人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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164話 かつての仲魔達

周囲や地下では激戦が繰り広げられるのだが、地上の精神病院内は静かなもの。

 

警備部以外は通常の業務を続けており、夜勤の看護師達が働くのみ。

 

深夜1時を過ぎた頃。

 

精神病患者の病室見回りを続けている看護師だったが…窓を見て表情が変わる。

 

「た…大変だ!!また大火事が迫ってくる!!」

 

彼が見た光景とは、魔法少女達が侵入してきた山側から伸びてくる大火災の光景。

 

直ぐに火災報知器のベルが鳴り響き、看護師達が慌てて病院患者達を避難誘導していく。

 

「ダメだ!火の勢いが強すぎる!!患者達を病院から遠ざけるしかない!!」

 

警備部にも連絡がいき、避難誘導人員として駆り出されていく始末。

 

病院から次々と逃げ出していく人々を見つめるのは、病院ゲート付近の森に隠れた男。

 

黒の帽子を目深く被り、口元をスカーフで覆い隠した姿。

 

身元を偽装している人物とは尚紀であった。

 

「ケルベロスは上手くやってくれたな。この調子で病院内の人々を全員追い出そう」

 

病院にいる人々の命を危険に晒すわけにはいかないという判断を下したようだ。

 

ゲートから出て行く最後の人々を確認し終えた頃には、山火事を起こしたケルベロスが帰還する。

 

「派手ニヤッテモ構ワナイト言ワレタガ、アレデ良カッタノカ?」

 

「ああ…こうするしかなかった。あいつらと本気で戦えば…病院内の人間達に犠牲が出ただろう」

 

「人間ノ守護者ヲ気取ッテイルヨウダナ?相変ワラズカ…マネカタ共ヲ守ロウトシタ汝ダカラナ」

 

「お人好しだと笑いたいか?」

 

「イイヤ、汝ガソウイウ悪魔ナノハ知ッテイル。…安心シタゾ」

 

「何を安心したんだよ?」

 

「人間ノ心ヲ取リ戻シテクレタコトニダ」

 

ケルベロスの喜びの言葉を聞き、尚紀は俯いていく。

 

アマラ深界最奥に堕ちた時、彼は第二の転生を果たした。

 

人間としての嘉嶋尚紀は死に、完全なる悪魔になった人修羅が生まれてしまう。

 

仲魔と合流した時、どれだけ皆を苦しめる選択をしたのかを突き付けられる責任を感じるのだ。

 

「…よく付いて来てくれたな。完全な悪魔に成り果てた俺だというのに…」

 

「言ウナ。我ハ主カラノ使命ガアッタガ…汝ヲ信ジタカッタ部分モアル」

 

「信じたかった…?」

 

「タトエ悪魔二堕チヨウトモ、必ズ蘇ル…。悪魔デハナク…人間ダト言イ続ケタ男ノ心ハ蘇ル」

 

「……………」

 

「我ダケデナク、皆ガソウ信ジタ。ソノ期待二応エテクレテ…嬉シイゾ」

 

「すまない……お前らに迷惑をかけちまったな」

 

「気ニスルナ。汝ノ選択ハ汝ダケノモノ…責任ヲ背負ウ覚悟ヲ示シタ者ヲドウシテ止メラレル?」

 

「ケルベロス……」

 

「自由二生キテコソ悪魔デアリ、人間ダ。周リニ流サレルダケノ者ナドL()A()W()()()()()()()()()

 

「法や全体主義を選ばず、個人の権利や自由を求める道…。それが俺たちCHAOS悪魔だったな」

 

「自由ノ中ニハ、秩序ヲ求メル自由モアル。汝ガコノ世界デドンナ自由ヲ求メルカ…楽シミダ」

 

森の中から出て来た悪魔達が病院ゲート前まで移動して立ち止まる。

 

「いるな…あいつらが。病院施設の中で待ち伏せていやがる」

 

「奴ラモ精神操作魔法デ操ラレテイル。クルースニク程デハナイガ、洗脳サレタママ本能デ動ク」

 

