人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
アリナが住まう新たな住処は高層マンション屋上部位である最高級ペントハウス。
直通エレベーターから下りれば、4階丸ごとアリナの居住区エリアである。
天上の高い広々とした空間を見れば高級家具が並びたつ。
大きなキッチン、様々なバスルーム、書斎ルーム、遊具室、屋内プールにトレーニングルーム。
広々としたルーフバルコニーに出ればイングリッシュガーデンを思わせる景色が広がる。
屋上に出ればヘリポートと直通しており、ここからヘリに乗って移動出来るようだ。
たった1人が暮らすにはあまりにも広々とした豪邸。
彼女…いや、彼はここでどんな毎日を過ごしているのだろうか?
今日はそんなアリナの新しい生活の一部を語る物語。
日も昇り切らない早朝。
朝起きるのが苦手なアリナであるが…目覚ましの時計が鳴ると同時に目を開ける。
大きなベットから飛び起きて運動着に着替えてから下の階に向かう。
「ハァ!ハァ!ハァ!」
トレーニングルームでは柔軟体操を終えたアリナがランニングマシンの上で走り続ける。
ひとしきり走り終えたら、今度はストレッチ器具を使って股割り中。
「グググ…開き切らない!!アリナって…こんなにボディが固かったワケ!?」
朝起きるのも運動するのも億劫な人物であったのだが、見違えるほどの行動力。
アリナをここまで変えたキッカケとは何か?
それはフィネガンに成す術もなく負かされたのが原因なのだろう。
接近戦を挑まれ、抵抗も出来なかったのがよほど悔しかったのだ。
「フンッ!フンッ!」
壁に供えられた鏡を見ながら蹴り足を伸ばし、蹴り足動作を確認する。
どうやらシドからカポエイラも教えてもらう事にしたようだ。
カポエイラトレーニングを終える頃には、ビルの窓ガラスから日差しが入り込む。
「ハァ…こんなことなら、スクール時代にもっと運動しとけば良かったんですケド」
汗まみれになった体を潤すように水を飲み、隣接したシャワールームで汗を流す。
ガラスの向こうに見える湯気の世界には…アリナが少女である事を示す膨らみが見える。
それでも、今のアリナは名誉男性。
女性である事を意識させる服装からは遠ざかっているようなのだが…。
それでも流石に男性用の下着を履く事には抵抗があったようだ。
黒のショーツとブラを着て長い髪を乾かす姿は女性そのもの。
バスローブとスリッパ姿の彼女はエレベーターに乗り込み屋上に向かう。
「グッモーニン、アリナの可愛いキュートキッド」
ヘリポートを見れば巨大な鷹の姿を誇るフェニックスがいるのだが…。
「グァ!グァ!」
何やら足をばたつかせて交互に持ち上げている光景が続く。
「プッ!アリナの真似をしてるワケ?ほんとキュートなんだカラ♪」
「グァ?ピーーッ!」
アリナが来たのに気付いたフェニックスは駆け寄ってきて頭部を近づける。
「よしよし、グッボーイ」
顔を擦り付けながらフェニックスを撫でていく。
何処かその姿は悪魔の母親のようにも見えた。
「ブレックファストは食べたワケ?」
「ピーーッ!」
「そう、もうミールは自分で探して食べれるようになったワケね」
「ピーーッ!」
巨大なクチバシを見れば…血で汚れている。
それが何なのかはアリナには分かっていた。
バスローブのポケットからタオルを取り出し、口元の血糊を拭いてあげる。
「アリナもアナタのように…ちゃんと肉食出来るようにならなきゃね」
「グァ?」
「何でもないカラ」
手を振った後、部屋に戻っていく。
見送ったフェニックスは眠くなってきたのか座り込んで目を瞑っていった。
……………。
エレベーターから下り、一階部分と言えるスペースから階段を上っていく。
二階空間は生活スペースとなっており、吹き抜けのリビングルームや大型キッチン等が見える。
リビングの窓は全て電動ブラインドが閉められており、シャンデリアライトが照らす空間だ。
「アリナのブレックファストは出来てるワケー?」
不機嫌そうな声を大型キッチンに向けて言う。
ここに来た頃には世話人が何人かいたのだが…アリナは全員追い出している。
家族の肉を食わされたのだ…無理もない。
では、アリナ独りで暮らす豪邸の中には現在誰がいるのだろうか?
