人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
夏休みに入り、見滝原で活動する魔法少女達は浮かれモード。
明日は楽しい二泊三日の旅行ともあり、さやかと杏子は美樹家で支度をしていた。
「まさか…キリカと小巻があたし達の代わりに見滝原のパトロールをやってくれるなんてなぁ」
「お陰様で、あたし達は楽しいバカンスが出来る!ちょっと悪い気がするけど…有難いよね~」
「あいつらはグリーフキューブが大量に必要みたいだからなぁ」
「戦えない織莉子さんの魔力回復のためだよね…。心配だけど…あたしは力になれそうにないし」
「織莉子自身が始めた政治活動だろ?あいつが納得するまでやらせるしかないって」
「まぁ…それはそうだよね。無理に止めろって言っても…喧嘩になりそうだし」
「そういうこった。まどかとほむらも誘ったんだろ?あいつらは来るって言ってたのか?」
「勿論!まどかは目を輝かせて喜んでたし~、ほむらも最初は困惑してたけど頷いてくれたよ」
「なんだかんだで、まどかが来るとなるとほむらも一緒になるんだよな~」
「暗い性格だけど、まどかのことを大事にしてくれてるって訳だね~」
「…なぁ、ほむらについて聞きたいんだけどよ」
「何さ、急に改まって?」
「あたしはアイツと仲が良かったわけじゃないのに…あたしの事を凄く詳しい時があるんだよ」
「そういや…あたしもそう感じたことある。怖いぐらいにあたしの事を知ってたり」
「謎が多い奴だよな…。もしかして、あいつも魔法少女だったのか?」
「ないない。ほむらからは魔法少女の魔力を感じないし、左手だってソウルジェム指輪はないよ」
人修羅同様、暁美ほむらも悪魔人間である。
人間の姿に擬態している時は、魔法少女から魔力を感じ取られることはない。
そして、彼女達の記憶は未だに悪魔化した暁美ほむらに奪われた状態。
何も思い出せないまま…ほむらをただのクラスメイトだと思い込んでいるようだった。
<<次のニュースです>>
テレビをつけっぱなしにしていたのか、ニュース番組が映っている。
横目でニュースを見ながら旅行支度をしていた時…杏子が口を開く。
「また有名芸能人の逮捕ニュースを引きずってやがる。いくらなんでも長過ぎだろ?」
「…日本のニュースってさ、一回の放送で終わればいいニュースを、しつこく流すの多いよね」
「…こういうニュースって、胡散臭いよな。内容は変わらないし、他に報道することあるだろ」
「ネタがないのかなぁ…?それとも、こういうので視聴率がとれるとか?」
「ふん、つまらないニュースで視聴率稼ぎか…。これだからテレビニュースはくだらねーんだよ」
彼女達が感じている、くだらないニュース内容。
それは…政治界隈では
政権側に配慮した報道であり、権力者が有利になるよう不都合な報道をせず違う報道を繰り返す。
国民の関心事を逸らせ、売国法案を国会で素通りさせたり国会議員の不祥事揉み消しに使われた。
報道の自由を叫びながらも、報道しない自由を使うばかりの日本メディア。
その偏向ぶりは、資本主義メディアの堕落した惨状と言えるであろう。
「あたしがニュース嫌いなのはな…ニュースは嘘つきでしかないって、分かるからさ」
「どういう意味よ…それ?」
「色々な事件の報道の中で…何度も同じヤツを見かけるんだよ」
「ただの偶然じゃないの…?」
「偶然で片付けられる回数を遥かに超えてやがるんだ。それに…悲惨な事件報道も嘘臭ぇ」
「どういう部分が…嘘臭いわけ?」
「考えてもみろ。新幹線の中で無差別殺傷事件なんて起こすか?逃げられない場所なのに」
「でも、犯人は誰でも良かったとか犯行動機を語ってたし…人が大勢いる場所でしょ?」
「ニュースで現場検証してるシーンがあったけど、血痕なんて何処にもなかったぞ」
「それは…掃除したからとか?」
「魔法少女やってるあたしの目は誤魔化せねぇ。血痕はな、そう簡単に消える筈がないんだよ」
「そういや…魔獣退治で殺人事件の現場に行った時…地面にはまだシミの跡があったよね…」
「水やブラシで洗ったって残るもんさ。なのに…綺麗なままなんだよ」
「たしかに…不自然過ぎるよね…」