「クーフーリン…セイテンタイセイ。あいつらと戦う事になるなんてな…」

 

「セイテンタイセイハ汝二拳法ヲ伝エタ老師デアル達人。ソレニ…伝説ノケルトノ英雄ガ相手ダ」

 

「あいつらを相手にして…手加減をする余裕はないかもしれない」

 

「案ズルナ、我ガツイテイル。片方ノ相手ヲシテヤロウ」

 

「いや…俺だけでやる」

 

「何ダト…?マサカドゥスノ力ヲ使ウノカ?」

 

「いいや。マサカドゥスと化したマロガレなら…今は所持していない」

 

「何ダト?愚行トシカ思エン…蛮勇ハ命トリニナルダケダゾ」

 

「お前には連絡されただろう消防隊の連中を遠ざけてもらいたい。もう直ぐつく頃だ」

 

「ソイツラノ命マデ気ニシテ戦場カラ遠ザケルカ…何処マデモオ人好シナ奴メ」

 

「こういう性分な俺でも、付いて来てくれたじゃねーか」

 

「マァナ…。トコロデ、後ロカラ匂ウ化粧臭サ…ソシテ魔力…厄介ナ奴ガ近ヅイテクルゾ」

 

後ろを振り向けば、近寄ってくるのはナオミ。

 

口元はスカーフを巻いており、目元はサングラスを身に付け頭部を隠す姿。

 

「…そのケルベロス、貴方の仲魔なの?」

 

「ああ、そうだ」

 

「知リ合イカ?」

 

「名前はナオミ。凄腕のデビルサマナーであり、何故か俺のボディガードをしてやがる女だ」

 

「デビルサマナーカ…。悪魔ガイル世界ナラ、イテモ不思議デハナイナ」

 

「それよりもナオミ、どうしてここにいる?手筈ではお前は待機を務めると言ってた筈だが…」

 

「私の使い魔の一体がやられたわ。MAGを供給してあげていたけど…それが途切れたのよ」

 

「道先案内をやらせると言ってたマカミがやられたのか…。あいつらは無事なのか…?」

 

「それを確かめにいくためにも、私も前線に向かうしかないと判断しただけよ」

 

「デビルサマナー、コノ先ニハ我ト同ジク人修羅ノ仲魔ガ待チ構エル。マリンカリンヲ受ケテナ」

 

「だとしたら、襲い掛かってくるわね…。これ程まで強くしたケルベロスに匹敵する悪魔なの?」

 

「俺の自慢の仲魔達だ。その実力なら俺が保障する」

 

「厄介ね…。それでも、先に進むしかないわ」

 

「ナオミの実力なら大丈夫だ。俺と互角にやり合える程の凄腕サマナーだからな」

 

「ソウカ…。ナラバコノ男ヲサポートシテヤッテクレ。我ハ頼マレゴトヲサレテナ」

 

「どうせ、お人好し過ぎることでも頼まれたんでしょ?私も嫌というほど見せられたわ」

 

「コノ世界ノ汝ト付キ合イガ長イ者カラモ、ソウ言ワレルカ。コレカラモ変ワラヌ汝デ在レ」

 

そう言い残し、ケルベロスは消防隊の侵入を防ぐために動き出す。

 

「私たちも行きましょう」

 

「ああ、行こうか」

 

避難して誰もいなくなったゲートを飛び越え、病院敷地内を目指す。

 

近寄ってくる存在達を屋上で見下ろす存在達。

 

背後の森の火災に照らされたその表情は、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「へっ!まさか…この世界に流れ着いていやがったとはな。俺様達と同じく」

 

「尚紀…再び再開出来るとはな。試してみたかったのだ…私の槍とお前の力…どちらが強いかを」

 

「隣にいる覆面女は誰だ?強力な悪魔の魔力を複数感じさせるなら…デビルサマナーだろうがな」

 

「一緒にいるということは、尚紀とは協力関係の者か。丁度いい、女の方は譲ってやる」

 

「なんだと!?俺様が尚紀とやり合うんだよ!俺様が鍛えた小僧なんだぞ!!」

 