<<うむ、出来ているぞ>>
アリナが椅子に座れば、朝食が並べられている。
お茶を淹れている人物とは…吸血鬼悪魔となった和泉十七夜。
着ている服装はクラッシックメイドを思わせる衣装姿をしていた。
「かけてくれ、ご主人」
「その言い方やめるワケ。アリナは別に、ここの所有者じゃないんですケド」
「むっ?そうか…。では、なんと言えば良いのだろうか?」
「アリナはアリナでいいカラ」
「アリナか…分かった。飲み物は牛乳がいいか?それとも緑茶か?」
「ウォーターで……やっぱ止める。ミルクでいいカラ」
「うむ、骨太な強い女になるがいい」
「アリナはもうガールは辞めたって、言わなかった?」
「……そうだったな。すまなかった」
視線を自分の机に向ける。
彼女の席に並べられていたのは、卵や野菜を中心とした洋食メニュー。
「アリナのオーダー通り、ミートは使ってないクッキングで安心したワケ」
「自分はこれでも家族の料理番を務めていた。それなりに腕には自信がある」
「アナタも席に座ればいい。お互いさっさと食べて、デイリーワークを片付けるワケ」
「そうしよう。君は豪邸の管理を自分に任せてくれたからな…日光を遮断出来る家で助かった」
朝食を始める2人の姿は、まるでルームシェアをしている友人同士のようにも見える。
「アリナの代わりにミートは食べていいって言ったけど…レバー刺し身なワケ?」
「…自分は吸血鬼にされた。血の代用品になるのは鉄分だと…クドラクから教わったんだ」
語りたくもない者の名を呟いた彼女の顔が俯いてしまう。
重い空気となった朝食時間が続いていく。
アリナは十七夜の姿を見つめながら、物思いに耽る表情を浮かべる。
彼女が思い出していたのは数日前のこと。
吸血鬼であり元魔法少女の十七夜を家に連れてきた…ユダの事を思い出していた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
玄関を開ければ、にこやかな笑顔をしたユダとオドオドした表情の十七夜。
ユダの肩に担がれているのは十七夜用のベットとして用意した棺桶ベットだ。
アリナは笑顔を返し、勢いよく扉を閉める。
「ま、待ってくれ!夜分遅くの急な訪問だったのは悪かった!!」
<<アリナの家に突然用事があるとか言ってきたけど…そういう魂胆だったワケ!?>>
「十七夜君が暮らしていける家を他にも用意したんだが…君のところがいいと言われたんだよ!」
<<それでどうして…アリナがホイホイとイエスって言う発想が出てくるワケ!?>>
「彼女は元魔法少女だ!君も魔法少女としての自分を捨てた者なのだから…」
<<ノーサンキュー!アリナの世話人なんて…もういらないんだカラ!!>>
インターホンから拒絶な大声が聞こえた2人が肩を落とす。
「…無理もないか。あれ程の所業をされたのだからな…」
「……ユダさん、自分に話をさせてくれ」
インターホンのボタンを押し、カメラに向けて真剣な眼差しを向ける十七夜。
「聞いてくれないか?自分が何故、君と一緒に生活がしたいと思ったのか…その動機を」
インターホンから返事は帰らないが、語り続ける。
「自分は読心術を使える者だ。だが、己自身を読む能力が欠如している者だと…君に教えられた」
<<……それが、どうかしたワケ?>>
返事が返ってきたから続けて胸の内を語っていく。
「ひとつの綻びから、なし崩し的に自分の在り方は壊れた。だからこそ…自分は観察者が欲しい」
<<……アリナの鑑定眼で、毎日アナタの言動をチェックして欲しい?>>
「自分は…負の潔癖主義者だ。いずれまた、己のエゴに飲み込まれる日がくる…それが怖いんだ」
<<…かつてのアリナは、カミハマのアウトサイダーだった。…そんな奴でも、いいワケ?>>
「はみ出し者だからこそ、冷静に観察してくれる。嫌われる敵になってでも…批判してくれる」
――そんな君が……自分は欲しいんだ。
ゆっくりと扉が開いていく。
顔を覗かせてきたアリナの表情は…頬を染めていた。
「…プロポーズみたいなセリフは、アリナはノーサンキュー。でも、世話人1人ぐらいは…」
懐柔されたアリナの表情を見たユダはニヤニヤした表情を浮かべてくる。
玄関扉に足をかけ、強引に扉を開けてきた。
「いや~流石は魔法少女同士の絆。さて、十七夜君のベットはどこに置こうかな?」
「ちょ、ちょっと!アリナの家に勝手に……」
「……なるほど。勝手に上がって欲しくなかったのには、理由があったわけだね」
部屋の中を見渡せば…散らかり放題。
アリナに女子力を期待するのは難しそうな光景が広がっていた。
「……いいのか?」
オドオドした表情をアリナに向けてくる。
大きな溜息をつき、片手でOKサインを描いてくれた。
「この物件は高層ビルの窓が使われてるから日差しが強いな…奥まった部屋を探そう」
