人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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156話 破滅の始まり

政権与党憲法改正推進本部の会議を終えた議員達が会議室から出てくる。

 

八重樫総理も参加しており、この憲法改正に並々ならぬ思いを巡らせていた。

 

「この日本を地下に移す際、膨大な混乱が起きてしまう。それを抑え込むためにも必要なのだ」

 

総理執務室で口を開く総理は、秘書官のマヨーネに語り掛けている。

 

()()()()()()ですわね。内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することが出来ますわ」

 

「何人も公の機関の指示に従わなければならない。効力を有する間、衆議院は解散されない」

 

「戦争・内乱・大災害などの場合、国会の関与なしに内閣が法律と同じ効力を持つ政令を出す」

 

「内閣の独裁権。これこそが憲法改正の本当の狙い。2012年から続く憲法改正草案なのだ」

 

「愚民共はスピン報道のお陰で気づきませんわ。緊急事態条項の恐ろしさをね」

 

「発動要件が曖昧な上に、政府の権限を不用意に拡大していると知られるわけにもいかん」

 

「フフッ♪大丈夫ですわ。愚民共は何も気が付かないままバラエティ番組でも見てるでしょう」

 

「2020年から…世界の黙示録が始まる。神浜の地下へと下ろす民衆選別も済んだ」

 

「…ヤタガラスの意向を汲み取った形となりましたわね」

 

「秦氏(はたうじ)の血縁者を優先してザイオンに定住させるが…中流階級の一部も移住する」

 

「その者達が秦氏と我々の奴隷となる者達ですわね。連中を拘束し、支配するためにも…」

 

「憲法改正は滞りなく終わらせる。来年は各地の街で国民投票が始まるだろう」

 

「それはいいのですが…私が心配していた小娘の件について、手筈が整ったという知らせが」

 

「フッ…そうか。では、始めてくれたまえ」

 

「仰せの通りに。フフッ…あの小娘の地獄が始まりますわ」

 

「私もそれが楽しみだったのだよ、マヨーネ君」

 

……………。

 

夏休みも終わり、新学期が始まった頃。

 

「政権与党の改憲で一番恐ろしいのは緊急事態条項です!ヒトラーの独裁にも使われたのです!」

 

新学期が始まってからも、織莉子の政治活動は続く。

 

「緊急事態宣言と緊急事態条項は違います!憲法と法律のコントロールが効かなくなります!!」

 

街行く人達に向けて改憲の目玉とも言える緊急事態条項の恐ろしさを語っていく。

 

何が出来るかは内閣が独断で決めて、内閣が独断で法律的政令を作れる。

 

国会の事前同意は不要、民意(選挙)を問う事も出来ない。

 

国民は内閣が独断で決めた事に従わなければならない。

 

従わない者は投獄することも可能。

 

集会・結社・言論・報道の自由がなくなる。

 

上記のことを無限ループさせることだって可能だ。

 

「目的は97条98条の削除!国民の基本的人権の削除!そして11条と13条の人権は残す!」

 

11条と13条を残すのは、移民にまで日本国憲法を適用させるのが目的。

 

日本国民の侵してはならない最高権利を移民にまで適用させるのだ。

 

「99条緊急事態の宣言とは!総理大臣による独裁!ヒトラーが手に入れた()()()()()です!!」

 

米国大統領でさえ立法権はないのに、日本の総理大臣は法律を超えた巨大な権限が与えられる。

 

総理大臣が何を緊急事態と判断し、何の政令を作るのか、フリーハンドで手に入れられるのだ。

 

他の条項は何条だろうが関係なくなる。

 

ドイツが戦争の悲劇を繰り返さないよう作った憲法裁判所さえ、日本にはない。

 

暴走する国の権力を抑えることなど出来ない。

 

改憲議論である9条、97条、98条、10条、11条などは、スピンに過ぎなかった。

 

「戦争の悲劇を繰り返さないための憲法前文の削除!自衛隊の国防軍化!戦争が出来るのです!」

 

過激な改憲により、日本は大日本帝国時代に逆戻りするだろう。

 

天皇は国家元首に返り咲き、国旗国歌が重視され、軍国主義時代に返り咲く。

 

「日本はナチズム時代となります!日本人が手に入れるものではない!()()()()()()()()です!」

 

織莉子が必死になって続けてきた政治活動の効果はない。

 

「見て、あの子。まだ懲りずにやってるわよ」

 

「相手すんな。陰謀論にハマる中二病お年頃なんだろ?馬鹿は死ななきゃ治らないってね」

 

道行く人々でさえ、もはや彼女を相手すらしなくなってしまったようだ。

 

「どうして…?こんなにも危険が迫っているのに…なんで私の話すら聞いてもらえないの…?」

 

日本は巨大な愚者の船。

 

日本がとてつもない危険に晒されていると叫ぶ人々が異常者扱いされる不条理。

 

大手メディア報道やSNSトピックス記事以外のことが起きている筈がないと()()()()()()()

 

