人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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146話 悪夢の再会

神浜市に起きた悲劇、東地区から発端を起こした左翼テロリズム。

 

その爪痕は未だに大きく残されており西側と中央の経済は大きく麻痺している。

 

犠牲者を多く出した西の住民達は怒り狂い、東の者を見かけては襲い掛かっていく光景が続く。

 

その規模は膨大であり、神浜市警だけでは対処など不可能だろう。

 

見殺しにされているも同然の状況が続いていた。

 

現在、住民達の強い要望によって生み出されようとしている条例が存在する。

 

その条例の内容こそアパルトヘイトそのものであった。

 

行政の目的とは市民に安全を保障すること。

 

こんな大義名分を振りかざせば国民の基本的人権など容易く踏み躙れる。

 

自由民主主義国民だと言いながらも簡単に全体主義独裁を受け入れる愚かな民族性。

 

疑うこと、調べて考えること、和を乱してでも周りを批判する姿勢を完全に忘れている。

 

大多数の日本人の姿であろう、和を叫びながらも下の者達を虐めるのが大好きな民族姿だった。

 

……………。

 

「どうして…どうして私が政治運動をしてはいけないのですか!!?」

 

声を張り上げる人物とは七海やちよである。

 

彼女が怒声を上げているのは所属しているモデル事務所の社長に向けてだ。

 

「…有名人の政治発言が、どれだけSNSで炎上するのか知らないのか?」

 

「知ってます!それでも叫ばなければ…この街の市議会で最悪の条例が生まれてしまう!」

 

「君には関係のない話だ。モデル業に専念することだけを考えなさい」

 

「なぜですか…?私だって神浜の住民です!街のことで声を上げる権利はあります!」

 

「君の勝手な発言によって生み出される事務所クレームの対応をさせられる者達の事も考えろ」

 

「…ご迷惑をお掛けするとは思います。ですが、私だって神浜の一市民なんです!」

 

「では、君はモデルの仕事をやめて一市民に戻る覚悟があるということかね?」

 

「そ…それは……」

 

「所属事務所は違ったが、水名モデルを売りにしていた阿見莉愛君のことは知ってるか?」

 

「はい…。あの子は先の神浜左翼テロで…水名の者として世間からバッシングを浴びて…」

 

「モデルを引退にまで導かれた。これが政治だ…政治に関わろうとすれば盛大な火の粉を浴びる」

 

「それでも…それでも私はこの条例案には反対なんです!お願いします…発言させて下さい!!」

 

溜息をついた社長だが、腕を組んで睨んでくる。

 

「では、私のモデル事務所は…君との契約を解除させてもらう」

 

やちよの背中に氷柱がねじ込まれたかのように震えあがってしまう。

 

事実上の解雇通告なのだ。

 

「君程のモデルであろうとも…私も経営者だ。モデルよりも事務所の繁栄を優先させる」

 

「あ……あぁ……」

 

先程の強きな態度が一転、まるで嘘だったかのように怯えきった姿を晒す。

 

「君は手放したくない売れ筋商品。だが…探せば君の代わりなど、いくらでも見つかるのだ」

 

やちよの脳裏に浮かぶのは魔法少女に契約してまで生き残ろうとしたモデル世界。

 

ここでモデル業を引退させられたら何のために魔法少女になったのか分からなくなる。

 

「これが資本主義社会というものだ。考え直して大人になれ、やちよ君」

 

震えきったままやちよは深々と頭を下げていく。

 

「……すいませんでした、社長。出過ぎたことを…口にしました」

 

「それでいい。出過ぎた杭は打たれると理解出来た君は、()()()()()()()()に成長出来たわけだ」

 

――和(環)や絆、協調性を重んじ、周りに迷惑をかけない者こそが美しい日本人の在り方だ。

 

一礼をした後、社長室を出て行く。

 

廊下を歩いていくやちよの表情は憤怒に歪んでいる。

 

「何が美しい日本人よ…何が和(環)よ…。そんなの…()()()()()()()()()()()じゃない!!」

 

怒りのまま歩いていたが立ち止まり、ようやく理解出来た表情を浮かべてしまう。

 

「…今の社長の姿がきっと、魔法少女裁判を行った時の…私の姿だったのよ…」

 

他人の悪い部分なら簡単に見つかるのに自分の悪い部分になると全く見えなくなる。

 

自分への自尊心と、自分の生き方にプライドを持つ者達なら猶更だ。

 

人の欠点の見える者は、()()()()()()()()()()確実なる証拠。

 

これは七海やちよ達だけでなく嘉嶋尚紀や常盤ななか達にも言えることなのだ。

 

「常盤さんは…私達から村八分にされる恐怖があった筈なのに…勇敢に私を批判してくれた…」

 

自分が恥ずかしいのかやちよの目に涙が浮かんでいく。

 

他人の悪徳を見て、自分の悪徳に気づく。

 

それこそが人の振り見て我が振り直せという格言だった。

 

「ごめんなさい…常盤さん…。私も貴女のような勇気があれば良かった…でも、ダメだった…」

 

自分に自信が持てなくなり両膝が崩れて膝立ちとなってしまう。

 

「ごめんなさい…みふゆ、鶴乃、かなえ、メル。私…こんなにも弱虫な人間だった…」

 

モデル仲間達が彼女に手を差し伸べるがその手を掴む気力は今の彼女にはなかった。

 

中国の思想家であり哲学者の孔子はこんな言葉を残す。

 

――君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず。

 

和とはすなわち、自らの主体性を堅持しながらも他と協調すること、それが君子の作法と説く。

 

それに対して同とは、自らの主体性を失って他に妥協すること。

 

およそ君子の作法ではなく、小人のすることだと説いた。

 

────────────────────────────────

 

12月3日。

 

神浜市役所本庁舎の前では極少数ではあるがデモを行う西側民衆の姿が見える。

 

議会におけるアパルトヘイト条例の審議に対してデモ活動を行う若者が集まっていた。

 

偏向報道ばかりする日本のメディアまで珍しくも集まり、デモの光景を撮影している。

 

周囲は警官隊が並ぶようにして警備し、デモは粛々と行われていくのだ。

 

<<差別条例はんた~い!!>>

 

<<差別条例はんた~い!!>>

 

差別反対のプラカードを掲げ、皆が一生懸命声を上げる。

 

うら若い乙女の声を張り上げているのは私服姿の梓みふゆである。

 

隣には鶴乃やかなえの姿もあり、他の魔法少女も何名かは私服に着替えて参加中だった。

 

「…方々を当たりましたが、この条例に反対してくれた人達は…あまりにも少なかったです」

 

「私も頑張ったんだけど…みんな鬼のように怒りだして…手に負えなかったんだ…」

 

「それでも、これだけの人を集められたのは…みふゆや鶴乃が皆に声をかけたからだよ」

 

「かなえさん…私達はあのテロの責任を負ってるんです」

 

「みふゆや鶴乃が背負うこともないだろ…?」

 

「私達が参加したあの会議場で…テロに参加した東の子に言われたの」

 

――差別をよくないと思う西側の人達は…西側を変える努力をしましたか?

 

――してませんよね?

 

――貴女達だって…私と同じ様に、周りに流されてきただけです!