「いいか、さやか。テレビのニュースなんか見るんじゃねぇ、こんなの見てるヤツは大馬鹿だよ」
――ニュースを疑わず、鵜呑みにして騙されるだけの…眠れる羊でしかねーんだ。
社会から傷つけられてきた杏子だからこそ、偏向メディアの嘘に気が付くことが出来た。
彼女が気づいた不自然さとは…
本来、クライシスアクターが存在する目的は、防災訓練にリアリティを与えるため。
しかし、メディアがこれを用いれば恣意的な報道ニュースを演出することが可能となるだろう。
国際金融資本家の望む法律を作り上げる為に引き起こされる架空の事件に、リアリティを与える。
ニュースを鵜呑みにするしか出来ない者達は、それに気づく事は一生ない。
「ハァァァ…テレビは売って、テレビ機能のない大型モニターでも部屋に置こうかなぁ」
「それがいいって。あたしはネットに繋いだ大型モニターで、動画サイトを楽しめるし♪」
「テレビ番組も…お年寄りが喜びそうなのばっかだし、ママに相談してみるね」
テレビを消し、2人は早めに就寝。
彼女たちが気が付いたとしても、日本人の9割以上は騙されていくだろう。
この国の大手メディアが日本人の味方をしてくれることは…ない。
――――――――――――――――――――――――――――――――
見滝原郊外の高級住宅街の道を歩くのは、暗い表情を浮かべた織莉子の姿。
今日も政治活動として街頭演説を行ったようだが…結果は変わらなかった。
心無い大人達に傷つけられるばかりの織莉子の精神は…擦り減るばかり。
「今の私では…魔獣退治に向かう余力もない。魔力回復だって…あの2人に頼るしかないわ…」
自分の政治活動のせいで大切な仲間達に迷惑をかけている。
自責の念によって、さらに彼女の精神は荒んでいくだろう。
迷いながらでも進んでいくしかない者の前方には、一台の高級セダンが停まっている。
「……………」
気にせず通り過ぎようとした時、車内から声がした。
「…やぁ、織莉子ちゃん」
身の毛のよだつ声。
彼女はその人物を知っていた。
車から出て来たのは、八重樫内閣の閣僚である美国環境大臣だった。
「見滝原に用事があってね。こんな偶然もあるものだね」
返事は帰ってこない。
沈黙していたが、重い口を開く。
「…公秀(きみひで)おじさま、おひさしぶりです」
「最後に会ったのはいつだったか?見違えたなぁ」
「母の葬儀の時ですから…8年程前でしょうか」
動じないよう平静を務めようとするが…彼女の手は握り締められ震えていく。
(……よく気安く、私に話しかけられるものだ)
彼女の記憶に蘇っていくのは、両親を見捨てた公秀の姿。
美国本家の家長を務める美国公秀衆議院議員。
織莉子の父の事件の際、実弟の愚行を涙ながらに詫び、世間は彼に同情的感情を寄せた。
しかし彼は事件直後、織莉子からの連絡は全てシャットアウト。
身内でひっそり行われた父の葬儀にも顔を出さなかった人物。
(この男は誰よりも…父を切り捨てたのだ)
表情は平静を保っているが、手は震えている。
政界で長く務めるベテラン議員である公秀には、彼女が何を考えているのか察する事が出来る。
「…君が私に対して、どんな感情を抱いているかぐらいは分かる」
「……………」
「私も時間のない身だ。単刀直入に言わせてもらう」
――今直ぐ、くだらない政治活動をやめろ。
その言葉を聞いた織莉子の平静な態度は砕け散る。
眉間にシワが寄り、公秀を睨んでくるのだ。
「…お言葉の意味が分かりません」
「君の街頭演説は秘書の三枝君に監視させていた。隠しても無駄だ」
「私の自由です。公秀おじさまに指図される謂れはありません」
家族を見捨てた美国本家の家長に対し、捨てられた分家の娘が見せる怒り。
怒りの感情を示す者に議論をもちかけても平行線にしかならないぐらい、国会議員なら分かる。
それでも、公秀には言わねばならない理由があった。
「…君は、敵に回しては絶対にならない存在達を…敵に回そうとしている」
「敵に回してはならない存在達……?」
「この国において、不審死が蔓延っていることぐらいは…久臣の娘なら聞いているだろう」
「はい…。永田町や霞が関の議員・官僚だけでなく、ジャーナリストの間でも多いそうです」
