人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

164 / 398
163話 地獄の釜

日付が変わる午前0時頃、離れた場所で待機しているナオミを残して魔法少女達が動き出す。

 

病院の景色を魔法で生み出した双眼鏡で見つめる杏子は偵察した内容を仲間達に伝えてくる。

 

「山から攻めれば手薄だと思ったが…監視してる飛行船の影が見えるな」

 

杏子と同じく木の枝に立っているさやかは侵入ルートを模索する杏子に振り向く。

 

「病院裏側の森の中に警備員は見える?」

 

「何人かいるようだ。手には物騒な銃を持ってやがる…日本じゃ手に入らないようなのだ」

 

「あの病院がただの精神病院じゃないという証拠よ。明らかに何かの秘密を守ってる…」

 

警備を務める存在に気づかれず中に入り込むのが望ましいとマミは考える。

 

だからこそ隣の木の枝に立つキリカと小巻が頼りになると判断したようだ。

 

「呉さん、たしか貴女の固有魔法は速度低下だったわね?」

 

「その通り。私の固有魔法の結界を張り巡らせれば飛行船はおろか、警備員の速度も低下する」

 

「侵入にはうってつけの魔法ってわけね。上手く病院内に入り込めた後は…」

 

さやかは木の横で浮遊している悪魔に顔を向けてくる。

 

「え~と…あんたが道を見つけてくれるのよね?」

 

宙に浮いている存在とは胴が細長い犬のように見える悪魔である。

 

「オウ!オレノ主人カラ手助ケシロト言ワレタカラナ。任セテオケ」

 

真神(マカミ)

 

大口のマカミとも呼ばれる聖なる山神であり、絶滅したニホンオオカミが神格化された存在。

 

狼は古くは田畑を荒らすニホンジカやイノシシを退治する農耕の守護神として崇められている。

 

時代が下り山野が開拓され、山と里が接するようになると狼は忌み嫌われるようになっていく。

 

人間や家畜を襲う事も起こり、西洋と同じく悪い象徴として認識され、狩り立てられる。

 

マカミの神聖は地に堕ちたが本来は人語を解し、人の性質を見分ける善なる存在であった。

 

「この悪魔がナオミの使役する犬悪魔の一体なんだろ?何が出来るんだよ?」

 

「オレハ性質ヲ見分ケタリ、構造ヲ把握出来ル。アノ病院ノ内部構造ガ知リタインダロ?」

 

「ナオミさんは私達が迷わないよう、この子を託してくれたというわけね」

 

「シカシマァ、魔法少女ト悪魔ガ共二戦エルナンテ…何百年ブリダ?昔ヲ思イ出スゼ~」

 

「え?大昔の魔法少女達ももしかして、デビルサマナーをやってたりしたの?」

 

「アア、オマエラカラモMAGヲモラエルカラナ。共生関係ヲ築ケテキタンダヨ」

 

「なら、何でその関係が廃れて語られなくなったんだ?そんな話は聞いた事もないよ」

 

「そうねぇ…私も長いこと魔法少女をやってるけど…初耳よ?」

 

悪魔と魔法少女の関係性に興味を持たれたようだがマカミは項垂れてしまう。

 

「…オレタチ悪魔ハ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ソノ理由モ時期ニ分カル」

 

「どういう意味なのよ…それ?」

 

「…アノ施設ノ底カラ魔法少女達ノ絶望ヲ感ジル。アレコソガ…関係性ガ壊レタ証ナンダヨ」

 

「魔法少女達の絶望ですって…?」

 

「チンタラシテナイデ行クゾ。手遅レニナル前ニナ」

 

皆が頷いた後、全員がキリカに顔を向けてくる。

 

「期待に応えてみせるよ!全ては織莉子のために!」

 

飛び降りて両手を地につけながら着地すると魔法陣が生み出されて固有魔法が解放される。

 

「これでヨシ。行こうじゃないか!織莉子救出部隊の出撃だ!」

 

「みんな、静かに侵入するわよ。警備員を無力化させても定時連絡がなくなれば気づかれるわ」

 

魔法少女達は行動を開始していく。

 

速度低下魔法の影響を受けた飛行船や警備員達は移動速度が低下してるのに気づかない。

 

彼女の魔法は悪魔の魔法でいえばスクンダに該当するもの。

 

敵の命中率や回避率を落とし込むバッドステータス魔法の一種なのだろう。

 

息を殺しながら山に沿う森の中を進み、病院の敷地内に飛び込んでいく。

 

マカミが用いる構造把握能力である現場検証によって防犯カメラの位置も把握済み。

 

彼の念話に従いながら無事に病院倉庫前まで到着出来たようだ。

 

「なんだこれ…?扉が真っ二つになってるじゃねーか?」

 

「誰かがここに侵入した痕跡かしら…?」

 

「ついてるじゃん。あたしの斧で叩き壊す手間が省けるってものよ」

 

中に侵入すれば、そこにあったのは奈落まで沈んでいける程の深き穴である。

 

「これ…資材搬入用エレベーターよね?」

 

「なんてデカさだよ…これならトラックが何台も停車出来るじゃねーか」

 

「地上の病院は偽装…ここの本体は地下にあったというわけね…」

 

「早く飛び降りよう!こうしてる間にも織莉子の身に危険が迫るんだ!」

 

「待って!何処まで深いのか分からない…いくら私達でも数千メートル下までの着地は無理よ」

 