 

「…私は水名で暮らしてきました。小さい頃から周りに合わせてばかりで…何も言えなかった」

 

「私も…常連さんを逃したくないから…東の陰口を叩く人を見ても…見て見ぬフリをしたよ…」

 

「…過ちは繰り返しちゃダメ。あたしもさ…東の嫌われ連中は…自分と重なって見えてたよ」

 

「メルやみたま、月咲や十七夜、それに大勢の東の人達の未来を…今度こそ守ってあげないとね」

 

「傍観者は…もうやめます。今日来られなかったやっちゃんの分まで、私が声を上げますね」

 

決心がついた者達に視線を向けていた人物が近寄ってくる。

 

<<なんて素敵な子供達なの~!アタシ…感動しちゃったわ~!!>>

 

素っ頓狂でオネエな叫びが聞こえ、一同は振り向く。

 

「この人は…?」

 

「かなえさん、この人が今日のデモの届け出をしてくれた代表なんです」

 

「初めまして♡アタシはね…東京からこの街に来て、メイド喫茶を切り盛りしている店長さん♪」

 

「もしかして…十七夜がバイトをしてた場所の?」

 

「そう。…あの子からずっと聞かされてたわ。東の住民が…どれほどの仕打ちを受けてきたのか」

 

「店長さんは…十七夜の味方なんだ?」

 

「モチのロンよ~♡だからね、あの子が帰ってくる街に差別条例を敷かれるなんて…許せない!」

 

「元気いっぱいな店長さんだ♪ふんふん!私も声を上げちゃうよ~!」

 

差別反対と皆が声を上げているが周囲を行きかう人々からは野次の叫びも聞こえてくる。

 

「気にしちゃダメ!()()()()()()()()()()()()()()()なんて…こんなくだらないことないから!」

 

<<その通りです、由比さん>>

 

「へっ…?あっ、ななか!それにかこにあきら…美雨も来てくれたの!」

 

彼女達の応援に来てくれたのは常盤組の面々だったようだ。

 

「遅れちゃってごめんね。ボク達も方々声をかけてたから…うわっ!?」

 

抱き着く大型犬な鶴乃アタックをあきらは浴びせられてしまう。

 

「常盤さん、来てくれて嬉しいです。…いつも一緒におられるこのはさん達は?」

 

「…申し訳ありません。声をかけたのですが…あの姉妹は味方をしてくれません」

 

「えっ…このは達は来てくれなかったの?それに…一緒にいるささらや明日香も見えないけど?」

 

「…あの人達は東のテロの犠牲者達です。明日香さんも…気持ちに整理がつかないそうです」

 

「あっ…そうだったね…」

 

「責めてやるのはやめるネ。私だて…蒼海幇の人達に犠牲者が出てたら…気持ちは同じだたヨ」

 

「個人よりも社会を優先するって…本当に難しいです。皆に議論教育はしてるんですが…」

 

「かこさん…エゴは消えないものです。怒りの感情を抱えた者達との話し合いは成り立ちません」

 

「議論は数学だって…尚紀さんから聞きました。決められたやり方に当て嵌めてやらないと…」

 

「ネットで見かける煽り合いや、押し付け合いの罵倒合戦のような光景にしかならないネ」

 

「あの子達とは…怒りが冷めた頃に話し合います。微力では御座いますが、私達も頑張ります」

 

「今日は思いっきりボク達は叫ぶよ!道場での掛け声レベルで大声出すからね!」

 

ななか達も差別条例反対と声を上げていく。

 

勇気づけられたみふゆ達も野次に負けないよう続くのだが周囲から叫びが響く。

 

<<裏切り者め!!>>

 

<<テロリスト共の味方をするな!!>>

 

<<見て!あの跳ね毛頭の子…水名の呉服屋の子よ!!もうあそこで買わないから!!>>

 

<<あの子も知ってるぞ!万々歳の子だ!最低な味の店なら、娘も最低だな!!>>

 

野次の罵倒規模が大きくなっていき、みふゆと鶴乃は顔を青くしながら震え抜く。

 

警官隊が並んでいるが野次を飛ばす民衆達が暴れ出さない限り無視を決め込むようだ。

 

「あいつら……!!」

 

かなえが動こうとしたがななかが肩を掴んで静止させてくる。

 

「…あれが古来から続く日本人の姿なんです」

 

「えっ…?どういうことなの……?」

 

「民衆が本質的思考をするのを最も恐れたのが武士です。江戸の五人組連座制を知ってますか?」

 

「いや……知らない」

 

「治安維持と年貢徴収の為の連帯責任制度です。 相互監視と密告に利用され民衆は腐敗した」

 

「相互監視と密告社会か…。連帯責任を課せられないよう世渡りするには……」

 

「何も知らない馬鹿を装う。権力に降伏し、譲歩の御慈悲を貰うのが()()()()()()()()とされた」

 

「あたし達日本人は…そんな時代の頃からの悪癖が染みついてたんだね……」

 

「時代劇ではいと言わずへぇ、というのは卑屈さの表れ。日本人は御上に逆らえない民族です」

 

「上に逆らえないから…下を虐める。この光景がそれを物語ってる…無責任過ぎるよ」

 

「季節や文化は美しい国ですが…歴史を知れば知る程…恥ずかしくなっていく」

 

「…変えていかないとね。そんな社会をさ…」

 

野次馬の方に意識を奪われ、警戒心が鋭いかなえとななかは気づかなかった。

 

「えっ…?」

 

みふゆの隣でプラカードを持っていた男の1人が走り出す。

 

「ちょっと!?」

 

鶴乃の静止も聞かず、走り込む先にいるのは警官隊。

 

市役所本庁舎ビルの市長室から下の景色を見つめていた新市長は邪悪な笑みを浮かべるのだ。

 

「やれ」

 

男はプラカードを振り上げながら大声を上げる。

 

「ウォォーー!!差別条例はんたーーい!!!」

 

あろうことか警官の1人をプラカードで殴りつけてしまうのだ。

 

「貴様!?公務執行妨害だぞぉ!!」

 

取り押さえようとする警官に目掛けてさらにプラカードで殴りつける。

 

「オラァ!!邪魔すんじゃねぇ!!差別主義者共の味方をするポリ公なんぞに屈するかぁ!」

 

「貴様ーッッ!!公務執行妨害で逮捕だぁ!!」

 

地面に取り押さえられていく男の姿を顔を青くして見つめることしか出来ない魔法少女達。

 

後ろの騒ぎに気が付いたななかとかなえも顔を青くする。

 

「ま…まさか……この手口は!?」

 

「この団体を徹底的に調査しろ!!」

 

「お前が代表だな!!」

 

「えぇ!?ア、アタシは暴れた男とは関係ないわよ!!」

 

「五月蠅い!!署まで来てもらうぞ!!」

 

取り押さえられた男と同じようにして十七夜が世話になった店長が逮捕されてしまう。

 

「違うわ!!アタシは無実よ…無実なのよーーーッッ!!!」

 

デモの1人が暴れた光景を見た野次馬達がヒートアップしていく。

 

<<見ろよ!!穏健派を気取っていたって、東の暴力主義者と変わらねーぞ!!>>

 

<<あいつら東の回し者なのよ!!>>

 

<<裏切り者め!!西側の面汚し共だ!!>>

 

<<きっとあいつらもテロの時に街を破壊したに違いない!!許せねぇ!!>>

 

<<叩き潰せーーッッ!!!>>

 

野次馬達が暴徒となる勢いになっていくが周囲を固めた警官達が押し留めていく。

 

<<デモを解散しなさい!我々の誘導に従い、速やかにデモを解散しなさい!>>

 