「その者達は、この国の暗部に逆らおうとした者達。そして、君も逆らう側になろうとしている」
「公秀おじさま…それを伝えられるということは、貴方は私の敵側なのですか?」
「勘違いするな。私とて、その存在を感じてはいるが…正確な全体像までは掴めていない」
「では、父を見捨てた貴方が…娘の身だけは案じるというのですか?おかしな話ですね?」
公秀の眉間にシワが寄っていく。
何も知らぬ愚か者を見るような眼差しを見て、織莉子の背筋に寒気が走る。
(あの目だ……私の恐れた美国の目)
幼い時に感じた、美国本家の人間達が彼女に向けてきた…蔑みの眼差し。
幼い彼女は美国本家に恐れおののき、両親に泣きついた記憶が蘇っていく。
「正体が掴めない国家内国家。それは日本のみならず、世界中の政府の裏側に潜んでいる」
「ディープステート…信託を受けた政治家でありながら、国を売り尽くす売国奴たち」
「久臣の残した知識を手に入れたか。ならば、連中の恐ろしさを織る知識も残したはず」
「私は引く気はありません。私はこの国を憂う者…命の危険に晒されようとも民の為に戦います」
その言葉を聞いた公秀の目が見開いていく。
彼の脳裏に浮かんだのは、政治倫理綱領。
政治倫理の確立は、議会政治の根幹である。
主権者たる国民から国政に関する権能を信託された代表であることを自覚する。
政治家の良心と責任感をもって政治活動を行う。
いやしくも国民の信頼にもとることがないよう努めなければならない。
国会の権威と名誉を守り、議会制民主主義の健全な発展に資するため、政治倫理綱領を定めた。
「…君の口からそんな言葉を聞けるとはね。やはり君は…政治家一族の血を引く者だ」
視線を逸らしてそう語る公秀の態度を見て、織莉子は気が付く。
「公秀おじさま…?」
公秀の拳も握り込まれ、悔しさで震えていた。
「私のような世襲議員に…何の価値がある?甘やかされて育てられ、国会議員にされた者ばかり」
「国会議員には、それ程までの世襲議員がいるのでしょうか?」
「矢部前総理大臣もそうだ。彼など国会答弁で日本語すらまともに言えないアホだったんだぞ?」
「アホでも務められるというのが…日本の国会の現状だと…仰られるのですか?」
「国会議員など、金融・経済界に媚びを売るしか生きられない人形共だ。国を動かす者ではない」
「今の政権与党の会派出身者は…戦後のCIAから司法取引を受けて米国の犬となった手下共です」
「今の与党政党を立ち上げた者もそうだ。本来ならA級戦犯として極東軍事裁判で裁かれた者だ」
「米国の犬となった今の与党会派と、米国に立てつく会派の二つがありました…」
「田中角栄や竹下登も…米国に立てつく派閥だった。だからこそ…私は君を心配しているのだ」
「どういう…意味でしょうか?」
「竹下総理のように…あまりにも酷過ぎる
竹下総理の葬儀は密葬で行われ、そのまま火葬場送りになった。
本来、密葬は自殺や変死者が弔われる葬儀形態。
一国の総理大臣が密葬である。
「竹下総理は…米軍に拉致された」
「えっ…?」
「身体的な拷問のあと、ヘリで吊るされて、海中に頭を漬けられ、ビデオ撮影された」
「そんな…一国の総理大臣なのですよ!?日米安保条約違反です!!」
「米国植民地には関係ない。米軍の言うことを聞かない官僚や政治家は…ビデオを見せられる」
「だから…霞が関官僚たちは……誰も逆らえなかったのですね…」
「私とて…米国に逆らえばそうなる。もっと正確に言えば…日本と米国の所有者である…」
「イルミナティの13血統の二番手であるユダヤ財閥…ロックフェラー家ですね…」
「そこまで知っているなら、ロックフェラーとネオコン軍産複合体、CIAの関係も分かるだろ?」
「………はい」
「日米安保条約?笑わせるな。進駐軍が在日米軍に名を変えただけだ。目的は日本の武力支配だ」
――21世紀になっても、日米合同委員会という名のGHQは存在していたというわけさ。
顔を青くして震えるばかりの織莉子。
自分が戦っている存在の巨大さを現職大臣から伝えられ、恐れおののくばかり。
「これで分かったろう…戦っている相手の恐ろしさを。君は米国の犬達を怒らせている」
