人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
かつて暁美ほむらの試練として立ち塞がり戦った7体の魔人。
黙示録の4騎士の中には反キリストを象徴する騎士ホワイトライダーがいた。
その者は鍛えた弟子とも言えるだろう暁美ほむらに敗れた時、こんな言葉を残す。
ヨハネ黙示録、全ては聖書に記された運命を辿る、それを実行する者達がいる限り。
200人の天使からなる集団の長シェムハザは、カルメル山に降りた。
守護天使を気取る奴ら堕天使共は新妻に魔術を教えた。
その結果、ネフィリムの名で知られる巨人が産まれた。
世界にカニバルをもたらしたアナクの子孫ネフィリムは突然変異体であり、聖書に記述もある。
創世記 6:4。
当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。
これは神の子らが人の娘達のところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄達であった。
民数記13:32。
イスラエルの人々の間に偵察して来た土地について悪い情報を流した。
我々が偵察して来た土地は、そこに住み着こうとする者を食い尽くすような土地だ。
我々が見た民は皆、巨人だった。
ゼカリヤ書9:6。
混血の民がアシュドドに住み着く。
わたしはペリシテ人の高ぶりを絶つ。
ゼカリヤ書9:7。
わたしはその口から血を、歯の間から忌まわしいものを取り去る。
残りの者は我らの神に属し、ユダの中の一族のようになり、エクロンはエブス人のようになる。
人食い巨人としても知られるネフィリム達は唯一神の怒りに触れて洪水に飲まれてしまう。
唯一神は彼らを殺し、天使長ミカエルはネフィリムを産んだ堕天使達を闇の中に投獄する。
だが生き残った者達は交配を重ねながら小型化していく事になる。
数千年もの間、大いなる神を呪う悪魔崇拝者の歴史がここから始まるのだ。
カナン人の祖となるのは
カナンが移り住んだ地域の子孫はカナン人となり、ギリシャ人から
カナンの父とはノアの次男であるハムと呼ばれた人物。
ハムはノアの箱舟で大洪水を生き延びた時、唯一神の命令に背いた者。
箱舟内で禁止された性行為を行い、子供を作ってしまった罪人だ。
ノアはハムの行った背信行為を嘆き、恐れ、葡萄酒を浴びる程飲んだという。
聖書研究者の間では
それについての記述は聖書にはないが、カナンは混血種であった点に着目する。
アダムの子孫の規律に縛られなかったため、
それが原因でなければカナンではなく父親のハムこそ呪われなければならなかったはず。
しかしカナンは祖父のノアから呪われてしまうだろう。
これがカナンにして唯一神を数千年もの間、呪い続ける原動力となるのだろう。
最初の人殺しを犯したカインの血脈からカナンが生まれて継がれていく。
唯一神を呪い、貶め、堕落させるために存在する民が生まれ続けるのだ。
これを暁美ほむらに伝えたかった反キリストの象徴的魔人は何処かイルミナティと似ている。
白人となったフェニキア人であるカナン族はホワイトライダーの愛馬である
目玉だらけの白馬とは
ホワイトライダーは弓兵であり、世界最強の弓矢である核兵器を多く持つのは白人国家。
その頭に被った王冠はバビロンの流れを組むローマ帝国を表すとしたらどうだろう?
黙示録において世界を終わらせると言われる4体の騎士。
その一体目は太古の昔に解き放たれていたのやもしれなかった。
♦
アリナは調教されていく。
冷徹無常なサイコパスになる訓練を受け続けていく。
人々を見下し、嘲笑し、人もモノも単なる商品、廃棄物であり、全ては無価値なゴミだとする。
全てを燃やして破壊しても構わない、エリートこそが支配階級なのだからと洗脳されていく。
マイナス100度の冷凍庫に良心を仕舞い込めれる人間ほど金融業界に向いている。
かつて人修羅はそんな話を東京のホームレス社会で聞かされた事があった者だ。
アリナの毎日は変わり、学校の代わりとなるのはフリーメイソンとイルミナティ。
表向きはメイソンメンバーとしてメイソン教義を学ぶ毎日。
イルミナティメイソンとして良心の全てを剥奪される教育行為が行われていく。
そしてダークサマナーとなるための修行も始まるだろう。
男として生まれ変わった彼女は目覚ましい程のスピードでそれらを吸収していく。
そんなアリナの後ろ姿を見つめる教育係のシドはアリナの才能に嫉妬してしまう。
「流石はバアル様の祝福を受けられる者。妬ましい程の才能の持ち主でス…」
だがそれでもアリナは石ころに過ぎず、暁の子の輝きには遠く及ばないと告げられるのだ。
「助けてぇぇぇーーーーッッ!!!」
ここは見滝原総合病院の地下であり、ほむらが悪夢で見た地獄の如き施設内部。
見える光景とは儀式の部屋を思わせる手術室であろう。