パトカーが集まりだし、デモは無理やり解散に追い込まれてしまう。

 

なす術もなくパトカーに誘導され、騒ぎの場から去っていく魔法少女達。

 

「…やられました」

 

「ななか……あの騒ぎが何なのか…知ってるの?」

 

「公安警察共がよく使う…デモ潰しの手口。双頭の鷲作戦…日本でいうマッチポンプです」

 

「公安警察が…デモ活動を潰すのですか!?」

 

「矢部政権の頃から売国政策を批判するデモ活動は公安警察に潰されたと聞いておりました…」

 

「まさか…今日私達のための警護を務めていた警官達は…?」

 

「恐らくは…公安警察でしょう。私達はまんまと嵌められたというわけです…」

 

「そ、そんな……メディアが撮影に来てたんだよ!?私達…どうなるのさ!?」

 

「あれも仕込みだと思われます。全てはアパルトヘイト条例反対の声を消すために…」

 

恐怖で体が震える鶴乃は青い表情をしたまま空を茫然と見つめていく。

 

「お父さん…やっぱりこの国は狂ってる。日本人のための政治をしていない…」

 

絶望に打ちひしがられた西の魔法少女達。

 

それは東の魔法少女達とて同じであった。

 

────────────────────────────────

 

次の日の夜。

 

工匠区で待ち合わせをして西側へと捜索に向かう人物は私服姿の八雲みたまと観鳥令だ。

 

2人はとても暗い表情をしながら口を開いていく。

 

「…昨日のニュースを見た?」

 

「…ええ。デモの暴動ニュースでしょ」

 

「あんなの絶対やらせだよ!だけど証拠がないんじゃ…誰も信用してくれない…」

 

「あれが…西側のやり方なのよ。東側に味方をするなら西側の人々さえ排除する…」

 

「放送されたニュース内容は画一化されたようにデモを悪者にしてる…何が放送の自由だ…」

 

「…日本のメディアにさえ私達は…見捨てられてるのよ」

 

「みたまさん……」

 

参京区に入る橋の歩道を歩いていたが橋を渡り切る前にみたまが立ち止まってしまう。

 

「……ねぇ、令ちゃん」

 

低い声を上げたみたまに気が付き、令は後ろを振り向く。

 

「……この世界って、()()()()()()()()()

 

突然の発言を浴びせられた令の顔に冷や汗が浮かぶ。

 

暗い夜道の街灯に照らされたみたまの瞳は絶望を感じ始めているように濁っている。

 

「いきなりな……発言だね?急にどうしたのさ…?」

 

「私は願った、この街に呪いあれと。今思えば…この街の惨状も願い通りよね」

 

「ち、違うよ!みたまさんは悪くない!!魔法少女は夢と希望を叶える者達さ!」

 

「…それは世界を呪った調整屋達じゃない。希望を紡ぐ貴女達こそが報われるべき…なのに…」

 

――希望を願った東の子達まで…世界から呪われていく。

 

その言葉を返す言葉を令は思いつかないだろう。

 

全ての魔法少女達が背負ってきた業なのだから。

 

「貴女達は誰かの幸せを叶えた。なのに…それと同じぐらいの絶望が…世界からもたらされる」

 

()()()()()()()()()()()()()になる…?」

 

「貴女達は…何のために戦ってきたの?命をかけて人々を守ってきたのに…人々から虐待される」

 

みたまのソウルジェムの指輪から穢れの光が浮かんでいく。

 

「教えて…今直ぐ貴女が教えて。こんな醜い人間共を守る理由を…教えなさいよ!!」

 

彼女の表情はテロの時に傷ついた水名生徒を罵倒した時と同じ憤怒の表情を浮かべてくる。

 

そんな時、令はみたまを止めるための叫びを上げてくれるのだ。

 

「やめてくれ!!嘉嶋さんとの約束を忘れたのか!!!」

 

「えっ……?」

 

怒りの表情が解け、みたまは茫然としながらも俯いてしまう。

 

「しっかりやれって言ってくれただろ!頑張らなくていいって…言ってくれただろ!!」

 

「私……わたし……」

 

「嘉嶋さんが語った言葉を思い出して!疑うことも大事だけど…信じることも大事だって!!」

 

「尚紀……さん……」

 

「あの人も…今のみたまさんみたいになった!あの人にもう…繰り返させちゃダメなんだ!!」

 

――魔法少女の虐殺者に戻る日を…与えちゃダメなんだよ!!

 

令の必死の叫びがみたまの体を震わせる。

 

暫く震えていたが顔を上げ、真っ直ぐ目を向けてくる。

 

「令ちゃん……」

 

みたまが言葉を紡ごうとしていく。

 

横は道路であり、無数の車が往来するためよく聞き取れない。

 

「私ね……」

 

鈍化した世界。

 

令の後ろ側から走ってくる一台の車。

 

助手席の窓が開き何かを外に向けてくる。

 

「間違って……」

 

次の瞬間だった。

 

「あぐっ!!?」

 

突然みたまは片膝をつき、左手でおでこを抑え込む。

 

「みたまさん!?」

 

駆けつけた令が額を抑え込んだ左手を見れば酷い出血が滲んでいく。

 

すれ違う時に何かを撃たれたようだ。

 

通り過ぎていった車の姿はもう見えない。

 

「痛い……いたい……イタイ……」

 

「酷い傷……パチンコ玉のようなもので撃たれたんだね…」

 

涙を流しながら座り込み、怯え切った表情をみたまは浮かべていく。

 

「待ってて、直ぐに回復魔法を……」

 

伸ばしてきた令の手は叩き落とされてしまう。

 

「嫌…いや…もう西となんて関わりたくない!!私のことは……放っておいてぇ!!!」

 

両手で頭を抱え込み蹲ったまま泣き喚き続けるみたまの姿を見た令は慰めの言葉も出せない。

 

令は道路に視線を向け、怒りのまま歯を食いしばっていく。

 

「また…車のナンバーを残せなかった…。何がジャーナリストだ……観鳥令は失格者だぁ!!」

 

両拳を橋の手摺に叩きつけてへこませ、震えた令の体も蹲ってしまったのだ。

 

……………。

 

橋の近くにあるビルの屋上では一部始終を見つめていた少女が1人立つ。

 

黒のダウンと白のニットトップスの上着を纏い、紺色のスカートを纏う人物だった。

 

「……月が綺麗だな」

 

彼女の視線の先には夜空に輝く月の光。

 

「こういう夜は無性に……血が見たくなる」

 

月に照らされた彼女の影が蠢き、無数の蝙蝠達が舞う。

 

「ハッ…!?」

 

恐ろしい魔力を感じ取った令は後ろに振り向いて夜空を見上げる。

 

川を高速で飛び越えていったのは無数の蝙蝠の群れ。

 

「あれは…一体……?」

 

その頃、みたまを襲った車は工匠区を迂回しながら栄区を目指す。

 

改造エアガンで次々と東の人々を撃ちながら車内でゲラゲラ笑う光景が続いていた。

 

「ハハハ!正義執行って本当に気持ちがいいよな~♪」

 

「FPSシューティングよりも興奮するぜ!悪者の東連中なら気兼ねなく撃てるってもんよ♪」

 

「そうそう!俺達の武勇伝を聞きたがる西の被害者達は大勢いるだろうぜ~」

 

「泣いて感謝されたりして?善行をするって本当に気持ちがいいぜ~!」

 

栄区に入る橋を走行していた時だった。

 