「なら、マミの出番ってわけだな。よろしく頼むぜ」

 

マミは天井の骨組みに手を向けた後、複数のリボンを生み出して放出する。

 

屋根の骨組みに巻き付いたリボンを使って皆が懸垂下降していく。

 

魔力で生み出され続けるリボンによって降下していき、下の景色が見えてくる。

 

「へっ!そこまで深くなかったようだな。これならリボンもいらなかったぐらいだよ」

 

杏子が先にリボンを放して飛び降りて着地した後、周囲を警戒する。

 

続けて他の魔法少女達も飛び降りてきて周囲を伺うのだが彼女達は驚愕した顔つきになる。

 

「何よ…これ?物凄い爆発でも起きたわけ…?」

 

明かりに照らされた広大な空間はまるで爆心地。

 

キョウジが残した爪痕は大きく、復旧作業もはかどっていないようだ。

 

「あたし達の他にもここに侵入した奴がいる。そいつが残した傷跡ってところだろうな…」

 

「杏子の言う通りだと思う。あっちに見える扉も破壊されてるしね」

 

「そいつに感謝しておこう。織莉子救出の役に立ってくれたんだからねぇ」

 

「感謝するのは早いわよ。そいつの侵入が失敗したせいで、警備を固められたりもするわ」

 

「あ…そうか。感謝して損したよ…」

 

「ブツクサ言ッテナイデ行クゾ。ツイテ来イ」

 

魔法少女達はキョウジが破壊した隔壁扉を超えて研究所内部に入っていくのであった。

 

 

所長の私室では今日の仕事を終えた所長が眠りについている。

 

壁にはモニターが設置されており自動で光が点く。

 

「ヤブンオソクニシツレイシマス、ショチョウ」

 

機械音声が響いた後、モニターに映し出される存在がいる。

 

地下研究所の管理を任されているAIによって形作られたのは人の頭部を模した3D立体映像だ。

 

「…何用だ?」

 

ベットから上半身を起こす所長はモニターに向き直る。

 

「ケンチサレナイマリョクパターンヲカクニン、ガイテキガシンニュウシタモヨウデス」

 

目つきが変わった所長は布団を跳ね除けてベットから起き上がる。

 

着替え終えた所長は女秘書のサキュバスを所長室に呼び出す。

 

「侵入者ですか!?」

 

「そのようだ。上の警備は何の役にも立たなかったようだな」

 

「恐らくは魔法の力を使われたのでしょうね。相手はまたデビルサマナーですか?」

 

「魔法少女共だ。悪魔を一体連れているようだがな」

 

「魔法少女…?飛んで火にいる夏の虫とはこの事ですわね」

 

「クルースニクを向かわせろ。犬と猿には期待するな」

 

「分かりました、そのように手配いたします」

 

サキュバスが所長室から出て行こうとするが、扉を開けて入ってくる人物と出くわす。

 

「ヒィーヒッヒッヒ!侵入者ですと?所長、私の研究成果を使ってください!」

 

頭が白髪の中年研究者のようだが、ここで務められる研究員なら異常者なのは間違いない。

 

「上を警備させていた監視装置は役に立たなかった。相手は魔法が使える…機械では分が悪い」

 

「監視しか出来ん無能な機械の時代は終わる!これからは戦闘ロボット兵器の時代です!!」

 

マッドサイエンティスト研究者は手に持っていたタブレット端末を見せようとしてくる。

 

しかし所長は手を向けて制止させながら断る態度を示す。

 

「ロボット兵器のプレゼンテーションは聞きたくない。論より証拠だ」

 

「勿論ですとも!出撃許可を頂けましたら、その性能が遺憾なく発揮されるでしょうな!」

 

「どうします…所長?」

 

腕を組んで考え込むが決断したのか頷いてくれる。

 

「研究所に甚大な被害をもたらす爆発物を装備させなければ…構わん」

 

「ヒィーヒッヒッヒ!!そのお言葉が聞きたかったのです!!」

 

喜び勇んで所長室から出て行くマッドサイエンティストを見送った後、サキュバスは振り返る。

 

「機械の力については半信半疑ですが、精神攻撃や毒等の状態異常は効かないのは利点ですね」

 

「電撃や素材に応じた属性攻撃に弱いだろうな。我々悪魔と同じく一長一短なのだろう」

 

「人間は科学によって魔法の領域へと進む。ロボットもある意味、ヘブライのゴーレムですわ」

 

「物は試しだ。良好な戦闘結果が得られたのならば…軍産複合体連中に伝えておこう」

 

地の底で君臨する者達は外敵を迎え撃つ布陣を敷いてくる。

 

一方、搬入した資材を纏めた倉庫の中には研究所の構造を把握しようと潜伏する者達がいる。

 

「どう…?そろそろこの研究所の全体像を把握出来そう?」

 

さやかの質問に対して雷魔法の応用によって霊波を放出するマカミが答える。

 

「アア、大マカニハナ。オマエラノ探シ人ガ囚ワレテイルノハ独房区画ダ」

 

「そこに美国さんが囚われているのね…恐らくは他の魔法少女達も…」

 

「なら、ちんたらしてないで独房区画とやらに突入しようぜ」

 

「マテマテ、独房区画ハ強靭ナ外壁デ覆ワレテルシ、独房ノ扉ハ魔法少女デモ壊セナイゾ」

 