バラエティ的なソフト報道ばかりが貴ばれ、中身を考えない、議論さえ行わない。

 

改憲をテレビショッピング感覚でお試し改憲と報道し、国民は周りの空気に流されるばかり。

 

インフォティメント報道によって育てられた日本人は…疑わない、考えない人にまで堕落した。

 

「負けられない…お父様のためにも…私は……うぐっ!!?」

 

突然頭を抑え込み、蹲る織莉子の姿。

 

「な…何なの…?今の酷い頭痛は……?」

 

周囲を見回すが、魔法か何かの攻撃を受けたような気配はない。

 

だが、彼女が立っている場所の背後、屋内空間には怪しい人物の影。

 

男が手に持っていたのは、銃の形をしているが銃ではない武器。

 

非致死兵器の一種である電磁波兵器。

 

マイクロ波などの電磁波(電波)は目に見えない上に壁を貫通する。

 

技術は早い段階から確立しており、家庭の電子レンジでさえ改造すれば電磁波兵器に出来る。

 

2006年にはイラクにおいて米軍が用いたと認められ、機密情報が開示されていた。

 

無人兵器であるドローンミサイルに対する有効な攻撃手段として期待されているようだが…。

 

「皆さん…聞いて下さ……ぐぅ!!!」

 

突然の吐き気や動悸に襲われ、地面に蹲ってしまう。

 

街頭演説を続けることが出来ず、今日の彼女は帰ってしまった。

 

「へへへ!公安調査庁のバイト代金で、またパチンコ生活が出来そうだな!」

 

懐に電磁波兵器を仕舞い、男は逃げるように去っていった。

 

法務省の公安調査庁とは、テロ等の暴力で自分達の主張を押し通そうとする団体を監視する組織。

 

それはある意味、政府にとって都合の悪い存在を監視する組織でもある。

 

国と国民の安全を守ると言いながらも、独裁的な政府とその政府に従順な国民しか守らない。

 

国を売る売国政権にとっては、邪魔な反体制分子を取り締まる秘密警察と言ったところだろう。

 

「ハァ…ハァ…おかしいわ…。帰ってくるだけで…こんなに疲れたことはないのに」

 

どうにか家にまで帰ってきた織莉子は、背中に熱さを感じたのか衣服を脱ぐ。

 

大きな鏡の前に立ち、手鏡で下着姿の背中を確認。

 

「なに…?背中が赤くなってる……?」

 

彼女の美しい背中は発赤しており、チクチク感と灼熱感をもたらす。

 

これは電磁過敏症(EHS)と呼ばれる非得意的症状。

 

皮膚症状だけでなく、神経衰弱性および自律神経性の症状などをもたらす。

 

「めまいが酷い…頭痛もする…風邪を引いたのかしら?でも、風邪で背中が腫れるの…?」

 

目に見えない攻撃と風邪に似た症状から、彼女は攻撃されていることに気が付かない。

 

彼女は予知魔法が使える魔法少女だが、行使を望まない時にまで予知が発動するわけではない。

 

普段の生活で常時の予知魔法行使は、いたずらに魔力を消耗し戦う余力がなくなってしまう。

 

この弊害によって、かつては魔力消耗が激し過ぎて戦う余力がない時期があった。

 

「キリカと小巻さんには…足を向けて眠れない。あの子達のグリーフキューブが私の命を繋ぐ…」

 

寝巻に着替えた織莉子は棚からグリーフキューブを取り出し、心の消耗で削られた魔力を回復。

 

使ったグリーフキューブは窓辺の外に置いておく。

 

後でキュウベぇが回収に来るというわけだ。

 

「今日は早く寝て、体調を回復させないと。お父様のためにも…私は負けたくないから」

 

布団に入り込み、今日のところは休むことにする織莉子の姿。

 

…この日より始まっていくのだ。

 

迫害の日々をも超えた…地獄の日々が。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

9月も終わりが近づいた頃。

 

見滝原市の商業区で魔法少女活動を終えた3人が集まり、今日の反省会。

 

「2人とも、魔獣は数で攻めてくるのよ。突出したら包囲されるのだから気を付けて」

 

「わ、分かってますよ~それぐらい!」

 

「あたしはイノシシ娘なさやかの背中を守りに行っただけだよ」

 

「あたしのせい!?あんただって前線で大暴れして背中がガラ空きになったじゃん!」

 

「うるせー!さやかがフォローしてくれるんだから、前だけ見てりゃ良いんだよ!」

 

「あんたもイノシシ娘じゃん!自分の事を棚上げしてる奴はこうだー!」

 

「ぐえぇぇーーっ!やめろってさやかーっ!!」

 

背後からチョークスリーパーを仕掛けるさやかとギブを示す杏子の姿を見て、溜息をつくマミ。

 

「ふぅ…この2人と連携するのは骨が折れるわね」

 

前線で戦う2人とそれを中距離から援護するマミ。

 

魔法少女時代のほむらを失いはしたが、今は円環から帰ってきてくれたさやかがいる。

 

見滝原の魔法少女達は魔獣を相手に連戦連勝を重ねていくのだが…。

 

