人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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138話 グッバイ・マイフレンド

気が付けば自宅のベットで目を覚ましたアリナは体を起こした後、胸に手を当てる。

 

「……生きてる」

 

アリナはあの時、リリスの魔法によって石にされて殺されている。

 

しかし石化は解けており、生命が活動している証拠である心臓の音も聞こえるようだ。

 

彼女の魂であるソウルジェムの指輪の感触も左手に感じている。

 

暗い自室の中を見回すと彼女の服が収納されたクローゼットの扉が開いている。

 

中に見えたのはフリーメイソンに入団した時に使った儀式正装であろう。

 

テーブルの上には高級なケースに収められている双頭の竜の形をした装飾バッジがある。

 

あの悪夢の光景は現実にあったと証明する品の数々から視線を外した彼女は両手を見つめる。

 

「……アリナは」

 

まだ生々しく残っている小さな命の温もり。

 

彼女はその命の灯火を業火の中へと投げ捨てた外道女に成り果てている。

 

神への供物とし、自分の美へとするために赤子の命を終わらせた記憶がフラッシュバックする。

 

「……くっ!!」

 

ベッドから飛び起きた外道は地面に脱ぎ捨てたままの学生服に袖を通して部屋から飛び出す。

 

親の静止も振り切り、彼女はガムシャラに夜の街を走って行く。

 

今の時間帯なら神浜の魔法少女達が魔獣狩りに精を出している時間帯であろう。

 

栄区の街を走り続ける彼女は何処に向かっていくのか?それは彼女自身分かっていない。

 

大東区から栄区に向けて夜空を飛ぶのはハロウィンが生んだ魔法少女であるマジカルかりん。

 

隣の上空を飛んでるのはハロウィンお供のジャック・ランタンのようだ。

 

「まったく、昨日は北から南、今日は中央に東と…忙しい事この上ないホ」

 

「私は決まった狩場を作らないの。困っている魔法少女を助けるのがマジカルかりんなの」

 

「ソロで頑張っていくのはいいけど、なんで東まで助けに行くホ?いい顔されなかったホ」

 

「わたしはこの街の東西軋轢なんて気にしないの。マジカルかりんは正義の怪盗だから」

 

「手に入れたグリーフキューブも全部渡す義賊活動…皆から心配されてないかホ?」

 

「そこは…上手くごまかしてるの。ランタン君がわたしの穢れを解決してるなんて言えないの」

 

「魔力切れの心配は悪魔の俺が解決してるホ。それでも…魔法少女として生きるのかホ?」

 

少し俯いてしまうが、顔を上げた彼女は迷いのない顔を向けてくる。

 

「うん…たとえ魔力切れの心配がなくなったとしても…わたしは正義の味方でありたいの」

 

「まぁ、いきなり魔法少女を引退します~なんて皆に言ったら、かえって怪しまれるかもホ」

 

「そういうことなの」

 

飛行物体が東地区を超えて自宅がある栄区に入った頃、何かに気が付く。

 

「あれ…?この魔力は…アリナ先輩?」

 

「あっ、お~い…かりん!?」

 

いきなり急降下した相棒を追いかけて地上に下りるランタン。

 

かりんは魔法少女姿を隠すために路地裏に着地した後、乗り物の大鎌の柄から飛び降りる。

 

「魔獣の瘴気は感じられないけど…どうかしたのかホ?」

 

「アリナ先輩の魔力をこんな場所で感じるなんて…珍しいと思って」

 

「あの怖い先輩?そいつは今の時間帯だと魔法少女活動をしてないとか言ってなかったかホ?」

 

「そうなの…いつもは皆が寝静まる時間帯で、気が向いたら活動してたぐらいだったから…」

 

「お…俺は先に家に帰るホ。見つかったら…アートのための標本にされかねんホ」

 

「そうした方がいいと思うの。わたしはアリナ先輩に挨拶してから帰るから」

 

「まったく…あの恐ろしい先輩の何処をそんなに気に入ってるのやら…分からんホ」

 

「周りの人達にはそう見えても…アリナ先輩は…本当は優しい人だから」

 

「はいはい…それじゃあ、先におさらばだホ~」

 

ランタンを見送った後、魔法少女姿を解除してから歩みを進めていく。

 

「この先はたしか…廃墟になった神浜記録博物館?」

 

音楽や映画を鑑賞出来る巨大博物館が栄区にあったようだが、今は閉館して廃墟となっている。

 

誰にも見られないよう館内に入るための扉に手を伸ばそうとすると異変に気が付く。

 

「扉のガラスが割られてるし、鍵をこじ開けたような跡が残ってるの…」

 

不安な表情をしながらレバーに手を伸ばし、扉を開けて館内に入る。

 

瓦礫が散乱した大きな廊下を進んでいくと開けた場所に出たようだ。

 

踊り場途中で左右に分かれる両階段の踊り場に座り込み、顔を俯けたままの人物がいる。

 

「……何しにきたワケ?」

 

座り込んだアリナ・グレイは顔を上げもせず声だけで侵入者を拒絶した。

 

 

「アリナ先輩…どうしてこんな場所で独りぼっちなの…?」

 

「……アナタには関係ない。アリナなんてほっといて」

 

顔を向けてくれない時は日常で何度もあったが、今の彼女は酷く落ち込んでいるように見える。

 

只事じゃない事が先輩に起きたのだと判断した事で彼女を心配する言葉を伝える。

 

「何かあったの…?わたしで良かったら相談に……」

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

 

突然罵声を上げながら立ち上がり、かりんを睨みつけるアリナ。

 

