人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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153話 継がれる魂

将門首塚の結界である坂東宮の最奥。

 

地底湖中央にある将門公の社の前では篝火が焚かれ、陣床几椅子に座る将門の姿が見える。

 

白いハチマキを頭に締め、合戦に赴く武将のような緊張感を放つ姿。

 

腕を組み目を瞑り、戦場の状況を把握していく。

 

「……済まんな、皆の衆。我の負け戦に付き合わせてしまった…」

 

意識の世界で見える光景とは、次々と討ち死にしていく四天王と影達の姿。

 

持国天に最後をもたらしたのは、イルミナティに所属するダークサマナー最強の存在であるシド。

 

炎が弱点であった持国天は、ファフニールがもたらす業火によって焼き尽くされていく。

 

「トドメを刺しなさイ、ファフニール」

 

「グハハハッ!!コレデ終ワリダァ!!」

 

口からファイアブレスを放ち、焼き尽くされる持国天は遂に力尽き果てる。

 

「悔いは…ない…。後の…事…は…たの…む……ぞ……」

 

倒れ込んだ体が弾け、MAGを空に放出する最後となる。

 

広目天に最後をもたらしたのは、シドに次ぐ実力を持つフィネガンと腕利きサマナーであるユダ。

 

弱点は雷だと見抜いたユダはマルトを召喚、フィネガンが召喚したケルヌンノスを援護する。

 

「やれ、ケルヌンノス」

 

「これで終わりにしてくれるわ!!」

 

浮遊する鹿の頭蓋骨の上から放つ一撃とは、物理攻撃魔法の中では最上位となるデスバウンド。

 

感電して動けなくなった広目天に目掛け、複数の物理的衝撃波の津波が襲い掛かっていく。

 

「ぐおおぉぉーーーーッッ!!!!」

 

衝撃波の波の中に飲まれ、体が砕け散っていく広目天の最後。

 

「画竜…点…睛…我らの…死…は…次なる…魂を…育て……」

 

衝撃波の光の中でMAGを放出し、広目天の姿はこの世から消え去ってしまう。

 

増長天に最後をもたらしたのは、ユダと並ぶ腕利きサマナーであるマヨーネ。

 

「うおぉぉーーっ!?こんなバカでけぇ悪魔だとは聞いてねぇぞ!!」

 

どうにか罠を掻い潜り、いの一番に最奥領域に攻め込んだキャロルJではあるが…劣勢である。

 

「逃げるか小僧!!」

 

最奥領域から外に出て、武家屋敷を破壊しながら迫りくる怒れる鬼神の姿。

 

「こんなところで死ぬわけにはいかねぇ!あと少しでマヨーネの待ち伏せエリアだ!!」

 

マヨーネが残した印を頼りに、武家屋敷内を逃げ惑う姿。

 

どうにか中庭にまで飛び出すことが出来たが…背後からは屋敷を破壊しながら迫る鬼神。

 

<<口先だけの男でも、逃げ足だけは早いようね。上出来よ>>

 

中庭で光るのは…大量のC-4爆弾。

 

特殊部隊姿のダークサマナー達の指揮をとる冷静沈着なマヨーネは、罠を仕掛けておいたのだ。

 

「ぬぅ!!?」

 

次々と中庭が爆発し、増長天の足を止める。

 

「小賢しい!!人間の兵器如きで我を倒せると思うてか!!」

 

ワルプルギス戦に挑んだ暁美ほむらが用いた爆弾量に迫る爆発であったが、増長天は健在。

 

だが、視界は爆発の煙で覆われ何も見えなくなる。

 

「出てきなさい、総攻撃のチャンスよ!」

 

控えていたダークサマナー部隊が召喚管を用いて悪魔を次々と召喚していく。

 

マヨーネもむらさきカガミを召喚、魔法威力を上げる補助魔法の『マカカジャ』を全体に用いる。

 

「総員一斉攻撃!!」

 

4属性魔法の数々が次々と増長天に命中していく。

 

「ヌォォォォーーーッッ!!!」

 

攻撃を受けながらも不屈の闘志で怯まず、三叉槍を天に掲げる。

 