「ならどうすればいいのさ!?こんな事をしてる時でも織莉子は苦しんでるというのに…」

 

「独房ハ全テ電子ロックサレ、セキュリティAIデ管理サレテイル。ココヲ統括スルAIヲ狙エ」

 

「要はそれを派手にぶっ壊せばいいんでしょ?私の斧に任せなさいよ」

 

「この研究所を管理するセキュリティ区画は分かる?」

 

「把握済ミダ。行クゾ、ツイテコイ」

 

コンテナの影から魔法少女達が出てきて薄暗い倉庫の影を走り抜ける。

 

巨大な資材倉庫を走っていた時、案内役のマカミは空中停止したようだ。

 

「ど、どうしたのさ…?」

 

「…ドウヤラ、オレ達ガ入リ込ンデイタノニ気ヅカレタヨウダナ」

 

「なんですって!?」

 

倉庫と倉庫を繋ぐ隔壁扉が開き、奥から現れてきたのは人ならざる存在達である。

 

「う…嘘でしょ?こんな連中…ゲームや漫画でしか見た事ない…」

 

「21世紀って…こんなにも文明が進んでたってわけね…」

 

その者達とは機械人形ともいえるマシンであり、信じられない表情を魔法少女達は浮かべる。

 

【T93G】

 

93式機動歩兵Gタイプと呼ばれる対悪魔用兵器として開発されたマシンである。

 

逆関節の二足歩行を採用したため安定性が低く、量産には至っていない。

 

白いボディの両椀にはマニピュレーターと機関銃を供える武装ロボットであった。

 

【T95D】

 

95式機動歩兵Dタイプと呼ばれる対悪魔用兵器として開発されたマシンである。

 

四足歩行するロボットであり、重武装・多層構造装甲を併せ持つ巨体をしている。

 

このタイプはボディの上に機関銃を二丁装備しているタイプのようだ。

 

【ビットボール 】

 

監視偵察用マシンであり、戦闘能力も備わっている浮遊する球体型兵器である。

 

エコモーターで浮遊し、重要施設の警備を行う存在だった。

 

<<ヒィーヒッヒッヒ!!>>

 

館内放送のように資材倉庫内に聞こえてきたのは狂気の音声である。

 

<<動いたぞ!動いたぞ!21世紀を形作る新たなる労働力達が!!>>

 

「誰だよテメェ!?正体を現しやがれ!!」

 

<<出て来いと言われて出て行く馬鹿はおらん!私は研究者なのだ!>>

 

「ビビりの研究者如きが用意した木偶の坊なんかで、私達を止められると思ってんの!!」

 

<<マシンが魔法少女に負けるという()()()()()()()()!お前達の四肢を破壊してやろう!>>

 

「私達を達磨にして捕らえようというのね…卑怯者!出てきなさい!」

 

<<ヒィーヒッヒッヒ!!イヤなこった!いけえ!ロボット軍団!!>>

 

マシンのカメラアイが悪魔の如く真紅に光る。

 

<<ターゲットヲカクニン。コレヨリ、コウゲキヲカイシスル>>

 

銃口を向けてくるマシン達に対して小巻が前に出る。

 

「私を馬鹿力だけの女だとは思わないことね!」

 

彼女は自身の魔法武器であるポールアックスを振り上げる。

 

この斧は小さな四角い十字盾と合体した見た目なのだが盾が見当たらない。

 

マシン達から繰り出される銃撃の雨に対し、それを防いだのは彼女達の前に出現した巨大な盾。

 

「小巻さんのあの武器…魔法の盾と一体化してたってわけね!」

 

「呉っ!!」

 

「言われなくても分かってるって!」

 

速度低下魔法を発動させると銃撃速度が低下し、発射速度と弾速が落ちていく。

 

この隙を見逃す魔法少女達ではない。

 

小巻が生み出した大盾の左右と上から飛び出すのはさやかと杏子とマミなのだ。

 

速度が低下した銃弾を斬り払いながらさやかが斬り込む。

 

「ハァァァァァァァーーッッ!!」

 

人型から先に狙って次々と切り捨てていく中、後方には頼りになる先輩もいる。

 

「援護するわ!!」

 

上空を跳躍したマミは複数のマスケット銃を生み出して援護射撃を行う。

 

白い装甲版で覆われた隙間に弾が撃ち込まれた後、内側からリボンが飛び出す。

 

「レガーレ・ヴァスターリア!!」

 

リボンによって拘束されたマシンを切り捨てていくさやか。

 

離れた位置から機関銃の腕を構えるマシンに対しては顔も向けずに反応する。

 

剣の刃を相手に向けた後、鍔の下側に見える引き金を引く。

 

刃が射出されてマシンのカメラアイを貫通する程の威力を示す。

 

「あたしの剣が斬るだけしか能がないとでも思ったわけ?甘い甘い♪」

 

射出し終えた剣の柄を投げ捨てた後、魔力で新しい剣を生み出してマシンと戦っていく。

 

マシンはAI制御されているようだが、この時代のAI技術ではまだ人の反応速度は超えられない。

 

鈍足な動きで狙いをつけているようでは、さやかとマミの敵ではない。

 

しかし装甲材質によって防御を固め、愚鈍な動きのまま攻める事なら出来るだろう。

 

「かてぇぇーーっ!!」

 