「獲物を譲るわけないだろうが!あっちの女サマナーで我慢しろ!!」

 

「嫌なこった!こっちでどれだけ強くなったのかを知りてぇんだ!譲る気はねぇ!!」

 

「ならばここでやり合って決めるか!?」

 

「そんな暇ねーだろ!!もう目の前に来てるんだぞ!?」

 

「ならジャンケンで決めるしかあるまい」

 

「間髪を入れずかよ…事が差し迫ってるんだ、仕方ねぇ!」

 

間の抜けた勝負を始める二体の悪魔だが、彼らは正気に戻っている訳ではない。

 

ここでの凄惨な光景を黙認するのは、己の欲望に忠実であれと洗脳されているからだ。

 

彼らが望むのはただ一つ。

 

戦士として、相応しい戦いがしたいという闘争欲求だけであった。

 

────────────────────────────────

 

病院玄関口までやってきた2人は病院を見上げていく。

 

「人の気配は感じられない。上手くやれたようだ」

 

「そのようね。人払いも済んだなら、連中とここでやり合ったとしても被害は最小限で済むわ」

 

「建物は壊しても直す事が出来る。しかし、命を取り戻すことは出来ない」

 

「その通りね。…だからこそ、人の命を奪った加害者は許されないのよ」

 

「感じるか、ナオミ」

 

「いるわね…連中が」

 

病院玄関口が見える屋上に立つ存在。

 

白銀の甲冑鎧を纏った美しき槍兵とは、尚紀の仲魔として共に戦ったクーフーリン。

 

右手に持つ魔槍ゲイボルグを構え、槍に魔力を込める。

 

「ハァッ!!」

 

赤い魔力が籠った槍が投擲され、勢いよく迫りくる。

 

「来るぞ!!」

 

2人は後方に向けて大きくバク宙回避。

 

地面が爆発する程の一撃を放った相手に視線を向けるが、上の魔力に気が付く。

 

燃え盛る炎に照らされた夜空の上に在ったのは、小さな雲。

 

觔斗雲(きんとうん)を操る仙術を行使するのは、武侠服姿の悪魔。

 

「オラァァーーーッ!!」

 

雲の上から飛び降り、一気に地上に向けて降下。

 

飛び退いた2人の場所が大きく爆ぜる程の震脚の一撃。

 

巨大なクレーターから白煙が上り、中から飛び出してきたのはセイテンタイセイだ。

 

「いよぉぉ…尚紀。久しぶりじゃねーか」

 

「…久しぶりだな、マスター」

 

「てめぇに拳技を仕込んでやった俺様への敬意を忘れてないようで安心したぜ」

 

両手を鳴らし、不気味な笑みを浮かべてくる。

 

「俺様が何を望んでいるか…分かるか?」

 

「ああ…なんとなくな」

 

叩きつける程の殺気を浴びせられ、尚紀の顔にも冷や汗が滲む。

 

<<おい!尚紀の相手は私の筈だぞ!!>>

 

跳躍して現れたのはクーフーリン。

 

左手を横に翳し、意思をもつかのように飛来してきたゲイボルクを掴み取る姿。

 

「ジャンケンで負けたのだ。譲ってもらうぞ」

 

「チッ!まぐれ勝ちした程度で勝ち誇りやがって!」

 

「相変わらずの仲のようだな?こっちの世界に流れてきて、ちっとはマシになったかと思ったよ」

 

「俺様がこんな犬っころと仲良く出来るわけねーだろ!」

 

「かつての世界で…私とコイツがどんな犬猿関係だったのかを忘れたのか!」

 

「おう、尚紀!さっさと犬っころをぶちのめして俺様と代われ!それまで女の相手をしてやる!」

 

「ハッ!女サマナーにぶちのめされて、キーキー鳴いても助けてやらんぞ!!」

 

「俺様が女如きに負けるかよ!尚紀にキャンキャン鳴かされちまえ!!」

 

いがみ合いを起こす緊張感の無い悪魔達。

 