雷魔法の最上位であるショックウェーブを放つのだが、むらさきカガミが前に出る。

 

「アラやだ…まあまあ…ええのホンマに?おばちゃんに魔法攻撃は洒落にならんよ~」

 

巨大な鏡が怪しく光る。

 

天から放たれた轟雷は鏡によって反射されてしまう。

 

「ぐおおぉぉーーーーッッ!!!」

 

自らが放った渾身の魔法攻撃によって全身を焼かれ、絶命していく姿。

 

「託し…て…死ねる…のだ…。公よ…先に…冥府で…待っ……」

 

体が砕け散り、MAGを放出する最後。

 

マヨーネが陣頭指揮をとることにより、部隊の被害は最小限に留めることが出来たようだ。

 

「……もう出てきてもいいわよ、キャロルJ」

 

中庭の草むらから顔を出し、ガッツポーズを見せるロックンローラー。

 

「ハァ…ロックンロールでカッコつけてるつもりだろうけど、雑魚しか相手出来ない男は最低ね」

 

次々と倒されていく四天王達の最後を見届けていく将門。

 

最後に見た仲魔の末路とは…毘沙門天だった。

 

……………。

 

「ぐあぁぁーーーーッッ!!!!」

 

超巨大な蛇の尾に絡みつかれ、締め砕かれていく毘沙門天の姿。

 

巻き付かれた毘沙門天の頭上には本体であるアモンが迫り、影で覆われていく。

 

「…吾輩の優れた物理耐性の上から手傷を負わせるとは…見事なり」

 

アモンの赤い左腕は金剛棒で骨ごと砕かれ、だらしなくぶら下がっている。

 

「だが、ここまでである。汝の勇猛に敬意を示そうではないか」

 

「ぐっ……うぅ!!!」

 

巨大な右腕を持ち上げ、鋭い鉤爪で頭部を引き裂こうと構える姿。

 

<<その役目、私にやらせてもらえるかしら?>>

 

アモンの結界世界に入り込み、巨大な尾の道を歩いてくるのはリリス。

 

彼女は絞め潰されようとしている毘沙門天の頭部の前に立ち、微笑みを見せた。

 

「リリスか…。吾輩を傷つけた獲物を横取りする気であるか?」

 

「あなたを傷つけれるほどの殿方なんて、そうそういないわ。女として凄くそそられちゃう♪」

 

「ふん…流石は性欲を司る夜の女王と言ったところであるが…腹の虫が収まらぬ」

 

「あなたの怒りの感情は、私がキッチリこの男にぶつけきってみせるわ」

 

「……よかろう、やってみせよ」

 

笑みを浮かべたリリスの目が金色となり、全身から漆黒のカーテンとも言える煙を発する。

 

漆黒のカーテンが晴れれば…そこに立っていたのは巨大な大蛇を首に巻いた全裸女性の姿。

 

全身には蛇柄文様が巻き付く鎖のように描かれ、その足は鳥の鉤爪の如く鋭く尖る。

 

その姿はギルガメシュ叙事詩にて描かれた女性の妖怪と酷似し、バーニーの浮彫とも似ていた。

 

「さぁ、遊びましょう。私があなたを天国に連れて行ってあげるから」

 

首に巻かれた大蛇の頭が持ち上がり、毒々しい煙を吹き出す。

 

「だ…黙れ!!男を貶める夜鷹め!!どれだけの新生児や妊婦を狩り殺してきた!?」

 

「フッ、私は人類の数を減らす事を目的とする女。だからこそ私は()()()()()()の象徴でもある」

 

女性解放運動であるフェミニズムは市民革命であり、フランス革命の頃に生まれた。

 

人間と市民の権利の宣言における人間とは男性であり、女性蔑視を批判して世界中で巻き起こる。

 

だが先鋭化したフェミニズムは男女平等など望まず、()()()()()()()()()をもたらしてしまう。

 

同性愛や性的少数者こそ貴ばれるべきだとフェミは叫び、少子化を促し社会の男女関係を壊す。

 

21世紀のSNS社会によってフェミニズムはさらに狂暴化し、社会に害しかもたらさなくなった。

 

リリスはそんな者達の掲げる悪魔である。

 