ペドフィリア達から凌辱を受けた全裸姿の子供の少女は拘束され、頭部も拘束されている。
眼球を開かせる為の手術器具で両目を無理やり開かされた少女の隣には恐ろしい人物達が立つ。
1人は手術用ガウンを着て手術用手袋を嵌めたアリナ。
もう1人はアリナの教育係として選ばれたロッジマスターの男性老人。
その老人はあろうことかドレスを纏い、厚化粧によって顔のシワを消した女の顔つき。
ほむらが見たおぞましい絵画に描かれた人物と同じ存在こそがアリナの教育係であろう。
その姿はまるで冥界の如き地獄に君臨する狂気の女王を演じる男であった。
「今日もお願いするわね」
「もう慣れたんですケド」
慣れた手つきで麻酔の目薬を子供の右目に入れていく。
そしてアリナが手にしたのは長い注射針のような道具。
「お父さん!!お母さん!!!助けて!!助けてぇぇぇーーーッッ!!」
「もっと泣き喚くといいワケ。その方が良質なアドレナクロムを抽出出来るんだカラ」
眉一つ動かす事もなく、アリナは子供の眼球に針を近づけていく。
「あーーーっ!!やだ!!やだぁーーーッッ!!」
アリナは迷う事なく針を右目に差し込み、脳の中央部分である松果体まで押し込んでいく。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ーーーーッッ!!!!」
激痛と恐怖で失禁と痙攣を繰り返していく子供の肉体。
血液吸引機械に繋がった部分から赤い血が吸引されていくのが分かるだろう。
子供の絶叫が響く中、2人は体を震わせる事なく悠々とした表情で会話する。
「フフッ…最初の頃と比べて成長したわね。子供の悲鳴を聞いても震え一つないわ」
「アリナは弱いアリナを殺していく。そして生まれ変わるワケ」
「そうね…貴方は弱者を食す強者としての道を進んでいってる。
「アリナはね、アドレナクロムを使ってアートを描く事にしたワケ」
「なるほど、子供の生き血で描いた死と再生の美…素晴らしいわ。高値で買わせてもらうわね」
「欲しいなら売ってあげてもいいんですケド?アリナのデス&リバースはあれじゃ物足りない」
「そうね…あなたは既に最高の死と再生を手にしたと聞いてるわ」
「それが…アリナがダークサマナーになった証。世話のやけるベビーだけど…愛しいカラ」
「あなたは死と再生の父親であり、母親。誇っていいわよ」
「それより、このチャイルドの呼吸が弱くなってきてるんですケド?」
「あらあら?」
心臓発作を起こした少女の体はグッタリしながら死んでしまう。
「しょうがない子ねぇ。吸い出せる分は吸い出したし、あとは調理室に持って行かせるわ」
「レイプパーティが終わったら、次はカニバルパーティ。つくづく生臭い場所なワケ」
「貴方は参加しないの?それとも…まだ肉が喉を通らない?」
「…いずれ克服するんですケド。アリナはこの弱さを認める気なんてないカラ」
「その意気よ」
子供の死体が秘密の職員達に運び出されていく。
アリナはガウンを乱暴に脱ぎ捨てた後、手を洗い終わってから手術室を出ていく。
少し歩いていたが立ち止まり、後ろをついて来ていた女装院長に向き直る。
「ねぇ、そろそろ聞いてあげてもいいんですケド」
「何を聞きたいのかしら?」
「アナタの名前」
「あら?聞きたくもない態度をしてるから語らなかったけれど」
「アリナ達は秘密を共有し合う関係。一応、仲間として聞いてあげてもいいワケ」
「そう…私達は秘密を共有し合う同士であるからこそ結束が強い。魔法少女社会のようにね」
「確かに、魔法少女社会は秘匿社会。強固な繋がりが生まれたワケ」
女装院長は歩きながら自分の女装絵画が描かれた大きな絵画の前に立った後、振り返る。
「表向きは佐藤博信と名乗っているけれど…そんな名前なんて、私には意味をなさない」
「どういう意味なワケ…?」
邪悪な笑みを浮かべた女装院長は後ろを振り向き、自分の絵画を見つめながらこう語る。
「私はね、1947年に…死んだ人間なの」
「ワッツ…?」
「元々の私はイギリス人であり、オカルティスト。儀式魔術師でもあったのよ」
「言ってる意味が分からない…なら、今を生きているアナタは何者なワケ?」
「生前の私は死ぬ間際に…悪魔を召喚したわ」
「悪魔を召喚…?ダークサマナーだったワケ?」
「私は肉体と魂を切り離して欲しいと頼み込んだの。その代わり、貴方の僕になると契約した」
「肉体と魂を切り離す…?それって、白いオコジョが得意としてるアレ…?」
「男の私は魔法少女にはなれない。だから魂を切り離すだけにして、肉体は捨てたのよ」
「なら…その切り離されたソウルは…どうなったワケ?」
「私は悪魔に頼み込み、私の魂と適合する肉体を探してもらったら…日本で見つけてもらえた」
「な、なら…アナタはジャパニーズのボディに乗り移った…イギリスのウィザード?」
「生まれて間もなく死にかけていた赤子の肉体に乗り移り、私は日本人を演じてきた…」
低い笑い声を出しながらゆっくりと振り向く。