四脚型のマシンに一撃を叩きこむのだが、杏子の槍は弾かれてしまう。

 

「カチカチじゃねーか!あたしの槍でも切り裂けなかった!」

 

複合装甲で覆われたマシンが愚鈍に動きながら機関銃で狙いを定める。

 

側転しながらの回避行動を行った後に跳躍して狙いを定めた槍の一撃を放つ。

 

「カメラの部分は脆そうかもな!!」

 

投げられた槍の一撃がカメラアイを貫き、一機が沈黙する。

 

「どいてなさいよ、あんた達!!」

 

小巻の声が聞こえると跳躍して現れた彼女が巨大なポールアックスを振り上げる。

 

「うらぁぁーーーっ!!」

 

装甲で覆われた四脚型マシンがスイカ割りの如く両断される中、彼女の相棒も動く。

 

「スピードしか能がない魔法少女だとは思わないでもらおうか!!」

 

同じく跳躍して現れたキリカが援護攻撃を仕掛けてくる。

 

手が隠れて見えないほど長い袖の中から飛び出すのは繋ぎ合わされた三日月鎌の鞭である。

 

「ヴァンパイアファング!!」

 

叩きつけるように振り下ろされた一撃によって数機が纏めて両断されていく。

 

「あの固い連中は呉さんと浅古さんに任せていいわ!私は空を飛び交うマシンを狙う!」

 

「そっちは任せたぞ、マミ!!」

 

「見滝原魔法少女組を舐めんじゃないわよーっ!!」

 

次々と倒されていくロボット軍団の光景はセキュリティルームで確認されている。

 

マッドサイエンティストは苛立ちを募らせながらパネルを叩き、マイクに向かって叫んでくる。

 

<<何をやっている!?そんなコスプレテロリスト如きに後れを取るな!!>>

 

「うっ…!恥ずかしいプロレスマスク被ってるのを忘れてたのに…っ!」

 

「妙なところで乙女の恥じらいを見せるよね~小巻って?魔法少女衣装も恥ずかしがってたし」

 

「うるさいわね!私だってこう見えて女の子なんだから!」

 

「そのゴリラな暴れっぷりを見せられたら、嫁の貰い手が無くなるかもね~♪」

 

冗談を言い合いながらもキリカと小巻の連携は息がピッタリ合っている。

 

織莉子の為に魔獣と戦い続けた事もあり、3人で戦うよりも長く2人で戦ってきた間柄なのだ。

 

「フフッ♪呉さんと浅古さんの関係を見ていると、佐倉さんと美樹さんに見えてくるわね」

 

自分が織莉子ポジションなのかと考えていた時、違う隔壁扉が開く音に振り向く。

 

<<私のロボット軍団に敗北は許されん!!数で攻めれば負けはしない!!>>

 

次々と現れるロボット軍団の銃撃の雨に対してリボンを張り巡らせる防御結界を敷く。

 

「物量で攻めて来るわ!大型のロボットが入り込めない場所まで行きましょう!」

 

「地の利を生かして個別に撃破か!仕方ねぇな!」

 

「ちょっとマカミ!何処に隠れてるわけさ!?何処かいい場所ないわけ!」

 

辺りを見回すとコンテナの隙間からところてんのように伸び出る犬神を見つける。

 

「ジョ…状況判断トイウモノダ!オマエラニ任セタラ大丈夫カト思ッテナ!」

 

浮遊しながら強がるが、怯えたように尻尾がくるりと丸まっている。

 

<コイツ…ビビりな悪魔だったわけ?>

 

<悪魔って連中も個体差があるようだなぁ…>

 

念話を用いて疑念を浮かべながらもマカミの誘導に従いながら倉庫区画から移動していく。

 

<<逃がすな!!包囲して殲滅しろ!!人間の警備員共もさっさと向かいたまえ!!>>

 

防御を得意とする小巻をしんがりとして研究所を駆け巡る魔法少女達。

 

いつしか彼女達は施設の奥深くにまで入り込み、そこで見る事になるだろう。

 

悪魔達が魔法少女に対してどんな惨い仕打ちを続けてきたのかを発見するのであった。

 

────────────────────────────────

 

鋼鉄の血管内かと思わせる程の巨大な地下施設空間を駆け巡る魔法少女達。

 

鈍重なマシンよりも人間の警備員達の方が小回りも効き、反応力も高いため苦戦を強いられる。

 

「いたぞーーっ!!」

 

警備員達から浴びせられる銃弾の雨に対し、キリカは常に速度低下魔法を展開させる。

 

彼女の奮戦もあり銃弾の猛火を斬り払いながらみねうちで敵を昏倒させていく。

 

マミもリボン拘束を用いて戦うが、心配した表情をキリカに向けてくる。

 

「呉さん!いくら何でも魔力の使い過ぎよ!」

 

「そうだよ!そんなハイペースじゃ最後まで持たないよ!」

 

心配してくれる皆を見つめながらもキリカは笑顔を浮かべながら背中を向ける。

 

「問題ない。私の腰元にあるソウルジェムを見てみなよ」

 

「嘘だろ…?魔力を消耗したのに…濁ってねーじゃねーか!?」

 

「呉だけじゃないわ。防御魔法を使い続けてる私のソウルジェムも綺麗なままなのよ…」

 

「どういう事なのかしら…?」

 

敵の猛攻が沈静化したためか魔法少女達は向かい合って話し合う。

 