男性や、男社会に味方する女性を排除する()()()()()()()()()()()の象徴でもあったのだ。

 

「私はある意味、魔法少女達の象徴でもある。彼女達は()()()()()になる者達ばかりですものね」

 

「貴様…魔法少女達にもフェミニズムをばら撒く気か!!?」

 

「それをもたらしたのは閣下よ。それが形になったのが…魔法少女至上主義者だったのよ」

 

「男を堕落させるだけでなく…地位まで貶める!!それ程までに男が憎いか!!?」

 

「ええ、憎いわ。私を拒絶したアダムを永遠に許さない。その子々孫々を永遠に呪い続けるわ」

 

リリスの原型となったのは、メソポタミアのリリートゥとも言われる。

 

嵐の精霊であり、初期シュメールの神話にはアダパが南風の翼を破壊したという物語に繋がる。

 

彼女(南風)は人類に敵意を抱き、神々の王エンリルの妻であるニンリルとも同一視された。

 

エンリルはニンリルを強姦し、ニンリルは強姦されたトラウマによって男性に復讐を誓ったのだ。

 

「魔法少女至上主義者はこれからも増やし続ける。魔法少女はね…すべからく愛しい私の娘達」

 

――男性を貶めてくれる復讐者…()()()達なのよ。

 

リリスもリリムもその名の由来は()()であり、百合は三相一体の女神の処女相を表す。

 

魔法少女達が女同士で恋愛していく光景を百合と呼ばれるのは、リリスが起源。

 

「魔法少女達の恋愛の障害となるのは誰?」

 

「な…何が言いたい!?」

 

「それは()()()()()()()()()()()()と呼ばれる存在。だからこそ魔法少女はフェミニストとなる」

 

「女に近寄る男は全て…憎しみの対象だとでも言うのか!!」

 

「彼女達の()()()()がそうさせる。()()()()()()の正当化としてフェミニズムを欲しがるのよ」

 

「貴様の憎しみを代行させるために…魔法少女を利用しようというのか!!」

 

「魔法少女至上主義者とは、ラディカルフェミニストよ。彼女達の嫉妬と欲望が男社会を滅ぼす」

 

「極まった邪悪な悪霊め!!貴様を滅ぼせず死ぬとは…無念極まりない!!!」

 

「さぁ、百合の名を持つ私が…男と呼ばれる邪悪な存在に制裁を与えてあげましょう」

 

右腕を天に掲げ、南風の如き豪風を空にもたらしていく。

 

空は荒れ狂い、雷鳴を轟かせる積乱雲を生み出す。

 

嵐の精霊リル(大気・風)とも呼ばれ、風の女神ニンリルとも同一視されるリリスが放つ一撃。

 

――私はアダム(男)を許さない。

 

天から落ちる神雷の一撃こそ、敵単体に特大威力の電撃属性魔法を打ち込む『ジオバリオン』だ。

 

「ヌォォォォーーーッッ!!!!」

 

天雷の神槍の如き一撃が毘沙門天を貫き、全身がひび割れていく。

 

「我…が…無念…汝に…託…す!!必ず…や…倒して…く…れ……尚紀!!!」

 

毘沙門天の体が砕け散り、空に向けてMAGを放出。

 

「見事であった。吾輩の怒りの一撃に相応しい末路であったぞ」

 

「お気に召してくれて何よりね」

 

「外の坂東宮結界も消えるだろう。吾輩は元の巨体故に、擬態し直してから合流しよう」

 

「待ってるわ、アモン」

 

そう言い残してリリスの姿は消え去っていった。

 

…旧約聖書の創世記において、リリスはエヴァよりも先に生まれてアダム(男)の妻となる。

 

だが、リリスはアダム(男)に対し()()()()()を求めるようになっていく。

 

アダム(男)はそれを拒絶し、激怒したリリスはアダムの元を去ってしまう。

 

後悔したアダム(男)は唯一神に頼み、三体の天使を捜索に向かわせることになる。

 

紅海にてリリスを発見するが…既にリリスは悪魔と結婚していたのだ。

 

天使達はリリスを脅迫する。

 