「私…わたし……」
「久臣も逆らって嵌められた。ディープステートでも手に負えないなら…米軍が出てくる」
織莉子の震える肩に優しく手を置く、久臣の兄。
「私は…久臣を守ってやれなかった。美国家家長として…家を守る保身に走ったのだ…」
「公秀…おじさま…そんな理由があったなんて……」
「国会議員の恥晒し…腰抜けの売国者だと…蔑んでくれ……」
織莉子の心の中で燻り続けた公秀への憎しみの炎が消えていく。
(私が彼の立場だったなら…同じ選択をしたかもしれない…。守るべきものを抱えた者として)
8年間も続いた憎しみが解け、ようやく父の兄の気持ちに寄り添えれるようになった。
「公秀おじさまの思いは理解しました。ですが…私は政治活動を止めるつもりはありません」
「気は確かか!?自殺願望でもあるのかね!」
「たとえ相手が強大でも…私は己の道を進みます。貴方に出来なかった道を…進みたいんです」
「私に…出来なかった道…?」
「貴方は美国家の家長。一族を守らねばならない重荷を背負う…だから捨て身で戦えない」
「それは……」
「私は美国家からは見捨てられ、社会からも切り離された者。いなくなっても…誰も気にしない」
公秀は俯いていく。
彼女を孤立させたのは自分の所業なのだ。
「家族を失った私にはもう…失うものはありません。だからこそ、捨て身で戦い続けます」
「織莉子ちゃん……」
「公秀おじさま…私が消えた時は、祖父の遺産は本家のもの。あの屋敷も受け取ってください」
「そこまでの覚悟を…示すと言うのか…。まだ未来溢れる…子供だというのに……」
真っ直ぐ見つめてくる織莉子の表情にはもう、憎しみも迷いもない。
まるでその表情は…世界のための人柱として、自らが生贄となった者のようにも見えた。
「私…伯父様も叔母様も大嫌いでした」
「分かっていた…私達は君にとっては忌むべき敵なのだろうと。私は子供に好かれたことはない」
「ええ!叔父様は目つきが鋭くって怖いです!獲物を狙う狐みたい」
「う、う~ん…そうなのか…?」
「でも、狐って…意外と愛らしい目をしてるんですね♪」
「…そういうのはやめなさい」
「フフッ♪」
今まで触れ合えてこなかった分、織莉子は公秀に向けて胸の内に溜まっていたものを吐き出す。
彼女が客観視してくれた自分の姿に気が付き、自分の人生を振り返っていく公秀。
2人のわだかまりは解け、ようやく本当の親族のようになれようとしている。
だが、ここで別の憎しみの原因を生み出しかねん乱痴気者達が登場してしまうのだ。
<<中学生に何するつもりだぁぁーーエロおやじぃぃーーッッ!!!>>
「えっ…?」
顔を向ければ、キリカキックが飛来。
「がはっ!!?」
飛び蹴りを顔面に浴びた公秀が後ろ向きに倒れようとするが、既に背後はコンビネーション体勢。
<<美国に乱暴する気でしょ!!エロ同人みたいにーッッ!!!>>
腰に両手を回し込み、そのままバックドロップ。
「ゴハッッ!!!?」
弧を描く美しい小巻バックドロップが決まり、公秀の意識は途絶えてしまった。
「ナイス小巻!このエロおやじ…ぐるぐる巻きにして川に流そう」
「同意見ね、呉。女の敵みたいな顔つきしてたし」
「ちょ、ちょっと2人とも!?この人は私の伯父よ!!」
「「えっ?」」
呆気にとられた顔をした2人が倒れた公秀を指さし、織莉子は頷くばかり。
大切な仲間の身を案じた咄嗟の行動であったのだが、報連相の大事さを痛感させられる光景だ。
「お…伯父さん…?」
「コイツ…偉い奴なわけ…?」
「国会議員をしているわ」
阿鼻叫喚の表情を浮かべ、パニックと化すキリカと小巻。
「たたたいほ!?ねぇ逮捕!?うわーどうしようッ!!?」
「冗談じゃないわよーッ!?刑務所で面会人の小糸と会うのは嫌ーっ!!」
「お巡りさん!!犯人は小巻です!!!」
「ちょっと呉ぇ!!?あんたも共犯でしょうがーーっ!!!」
「ギャー!!牢屋には小巻だけで行ってーーっ!!?」
小巻のコブラツイストを受けるキリカの悶絶した表情を見ながら、織莉子は微笑みを浮かべる。
「……ありがとう、2人とも」
「「えっ?」」
恐ろしい敵を前にしても、自分はまだ独りぼっちではない。