「お前にアリナの何が分かる!?後輩面してるからって…調子に乗るなぁ!!」

 

自分の苦しみは自分だけで背負えばいい。

 

自分に厳し過ぎる完璧主義者だからこそ、他人の優しさを拒絶してしまう。

 

怒鳴られて体を一瞬震わせたが、かりんは前に出て叫んでくる。

 

「何かあった事ぐらい分かるの!今のアリナ先輩は…誰が見ても苦しんでるって分かるの!!」

 

「アリナは苦しんでなんていない!!アリナはアリナの面倒ぐらい見られるワケ!!」

 

「どうしてそんなに強情なの!?訳ぐらい話してくれても損はないの!!」

 

「シャラップ!!アリナに構うな……ゲラウェイ・フォーミー!!」

 

転がっていた瓦礫を拾い上げてかりんの足元に投げつけると大きな音が響く。

 

何かに追い詰められているとかりんは察した事でアリナを猶更ほっとけなくなっていく。

 

「アリナ先輩…苦しい時は苦しいって、言ってもいいの!!」

 

「アリナが苦しんでる!?違う!!アリナは…生まれ変わったワケ!!」

 

「生まれ…変わった……?」

 

言葉の意味は分からないかりんに対し、怒りの拳が開きながら背中を向けてくる。

 

「…そんなにアリナに構いたい?ならジャスティスウーマンとして…言ってみて」

 

「正義の怪盗として…?」

 

少しだけ沈黙した後、アリナは意を決した事で例え話を語り出す。

 

「もし、自分の美を完成させるためにベビーを殺す存在がいるとしたら…」

 

――ジャスティスウーマンは…()()()()()()()()()()()()()()

 

どうしてそんな酷い例えを彼女が言い出したのか、かりんは知る術もない。

 

しかし正義の味方として言える言葉があるだろう。

 

「そんなの()()()()()()()!!マジカルかりんとして、その()()()()()()()()の!!」

 

悪者をやっつけるとかりんは言い切ってくる。

 

道徳や正義に反する存在なら無条件で悪として断罪してしまいたい心理が働いてしまう。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

これが結果論の恐ろしさであり、善悪二元論脳とも言えるだろう。

 

そんな正義馬鹿に対し、低い笑い声が響きだす。

 

「フッ…アッハハハ…ジャスティスガールが言いそうなセリフ…期待した通りだったワケ」

 

かりんに振り向きながら両手を広げて宣言する。

 

「アリナはね…ジャスティスを気取る連中が大っ嫌い」

 

その時の感情的正しさしか見ようとしない。

 

自分のやっている事を客観視しない、弊害は棚上げする。

 

「救いようのない…フールな理想主義者だカラ」

 

かりんはこう言ってあげるべきだったのだ。

 

何故その人物は赤ん坊を殺すような状況になってしまったのだと言うべきだったのだ。

 

「わたしが…感情的正しさしか…見ようとしていない…?」

 

アリナの言葉の意味すら理解出来なかったかりん。

 

それが彼女達の道を完全に違えるキッカケとなってしまう。

 

「アリナはね、そのベビーキラーを賞賛してあげる。そいつは自分自身を貫き通せたカラ」

 

「そんなのおかしいの!赤ちゃん殺しだなんて…最悪の行為なの!!」

 

「デスは始まりに過ぎない、それがアリナの美。これからのアリナの人生はそれだけを求める」

 

妥協と甘さを研磨し尽くすアリナの新しい人生が始まると宣言してくる。

 

「恐れはしない。それこそが、ストロングウーマンとして生まれ変わったアリナだカラ…」

 

「言っている意味が分からないの!アリナ先輩…正気に戻ってなの!!」

 

右手を持ち上げていき、親指と人差し指を丸めていく。

 

瞼が開いた右目に指穴を掲げたハンドサインとは、666OKサイン。

 

片目の単眼とはプロヴィデンスの目を表す。

 

プロヴィデンスの目と獣の数字を表すサタンを崇拝する者だと宣言するサインを掲げてくる。

 

「私はパワー。何者にも打ち克つパワーの結晶。だから何者にも負けない」

 

――あらゆるすべてのものに打ち克つパワー。

 

顔の前に掲げた右手を前に向け、サタンの指サインであるコルナサインを作る。

 

「そうよ!!強いパワーの結晶なのよ!!」

 

かりんの目に不可思議な光景が映る。

 

アリナの背後に誰か知らない少女の姿が霞んで見えた気がしたようだ。

 

常軌を逸脱したアリナの態度を見て、魔獣に操られているという見当違いな思考が巡る。

 

魔法少女に変身したかりんは大好きな先輩を救おうと勘違い行動を始めてしまう。

 

「アリナ先輩…やっぱり何かに操られているの!わたしが救ってあげるの!!」

 

「ジャスティスガールとして?何処までも変身ヒロインの世界観に浸りたいというなら…」

 

――ここで、アナタとはお別れなワケ。

 

踵を返した後、踊り場の右側階段を上っていく。

 

「待ってなの!!」

 

かりんも階段を登ろうとした時、アリナの魔力が高まるのを感じる。

 

彼女も魔法少女姿に変身しており、右掌には魔法武器であるキューブが浮かぶ。

 

「アリナと戦いたい?それ以上階段を上がってくるなら…容赦しないんですケド」

 

「アリナ…先輩……」

 

「…何処までもアナタはフールガールだったワケ、御園かりん」

 

先程の質問内容に対し、正義の感情に囚われていなかったら。

 