「えっ……?」

 

運転していた男が横を向くと猛スピードで黒い影が迫りくる。

 

「ヒィィィーーーッッ!!!?」

 

無数の蝙蝠が車に向けて突撃を行ってくる。

 

窓ガラスを突き破り中に侵入、車の側面にまで体当たりして車を横転させてしまう。

 

<<ギャァァァーーーーッッ!!!!>>

 

ひっくり返った車内では地獄の光景が広がっている。

 

全身に喰らいつく無数の蝙蝠が血を吸い上げ、襲撃した2人の男がミイラのようになっていく。

 

絶命するまで血を吸った蝙蝠達が空高く飛び立ち、人の形へと変化。

 

翼のように大きく広げたのは血と夜を思わせる漆黒のマントだった。

 

「…西の汚物共は消毒するに限るな」

 

宙に浮いた少女が右手を翳し、帯電させていく。

 

放たれた魔法とは悪魔の雷魔法であるジオンガ。

 

轟雷が車に直撃して爆発を起こす光景が広がったようだ。

 

「八雲の借りは返したぞ。さて…今夜の渇きはまだ癒えていない」

 

体が弾け、無数の蝙蝠となって飛翔していく。

 

次の獲物を狩るために闇夜の空に蝙蝠が舞うのであった。

 

……………。

 

「ぐあぁぁーーーーッッ!!!?」

 

新市長の家では惨劇が広がっている。

 

突然部屋の中に霧が立ち込めたと思ったら少女の形となって襲い掛かってきたようだ。

 

少女の手で顔を掴まれ、片腕で持ち上げられながら頭部を締め付けられる。

 

「ニュースは見た。世話になってきたオネエサマを…西の穏健派を…よくも嵌めてくれたな」

 

「し、知らない!!ぐあぁぁーーーー!!?」

 

万力で締め付けられる程の握力によって市長は悲鳴を上げていく。

 

あと少し力を加えれば頭部が潰れたトマトになるだろう。

 

「とぼけるか?まぁいい、貴様が市議会に提出した差別条例案だ。…言い訳は認めない」

 

「た、助け……ギャァァァーーーーッッ!!!?」

 

掴んだ手が赤く光る。

 

市長の体から血が噴き出していき念力で引き寄せられるかのように少女の体に集まり出す。

 

全身で血を吸い上げる魔法こそが悪魔の吸血魔法なのだ。

 

「が…あ……あぁ……」

 

「死は平等に訪れる。たとえそれが腐れ外道であろうとな」

 

「すま…な………」

 

ミイラ化して絶命した市長に対して掴んだまま雷魔法のジオを放つ。

 

死体の体が雷で焼き尽くされていき発火。

 

燃え上る市長の姿を見つめる少女の口元には笑みが浮かんでいるようだ。

 

<<キャァァーーーーッッ!!!!>>

 

叫び声が聞こえた方に視線を向ける。

 

そこには腰を抜かした市長の妻と娘の姿があった。

 

「…そうか、腐れ外道にも家族がいるのか。さっき殺した連中にもいたのだろうな」

 

悪魔少女はゴミのように燃えた夫の遺体を投げ捨てる。

 

「な…なんてことをしたのよ!!」

 

「ママ…パパはどこ…?パパの姿が見えない!!あの燃えてる人は誰!!?」

 

「お前のパパならここにいるぞ?」

 

悪魔が指さすのは燃え上る死体である。

 

「いやぁぁーーーッッ!!!」

 

悲鳴を上げる娘と妻の元に歩み寄ってくる。

 

「人殺し!!悪魔め!!!よくも夫を殺したわね!!?」

 

「…貴様、この外道の妻だな?この男が市議会に提出した条例案の内容は知っていたか?」

 

「あ、あんたなんかに話すわけないでしょ!!?」

 

「そうか…別に構わん。貴様の心に聞くだけだ」

 

「えっ……?」

 

片目に身に着けたモノクルが怪しく光る。

 

何か心の中に違和感を感じたようだが人間には理解出来ない魔法の力なのだ。

 

「…なるほど。どうやら貴様は条例案の中身を知ってて…夫の仕事を止めなかったようだな?」

 

「な…何で分かるの……!?」

 

「それが悪魔の力だ」

 

断罪が必要だと判断した慈悲無き悪魔が近寄ってくる。

 

「ママ…怖い…怖いよぉ!!悪魔が…悪魔が来るーーッッ!!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()屑共め。新たな()()世界には…()()()()()()()()

 

悪魔を表す真紅の瞳が瞬膜と化す。

 

<<アァァァァ―――――ッッ!!!!>>

 

……………。

 

燃え上る市長の家を上空から見つめる悪魔少女は冷淡な言葉を残す。

 

「腐れ外道共も、外道を野放しにした傍観者も許さない。この世は道徳を重んじる者だけでいい」

 

血濡れた右手を持ち上げていき、舌で指を舐める姿はまさに悪魔の如き存在だった。

 

「自分は…東を守るために戦った者。これもまた…東の未来を守ることに繋がるだろう」

 

――もっと早くに…こうしていたら良かったよ。

 

無数の蝙蝠と化し、悪魔少女は夜空の世界へと消えていった。

 

これが客観性を無くしたまま平等を叫ぶ正義の味方の在り方だ。

 

彼女が吐き捨てた言葉はブーメランとなって己に帰ってくるだろう。

 

この世を善と悪でしか認識しないから自分が正義側だと思えば悪を無条件で裁きたくなる。

 

それでも彼女は迷わないし、聞く耳を持たず無責任な態度をするだろう。

 

何故なら善行をしている自分の在り方に誇りを持っているからだ。

 

かつての神浜騒動の時、広江ちはると人修羅はこんな言葉を残す。

 

――悪意の臭いはないけど…そこが凄く恐ろしい…。

 

――この世で最も邪悪な存在とは。

 

――自分が悪だと気が付いていない…自分を省みない正義宗教信者共だ。

 

ミイラ取りがミイラになる光景は誰でも起こす時がある。

 

地獄への道は、善意で舗装されていた。

 

────────────────────────────────

 

2日が過ぎた12月6日の夜。

 

参京区の街を捜索しているのは令だが隣にみたまの姿はいない。

 

代わりに彼女と共に捜索してくれているのは十咎ももこだった。

 

「…そうか。あれから調整屋は塞ぎ込んで家から出れなくなったのか…」

 

「みかげちゃんの話だと…ソウルジェムが不味いみたい。だから業魔殿のメイドさんが行ってる」

 

「たしか…あのマッドなメイドさんも悪魔だったんだよね?」

 

「悪魔はソウルジェムの穢れを取り除く力がある。任せて大丈夫だと思いたいね…」

 

「…問題なのは調整屋の精神状態の方だろうな」

 

「ごめん…ももこさん。観鳥さんがついていながら…守ってあげられなかった…」

 

「自分を責めちゃダメだよ、令ちゃん。アタシだってきっと同じことになってたよ…」

 

「みたまさんのためにも…十七夜さんを探し出そう」

 

「そうだね…。ところで、神浜市議会で起きたニュースは見た?」

 

「うん…とんでもない騒ぎになったようだね」

 

彼女達が見たニュース内容とは議事堂において犯行声明とも思える文字があったこと。

 

「血文字で描かれてたみたい…。アパルトヘイト条例に賛成した議員は皆殺しだとね…」

 

「脅迫そのものだよ…。誰があんな犯行をしたんだろう?」

 

「連日を騒がす偏向メディア共は…東の住民の犯行だと憶測ばかりを撒き散らす」

 

「酷過ぎるよ…日本のメディアは。証拠さえないのに…」

 

歴史ジャーナリストの中にいるジョージ・オーウェルはこのような言葉を残す。

 

ジャーナリズムとは、報じられたくない事を報じることだ。

 

それ以外のものは広報に過ぎない。

 

この定義に基づけば、日本メディアは報道の自由を守れる組織だと思えるだろうか?