そう感じられた織莉子の顔に、笑顔が生まれてくれた。
「取り合えず、公秀おじさまを回復してあげましょう」
「車の中に放り込んでおけば…バレないよね?」
「なんか…死体遺棄する犯罪者の気分になってきたわよ」
「やっぱり小巻は犯罪者!おまわりさーん!!」
「ドツキ倒すわよ!!!」
公秀が車の中で目を覚ます時には、3人の姿は消えている。
「むぅ…?私は車の中で寝ていたのか?織莉子ちゃんと話してた後の記憶がない…」
狐が女狐につままれたような表情を浮かべたまま、車を発進させていく。
美国公秀、国会議員として生きる現職大臣。
彼の頭の中には…織莉子に思い出させられた政治倫理綱領が浮かんでいく。
「子供の頃は…久臣と共に正義を果たす政治家になりたいと思っていた。だが…私は道を違えた」
――いつの時代も、私のような老兵は死なず…ただ去るのみか。
――時代を作るのは…いつだって希望を捨てない若者なのだな。
――――――――――――――――――――――――――――――――
次の日。
エプロン姿の織莉子は、緊張した面持ちでキッチン前に立つ。
手を握り締め、レンジの中からケーキの型を取り出した。
素早く型からスポンジを取り出し、そっと指で押してみる。
彼女の表情が久しぶりの笑顔となってくれた。
<<きゃ~~~~っ!!!!>>
屋敷の中庭テーブル席に座っていたキリカと小巻がすっ転ぶ程の大声。
「やったわー!初めてスポンジが上手く出来た!ふっかふかよ~!ケーキの神様ありがとう!」
スポンジケーキを皿に乗せたまま舞い上がる織莉子だが、気配を感じる。
「あっ……」
視線が合ったのは、ニヤニヤした表情を浮かべたキリカと小巻。
「織莉子もはしゃいだりするんだねー」
「あんな美国の表情、白女で見た事なかったわよ」
中庭まで移動した3人であるが…恥ずかしくて机の下に隠れたままの織莉子である。
「忘れて……」
「困るよ、勿体ない」
「美国に恥ずかしい秘密を握られた事あるし…おあいこよ」
「えっ?小巻の恥ずかしい秘密を織莉子に握られた事件!?小巻…もしかして君は……」
キリカの脳内に浮かんだ光景とは…どこかのキャバクラ店内。
<<ふふふ…浅古小巻。貴方の秘密は知っているわよ。これが広まったら大変な事になるわね>>
<<お許し下さい!何でもしますからそれだけは!>>
<<夜の女王になって!私に貢ぐのよ小巻さん!>>
<<はいっ!私、ナンバー1になります!>>
悪女化した織莉子に働かされるキャバクラホステス浅古小巻。
「…という事態になったわけだね?」
寺の鐘の音ほど響くゲンコツ。
「バッカじゃないの!!魔法少女だってバレただけよ!!!」
「妄想が爆発した……」
煙を出す頭を手で押さえて悶絶中のキリカを見ながら、織莉子も微笑んでくれる。
「2人には本当に迷惑をかけてるわ。だからね、今日はお詫びとしてケーキを作ったの」
「最高のケーキだね!織莉子食べようよ!小巻は食べると太るけど大丈夫?」
「私のケーキまで食べようって言うの呉ぇぇ……?」
「まぁまぁ♪ホールで作ったから沢山あるから大丈夫。ナイフを持ってくるわね」
「いやいや!世界一のケーキだよ!一番美味しい食べ方をしなきゃ!」
「あー、呉の言ってる食べかた想像出来るわ、私」
「もしかして…小巻もナイフ使わない派?」
「だって…切るの面倒じゃん」
「やれやれ、ガサツな女にはなりたくないね~」
「さっきの一番美味しい食べ方はどうしたーっ!!?」
喧嘩騒ぎばかりであるが、2人がいてくれるお陰で織莉子の荒んだ心も安らいでいく。
(この子達を巻き込みたくない…。だけど、この子達の力がなければ…生きる事も出来ない)
自分の無力さを感じてしまうが、上手に出来たケーキを一口食べると顔も微笑む。
「こんな食べ方したことないわ…でも、美味しい♪」
ナイフだけでホールケーキを切っていき、食べていく3人の姿。
久しぶりのお茶会ともあってか、皆の表情も明るくなっていった。
ケーキを食べ終えた織莉子が紅茶を持ってきて器に淹れていく。
お茶を静かに飲んでいたキリカと小巻だが、視線を合わせて頷いた。
「ねぇ…織莉子」
「何かしら?」
「久しぶりの楽しいお茶会の席で…こんな話をしていいか分からない…けど…」