自分の言おうとしている言葉を飲み込み、冷静になってくれていたならとアリナは語る。

 

「そうだったら…アリナはね…アリナの言葉を曲げてでも…アナタを勧誘したかった…」

 

「勧誘……?」

 

「でもそれはジャスティスを()()()()()()。アリナはアナタに()()()()()と言った以上…」

 

――選んだその道を貫く姿、アリナに見せてくれる日を…願っているカラ。

 

そう言い残した後、彼女は階段を上りながら奥の扉を開けて回廊から出ていく。

 

独り残されたかりんは不安と恐怖で心が塗り潰されていく。

 

大好きな先輩にもう会えなくなってしまうのだと言い知れぬ恐怖に怯えるばかり。

 

奥の展示室を歩きながら右手を持ち上げる。

 

右手はまだアリナの弱さが残っているかのようにして小さく震えているようだ。

 

「お互いに妥協しちゃダメだヨネ…アリナが妥協するなと言った以上は…アリナも妥協しない」

 

頑固な先輩だったけど、それでも御園かりんはアリナを先輩と呼んでくれた日々が浮かぶ。

 

「嘘つきな先輩の姿を…慕ってくれた後輩に見せるわけにはいかないヨネ…」

 

弱さを吐き出すようにして唾を吐いていく。

 

暗い通路を歩いて行ったアリナの姿は闇の世界へと消えていくのだ。

 

罪を憎んで人を憎まずという言葉がある。

 

原因があるから結果が生まれる因果関係にこの世は支配されていると気が付いた者の言葉だ。

 

しかし人は見えやすいモノしか見ようとはしてくれない。

 

分かりやすい善悪しか受け入れてはくれない。

 

余りにも酷い人間の浅慮が善悪を生み出し、人々を分断してしまう。

 

先で起こるだろう神浜騒乱の時に人修羅はこんな言葉を残すのであった。

 

――人は正しさを求める。()()()()()()()

 

────────────────────────────────

 

アリナは学校に現れなかった事で帰りにギャラリーグレイに顔を出しに行くかりん。

 

しかしアリナの父親からはこう言われてしまう。

 

「…娘の体調が悪いんだ。今日は帰ってくれないかい」

 

「……分かったの。あの…アリナ先輩によろしく伝えておいて欲しいの」

 

「……ありがとう、さようなら」

 

渋々家路についていく後輩の姿を見送るアリナの父親は嘘をついている。

 

昨日の夜から娘の姿が消えていると伝えてくれない。

 

自室の荷物は持ち出せる範囲までのものが消えている。

 

アリナの両親は娘が家出をしたのだと理解している。

 

しかし両親はそれを学校に連絡していないし、警察にも連絡していない。

 

天才アーティストとして将来が約束された娘の経歴に汚点を残したくない親心があるのだ。

 

大手の探偵事務所に依頼をして捜査を行ってもらうだけに留めてしまっている。

 

彼女はいったい何処に消えてしまったのだろうか?

 

それは神浜市にいる者達では誰にも分からない。

 

かりんが帰ってから数時間後の夜に不審な動きが起こる。

 

グレイ家の前に数台の黒塗りセダンが停車したという目撃情報が近所の住人達の間で語られる。

 

それ以来、グレイ家に住む人達を近所の住人達が見かけた事はなかった。

 

日にちも過ぎていき、月が変わった9月4日。

 

日付が変わりそうな時間帯を走行していくのは一台の黒塗り高級セダン。

 

「こんな深夜に晩餐会だなんて…何考えてるワケ?」

 

後部座席で座り、窓から東京の街並みを見物している人物とはアリナ・グレイ。

 

停車すると運転手が後部座席を開け、降りてきたのはフォーマルスーツを着たアリナの姿。

 

彼女…いや、彼が降り立った場所とは東京でも最高級と言われる外資系ホテルであろう。

 

「付き添いはいい。晩餐会ルームの場所はホテルの連中に聞くカラ」

 

「承知しました」

 

深々と頭を下げた後、付添人はアリナを見送る。

 

高層ホテルのビルに入り、受付に質問する。

 

晩餐会を行う部屋に案内するベルスタッフを待っていたが、ホテルの総支配人が現れたようだ。

 

「今夜の晩餐会は特別な部屋で行います。他のスタッフに知られるわけにはいきません」

 

「どうでもいい。さっさと案内して欲しいんですケド」

 

「では、こちらにどうぞ」

 

案内されたのは秘密のエレベータールームであろう。

 

「こちらが専用の直通エレベーターとなります」

 

「オーケー。後はアリナ1人でいいから、アナタは消えるワケ」

 

「分かりました」

 

アリナはエレベーターに入り、深々と頭を下げる総支配人の姿を扉を閉めて遮る。

 

上昇していくエレベーター内でアリナは慣れない生活の苦しみを零してしまう。

 

「アリナは生まれ変わって男になった…。だけど…まだ男装には慣れそうにないんですケド」

 

後ろ髪を括って男らしさをアピールしている髪を触っていたら目的地に到着する。

 

エレベーターから出れば宮殿の回廊かと見紛うばかりの豪華な通路が出迎えてくれる。

 

「VIPしか入れないシークレットエリアってワケね」

 

回廊を歩き続けると奥に現れたのは豪華な両開きの扉である。

 

「…ここが晩餐会ルーム?だけどこの魔力は…魔法少女…?」

 

魔法少女だからこそ魔力を持つ存在に気が付いてしまう。

 

1人はシド・デイビスだというのは分かるが、もう1人感じる魔法少女の存在は全く知らない。

 