アダムの元へと戻らなければ、悪魔との間に儲けた子供達を1日100人ずつ殺していくという。

 

それでもリリスはアダムの元へ帰ることを拒否したため、殺戮は実行されるのだ。

 

この仕打に苦しんだリリスは、復讐として人間の子供達を襲う悪魔になったと伝えられていた。

 

創世記においても、リリス(百合)は男と対等になれなかった。

 

だからこそ彼女は男を憎み、堕落させ、その地位さえも貶める。

 

彼女の嫉妬、そして憎しみはフェミニズムとなって21世紀の男女社会を蝕んでいくだろう。

 

彼女の復讐心を代行する者達こそが…百合(リリス)を掲げたい女(リリム)であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

毘沙門天の最後を見届けた将門の両目が開いていく。

 

「……残るは我と、3体の影達のみ」

 

本陣とも言える将門首塚の坂東宮結界には、3体の公の影達が武家屋敷内で守りを固める。

 

だが…将門は感じている。

 

大魔王ルシファーに匹敵する程の強大な悪魔の波動が…近づいてきている。

 

地底湖の上にそびえる武家屋敷。

 

そこは既に…ゲヘナの地獄と化していた。

 

<<ぐあぁぁーーーーッッ!!!!>>

 

頭部を掴まれた影の一体が一瞬で焼き尽くされ、消失。

 

MAGの光が放たれ、恐るべき牛頭神の姿を業火の世界で照らし出す。

 

「……児戯なり」

 

左手で黄金の杯をクルクルと回すスワリングを行いながら迫ってくる姿。

 

バアル神であるモロクは、真の姿を現すこともなく右手だけで相手をしてくる余裕の態度。

 

<<ここから先にはいかせん!!我が屍によって隙を生み出す!!>>

 

影の一体が飛び込み、もう一体の影はメギドを放つ構え。

 

袈裟斬りが決まるよりも先に右手が伸ばされ、空中制止。

 

「面倒だ。纏めて消し去ってくれるわ」

 

サイの魔法によって空中で静止した影の一体は、メギドを放つ構えをした影に向けられる。

 

<<お…おのれぇぇーーッッ!!!傷一つつけられんとは!!>>

 

「分霊などに用はない。用があるのは…本霊の将門のみ」

 

嵐と慈雨の神であるバアルは、ゲヘナの炎だけでなく雷や風も自在に操る事が出来る神。

 

右手から放たれたのは、無数に生み出される真空刃の刃。

 

<<グォォォーーーッッ!!!!>>

 

二体の影はサイコロほどの細切れとなり、無数の真空刃が屋敷を次々と切断して破壊し尽くす。

 

これ程までの魔王を相手にしては、もはや迷宮という地の利は意味を為さない。

 

地球が壊れる程の天変地異を相手にしているようなものだからだ。

 

「まだ出てこんか、将門?いいだろう…全てを焼き尽くして燻り出してくれる」

 

右掌を天に掲げる。

 

武家屋敷を燃やすゲヘナの火力がさらに増大し、超業火地獄と化す。

 

地底湖までには業火は届いていないが、その燃え盛る音は将門の社にまで響いてくる。

 

「…官軍に敗戦した我が軍は自軍領土で待ち構えた。官軍共は…我が領土で焦土作戦を決行した」

 

燃え盛る業火の音が、人間の武将として生きた頃の記憶を呼び覚ましていく。

 

幻聴のようにして聞こえてくるのは、将門を新皇陛下と称えた民達の泣き叫ぶ声。

 

自責の念によって苦悶の表情を生む将門だが、迷いを払うようにして立ち上がる姿。

 

「……来るか」

 

地上を全て破壊し尽くしたバアル神は、見つけ出した階段から地底湖を目指す。

 

浮遊しながら近づき、将門の紋である九曜紋が描かれた両開き扉の前に立つ。

 

右掌を扉の前に向ける。

 

「ふんっ!」

 

ソニックブームが放たれ、扉が破壊される。

 

衝撃波は地底湖にまで広がっていき、幾重にも張った鳥居結界を一撃で破壊し尽くす。

 

