人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
日曜日の朝、ゴミ袋が集められている山の上に倒れ込んで寝ていた尚紀が起き上がっていく。
酷い二日酔いによる頭痛に耐えながら街を歩いていると声を掛けられたようだ。
「あっ、尚紀さん!テレビ見ましたよ!!」
西側に出かけようとしていた月咲が駆け寄ってきた時、彼女は感じるだろう。
「ウチ…本当に嬉しかった!尚紀さんが叫んだ言葉は東の人達の…うっ!?酒臭い…」
酷い酒臭さを浴びたせいで彼女は顔を歪めてしまう。
「……そうだ、そういう顔つきで俺を見るべきなんだよ…」
「ど、どうしたんですか…?浴びる程の酒を飲まないとこんな風にはなりませんよ…?」
「お前には関係ない。それよりも…ここいらで一番近い駅は何処だ?」
「工匠区の駅ですか…?工匠区は駅が少なくて、橋を渡って参京区に入った駅の方が近いです」
「……分かった、ありがとう」
月咲からの感謝の言葉も受け取らずに彼は歩き去っていく。
「尚紀さん…どうしたんだろう?何か…嫌な事でもあったのかな…?」
怪訝な表情を浮かべながらも神浜を救ってくれた英雄の背中に深々とお辞儀をしてくれる。
尚紀が姿を消した頃、北養区の街を歩く人物達は彼の家を目指している。
「えへへ…尚紀さんが喜びそうな品は分からないから、実用的な品でいいですよね?」
「ん…尚紀は探偵だし…仕事着はネクタイ姿だから、贈り物はネクタイでいいと思う」
「本当に凄い人です。ボク…あの人と出会う運命を与えてくれたこの世界に感謝してます」
「あたしも気持ちは同じ…魔法少女をやってた頃に…出会いたかったな」
プレゼントを包んだラッピング袋を抱えて歩くメルの付き添いはかなえが務めている。
彼女達は尚紀の家がある丘の方に向かうため、小高い坂道を歩いていた時だった。
「ちょっと~あんた達~~!!」
道路を走ってきたのはクリスであり、横道に停車して悪魔同士の会話を始めていく。
「アタシの事はダーリンから聞いてるでしょ!?ちょっと聞きたいのよ!!」
<クリスさんでしたっけ?あと、普通に悪魔会話をするのは勘弁して下さい…>
<念話を使って…普通の会話だと…あたし達は車に話しかける変人に見られるから…>
<あっ…それもそうね。ごめんなさい>
<聞きたいことって何ですか?>
<昨日の夜からね…ダーリンが帰ってきてないのよ!!>
それを聞いた者達は驚愕に包まれてしまう。
<どういう事なんですか…?最後に尚紀さんを見たのはいつです!?>
<工匠区の駐車場で見たのが最後よ。夜風に当たりに行くとか言って、東に向かったけど…>
<大東区方面に…?尚紀の様子に何かおかしい部分はなかった?>
<凄く落ち込んでいる様子だったわ…東連中が大勢集まってきててね、英雄様万歳合唱よ>
<ボクもその場にいたかったんだけど…プレゼント品を漁りに買い物に出かけてました…>
<尚紀がいつまでも帰ってこないから…家に戻ったというわけだ?>
<ネコマタから尚紀に連絡してもらったんだけど…ダーリンったら、スマホの電源切ってるわ>
<よほど人を遠ざけたい状態だという事ですね…>
<うちも新入り含めてダーリンの捜索に出向いてもらってる。しっかり者に見えて…繊細よね>
<そうなのかも…しれないですね。ボク達…あまりにも尚紀さんに頼り過ぎてたのかも…>
<無理をさせ過ぎたのかな…?尚紀にしか出来ない事はあるけど…だから苦しめてたんだね…>
<あんた達と出会えたのは僥倖よ!ダーリンから聞いてるわ、メル君だっけ?>
<もしかして…ボクが手に入れた予知の力を頼りにしたいとか?>