<<恩人ーーーッッ!!!>>

 

悲鳴にも似た叫びを上げて走ってくる人物に目を向ける。

 

「呉さん…?」

 

走ってきたのは魔法少女姿の呉キリカだ。

 

走ってきた彼女はマミの両肩を掴み、哀願するかのように辛そうな声を上げる。

 

「助けて欲しい…!!このままじゃ織莉子が…織莉子が壊れる!!!」

 

「美国さんに…何があったの?」

 

「私は…私は悔しい!!人間共に襲われてるはずなのに…尻尾を掴ませないんだ!!」

 

「落ち着けってキリカ!」

 

「そうだよ!落ち着かないと話の中身が見えてこないよ」

 

「う…うん…ごめん…」

 

どうにか落ち着かせ、彼女から話を聞かされていく。

 

話を聞いた3人の表情は…恐怖で引きつった。

 

「美国さんが…酷い嫌がらせ被害を受けている?」

 

「汚職事件の時から近所住民の嫌がらせを受けてきた…。でも、今回の騒ぎは次元が違うんだ…」

 

「どういう風に…次元が違うのさ?」

 

「織莉子の体に…異常がどんどん増えていく。魔法じゃない…何かのテクノロジーだと思う…」

 

「テクノロジー被害を受けてるだと!?あたしの家族でさえ…そんな責め苦は経験ないぞ!」

 

「熱、頭痛、吐き気、めまい、耳鳴り、体の痺れ、心臓の痛み…幻聴さえ聞こえてくるみたい」

 

「何なのそれ…本当に相手は人間なの!?魔法とかじゃないの!」

 

「犯人が魔法少女なら魔力で分かるさ!織莉子の家の周りを探ってるけど…魔力は感じない…」

 

「だとしたら…人間から攻撃を受けていると判断するしかないわ。警察に相談はした?」

 

「それが…織莉子も警察には何度も相談してるけど…取り合ってくれない…探偵さえもだ…」

 

「ヤクザか何かが絡んでるってのか…?」

 

「私だって…四六時中織莉子の家の周りで見張りは出来ない。私のいない時に現れるのかも…」

 

「あたし達は魔法少女だよ!回復魔法があるじゃん!」

 

「私と小巻が織莉子の体を癒す回復はしている。だけど…症状がまた悪化していくんだ…」

 

「攻撃を受け続けている証拠よ。警察も探偵も動かない相手…余程の存在よね…」

 

「織莉子はもう…食事さえまともに喉を通らない。織莉子の心と体は…どんどんやつれていく…」

 

苦しそうに語るキリカの姿を見て、杏子は歯を食いしばっていく。

 

社会から虐待される苦しみは、虐待された者にしか分からないからだ。

 

「キリカ…あたしも見張りを手伝ってやる。社会から虐待される苦しさは…あたしも経験済みだ」

 

「ありがとう…杏子。家の周りだけじゃないんだ、外出していても織莉子は被害を受けている…」

 

「外出時にもですって!?」

 

「監視、尾行、待ち伏せを織莉子は感じてる。苦しいのに予知魔法を使って避けてるけど…」

 

「精神的な怖さだけは…避けられないよね。魔力を消耗する上に…心の穢れまで生んじゃう」

 

「もっと怖いのは…織莉子の個人情報が出回ってるんだ。それのせいで…トラブルが絶えない…」

 

「トラブルって…この上まだ苦しめられてるの!?」

 

「何処で盗聴されたのか分からないけど…音声が合成されて身に覚えのないトラブル続きさ…」

 

「酷過ぎるわ…まるで()()()()()()()()よ!!」

 

【集団ストーキング】

 

海外ではギャングストーキングとも呼ばれる被害であり、組織犯罪である。

 

ギャングストーキングの手法は歴史が古い。

 

ヒトラーが行った実験や、CIAのMKウルトラ計画など、戦争を前提とした研究から始まった。

 

冷戦下では、政府の思想統制や治安維持目的に変わっていく。

 

FBIのコインテルプロもそうだ。

 

FBI等によって行われた非合法工作活動(国家犯罪)のプロジェクトとして知られる。

 

共産主義者等、当時のアメリカ政府にとって都合の悪い人物や団体に対する工作活動。

 

人間関係の破壊工作、風評工作、生活妨害工作、失業させる工作などを仕掛けて自殺に追い込む。

 

元々各国の諜報機関で行われていた謀略活動の一種。

 

別名はスローキルと呼ばれ、時間をかけた殺人であった。

 

「織莉子はもう…学校に行くのも怖がってる!不自然な付きまといやカメラ撮影ばかりされる!」

 

「分かった!あたしも杏子と一緒に手伝う!そんな苦しみを中学生に与えるなんて…許せない!」

 

「私もよ!美国さん…これは間違いなく貴女の政治活動と関係している。あの子を止めないと!」

 

「マミ…私と小巻もそれを悩んでた。織莉子にも譲れない理想がある…だけど、今が大事だ!!」

 