 

「画一的な報道なんて自由民主主義国の報道機関はやっちゃいけない。独裁国家じゃないんだ」

 

「そうだな…知る権利こそが国民には必要なんだし」

 

「だからね、観鳥さんは本物のジャーナリストになりたい。記者クラブになんて絶対に入らない」

 

「フリーランスでもいいじゃないか?無頼漢してる令ちゃんの方がアタシも好きだし♪」

 

「ありがとう。心配なのは…市議会議員達はテロには屈さないと強行採決を言い出してる」

 

「だとしたら…あの新しい市長一家のような殺人事件がまた起きる可能性が大きいよな…」

 

「たとえ混乱極まる神浜であろうとも…観鳥さんは十七夜さんの捜索を諦めないよ」

 

「調整屋のためにもアタシも諦めないよ。参京区から北側にも向かってみる?」

 

「そうだね。さぁ、観鳥さんの確実撮影さん…今夜こそ頼むよ」

 

カメラを持つ令が先導し、ももこも後ろに続く。

 

北養区に入り夜の高級住宅街を歩いている時だった。

 

「な、なんだ…この恐ろしい魔力は!?」

 

魔力を感じ取ったももこが声を上げる。

 

「魔獣のものじゃない…それにこれは…あの時戦った吸血鬼悪魔と魔力が似てる…」

 

「この魔力…観鳥さんも感じた事あるよ!」

 

「あっちの方角だ!!」

 

丘に並ぶように建つ高級住宅地を走り、奥まった広々とした家に向かう。

 

2人は走りながら魔法少女に変身して門を飛び越え、広々とした敷地内に入ったようだ。

 

「なんだ!?」

 

屋敷の窓を破り無数の蝙蝠が外に飛び出す。

 

蝙蝠は二階建ての屋根に集まっていき、人の形を生み出していく。

 

<<…君達か。戦う相手を間違えているんじゃないのか?>>

 

「あ……あぁ……」

 

「そ、そんな……嘘だろ……?」

 

漆黒の悪魔衣装を纏う悪魔少女とは彼女達が探し続けた人物の成れの果て。

 

「なんで…なんでお前が…悪魔のような姿をしてるんだ…?」

 

「やっと見つけだしたのに…何かの冗談だって言ってよ…」

 

<<十七夜さんッッ!!!>>

 

無数の蝙蝠を夜のカーテンとして現れたのは悪魔化した和泉十七夜である。

 

悪魔を表す真紅の瞳が2人に向けられ、不思議そうな顔を浮かべてくる。

 

「魔法少女が戦うべき相手は魔獣共だろ?魔獣狩りには向かわないのか?」

 

「その姿は…何なんだよ…?それに…ソウルジェムの魔力を感じないけど…」

 

「うむっ、不思議に思うのも無理はないな十咎。自分はな、魔法少女を辞めさせてもらった」

 

「魔法少女を…辞めただって…?」

 

「そうだ、観鳥君。自分はあのテロの時、吸血鬼悪魔に噛まれた後…肉体も魂も変化した」

 

「あの時十七夜さんは…あの吸血鬼悪魔に噛まれた…。あれから何があったんだよ!?」

 

「もちろん吸血鬼となった。男と性交したことがない魔法少女はみんなこうなる」

 

「魂が変化したというのは…?」

 

「魂であったソウルジェムは何処にもない。自分はな…ソウルジェムに囚われた魂を内に戻せた」

 

「キュウベぇから引っ張り出された魂を…取り戻せたっていうのか…?」

 

「お陰で痛覚を取り戻せたが…不便さはあまり感じない。悪魔化した肉体の恩恵だな」

 

「じゃあ…今の十七夜さんは魔法少女ではなくなって……」

 

「その通り」

 

右手を掲げれば蝙蝠達が何匹か彼女の腕に止まっていく。

 

「和泉十七夜と呼ばれた魔法少女は…悪魔となったのだ」

 

青い表情をしたままの2人だが、ももこが吼える。

 

「だから何だよ!今まで何処をほっつき歩いてた!?家族や友達のことはどうでもいいのかよ!」

 

「家族とは…縁を切らせてもらった」

 

「な、なんだって!?」

 

「友と呼べた魔法少女達も…もう必要ない。これからの自分は悪魔としての戦いを続ける」

 

「悪魔としての戦いだって…?悪魔として…何と戦ってるんだよ!?」

 

「この邸宅…思い出した。ここは市議会議員の中でも中心人物が暮らしてる家だ…」

 

「そ、それってまさか…嘘だと言ってよ令ちゃん!?」

 

「…邸宅内から人の気配を感じない。まさか…嘘ですよね、十七夜さん…?」

 

「…事実だ。自分が戦っているのは民衆の自由と平等と博愛を踏み躙る邪悪な人間共だ」

 

その言葉が意味するのは人間の虐殺行為。

 

信じられない衝撃を立て続けに受け、ももこも令も体が震えていく。

 

「フランス国旗理念であり、フリーメイソン理念を邪魔する悪を倒す自由と平等と博愛の戦士だ」

 

「フリーメイソン…だって……?」

 

「世界を代表する友愛結社だ。人は平等であり人類が手を携えて幸せに生きる世界を作る組織」

 

「そんな…十七夜さんが秘密結社と関わっていただなんて…」

 

「我々は破壊する。自由と平等をもたらし、博愛に満ち溢れた世界の障害となる概念を」

 

「平等や博愛を邪魔する概念…?」

 

「権威を、宗教を、国境を、民族を、歴史を全て破壊しつくして統一する」

 

「自分が何を言ってるのか分かってるのか…十七夜さん!?その思想は…共産主義だ!!」

 

「その通り。自分は共産主義者でありグローバリストとなった。国家民族概念を破壊する者だ」

 

「ふざけるなぁ!!そんな狂気を実現したら…日本はどうなるんだ!?」

 

「神浜を含めた日本の悪しき歴史は全て消え去り、宗教・民族概念が消えた共和国となる」

 

「共和国だって……?」

 

「歴史の象徴である君主を持たない民衆国家。日本民族の悪しき象徴である()()()()()()()()

 

吸血鬼悪魔は民衆革命理念を語っていく。

 

それによって起こったのは様々な国家の歴史を象徴してきた皇帝や王を殺害した歴史。

 

王という歴史の象徴など民衆平等の前では何の価値もない。

 

歴史の象徴である王は民衆を守らず特権階級ばかりを優先したためだ。

 

グローバル共産化とは()()()()()()()()を信奉すること。

 

豊かで平等な搾取、抑圧、差別のない社会の一員である世界市民を目指して世界連邦を築く理念。

 

「お前…正気なのか?日本の歴史の象徴である天皇陛下さえ…殺すというのか!!?」

 

「歴史があるから人々は差別を行う。その光景は東の者として見てきただろう、観鳥君?」

 

「イカレてる…観鳥さんが望むのは神浜の歴史差別の修正だけだ!!」

 