オーバーに両手を広げるナオミと、懐かしそうに二体の悪魔を見つめる尚紀が向かい合う。

 

「ねぇ…この悪魔達は本当に精神操作魔法で操られているの?普通に見えるけど…」

 

「威力を弱めてかけたんだろうな…。こいつらは元々喧嘩っ早い奴らなんだよ」

 

「天界を荒らしまわった妖怪猿と、クランの猛犬だものね…。よくこんな連中を仲魔にしたわね」

 

「喧嘩するほど仲が良いとまではいかないが…それでも頼りになる奴らだったんだよ」

 

「なら、この二体は何を目的にして…イルミナティ連中と付き合ってきたのかしら?」

 

「大方、掃除役でもやらされてたんだろうな。それでも弱い奴らしか相手出来ずに不満だった」

 

「私達のような強者を求める為に、我慢しながら与してきたわけね。でも…それだけなの?」

 

「あいつらだって、弱い奴らをいたぶる趣味はもたない。倫理観だけを削り取られたようだ」

 

「洗脳力が弱いなら…荒療治で治るかもしれないわ」

 

「俺もそれを期待したいもんだ」

 

どつき合いが止まり、尚紀とナオミに向き直る二体の悪魔。

 

「尚紀、私はお前を主だと認めたが…武においては後れをとったつもりはないぞ」

 

「セタンタの頃から変わらないな、お前は。勝負事に拘り過ぎるところがな」

 

悪魔化し、右手から光剣を生み出す。

 

ゲイボルグを左右に回転させ、大上段の構えを見せる。

 

「武神としても名高いセイテンタイセイと戦えるなんてね…拳法家として誇らしいわ」

 

「てめぇの佇まいからして、相当なクンフーを積んだ奴だと分かるぜ。だが、相手が悪かったな」

 

召喚管を持ち、構える姿。

 

武器を持たない女が相手であるためか、如意金箍棒を使わない武術の構えを見せる。

 

互いが睨み合い、クーフーリンとセイテンタイセイが一気に踏み込む。

 

これから始まるのは、悪魔で在る前に武術家同士の戦い。

 

互いが達人クラスの実力。

 

加減は効かず、どちらかが死ぬまでの激戦となっていくだろう。

 

悪魔と悪魔、悪魔とデビルサマナーとの戦いが始まっていった。

 

────────────────────────────────

 

「い出なさい!不動明…」

 

召喚するよりも先に間合いに飛び込んできたのは、相手の飛び膝蹴り。

 

「チッ!」

 

左足を後ろに引き、身を翻して避ける。

 

反撃の回し蹴りを放つ。

 

上半身を仰け反らせて避け、続くローキックを蹴り足で止める。

 

召喚管を構える右手を払い、みぞおちに頂肘の肘打ち。

 

「グフッ!?」

 

手から召喚管が落ち、相手は尚も踏み込んでくる。

 

ワンインチの攻防となり、互いが拳打を打ち合う光景。

 

「召喚の隙を与えないつもり!?」

 

「先んずれば人を制す。ご自慢の悪魔を連れていようが、召喚出来なきゃ飾りに過ぎねぇ」

 

互いの突き、蹴り、膝蹴り、肘打ち、払い動作が連続して繰り返されていく。

 

「ハイッ!」

 

後ろ回し蹴りがセイテンタイセイの側頭部にヒット、

 

蹴りを受けた体の回転を利用し、勢いのまま跳躍。

 

「アァ!!」

 

旋風脚の一撃が左側頭部に決まり、キリモミしながら倒れ込むナオミの姿。

 

「いい一撃だが、物足りないぜ。悪魔を召喚出来たらもっと楽しめるのか?」

 

余裕の表情で倒れ込んだ彼女の周囲を歩く武神に対し、起き上がる彼女の口元は不敵な笑み。

 

「…試してみる?自慢の如意金箍棒を使わないぐらい、女を侮っているようだし」

 

「女如きに俺様の棍を使うまでもねぇ」

 

「そう…なら、引っ張り出させてみたくなったわ」

 

