ヘブライ語で目を表し、宇宙の根源となる。プロヴィデンスの目を裏切ることは出来ないわ」
「ゴッドアイを裏切る者は…喉を掻き切られるってワケね」
溜息をつきながら不満げな表情をアリナは仕立て人に向けてくる。
「あんなカルトごっこで本当にアリナはデス&リバースを得られるワケ?」
「そうねぇ、あんな形式ばかりのお遊戯で神に仕える証を示したことになんて…ならないわね」
恐ろしい笑みを浮かべてきた女に対してアリナの顔に冷や汗が滲む。
「ねぇ…そろそろ名前ぐらい教えてくれてもいいでしょ?」
威圧感を放ちだす女に対して後ずさっていくアリナ。
仕立て人の女は夢でみた光景と同じようにして黒い霧を体から発していく。
現れたのは黒いスーツを纏い、黒いロングヘア―をオールバックにした女性の姿であった。
「私の名はリリス。貴方を死への門に誘うためにやってきた悪魔よ」
「デスゲート…?デビル……?」
言葉を言い切る前にアリナは後頭部に強い衝撃を受けてしまう。
「ガッ!!?」
倒れ込み、意識を失った彼女を見下ろすのはシド・デイビスである。
彼の後ろから黒スーツ姿の男達も現れ、アリナの頭部にズタ袋を被せて視界を奪う。
両手も拘束された彼女は男達に担ぎ出されていったのだ。
「彼がフリーメイソンの奥の院であるイルミナティに入れるかどうかを試すには儀式が必要よ」
「フリーメイソンの祭壇は本来、神に生贄を捧げたり贖罪を行イ、神と交わる場所ですネ」
「イルミナティに入ったグランドマスター達も超えた試練…それこそが神に忠誠を示す儀式」
――
サングラスを押し上げたシドは不気味な笑みを浮かべてくる。
「彼女がメイソン内部のイルミナティ・メイソンとなれるかどうかハ…見物ですネ」
「彼女が試練を超えたなら、世話を任せる存在は決めてあるわ」
「英国ロスチャイルド家の当主がジャパンに来日されてるそうですガ…まさかあの御方ガ?」
「イルミナティの司令塔一族の庇護の元、彼女は我々の計画を担う駒となるわ」
「そしテ、悪魔崇拝者として生まれ変わった彼ヲ…ダークサマナーにすル」
「その任務は貴方に託すわね」
「承知しておりまス」
「でも、それはあくまで前戯に過ぎない。彼は…いいえ、女性であるあの子はいずれ…」
――暁の金星となるのよ。
────────────────────────────────
シュメール語で書かれた神話の中には金星の女神イナンナの冥界下りがある。
イナンナ、あるいはイシュタルは天と地を統べる古き女神。
女性の力がとても強かった時代において男神と女神との区別はなかった。
イナンナは天も地も統治しているが死者の国である冥界、あるいは地獄を統治していない。
ある日、イナンナは冥界に心を向け持てるものを全て捨てたのだ。
代わりに7つの神力を身につけて冥界に向かった。
冥界には冥界の女王であるイナンナの姉エレシュキガルがいる。
イナンナは自身の領土拡大のために冥界を支配しようと思い立ち、野望のまま冥界へ下る。
エレシュキガルは怒り、冥界の掟に従いイナンナが7つの門を潜るたびに身ぐるみを剥がした。
全裸となったイナンナを捕えたエレシュキガルはイナンナに死の眼差しを向けて殺害。
その死骸を鉤に吊るしたのであった。
……………。
「ぐっ…うぅ……!!」
首を絞首刑用の縄で締め付けられているアリナは息がし辛くなっている。
頭部はズタ袋で視界を覆われており、ここが何処なのかも分からない。
両腕は鉤に吊り下げられているかのように縛られ、身動きできないのだ。
彼女は衣服を全て剥ぎ取られており、全裸にされていることに気が付いてしまう。
左手の中指にあるはずのソウルジェム指輪の感触もなかったのだ。
「どういうワケ!?アリナにこんな仕打ちをするためにカルト入りさせたの!!」
叫び声は空間に響き渡る。
この場所は音が響く屋内空間だというのは分かるが、まるで洞窟内のような寒さ。
篝火が燃え上る音が響く中、誰かが近づいてくる気配を感じる。
階段を上ってくるような音が近づき、彼女の前に誰かが立つ。
「ようやくお目覚めかしら?」
何者かが彼女のズタ袋を外してくれる。
「その声は……アリナを診察したドクター!?」
顔を真っ赤にして激怒する彼女の目の前に立っているのは見滝原総合病院の院長先生である。