4人は頷き合い、小巻も含めて対策を考えていく。

 

だが、その間にも織莉子の周囲では苦しみの光景が続いていってしまう。

 

「うぅ…熱い…苦しい…息が出来ない…助けて…たすけ…て……」

 

汗塗れで苦しみのたまうのは…痩せ細り、顔の脂肪も落ちて頬がこけた姿に成り果てた織莉子。

 

「いや…眠るのは嫌…電話が鳴り響く…誰かが家に無理やり入り込もうとする…怖い…こわい…」

 

布団を頭からかぶり、三角座りで震えあがる織莉子の脳裏に浮かんでいくのは、社会リンチ光景。

 

学校に届けられたのは、織莉子の合成写真。

 

彼女が魔法少女活動をするために夜な夜な出かけるのは、不純異性交遊が目的だとする偽証拠。

 

校長に呼び出され、彼女は厳しく非難される。

 

「美国!!白羽女学院は異性交遊を学則で禁止している!これはどういうことなんだ!?」

 

「し、知りません!!こんな男の人…見たことありません!!」

 

「嘘をつくな!!ラブホに入っていくこの人物は、間違いなく君自身だぞ!!」

 

「本当に知らないんです!!お願いです…信じて下さい!!」

 

「黙れ!今度こんな事を引き起こしたなら…君の政治活動許可を取り下げる用意があるからな!」

 

「そんな…私は無実です!!無実なのに……どうして……」

 

身に覚えがないと彼女が言えば、周りから嘘つきだと罵られる。

 

携帯電話が鳴り響く。

 

通話に出れば、変質者のような男の声。

 

「へへへ…お嬢ちゃん中学生なのに、大人な下着を履いてるんだね?俺には分かるよ」

 

「だ…誰なの!?なんで私の下着の話なんて持ち出してくるのよ!!」

 

「俺は君の私生活なら何でも知ってるよ?大人な下着を履いてるのは、俺を誘ってるんだろ?」

 

「いやぁ!!この変態!!!」

 

「そう言うな。中学生のくせに溜まってるなら、夜な夜な家に上がらせてもらうから楽しもうぜ」

 

「二度と電話をかけてこないでぇ!!!」

 

織莉子が出す家のゴミからプライバシーを漁り、少女の恥ずかしい私生活を意気揚々と語る者。

 

彼女は携帯電話を後見人の親族に頼んで解約してもらい、家の電話まで線を切ってしまった。

 

「私は襲われてる…間違いないのに…それをみんなに叫んでも…キチガイ扱いされる!!」

 

自分は襲われていると周りの人々に叫んできた。

 

「はぁ?あんた被害妄想が酷過ぎるんじゃないの?」

 

「違うわ!!私は貶められてるの!!誰がやってるかは分からない…けれど!!」

 

「汚職議員の娘は嘘つきの常習犯。おまけに、最近は陰謀論者だって白女でも有名人じゃん」

 

「あんた、話しかけないでくれる?陰謀論者はキチガイだから相手したくないし」

 

そう言い残し、白羽女学院の女子生徒たちは去っていく。

 

「私の勘違い…?そんな訳ないわ!!だけど…周りに証明出来ない…」

 

この手口はガスライディングと呼ばれている。

 

コインテルプロの手法の一つで、相手の現実感覚を狂わせようとする事。

 

この言葉は舞台劇のガス燈からきている。

 

妻が正気を失ったと当人および知人らに信じ込ませようと、夫が周囲の品々に小細工を施す。

 

妻がそれらの変化を指摘すると、夫は彼女の勘違いか記憶違いだと主張してみせる。

 

心理的虐待の一種であり、被害者が自身の記憶、知覚、正気を疑うように仕向けるのだ。

 

「もう嫌…こんな生活…いやぁぁぁ……」

 

涙は枯れ果てた筈なのに、悔しい感情がさらに彼女の心を雑巾絞りして…涙を流させる。

 

「うっ…!!ゴハァ!!!」

 

嘔吐感に堪え切れず、布団の横に常備してある袋の中にゲロを吐き出す哀れな姿。

 

吐瀉物の中身も殆ど水分であり、ろくに食事をしていない証だ。

 

深夜になろうと恐ろしくて電気が点けられている織莉子の屋敷。

 

だからこそ狙いやすい。

 

屋敷から離れた遠隔地のビルの上では、複数人の男達の姿。

 

手には米軍が用いる暴動鎮圧型マイクロ兵器。

 

電磁波が屋敷の明かりに向けて照射され、織莉子は毎日電磁波被害を受けているのだ。

 

世界中の学者や研究者が、電磁波やスマホが人体に及ぼす影響の研究をしている。

 

機密情報でもある国もある為、メデイアとして公表するかどうかは、国によって判断がわかれた。

 

中国軍と印度軍の間でマイクロ兵器が使用されたニュースが2020年11月には流れるだろう。

 

ニュースの見出しはこうだ…()()()()()()()()

 

織莉子の地獄は続き、精神を蝕んでいく。

 