気が付いたらユダは階段を上っていく。
「ちょっと!アリナの家を勝手に散策しないで欲しいんですケド!」
慌ててユダの後を追いかけるアリナの後ろ姿を見て、十七夜の口元には微笑みが浮かんだ。
「……ありがとう、感謝する」
受け入れてくれた者のために頑張ろうと、周囲の散乱っぷりを見つめながら決意する姿。
看板メイドとして働いてきたメイドのなぎたんに訪れた新たなるスタートだった。
……………。
場所は変わり、アリナの豪邸の3階部分。
客人用の寝室として使われてきた部屋には階段を登ってきた3人がいた。
「…むぅ、棺桶ベットか」
ユダが持ってきた棺桶ベットをジロジロ見つめる。
「君の身長に合わせて作らせた。中にはマットレスを供えてるから背中も痛くはならないだろう」
「へぇ、死者が起き上がる棺桶ベットねぇ?アリナ的には超グットなんですケド」
「よ、よし…せっかく作ってくれたんだし、入ってみるか」
赤いマットレスで敷き詰められた棺桶ベットに入り込む。
「むぅ……どっちに頭を向けて寝ればいいんだ?」
棺桶の中でゴソゴソ動き回る吸血鬼少女の姿を見て、二人は苦笑い。
「閉所恐怖症とかは大丈夫そうかい?」
「うむ、自分はそういう恐怖症を感じたことはないぞ」
棺桶扉の開け閉めをしながらも、棺桶生活に不安そうな表情を浮かべてくる。
「あ、そういえば…」
アリナが部屋から出ていき、戻ってきた彼女の手には室内ガイド本が持たれている。
「このペントハウスには電動ブラインドが備え付けられてたのを忘れてたんですケド」
「ほう?ビルに照り付ける日差しと紫外線を守ってくれる設備付きだったか」
「では、自分はこの棺桶ベットではなく…隣にあるベットで眠ってもいいということか?」
「やれやれ…ここの物件内容を把握しておくべきだったな」
「アリナ的には、こっちのベットの方がオススメなんですケド」
「いや…遠慮する。自分は人間として生きてきた者だ…可能な限りは人間らしく生きたい」
「残念。でも、アンデットヴァンパイアと暮らせるなんて…アリナワクワクしてきちゃった♪」
「仕方ない、棺桶は持ち帰ることにするよ」
「いや、これは残しておいてくれ。日差し避けとして使える日が来るかもしれないからな」
「やっぱりヴァンパイアに棺桶はセットってワケ。それとも…単なる貧乏性?」
「…手厳しいな、君は」
ガックリ肩を落とす貧乏少女の姿を見て、アリナとユダは微笑む。
新たなるルームメイトを迎え入れた彼女の表情にも穏やかさが蘇っていく。
吸血鬼悪魔とダークサマナー、2人の共同生活がこれから始まっていくのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――
物思いに耽りながら食事をしていたら、朝食を食べ終えていた。
「それじゃ、アリナは着替えて出かけてくるから後の事はお願いするワケ」
「了解だ」
不意に誰かの携帯の音が響く。
「アリナの携帯じゃないんですケド」
「これは…自分に渡してもらえた携帯からだな」
メイド服のポケットから携帯を出し、通話ボタンを押す。
「おはよう、十七夜君」
連絡相手はユダだったようだ。
「自分に何か用事か?」
「ダークサマナー達が利用している修験場に来てくれ。場所はアリナ君に聞いて欲しい」
「そこで何かを行うのか?」
「君も悪魔になった。吸血鬼悪魔としての戦い方をクドラクが教えるそうだ」
クドラクと聞き、眉間にシワが寄ってくる。
「……断る。あの男の顔を見るだけでも反吐が出る」
「そう言うな。吸血鬼としては初心者なんだから、吸血鬼の先輩からは多くを学べる」
「しかし……」
「我々の戦力に早くなりたいと言ってきたのは君の筈だ」
「……そうだったな。選り好みなど、自分は選べる立場ではなかった」
「私も同席してクドラクを監視する。彼が君に乱暴を働かないよう見張っていよう」
電話は一方的に切られてしまう。
「出かけることにするワケ?」
「お達しがあったからな。ダークサマナー達が利用する修験場を知っているか?」
「オフコース。アリナも利用している場所だから案内出来るワケ」
「ではお願いしよう。自分も服を着替えてこないとな」
「着替えはあるの?」
「あっ……」
今着ている服も使用人室から借りているもの。
彼女は拉致されて連れてこられたのだから、着の身着のままというわけだ。
「ハァ…仕方ない。日が沈んだら、アナタの日用品を買いに行くことにしてあげる」
「いいのか…?自分はまだ給料を貰えていないから…その…」
「アリナの生活費から出してあげる。これは貰い物だからジャブジャブ使っていいワケ」
「何から何まですまない…自分は君に頼り切りだな」
「その辺はギブ&テイクにしてあげる。後でアリナの役に立ってもらうんだカラ♪」