ひび割れたサングラスを投げ捨て、口元を覆うスカーフも外して捨てる。

 

腰から召喚管を手に取るが、今度は邪魔しない余裕の態度。

 

「出てきなさい…シュウ!!」

 

MAGが解放され、彼女の背後に現れた巨大な魔王の姿。

 

「ほう?セイテンタイセイではないか?貴様もこの地に召喚されていたとはな」

 

「へっ!同郷の魔王を召喚出来るとはな…楽しめそうじゃねーか」

 

「貴様が相手なら、我も大いに楽しめる。無様な戦いは許さんぞ、サマナーよ」

 

「期待に応えるわ。我に宿れ…戦の魔王!!」

 

シュウの全身から放たれる魔王の力が次々とナオミに注がれていき、シュウの姿が消えていく。

 

憑依とも呼べる光景を前にしながらも、彼女の元まで詰め寄ってくる。

 

「拳法家同士の決闘なら、こいつでどうだ?」

 

開いた左手を前に掲げてくる。

 

「シュウを宿した私を相手に推手を挑んでくるとはね…面白いわ」

 

彼女も開いた左手を相手の手首に合わせる形とする。

 

ワンインチ距離で並び立つ達人同士。

 

息も出来ない張り詰めた空気が破られた時、互いの拳舞が放たれていく。

 

激闘を繰り返すのは、離れた場所で戦う他の悪魔達も同じだ。

 

「ハァァーーーッッ!!!」

 

目にも止まらぬ程の高速突き。

 

光剣で捌き続けるが、防戦一方となる人修羅の姿。

 

矛の一撃を捌き続けるが、頭部を覆い隠すスカーフや帽子は切り裂かれて脱げ落ちている。

 

魔槍ゲイボルグは光剣の光熱を受けようとも溶断されない強靭さをもつようだ。

 

「やるな!腕前は衰えていないようだ!!」

 

「攻めてこい尚紀!臆病風に吹かれた攻めなど私は許さん!!」

 

「上等だ!!」

 

右切上げで突きを払い、一気に踏み込む。

 

払われた槍の勢いのまま頭上で槍を回転させ、体を反転させ槍を振るう。

 

槍は鈍器としても優れており、矛の重みが遠心力を増してくれる構造。

 

逆袈裟の角度から振るわれる柄の一撃に対し、左手から光剣を生み出し受け止める。

 

「グフッ!?」

 

右肘がクーフーリンの胴体に打ち込まれ、後退る。

 

手首を用いて光剣を回転させ、剣戟の応酬。

 

斬る、払う、打つ、払う攻防が高速で繰り出される光景。

 

槍を背に持つ形で光剣を受け止め、払う勢いのまま跳躍回転。

 

「フンッ!!」

 

後方に飛びながら突く一撃に対し、開脚しながらの跳躍。

 

着地と同時に後掃腿を放つ。

 

跳躍回避した相手に対し、起き上がり突き。

 

石突きを地面に立てる形で光剣を受け止め、跳躍。

 

「チッ!!」

 

槍に支えられた連続蹴り。

 

右腕でガードし、着地と同時に放つ横薙ぎをバク転回避。

 

態勢を整えるが、槍を大きく振り上げる姿を見せるクーフーリンを見て顔色が変わる。

 

「我が一撃を受けよ!!」

 

槍を大きく振るい、放たれた衝撃波。

 

放射状に放たれた『烈風破』が迫りくる。

 

「ぐぁぁーーーッ!!!」

 

衝撃波に弾き飛ばされ、尚紀の体が病院の壁を壊しながら吹き飛ばされる。

 

衝撃波の勢いは留まらず、大きな精神病院までもが破壊されていく。

 

後ろ側の山にまで迫り、ケルベロスが放った森林火災を森ごと削り取っていった。

 

彼の避難誘導が無ければ大惨事だった光景だ。

 

一方、互いの拳舞を制したのはセイテンタイセイ。

 

「オリャーーッッ!!」

 

ナオミの腹部に決まった崩拳によって、大きく弾き飛ばされる。

 