彼が纏っているのはまるで子供達の血で赤く染められたかのようなウィザードローブ。
フードの奥に見えるその顔を見た時、彼女は酷い嫌悪を感じてしまう。
あろうことか男なのに女のような厚化粧、そして女のような話し方をしてくるのだ。
「アナタ…トラニーチェイサーの変態だったワケ!?アリナを離せ!!」
変態異性装者に唾を吐きかけるが、頬に当たった唾を舌で舐めた変態は邪悪な笑みを浮かべる。
「解放してあげるわ。そしてこれから貴方が行うのは真の試練よ」
彼女の首にかけた縄を外し、鉤に吊り下げられた両腕を外してくれる。
「両腕を縛った縄もほどくワケ!!」
「必要ない。両手が開けば肉の塊を投げ飛ばすことぐらいは出来る」
「ミートの塊…?投げる…?」
「それより周りを見てみなさい。新たなる悪魔崇拝者誕生を祝いに来た信徒達が待ってるわ」
全裸であるため股座の女性器を両手で隠しながら周囲を伺う。
グランドマスターと同じく赤いウィザードコートを纏うのは無数のカルト信者達である。
中にはシンバルやトランペット、太鼓などを持った演奏隊信者の姿も見えたようだ。
「ここは何処なワケ…?洞窟……?」
何処かも分からない地底世界の洞窟こそ、地獄や冥界を表す領域である。
「アレは……あの大きな像は……?」
信者達の奥に見えるのは太陽とプロヴィデンスの目が描かれた旗の中央に佇む巨大な像。
その姿はかつての世界であるボルテクス界に現れた牛頭天王そのものだった。
「あの像の下にある薄いカーテンで囲まれた玉座は……?」
「もうすぐあそこに我らの神である御二方が降臨される。そのための儀式をするのよ」
「儀式?カルトの儀式はもう終わったワケ!」
「あれはフリーメイソン入会儀式。これより行うのはフリーメイソンの奥の院に入る儀式よ」
「カルトの…奥の院…?」
「イルミナティ・メイソンになれるかどうかの覚悟を人身供犠をもって証明しなさい」
指差す先に見えたのは玉座の手前にある広々とした中央空間で燃え盛る恐ろしい拷問器具。
「あれって…ファラリスの雄牛…?」
ファラリスの雄牛とはバビロンの流れを組む古代ギリシャで開発された処刑道具。
真鍮で鋳造され中が空洞の雄牛の像であり、胴体には人間を中に入れるための扉がついている。
受刑者となったものは雄牛の中に閉じ込められ、牛の腹の下で火が焚かれる。
真鍮は黄金色になるまで熱せられ、中の人間を炙り殺すのだ。
「こ…こんな話聞いてなかったんですケド!!アリナをホームに返して!!」
「断る!!貴方は既に我らのブラザーと宣言した…裏切るというのなら今直ぐ首を跳ねるわ!」
腰に携えた儀式剣を抜き、アリナの首に先端を向けてくる。
背後で佇んでいた信者達も儀式剣を抜き、彼女は剣の先端に囲まれてしまうのだ。
「貴方にはまだ人間性という角が無数に残っている。我々がそれを研磨してあげるわ」
「それがあの儀式の時に見かけた…ストーン原石と研磨されたストーンの正体なワケ!?」
「恐れるな…天才アーティスト。貴方もまた偉大なる建築家と同じく創造を司る者なのよ」
「それがどうしたっていうワケ!!」
「建築はあらゆる分野の技術に精通する必要がある王者の技術。社会的地位が約束された存在」
「だから…アナタ達の建築ギルドには王権や財界の重鎮共が並び立つワケ!?」
「貴方が大好きなダ・ヴィンチだって建築家であり芸術家。貴方もそうあるべきなのよ」
「アリナもダ・ヴィンチのように…アーティストだけでなくアーキテクトになる…?」
「我らは皆、心の中に神殿を築き上げる建築家。その神殿に佇むのは啓蒙の神よ」
グランドマスターが剣の先端を下ろすのに合わせて周囲の信者も剣を鞘に納めてくれる。
「ついてきなさい。逃げ出す事は不可能なのは魔法少女なら分かるわよね?」
「…アリナのソウルジェムは何処にあるワケ?」
「さぁ?分からないまま逃げ出せば…貴方の外側の器はたちまち死んでしまうわよ?」
「アリナに…選択の余地はないってワケね…」
全裸のまま儀式を行う場へと連行されていく。
まるで冥界に行くために衣服を全て剥ぎ取られたイナンナを彷彿とさせる光景だろう。
黄金色になるまで加熱されたファラリスの雄牛の前にまで連行されたアリナは魔力を感じとる。
玉座の横側に黒い霧が現れ、中から歩いて出て来たのはリリスなのだ。