「むぅ?」
ニヤニヤした表情を浮かべ、両手の指で四角の形を作りながら覗き込んでくる。
「あっと、もうこんなタイム?アリナ着替えてくるから、食器片づけといて」
「うむ。しかし…参ったな。吸血鬼の自分が外に出歩ける時間帯じゃないぞ?」
「その点は準備しておくから、心配いらないんですケド」
「そうか?では、任せるとしよう」
スマホを取り出し、どこかに連絡しながら自分の部屋へと戻っていく後ろ姿を見送る。
程なくして男装服に着替え終えたアリナがメイドの十七夜を連れ、エレベーターに向かう。
高層ビルの地下駐車場に呼びつけておいた迎えの車に向かう2人。
日光に弱い十七夜のためにリアガラスを鉄板で覆ったラグジュアリーリムジンが停車していた。
「なるほど…これなら日光は後部座席に入らないな。それにしても…リムジンに乗るのか…」
「早く乗る」
「待て、心の準備が……」
「貧乏人のハートの準備を待ってる暇はないカラ。ハリーハリー」
「わ、分かった!押さなくても自分で乗れる!」
2人を乗せた高級リムジンが発進していく。
道を走るリムジンの空高くにはフェニックスの飛ぶ姿。
母親を警護する役目を果たす親孝行な子供なのだろう。
後部座席に座る十七夜はどこか落ち着かない様子だ。
「むぅ…貧しい家で生活してきた自分が、こんなVIP待遇を受けていいのだろうか?」
「細かい事を気にし過ぎていると、若白髪が生えるんですケド」
「嫌味か?自分の髪は元々白髪色だ」
「ダッツライト。忘れてたワケ」
「ハァ…この新しい生活に慣れるまで、暫くかかりそうだな」
不安を感じる十七夜を乗せたリムジンは見滝原市を目指して進んでいった。
……………。
アリナと別れた十七夜がいる場所とは、見滝原総合病院の地下西側エリア。
ダークサマナーの修験場で彼女を待っていたのはユダとクドラクである。
「よ~く来たなぁ~十七夜。オレの兄妹よ」
「黙れ。貴様に兄妹扱いされるのは…反吐が出る」
「つれない態度だな?まぁいい、シドの旦那から頼まれた教育をさっさと済ませて帰るとするか」
「十七夜君、これからの君は悪魔として生きるのだが…君は特殊な悪魔のようだ」
「特殊な悪魔とは?」
「君は元々受肉した魔法少女から悪魔に変化した。MAGから生まれた悪魔とは違う」
「召喚されて生まれたオレ達悪魔は概念存在。悪魔の姿を人間が視認することは出来ねぇ」
「つまり、魔獣のような存在が悪魔というわけか?そして自分は…その中間になると?」
「その通り。君は概念存在としては完成していない…いわば悪魔化した人間のようなものさ」
「この世界を統べる皇帝陛下となられるだろう人修羅様と同じく、悪魔人間とも言えるんだよ」
「人修羅……?自分以外にも、悪魔人間はいるというわけだな」
「君が悪魔化した姿は、魔法少女時代と同じく人間に視認される。気を付けたまえ」
「分かった、そうしよう」
「それじゃあ、早速ヴァンパイアレッスンを始めるとするか」
両手を鳴らし始めるクドラク。
ユダは離れていく姿を見た十七夜の口元には不敵な笑みが浮かぶ。
「…なるほど、荒っぽい教育になるというわけだな?」
互いが向き合い、構える。
「もう魔法少女じゃないんだ。今までの戦い方は忘れるつもりで攻めてきな」
「…いいだろう。自分も試してみたかった…悪魔化した自分の力を!」
ライトで照らされた修験場内。
十七夜の影が蠢き始め、影の中から無数の蝙蝠が飛び出す。
蝙蝠は十七夜の体に纏わりつくように集まり、彼女の戦闘衣装を編み込んでいく。
現れたのは魔法少女の和泉十七夜ではない、悪魔人間となった和泉十七夜の姿だ。
「悪魔変身や蝙蝠を操る力ぐらいは理解しているようだな?」
「そうだ。しかし…魔法少女時代の武器である鞭はもう…錬成出来ないようだ」
「気にするな。それ以上の恩恵をお前は授かっているのだと…オレがレクチャーしてやらぁ!」
クドラクは指を揃えて手招きする挑発。
十七夜は右手を翳し、周囲を飛び交う蝙蝠に魔力を送る。
吸血鬼師弟の対決が始まったのである。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「あの時に受けた借りを返してやる!」
無数に飛び交う蝙蝠達が赤く帯電していく。
「訓練程度で終わると思うな!!」
右手を翳し、蝙蝠達を放つ。
かつての魔法少女時代に得意としていたマギア魔法を模した一撃だ。
ニヤニヤした表情をしたクドラクの体に変化が見える。
「なんだと!?」
彼の体が一気に霧となり、無数の蝙蝠の一撃が素通りしてしまう。
周囲が毒々しい濃霧に包まれ、実体を持たなくなったクドラクに警戒する。
「これがあの時にしてこなかった霧化なのか…?それに何だ…この酷い臭いは?」
<<後ろがガラ空きだぜ>>
「なにっ!?」