英国紳士のような礼をした後、顔を上げながら自分の真名を名乗ってくる。
「初めまして、アリナ。私の名は…
アレイスター・クロウリーとはイギリスのオカルティスト、儀式魔術師、著述家、登山家。
魔術結社を主宰した人物であり、スピリチュアル哲学のセレマ思想を提唱した法の書を残す。
黙示録の獣666を自称し、自分の魔術にカバラやヨガ、麻薬や性魔術を取り入れた存在。
彼のオカルティズムや魔術はヨーロッパ中で嫌悪され、スキャンダルに塗れた人生を送る。
麻薬常習やバイセクシャルといった部分をあげつらわれ疎まれたが近現代思想に歴史を残す。
「アレイスター・クロウリー…?それが本当の名前…?」
「私は悪魔に魂を売り、別人に転生したわ。私もまた、死と再生を超えてきた存在なのよ」
「どうりでアナタとは妙なシンパシーを感じるワケ。名前を聞きたくなったのもソレ」
「私は転生したけど、対価は悪魔の僕となること。私にはね…任務が与えられたわ」
――
「マスター…テリオンって?」
「黙示録に記されしテリオンとは、
「サタンの力と権威を与えられたビースト…?」
「貴方も見た事があるはずの1・28事件の映像…あの御方こそがテリオンとなられる御方よ」
「あの人修羅が…マスターテリオン?サタンとなるビースト…?」
「でも我らの神はさらに生み出せと言われた。サタンの力と権威を与えるに相応しい存在をね」
「さらに生み出す…?」
「その存在となれるに値する少女を…私はこの病院の院長として、預からせてもらえたわ」
「その…サタンとなるに値するガールって…?」
「その子の名前は…暁美ほむらよ」
「暁美…ほむら…」
「彼女は生まれつき心臓が弱かった。私はその少女を死なせるわけにはいかなかったのよ」
「それで?そのガールはこの病院でライフを救われて、サタンになったワケ?」
「彼女は生き残り、見滝原中学校に通う生徒となり…魔法少女になった」
「アリナと同じ魔法少女に!?」
「彼女を魔法少女にしたのは我らの神。それこそ…彼女をサタンにするための導きだった」
「魔法少女が…サタンに…デビルになれる?どういうワケ…!?」
「彼女は魔法少女として生きた。親友と交わした約束のために戦い続けたけど…守れなかった」
その果てに啓蒙神が与えた7つの試練を潜り抜けた果てに絶望して悪魔となったと告げられる。
「魔法少女が…本当に…デビルになれたワケ…?」
「彼女こそ、テリオンの一柱に相応しき存在。でも…まだ足りないの」
「足りない…?」
アリナの体を舐め回すような目つきを向けてくる。
不快に思ったアリナは舌打ちをした後、話を切り上げて奥の通路に向かっていく。
背を向けたまま歩いていた足が止まった後、こう宣言してきたようだ。
「魔法少女がデビルになれるなら…
「悪魔になりたいの?悪魔になって…何を求めるの?」
「そんなの決まってる。デス&リバースを世界にもたらすデーモンロードになるんですケド」
アリナが遠ざかるのを見送ったアレイスターは反対の道を進みながらこう語る。
「あの子は負けず嫌いだから対抗心に火が点いちゃった感じね。話した甲斐があったわ」
途中に飾ってあったホルスの目の絵画に向き直った女装院長はこう語るだろう。
「果たしてアリナは悪魔化した暁美ほむらを研磨するための研磨剤になるのか…あるいは…」
絵画から視線を逸らし、カニバルパーティ主催会場の食堂に入っていく。
「私の残りの使命は三度目のインパクトが起こった世界の人間共に…獣の刻印を施術するのみ」
そのための準備なら日本政府や世界中の政府、世界中の放送メディアが準備すると告げてくる。
第32代アメリカ合衆国大統領フランクリン・D・ルーズベルトはこんな言葉を残す。
――世界的な事件は、
――
────────────────────────────────
見滝原総合病院の地下空間は巨大である。
暁美ほむらが悪夢の世界で見て回ったのは東側エリアに過ぎない。
地獄の光景に耐えきれずほむらは逃げ出した事で西側エリアに向かう事はなかったようだ。
西側エリアに入れる自動ドアが開き、2人の人物が入ってくる。
1人はアリナであり、もう1人はシド・デイビスであろう。
「アナタの仲魔も大きくなりましタ。そろそろダークサマナーとして実戦を経験する時期でス」
「実戦って…魔法少女が戦ってきた魔獣とでも戦わせるワケ?」
「違いまス。ダークサマナーは悪魔のスペシャリストとしテ、悪魔とも戦えなければならなイ」
「つまり…アリナが戦う相手ってのは…」
「そう、悪魔でス。この先の空間は昔からダークサマナー達の修験場として使われましタ」
「そういや…こっち側に来るのは初めてだったけど…そういうのがあったワケ?」
「この修験場は名高い悪魔召喚士一族の修験場を参考にして作られた構造。連戦となりまス」
「上等なんですケド」
ひときわ大きな自動扉が開いた後、アリナが入っていく。