何かを言いたげなキリカの表情だが、その視線は泳いでしまう。
「コミュ障な呉だと言い辛いわね。…私から言ってあげる」
2人が何を言いたいのか察することが出来た織莉子の顔が俯いていく。
「…言わなくても大丈夫よ、小巻さん。この前…巴さんから聞かされた内容と…同じだと思うわ」
「巴から話があったの?」
キリカに視線を向ければ、念話で自分が頼んだという答えが返ってくる。
「私の政治活動のせいで…仲間達に心配をかけていると…叱られたわ」
「そ、その…織莉子。私は織莉子のことが心配で心配で……」
「美国、そろそろ何があったのかぐらい…話してくれても良いでしょ?何が美国を変えたの?」
真剣に見つめてくる仲間の表情を見て、彼女たちがどれだけ自分の事を心配してくれたか伝わる。
「ごめんなさい…。私は自分の責務の重圧ばかりに苦しめられて…貴女達の心が見えなかった」
重い口を開いていく。
何があったのかを語る織莉子を見つめる2人。
聞かされたのは、政治活動に至るまでの原因だ。
父の書斎から見つけた品のこと。
父の絶望が記されていたこと。
器量が良すぎた織莉子自身が父の重荷になっていたこと。
不出来な父であっても、本物の政治家であろうとしたこと。
「私はお父様を苦しめた罪人だった…。それを私に織らせた存在とは…八重樫総理大臣よ」
「織莉子が…総理大臣の暗殺をしようとしただなんて……」
「あんた…バカじゃないの!?そんなことしたって…罪が清算出来るはずがないわよ!!」
「小巻さんの言う通り…。あの時の私は…怒りと絶望をぶつけられる存在を求めてしまった…」
「その…八重樫ってヤツから何かされたの!?織莉子を傷つける奴なら…私は許さないよ!」
「何もされていないわ。それどころか…私の愚かさを突き付けられて…泣き崩れたわ」
「美国…あんたがとんでもないテロリストにならずに済んで…安心したわよ」
「日記の一部分だけで…物事を判断してしまったわ。最後に書かれていた内容こそが大切だった」
織莉子の父、美国久臣。
彼は本物の愛国者だった。
民を愛し、民の未来が奪われている仕組みに気が付き、憂い、抗おうとした。
美国に相応しくない、娘よりも劣る者という劣等感以上に、彼が求めたもの。
「それこそが…国政への出馬だった。自尊心を満たすためではない…国を立て直したかった」
彼女がなぜ政治活動を始めたのか、その原因を知る仲間達。
2人は顔を俯け、一言も喋る事が出来ない。
…かけてやれる言葉がなかったからだ。
「本当にごめんなさい…もっと早くに伝えるべきだった。貴女達を苦しめてしまったわ…」
「…いいのよ、美国。それだけの思いがあったなら…突っ走るしかないわよね」
「私は…政治なんて分からないから、織莉子にかけてあげれる言葉が見つからない。それでも…」
――私は絶対に、織莉子を裏切ったりはしないからね。
その言葉を聞けた織莉子の表情にも明るさが戻っていく。
「久しぶりのお茶会なのに、しんみりさせてしまったわね…。何か他の話題をしましょうか」
楽しいお茶会を続けようとするが、2人はかけてやれる言葉も見つからず俯いたまま。
気まずくさせてしまった責任を感じた織莉子の口が開く。
「なら…私の話題に付き合ってくれるかしら?」
「政治の話は…付き合えそうにないかな……」
「大丈夫よ、キリカ。これは政治の話題…というよりは、私達の身近にあるものの話題よ」
「身近にあるものの話題って…何よ?」
織莉子が手を伸ばし、掴んで2人に見せたのはフォーク。
「これも、ケーキや紅茶の材料も…全て買わなければ手に入らない。分かるかしら?」
「当たり前でしょ?それがどうしたのよ」
「キリカ、これはどうやったら買えるのかしら?」
「そんなの私でも分かるよ。お金を出して買うんだよ」
答えを聞いた織莉子は頷き、真剣な表情を浮かべる。
「そう…お金を出さなければ、私達は何も手に入らない。私が話したい話題とは…」
――
――――――――――――――――――――――――――――――――
かつて襲ってきた織莉子に対し、八重樫総理は言葉を残す。
――君は銀行と呼ばれる組織について、考えた事はあるかい?