恐る恐る扉を開けると絵画や陶器が飾られた宮殿のような食堂の光景が見えるだろう。

 

明かりは蝋燭しかなく、室内は薄暗い。

 

蝋燭が立てられた燭台とはヘブライ民族の象徴であるメノラーの数々なのだ。

 

「……………」

 

部屋の中で一番最初に目に入ってきたのは女性人物であろう。

 

185cmはある高身長をした白人女性がアリナに横目を向けてくる。

 

美しいブロンドヘアーをセンター分けにし、長い後ろ髪を黒いリボンで纏めている。

 

男装フォーマルスーツを着込み、左手には銀の鞘に納められた剣を握り締める者だ。

 

東京の守護者として戦い抜いた人修羅ならば忘れるはずがない人物でもある。

 

かつてのペンタグラムメンバーであり、工作員であった魔法少女ルイーザのオリジナルだ。

 

「アナタ…魔法少女なワケ?」

 

In the presence of our Lord.(我らの主の御前だ) Be careful how you behave.(振る舞いは慎め)

 

片言の英語しか喋れないアリナは会話出来る相手ではないと視線を逸らす。

 

<<goyim…(非ユダヤめ)>>

 

低い声が響いた方に振り向くと長い机の奥に座っている白人の老人を見つける。

 

ダブルボタンスーツを着込み、英国紳士のように見えるが蛇のような目を向けてくる存在だ。

 

「…後ろの魔法少女がロードって言ってたけど、この頭が禿げた老人がイルミナティの主人?」

 

答えを求めるかのように視線を向けるのは老人の横に立つシド・デイビスであろう。

 

「ロスチャイルド卿への侮辱発言…もし卿が日本語を理解出来ていたらアナタは死んでましタ」

 

「ロスチャイルド卿…?」

 

「手前側に座りなさイ。ロスチャイルド卿は家畜の匂いが大嫌いなのでス」

 

「…アリナを家畜扱いってワケ?ムカつくジジイだヨネ」

 

「アナタだけではなイ、()()()()()()()()()なのでス」

 

「ユダヤ以外は…全て家畜…?」

 

「命が惜しけれバ…手短に晩餐会を終えましょウ。卿の言葉は私が通訳しまス」

 

背後に殺気を感じると控えていたルイーザは親指を使い、鞘から刀身を抜いている。

 

「…これが晩餐会って空気なワケ?イカれてるヨネ…」

 

指示された通り手前側の椅子に座り、ロスチャイルド卿と呼ばれる人物と向かい合う。

 

睨んでくるばかりの年寄りに辟易しながら周囲の芸術品に視線を向けていく。

 

(あの絵画…何?人骨塗れの大地とホワイトラビット…分子構造の形…()()()()()()…?)

 

奇妙な絵に心を奪われている姿を見物しながらイルミナティの司令塔人物は溜息をつく。

 

Everything is as the will of our God.(全ては我らの神の御心のままに)

 

横のシドに視線を向けた後、彼も頷いた事で重い口を開いてくれる。

 

それを通訳しながらシドは内容をアリナに伝えてくるようだ。

 

「初めましテ、アリナ・グレイ。私はJ・ロスチャイルド…ロスチャイルド家の4代目当主ダ」

 

「J…?」

 

「我らの神ハ、お前の面倒を私に託されタ。不本意ではあるが面倒をみてやろウ」

 

「それが…アリナが家出した時に用意してくれた…あの豪邸ってワケ?」

 

「生活に困らない環境は与えてやるガ…お前が我々の期待に応えられないならば…許さなイ」

 

「アリナの面倒を見てくれるなら、アリナもアナタの事を知りたい。ロスチャイルドって何?」

 

自分の一族について聞いてくる者に対して、長々説明する気にもならないJは無言となる。

 

彼の代わりに説明してくれたのはシドであり、こう語ってくれる。

 

ユダヤの大富豪であるロスチャイルド家。

 

その一族の祖となったのは世界の総資産の半分を独占した男と言われる銀行家。

 

マイヤー・アムシェル・ロートシルト。

 

ドイツの古銭商人であったが、ヘッセン選帝侯の御用商人の銀行家となったことで成功する。

 

ナポレオン戦争において莫大な財を成しており、彼には優れた5人の息子達がいたという。

 

息子達はドイツ、イギリス、フランス、イタリア、オーストリアに分かれて一族を大きくする。

 

だがロスチャイルド家は秘密主義であり、親族者との婚姻しか認められなかったという。

 

そのため生まれてくる子供は病弱な者が多く、ドイツとイタリアとオーストリアの3家は消滅。

 

現在はイギリスとフランスの2家だけが残っていると伝えてくれたようだ。

 

「マイヤーが残した言葉ガ…21世紀まで続く世界の金融支配構造を語りまス」

 

――私に()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

――そうすれば、誰が法律を作ろうと、()()()()()()()()()()()()

 

マイヤーが作り上げたのは富の収奪システム。

 

国家の富を滅ぶまで永遠に略奪出来る金融仕組みを生み出したと語っていく。

 

このため世界の金融を生み出したのはロスチャイルド家なのだと言われる事になるだろう。

 

第三代アメリカ大統領トーマス・ジェファーソンもこんな言葉を残す。

 

()()()()()()()()()()である。

 

通貨発行権を奪われたら、我々の子孫はホームレスになるまで()()()()()()()()()()()()()

 

「…まぁ、ロスチャイルド家ってのが大金持ちって部分だけは理解出来たワケ」

 

「大金持チ?世界の長者番付で紹介される程度の貧乏人共と勘違いしてませんカ?」

 