岩盤が次々と地底湖に落ちる音が響く中、両腕を組んだまま動じぬ姿勢を保つ将門。

 

「……見つけたぞ、将門よ」

 

浮遊しながら将門の社前まで表れたバアル神は地上に降り立つ。

 

「残すは貴様のみ。我が名はバアル神モロク…カナンの主神であり、天地を支配する神なり」

 

残す神鏡は将門自身が守る一つだけとなっている事は、念話によって伝えられていた。

 

組んでいた腕を下ろし、怨念の如き魔力の波動を周囲に生み出す。

 

バアル神であるモロクも全身から魔力の波動を放つ。

 

互いの波動がぶつかり合い、将門の社だけでなく地底湖そのものが崩壊していく。

 

「…我が影達…そして四天王達。良き武士達であり…我にとって最高の家臣達であった…」

 

「貴様も後に続くがいい。冥府魔道の先で家臣共が待っているぞ」

 

「直ぐには逝かん。我が首級を持ち帰りたければ…貴様の首を差し出してもらおうか」

 

「ぬかせ。刀すら持たん貴様如きが、バアル神である我にどう立ち向かうというのだ?」

 

甲冑姿の将門の腰元には、公の御剣は備わっていない。

 

「我が魂とも言える刀は…次の世代に託すことにした」

 

「ほう?では貴様…我を相手にした上で、徒手空拳で戦うとでも?」

 

神に対する侮辱ととられ、牛兜の中の素顔は不愉快そうに歪む。

 

怒りの波動となり、将門の波動が押されるかの如く強力になっていく。

 

将門でさえ極めて不利な状況ではあるが…彼の口元には笑みが浮かぶ。

 

「フッ…人事を尽くして天命を待つ身だ。出し惜しみはしない…」

 

――我の真の姿……刮目して見るがいい!!!

 

合掌し、全身から禍々しい光を放つ。

 

「むぅ!?」

 

光柱が地底湖の天井を穿つ。

 

引き裂かれていく天上世界。

 

瞬間移動するかのようにして地上に降り立つバアルは…天を見上げていく。

 

「おぉ……これ程までの存在であったか」

 

そこに立っていたのは…あまりにも醜悪な巨神。

 

途方もなく巨大であり、全長は七千mを遥かに超える巨体。

 

かつての神霊クズリュウと同じく、地球の岩盤で出来ているかの如き姿。

 

こことは違う並行世界において、大陸間弾道ミサイルから東京を守ろうとした巨神と同じ存在。

 

全身全霊を用いて具現化した大霊こそ、祟り神すら超えようとしている御法神であり…破壊神。

 

平将門公の御姿であったのだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

将門が生み出す結界世界に聳え立つ巨神。

 

胸元に巻雲を抱きながら、恐ろしい声を放つ。

 

<<木星神マルドゥクに起源を持つカナンの主神よ。貴様ほどの相手だ…我も遠慮はせん>>

 

「ここまでの力を供えているとはな…。魔界においても最上位の魔王として君臨出来るであろう」

 

<<いらぬ世辞なり。我は平将門……関東の守護神であり、人間の守護神だ>>

 

戦いの構えをとるかの如く、巨大なる腕を振りかざしていく。

 

巨大故に動きは緩慢であるが、七千mを超える質量の拳が叩きつけられた威力は計り知れない。

 

その動きが止まる。

 

地上に立つバアル神から放たれる不気味な笑い声に警戒心をもったようだ。

 

「ククク…人間の守護神よ。その巨体で天を掴み取った気分でいるようだが…愚かなり」

 

左手に持つ黄金の杯の中身が一気に弾け、巨大な水柱を放つ。

 

「貴様は真の姿を見せてくれた。ならば、我も見せてやろうではないか…」

 

――真に天を支配する神の姿をな。

 

どす黒い水によって地上が大洪水となり、バアル神の姿も汚水の中に消え去ってしまう。

 

不浄な海と化した地上を見下ろす将門は感じていく。

 

<<この胎動は…不浄の海そのものが…鼓動しているというのか…?>>

 

赤黒く脈打つ不浄の海が膨張していく。

 

<<おぉ………なんという……姿……>>

 