<モチのロンよ~!ダーリンの居場所をヨチヨチしてあげちゃって~!!>
<あたしからもお願いするよ、メル>
<分かりました。視てみますね>
両目を閉じ、こめかみに指を当てながら意識を集中してくれる。
「……どう?視えてきた?」
「これは…電車内の景色です」
「電車…?尚紀は電車に乗って…何処に向かってるんだろう?」
「ボクは電車オタクではないから…この電車がどの鉄道路線で使われてるのかは分かりません」
「電車内から見える景色で何か分からない?」
「ボクは電車で旅をする事もなかったので…正直分かりませんね…」
「そっか…電車に乗って何処かに向かっているという情報しか分からないな…」
状況を把握したクリスは落胆の色を浮かべてしまう。
<ボク…尚紀さんにプレゼントを持っていく途中だったんです。こんな事になるなんて…>
<気持ちだけでもダーリンは喜ぶわ。帰ってきたら、ちゃんと渡してあげなさい>
<力になれなくてごめん…あたし達もどうにかして探してみる>
<ありがとう♪ダーリンが生き返らせてもいいって言うぐらいの子達だと分かって嬉しいわ>
尚紀を探すために再びクリスは発進していく。
「尚紀さん…辛かったのなら言ってくれたら良かったのに…」
「もしかして…辛いからこそ、誰かに打ち明けに行ったとか…?」
「それも考えられますね…」
不安そうに空を見上げる者達は彼女達だけではなく、他の魔法少女達にもいるのであった。
♦
竜真館の道場内で正座しているのは神浜魔法少女社会の新たなるリーダーである。
常盤ななかは目を瞑りながら考え事を繰り返しているようだ。
「……はぁ」
答えが出ないのか深く溜息をついた後、人の気配を感じた事で後ろに振り向く。
「かこさん…?それに貴女は…観鳥さんじゃないですか?」
玄関先に立っていたのは仲間達であり、声を掛けてくる。
「多分…こちらにいらっしゃると思って来ました」
「観鳥さんは…何か私に用事でしょうか?」
「夏目ちゃんだけでなく…常盤ちゃんも気が付いてるんでしょ?」
「どういう…意味でしょうか?」
「ななかさん、観鳥さんはですね…尚紀さんの演説の正体に気が付いた人です」
「…そうでしたか、よく気が付かれましたね?」
「観鳥さんも最初は感動してた…だけど、最後の部分だけは看過出来なかったんだ…」
「流石は政治ジャーナリストを目指す卵です。では…貴女もお悩みになってるのですね?」
「うん…答えが出ないまま迷ってたら…夏目ちゃんに声をかけられてね」
「同じ悩みを抱えている者同士で相談し合いながら答えを出そうかと…」
「有難いです。私も独りで考えてましたが…何も答えが出ないままでした…」
「それじゃあ、上がらせてもらうね」
「明日香さんからは許可をもらってますのでどうぞ。それと…貴女達はつけられてましたね?」
「「えっ?」」
意味が分からなかった彼女達であるが、背後から感じる魔力に気が付いてしまう。
「ええっ!?い…いつの間にいたんですか…美雨さん?」
後ろに立っていたのは後を追っていた美雨である。
「固有魔法を使て尾行してたネ。行儀が悪い事して悪かたヨ」
「そんな真似までして…観鳥さん達を尾行してきた理由は?」
「お前達がさき話していた内容ネ」
「あっ……」
「あの時…私達はナオキの演説に感動してたヨ。だけど最後の部分で令の顔に変化が見えたネ」
「バレてたか…流石は裏社会を渡ってきた美雨さんだよ」
「何も語らず、不安そうな表情で帰る令が気になてたネ。隠し事してるとピンときたし」
「…バレてしまっては仕方ないですね。私がお伝えしますので…お上がりください」