「…オ前達ニハ見エナイヨウダナ」

 

「何が見えないっていうのさ?」

 

「コノ研究所内ニハナ、小サナ悪魔共ガワンサカイルンダヨ。空気中ニ漂ウ微生物レベルノナ」

 

「その微生物レベルの悪魔が…私達のソウルジェムを綺麗にしてくれてるわけ?」

 

「魔法少女ハ感情エネルギーデアルMAGを練リ上ゲルコトガ出来ル」

 

「もしかして、そのMAGっていうのは私達の魔力行使や感情の曇りで生まれる穢れのこと?」

 

「ソノ通リ。オ前達ガ魔力ヲ使ウホド穢レタMAGガ溜マル。悪魔ハMAGヲ吸イ出シテ喰エル」

 

「つまり…あんた達がいてくれたら、あたし達は魔力切れを起こす事もなくなるわけ!?」

 

「スゲーじゃねーか!?あたし達…もう戦わなくても済むぞ!!」

 

「そうね…魔力切れの心配が無くなる以上、魔法少女が戦う理由も無いわ。でも、変ね…?」

 

「何が変なんですか、マミさん?」

 

「それ程の恩恵を与えてもらえるというのに…どうして太古の魔法少女は悪魔を遠ざけたの?」

 

マミの疑問に対してマカミは顔を背けながらこう語ってくる。

 

「…ソノ答エナラ、コノ先ニアルダロウ」

 

「この先に…?」

 

顔を向けた先には隔壁扉が存在しているが、狼の神格化であるマカミの鼻は誤魔化せない。

 

「コノ先ノ光景ヲ見タ上デ…マダ悪魔ノオレ二付キ従ウ気ニナルカ…見物ダナ」

 

マカミに促された魔法少女達は隔壁扉を開けて廃棄物処理区画に入り込んだ瞬間、顔を歪める。

 

「ぐっ!!?」

 

「なんて酷い臭いだよ!!?」

 

全員が顔をしかめてしまう程の強烈な腐敗ガスが充満した施設を彼女達は進んでいく。

 

前を見れば焼却機械に放り込まれるのを待っているかのような腐肉の海まで広がっている。

 

「地獄ノ光景ヲ見ロ。円環ノコトワリニ導カレルコトモ出来ズニ腐リ果テタ…哀レナ者達ヲナ」

 

巨大なゴミピット内に捨てられていたのは体が欠損した魔法少女達の遺体であろう。

 

「ヒィ!!?」

 

「キャァァァァァーーッッ!!?」

 

「う…嘘だろ…こんな…こんな酷過ぎる光景…っ!!?」

 

今まで凄惨な光景を見てきた魔法少女達であるが、これ程までの地獄絵図は見た事がない。

 

研究に使う臓器を抜き取られ、食肉に使う肉付きのいい部分を切り取られた遺体の数々。

 

死体は腐敗して全身が黒ずみ、液状化してピット内を悪臭の泉に変えているのだ。

 

「…コノ光景コソガ、我々悪魔ト魔法少女達トノ共存関係ヲ破壊シタ光景ナノサ」

 

「どういう意味だよ!?」

 

「悪魔ハ強欲ダ。ソウルジェムカラ少量ノMAGヲ提供シテモラウ程度デハ…()()()()()()()()

 

「まさか…あんた達悪魔は…ソウルジェムを…!?」

 

「…ソウダトモ。オレ達悪魔ハナ、オマエ達ノソウルジェムヲ喰ライタイ…」

 

爆発的感情エネルギーを生み出せるソウルジェムを喰らいたいと言われた瞬間、皆が絶句する。

 

さやかと杏子は武器をマカミに向けながら叫んでくる。

 

「あんた…あたし達を騙そうとしてたのね!?」

 

「こんな場所に連れ込んできたのは罠だったのかよ!?」

 

キリカと小巻も彼女達に続きながら悪魔を罵倒してくる。

 

「織莉子を救出する手助けなんて嘘だ!この悪魔は…私達と織莉子を喰らいたいだけなんだ!」

 

「何が悪魔と魔法少女の共存関係よ!あんた達は魔法少女に近づいて魂を喰らいたいだけよ!」

 

恐怖心と猜疑心によって混乱しながら浮足立つ姿を晒す彼女達に対して悪魔も吠えてくる。

 

「ハッ!昔ヲ思イ出スゾ!太古ノ魔法少女達モ今ノオマエラト同ジ顔ヲシテ…オレヲ憎ンダ!」

 

強がった態度を見せるマカミだが殺される覚悟で震えているのが分かるはず。

 

マカミの脳裏に浮かぶのは冤罪の如き歴史光景。

 

太古の魔法少女達から悪魔狩り被害を受け、狩られていった仲魔達の凄惨な記憶なのだろう。

 

そんな中、一瞬即発の空気を破ったのは一発の銃声なのだ。

 

「マミさん…?」

 

マスケット銃を天井に目掛けて撃った後、冷徹な表情を仲間達に向けてくる。

 

「今がどういう状況なのか分からないの?仲魔割れをしている場合ではないわ」

 

「だ、だけどマミ!この悪魔は…何を企んでるのか分からねぇ!」

 

「そうだよ恩人!こんな奴を連れてたんじゃ…織莉子の身に危険が迫る!」

 

「それでも信じてついていけって言うの…巴!?」

 