それに合わせるかのようにして洞窟の入り口から場内に飛びいってきたのは梟である。
梟は片腕を水平にしたリリスの腕に留まり、跪いた信者達を見下ろす姿を見せた。
「世界を監視する啓蒙の梟達よ、今日はよくぞ集まってくれたわ」
<<ははーっ!!>>
平伏して神を崇める姿を見せていくカルト信者達に向けてリリスは宣言する。
「皆の者、啓蒙の光は来たれり!!偉大な王は来たれり!!」
叫びと同時に篝火がまるでゲヘナの如き炎の柱と化していく。
「あ……あぁ……」
あまりにも恐ろしい魔力、そして神々しい霊圧が洞窟内を満たしていく。
魔法少女ならたちまち恐怖に飲まれ、心が弱い者なら気絶するだろう。
洞窟内の天井部分から光が溢れ出す。
玉座のカーテンの内側に見えてくるのは2人のシルエット。
1人は高身長をした男性を思わせる人物。
もう1人は隣の人物よりも大きく、頭部の影は牛の頭部を思わせるシルエット。
<<ルシファー様ばんざいッッ!!!>>
<<バアル様ばんざいッッ!!!>>
<<サタン様ばんざいッッ!!!>>
信者達が熱狂の声を上げる中、アリナは震えながらカーテンで仕切られた玉座を見るばかり。
2人のシルエットの両目部分が悪魔を表す真紅の光を浮かべた時、恐ろしい要求を伝えてくる。
「……捧げよ」
「……我らに覚悟を示せ」
神のオーダーを聞かされた信者達が儀式の準備を始めていく。
怯えるばかりで何をされるかも想像出来ないアリナの姿はか弱い少女そのものだ。
不意に聞こえてきたのは信者の1人が持ち運んできた新生児の赤ちゃんの泣き声である。
「そ…そのベビーは……?」
「我らの神に供物となる生贄を捧げよ」
玉座の影が要求したのは神に捧げる生贄儀式である。
もはや言葉も出ない程の異常光景の中で行われようとしているのは明らかなる殺人儀式。
しかも生まれたばかりの赤ん坊を目の前の拷問道具で焼き殺せというのだ。
「オギャーーー!!!オギャーーーッッ!!!!」
死と再生にアリナは憧れてきた。
死を美しいと言ってきた。
それらに触れようとあらゆるモノを追い求めた。
だがこれは明らかに一線を越えている。
人間としての最後の一線を超えようとしているのだ。
「あ……あぁ……」
彼女の中に残された人間性が弱さをもたらしてしまう。
震えるばかりの彼女の肩を掴むのは異常性癖を体現するグランドマスターである。
「怖がることはないわ。我らが行う儀式とは
「ハロウィン……パーティ……?」
「そう、楽しいハロウィン。貴方の後輩が大好きなハロウィンイベントね」
「フールガールのことを……どうして知ってるワケ……?」
「ハロウィンのルーツは知っているかしら?」
「たしか…ドルイド教のパーティ……?」
「古代ケルト人が行っていたサウィン祭やサムハイン祭が起源。その中身はバアル神崇拝よ」
「ジャパンの牛頭天王だけでなく…ケルトでもバアルは崇拝されていたワケ…?」
「ハロウィンのお祭りには牛と炎が欠かせないわ。炎の中に生贄を投げ捨てるお祭りね」
「それが…チャイルドの生贄…?」
「じわじわと生贄を殺すのがドルイドの儀式であり、その源流は中東のモロク神崇拝よ」
玉座に座る牛の頭部をした存在に目を向けた時、現れた神が何者かを理解するだろう。
「これは大変な栄誉よ。バアル神様であらせられるモロク様が直々に貴方の覚悟を試されるわ」
「アリナは……アリナは……」
真っ青な顔つきで泣き喚く赤子を見つめることしかアリナは出来ない。
「モロク様を模した巨大ウィッカーマンを用意は出来ないけどこの黄金に輝く牛もモロク様よ」
「アリナの信仰心を試すために……一線を越えろってワケ……」
「貴方は人殺しとなり加害者となり、我らと同じく人々から呪われる者として生まれ変わるわ」
アリナは赤子を抱くカルト信者から赤子を渡される。
抱える両手は震え抜き、幼い命の温もりが彼女の心を弱くする。
演奏隊は楽器を構えながら生贄が処刑道具に放り込まれるのを待ち構えるのだ。
「アリナが……人殺しをする……」
アリナの美を求めて生み出してきた禍々しいアートの数々を生み出した人生。
それでもその人生の中で人間を殺したことなど一度もない。
そこまで踏み越えられなかったのは人間の心が邪魔をする弱さがあったからだった。
「我らの神に見せなさい…反キリスト行為を!