霧が集まり実体化すると同時に、十七夜を背後から羽交い絞め。
拘束された十七夜は吸血鬼の力で振り解こうとするが、ビクともしない。
「これがヴァンパイアの能力の一つだ。そして、お前が吸い込んだ霧は毒でもあったんだ」
「くっ…!つまり…ヴァンパイアは霧になれる上に、毒を吸っても大丈夫というわけか?」
「毒や疾病のような体の神経を攻撃してくる魔法は効かない耐性を持つ。お前もやってみろ」
「自分も霧化出来るのか…?」
「オレが吸血鬼にしてやった男でさえ簡単に出来た。イメージしろ、お前の体が応えてくれる」
「…いいだろう」
目を閉じ、意識を集中する。
(自分は水だ…水蒸気のように形無き者……)
十七夜の体に変化が生まれる。
白い霧のようになっていき、羽交い絞めから抜け出せた。
慣れない芸当のため直ぐに霧化が解けるが、実体化すると同時に宙を舞う回転蹴り。
クドラクは右腕を上げてガードし、不敵な笑みを浮かべてくる。
「呑み込みが早いところは100点だが…可愛げのない性格をしてるところでマイナス50だ」
「貴様から100点を貰えても嬉しくなどない!」
「体を瞬時に変化させれるぐらいにまで磨き上げろ。オレ達の体は形があって形がない存在だ」
右手を翳し、氷結魔法を放つ構え。
「チッ!」
放たれたマハブフーラに対し、十七夜の体が変化して無数の蝙蝠化の回避行動。
距離を離したところで実体化して右手を翳し、いつでも反撃出来る姿勢を崩さない。
「その調子ならオレが教える手間も少なくて済むな。今度は悪魔の魔法を教えてやる」
「悪魔の魔法…?自分も使えるというのか?」
「ヴァンパイアはサイと呼ばれる攻撃魔法が使える。サイってのはサイキックの略だ」
「つまり…超能力者のような力が使えるというのか?」
「オレがお前に読心術を行使しただろ?悪魔の読心術はサイキック魔法の応用なのさ」
「では、魔法少女でなくなった自分だが…以前のような読心術が使えるというわけだな」
「それだけじゃないぜ」
クドラクが十七夜に向けて右手を翳す。
「うわっ!?」
十七夜の体が宙に浮かび、一気にクドラクの前にまで引き寄せられた。
「これがサイだ。物体を浮かせて引き寄せたり、遠くに飛ばしたり出来る」
「ぐっ…!体が…動かない…!!」
「そしてこれが…威力を上げたサイオだ」
クドラクの右手がまるで固い林檎を握り潰すかのようにして動く。
「ぐぁぁぁーーーーッッ!!?」
まるで全身を万力で締め上げられるかのような苦しみに襲われる十七夜。
右手を下ろされ、解放された彼女は地面に蹲ってしまった。
「サイは集中力がかかる魔法だ。前に吸血鬼にしたヤクザは…スプーンも曲げられなかったなぁ」
「ハァ…ハァ……自分にも、これが出来るというのか…?」
「練習あるのみだな。サイの魔法が使える悪魔は限られている」
「…分かった、鍛錬に励もう」
「さて、ヴァンパイアの能力についてのレクチャーに戻ろう。お前…血は吸っているか?」
「……血の代用品で我慢している」
「それだといずれ我慢出来なくなる。吸血鬼に血を吸われた者がどうなるかを…見せてやるぜ」
指を鳴らす。
鍛錬用の悪魔が内臓されたゲートが次々と開いていく。
中から現れた存在とは…屍鬼にされてしまった人間達。
<<GRRRRR……>>
「こ…この青白い肌をしたゾンビ共はなんだ!?」
「こいつらは屍鬼。オレ達に血を吸われた非童貞、あるいは非処女だった人間の末路だ」
「そんな…自分が人の血を吸って…性の喜びを知っている者だったら…こうなるのか!?」
「こいつらはオレ達の使い魔として操ることも出来る。今のこいつらはオレの傀儡だ」
「貴様…まさか人間を襲ってまで用意したというのか!?」
「優等生を気取っていられるのも今の内だけだぜ。こいつらを始末しろ」
クドラクの目が怪しく光り、屍鬼の目も同時に光る。
<<シャァーーーーッッ!!!>>
屍鬼達が大挙して十七夜に襲い掛かってくる。
「や、やめろぉ!!」
襲い掛かるかつての人間達に対して、手加減を加えた徒手空拳で倒そうとする。
しかし痛覚が麻痺した屍鬼達は倒れても起き上がり、十七夜を襲い続ける。
「未だに不殺ごっこか?屍鬼にされちまった奴らはもう人間には戻れねぇ、遠慮はいらねーぞ」
「だ、黙れ外道め!!自分に…また人間を殺させようとするのかぁ!!」
正義の変身ヒロインとして生きた者の矜持を捨てきれない者を見つめるユダの姿。
テコ入れが必要だと感じた彼の笛が再び吹き鳴らされた。
「案ずるな、十七夜君。その者達はな…神浜に差別を撒き散らしてきた西の差別主義者だ」
「なんだと…!?」
「神浜テロが起きたその後の東がどうなっているのか…君は知っているのか?」
「何が…起きているんだ?自分の故郷の人々に…一体何が!?」
「
「アパルトヘイト…だと?」