「アァァーーーッッ!!!」

 

病院の瓦礫の中に叩き込まれ、大きな土煙を上げていく。

 

瓦礫の中に埋まった好敵手に向けて歩みを進めていく悪魔達だが、素っ頓狂な叫びを耳にする。

 

「あんた達ーッッ!!なんてことしでかすのよ~!!?」

 

空から舞い降りてきたのは、彼らに洗脳魔法を行使したサキュバス。

 

「せっかくの偽装建物が台無しじゃない!!隠蔽工作にどれだけ費用がかかると思ってんの!?」

 

「ゴチャゴチャ五月蠅ぇ!建物の一つや二つ壊れた程度でガタガタ言いやがって!」

 

「好敵手との戦いの時に周りの被害など気にしていられん!好きにやらせてもらうぞ!」

 

「んも~!救いようがない脳筋バカ達なんだから!所長から管理責任を問われたらどうしよ~!」

 

「その無駄にデカい乳でも使って、顔を挟んでやりゃ~大目に見てくれるんじゃね~か?」

 

胸を鷲掴み。

 

派手にビンタされたようだ。

 

乱痴気騒ぎを始める者達を瓦礫の中から見つめるのは、健在だった尚紀とナオミの姿。

 

「全く…なんて馬鹿力よ。シュウを宿して鋼化した私の体を貫くなんて」

 

「あの2人を侮るな。邪教の館で俺が鍛え抜いた連中だ…奴らは物理無効さえ貫通させるぞ」

 

「貫通スキルまで所持しているなんて…。流石は貴方と共に轡を並べて戦った仲魔達よ」

 

「それより…見えるか、あのサキュバス?」

 

「ええ。あのサキュバスが彼らをマリンカリンで洗脳したのでしょうね」

 

「あいつを倒せば魔法効果は消えるだろうが…あいつらがそれをさせてくれるとは思えない」

 

「あの悪魔達をどうにかして状態異常回復させれば、隙が出来るわ」

 

「マリンカリンをかけ直す前に、あのサキュバスを仕留めてやる」

 

左手からディスチャームを二つ取り出してナオミに渡す。

 

「あいつらは物理攻撃を得意としている。隙は俺が作る…どうにかして奴らにそれを捩じ込め」

 

「アイテムを収納出来る魔法が使えるなんてね…。その中には他にも何があるのか楽しみだわ」

 

乱痴気騒ぎを終えた悪魔達が迫ってくる。

 

2人も瓦礫の中から歩きだし、互いが向かい合う。

 

「俺様を相手にここまで戦えるとはなぁ?女にしておくのは勿体ないゴリラだぜ」

 

「レディに向かって酷い言いぐさね。でも、流石は武神…私のクンフーでも技量は届かないわ」

 

「俺が徒手空拳で戦って、一度も勝てなかったマスターが相手だ。無理もない」

 

「貴方に拳技を仕込んだ老師はコイツだったの?どうりで私と張り合えるクンフーだと思ったわ」

 

「粗削りだったが、それでも短期間でアホ猿の拳技を取り込めた者だ。だからこそ本気で戦える」

 

悪魔達の目つきが変わり、本気となる。

 

セイテンタイセイは左手に如意金箍棒を出現させ、派手に振り回しながら腰に向けて構える。

 

「シュウの名に恥じない戦の魔王っぷりだった。ならば、俺様も敬意を示す一撃をくれてやる」

 

同じく槍を投擲する構えをしたクーフーリン。

 

魔槍ゲイボルグに赤い魔力が宿っていき、真紅に染まっていく。

 

「尚紀…我が一撃の威力は知っているだろう?」

 

「お前ら…その技を使う気か?後ろの山どころか、その向こう側にある街まで消し飛ぶぞ」

 

「知ったことか。私はクーフーリン…赤枝の騎士の名に恥じない武功を求めるのみ!」

 

「犬っころと同じく、容赦はしねぇ。俺様は天界の神々でも止められなかった暴れ猿だぜ!」

 

「全く…気持ちよく狂いやがって!目を覚まさせてやる!!」

 