「ヒッ…!!」
これを行えばもう二度と神浜魔法少女社会には戻れないし、後輩にさえ顔向けできない。
アリナ・グレイは赤子の命を奪った外道となるのだから当然だろう。
震えたまま身動きできない彼女に対して牛の頭部をした玉座のシルエットが片手を上げる。
それを合図としたカルト信者達が背信者を処刑する儀式剣を抜いていく。
心臓の音さえ遠くなっていくほどアリナの意識は狂気の世界で薄れてしまう。
現実と悪夢の境さえ分からなくなった意識の中、力強き者の声が響いてくるのだ。
<<弱い者は乱し、惑わすの。自分では何も出来ないから。貴女は違うでしょ?>>
その言葉が弱い心を破壊してくれる。
強者としての力強き鼓動を全身に感じたアリナの震えが収まるのだ。
処刑道具の前に歩み出たアリナは両手に力を込める。
<<この赤子は弱者として選ばれなかった。この子を貴女と私の美にしてあげましょうか>>
「アリナのアートには必要だった……ライフにデスを与えて生まれ変わらせるフレイムが……」
アリナのアート作品の中には
遺体の燃焼で生まれる灰を使った絵画であり新たな生命ではなくあった生命を蘇らせる作品だ。
生に対する表現のひとつを示すため、赤子の体が宙を舞う。
生贄を収める胴体が開く雄牛像の中に放り込まれた時、けたたましい叫び声が上がってしまう。
<<オギャァァァァァーーーーーーッッ!!!!!>>
豪熱で熱せられた黄金に輝く生贄炉の中で赤子は命の限り泣き叫ぶ。
その泣き叫ぶ声を掻き消すかのようにして演奏隊が演奏を始めていく。
それはまさに生贄が投げ入れられる火で熱された牛のブロンズ像の光景。
ハロウィンの起源であるドルイド教の生贄儀式であり、炎のウィッカーマンの儀式。
涙の国の君主、母親の涙と子供達の血に塗れた魔王モロク神話の完成なのだ。
アリナ・グレイは子供を殺した者となる。
もう二度と帰れない道を進むために大切だった最後の欠片である人間性を自ら剥ぎ取ったのだ。
<<貴女は覚悟を示す強さを見せた。力ある者は美しいわ>>
アリナの中に宿った力強き少女の声が消えていく中、おぞましい笑い声が木霊する。
<<ククク…ハハハ……ハハハハハハハッッ!!!>>
洞窟内に木霊するバアル神の笑い声が響き渡る。
カーテン奥の玉座に座るのは黄金になるまで熱せられた牛と同じ色の牛兜を纏う邪神なのだ。
「…汝は我の前で覚悟を示した。それでこそ我の化身となりし者の魂を宿した者だ」
牛頭神モロクは隣に座る男に視線を向ける。
隣に座っていたのは漆黒のダブルボタンスーツで正装したルシファーの姿だった。
「…彼女は使い物になるだろう。もっとも暁美ほむらと比べて、どちらかになるだろうがな」
そう言い残した後、カーテン奥の玉座に座る片方の神のシルエットは消え去ってしまう。
俯いたままのアリナの元に歩み寄るのはリリスである。
「これで貴女もバージンは卒業ね。羨ましいわ…いつだって
雄牛の中で焼かれて泣き叫ぶ赤子の断末魔はもう聞こえない。
赤子の命はバアル神に捧げられると同時にアリナの美にも捧げられたのだ。
俯いていた顔がリリスに向けられていく。
その顔には大切な人間性を絞り出すかのようにして涙が伝っていった。
「まだ貴女の中に弱さを感じる。それもいずれ研磨していくけど…最後の仕上げが残っている」
「最後の…仕上げ…?」
「冥界のエレシュキガルに代わり、このリリスが貴方に生まれ変わるための死を与えてあげる」
右手で彼女の顎を持ち上げ、瞳と瞳が見つめ合った瞬間だった。
「ぐぅっ!!?」
リリスの瞳が瞬膜化して放たれた魔法とは相手を石化させる『ぺトラアイ』である。
死の眼差しによって体の手足の末端から石化しながら死ぬ末路を与えてくれるのだ。
「貴方はここで死ぬ。でも恐れないで…死は始まりに過ぎない。新たなる貴方の道が始まるわ」
体中が石化していく死に怯えているのだろうか?