「お邪魔するヨ」
4人は集まり、ななかが語っていく内容を聞いた美雨は驚愕しながら冷や汗を流す。
「…そういう手口だたカ。そして…ナオキが語た理屈は…落とし穴があたと言うカ?」
「この手口によって…世界中の国々が荒らされているのです」
「酷いもんだよ…欧州は既に移民天下の状態で、公共施設も移民文化で作り替えられてる」
「今のロンドンを知ってますか?まるでイスラムの国を見ているかのような有様ですよ…」
「ナオキの人権宣言は…移民にとて、都合が良過ぎたというわけカ…」
「移民と自国民との間で激しいいがみ合いが起き、それが憎悪として国民に向けられるのです」
「この問題は神浜とて例外じゃないネ。移民は増え続ける…南凪区一極化集中では収まらない」
「移民は
「ナオキの人権宣言は素晴らしい博愛と道徳精神ネ…だけど…だけど……」
「はい…博愛や道徳では守り切れないものがあるんです。それこそが…地域主権なのです」
「私…移民とのトラブルは多くを見てきたネ。そして…連中を摘まみだそうとすると…」
「蒼海幇は極右を掲げる差別団体…そういう扱いを国から受ける危険性が大きかったのでは?」
「これが平等なのカ!?平等という素晴らしい博愛によて…国が壊れるなんて…あんまりネ!」
「異なる存在の人達とも仲良くし…慈しみ…みんなで手を繋ぎ合って環を築くってね…」
――
「経済とは椅子取り合戦…移民に仕事を奪われたら国民が怒り…国民に奪われたら移民が怒る」
「憎悪しかもたらさないんだ…だから移民を受け入れて成功した国なんて…なかったんだよ…」
これからの日本の惨状を考えただけで重苦しい沈黙に支配される。
「
「社会主義をグローバル化させるのが共産主義…それを推し進める
「神浜は…神浜はどうなていくネ!?ナオキがもたらした思想によて…何が起こるカ!?」
「憎しみの連鎖は終わらないのです…今度は東が相手ではなく…移民が相手となるでしょう」
「ナオキ…お前はそれが分かてて…分かてた上で…神浜人権宣言を掲げたのカ…」
「尚紀さんは…間違っていたのでしょうか?私には…答えが出せません…」
「観鳥さんも…出せないよ。平等を掲げた人権宣言のお陰で東が救われたのは…事実なんだ」
「神浜を救った英雄なのは事実です。ですが…それと同時に新たなる災厄さえもたらす…」
周囲が静まり返り、皆が俯いてしまう。
ショックで体が震えていた美雨であったが顔を上げ、決断した表情をしながらこう告げる。
「これはもう…
「美雨さん……」
「ナオキは差別を黙認しないで戦てくれた…弊害もあるけど…それでも間違えてないヨ」
「そ…それは……」
「そうですよね…。神浜魔法少女社会に対してだって…やり方こそ間違ってましたが…」
「神浜の魔法少女達を批判してくれたお陰で…やり直すキッカケとなってくれた…」
「楽な道しか求めない魔法少女や人間は多い…それでもナオキは命を張てくれたネ」
「誰かの尊厳を守り抜く人であり…同時に目的のためなら手段を選ばない暴君でもある…」
他人を思いやれる優しい男であり、目的のためなら手段を選ばない暴君。
人修羅と呼ばれる悪魔は
魔法少女達は人修羅の判断を迫られるが、美雨は断言してくる。
「世界は救いようがないと切り捨てる…それに反逆した男ネ。こんな男は今までいなかたヨ」
「私…尚紀さんを怖がってしまいました…もしかしてあの時も…尚紀さんを傷つけたのかも…」
「光をもたらすと同時に闇をもたらす人か…どっちが正しいのかな?観鳥さん…分からないよ」
美雨は立ち上がり、両足を肩幅に開いて両手を動かす。
「美雨さん…その構えは…?」