「…どういう意味?」

 

「本物の銀行資産家達は表になど出てきませン。その資産は非課税団体に溜め込み財を蓄えル」

 

「ようは…資産を隠す脱税が上手い連中ってワケね」

 

「ロスチャイルド家の総資産は日本円で言えば一京円を遥かに超えているそうでス」

 

「い…一京円!!?」

 

「光栄に思いなさイ。不本意とはいエ、世界を代表する金融王の庇護の下で生きられるのでス」

 

長話に興味が無いのか、自分の一族の話題を右手を上げながら遮るJ。

 

それに合わせて横の扉が開き、ルームサービスの品である食前酒が持ち運ばれてくる。

 

「…アリナにまでアルコールを注ぐワケ?」

 

「構いませン。もう直ぐアナタは未成年という決まり事など意味をなさなくなル」

 

「ハァ…?」

 

血のように赤い赤ワインが注がれたグラスに視線を向ける。

 

気が付けばアリナの横にはルイーザが立っていたようだ。

 

「ちょっと!?」

 

ルイーザは懐から取り出した小さな瓶の中身を赤ワインの中に少量入れ込んでくる。

 

Is he interested in the rabbit?(兎が気になるか?)

 

邪悪な笑みを浮かべたルイーザは後ろに下がった後、再び沈黙する。

 

食前酒を注がれたグラスを持ち上げるJは不敵な笑みを浮かべながらこう告げる。

 

I've prepared a dish worthy of you.(お前に相応しい料理を用意した) Enjoy it.(堪能しろ)

 

アリナもグラスを持ち、怪訝な表情を浮かべながらも未成年飲酒行為を行う。

 

(なに…?アルコールって…こんな味わいなワケ?)

 

飲み込んだ瞬間、妙な高揚感に襲われるアリナ。

 

(心が解放されていく…まるで…建前の仮面を剥ぎ取られた気分…)

 

ルイーザが口にしたラビットという単語が気になるアリナはもう一度ウサギの絵画を見る。

 

人骨の上に佇むウサギの瞳は悪魔のような真紅の瞳で彼女を見つめてくるようだ。

 

「如何でしたカ?アドレナクロムの味わいハ?」

 

「アドレナクロム…?」

 

ルイーザに注がれたモノの正体を知っているかのような素振りを見せるシド。

 

その表情はJと同じく愉悦に満ちていた。

 

 

「さテ、今宵の晩餐会の料理が運ばれてきましたネ」

 

視線を扉の方に向ければルームサービスが配膳ワゴンに乗せた大きな皿と銀の蓋を持ち込む。

 

銀の蓋で覆われた二つの大きな皿をアリナの食卓前に並べた後、部屋を出ていく。

 

Eat all of it.(残さず食べろ) They are very tasty.(味わい深い者達だ)

 

「アナタは死んで生まれ変わっタ。しかシ、まだ人間性が残されている粗削りな石でス」

 

「まさか…この晩餐会も…アリナの試練だっていうワケ…?」

 

「我が主は残さず食べろと仰いましタ。そうしてあげなさイ…これもまた死と再生の美でス」

 

何が仕込まれているのか判断出来ないが、拒絶出来る空気ではない。

 

恐る恐る銀の蓋に手をかけ、出された料理の正体を見た瞬間、アリナは絶句する。

 

「……パパ……ママ?」

 

出された料理とは()()()()()()()()()()

 

頭蓋は切り開かれ、脳みそがデザートプリンのようになっている。

 

「アナタには死んでもらウ。人間として生きた人生全てを殺してもらウ」

 

持っていたリモコンで壁に飾られている大画面テレビのスイッチを入れる。

 

現実感が無い思考のまま震え抜く体を無理やりテレビ中継に向けたアリナが絶叫してしまう。

 

「あっ……あぁ……アァァァーーッッ!!?」

 

テレビに映し出されていたのはアリナの実家が燃え上る光景。

 

9月4日から5日未明にかけて起こった栄区の大火災光景であろう。

 

少し前の時間に戻れば放火した犯人を見つけるだろう。

 

神浜市栄区のギャラリーグレイを見つめるのは黒い革ジャンと革パンに身を包む悪魔の姿だ。

 

「チッ!アクセルヲイッカイ回シタダケデ、コノザマカ」

 

チョッパータイプのアメリカンバイクに跨り、首に巻いた赤いマフラーを風で揺らす。

 

ヘルメットを被っていないその頭部は魔人を表す髑髏顔。

 

死をもたらす事に特化した魔人と呼ばれる悪魔種族が放火犯であったようだ。

 

「グレイッテ家ダケ燃ヤセッテ言ワレテタガ、マァイイ…派手ナ方ガ楽シイカラナァ!」

 

【ヘルズエンジェル】

 

地獄の天使の名を持つ魔人であり、激しい怒りの心の実体化と言われる存在。

 

激情に任せて猛スピードで突っ走る魔人でもある。

 

そのマシンであるハーレーの車輪も怒りのオーラである炎で形成されている。

 

自分を憎み、周りを憎むようになった魂は暴力とスピードを拠り所とする魔人であった。

 

「感ジルゼェ…人修羅。オ前モ俺ト同ジク、怒リニ燃エ上ル存在ニナッタコトヲ!!」

 

Uターンした後にアクセルを回し、バイクのマフラーからバックファイアが噴き出す。

 

怒りと憎しみで全てを焼き尽くす『ヘルバーナー』の炎が栄区を盛大に焼き払う。

 

地獄の業火が後方に噴出された事で燃え上るグレイ家だけでなく、近隣の家まで燃やす。

 

走り出したバイクで風を感じながら赤いマフラーを揺らすスピード狂は口をカタカタ動かす。

 

「オ前モ俺ト同ジニナッタナラ、イッショニ行コウゼ…スピードノ向コウ側ニナァ!!」

 

――俺達ノ次ノ戦イハ…怒リノ車輪同士ノ対決ニシヨウジャネーカァ!!!