「今の神浜市議会では、アパルトヘイト条例の制定が急がれている。東住民に対する差別条例だ」
「馬鹿な!?どうしてそんな条例を…西側の奴らは平気で作ろうとする!?」
「東の人々を人間扱いしないからさ。就業・居住・教育・治安・住民分類を推し進めるのだ」
「ふざけるな!!たしかに…東の人々は街を破壊した!それでも…それは西の連中のせいだ!!」
「その通りだ。言われも無き差別の歴史は、テロという実害によって…狂気を極めた」
「東の人々は今…どうなってる!?西側の連中は…何をやっているんだ!?」
「…
「ヘイトクライム…?」
「嫌がらせ、脅迫、暴行等の犯罪行為。連日続く西側住民のヘイトスピーチがそれを促す」
――いずれ東の人々は…
ルワンダ虐殺とは、1994年にアフリカのルワンダで発生した大量虐殺である。
フツ系の政府とそれに同調するフツ過激派によって、多数のツチとフツ穏健派が殺害された歴史。
ルワンダ全国民の10%から20%にも上る約100万人もの人々が虐殺されてしまった。
原因は、ヘイトスピーチからヘイトクライムにまで流れていったこと。
メディアがツチと、ツチに味方するフツ穏健派は殺すべきゴキブリだと扇動したのだ。
「東の住民はテロリストだ。いつ襲われるか分からない。だから隔離しろ、街から追い出せ」
――
――それこそが、アパルトヘイトの歴史というものさ。
青ざめた十七夜の表情だが…次第に歯を食いしばる程の怒りに変わっていく。
「ふざけるな……ふざけるなぁぁーーーッッ!!!」
怒りに呼応するかの如く、赤い魔力が全身から噴き上がる。
その光景を見たクドラクとユダの口元に笑みが浮かんだ。
「吸血鬼は噛まなければ血を吸えないわけじゃねぇ。お前も使ってみせろよ」
――オレ達ヴァンパイアがもっとも得意とする魔法。
――『吸血』をな。
蝙蝠の羽が生えたモノクルが怪しく光る。
両手を開けて構え、周囲を異界化させていく。
異界化した光景とは…まるで墓場の世界。
「うぉぁあああーーーーッッ!!!!」
開かれた両手から赤い波動を放ち続ける。
<<グアァァーーーッ!!!?>>
屍鬼にされた者達の体の皮膚から流れ出すのは…おびただしい血の雫。
念動力で全身から吸い出されるかのようにして絞り尽くされていく。
絞られて宙を浮かぶ血の塊が凝固していき、無数の赤い蝙蝠と化して十七夜の体に集まりだす。
クドラクに痛めつけられた傷が回復していき、さらには屍鬼達の魔力まで吸い尽くす。
全身を用いて血を吸いつくしていく光景。
攻撃と回復を同時にこなす魔法…それこそが、悪魔達が用いる吸血魔法だ。
「…血痕も残らないようにしてやる」
広げた両手を頭上に掲げる。
大量の血で生み出された蝙蝠が収束していき、赤黒い球体と化す。
血を吸いつくされてミイラのように痩せ細った屍鬼達に向けて放つのは…十七夜の極大魔法。
右手を前に向け、左手で支えて放つ。
「さぁ、クライマックスだ」
――フフフ……ハァーハハハァ!!!
頭上の赤黒い球体が破裂し、巨大な魔力の奔流と化す。
<<Aghhhhhhh!!!>>
魔力の奔流に飲み込まれた屍鬼の体は欠片も残らず消滅していく。
これがヴァンパイアと化した十七夜の極大魔法『ブラッディ―・ルーラー』の一撃。
悪魔を表す真紅の瞳を輝かせた十七夜が…吐き捨てるように呟く。
「…太陽にでも祈っていろ。腐り切った西側の連中にだって、太陽は平等だ」
拍手の音が響く。
拍手をしていたユダであったが歩み寄ってくる。
「素晴らしい。君の怒りの力こそが我々の博愛結社には必要なんだよ」
「…どういう意味だ?」
「我々のスローガン、自由・平等・博愛。それを望まない邪悪な存在は…誰だ?」
「…西側のように、エゴに腐り切った……人間共だ」
「我々に必要なのは正義を執行する剣。振るう者は誰よりも
「こんな吸血鬼の自分にも…正義の剣を振りかざす資格があるのか?」
「私が言ったことを忘れるな。人殺しの悪魔であろうとも、皆が平等なのだ」
「ユダさん……」
両肩に優しく手を置き、にこやかな笑みを向けてくる。
「私の目に狂いはなかった。君のように道徳と正義を愛する者こそが、世界の未来を築く」
真顔でそんなセリフを言われたものだから、背を向けてしまう。
彼女の頬は照れたように赤くなっていた。
クドラクも近寄ってきたが…その表情は驚愕に包まれている。
「…これ程の吸血魔法を見たのは初めてだ。どうやら…とんでもない逸材を拾ったみたいだぜ」
「フン、敵に塩を送ってくれたことを後悔する日がくるかもな」
「ぬかせ!お前みたいなガキヴァンパイアなんぞに!クドラクの座はまだ譲れねぇ!!」
顔を近づけ、火花が飛び散るように睨み合う師弟を見ていた彼は両手をオーバーに広げてしまう。
そんなユダだったが腕時計を見て十七夜に向き直る。