左手を頭上に掲げ、右手を下に向ける正中線の構えをしてくる。
「…見ているネ」
空手の回し受けと似ているような動きを行う。
左右に大きく両腕を回し、両腕でS字を描くような型を見た事があるななかはこう話す。
「その動きは…太極拳ですか?」
左右の手が逆になった正中線の構えで描かれたのは陰陽太極図であろう。
「攻めの手と守りの手は同時に存在するヨ。
「光があれば…影もまた…同時に生まれる…?」
「傷つける事もあれば傷つけられる事もある…
「ナオキが言た太極の根源とは私達人間ネ。私達は常に…陰陽のコトワリの上で生きているヨ」
「私達は陰陽を見つめながら…
「人は陰陽を観測する者…だから流されやすい。常に心を中庸に保ち…陰陽を取り扱うべしネ」
美雨からインストラクションを得たななか達の表情から迷いが消えてくれる。
「す、凄いです…美雨さん!私…陰陽理論に感動しました!」
「フフッ、流石は美雨さん。あの嘉嶋さんの口から完敗だって言わせるぐらいの魔法少女さ♪」
「ウフッ♪私はきっと太陽の光から生まれる影なんていらないって…我儘を言ってただけです」
「…ほ、褒めても何も出せないヨ!それに…拳法ではまだナオキに勝ててないネ!」
太鼓判を押された美雨は赤面しながら床に座り込んでしまう。
「私…尚紀さんに謝りに行きたい…顔には出さなくても…苦しんでると思います」
「せめて…事情を知っている私達だけでも…理解者になってあげたいですね…」
「中庸の徳たるや、それ至れるかな…孔子の言葉ネ。私達だけでもナオキを分かてやりたいヨ」
「それが
彼女達は道場に掛けられている掛け軸に顔を向ける。
道場主である明日香の父自らが書道したもののようだ。
「心正しからざれば剣また正しからず…心の正しさとは…
「皆がナオキを悪者扱いして罵倒する事になても、私は正しいと言える勇気…
「一般的な意見に惑わされない中庸の心…竜城さんのお父さんもそれを目指してたんだね」
「ノルウェーの劇作家であり、近代劇の父であるヘンリック・イプセンの言葉と同じ道です…」
――この世で最も強い人間は、
自分を見失わず、孤独に耐えて立ち続ける強い意志を持った人間を目指そうとする。
彼女達が選んだのは秩序でも混沌でもない。
陰陽だけでは偏った見方しか出来ず、相争うだけの未来しか築けない流される道。
だからこそ尚紀は三つ目の概念を生み出し、バランスを生みたいと叫んだのだろう。
それこそが彼がもたらしたルシファーの宇宙的啓示。
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二日酔いに耐えながら東京に訪れた尚紀は平将門の首塚まで歩いていく。
「ここしばらく…将門のところには顔を出していなかったっけ…」
久しぶりに訪問しようと遠出してきた彼は首塚に登るため石段に入ると異変が生じる。
「な…なんだ…これは…?」
周囲の景色が歪んでいき、ホワイトアウトしていく。
「この景色…見た事がある。あれはかつての世界において…将門の領域に入った時の光景だ」
世界に色が戻っていくと、そこは薄暗い場所になっている。
「坂東宮…再び来る事になるとはな。だが…以前見た景色とはかなり違う…」
広大な闇の世界に見えたのは巨大な武家屋敷であり、尚紀は息を飲み込む。
「俺をこんな場所に引きずり込むとは…何を企んでいる…将門?」
朱色に染まった鳥居を潜り、武家屋敷方面へと彼は歩いていく。
屋敷内に入り、蝋燭の明かりを頼りに屋敷の回廊を歩き続ける。
「似たような景色ばかりが続く武家屋敷って…方向感覚が分からなくなっていくな…」