「みんなが…みんなが私を虐める…バカにする…!!みんな嫌いよ……大嫌いっ!!!」

 

彼女の疑心暗鬼は後に、大切な人達にまで向けられることになるだろう。

 

時女一族の青葉ちかや嘉嶋尚紀が繰り返した悲劇は、誰でも起こす現象。

 

人を疑うことも大事だが、疑い過ぎると加害者にしかなり得ない。

 

その言葉が実現する時は、時期に訪れるだろう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「出て行って!!!」

 

屋敷の玄関先で大声を上げたのは織莉子。

 

「私は政治活動を止めるつもりはない!!貴女達まで…私を疑うというのね!!」

 

彼女が拒絶を示す存在とは、彼女の身を案じてくれる魔法少女達だ。

 

「そんな事は言ってないわ美国さん!」

 

「そうだよ!あたし達は、織莉子さんのことが心配で…」

 

「私は大丈夫よ!こんな嫌がらせなんかに屈しはしない…私には使命があるの!!」

 

「落ち着けって!そんなフラフラの体で…使命を続けられるわけねーだろ!?」

 

「キリカ!小巻さん!!この子達を連れてきた目的は何!?」

 

「そ…それは…織莉子が壊れていくのに、私達じゃ何もしてあげられないから…」

 

「貴女達は十分私を助けてくれている…。だから…信じて欲しかった…」

 

「疑ってるわけじゃない!立ち止まって欲しいだけよ美国!!このままじゃあんた…」

 

「言わないで!!私は立ち止まらない…立ち止まったところで…社会は変わらない!!」

 

政治活動に向かおうとするが足がもつれて倒れ込む。

 

キリカと小巻が慌てて助けおこそうとするが、その手は払い除けられた。

 

「いい加減にしろよ!周りの言葉に耳を貸さない自分の姿が…見えないのかよ!!」

 

「聞きたくない!!みんな…私のことを頭のおかしい嘘つきだっていう!それを覆したい!」

 

「お前の無念の気持ちは…あたしの父さんが経験した苦しみなんだよ!!」

 

「えっ…?どういうことなの…佐倉さん…?」

 

辛い表情を浮かべながらも、佐倉牧師がどんな人生を生きてきたのかを語る杏子の姿。

 

人々の心を救いたい、古い価値観に縛られるべきではないと叫んだ者に待っていた社会リンチ。

 

家族も巻き添えになり、身も心も飢えに苦しみ痩せ細る日々。

 

そして、信じていた理想に裏切られ、自分自身すら信じられなくなって酒浸りとなった者。

 

今の織莉子の姿と重なってくる。

 

「意固地になるんじゃねーよ!みんながアンタを傷つけようとも…魔法少女は裏切らない!」

 

「杏子の言う通り!あたし達は魔法少女だよ!!人々を救いたいと願った者なの!」

 

「私達は誰かのために願い、戦い、命を使い果たす者達。そんな子達が…貴女に嘘をつくの?」

 

「佐倉さん…美樹さん…巴さん……」

 

自分達が言いたかったことを全部言ってくれた者達を見て、キリカと小巻も安心した表情。

 

「織莉子…あの時、私は言ったよね?どんなことがあっても、私は織莉子を裏切らないって」

 

「裏切るつもりなら、グリーフキューブ集めなんてしてあげてない。信じてるから助けるのよ」

 

「キリカ…小巻さん……私…わたし……」

 

信じてくれるからこそ助けに来てくれた者に対して、被害妄想を爆発させてしまった己を恥じる。

 

嬉し過ぎて泣きじゃくってしまう。

 

無理をし過ぎていると悟らされた織莉子は、キリカと小巻に連れられて家の中に戻っていく。

 

「今は治療に専念してもらうしかないわ。その間に、私達が彼女の周囲を警戒してあげましょう」

 

「あたしの家族以上の苦しみを…あいつに味合わせたんだ。代償は高くつくぞ」

 

「絶対に許してやらない…警察が動かないなら!あたし達で叩き潰してやる!!」

 

決意を示す者達なのだが…その会話のやり取りは庭に仕掛けられた盗聴器で筒抜けだ。

 

ぞろ目ナンバーをしたバンの中では、通信機材を用いて会話内容を傍受する者達。

 

「魔法少女が動くか…。作戦を第二段階に進ませよう」

 

「魔法少女との武力衝突は避けたい。いたずらに犠牲者を生むだけだからな」

 

「集団ストーキングはコストを抑えた戦いだ。無駄な戦力消耗など上は望まない」

 

バンは発進していく。

 

次の日、織莉子に会いに来た人物達とは…後見人となってくれた母の親族達。

 

「織莉子、いい加減にしなさい。今直ぐ政治活動を止めるのよ」

 

屋敷の応接室に座る親族達の表情はとても厳しい顔つき。

 

「伯父様…伯母様…隠していたことは謝ります。何処でその話をお聞きされたんですか?」

 

「学校の校長先生から連絡が来たの…。貴女は政治活動のせいで精神的に追い詰められていると」

 