「私は訓練モニター室でアナタの活躍を見守りまス。生き残れる保証はありませんがネ」
「アリナのパワーを疑う気?」
「この奥には我々ダークサマナーの中でも飛びぬけて腕利きのサマナーが待ち構えていル」
「そいつがゴールってワケ?なら、そいつを倒してアリナが名を上げるワケ」
「フフッ…生き残ってみせなさイ。そうでなけれバ、アナタに投資をした価値がなイ」
シドと別れた後、縦に長い広大な空間をアリナは進む。
「…いる。魔獣と似ている瘴気だけど…これがデビルの魔力ってワケ?」
広大な修験場を管理室でモニターするシドがマイクを使い、修験場内に音声を届けてくる。
<<ダークサマナーとしての初陣でス。私から学んだサマナー技術を全て使いなさイ>>
「…言われなくても、分かってるワケ」
左掌を掲げるアリナは魔法武器であるキューブを生み出す。
デビルサマナーは召喚管を使うものだが、彼女は使用する気配を見せない。
エメラルドの如く輝くキューブに線が入っていき、ルービックキューブのような形に変化する。
自分の魔法武器を見つめながらアリナは初めての仲魔と出会えた日の出来事を思い出す。
あれは悪魔の晩餐会に呼ばれた日、目を覚ましたアリナは周囲を確認する。
「ここ…何処なワケ…?何処かの屋上…?」
両親の脳みそを食べさせられたアリナは倒れた事で運び出される。
ここはアリナが晩餐会に参加したホテルの屋上のようだ。
「うっ!!」
口内に蘇っていくのは両親の脳みその感触であり、胃液が逆流して嘔吐しながら咳き込む。
「お目覚めですカ?」
聞きたくもない人物の声がした方に視線を向けていく。
そこにはシド・デイビスと配膳ワゴンの上に置かれた壺のような入れ物が見えたようだ。
「ぐっ…うぅ…今度はアリナに…何をやらせようってワケ…?」
「睨む事もないでしょウ?食べずに殺される選択も出来タ…しかシ、アナタは両親を食べタ」
「そ…それは……」
「それに赤子をバアル神の生贄に捧げた時かラ…アナタは十分、我らと同じく加害者でス」
事実を言われた事で顔が俯いてしまう。
自分の弱さに腹を立てるかのように震えていた時、シドがワゴンを押してくる。
「我らの主は食人を行えた者としてアナタを認めましタ。褒美をお渡しするそうでス」
「褒美…?」
「見なさイ、この
立ち上がり、言われた通りにすると何かの液体で満たされている。
「この悪魔を見つける事が出来たのは偶然だったそうでス。とても貴重な存在でス」
それは世界各地で伝説となり、語り継がれる死と再生の悪魔なのだと告げてくる。
「…デス&リバースデビル?この液体が…?」
「見ていなさイ。もう直ぐこの液体ハ…再生を迎えル」
「この液体が…リバースする…?」
「アナタが悪魔の死と再生を見届けるのでス。この悪魔こソ、アナタの悪魔となるに相応しイ」
そう言い残した後、シドは去っていく。
怪訝な表情のまま壺を見ていた時、壺に異変が生じる。
「な…なに……?」
壺がカタカタと揺れ動きながら亀裂が入っていき、アリナは壺の中に魔力を感じる。
両親の脳を食べたショックさえ忘れるようにアリナは見入ってしまう。
内側から破壊するようにして壺が弾け飛び、中から悪魔が現れる。
<<ピィーーーーーッッ!!!>>
アリナが見届けたのは死と再生の悪魔が復活する瞬間である。
「ビッグ…イーグル…?」
ハクトウワシサイズでありながらも、この悪魔は生まれたばかりの雛鳥でしかない。
「グァグァグァ……グァ?」
「このビューティフルバードが…アリナのデス&リバースデビル…?」
ワゴンの上に立ち、アリナをじっと見つめてくる。
金色と赤で彩られた羽毛を持つ美しい雛鳥悪魔は悪魔でありながらも動物に過ぎない。
雛鳥には刷り込みと呼ばれる学習形態が備わっており、最初に見たものを親と認識する。
「ピィーーーーッッ!!」
両翼を羽ばたかせる雛鳥が突然空に舞い上がる。
飛翔しながらその鳥は燃え上り、自らを象徴する姿へと変わっていく。
「あぁ…あの姿は…マジなワケ…?」
燃え上がる大鷲の如き雛鳥を人間が見たならば、世界中の人々からこう呼ばれるだろう。
「あのイーグルの正体は…
【フェニックス】
不死侯と呼ばれる侯爵階級を持つソロモン王に封印された72柱の魔神の一柱。
名は真紅の意味を持ち、エジプト神話の聖なる鳥ベンヌと同一視される。
不死鳥の所以は死なないからではない。
フェニックスは世界に一匹しか存在せず、数百年の寿命を得て死と再生を繰り返すからだ。
死期を悟ると香料の枝を集めて山を作り、上に横たわって自ら火を点ける。
身体は燃えて液状となるが、凝固するとそこからフェニックスが復活するという。
地獄の20個軍団を指揮し、序列第37位に数えられる魔の侯爵だ。
「ピーーッッ!!」
夜空を飛ぶフェニックスの長く伸びた尾羽の炎が線を描き、夜空に円環を描いていく。
さっきまでの苦しさなど忘れたかのようにアリナは死と再生の鳥に魅入られてしまう。