――銀行が融資で経済を動かし、経済組織が組織票と政治献金で国政政党を支える。
――言わば銀行とは、国家の心臓。
「紙幣が生まれる前の経済取引は、物々交換だったわ。でも…それだと不便よね?」
「それはまぁ…そうだよね。欲しいもの買う時に交換する品を持ち運ぶだなんて…」
「時間の経過で腐ったり、壊れやすいもので物々交換とか非効率だっての」
「物品貨幣・自然貨幣・商品貨幣・そして金属貨幣が生まれたわ。江戸時代の小判を思い出して」
「ああ、あれってそういう仕組みだったのね」
「RPGゲームでもゴールドは通貨として利用されるもんね~」
「軽くて取り扱い安い貨幣として生まれたのが…紙幣よ。日本は明治時代から紙幣になったの」
「RPGゲームやってても、それは感じたことあるよ。これだけゴールド持ってたら重たいって」
「ゲームの例えはどうかと思うけど、装備品の経済取引も通貨制度みたいなものよね」
「考えてみて。今までは価値のあるものと交換してたのに、突然紙切れを渡された時の気分を」
「それは…困るよ。子供の玩具紙幣を渡されたって、私は自分の持ち物を売る気にはなれないね」
「その通り。紙切れに価値を付加する貨幣制度こそが…
【金本位制】
金本位制とは、金を本位貨幣(通貨価値の基準)とする制度。
中央銀行の発行紙幣と同額の金を常時保管して、金と紙幣とを引き換えることを保証する制度だ。
「でもね、金本位制だと金の総量分しか紙幣が作れない。…だからこそ、生まれてしまったわ」
――
【不換紙幣】
不換紙幣とは、管理通貨制度(国が通貨の流通量を管理調節する制度)の下で発行される紙幣。
金貨との交換を保証しない紙幣であり、国の信用で流通することから、信用貨幣とも呼ばれる。
経済が発展すると、金の生産量が追いつかなくなり、金本位制を保持することが難しくなる。
管理通貨制度への移行は、時代の趨勢(すうせい)と言えるであろう。
「信用貨幣を支えるものは、国の信用。信用を高めるためにも、政府は情報開示義務が生まれる」
「国の信用だけで…私達が利用してきた諭吉さんが…使われてきたっていうの…?」
「怖いわね…。国の経済がダメになったら日本円なんて…一気に値崩れしちゃうじゃない…」
「…管理通貨制度では、中央銀行が自由な裁量によって通貨の発行量を管理・調整出来るわ」
「景気の変動に対応して、国内経済の安定化を図るってわけ?」
「中央銀行が諭吉さんを大量に作れるなら、いっぱい作って国民にばら撒いたらいいじゃん」
「ダメよ。通貨を発行しすぎると通貨の価値が下がり、それと連動して物価が上昇するの」
「インフレーションっていうのよ、呉。それぐらいは知ってたら大人になった時に役立つわ」
「景気が悪いから紙幣を作る。それは国の信用がなくなり…紙幣価値がなくなる証なのよ」
「物価高って…昔はお菓子を安く買えてたのに…今は高い金額になってたのは…そういうこと?」
「それは貿易も同じよ。円安で貿易を繰り返しても…支払う額が増す。紙幣の価値が低いから」
「紙幣の価値が下がるって…怖いわね。物を買う行為の負担が増すばかりになるわよ…」
「私たち…そんな不安定過ぎるお金を使ってきたんだね…」
「不換紙幣は流通量が増える程に円安を導く。税金は…インフレ防止のために使われるべきよ」
「紙幣を作るんじゃなく…今流通している紙幣枚数だけで経済を立て直すってわけね」
「難しい世界だね…。RPGゲームのゴールドの方が、ずっと信用出来る通貨に思えてきたよ」
暗い表情になってしまった2人を見て、続きを話すか迷う織莉子。
だが、それでも知ってもらいたかったようだ。
「…
【国債】
国債とは、国が発行する債券のこと。
債券とは、資金を借り入れする際に発行される有価証券で、借用証書である。
国家として、社会保障の整備や各種インフラ整備などには税金を充てるのが一般的だ。
しかし、財政支出が税収入で賄えなくなると、国は国債を発行して投資家からお金を募る。
国の借金の申し出に賛同した投資家が国債を購入することで、国にお金が入る仕組みだ。
投資家が債権者であり金を出す側、国家が債務者であり借金を払う側といえよう。