「織莉子の今の姿が…その言葉を証明している。どうして…そんなになるまで苦しんだ!」

 

自分のことを本気で心配してくれていると彼女は感じてしまう。

 

美国家に捨てられた分家の子供でも、支え続けてくれた優しき母の親族達なのだ。

 

「ごめんなさい…どうしても譲れなかったんです。私の親友達からも…それを責められました」

 

「お前は独りじゃないんだ。私達は何処までも…由良子が残した可愛い孫を愛している」

 

「貴女に譲れない気持ちがあっても、体だけは大事にして。病院に行くのよ」

 

「本当に…すいませんでした。自分を見失わないためにも…病院で診察を受けてみます」

 

親族に説得された織莉子は、親族達と一緒に見滝原市内に向かう。

 

向かった場所とは…あろうことか見滝原総合病院。

 

診察を担当した人物とは院長であり、イルミナティに所属する者…アレイスター・クロウリーだ。

 

診察室で向かい合い、自分の症状をアレイスターに話していく姿が続いてしまう。

 

「…重度の()()()調()()を患っているようだ」

 

「な…何を言い出すんです!?私が…キチガイの統合失調症ですって!!」

 

「陽性症状と陰性症状を同時に併発し、認知や行動にも障害が出ている。直ちに入院するんだ」

 

「私は統合失調症なんかじゃありません!何かの間違いです!!」

 

「統合失調症は脳の病気だ。薬物療法が主な治療となるだろう。入院して安静にしたまえ」

 

「お断りします!病院の先生まで…私のことを頭のおかしいキチガイレッテルを貼り付ける!!」

 

「お、落ち着きたまえ!!医学に基づいての判断だ!!」

 

「どうして他人はこんなにも残酷なの!?私のことを知りもしないで…偉そうに言わないで!!」

 

立ち上がって喚き散らす織莉子の姿を見て、看護師たちが慌てて駆けつける。

 

「落ち着きなさい!私達は君を傷つけたいわけじゃないんだ!」

 

「放しなさい!!私は統合失調症なんかじゃない…悪のレッテルを張らないで!!」

 

「患者が頭をぶつけないよう頭部を抑え込みなさい!鎮静剤を投与する!」

 

5人がかりで診察台に無理やり寝かせつけられ、腕をまくられる。

 

「放して!!いや!!いやぁぁぁーーーッッ!!!」

 

本気で錯乱しているなら、魔法少女の魔力で人を殴り殺すことも出来る…だが彼女は行わない。

 

織莉子は統合失調症などではないのだが、暴れる患者として対応されてしまったようだ。

 

「あっ……」

 

鎮静剤を腕に打ち込まれた織莉子の力が抜けていく。

 

診察台に力なく寝かせつけられてしまったようだ。

 

「…家族には私から説明する。()()()()が必要だ」

 

精神保健福祉法という法律が存在する。

 

精神障害者の医療及び保護を目的とし、指定医の診察の結果次第では強制的な入院を可能とする。

 

本人の同意がなくても、保護者の同意があれば精神科病院へ移送・入院させる措置が出来る。

 

病院は10日以内に保健所長を経由して知事に届け出るというのが医療保護入院の内容であった。

 

「粗相を起こし…申し訳ありませんでした。織莉子のことを…よろしくお願いします」

 

「ご安心ください。万全を尽くしますので」

 

診察室での騒動を説明された後見人親族は平謝りして、緊急入院を承諾。

 

入院書類を書きに受付の方に向かう親族の後ろ姿を見つめた後、院長は邪悪な笑みを浮かべた。

 

(我々の代理人であるディープステートは上手くやってくれた。後は我々に任せてもらおう)

 

鎮静剤の効果で眠ってしまった織莉子が運び出されていく。

 

救急車で運ばれた先とは…魔法少女にとってはこの世の地獄とも言える場所。

 

佐藤精神科病院だった。

 

…精神保健福祉法は、人権侵害に利用される。

 

措置入院の場合と違って、医療保護入院は単独の指定医が判定する。

 

その指定医が経営に関与する精神科病院へ入院させることになるのだ。

 

保護者の関係者や指定医の関係者で違法な馴れ合いを生じさせる。

 

精神保健福祉法の仮面の下で、人権侵害の犯罪が敢行される恐れが大きかったのだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「美国さんが…行方不明ですって!!?」

 

集まったマミ達に対して、涙ながらに語るのはキリカ。

 

横にいる小巻は俯き、前髪で表情を隠すが…両手の拳は震えていた。

 

「私のせいだ…私が織莉子の傍についてあげなかったから…織莉子がいなくなったんだぁ!!」

 

「お前のせいじゃねーよキリカ!」

 

「そうだよ!あんたにだって家族がいるでしょ!家に帰るしかないって…」

 

「家族なんかよりも織莉子が大事だ!織莉子は私の全てなんだよ!!」

 

「美国を支えるって決めたのに…このザマよ。最低よね…自分への怒りでどうにかなりそうよ!」

 