尚紀がナオミを庇う形で前に出る。

 

二体の悪魔は放つのだ。

 

ボルテクス界においては、コトワリの神々とも戦えた力を解き放つ一撃。

 

「「ハァァーーーッッ!!!」」

 

跳躍して槍を投擲。

 

飛来する魔力の塊と化した『デスバウンド』の一撃が迫りくる。

 

如意金箍棒を薙ぎ払う形で振り抜く。

 

超巨大な衝撃波と化した『八相発破』の一撃が迫りくる。

 

鈍化した世界。

 

当たれば自分どころかナオミさえ消し飛ばされる一撃が迫る中、左手に何かを出現させた。

 

「脳筋バカ共め!!俺のアイテム行使を忘れたか!!」

 

左手を前に掲げたのは物理反射鏡と呼ばれる魔道具。

 

物理反射魔法であるテトラカーンと同じ効果をもたらす。

 

「「なにぃ!!?」」

 

強大な一撃が反射され、放たれた魔力が相手に向かって跳ね返されていく。

 

「「ぐあぁぁーーーッッ!!!」」

 

全身ズタボロとなり、大きく弾き飛ばされる姿。

 

「ちょっとーーっ!!?」

 

後ろで応援していたサキュバスに二体の悪魔が重なる形でぶつかり、弾き飛ばされていった。

 

倒れ込むクーフーリンとセイテンタイセイだが、それでも致命とまではいかない。

 

「ぐっ…忘れてた…ぬかったぜ…」

 

「いつだって…尚紀の道具は我々の命を救い…戦局を覆してくれたな…」

 

どうにかして体を起き上がらせようとするが、彼らを見下ろす存在がいる。

 

「大した実力だったわ。私の使い魔として欲しいぐらいだけど…今回は諦めてあげるわ」

 

ナオミが両手に持つのは、預かっていたディスチャーム。

 

「「あがぁ!!?」」

 

同時に口の中に突っ込み、無理やり飲ませ込む。

 

回復の光がクーフーリンとセイテンタイセイの体を包み込んでいく。

 

濁った真紅の瞳が金色へと戻っていき、洗脳魔法は解除されたようだ。

 

「む…むぅ?私達はどうして……」

 

「こんな胸糞悪い連中と…付き合ってきたんだっけ?」

 

正気を取り戻したのか、頭を振りながら立ち上がる姿。

 

尚紀も仲魔達の元にまで歩いてきて、呆れた表情を向けてきた。

 

「軽いマリンカリンをかけられていただけだ。お前らはそれでも効果は十分だったようだな」

 

「そうねぇ…これだけの暴れん坊達ですものね」

 

白い眼差しを向けてくる2人に対し、嫌な汗をかいていくかつての仲魔達。

 

言いたい事は山ほどあるようだが、皆が後ろに転がる女悪魔に振り向く。

 

「痛たた…も~最悪よ!!あんた達!さっさと立ち上がってやっつけちゃいな…さ……?」

 

俯きのまま見上げれば、囲まれている。

 

「あ…あら……?もしかして、私の洗脳魔法…解けちゃったの?」

 

全員が頷く。

 

「え…ええと…その!もしかして、こんな状態の私を総攻撃とかしちゃうわけ!?」

 

全員が頷く。

 

「待って待って~!お願いだから許して~!私は他の夜魔と違うか弱いサキュバスなのよ~!」

 

洪水の嘘涙を流しつつ、全員にもう一度マリンカリンを放とうと企む小賢しさ。

 

尚紀とナオミは溜息をつき、お互いに振り向く。

 

「この情けない女悪魔、どうしちゃおうかしら?」

 

「そうだな~…俺は許しても構わないと思うぜ?」

 

「それ、本気で言ってるわけ?」

 

「勿論。だけどよぉ……こいつらが許すかな?」

 

前に進み出てきたのは、鬼の形相となったクーフーリンとセイテンタイセイ。

 

「貴様ら…よくも騎士道に反する恥ずべき行為を私にさせてきたな!」

 