畳の部屋に入って襖を開いて進んだり、曲がり角の多い廊下を当ても無く進む。
地下に下りる階段を降り、先に進んでいくと景色は一変する。
「地底洞窟か…?」
滝に沿うように地底洞窟の道が続き、川には灯篭の明かりが灯っている。
洞窟の奥まできた尚紀は両開きの入り口を開ける。
「ここは……」
大きな地底湖の中央に見えた社こそ、かつての坂東宮の中央に位置した将門公が祀られた社。
階段を下りていき、地底湖の中央に聳え立つ社の領域へ入ろうとする。
「これは…結界だな?かなり厳重に張られている…さっきまでの領域といい…どういう事だ?」
怪訝な表情を浮かべていた時、将門の声が頭に響く。
<久しいな、人修羅よ。何用か?>
<あんたに…聞いて欲しい事があった。それと…この迷路のような領域は何なんだよ?>
<…賊共が東京に現れておる。これはそのための守りなのだ>
<賊共だと?>
<汝がここまで来れたのは正解の道を我が与えたため。賊共が入れば手荒い歓迎となるだろう>
<なるほどな…俺をそっちに入れてくれるか?>
<鳥居の結界は既に解けている。入るがいい>
幾重にも連なる朱色の鳥居を超え、将門の社の中へと入っていく。
社の中は神域の如き異空間となっており、奥底まで続く鳥居の向こう側は異次元空間だ。
「再びこの場所に訪れる日が来るとはな…」
鳥居の奥底から近付いてくるのは神の如き強大なる怨念。
現われる存在は天皇の朝廷に対抗し、東国の独立を標榜して新皇と名乗った豪族である。
「その出で立ち…サムライとしてのあんたの姿を見るのは…初めてだな」
漆黒の全身甲冑を纏い、髷を下ろして後ろ髪を伸ばし、青白い顔には歌舞伎化粧を纏う。
日本三大怨霊の一つとして数えられ、禍々しい祟神であると同時に明神でもある御姿。
桓武天皇の血筋を持ち、新皇を名乗る資格は十分持っていたであろう存在。
一千年の時を超えて関東を守護してきた猛将こそ、平将門公である。
「その姿こそが…本来のあんたの姿ってわけかよ?」
凍てつくような覇気を全身に浴びる人修羅の顔に冷や汗が浮かぶ。
「…賊共に備えるため、我もまた警戒している」
「賊共っていうのは…?」
「……………」
「俺はまだ東京の守護者としての自分を捨ててはいない。聞く権利があるはずだ」
「…そうだな。守護者として知るべきであろう」
太古の西洋からやってきた神々から託されたものについて将門は語ってくれる。
「馬鹿な……この世界にも存在していたというのか!?」
「そうだ。我が千年を超えて守ってきたのは邪教の秘術を行う施設…邪教の館だ」
「どうしてそれをもっと早くに教えてくれなかった!?」
「…西洋からやってきた神々との約定があったからだ」
「約定だと…?」
「邪教の秘術を求める者は太古の昔から多い。悪魔召喚士、魔法少女…あらゆる邪な者が集う」
「あんたはそいつらに見つからないようにするために…隠し通してきたのか?」
「そうだ。だが邪教の秘術文献の断片によって…館と同じ施設が生まれているのは知っている」
「業魔殿のような施設か…」
「古の約定有る限り、我は邪教の館を表に出すつもりはなかった。しかし…」
「…ついにその存在を突き止めた連中が現れた。そいつらが賊共ってわけか…」
「彼奴らはダークサマナー…悪魔合体施設を求めるのは道理というものだ」
「まさか…イルミナティ共か!?俺も守りたい…邪教の館は何処に隠されてたんだ?」
「我の首塚と並ぶようにして存在している我ゆかりの寺社を繋ぎ、結界を張って封印してきた」
「聞いた事がある…あんたの首塚を通して東京に描かれた…北斗七星か」
「北斗七星結界は各寺社で祀られた神鏡が起点となって張られている。我の力を宿す鏡だ」