「…トゥービューティフル。間違いない…このデビルこそ…アリナが求めてきた美の形!!」
一目で伝えられる神々しいまでの美しい姿。
炎によって死が生み出され、再生していく究極の生命体だとアリナは絶賛してくれる。
「アリナがママになってあげる…アリナに見せて…美しさに満ちたデス&リバースをね…」
両手を広げながら仲魔を歓迎するアリナの姿を遠くから見つめるシドはこう語ってくれる。
「…フェニックスと同一視されるベンヌは太陽を表ス。
プロヴィデンスの目は片目の単眼だが、元はホルスの目なのだから両目がある。
月の左目と太陽の右目として知られたもの。
太陽も月も天空を支配する存在であり、ピラミッドの頂点である
またピラミッドは階級社会構造を表す事にも使われる。
「我らはピラミッドの頂点であり
我らのように天に上り、金星の如く輝けるかどうかがアリナには問われる。
「フェニックスハ…アナタを
過去の記憶を思い出していたアリナであったが、目の前の敵に集中する。
「…出ておいで、アリナの愛しいデス&リバース」
27個のキューブが纏まったルービックキューブの一つが外れ、アリナの周囲を飛び交う。
サイコロまでに小さいキューブが光を放ち、中に収められていた存在が解き放たれる。
アリナの固有魔法とは結界の生成。
27個あるキューブそれぞれが彼女の結界魔法であるとしたら27体の悪魔をストック出来る。
自分の固有魔法を応用したため、デビルサマナーの召喚管を必要としなかったようだ。
「ピィーーーーッッ!!」
結界から実体化した雄々しき姿はアリナの美を象徴する悪魔となったフェニックス。
僅かな期間であったが、雛鳥の頃よりも数倍は巨大な姿となっている。
フェニックスが雛鳥の姿で生きてこれたのは成鳥するまでの期間が極端に短いからだろう。
背後の空中で羽ばたきながら燃え上り、マスターであり母親でもあるアリナを守ってくれる。
周囲に漂う瘴気から現れていく悪魔達に対し、ダークサマナーとなった者は恐れを知らない。
「蹂躙するカラ。アリナの美になれるフレイムを与えてあげる…死んだら感謝してヨネ」
♦
訓練モニター室では複数供えられたモニターから修験場内の様子を確認出来る。
戦いを見つめるシドであったが、後ろに控えている黒スーツのサマナー達は驚愕してしまう。
「馬鹿な…あの小娘…本当に新米サマナーなのか!?」
「訓練期間はまだ二か月も立っていないはず…なのにあれ程まで悪魔を操れるだなんて…」
モニターの光に照らされたサングラスを押し上げるシドはこう告げてくる。
「この程度の悪魔共を蹂躙したからといっテ、威張れる存在ではありませン」
「し、しかし…魔法少女として実力者であったのかもしれませんが…あれ程とは…」
「それに…悪魔との連携である召し寄せと隠し身の技術まで…短期間で身に着けるだなんて…」
「…確か二、恐ろしい程の才能ですネ。嫉妬のあまり殺したくなるほド…妬ましい存在ですヨ」
モニターに視線を戻すと業火に包まれた修験場が映っている。
転がるのは焼き尽くされた悪魔と魔法武器の光弾で貫かれてバラバラになった悪魔の死体。
死体は弾け、感情エネルギーであるMAGとなりながら施設内を漂う。
右手に浮かべているのは悪魔を収納するキューブとは違う攻撃用のキューブ。
彼女の背中には口から炎の息を噴出する不死鳥が羽ばたきながら主人を守っている。
「残念。燃えて灰になってくれたら、アリナの死者蘇生シリーズに加えてあげたのに」
アリナとフェニックスの戦いぶりはまさに力による蹂躙劇。
魔力残量など気にせずアリナはマギア魔法を連発している。
フェニックスは人修羅のファイアブレスに匹敵する程の業火を口から吐き出し敵を焼き尽くす。
圧倒的な力押しこそ力の思想に目覚めつつあるアリナの戦い方であるが、理由もあるのだろう。
「アリナのソウルジェムにも穢れが溜まってきた事だし…吸っていいんですケド」
「グァグァグァ♪」
フェニックスの目が光るとソウルジェムの穢れが外側に噴出していく。
負の感情エネルギーを悪魔が吸収していく能力こそ『エナジードレイン』であろう。
母親を務めるアリナの感情エネルギーを嬉しそうに吸っていくフェニックス。
その光景は子供に授乳を与える母親のようにも見えてくる。
穢れの感情エネルギーを吸いきったソウルジェムは元の輝きを取り戻す。
「魔法少女になって後悔した時期もあったけど…今はラッキーだったと思うワケ」
デビルサマナーと悪魔の契約とは召喚者が生み出す感情エネルギーを悪魔に提供すること。
餌を貰えなければ飼い犬とて主人の手を嚙み千切るだろう。
フェニックスは周囲を漂う悪魔死体のMAGまで吸い尽くし、体が大きくなっていく。
「もっと食べるワケ。満足したら、そこでエンドだカラ」
奪われる者ではなく、奪うモノとしてアリナは進む。
修験場の奥にまで辿り着いたアリナは目を細めた後、奥にいるサマナーを見据える。
「あのサングラスをかけた髭面おっさんが…ここのボスってワケ?」