「もうこんな時間か。たしか君はアリナ君の家に帰って夕飯の支度をするんだったな?」
「むっ?もうそんな時間か…すまないが、今日のトレーニングはこれで終わらせてもらう」
「人間の飯なんぞを有難がるとは…ヴァンパイアの風上にもおけねぇ娘だな」
「人間の食事の美味さを忘れた化け物に言われたくはない」
「病院の地下駐車場に車を回しておく。今度からあのリムジンは君の移動手段として使ってくれ」
「あ…有難く使わせてもらう。こんな自分がリムジン生活か…家族が知ったらさぞ笑うだろうな」
踵を返して帰っていく十七夜の後ろ姿をユダとクドラクは静かに見送る。
歩きながらも彼女はこう呟く。
「…人間という生き物が、どういう連中なのかを理解した。自分はもう…迷わない」
――この世に自由と平等と博愛をもたらす事に異を唱える者達は…絶対に許さない。
――カタコンベの如き死の山を築き上げようとも…博愛に満ちた世界を自分は目指そう。
修験場を後にする十七夜。
残されたクドラクであったが、ユダの方に向き直る。
「…流石は悪魔の笛吹き。たとえ毒の耐性を体に纏おうとも…心までは守れないってわけか」
ユダの口元が邪悪な笑みと化す。
「適当な悪役を作らなければ、正義のヒーローに出番はない。これこそが世界を破壊する原動力」
「倒すべき敵がいなければ、正義の味方は
「だからこそ、正義の味方を気取る者達は…恐ろしいイデオロギーに憑りつかれる」
――道徳的に劣った、非人道的で理解不能で対話不能な悪者を次々と欲しがる。
――まるで漫画の変身ヒーローにでもなった気分で悦に浸り、敵を滅ぼしたがる。
「自分は正義だと信じる者は、批判になど耳を貸さない。正義の物語だけを頭に浮かべたい」
「わたしのかんがえたじゃあくなてき~しか、興味なさそうな連中だからなぁ」
「どんな卑劣でデタラメな嘘でも許されると考える。気持ちよく騙されたいだけの愚者共だ」
「十七夜は神浜で正義の味方を気取っていた連中と変わらねぇ。
「学校の同一性同調洗脳教育の賜物さ。個で考えず、周りが正しいと教えることだけを強要する」
「掲げるイデオロギーの中身を考えない奴ぁ、法さえ蔑ろに出来る。それが暴力革命ってもんさ」
「ドストエフスキーは、イデオロギーに憑りつかれた狂人を…
「概念に憑りつかれてるってわけだな。正義だの絆だの道徳だの、中身をまったく考えねぇ」
「正義や道徳という、見えないラッピング箱に隠された概念を崇める者達は…気づかないだろう」
――自分たちの方こそが、邪悪な悪者に変わっているということをね。
この世は思い込みと勘違い合戦の闇鍋だ。
皆が自分の勘違いで作った型と世界を比較し、良し悪しを決める。
一般的な正義を教える勢力、すり込む勢力が正義や絆は良い行いだと言い出す。
正義が生きるべき道だとしたことで異論を唱える者は悪にされ、制裁が叫ばれる。
客観性を無くした例を語ればこうだ。
あなたが悪者なのは、
我らの倫理となる概念がそう伝えているから、
ニーチェはこんな言葉を残す。
――道徳的理想の勝利は、他のいずれの勝利と同じく。
――非道徳的手段によって、つまり暴力・虚言・誹謗・不正によってえられる。
―― 霊魂は肉体が衰え、いまわしくなり、飢えることを欲した。
―― ... 哀れ、その霊魂こそ痩せ、いまわしくなり、飢えたのだ。
神浜で正義の味方を気取ってきた魔法少女達と、東京で正義の味方を気取ってきた守護者。
命を懸けて行ってきた正義の中身は…人修羅の暴力、魔法少女達の虚言・誹謗・不正。
まさにニーチェの言葉を体現した存在達。
魔法少女達のみの利益と、人間の守護者としての怒りと憎しみの正当化。
それこそが…正義や絆、道徳や平等という
――――――――――――――――――――――――――――――――
エレベーターから下り、玄関の扉を開ける。
「ただいま~…」
ダルそうに返事をするが今日は返事が返ってこない。
不思議に思ったアリナは二階に上っていき、キッチンに向かう。
「…いるなら返事ぐらいは返したらどうなワケ?」
夕飯を席に並べた状態で椅子に座っていたのは十七夜。
顔は俯き、表情も暗い。
「えっ…?あ……すまない、考え事をしていたんだ」
「…何かあったの?」
自分の夕飯が並べられた席に座り、十七夜を見つめる。
暫く黙っていたが顔を上げ、アリナに向き合う。
「…人間という生き物は、どうしてこんなにも……残酷なんだろうな?」
「ヒューマンに愛想でも尽きることでもあったワケ?」
彼女は語っていく。
今の神浜市が地獄と化している現状についてだ。
「自分は…正義と平等を愛した。コミュニティ意識のために戦った……その結果がコレだ!」
「…なるほど。見返りに見合わない仕打ちを与えられたってワケね」