「ダークサマナー共はその鏡を破壊したがっているというわけだな。守りはどうしてる?」
「何度か小競り合いが起きたが、全て蹴散らした」
「もしかして…こっちの世界のあんたも、あいつらに守護されているのか?」
「無論だ。我の守りを貫きし剛の者達とは…仏法の守護神である四天王達だ」
「どうりで蹴散らされるわけだ。多聞天でもある毘沙門天は元気にしていたか?」
「汝に会いたがっていた。毘沙門天とそれに続く鬼神達…そして我の七体の影が防御を固める」
「それだけの布陣を敷かれれば、イルミナティだって手を出してこれなかっただろうな」
「汝も結界を守りに来るのはいいが…汝は神浜と呼ばれし地域に住居を移したのだろう?」
「知っていたのか…?」
「彼奴らはいつ攻めてくるか分からない。東京在住ならまだしも、神浜から間に合うのか?」
「そ、それは……」
「案ずるな、ここは我らが防御を固める。汝は今まで通りで構わん」
「俺が神浜に引っ越して良かったのか…?東京の一大事だっていうのに…」
「神浜と呼ばれる地域とて関東。関東の守護神である我が守らねばならない地域なのだ」
「すまない…二足の草鞋を履く羽目になったな…」
「東京を忘れなければそれでいい。それで…汝の要件というのは?」
「……聞いてくれるか」
尚紀は重い口を開きながら語ってくれる。
将門でなければ今の彼の苦しみは分からないと感じたからこそ、ここまで来たのであろう。
今の尚紀は
民を守った守護者が謀反を起こし、民を苦しめる人権宣言を行う
♦
辛い表情を浮かべたまま語り続ける尚紀の言葉を将門は清聴してくれる。
その目が閉じられ、人間として生きた頃の自分の記憶を思い出していく。
「俺は神浜を救ったのかもしれない…だが、それと同時に移民を招いた…逆賊なんだ」
将門は黙して語らずの態度を続ける中、介錯を頼むような顔つきでこう語る。
「移民を受け入れる環境を整えるのは国を売る行為だ。国の守護神として…俺を斬るか?」
将門の重い沈黙が破られた事で口を開きだす。
「…かつて我も、国の政治を憂いて謀反を起こし…朝廷の敵となった武士だ」
「あんたの時代も…国の政治は腐敗していたのか…?」
「朝廷の要職は藤原氏が独占し、地方の政治は国司が横暴に振る舞ってやりたい放題であった」
「国の中央どころか地方の政治まで腐っていたのか…今も変わらない…神浜もそうだった」
「民衆は朝廷から派遣された国司からの重税や労役に苦しめられてきた。民の敵だったのだ」
「……………」
「我は国司だけでなく、それを押さえない朝廷共にも憤慨し…乱を起こした」
「平将門の乱か…」
「傍若無人な国司共から印綬を奪って追放し、関東八か国を解放してきた」
「朝廷の悪政に苦しんでいた民衆を味方に付けられたから…あんたは新皇を名乗ったんだな」
「朝廷は祈祷による呪殺を目論んだが潰え、我を打ち取った者は誰でも貴族にすると宣言した」
「…後の末路は分かる。連合軍の焦土作戦によって民は路頭に迷うが…嘆いていた理由は違う」
「…全ては我の力不足。我の治世を望んでくれた民草を守ってやれなかった…汝と同じくな」
「…さぞ無念だったろう。あんたの気持ち…今の俺なら…分かってやれる」
「民を守る道は難しいものだな…。1・28事件の時、我が語った言葉を覚えているか?」
「優れた武将であろうとも、
「…守ってやれなかった民草に詫びれる言葉などない。汝は我から…何を学ぶ?」
俯いて黙り込むが、顔を上げる尚紀の顔つきには決意が宿っている。
「…繰り返させない。過ちは違った形となり、何度でも降りかかろうが…止めてみせる」