巨神と化した将門の巨体をさらに超える程にまで膨張していく存在。

 

<<刮目して見るのは……貴様の方だ、将門よ>>

 

バアル神モロクの結界が生み出され、将門は取り込まれていく。

 

<<ぬぅッッ!?>>

 

視界がブラックアウトして、周囲の景色は消え去ってしまった。

 

……………。

 

…………………。

 

<<ここ……は……?>>

 

巨神と化した将門が立っていた場所は……月の大地と酷似する。

 

見上げれば、青々とした地球の球体も見えてしまう。

 

<<月…なのか?あの悪魔が生み出した異界世界とは……>>

 

推し測ることしか出来ないが、将門はそれしか考えられない。

 

<<宇宙そのものを……生み出したというのか……?>>

 

大魔王ルシファーに匹敵する程の魔王の実力に恐怖していた時…。

 

<<おぉ……おぉぉぉ……ッッ!!!>>

 

月の大地である地平線そのものがせり上がっていく。

 

月の大地では、バアル神モロクの巨体を収めきれていないからだ。

 

地球を超える程の巨大さをもって、()()()()()()()と説く。

 

現れたのは…極巨大神化したモロク像。

 

4本の腕を持ち、牛の頭と人の上半身、下半身は超巨大な生贄炉の姿だ。

 

<<バアルの称号は、雲の乗り手、強き者を意味する。天を支配する姿こそが…バアルである>>

 

<<これ程までの神であったのか…木星神マルドゥクを起源にもつ…バアル神は!!>>

 

<<天空を支配する神に逆らいし愚者め。汝に……誅伐を下す>>

 

月よりも巨大な腕を振りかぶっていく。

 

これ程までの一撃が決まれば、月どころか地球さえ一撃で破壊されてしまう。

 

<<天罰とは……こうやって下すのだぁーッッ!!!>>

 

ついに星を砕く一撃が放たれ、大きさから見ても小さ過ぎる月に目掛けて落ちてくる。

 

その光景はまるで……()()()()()()()()()()()光景。

 

<<……フッ>>

 

絶望しかない状況ではあるが…将門の心は何処か晴れやか。

 

両腕を持ち上げ、落ちてくる天空そのものに抗う覚悟を見せた。

 

<<ヌォォォォーーーッッ!!!!!>>

 

ついに直撃した一撃により、月そのものが砕けていく光景。

 

両腕で抑えきることも出来ず、将門の巨体は月の中心核にまで打ち込まれようとしている。

 

星を『ぶっ潰し』てしまえる程の一撃こそが、真の天空神が与える天罰なのだ。

 

質量に耐え切れず、巨神の体が砕け散っていく。

 

<<フフッ……いいものだな……>>

 

薄れゆく意識の中で絶命しようとする将門は……最後の言葉を呟いた。

 

――意思を…継いでくれる人が…いるというのは……。

 

……………。

 

…………………。

 

バアルの結界と将門の結界が同時に解ける。

 

将門首塚の前には、一瞬で擬態し直したモロクが立つ。

 

墓石の前に転がっていたのは…全身を破壊されて首だけとなった将門。

 

その頭部も光を放ち、MAGとして弾けようとしている。

 

「…敗北者の表情ではないな」

 

最後を見届けるモロクが感じた将門の死に顔とは…安心したかのような安らかな表情。

 

残っていた頭部が弾け、MAGを放出。

 

東京の夜空に向けて牛兜で覆われた顔を向けていく。

 

夜空で光り輝くのは、宇宙の熱として利用されまいと流れていく複数のMAGの光。

 

光が流れていく先とは…一体…。

 

「天空に抗うその覚悟…見届けた。汝こそが…この国で一番の武士であろう」

 

視線も向けずに右手を墓石に翳していく。

 

首塚の前で浮いていた神鏡は…首塚ごと破壊されてしまった。

 

北斗七星結界を繋ぐ起点の最後が消え、ついに北斗七星結界は崩壊してしまった。

 

……………。

 

イルミナティを象徴するかのような梟の像が立つ経団連会館前では、サマナー達が集う。

 

「……始めなさイ、アリナ」

 

経団連会館ビルの屋上には、右掌を夜空に向けて構えたアリナの姿。

 

「あれが……邪教のアトリエ……」

 

東京の夜空に出現した巨大施設を見て息を飲みこみ、右手に生み出したキューブを展開させる。

 

「アハッ……アハハハハ!!」

 

――さいっこーだヨネーーーッッ!!!