「神浜の西側など…ケダモノ共だ!あんな連中なんか守りたくない…だから東の自治を望んだ!」
「ふ~ん、それが東側の独立自治を望んだ原因だったってワケ」
「どれだけ社会平等を説いたところで…西側の聞く気のない連中には、馬の耳に念仏だ!!」
「西側の中には、差別はよくないって言いながらも社会を変える行動をしなかった連中もいる」
「結局は自分達だけが可愛い愚か者共だった…。ならば、自分はこうしたい」
――そんな性根が腐り切った連中を
――平等と博愛こそが貴ばれるべきであり、異を唱える者達は悪であり
彼女の迷いなき表情が語る概念とは…フランス革命独裁者ロベスピエールが掲げた恐怖政治。
たった一つのイデオロギーしか認めない社会全体主義。
かつての人修羅や常盤ななか、時女一族が掲げた政治理念と共通する全体主義そのものだった。
感情のままにアリナに熱弁を振るう姿をした十七夜。
そんな彼女を見つめながらも、アリナは微笑んでいく。
「…やっと、
「えっ……?」
「フフッ♪今日は開けてもいいんですケド♪」
機嫌よく席を立ち、ワインセラーに向かう。
アリナが持ってきたのは鉄分を入れた黒ワインと、イチゴ牛乳のようなピンク色のワイン。
「お、おい…酒を飲むのか?自分達は未成年だぞ?」
「アリナは戸籍上はもう死んでるし、アナタだって家に帰らないなら、7年後には葬式だカラ」
「…そうか、自分は行方不明扱いなのだろうな。死亡認定が降りたら…自分も故人か」
「もう規則なんて気にしないでさ、パーっと弾けるワケ♪今日はそれが出来たアナタに乾杯♪」
珍しくもアリナがグラスを持ってきてあげて、2人分のワインを注いであげる。
そして、懐から取り出した小さな管を開け…赤黒い何かをワインに淹れ込んだ。
「今淹れたそれは何なんだ…?」
「アドレナクロム。分かりやすく言えば…人の血なんですケド」
「き…君は人の血を飲む者だったのか!?まるで自分と同じ…吸血鬼だ……」
「そう、今のアリナはアナタと同類。だからね…本当のアナタと出会えた気がして…嬉しかった」
「本当のアナタと出会えたというのは…どういう意味だ?」
「言葉っていう表現行為はね、ある意味
「言葉が…ペテン?」
「外側に向けて話す以上は外側の人々を不快にさせない言葉しか選ばない。取り繕う言葉なワケ」
「それは…そうだな。自分が語ってきた正義もまた…取り繕ってきた綻び塗れだった」
「周囲と揉め事を起こすな、既存の事に疑問を持つな。そんな周りに合わせるだけのペテン表現」
「…周囲の同調圧力にばかり屈してきたから…そこには、本当の自分はいなかったのか…」
「事象が優先され、その他は一切思考させないジャパニーズ固有の村社会精神。反吐が出るヨネ」
「いい学校を出て、いい企業に就職するのが正解…そんな拝金思想も同じなんだろうな…」
「せっかく生まれてきたんだし、アナタはアナタのままでいいワケ」
――アナタが本当のアナタと向き合えたら…たとえそれが醜くても、アリナは素敵に思うカラ。
「アリナ……」
赤黒い液体が舞うワインを手に持ち、乾杯を望む姿を見せてくる。
戸惑っていたが微笑み、十七夜もワイングラスを手に持つ。
「フッ……
乾杯の音が鳴り響き、2人は喉を潤していく。
「フフッ♪こんなに美味かったのだな…酒という飲み物は?」
「アリナも今日飲んだワインは…一番美味しかったんですケド♪」
「さぁ食べてくれ!今日はムシャクシャしていたから、料理に没頭して沢山作ってしまった!」
「アナタも沢山食べるワケ。それと…アナタに提案があるんですケド」
「提案だと?」
「アリナはね、ダークサマナーとして仲魔を色々と探してるの。だから…その……」
――アナタも…アリナの仲魔になってくれたら…嬉しいなって…。
その言葉を聞いた十七夜は、満面の笑みを浮かべてきた。
「勿論だ!!」
アリナの手を握り、輝いた眼差しを向けてくる。
「こんな醜いエゴを抱えた自分のことを愛してくれる君なら…自分は何処までもついていく!」
「フフッ♪それなら……」
「うむっ。今後とも、よろしく……だぞ」
仲の良い食卓風景が広がっていく。
その光景は何処か、アリナが失った家族のような光景にも思えてしまう。
いつも不機嫌な表情ばかりをしていたアリナも、今日ばかりは笑顔を見せてくれた。
酔っぱらうまで飲んでしまった2人は食事を終えたが、勢いのまま電話で車を呼び寄せる。
十七夜のための買い物を派手に楽しもうという魂胆なのだろう。
イルミナティと関わってしまったがために、失ってしまった人間らしい生活。
悪魔となって孤独となってしまった十七夜と触れ合うことで取り戻せた気がする。
そんな嬉しそうなアリナの姿を、夜の繁華街で目にすることになるのであった。
書いてて思った。
あれ…?想像以上にアリなぎCP出来上がってきてね?