「歴史とは連続性…それは21世紀でも変わらん。だからこそ汝は進むのだな?」
「ああ…そのためなら俺は…喜んで
その決断を聞けた将門の口元が微笑みを浮かべてくれる。
漆黒の鎧の腰に身に着けた刀を鞘ごと抜いた後、彼の前に持ち上げてくる。
「未来の汝は
禍々しくも美しい輝きを放つ刀剣こそ、ボルテクス界でも手に入れた事があった公の御剣。
関東の守護神が携えてきた霊刀であり、
「俺に託してくれるのか…?もう一度…あんたの刀を…?」
「かつての世界以上に汝はこの刀を持つに相応しい益荒男となった。嬉しいぞ…
将門の意思を汲み取った尚紀は片膝をつきながら両手を前に掲げる。
将門は彼の両手に託すようにして、政治を諫める者が振るう剣を託してくれる。
将門の剣を持つ尚紀は右手で柄を握り込む。
「…前に持った時よりも重く感じる。それに…手に吸い付く程の一体感を感じる…」
鞘から霊刀を引き抜けば刀身が解放され、凍てつくような寒さと神々しい光が放たれる。
「日本刀の原型である古太刀か…斬る事に重点が置かれている…」
腕を組んで見守る将門は喜びの笑顔を浮かべており、尚紀に注文してくる。
「我の後継者よ、舞ってくれないか?」
同じ無念と同じ志を受け取った尚紀は迷いなく頷いてくれる。
「志は受け取った。見ていてくれ…国賊と呼ばれるだろう守護者が振るう剣舞をな」
かつてのボルテクス界以上に将門は人修羅を認めてくれる。
彼が振るった美しき演舞を見届けた将門は去っていく人修羅の後ろ姿を見守ってくれる。
「666の悪魔よ…汝が背負いしはルシファーの魂だけに非ず…我の魂をも背負うのだ」
異次元空間に戻るための鳥居の道を歩きながらも人修羅の先の苦難を憂いてしまう。
「汝は憂国の烈士となりて戦うだろう。日の本の血筋ではない国家内国家だけが相手ではない」
――我の血筋の祖先であり、1300年間日の本を支配してきた
その者達こそ、将門でさえ倒せなかった日の本の朝廷一族。
♦
神浜行きの電車に乗る尚紀は将門の刀をいつでも抜けるよう手を開きながら感触を感じている。
「大事な剣を託されたな…それでも嬉しかったよ。あんたの気持ちを託してくれて…」
神浜の景色が見えてきた頃、彼は迷いを払うような決意を語る。
「俺はもう迷わない。ななか達が俺のペテンを周囲に漏らそうとも…恐れはしない」
駅のホームから下りた時、夕暮れの空を見上げる。
「たとえペテンがバレて…神浜の人々から国賊だと罵られても…恐れはしない」
――お前の道を進め。人には勝手な事を言わせておけ。
ダンテの言葉がまた浮かんできた彼は吹っ切れたのか微笑んでくれる。
「ダンテ…俺もあんたと同じ道を行く。
――俺は俺であればいいんだ、たった独りでも戦い抜く。
「それこそが、人間の守護者としての…俺の生き方なのさ」
恐れを捨て、真っ直ぐ進む尚紀の足取りにはもう迷いはない。
この世で最も強い人間は孤独の中でただ一人立つ人間。
自分を見失わず、孤独に耐えて立ち続ける強い意志を持った人間こそが強いのだ。
それを伝えようとしてくれた仲魔こそがデビルハンターと呼ばれたダンテであろう。
魔界の悪魔達から裏切り者の息子だと呪われながら生きてきた者でもある。
悪魔に襲われ人間に被害をもたらし、人間から呪われながらも誇りを捨てなかった男なのだ。
人修羅はダンテの背中に続くだろう。
人間としての誇り高き魂を追い求める男達の道は、もう一度重なってくれるのであった。
やっと人修羅君も吹っ切れて、パワーアップアイテムも貰えたというわけです。
僕の物語は日ユ同祖論ネタを全開にするんで、時女一族編は地獄になるかも(汗)