 

自分に起きている現象が飲み込めず、硬直したまま震えるアリナにシドはこう告げてくる。

 

「私は言ったはずでス。二度と帰る事が出来ない世界に旅立つ事になりますとネ…」

 

「なんで…なんでパパとママを殺したワケ!?なんでアリナのマイホームを燃やすワケ!?」

 

「アナタに全てを捨ててもらうためでス。帰る場所があれバ…()()()()()事も起こル」

 

「だからって…だからって!!何も殺さなくても……」

 

「自分の家族を殺すのはダメデ、他人や動物なら構わなイ?都合のいい言い訳ですネ」

 

「そ…それは……」

 

「アナタは自分の死者蘇生シリーズの材料として何を使ったカ、言ってみなさイ」

 

「…………」

 

「アナタは入団儀式の時に何を材料にして捧げたのカ、言ってみなさイ」

 

「アリナは…アリナは……」

 

()()()()()()()()のでス。ですが我々はそれを責めませン、我々もまた死を美化する者達」

 

「パパ……ママ……」

 

見つめる先にいる両親は娘に何も言ってくれない食材に成り果てている。

 

「両親を食べるのは嫌ですカ?ですガ、アナタは既に()()()()()()()()

 

「ワッツ!!?」

 

「アナタの新たな住処で提供された肉料理、アナタは食べてきたじゃないですカ?」

 

「まさか…まさか…あのミート料理は……」

 

「如何でしたカ、人間の肉の味ハ?()()()()()()()()()でしょウ?」

 

あまりの衝撃に胃液が逆流し、胃の中身を吐き出しかける。

 

必死になって両手で口を抑え込み、涙目になりながら吐くのを堪える。

 

ガタガタ震えていた時、首元に冷たい感触を感じる。

 

首をゆっくり後ろに向ければ魔剣を抜いたルイーザが立っている。

 

首元には刃が当てられ、薄く血が滲んでいく。

 

Eat.(食え)Cannibals are the mark of our people.(食人こそ我らの仲間の証だ)

 

食わなければ殺すという意思表示なら英会話が話せないアリナでも分かる。

 

胃液を無理やり飲み干したアリナは息を切らせながら質問してくる。

 

「なんで…なんでアナタ達は…ヒューマンミートを食べるワケ…?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()からですヨ」

 

「カナン人…?」

 

「カナンの地には食人文化があっタ。民族のアイデンティティは国を失おうが捨てはしなイ」

 

これこそが初期のイスラエルを南北に分断した原因となったもの。

 

「イスラエル王でありデビルサマナーでもあったソロモンハ…()()()()()()()()()()()()()

 

その異教こそが豊穣の神であるバアル神崇拝。

 

生贄儀式を尊び、それに刺激がなくなればカニバリズムまで行った民族文化を今でも守る。

 

憐みの師イエス・キリストでさえ、聖書の中でカナン人を拒絶した一説がある。

 

マタイによる福音書15:22-23。

 

すると、この地に生まれたカナンの女が出てきてた。

 

主よ、ダビデの子よ、私を憐れんでください。

 

娘が悪霊に取り憑かれて苦しめられておりますと叫んだ。

 

しかし、イエスは何もお答えにはならなかった。

 

マタイによる福音書15:26。

 

イエスが、子供たちのパンを子犬にやってはいけないとお答えになる。

 

イエスに犬と呼ばれた存在こそがカナン人だと言われている。

 

一人暮らしで死んで、ペットの犬や猫に飼い主の死体を食われる事件は現代でも見かける。

 

犬とは人を食べる事も出来る存在であるからこそ、カナン人を犬と表現したのだろう。

 

「つまり…ユダヤってのは…カナン人でもある…?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()者達でス…」

 

「ヴェニスの商人って…あの十字軍遠征のスポンサーだった…?」

 

「彼らこそがイルミナティよりも偉大な存在…世界の真の支配者である…()()()()達でス」

 

「アナタ達は黒の貴族共の慣習に従っているダケ…?なら…イルミナティってなんなワケ!?」

 

()()()()()()()()()()()()。ロスチャイルド卿とて、それを管理する金融部門長に過ぎなイ」

 

「どれだけ世界史には秘密が隠されてるの…?もうアリナ…何も分からない…」

 

「分かる必要はなイ。アナタも我々の一員となったからにハ…人為的ユダヤとなってもらウ」

 

もはや目の前の料理に手を付ける以外に彼女が生き残る術はない。

 

魔法少女に変身しようがシドとルイーザの2人がかりに勝てるはずもないし伏兵の気配もある。

 

震え上がる手でスプーンを掴み、両親の脳みそに近づけていく。

 

「パパ……ママ……」

 

彼女の脳裏に浮かぶのは死と再生に取り憑かれてなかった頃の幼い記憶。

 

「許して……許して……」

 

スプーンが両親の脳みそを掬い取る。

 

小さいアリナの後ろには大好きだった飼い犬の姿がいた事を今でも覚えている。

 

スプーンが口元に近づけられていく。

 

その光景を見守っていたのはおてんば娘でも愛してくれた優しい両親の姿であろう。

 