腕を組んで待っていたのはウラベを襲った事があるフィネガンであろう。
「フン、魔法少女のサマナーか…。ソウルジェムを用いてMAGを練り出すとはな」
「アナタが腕利きのダークサマナーって奴?アナタを倒してアリナが名を上げるワケ」
「私の名はフィネガン。先輩サマナーとして…天狗になった後輩の鼻をへし折ってやる」
「アナタの名前なんてどうでもいい。アリナは上り続けるカラ」
「飽くなき強さへの渇望か。しかし、井の中の蛙大海を知らずだな」
ポケットから葉巻を取り出して火を点ける。
紫煙を燻らせながらアリナの召喚悪魔を油断なく見つめてくる。
「フェニックスか…確かに強大な悪魔だが、一体しか悪魔を使役出来ない者など論外だ」
「アリナはアートを選ぶワケ。興味のないデビルなんか、アリナは仲魔になんてしないカラ」
「選り好みしているようでは強敵悪魔と戦っても生き残れない。魔法の属性概念を忘れたか?」
「…デビル魔法の4属性、それにバッドステータス魔法、そして即死魔法のアレ?」
「悪魔達は固有の属性耐性を持つが、同時に弱点となる属性を持つ。忘れてはならない」
「つまり…アリナのフェニックスの弱点は…」
「氷結魔法となるだろう。私が氷結魔法を得意とした悪魔を使役した上で勝てるか?」
「……………」
「上を目指し、飽くなき力を求めるならば、多くの悪魔を求めろ。貪欲なまでに悪魔を求めろ」
「オーケー…そこまで言うなら面倒見てあげてもいいワケ。アリナもデビルをもっと知りたい」
「その意気だ。もっともそれは…私との戦いで生き残れたらの話だがな」
葉巻を指で弾き、黒スーツズボンのベルトに吊り下げたメリケンサック型召喚管を外す。
両手にはめ込み、メリケンサックで武装した右拳をアリナに掲げてくる。
「案ずるな。お前が一体しか悪魔を使役出来ないなら私も悪魔を一体用意するだけに留めよう」
「スポーツマンシップでも気取ってるワケ?」
「私は元ボクサーであり、プロフェッショナル。仕事に対して独自の美学を持つ者だ」
「…まぁ、そこは否定しないワケ。アリナだって独自の美学を持っている訳だし」
「お互いの美学を貫き通すためにこそ…強さを求めるのだ。私から生き残ってみせろ」
メリケンサック型の召喚管の蓋が緩んでいき、MAGを放出してくる。
MAGの感情エネルギーが凝固して巨大な悪魔を形作っていく。
召喚された悪魔とは獅子の頭部と腕を持ち、鷲の足を持ち、背中に四枚翼を持つ獣人悪魔だ。
<<…ほう?魔法少女が相手か。ちょうど喉が渇いていた…ソウルジェムを喰わせてもらう>>
浮遊する強大な悪魔を前にした事で、さっきまでの余裕が消える。
冷や汗を流しながらも怯えた素振りを見せないアリナは強気な態度を向けてくる。
「…名前ぐらい名乗ったらどうなワケ?」
「我を前にしても怯えぬか?愛い奴め…いたぶり尽くして絶望させた後、魂を喰らってやる」
「その言葉、アナタに突き返してあげる」
「我に喰われて同化する前に我が名を称えよ。我が名は邪神パズスなり!!」
【パズス】
パズズとも呼ばれるアッシリア・バビロニアの悪魔であり、メソポタミアの風の魔王。
獅子の頭と腕、鷲の脚、背中に四枚の鳥の翼とサソリの尾、蛇の男根を隠し持つという。
ペルシャ湾から吹く南東風が猛暑と共に嵐と熱病をもたらした事から風が神格化した存在。
悪霊の王であるため、その彫像が悪霊を統御する護符として用いられる事もあったという。
シュメールの嵐の神であるアンズーの流れを引くとも言われ蝗害を具神化した存在でもあった。
「……行くぞ!!」
「ハッ!オッサンサマナーに負けるアリナじゃないワケ!!」
フィネガンとアリナは一気に動き、修験場最後の戦いが火蓋を開く時がくるのであった。
────────────────────────────────
フェニックスのファイアブレスに対し、パズスが放ったのは風の魔法である竜巻の一撃。
横回転の渦を巻く竜巻と炎が空中でぶつかり合い、周囲は豪熱地獄と化す。
「死ね~~~っ!!」
右手に出現させたルービックキューブをフィネガンに目掛けて構える。
アリナが放つマギア魔法
生物が死んで腐る九相図の名を与えられた無数の光弾の雨が敵を穿つはずだが通じない。
「えっ…?」
フィネガンはワンインチ距離であり、左腕でパリングの払い動作を行ってくる。
構えた右手が大きく弾かれ、マギア魔法があらぬ方向に撃ち出されてしまう。
「ぐふぅ!!」
右腕が弾かれたのに気が付くよりも早くメリケンサックの右ストレートがアリナの左頬を穿つ。
大きく弾き飛ばされたが、アリナは悪魔との連携を駆使した動きを行う。
サマナー達が駆使する悪魔連携の中で見られる召し寄せ技術を用いる。
離れた位置にいる悪魔を瞬時にサマナーの元にまで瞬間移動させる技法であろう。
炎を纏ったフェニックスは自らの炎を消し、上腹をクッションにしてアリナを受け止める。