「浅古さんも落ち着いて!貴女達に責任なんてないわ!!」

 

「何か聞いてないか?昨日は解散したけど…アンタらは織莉子の傍についてたんだろ?」

 

「…最後に美国から聞いたのは…親族が来るってことだけよ」

 

「グスッ…邪魔しちゃ悪いと思って…泊まり込むのを遠慮したんだ。…大間違いだったよ」

 

「その親族が鍵だと思う。その人達と連絡をとることは出来ないの?」

 

「無茶言わないでよ…いくら友達だからって、親族の連絡先まで聞けるわけないでしょ?」

 

「織莉子の母親の親族は…他県の人だって聞いてる。かなり遠い県の人だって…」

 

「連絡をとる手段がないってわけか…。小巻は織莉子と同じ白女だろ?学校の方はどうだ?」

 

「美国は…障害者として病気療養児にされたわ。当分の間…学校には顔を出さないと言われたわ」

 

「病気療養児ですって!?どんな病気扱いなの…?」

 

「クラスの先生に聞いても…答えてくれない。詳しく聞かされていないそうよ…」

 

「だけど、これは手掛かりになるよ。織莉子さんは病人として…何処かの病院に囚われてる」

 

「でも…どこの病院だよ?それも聞き出せなかったのか?」

 

「私も怒って問い詰めたけど…本当に何も知らないようだったのよ…」

 

「不味いわね…見滝原にある病院だとは…限らないのよね……」

 

重い沈黙が場を支配していく。

 

集まった魔法少女達を遠目で見つめるのは、まどかと一緒に帰宅していた暁美ほむら。

 

「……………」

 

「どうしたの?ほむらちゃん?」

 

「…いいえ、何でもないわ。立ち止まったりしてごめんなさい」

 

「あれ?ほむらちゃんが見ていた先にいるのは…さやかちゃんや杏子ちゃん、マミさんもいる?」

 

「そうね…何か深刻な話し合いをしてるように見えたから…気になっただけよ」

 

「そうだね…。さやかちゃん達は…夜な夜な何かの活動をしてるって友達から聞いたけど…」

 

「貴女が気にする必要はないわ。私達はただのクラスメイト…それ以上でも以下でもないわ」

 

「そう…だね。でも、さやかちゃんが言ってくれたら…私も力になりたいなぁ」

 

「その必要はないわ。これは…貴女が手を出せる案件ではないと思うから」

 

「で、でも!」

 

「もし助けを必要とするなら…私が彼女達の手伝いをする。こう見えて、色々頼れるのよ?」

 

「ほむらちゃんが頼れる人だっていうのは知ってるよ…。でも、何の役にも立たない私は…」

 

かつての世界でも、鹿目まどかは同じ言葉をほむらに伝えている。

 

だからこそ、同じ言葉をこの世界でも返すしかない。

 

「…貴女は、何で貴女は、いつだってそうやって自分を犠牲にして…」

 

「ほむらちゃん…?」

 

「役に立たないとか、意味が無いとか、勝手に自分を粗末にしないで!」

 

――あなたを大切に思う人の事も考えて!!

 

困惑した表情を浮かべてしまうまどかを見て、ほむらも顔を俯けていく。

 

「…ごめんなさい、怒ったりして。私は…貴女を大切に思ってる。だから…その…」

 

「ほむらちゃん…ううん、私は怒ってなんていないからね」

 

「ありがとう…そう言ってくれて。美樹さんには佐倉さんや巴さんもいる…それに他の子達も」

 

「あの人は…不登校が多い呉先輩だよね?それにあの制服は…白女の人?」

 

「あれだけの仲間がいるのなら、安心しなさい。あの子達は強い…恐れるものなんてないわ」

 

その場から去っていく2人だが、ほむらの鞄を持つ反対側の手が握り込まれていく。

 

(美国さんが行方不明…。あの子と話をしていた時…聞かされたわ)

 

ほむらの事を伝え終えた後、織莉子から聞かされたのは…日本を裏から操る者達。

 

(イルミナティ…クロノスから聞かされたわ。私を育てる資金を用意したのも連中だと…)

 

彼女の脳裏に浮かんでいくのは、ホワイトライダーから聞かされた言葉。

 

(ネフィリム…悪魔の子孫。後のカナン人となり…欧州に流れてヴェニスの商人となった者達…)

 

美国織莉子はイルミナティの存在を語ろうとした人物。

 

ならば、彼女に危害をもたらしたのもまた、同じ存在だとほむらには分かっている。

 

(悪魔の子孫が相手なら…悪魔が出てくる。私に記憶と力を封印された美樹さやか達だけでは…)

 

せっかく分かり合えた織莉子の身を心配する気持ちは強い。

 

しかし、それでもほむらは動くことが許されない。

 

(感じる…この宇宙を覆う私の結界に…ヒビが入っていく。破られるのも…時間の問題よ)

 

この宇宙に現れようとしている円環のコトワリ神。

 

一度でもこの世界に侵入することを許せば、瞬く間に鹿目まどかを奪い取られるだろう。

 