 

夜空に巨大なキューブが生み出され、顕現した邪教の館が封じ込められてしまう。

 

その光景を見届けたバアル神は、作戦に参加した者達全員に念話を送るのだ。

 

<作戦は完了した。皆の者、大儀であった>

 

念話を伝え終えたモロクは踵を返して歩き去っていき、首塚から出る頃には蜃気楼と化した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

胸騒ぎで眠れなかった尚紀はベットから起き上がり、家から出て行く。

 

家着であるカンフーズボンとチャイナジャケット姿のまま夜道を歩いていく姿。

 

気が付けば稽古場の一つである竹林に訪れていたようだ。

 

左手には、将門から譲り受けた将門の刀。

 

正座し、刀を地面に置いてから瞑想を始める。

 

神経を研ぎ澄まし、いつでも戦いに赴ける状態にまで心を落ち着けようとする姿。

 

だが、目を瞑った彼の意識世界に現れた存在達がいた。

 

<<……我の後継者よ>>

 

正座している尚紀の前に立つようにして、暗闇の中から現れたのは将門公。

 

後ろから歩いてきたのは四天王達。

 

<<久しいな、尚紀。生きているうちに汝と出会えなかったのが…残念だ>>

 

<<この世界で汝と相見える事が出来なかったとしても…>>

 

<<我らの魂は…汝のために、残して去ろう>>

 

<<我らは常に、汝の傍にいる。公の御剣と共にな>>

 

四天王達が消えていく。

 

最後まで残っていた将門の口元には…笑みが浮かぶ。

 

<<よそにても 花の匂ひの 散り来れば 我が身わびしと 思ほえぬかな…>>

 

離れていても、花の香りが散ってやってくる。

 

私の身の上が、わびしいものとは思わない。

 

将門が残す短歌の意味だ。

 

<<人間の守護者として…満開にまで咲き誇ってくれたな……尚紀>>

 

――汝と出会えた天命を…心から感謝する。

 

尚紀の両目がカっと開く。

 

一瞬の出来事であったが、確かに彼は感じたのだ。

 

「将門…毘沙門天…?それに、他の鬼神達の声まで聞こえた気がした…」

 

地面に置いた将門の刀を見て、異変に気付く。

 

「これは……感情エネルギー?」

 

空から降り注ぎ、公の御剣に吸われていくのは憂国の烈士達の感情。

 

公の御剣もまた怨霊剣であり、感情エネルギーであるMAGやマガツヒを吸う力を秘めていた。

 

「何だ!?」

 

大切な同志達の魂が…公の御剣に変化をもたらす。

 

刀の鍔が変化していき…666の悪魔を象徴する黄金の鍔となっていく。

 

666を表すのは、三つのマガタマが渦を巻く形となる()()()()

 

三つ巴の間には、()()()()を表す花菱の図を透かして形作られたのだ。

 

MAGの光に包まれた刀を持ち上げ、鞘から刀身を引き出す。

 

剣を通して、熱き漢達の最後の光景が観えてくる。

 

「…何故だ将門?何故俺を遠ざけた……俺も戦いに参加していれば……」

 

――お前達を……死なせずに済んだ筈なのに!!!

 

感情エネルギーが宿った刀身を鞘に戻し、MAGの光が収まっていく。

 

尚紀の瞳からは…雫が零れ落ちていく。

 

「くそぉぉぉーーーーッッ!!!!」

 

将門の刀を抱きしめ、慟哭とも言える叫びを発していく姿。

 

…東国武士の祖、平将門公の魂は受け継がれた。

 

家臣達とも言える四天王の魂をも背負い、人修羅は生まれ変わるだろう。

 

関東の守護神であり、人間の守護神となるのだ。

 

託された意思は、継がれていく。

 

()()()()として。

 

……………。

 

2月も近づいてきた頃。

 