「ピィー!!ピィー!!」
「ぐっ…いつの間に懐に…」
血反吐と共に折れた歯を吐き出した後、悠々と歩んでくるフィネガンを睨みつける。
「お前の戦いを見物していたが…遠距離戦しか能がないようだな?」
自分を鍛えてくれているシドと同じ指摘をされたアリナは動揺を浮かべてしまう。
接近戦の攻防など魔法少女の敵として立ちはだかってきた魔獣はしてこない。
そのためアリナは接近戦を身に着ける必要性など無いと判断した事で怠慢を選んでしまう。
それが裏目となり、弱点にさえなっているのだ。
「接近戦を挑める力量もないか?ならば、私が前に出るまでもないな」
パズスの邪眼が邪悪な光を放ち、何を使うか分かったフェニックスが動く。
「ワッツ!?」
アリナの襟をクチバシで摘まんで拾い上げるようにして背中側に放り込んだ後、羽ばたく。
あと少しパズスに睨まれていれば即死の魔眼魔法である『ヘルズアイ』によって即死している。
広大な修験場内を飛び、眼下の獲物を睨むフェニックスにアリナは話しかける。
「助けてくれたワケ…?グッボーイ、アナタは愛しいアリナのベビーなんだカラ」
優しく背中の羽を撫でていた時、無償の愛を捧げてくれた愛犬の事を思い出す。
「アナタはアリナの新しいパートナー…さぁ、そのパワーを見せてヨネ!!」
両翼に炎を纏い、大きく翼を羽ばたかせる。
放つ魔法は悪魔の炎魔法では上位と言える極大魔法の『マハラギダイン』であろう。
地上が爆裂した事で業火の地獄と化し、その規模は村一つ焼き尽くせる程の大火力。
悪魔との戦闘を想定して強固に作られた修験場だからこそ耐えられるのだろう。
「流石はフェニックスと言ったところか?」
空中に視線を移せば四枚翼で空中を飛ぶパズスの右掌に立つのはフィネガンであろう。
彼もまた召し寄せを使い、あの一瞬で回避行動を行えたようだ。
「…腕利きのダークサマナーって話はマジだったみたい」
獅子の顔を持つパズスの口元が歪み、牙をむき出しにしながら笑みを浮かべてくる。
「我とフェニックス、どちらが空の王者なのか…試してみるか?」
獅子のたてがみが逆立ち、フェニックスに目掛けて無数の毛を射出してくる。
刺さった相手を石化させて殺す『石化針』であり、魔法というよりは物理に近い攻撃であろう。
フェニックスは飛翔しながら石化針を掻い潜り、背に乗るアリナはキューブを構える。
「お返しなんですケド!!」
魔法攻撃を放つが施設内に豪風が吹き荒れた事で光弾の軌道が逸らされてしまう。
「空を制するは炎にあらず…風なり」
豪風が一気に強まり、フェニックスは姿勢制御が難しくなっていく。
「くぅ!!この湿った風は何なワケ!?」
その時、激しい悪寒と発熱、手足の痺れなどの症状がアリナに襲い掛かる。
耐え切れないアリナの姿勢が崩れた事で地上に落下してしまう。
パズスとは嵐と熱病を運ぶ邪神。
パズスにしか使えないと言われる熱病を運ぶ風魔法である『湿った風』の効果であろう。
「ピィーーーーッッ!!」
体の神経を蝕む魔法攻撃に耐性があったフェニックスが動く。
炎が消え、黒焦げた地面に激突する前に飛び込んで来たフェニックスがアリナをキャッチする。
ゆっくりと彼女を寝かせるが、アリナは体が麻痺したかのように動けない様子。
四枚翼を羽ばたかせて地上に下りたパズスもフィネガンを下ろす。
「くっ…あ…あぁ……ゴハッ!!」
俯けのまま起きようとするが、体を熱病が蝕んだ事で盛大に嘔吐してしまう。
「さっきまでの威勢はどうした?新米サマナー」
両手を広げながら近寄ってくるフィネガンはサマナーインストラクションを与えてくれる。
「これが悪魔の戦場だ。悪魔の魔法、耐性、弱点、あらゆる要素を把握して悪魔を使役する」
力押しだけで勝ち残れる程、デビルサマナーの世界は甘くはないと厳しい指導を与えてくる。
アリナは才能に恵まれているが、才能だけでは越えられない壁にぶつかってしまう。
それでも彼女は立ち上がろうとする。
「麻痺した体に鞭を打ち、私のサンドバックとなるか?」
「ゴホッゴホッ…!!アリナは負けない…負けるわけには…いかないカラ…」
「私との実力差すら理解出来ないか?」
「アナタとの実力差なんて関係ない…アリナは…
「ほう……?」
「アートの世界でも比べるエネミーなんて何処にもいない。エネミーは常に…アリナ自身」
――ライフで最も大切な事は、何をおいても
「理想には信念が必要…信念がないと困難を突破なんて出来ない…理想を選ばず妥協するダケ」
「才能だけはあるようだが、所詮は我らの猿真似をしているだけだ」
「
アリナが語るのは神秘主義的信念であり、芸術だけでなくかりんが愛した漫画家にも通じる。
真似をするからこそ真似をしたい憧れの存在へと近づいていく。
マジカルきりんが大好きな御園かりんがマジカルかりんである自分に脱我を求めるように。
「ハートは理屈を超越する…ハートに背かないライフこそストロングマンであり…幸福の道」