「アリナは……アリナは……」

 

幸せだった頃の光景が走馬灯のように巡っていく。

 

彼女の人間として生きられた幸福な人生の記憶を壊すのは強き者の言葉の数々。

 

――弱い者は乱し、惑わすの。自分では何も出来ないから。

 

「アリナは……アリナはね……」

 

今ここに人間としてのアリナ・グレイを終わらせる行為を彼女は行う。

 

「……マイウェイを進む。恨んでくれて……いいカラ」

 

大粒の涙を零しながら両親の脳みそを咀嚼する。

 

「親の死は糧となり再生すル。人間界での物質的な人の生き方とは()()()()()()()()()()()()

 

それを肯定する超自然的な思想こそが弱肉強食であり、悪魔信仰だと告げてくる。

 

それはかつての世界で掲げられた力の思想であるヨスガそのもの。

 

「クックックック……」

 

堪えきれずに笑い出す老人は残酷な言葉を言い放つ。

 

See.(見ろ) Livestock cannibalizing livestock.(家畜が家畜を共食いしている)

 

<<ハッハッハッハッハッ!!!>>

 

口の中でいくら咀嚼しても喉を通らせない拒絶反応を示すアリナの肉体。

 

それを彼女は無理やり酒で流し込んでいく。

 

「ちなみ二、先程ルイーザさんが注いだ液体。アレはアドレナクロムと言いましてネ…」

 

脳の松果体が恐怖を感じた時に分泌する物質であり、高揚感を与える麻薬。

 

アドレナクロムは主に拷問した子供の松果体から接種するとシドは告げてくる。

 

ウサギと人骨、そして分子構造を表現した絵画こそアドレナクロムを表現している。

 

アドレナクロムの分子構造の形こそが()()()()()()()()()もの。

 

飾られていた絵画の正体とは子供達を拷問して脳から絞り出す光景だったのだ。

 

「フッ…フフフ…アハハハハ…アッハハハハハハハハハハ……」

 

泣きながら、鳴きながら、啼きながら、両親の脳みそを食べるおぞましい女。

 

狂気、狂気、もはや狂気しかない。

 

狂宴の最凶形態とも言えるだろう人肉嗜食こそ、カナン族ユダヤの文化光景。

 

旧約聖書に登場する預言者イザヤはカナン族を見て絶句する。

 

子供の生贄をモロクのブロンズ像に投げ入れるだけでは飽きてしまい、食人を始める。

 

カナンの神官は第一子は邪神のモノであり、捧げものとして差し出せと説いたという。

 

下劣で野蛮なカナン族の習慣を見たイザヤはカナン族を罵倒する言葉を聖書に残すだろう。

 

イザヤ書57:3-5。

 

お前達、女まじない師の子らよ、姦淫する男と淫行の女との子孫よ、ここに近づくがよい。

 

お前達は誰を快楽の相手とするのか。

 

誰に向かって大口を開き、舌を出すのか。

 

お前達は背きの罪が産んだ子ら、偽りの子孫ではないか。

 

大木の陰、全ての茂る木の下で身を焦がし、谷間や岩の裂け目で()()()()()()()ではないか。

 

「アッハハハハハハハ……」

 

アリナは何処までも堕ちていく。

 

冥界下りをしたイナンナのように、堕天したルシファーのように。

 

そんな彼女に対し、女まじない師の姿をしたリリスはこんな言葉を残す。

 

――恐れる必要はないわね?だって貴女は、自分の美がそこにあるのなら…。

 

――奈落の底にだって魔法少女に契約した時と同じく…()()()()()()()なのだから。

 

死海文書4Q184。

 

彼女の門は死への門であり、その家の玄関を彼女は冥界へと向かわせる。

 

そこに行く者はだれも戻って来ない。

 

彼女に取り憑かれた者は()()()()()()()

 

────────────────────────────────

 

良心を殺し尽くす勢いで両親の脳みそを食べきったアリナは気絶してしまう。

 

秘密の従業員達に担架で運び出されていく彼女を見送るのはシドである。

 

横には黒スーツ姿の男が立ち、シドに対して質問してくる。

 

「彼女もイルミナティ入りを果たしたのなら、イルミナティ一族の女性と同じく…」

 

――()()()()()()()()()()()()()()()()()のですね。

 

イルミナティ一族から逃げ出した女性の証言では幼い頃より虐待が始まるという。

 

物心つく前から親族にレイプされ、この世の全てを真逆に解釈出来るよう教育を行う。

 

ロスチャイルドの弟子でありイルミナティ司令塔一族として双璧を成す米国財閥が存在する。

 

それがユダヤ財閥のロックフェラー家だと言われている。

 

だが当主のD・ロックフェラーは2017年に死去。

 

その人物の回顧録の中では家族との関係性を内戦だと表現している。

 

彼は娘達に甘過ぎたせいで娘達から反逆されてしまったのだ。

 

良心の自由が敷かれれば、こうも秘密主義は瓦解する。

 

だからこそ徹底した洗脳が大切なのであろう。

 

「レイプではダメでス。それでは被害者として自らの内側で完結してしまウ」

 

――彼女は100%の()()()()()()()()()()()()のでス。

 

「では、洗脳教育とは…?」

 

「これから彼女の世話を行うのは私ト、見滝原総合病院の院長となりますネ」

 

「日本ロッジのグランドマスターが世話を?だとしたら…あの地下室ですね?」

 

「彼女に子供を虐待させル。眉一つ動かさずに子供の松果体から血を吸い出せるまで続けル」

 