だからこそ、まどかの傍を離れることが許されない。

 

(まだダメよ…。せめて、まどかが人間としての寿命を全うするまでは…守り抜いてみせる)

 

打つ手が見つからず、織莉子を見捨てようとしている自分に苦しんでいく。

 

そんな時、脳裏に浮かんだのは…人修羅の姿。

 

(こんな時…私と同じ程の存在とも言える…あの男がいてくれたら…)

 

今まで戦ってきた存在の中で、最強と呼べるほどの悪魔人間。

 

その人物ならば、織莉子を救ってくれるかもしれない。

 

(嘉嶋尚紀…だったかしら?たしか、東京で探偵をしていると…去り際で言ってたわね)

 

か細い希望を託すかのようにして、家に帰ったほむらは嘉嶋尚紀という探偵を探してみた。

 

……………。

 

打つ手が見つからないまま、月日が過ぎていく。

 

神浜左翼テロの事件がテレビで報道された日も過ぎ去ってしまう。

 

11月も最後の週が近づいた頃。

 

織莉子の捜索も進まず、打ちひしがれていくばかりのキリカと小巻の姿があった。

 

「織莉子はもう…帰ってこないのかな…?」

 

公園のベンチに座り込んだまま俯いているが、その表情は絶望を感じるほどに暗い。

 

そんなキリカに向けて、隣で座る小巻が口を開いてくれる。

 

「美国は魔法少女よ。戦う力はあるけれど…今の美国の精神状態だと…いつ死ぬか分からない」

 

「もう…円環のコトワリに…導かれたのかな…?」

 

「……考えたくもないわ」

 

「もし、そうなってたら……私はもう、生きている意味がなくなるよ」

 

「バカ!あんたには…えりかって友達がいるでしょ!?あの子を悲しませたいの!」

 

「そ、それは……」

 

「自分だけの命だとは思わないことね。私だって…妹の小糸がいる。命の安売りはしない」

 

「うん…ごめんね、小巻」

 

「私は親のツテを頼りにして探偵を探してもらってる。けど…この依頼を受ける探偵は現れない」

 

「警察も当てにならないよね…本当に刻みたいぐらいの税金泥棒共だよ…」

 

魔法少女だけでは解決案が見つからず、大人の社会に頼ろうとしても当てに出来ない。

 

八方塞がりになっていた2人の元に歩いて来た人物とは…。

 

「……ちょっと良いかしら?」

 

俯いた顔を上げる2人。

 

現れたのは暁美ほむらだ。

 

「貴女たちは…美国さんを探してるんでしょ?」

 

「あんた…美国のことを知ってるの?」

 

「ええ。政治活動をしているあの子の話を聞いている時に…知り合えたのよ」

 

「君はもしかして…織莉子の居場所を知ってたりするとかは!?」

 

「ごめんなさい…居場所は分からないわ。私だって、突き止めたいの」

 

「そっか…。何処の誰かも分からない子供に期待をするわけにもいかないよね…」

 

「だけど、探してくれそうな人物なら心当たりがあるの」

 

スマホを取り出して操作し、聖探偵事務所のホームページを2人に見せる。

 

「聖探偵事務所…?私立探偵みたいね?」

 

「個人でやっているところだから、大手のように邪見にされることもないかもしれないわ」

 

「東京から神浜市に事務所を引っ越したって載ってるね。事務所の場所は…神浜の南凪区かぁ」

 

「そこにはね、頼りになる探偵がいるの。その男なら…この問題を解決してくれるかもしれない」

 

2人は顔を見合わせて頷く。

 

「もう見滝原の警察も探偵も当てにならないわよ…。こうなったら、一か八かね」

 

「探偵に依頼するにしても…私はお小遣い少ないよ?豚の貯金箱を割っても…小銭ばかりだし」

 

「その点は私が受け持つわよ。呉の小遣いには期待しないから、豚の貯金箱は生かしときなさい」

 

「さっすが白女のブルジョアだ!!持つべき者は魔法少女の友だよ!!」

 

立ち上がった2人はほむらに礼を言って去っていく。

 

後ろ姿を見送ったほむらが後ろ髪を掻き上げる仕草を見せた。

 

冬が近づく冷たい風に後ろ髪を揺らせながら、空を見上げる。

 

「この問題が解決出来たとしても…問題は山積みよ。特に…私の問題はね」

 

踵を返し、ほむらは去っていく。

 

彼女が見上げた空の彼方には、最悪の脅威が近づく気配。

 

この世界は、神と悪魔が跋扈する世界。

 

ならばコトワリの神もまた、この世界に現れるのは必然だ。

 

世界は黙示録へと確実に近づいてきている。

 

この世の地獄が近づいてきている。

 

人修羅として生きる嘉嶋尚紀、もう一人の人修羅とも言える悪魔ほむら。

 

2人が再び交わる日も、目前であろう。

 




ここまで読んで頂けた方なら、なぜ人修羅君と時女一族を組ませたのか、理由も見えてくるかと思われます(汗)
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