――アリナはガムシャラでいい…
「アリナがアリナに負けなければ…目の前の存在なんて…気が付いたら超えているワケ!!」
アリナの信念の叫びが彼女のソウルジェムをエメラルドの如き光へと変える。
その光景は強敵の人修羅相手でも自分の本心を裏切らなかった杏子の魂の輝きと似ている。
「こ…この光は……」
アリナの魂の輝きに魅入られていくパズスはアリナの輝きの中に
沈黙するフィネガンは抗う余力もないアリナを見つめた後、溜息をつく。
訓練モニター室の強化ガラスに視線を向ける彼は見物するシドにこう告げてくるようだ。
「この娘は合格だ。私が保障する」
モニター室にいたシドはマイクを使って音声を届けてくる。
<<フィネガンに認められた以上ハ、アナタは合格ですヨ…アリナ>>
力が抜けたアリナが片膝をつく中、彼女の前にまで歩いてきたフィネガンはこう語る。
「お前はサマナーにとって、最も大切なモノを持っていた」
「サマナーにとって…最も大切なモノ…?」
「何者にも惑わされない折れない心…
「折れない…ハート…?」
「悪魔は狡猾だ…隙あらばサマナーを出し抜き、破滅させる。だからこそ迷わない信念がいる」
「デビルの惑わす理屈や誘惑さえ跳ね除ける信念…?」
「お前の言葉はボクシングの世界でも同じだった。ベストを尽くす…敵は己自身だ」
「フィネガン……」
「恐れに支配された人生など破けた風船と同じ。学問しようが経験しようが…
――当たって砕けろの精神こそが大切なのだ…サマナーの世界だろうが、何だろうがな。
フィネガンが後ろを振り向くとパズスも頷いてくれる。
右手をパズスが掲げるとアリナの体を蝕んでいた湿った風の熱病が解けていく。
立ち上がったアリナはフィネガンを見つめながら微笑んでくれたようだ。
「流石はプロフェッショナル…アリナと同じマインドをしてたってワケ。認めてあげるカラ」
「フッ…大口を叩く事も大切かもな。消極的な言葉しか言えん者の人生は…暗いものだ」
踵を返してパズスの元へと歩きながら片手を上げて別れを告げる。
パズスを召喚管に戻そうとしたが、パズスはフィネガンに対して語り掛けてくる。
「…フィネガンよ、我はこの娘と共に行く」
「パズス…?」
「この娘の魂の輝きの中で見出せた…我ら悪魔を導く者…
少し沈黙したがフィネガンは頷いてくれる。
「世話になった」
会話が聞こえていたアリナは状況を理解した事で悪魔を収納するキューブを生み出す。
キューブの一つが外れ、パズスの元へと飛翔していく。
「我の新たなサマナーとなりし娘よ。見せてみよ…汝の魂のいく末をな…」
アリナの結界魔法に収納されたパズスに続き、フェニックスも収納される。
修験場を後にするアリナの背中を見守りながらフィネガンはサングラスを押し上げる。
「周りの正しさに身を沈め、流されていくだけの弱者にはなるなよ…アリナ」
――お前も私と同じく…プロフェッショナルとなる者だ。
それから月日が立ち、神浜市において左翼テロが吹き荒れた11月1日を迎える。
夕暮れが近づく空を見上げているのは魔法少女姿のアリナであろう。
彼女が立っている場所はアリナの自宅である最高級ホテル最上階のペントハウスの屋上。
ヘリポートの端に立ち、かつてあった魔法少女としての人生を思い返している。
空に見えてきたのは迎えの大型ヘリであり、悪魔を収納したキューブを見つめていく。
「アリナが生まれたカミハマシティ…みんな仲良しのように見えて…
西側の人々は東側の人々など無関心であり、あるのは周りから刷り込まれてきた歴史背景のみ。
周りの正しさという同調圧力のせいで人々は傷つけ合うだけだった呪われた街を思い出す。
「
善人だと思われた西側の魔法少女達でさえ、東の人々を救う為の政治を叫んだ事はない。
あったのは可哀相な東側に同情する自分達に酔いしれた後、楽しい日常に戻るだけの毎日。
正義の味方を気取る魔法少女達が繰り返す堕落を誰も批判しなかったのをアリナは覚えている。
「アリナはね…百万人の付和雷同より、1人のリアリストを望むんですケド」
アリナが望んだ人物とは神浜の魔法少女社会を本気で批判するために戦い抜いた男。
後に覚醒して裁く者サタンとなった人修羅と呼ばれる悪魔であろう。
「アリナはこれからも…デビルと共に生き続ける。もうあのシティに…未練はないカラ」
踵を返して降り立ったヘリに向かって行くアリナはダークサマナーとして生きる道を選んだ者。
死と再生の美を極める為に生きる者であり、従えた悪魔は死と再生の悪魔と熱病の悪魔。
アリナの足取りに迷いはなく、生まれ変わる為に死んだ者は誰にも流されない者となるだろう。
死人とは何者にも流されない存在なのであった。
アリナの仲魔に相応しい悪魔として選んだのは、フェニックスとパズスでした。
アリナの美のテーマとマギレコドッペルテーマがくる悪魔はもう、この2体しかないと思いまして。
アリナの仲魔はまだ追加する予定ですが、なかなか決まらん(汗)