アリナは生まれ変わり、魔法少女としての自分を捨ててもらうとシドは宣言する。

 

彼女は男となり、加害者となり、ダークサマナーとなるのだと愉悦の表情を浮かべていく。

 

「ようこそアリナ…グローバルエリートの世界ヘ。クックックッ…ハハハハハ!!」

 

その後のアリナの人生は苛烈を極める事になるだろう。

 

身も心も削ぎ落されていく事になるだろう。

 

それでも彼女は自分の選択を貫きながら這い上がる。

 

魔法少女になる時、インキュベーターは選択の自由を少女達に与えている。

 

シドもまた選択の自由をアリナに与えている。

 

それでも彼女達は自らの自由意志によって選んでしまっている。

 

深くは考えさせないレベルに留めていたが、危険があるという事さえ伝えている。

 

想像力のない彼女達は自らの願いという欲望を優先した事で破滅するだろう。

 

ならばそれは()()()()()()()

 

断る自由を踏み躙った浅慮過ぎる自分の過ちでしかなく、背負うしかないのだ。

 

自由とは責任を背負える者だけが行く事が出来る()()()()

 

だからこそ人々は自由を叫ぶくせに自由を恐れる。

 

本質的に人間とは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

9月も終わり、10月も過ぎていき月の終わりを迎える日。

 

今日は子供達の楽しいイベントであるハロウィンだ。

 

神浜市郊外の街にある繁華街でもハロウィンの装飾などが街を飾る。

 

そんな街の中、男装したアリナが通っていく。

 

長い後ろ髪を隠すようにベージュ色のトレンチコートを纏い、キャスケット帽子で頭部を隠す。

 

「……………」

 

見えるモノ全てが無価値に思える程の差別に満ち溢れた眼差しをアリナは浮かべている。

 

弱き者など価値が無い選民主義に汚染され尽くしている思考こそ、今のアリナだろう。

 

弱い人間がたむろう街になど、どうして繰り出しにきたのだろうか?

 

それは研磨しても剥ぎ取ろうとしても消えない思いがあったから。

 

ハロウィンのカボチャ提灯がツリーのように施された噴水に視線が移る。

 

彼女…いや、彼の脳裏には捨てきれない思い出がこびりついているようだ。

 

「……フールガール」

 

――我こそは、ハロウィンを守る心優しきカボチャの王様なのだ!

 

――暴君の間違いなんですケド。

 

――そんなことないの。

 

――シャラップ!アリナをこんな格好にしておいて、よく言うヨネ。

 

――あっ…ごめんなさいなの…。

 

それは去年の頃にあった記憶。

 

魔法少女が集まった一日だけのハロウィン劇団イベントの記憶。

 

アリナも無理やり連れていかれてオバケの仮装をさせられたのを今でも覚えている。

 

文句を言いながらも、あの時だけは神浜の魔法少女達と触れ合える経験となってくれる。

 

アウトサイダーとして扱われながらも楽しいイベントの時は皆アリナを悪くは言わなかった。

 

はみ出し者ではない、仲間のように接してくれた。

 

それだけは心の中で嬉しかった記憶が今でも残っている。

 

「…今のアリナは、連中の前どころか…フールガールの前にさえ…顔を出す資格はない」

 

彼女はハロウィンの起源と言われる悪魔宗教によってハロウィンを穢してしまう。

 

バアル神であるモロク崇拝、悪魔崇拝によってハロウィンを穢してしまう。

 

そして今この時でもハロウィンを象徴する子供達の生き血を脳みそから吸い出している。

 

魔法少女の恥晒し、魔法少女の面汚し、血も涙もない外道、所詮はアウトサイダー。

 

正義の味方を気取る魔法少女達から罵倒される光景が脳裏を巡る。

 

――覚えていなさい。

 

――貴女はその悪魔のような醜悪美の価値観故に、()()()()()()()()()()()

 

――人間社会や魔法少女社会から追われる事になるわ。

 

「それで構わないんですケド。アリナだって…許されようとは思わないカラ」

 

トレンチコートのポケットから取り出したのはハロウィンカボチャのアクセサリー。

 

劇団イベントが終わった後、主催者から貰えた褒美を今でも残している。

 

後輩のかりんや神浜の魔法少女達と繋がりを感じられた思い出の欠片。

 

彼女は家出した時、これを持ち出していたようだ。

 

「……アリナはね」

 

掌に置かれたアクセサリーが握り締められた後、力を込めて投げ捨てる。

 

思い出の欠片はハロウィンツリーの辺りまで飛んでいって沈んでしまう。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。でも…恐れはしないカラ」

 

そこにアリナの美がある限り、彼女は奈落に向かって落ちていく。

 

「グッバイ……マイフレンド」

 

自分のいるべき場所へと帰っていくアリナの後ろ姿は孤高の道を歩く者の後ろ姿。

 

選んで進んだ道とはこの世の地獄であり、冥界の道とも言えるだろう。

 

悪魔と悪魔の如き存在達が跋扈する闇をアリナは力強く踏み締める者になるのであった。

 




アリナ拷問は興奮しますんすん(拷問さなちゃん脳)
ところで、バアル神であるモロク(牛頭天王)は、メガテンでカニバルイベント天王洲奇譚があったのを真・女神転生4をプレイしたことあるメガテニストならご存じだと思います。
あれの元ネタはカナン族だったようですねぇ…流石公式メガテンはえげつないネタ使う…なので僕も真似しました(汗)
次回はダークサマナー化したアリナに相応しい仲魔の登場ですかね。
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