苛立ちを向けてくる仲間に対し、厳しい表情を返してくる。

 

「この子を信用出来る保証はない。それでも、今の私達は彼のナビがなければ包囲殲滅される」

 

「悪魔なんて信用するっていうんですか!?」

 

「その悪魔である嘉嶋さんから生活費を送ってもらえているのは誰なの?」

 

「えっと、それは……」

 

「悪魔である嘉嶋さんがATM犯罪の罪を代わりに被ってくれて救われた子は誰なの?」

 

「それは…その……」

 

「一時の感情に惑わされないで。疑いたくなる気持ちも分かる…それでも、私は信じてみる」

 

他所の家の問題に対して薄情だった巴マミでも先はあるのだと信じてくれた悪魔人間がいる。

 

だからこそ悪魔を信じたいというマミに論された事で魔法少女達の顔が俯いていく。

 

誰かの客観的な視点が無ければ、それこそ仲魔割れが起きていただろう。

 

その時の自分の感情が選んだ選択に対して自己批判を行う大切さが伺える光景なのだ。

 

「…アンタノヨウナ冷静ナ魔法少女バカリダッタナラ、共生関係モ続ケラレタダロウニ…」

 

口惜しい表情をしていた時、腐海に目を向けるマカミがこう告げてくる。

 

「…気ヲツケロ、魔法少女達」

 

「えっ…?どうしたのよ…?」

 

「コノ研究所ノ微生物悪魔共ガ…ソウルジェムソノモノヲ喰ライタガッテイル…」

 

「なんですって!?」

 

魔法少女達も腐海に目を向けるのだが、それはあまりにもおぞましい光景であろう。

 

腐海で横たわる遺体という名の抜け殻に宿っていくのはマニトゥの一部達。

 

無数に存在する一つ一つがマニトゥの悪霊であり、取り憑かれた腐った遺体共が無数に動く。

 

「あ…あぁ……」

 

顔面蒼白になりながら冷や汗が吹き出す少女達。

 

ゴミピット内から這い出してきたのは魔法少女の遺体に宿ったアンデット達なのだ。

 

【トルソー】

 

イタリア語で木の幹や人間の胴体部分を指す言葉である。

 

転じて胴体部のみを造形した彫刻やマネキンを指す事もある。

 

この言葉はバラバラ殺人の亡骸の隠語に用いられる事もあったという。

 

爆発やバラバラ殺人で死んだ遺体を表す際にも使われ、死んだ犠牲者の無念の形でもあった。

 

「グッ…ゴガッ…ソウ…ル…ソウ…ル……」

 

腐肉の手足は欠けており、腹は開かれたまま内臓を垂れ流す腐乱死体が腐肉の泉から這い上る。

 

マニトゥのキャリア達はソウルジェムに寄生して少量のMAGを運ぶ行為に飽きているようだ。

 

「ク…ワ…セロ…ソウ…ル…ジェ…ム……」

 

肉体に宿り、ソウルジェムを喰らい、内側で破裂して放出された負の感情エネルギーが欲しい。

 

地獄から這い出してきた存在達の怨念の意思が迫ってくる異常光景に対して杏子が動く。

 

「どいてろ!!」

 

血相変えて前に出た彼女は頭に被った目出し帽を脱ぎ捨てた後、やりきれない表情を浮かべる。

 

「あんた!なんでマスクを脱ぐのさ!?どこで顔が記録されるか分からないのに!」

 

「構わねぇ!!惨い姿に変えられた死者達を弔うんだ…行儀の悪い姿は見せられねぇ!」

 

片膝をつきながら祈りを捧げる構えを行う。

 

まるでその姿は死してなお彷徨う者達に祈りを捧げるシスターにも見えてくるだろう。

 

「なんて姿にされちまったんだよ…お前ら……」

 

杏子のソウルジェムが赤く輝きだす。

 

「神様に見捨てられた上に…円環のコトワリに導かれる事さえ出来なかったなんて…」

 

何をやるのか一瞬で判断したさやかが仲間達に叫んでくる。

 

「みんな!!この部屋から出て!!」

 

「どういうことなの!?」

 

「杏子は大技を放つつもりだよ!!あたし達まで焼け死んじゃう!!」

 

状況を理解したマミはキリカと小巻にも顔を向けた事で彼女達も頷く。

 

魔法少女と犬悪魔は廃棄物処理区画の奥へと移動していく。

 

残された空間の頭上には刃を下に向けて構えられた無数の槍が浮かんでいる。

 

「イエスは言われた…私は蘇りです、命です。私を信じる者は死んでも生きるのです」

 

槍の刃が左右に開き、浄化の炎を放出していく。

 

「あたしに出来るのは…弔われた遺体がいつか違う形で蘇る日がくる事を…祈ってやるだけだ」

 

決意を秘めた表情を浮かべた後、無数の槍が巨大な業火となって地上に降り注ぐ。

 

盟神抉槍(くがたち)!!!」

 

杏子が放ったのは一つ一つが彼女の最大威力のマギア魔法に匹敵する程の荒業である。

 

これ程までの乱暴な魔力行使は通常なら耐えられないが、この研究所内ならば出来るはず。

 

杏子のソウルジェムに寄生した他のキャリア共が無尽蔵の魔力を提供してくれるからだ。

 

<<ソ…ウ…ル…ジェ…ム……!!!>>

 