「そんなものは平等ではない!自分達だけが良ければそれでいいだけのエゴイズムだ!!」

 

「鏡見ろよあんた!!十七夜さんの言っていることはアタシには矛盾にしか聞こえない!!」

 

「残念だが、吸血鬼となった自分は鏡に映らなくてな。自分の姿は確認出来ない」

 

「落ち着いてくれ十七夜さん…話し合えば、お互いの間違っている部分が見えてくるよ…」

 

「そうやって…また何も起きない楽しい毎日だけを望ませる気か?」

 

「そ…それは……」

 

「今までの人生は何だ?社会に無関心になり楽しく遊んでヒーローごっこをして過ごしただけだ」

 

「……否定出来ないね」

 

「人間社会に対して無責任に過ごし、絆という腐った馴れ合い社会を築いただけではないか?」

 

「それは…アタシ達だって反省している。命をかけて批判してくれた人がいたから…」

 

「日本は若者ほど社会変革意識を持たない。迷惑だ、過激だと言って…奴隷人生を選ぶ」

 

「昭和の頃からそれは起きてきた…国民の行動が政治に影響を及ぼしている感覚が消えたんだ…」

 

「全てを諦め、御上に従う奴隷人生を選んだというわけだ。自分はそんな権威主義など望まない」

 

かつてのボルテクス界において力の変革を望んだ少女の憂いはこの世界でも起こってしまう。

 

かつての世界と同じく、この世界もまた人類の堕落によって何も創り出せない世界となったのだ。

 

掲げた腕に止まっていた蝙蝠達が飛び立つ。

 

十七夜は右手をゆっくりとももこ達に向けていく。

 

「理解してくれないならば仕方ない。自分は平等を世界にもたらす道を行くと…皆に伝えてくれ」

 

「調整屋は…お前の大切な親友の八雲みたまはどうなる!?」

 

みたまの名を叫ばれた十七夜の表情に苦しみの影が浮かぶ。

 

「お前の帰りをずっと待ちながら探し続けてたんだぞ!令ちゃんと一緒に!!」

 

「それだけじゃない…みたまさんは悪魔になってるかもしれない十七夜さんのために…」

 

「全てを打ち明けてくれた…。それに、悪魔の差別が起きないようアタシ達に教育もしてくれた」

 

「八雲……」

 

「戻ってきてくれ十七夜さん…!悪魔に堕ちても…帰る場所はここにある!!」

 

「黙れッッ!!!」

 

怒りの表情となり、掲げた右手が帯電していく。

 

「この街に帰る日が来るとしたら…それは博愛に包まれた世界連邦を築き上げた時だけだ!!」

 

「この……分からず屋がぁぁーーーッッ!!!」

 

ももこは魔法武器である大剣を生み出し構える。

 

令も魔法武器であるバズーカを生み出し構える。

 

かつて轡を共にし、正義の道を歩む友であった魔法少女達の殺し合いが始まっていった。

 

────────────────────────────────

 

「自分に挑んでくるのなら…命を懸ける覚悟を見せてもらう!!」

 

赤く帯電した右手から放つのは複数の敵に向けて放つ雷魔法であるマハジオ。

 

加減はしているが、それでも直撃すれば重症は免れないだろう。

 

「令ちゃん!」

 

「うん!」

 

2人は横に跳躍し、頭上から落ちてきた雷の一撃を回避する。

 

「ごめん!十七夜さん!!」

 

横っ飛びの姿勢からバズーカを構え、屋根の上に向けてバズーカを撃つ。

 

放たれたロケット弾の弾頭が空中で開き、敵の動きを拘束するネット弾に変化。

 

「無駄だな」

 

微動だにしない十七夜の体が霧化していく。

 

「そんな!?」

 

ネット弾は霧を素通りしていったようだ。

 

「こっちがお留守だよ!!」

 

反対側から跳躍斬りを仕掛けるももこだが罠だ。

 

「えっ!?」

 

十七夜は視線すら向けず、右手を伸ばして大剣の唐竹割りを指で挟みとる。

 

両手で押し込もうとするが魔法少女の魔力強化であろうとも吸血鬼悪魔の剛力には通じない。

 

「自分は悪魔になっても読心術が使える。会話をしている時の君達の念話内容は知っていた」

 

「くぅ!!」

 

悪魔の赤い瞳を向けてくる十七夜を見たももこは恐怖に包まれる。

 

十七夜の姿が成す術もなく殺されかけた吸血鬼悪魔のクドラクと酷似して見えたからだ。

 

「ぬんっ!!」

 

刀身を挟んだまま右手を開き、集中する。

 

「なんだよコレッ!!?」

 

ももこの体が動かなくなり、宙に向けて浮かされていく。

 

悪魔の超能力魔法の初歩であるサイの力だ。

 

「う…動けない……これも悪魔の…魔法なのか…!?」

 

「悪魔は超能力魔法も使えるということだ。もっとも…自分もまだ練習中なのだがな」

 

右手を動かせば宙に浮かされたももこの体も右手に沿うように動いていく。

 

ももこの体が向けられたのは地上で魔法のカメラを十七夜に向ける令であった。

 

「君の魔法能力は望むシャッターチャンスを手に入れるだけではないと知っている」

 

サイの魔法を応用し、ももこの体を令に向けて念導投擲を行う。

 

「しまった!?」

 

カメラのボタンを押す手が止められずカメラ撮影してしまう。

 

「うわぁぁーーーッッ!!?」

 

撮影されてしまったももこの体が変化して地面に落ちていく。

 

その姿は一枚の写真。

 

かつての葛葉キョウジが用いたシャッフラーと同じく魔なる者を封印出来る魔法なのだろう。

 

「ごめん!ももこさん!!今解除を……」

 

写真に向けて手を伸ばすが、視線が十七夜から離れてしまう。

 

<<戦いの最中に余所見をするなと、自分は君に教えた筈だぞ>>

 

「はっ!?」

 

振り返れば無数の蝙蝠化移動で背後に回り込んできた十七夜が立っている。

 

「ぐぅ!!?」

 

喉を掴まれ令は体を持ち上げられてしまう。

 

「やめて…十七夜…さん…!貴女は…東の長…だ!!みんな…帰りを待っ……」

 

「…かつての自分について来てくれて…礼を言う。だが…自分はもう東の長に戻る気はない」

 

「十七夜……さ……」

 

「かつての同胞と殺し合うのは辛い…。だからこそ、大人しくしていてくれ…」

 

逆の手が令に向けられる。

 

左手が淡く光り、放つ魔法とは敵集団を眠りにつかせる『ドルミナー』だ。

 

「あ……あぁ……」

 

令は急激な睡魔に襲われていき意識が途絶えていく。

 

「ごめ……後は……おね……」

 

最後の力を振り絞り、写真にされて封印されたももこに手を伸ばす。

 

封印解除の魔力を送った後、令は眠りについてしまったようだ。

 

優しく彼女を地面に寝かせた十七夜が蘇った人物に向き直る。

 

立ち上がっていたのは魔力で刀身に炎を纏わせたももこの姿だった。

 

「正義の世直し人にでもなったつもりか…?お前は自分の暴力を正当化しているだけだ!!」

 

「十咎…分かってくれとはもう言わん。だが、今の発言は聞き捨てならんぞ」

 

「何度でも言ってやる!!今のアンタの姿はな…」

 

――人の感情エネルギーに寄生して廃人に変えていく…魔獣共と同じだぁ!!