満期まで国債を保有しておくことで、最初期に投資した元本と利子を債務者から受け取れるのだ。
「あらゆる国債は…国が無力だと示す証。約束手形として、債権者達にお金を支払う義務を生む」
「それは…まぁそうだよね。私だって、お金を貸したら返してもらえないと怒るだろうし」
「友達とのお金の貸し借り次元じゃないわ。銀行からお金を借りるなら…利息が追加されるのよ」
「まぁ…儲けにならないのに、誰が国債を買うお金を出してくれるんだって話だしね…」
「利息を甘くみないで。五分利息なら…20年後には借りた金額と同額になるのよ」
「…40年後には利子だけで元金の2倍、60年後には…その3倍の返済になる…?」
「さ…最初に借りた元金を残してだよね…?そんなの…払いきれるわけないじゃん!!」
「ええ…払いきれるはずがない。国債と借入金、政府短期証券の残高を合計した借金額はね…」
――1200兆円にも上り…これからも際限なく…借金額は増え続けるのよ。
…絶句した2人。
声を出すことも出来ず、体も震えていく。
「国の使うお金は…投資家への借金。私達は死ぬまで税金を搾り上げられ…投資家に支払われる」
――それでも毎年の税金額では利息を支払いきれず、利息の額は増え続けていくしかない。
――これが…世界中の国家の悲惨な現実だったのよ。
国債の中には、内債(内国公債)だけでなく
外国債券とは、外国の通貨である債券のことだ。
「利息が払えず国債をまた作り、また支払えず国債を作る…終わりのない搾取構造…」
――それこそが、イルミナティの司令塔一族が…世界を支配する証。
――13血統の一番手…ロスチャイルドが生み出した…世界金融支配システムだったのよ。
中央銀行、不換紙幣、国債、外債。
全て金融の世界である。
中央銀行が生み出す紙幣によって、経済は回り、国家は税収以外の収入源とする。
国民からの税収とて、借金の利息の支払いだけで殆どを食い尽くされ、さらに国債頼りになる。
焼け石に水とばかりに、国は新しい税を生み出し続け、それでもなお利息額は増え続けるだろう。
国債の元金が支払える日など…永遠にこない。
日本で暮らす人間も、魔法少女も、
初代ロスチャイルドであるマイヤー・アムシェル・ロートシルトは言った。
――私に一国の通貨の発行権と管理権を与えよ。
――そうすれば、誰が法律を作ろうと、そんなことはどうでも良い。
第三代アメリカ大統領トーマス・ジェファーソンは言った。
――銀行は、軍隊よりも危険である。
――通貨発行権を奪われたら、我々の子孫はホームレスになるまで…。
――銀行家に利益を吸い上げられてしまうだろう。
「国債を書換えてでも…利率の引下げをやることは出来ないわけ…美国!?」
「国債所有者の同意を得たときのみ実施出来る。でも…所有権の額面価格を払うことになる」
「そんな…ことって…」
「債券所有者の全部が不同意を申出て、払戻しを要求したら、政府は自身の釣針に懸ってしまう」
「要求額の全部を払い戻すことは…不可能なのね…」
「ねぇ…織莉子…。私たち…これから先も…死ぬまで投資家から搾取され続けるしかないの…?」
「それを変えたいからこそ…私は政治活動を始めたのよ、キリカ」
「私…謝るよ。織莉子のことを…頭のおかしい陰謀論者になったって…思い込んでた…」
「その言葉を聞けただけで…私は報われたわ。ありがとう…そう言ってくれて」
「イルミナティ…前に言ってたわね。世界を支配する金融マフィアであり…悪魔崇拝者だと」
「そうよ…。私達の人生は、これからも悪魔共が握る。彼らの銀行が生みだす世界の紙幣とは…」
――悪魔共を際限なく儲けさせ、国を亡ぼすまで搾取し続けるために生み出し続ける代物。
――まさに悪魔の貨幣……
旧約聖書の箴言には…こんな言葉がある。
富める者は貧しき者を治め、借りる者は貸す人の奴隷となる。
この一節こそが…21世紀まで続く世界の在り様を表していた。
ここまで読んで頂けた方なら、まどマギとマギレコでキャラ飽和なのに、おりこマギカとたるとマギカを必要とした理由も見えてくるかと思われます(汗)