隔壁扉が下りた向こう側から離れていても感じさせる程の豪熱が放たれ続ける。

 

扉も熱に耐え切れずに赤く変形していくが、どうにか奥の通路にまでは炎を届かせない。

 

「なんて…威力なのよ…」

 

「考えなしにあんな魔法を使うだなんて…私よりもおっかない奴だったんだね…」

 

「フン、あんただって…キレたら何しでかすか分からない怖さを感じてたわよ…呉?」

 

「フフッ、八重歯を伸ばす魔法少女は恐ろしいってところで納得しなよ、小巻」

 

変形して開かなくなった扉が袈裟斬り角度で切り裂かれる。

 

「……弔いは終わったの?」

 

俯いたまま歩いてきたのは膨大な魔力行使に耐えきった杏子であろう。

 

「ああ…あれだけ燃やしてやればもう眠れるさ。ついでにクソッタレ廃棄場も破壊してやった」

 

「行きましょう、みんな。ここに囚われた魔法少女を救い出す…もう悲劇は繰り返させない!」

 

決意を込めて駆け抜けていく魔法少女達。

 

目指すのは独房区画のセキュリティを解除するため破壊しにいくセキュリティ区画。

 

恐れも無く突き進む彼女達だが、この先にいる者の気配を感じているのはマカミであろう。

 

(コノ匂イ…悪魔ナノハ確カダガ、善ナル存在ノヨウニモ感ジサセルナ…?)

 

ようやく研究者達が活動する区画内に入り込む魔法少女達。

 

自動扉が開き、広がっていた光景とは宮殿の回廊のような景色であった。

 

 

「コノ辺リガ幹部区画ダ。セキュリティ区画モ直グソコダ」

 

「悪趣味な光景の次はブルジョア光景…何処までも支配者気取りの連中なんだね…」

 

「油断しないで。何が飛び出してくるか分からないわ」

 

宮殿の如き回廊を警戒しながら進んで行く。

 

飾られた大きな窓には屋外景色を映し出す映像が映っている。

 

周囲を飾るのは悪趣味な絵画の数々であり、ドレスで着飾った少女達の蝋人形も目立つ。

 

「ブルジョア空間内にまで悪趣味なもんを飾るなんて…とことんイカれてる連中ね…」

 

「私の鎌で早く刻んでやりたいけど…不気味な人形だね。まるで…見られてるみたいだよ」

 

回廊を進んで行くと両開きの扉が開く音が響く。

 

「あの人は…?」

 

俯いたまま回廊まで出て来たのは白い剣士。

 

白いスーツズボンと白いトレンチコートを纏い、白銀のロングソードが納められた鞘を持つ。

 

「…スゲー魔力だ。あれも人型の悪魔なんだろうな…尚紀のように」

 

魔法少女達とは離れた場所に立ち、白き剣士が立ち塞がってくる。

 

「あんたもあたし達の邪魔をしようっていうの!?」

 

黒い長髪を後ろで括った男は顔も上げずに答えない。

 

「無視しようってのなら…しょうがないわね」

 

「見た目は整ってる悪魔だけど、織莉子のためなら容赦なく刻むよ」

 

接近戦の武器を持つ魔法少女達が前に出る。

 

後ろからマスケット銃を構えて援護しようとするマミだが、横で浮かぶマカミの異変に気付く。

 

「どうしたの…?」

 

宙に浮かぶマカミの体は震え上がっており、震える口から何かが聞こえてくる。

 

「嘘ダロ…?アノ白イ剣士ノ姿ハ…伝説ノヴァンパイアハンター……」

 

マカミが言葉を喋り終えるよりも先に鳴ったのは剣の鍔を親指で弾く音。

 

「えっ…?」

 

一迅の風が吹き抜けた後、さやか達は敵の姿を見失う。

 

「消えた…?」

 

前方空間からいなくなった存在だが、背後の気配を感じた者達が振り向く。

 

抜刀して剣を振り抜いた後ろ姿を見せるのは白き剣士。

 

血払いを行った後、柄を回転させながら回転納刀してくる。

 

「あ…あれ…?」

 

鍔の鳴る音が響くと同時に魔法少女達の覆面マスクが切り裂かれ、布切れが落ちていく。

 

「ガッ…アッ…ア……」

 

皆が仲魔に目を向けると彼の体には無数の斬撃線が浮かんでおり、血が一気に噴き出す。

 

「マカミ!?」

 

「スマ…ネェ…オレ…ハ…ココマデ…ダ……」

 

体がバラバラとなって弾け飛ぶマカミはMAGの光と化す。

 

一瞬で起きた斬撃現象こそ、悪魔の中でも達人級の剣技を持った悪魔だけが使える一撃。

 

『刹那五月雨斬り』の速さは魔法少女達ですら肉眼で見える事がない程の神速なのだ。

 

「グッ…ウゥ…!道先…案内人は…始末…した…ぞ……」

 

後ろを振り向く白い剣士の顔を見た魔法少女達は戦慄する。

 

美しく整ったその顔は血管が浮き上がる程にまで血走っている鬼の形相をしている。

 

両目も獰猛な悪魔を象徴する真紅の瞳を輝かせており、獰猛な悪魔に成り果てているのだ。

 

<<驚いた。まさかこの区画まで入って来られるとはな?賞賛に値するぞ>>

 

幹部区画に響くのは地下研究所の支配者である所長の声であろう。

 