 

それを聞いた十七夜の眉間にシワが寄っていく。

 

「…いいだろう。自分が魔獣として扱われるなら聞こう…魔法少女の使命とはなんだ?」

 

「…魔獣を倒し、人々を救うこと」

 

「自分もそう信じて戦ってきた。ならば…その使命を果たしてみせろ」

 

――正義の魔法少女としてな!!

 

ももこは地を蹴り、跳躍斬りを仕掛けてくる。

 

十七夜は蝙蝠化で回避しようとしたが慢心であった。

 

<<グァァァーーー!!?>>

 

斬撃に纏った炎が蝙蝠の一部に当たったのが効いたのか、実体化して蹲る。

 

「ぐっ…うぅ……」

 

焼け焦げた腕を掴み、ももこを睨んでくる。

 

「悪魔には弱点属性があるってヴィクトルさんから聞いたけど…吸血鬼は炎が弱点か」

 

「…クドラクから弱点の事を教わっていたが…忘れていた。吸血鬼の能力に己惚れていたか…」

 

「勝負あったな、十七夜さん。もうこんな戦いはやめてみんなのところに…」

 

勝利を確信した者に向けて低い笑い声が響いてくる。

 

立ち上がる十七夜は抑え込んでいた火傷から手を離すと信じられない光景が浮かんでいるのだ。

 

「そんな……」

 

火傷の跡が異常な速度で修復されていき、完全に治ってしまった。

 

「吸血鬼は再生能力に優れている。傷を癒す願いをした魔法少女と同じぐらい治癒能力が強い」

 

「だったら!再生が追い付かないぐらい焼いてやる!!」

 

「十咎のマギア魔法か?ここは悪魔の結界ではないようなのだが?」

 

「くっ……」

 

「自分の弱点を突けるようだが、それだけでは覆せない力の差を見せてやろう」

 

「強がるな!吠え面かかせてやる!!」

 

炎を大剣に纏って飛びかかるが右手を翳されてしまう。

 

「ぐっ!?ま…またか…!!」

 

サイをもう一度かけられ空中で静止させられてしまったのだ。

 

「自分はまだ、この超能力魔法を上手く使いこなせない。…練習に付き合ってもらうぞ」

 

「れ…練習だと…!?」

 

右手を構えたまま意識をさらに集中させる。

 

右手が林檎を鷲掴みして握り潰すように動いていく。

 

「ぐぁぁぁーーーーッッ!!!?」

 

全身を万力で絞め潰される程の圧力が加えられ、悶え苦しむももこの姿が生み出される。

 

サイの威力を上げたサイオを使って攻撃してくるのだ。

 

「自分が暴力を正当化しているだと?ならば君達はどうやって神浜社会を変えてくれるんだ?」

 

「ぐっ…うぅ……!!」

 

「今まで君達は差別問題に対して何もしなかった。綺麗事ばかり言うが…政治に無関心だった」

 

圧力がさらに強まっていく。

 

「楽しい事だけを優先したい。みんな楽しく和を築き、気が付けば政治問題など棚上げだった」

 

圧力がさらに強まっていく。

 

「ウアァァァァ―――!!!」

 

「博愛を語るくせに行動が伴わない。君達の方こそ己の無責任を正当化してきたペテン師共だ」

 

他人の悪い部分なら簡単に見つかる。

 

だが自分の悪い部分は全く気づこうともしない。

 

自尊心の強い者にとって間違いを認める事は()()()()()()()()

 

自分の無知を認めることになりゼロから学び直す屈辱を味わうことになるからだ。

 

理解出来ないものを不快に感じる生理現象のことを社会心理学では()()()()()()と呼ばれた。

 

「たしかに…アタシ達は流されてきた。楽な毎日を優先して…荒れる話題の政治から目を背けた」

 

「恥ずべき生き恥を晒してきたと思えるようになったのか?」

 

「はぐむに批判されて…ようやく気が付けた…。正義を気取っても…行動が伴わなかった…」

 

「それを認める勇気ぐらいはあったというわけか」

 

「認めるよ…。でもさ…アタシ達が認める勇気を出せるなら…十七夜さんにだって出来る!」

 

「貴様!?まだ言うか!!!」

 

「頼む…!!調整屋には…みたまには…お前が必要なんだよぉ!!!」

 

「ぐっ…うぅ……!!」

 

集中力が乱れようとした時、何かが飛来してくる。

 

「ぐあっ!?」

 

十七夜の翳した右腕に飛来した槍が彼女の右腕を貫通している。

 

超能力魔法から解放されたももこは地面に倒れ込み、動けなくなったようだ。

 

<<見損なったぞ十七夜。アナタはそれでも…東の長と呼ばれた魔法少女なのか?>>

 

「こ…この声は……まさか……まさかっ!!?」

 

槍が刺さったまま蝙蝠化して実体化し直す。

 

転がった槍だが自らの意思を持っているかのように宙に浮かび、回転しながら飛んでいく。

 

月明かりに照らされた敷地内に入ってくる存在達に視線を向ける。

 

飛んできた槍を片手で受け取ったのは漆黒の貴族衣装を身に纏う雪野かなえ。

 

分厚い魔導書を持っているのは黒と紫色のゴスロリ風衣装を纏う安名メル。

 

立ち止まった2人が十七夜と同じ真紅の瞳で彼女を見つめてくる。

 

その眼差しには落胆の色が滲んでいたのだ。

 

「馬鹿な…自分は白昼夢を見ているのか…?君達は……君達は死んだ筈だぞ!?」

 

「夢じゃありませんよ、十七夜さん。夢であって欲しかったのは…今の十七夜さんの方です」

 

「何故生きているんだ…?君達は…円環のコトワリに導かれた筈だ!!」

 

「訳有って…転生して生き返れた。十七夜…今のあたし達はね…アナタと同じ存在」

 

「自分と同じだと…?」

 

「ボク達の瞳を見てください。…十七夜さんとお揃いでしょ?」

 

3人の赤い瞳が交わるように視線を交わし合った時、彼女達が何者なのかを理解する。

 

「そうか…君達まで……悪魔にされたというのだな」

 

「いいえ、ボク達は自らの意思で悪魔になりました」

 

「悪魔になってでも…この世に未練があったと解釈していいのか?」

 

「そう…あたしには未練があった。やちよ達や…十七夜が…間違っていくのを止めたかった」

 

「君まで…自分を否定するのだな…」

 

「十七夜さん…こんなやり方じゃ…尚紀さんと同じ末路にしかなりませんよ」

 

「尚紀…?男の名前に聞こえるが…?」

 

「嘉嶋尚紀はね…魔法少女の虐殺者となった人物。人間社会主義を掲げた…共産主義者だ」

 

「嘉嶋尚紀か…きっとその人物も悪魔なのだろう。そして…自分と同じ思想を持った同士だ」

 

「その人物は、自分の正義を掲げて虐殺の限りをつくした。だけど……」

 

「自分の理想が壊れていたと突きつけられた時に…壊れてしまいました」

 

「そして…報復を望む神浜の魔法少女達に襲われて…危うく死にかけたんだ」

 

「…自分も、嘉嶋尚紀と同じ末路を辿ると言いたいのか?」

 

「十七夜さん…これは尚紀さんの言葉です。疑うことも大切だけど…信じることも大切です」

 

「疑う気持ちが極まれば、加害者にしかなり得ない。尚紀がそうであり、アナタもそうなる」

 

「自分はそうはならない……絶対になってやるものか!!」

 