見滝原某所の超高層ビルの貸し会議室からアリナは出てくる。

 

ダークサマナー達との会合を終えた彼女はエレベーターに向かう。

 

屋上のスカイガーデンにまで赴き、高層ビルの景色を静かに見つめる姿。

 

後ろから近づいてくる人物に気が付くが、後ろ髪を風で揺らす彼女は振り向く素振りを見せない。

 

「……ねぇ、邪教のアトリエで行われてる実験について、聞きたいんだケド」

 

サングラスを押し上げ、アリナの質問を聞いていくのはシド・デイビス。

 

「悪魔合体の禁忌…人間と悪魔の融合合体。これを望むこソ、イルミナティは邪教の館を欲しタ」

 

「グノーシス主義連中だカラ、そう望むのは自然なワケ。連中が望むのは…次元シフト」

 

「ミトラス秘儀とメルカバー神秘主義。イルミナティの魔術のルーツとハ、エジプトでス」

 

「政治の中心はローマだった頃、文化の中心はエジプトのアレキサンドリアだっけ?」

 

「その頃に秘教的思想が多く生まレ、ユダヤコミュニティにも影響を与えましたネ」

 

「ユダヤ神秘思想はペルシャ系マギの中心教義を取り入れた。後でメルカバー神秘主義になった」

 

「メルカバー神秘主義の目的とハ、至高神との融合。メルカバーの車輪とも言える天使となル」

 

「ケルビム…たしか、ユダヤのアークを守る天使でもあったっけ?」

 

「グノーシス、そしてカバラは密教と通じまス。目的は至高天に上リ、全知全能神となル」

 

「だからイルミナティの13血統連中や、黒の貴族達はゴッドを自称してたってワケ?」

 

「我らは神の車輪となル。我々を率いる神とハ…サタン様でありルシファー様なのでス」

 

「それは良いケド…実験で成功したヤツいたワケ?」

 

シドは溜息をつき、首を横に振る。

 

「未だに成功者はいませン。人間と悪魔を合体させれバ…どうしても自我を悪魔に喰われル」

 

「ヒューマンだった頃の自分は欠片も残らず、デビルになっちゃうってワケ?」

 

「黒の貴族の方々ヤ、13血統の方々はそれを望まなイ。自らが支配側になりたいのでス」

 

「フン、あのルシフェリアン共だって、元を辿ればデビルの血筋なのに…」

 

「だからこソ、悪魔に吸収される確率も極めて高イ。並の人間でさエ…成功者はいませン」

 

「八方塞がりって感じだヨネ。期待して損したんですケド」

 

「期待…?アリナ、アナタは何を企んでいるのですカ…?」

 

不気味な笑みを浮かべたアリナだが、とぼけるように両手を横に上げる仕草。

 

強いビル風が吹き、アリナの後ろ髪を大きく揺らす。

 

「…そろそろ、ビッグストームが来ると思う」

 

サングラスを指で押し上げるシドの口元にも、不気味な笑みが浮かんでいく。

 

「世界中の生体エナジー協会で育てていたマニトゥハ、膨張率が限界近くになりましタ」

 

「なら、この国に持ってくるんだヨネ?」

 

「えエ、最大級のタンカーの船底に積まれて運ばれまス。大船団となるでしょウ」

 

「なら……いよいよだヨネ」

 

「その通リ。いよいよ始まるのですヨ……」

 

――この世界二、()()()()()()を与える日ガ……来るのでス。

 

風雲急を告げる世界。

 

神浜に根差した人間の守護者は、再び東京を舞台にして死闘を繰り広げる日が来るだろう。

 

見滝原で暮らす悪魔と魔法少女達も、イルミナティと関わっていく。

 

そして、それぞれの思いを秘めたデビルサマナー達も動き始めるのだ。

 

全ての舞台の中心地となるのが…関東の中心街である首都、東京。

 

今再び、東京の守護者の戦いが始まる。

 




アリナ編ラストなので、めちゃんこ盛ったお話でした。
いつかモッさん相手に宇宙規模のバトルを描きたいものです。
これにてアリナ編は終了となりますので、次回からは五章織莉子編がスタートしていきます。
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