「あんたがここのボスなの!?出てきなさいよ!!」

 

<<その者を倒せたならば考えてやる。君達が相手をしているのは伝説の吸血鬼狩人だ>>

 

「吸血鬼狩人だと…?」

 

<<名はクルースニク。闇の吸血鬼と戦う宿命にある善なる吸血鬼狩人だ>>

 

「そのクルースニクは…正義の味方をしている悪魔なの?嘉嶋さんのように…?」

 

<<彼を懐柔させるのに私の秘書も苦労した。洗脳魔法を駆使しても…未だに抵抗してくる>>

 

「ガッ…アァ…アァァァァーーーッッ!!」

 

突然頭を抑え込みながら片膝をつくクルースニクは酷く苦しみだす。

 

<<見ての通り、彼の精神耐性は強力だ。だからこそ私の秘書も洗脳に加減が効かなかった>>

 

幽鬼のように揺らめきながら立ち上がっていくのは白き狂気を纏う悪魔剣士である。

 

<<今の彼は純粋なる狂戦士。最初の一撃で死ねなかった事を後悔するだろう>>

 

剣を抜いて構えるその表情は正気を失いかけているかのように苦しみ悶えている。

 

「……マミさん、小巻さん、キリカ。ここはあたし達に任せて」

 

前に出たのはさやかと杏子であり、冷や汗を流しながらも覚悟を示す。

 

「お前らはどうにかしてセキュリティ区画を見つけ出せ。こいつは抑え込んでおくよ…」

 

「貴女達だけで勝てるというの!?さっきの一撃は…私でさえ動きが見えなかったわ!」

 

「そうだよ君達!私の速度低下魔法なら援護出来る!」

 

「防御魔法だってそこまで得意じゃないんでしょ…あんた達!?」

 

「不利な事ぐらい分かってる。それでも…一刻も早く囚われた魔法少女達を救いたい」

 

「もうあんな…胸糞悪い光景は見たくないからな…」

 

さやかは剣を正眼に構え、杏子は左足を前に出して左前半身で槍を構える。

 

「Grrrrrrrr!!!」

 

歯を剥き出しにした野獣の顔つきであるが、体には剣豪の如き剣術が染みついている。

 

「早く行って!!」

 

「あたし達を信じろ!!」

 

「美樹さん…佐倉さん…ごめんなさい!!」

 

マミはキリカと小巻を連れながら回廊の奥へと駆けていく。

 

<<逃がさんよ。いずれ君達も…愚かな2人組の後を追うだろう>>

 

回廊を走り続けるマミ達であったが、周囲から魔力を感じ取る。

 

「これは!!?」

 

回廊に飾られた蝋人形達が振動していき、ギクシャクした動きで前に進み、蝋が剥げ落ちる。

 

「な…何なんだよ…この化け物共は一体…っ!?」

 

「さっきと同じアンデットなの!?」

 

【ワックスワーク】

 

人体解剖の標本にされるはずだった女性の死体に対して蝋細工を用いた防腐処理を施したもの。

 

内側の死体は経年劣化で腐り果て、部分的に腐敗して骨が覗いてしまっている。

 

欧米ではキリスト教の最後の審判での復活思想の影響で亡骸を残す復活思想が根強い。

 

遺体に消毒や保存処理を施し、必要に応じて修復して長期保存が出来る技法が研究されている。

 

エンバーミングの技術はそういう背景で発達してきたようだ。

 

<<私が仕込んでおいた悪霊達は私の命令があれば動き出し、敵を滅ぼす人形となる>>

 

動き出す歩く死体は先程と同じく魔法少女達の遺体であろう。

 

頭部や手足の蝋が歩く振動で剥がれ落ち、腐った腐肉と骨を剥き出しにして迫ってくる。

 

<<この死体はな、私が気に入った美しい魔法少女達の死体だ。コレクションでもある>>

 

少女達の尊厳を踏み躙る悪魔の言葉に対してマミとキリカと小巻の表情が憤怒と化す。

 

「このドクズが!!」

 

「こんなにも頭にきたの…生まれて初めてよ!!あんただけは絶対に許してやらない!!」

 

「私達魔法少女を弄んだ罪は…同じ魔法少女である私達が罰を下してみせるわ!!」

 

<<楽しみだ。私はセキュリティルームにいる…ここまで辿り着いてみせろ>>

 

「グッ…ゴガッ…グガァァァーーッッ!!」

 

迫りくるアンデットの群れに対し、慈悲ともいえる供養の一撃が繰り出されていくだろう。

 

彼女達もかつては希望を祈った魔法少女であり、かつては魔女に成り果てる運命を背負った者。

 

その者達を殺さねばならない苦しみは魔女と呼ばれる存在と戦った世界の苦しみの再現である。

 

それでもマミ達はこれ以上の悲劇を繰り返させないためにも迷わない。

 

地獄の底ではイキのいい魔法少女達のMAGを欲するおぞましい赤子の胎動が唸りを上げる。

 

独房では仲間達の魔力を感じ取った織莉子が希望に満ちた表情を浮かべている。

 

地獄の釜の蓋は開いたのならば、後は地獄の悪魔共を呵責(かしゃく)するのみであった。

 




バイオハザードの地下研究所をイメージして書いてたら、ゾンビ悪魔祭りになってしまった(汗)
これもプラズマの仕業か。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。