赤い魔力を放出し、十七夜は全身に蝙蝠のカーテンを纏う。

 

意固地になった彼女を見たかなえとメルも動く。

 

かなえの新たな魔法武器である魔槍ルーンが業火に包まれる。

 

メルの新たな魔法武器であるトートの書が開き、風に靡くようにページがめくられていく。

 

「感じるこの魔力…。自分と同じく悪魔となった君達は…強そうだな」

 

「それでもやりたいというのなら、あたしは手加減しない」

 

「十七夜さん…お願いだから、ボクに悪魔の魔法を使わせないで下さい!!」

 

状況は不利だと判断した時、十七夜の頭の中に念話が響く。

 

<ジリープアー。泥沼合戦するぐらいなら今日は帰るんですケド>

 

「……分かった」

 

体が弾け、無数の蝙蝠と化した十七夜が夜空に向けて飛び去っていく。

 

「逃げるのか…?」

 

「待ってかなえさん!空の上から感じる…この強大な悪魔の力は!?」

 

高高度から迫りくるのは巨大な鳥の影。

 

大きくループして平面飛行した鳥の上に蝙蝠が集まり、背の上で実体化しながら去っていく。

 

巨大な鳥は可変翼戦闘機のように翼を広げ、後方に向けて業火を噴き出す。

 

アフターバーナーのような急加速を行った存在はあっという間に街から消え去ってしまう。

 

「思わぬ邪魔が入ってしまったな……」

 

強風地獄だがフェニックスが用いる風魔法の応用によって背の上は安定しているようだ。

 

「あの2人…知り合いなワケ?」

 

「…昔の仲間達だが円環に導かれた者達だ。だがあの者達は生き返った…悪魔としてな」

 

「アッハハ!超グッドなんですケド、そいつら!デス&リバースデビル…アリナも会いたかった」

 

「出会えば殺し合いになるだろう。自分の思想は彼女達から拒絶されてしまったからな…」

 

「これからどうするワケ?」

 

「差別条例を強行採決しようと企む市議会議員は他にも大勢いる。自分の粛清は終わらない」

 

「その件なんだけどさ…暫く動くなって、上から言われちゃったんですケド」

 

「なんだと!?ユダさんは何を考えているんだ…これからだというのに!」

 

「今回のアナタは覚悟を試すために動かされたワケ」

 

「また試練だったのか…。それで、自分は合格なのか?」

 

「オフコース。メイソン教義に反するヒューマンをゴミのようにジェノサイド出来たし」

 

「一緒について来ていた君は試験官も兼ねていたんだな」

 

「カミハマシティの事は心配しなくていいカラ」

 

「何故そう言い切れる?何かしらで神浜から差別条例が消えてくれるというのか?」

 

後ろの十七夜を見たアリナは笑みを浮かべてくる。

 

「もっとビッグな事が起きる。それはきっと、()()()()調()()()()()()そのものだカラ」

 

……………。

 

現場に残されてしまった2人は悪魔化を解き、互いに向き合う。

 

「突然空から現れたあの巨大な鳥は…悪魔だったのかな?」

 

「あの力強くも美しいフォルム…間違いありません、あれはフェニックスでしたよ」

 

「そうなの…?悪魔化したあたしだけど、悪魔知識は多くないからサッパリだったよ」

 

「ボクの知識だって白いお猿さんからの貰い物ですけどね」

 

「そうだったね。さて、傷ついた子を助けないと」

 

「回復魔法はボク得意です。ももこさんは任せて下さい」

 

「ん…あたしは令を起こすよ」

 

傷みで気絶したももこに対してメルは悪魔の回復魔法であるディアラマをかけ続ける。

 

かなえは令を抱き起して揺さぶってみるが熟睡しているのか一向に起きる気配がない。

 

暫く黙り込んでいたが不安そうな声をメルが呟いてくる。

 

「……みたまさんに、なんて言えばいいのかな?」

 

「…分からない。こんな現実…悪い夢としか思えない」

 

「十七夜さん……悪夢の再会でしたよ。こんな形で再会なんてボク…望みませんでした」

 

どうしていいのかも分からず、その後の2人が口を開くことはなかった。

 

────────────────────────────────

 

みたまが暮らす大東区の団地街にはももこが訪れている。

 

玄関を開けたみたまに向けて暗い表情を浮かべてしまう。

 

「急な連絡だけど……何かあったの、ももこ?」

 

「……調整屋、どうか…落ち着いて聞いてくれ」

 

場所を移動し、団地街の公園でももこは打ち明けてくる。

 

和泉十七夜の変わり果てた現実を語ってしまうのだ。

 

顔面蒼白となったみたまは両膝が崩れてしまう。

 

「嘘よ…十七夜が人殺しの悪魔に変わり果ててただなんて……嘘よ!!!」

 

「…事実だ。アタシと令が駆けつけた現場からは全身の血を抜かれた家族の遺体が発見された…」

 

「なんで?正義を愛して…誰よりも平等と利他精神を愛した十七夜が…なんでそんなことを!?」

 

「あの人は…吸血鬼の力を使って世直しを企んでる。襲われた人間は差別条例賛成議員だった…」

 

「人間のために…命を懸けて戦った正義の魔法少女が…人間を殺すことが出来るの!?」

 

「アタシだって辛いんだ…だけど、現実は受け止めるしかない…」

 

「あの子は精一杯頑張った!正義の魔法少女の長を…生活が苦しくても懸命に務めたわ!!」

 

「調整屋……」

 

「なのに!!みんな十七夜を虐める…私を虐める…東の住民達を虐め抜く!!」

 

「お、落ち着けよ調整屋!」

 

「教えて…ももこ。私たち魔法少女は一体何が大切で…何を守ればいいの?もう…分からない」

 

「大丈夫だって調整屋…きっとなんとかなるから…」

 

「だったらももこ…今直ぐ貴女が代わってよ!!」

 

「えっ…?」

 

「今直ぐ東で差別されてきた子の立場と代わってよ!!」

 

「それは……」

 

「西で恵まれてるくせに…何もしないで温温と生きてきた影で…私と十七夜は苦しんできた!!」

 

感情が高ぶり過ぎて自分がももこを傷つけているという客観性が消えていく。

 

「それを棚に上げて…利いた風な口を叩かないで!!!」

 

泣き崩れてしまったみたまに対して、ももこは俯いたまま。

 

かけてやれる言葉などないのだ。

 

平穏に暮らせた西側住民が苦しめられ続ける東住民にかける言葉など用意できる筈がない。

 

「助けて……誰か助けて………」

 

神浜の混迷極まった中で1人の魔法少女は生きることへの絶望に打ちひしがられてしまう。

 

意思が濁れば意地になる。

 

口が濁れば愚痴になる。

 

徳が濁れば毒となる。

 

他人の痛みを想像せず、己の感情しか見ない楽な道がそこにはあるだろう。

 

一度エゴに飲まれれば最後、相手のことなどどうでもよくなる。

 

悪魔を表す7つの大罪は人間の心の中に宿ってしまうものだ。

 

人に罪を犯させる概念はいつだって人間の感情から生まれるのであった。

 




原作まどか☆マギカの闇堕ちヒロインさやかちゃん化したなぎたんでした(汗)
原作監督の新房監督の理屈だと、人殺しは決して報われちゃならんそうですが…なぎたんもどうなることやら(汗)
みたまさん、悲劇のヒロイン過ぎる(汗)
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