違う、彼女は狂ったような笑い声を出しながら呟いていくのだ。
「リバースの前にデスがあるリバースの前にデスがあるリバースの前にデスがある…」
狂った顔をしたまま狂気の笑い声を上げる者が盛大に発狂する最後を残す。
「フッ…アハッ…ハハハハハハハ……アッハハハハハハハハハハッッ!!!」
狂気の女神の如き表情を浮かべたまま彼女は完全に石化して死を迎えることとなるだろう。
「死を恐れない貴女こそ生まれ変われるの。貴方なら私達と同じく…神の次元に辿り着けるわ」
その時こそリリスとアリナは神話の如き繋がりとなる未来が待っているのだ。
「フルップの樹(生命の木)の下で…また会いましょうね」
玉座に座っていたモロクが立ち上がり、右手には黄金の杯を掲げるシルエットを見せる。
「新たなる悪魔崇拝者誕生に対して、バアルの祝福を与える!そして皆も祝うがいい!!」
歓声が鳴り響きながら宴の準備が始まっていく。
その宴の光景を見ることなく一時的にでも死を迎えられたアリナは幸いである。
始まった祝いの光景とは
<<イヤァァァァーーーッッ!!!助けてェェェェ!!!>>
檻に入れられて連れてこられたのは人身売買組織に売られた小学生程度の子供達。
ウィザードコートの下は何も纏っていなかったカルト信者達は全裸となりながら宴の品を貪る。
イルミナティメンバーの中には特殊性癖を抱えた権力者達が多くいるという。
その中でも代表的なのが
世間に語る事も出来ない闇を抱えた者こそ口が堅く、同じペド仲間と結束して秘密を守れる。
子供時代から勉強尽くしで成人して富を得た者達こそ闇が多いものだ。
失った子供時代を取り戻すかのようにして美しい子供を貪りたい衝動に駆られていくのだろう。
雄牛の中で丸焼きとなった赤子の肉も料理人らしき信者が調理していく。
腹が空いた信者達は持ち込まれた酒と赤子の肉で乾杯をしていく狂気の世界が生み出される。
ここはまさに、この世の地獄そのもの。
アリナはイナンナ神話をなぞるが如く冥界堕ちを果たしてしまったのだ。
神秘主義とは現実と超越的実在世界との特別な接触である。
自己という枠を突破したい欲望、ああなりたいと望むエクスタシーであり神秘的合一。
絶対者と自己との合一体験を行うことが人間を超えた絶対者との合一体験となる。
マジカルきりんが大好きな御園かりんがマジカルかりんである自分に脱我を求めるのも同じ。
アリナもまた脱我を求めるために絶対者と同じ道を行くことになるだろう。
アリナとかりん、2人の道は相反するように見えて
2人はこれからもハロウィンを心から愛していくだろう。
表のハロウィンと闇のハロウィンを愛する者としてかりんとアリナは生きるのであった。
僕の作品はハロウィンリスペクトです(メガテン脳)
だからアリナとかりんちゃんはいっぱい苦しむと思いますね(汗)