「胸糞悪い研究ばかりを繰り返してきた上で、俺様達をコケにした。覚悟は出来てるよな?」

 

恐怖で固まったままのサキュバスだが、近づいてくる魔力に向けてゆっくり振り向いていく。

 

「終ワッタヨウダナ。ソノ上デ…ヨクゾコイツヲ残シテクレタモノダ」

 

現れたのは、尚紀に頼まれた仕事を終えてきたケルベロス。

 

弄ばれた者達が放つ怒りのオーラと、仕返し出来る喜びに満ちた邪悪な顔つき。

 

<<イヤ~~~~ンッッ!!!!>>

 

死ぬまで蹴り飛ばされていくサキュバスには目もくれず、尚紀とナオミは周囲を見回す。

 

「しかしまぁ…派手にやっちまったな。これで俺も立派なテロリストってわけだ」

 

瓦礫に塗れた光景を見つめつつ、後頭部を掻く姿。

 

落した召喚管を拾ってきたナオミも口を開く。

 

「地上の病院はただの偽装。本体はきっと…この地下にあるわ」

 

「だろうな。俺が目星をつけていた倉庫まで破壊されてる…あそこに何かあるはずだ」

 

「行ってみましょう」

 

仲魔達に振り向けば、情けない死に方をした女悪魔の体が弾け、MAGを放つ光が広がっている。

 

「行くぞ、お前ら。この下に何かがあるのは分かっている」

 

「その通りだ。この病院地下には広大な研究所が存在している。我らはそこで過ごしてきた」

 

「イルミナティとか言ってたか?そいつらと関わる施設のようだ。それ以上は知らねーな」

 

「興味もなかったからな。しかし、今は違うぞ」

 

「ああ…俺様達をコケにした組織なら興味は大有りだ。どうやって始末してやろうかをな」

 

「フッ…そう言ってくれると思ってた。俺もイルミナティとは因縁がある間柄だ」

 

「なら、俺様達はテメェについて行くさ、尚紀。かつての世界と同じくな」

 

「フフッ、またお前の仲魔として共に戦えることを嬉しく思うぞ、尚紀」

 

「俺もだ。これからも宜しくな、クーフーリン、セイテンタイセイ、ケルベロス」

 

かつてのボルテクス界で死線を潜り抜けてきた仲魔達が頷き合い、互いに誓う。

 

イルミナティへの報復を皆が決意していった。

 

────────────────────────────────

 

「なんだっ!!?」

 

突然の大地震。

 

病院敷地内に亀裂が入っていき、岩盤ごとひび割れていく。

 

「この強大な魔力は…一体!?」

 

「まさか…あれが這い出してこようとしてやがるのかよ!?」

 

「あれって何だよ!?」

 

「直ぐに分かるだろうが…とにかく離れろ!巻き込まれる!!」

 

「待て!この下には俺とナオミよりも先に入り込んだ救出人員がいるんだよ!」

 

「構っている余裕は無いわ!あの子達を信じましょう!!」

 

皆が山を駆け下りるかのようにして走る。

 

病院敷地内の地面を砕いて飛び出してくるのは、巨大な黒き触手。

 

焼け果てた森からも飛び出していき、地響きがさらに巨大化していく。

 

「一体何が地底から這い出してくる…!?杏子…頼むから無事でいてくれ!!」

 

病院ゲートを飛び越えていき、安全圏まで移動。

 

ようやく後ろを振り向けば…。

 

「あれは…悪魔なのか?」

 

「そうだ…。あれこそが、あのおぞましい研究所で育てられてきた狂気の赤子」

 

「魔法少女共のマガツヒを喰らい続けてきた悪魔…マニトゥだ」

 

病院があった場所では、代わりに屹立する存在。

 

<<ソウル…!!ソウル…!!グォォーーーッッ!!!>>

 

囚われの鎖から解放されたのは、ソウルを死ぬまで喰らうことしか頭にない異形の悪魔。

 

無尽蔵に吸い続けたMAG供給が止まり、狂い飢えた咆哮。

 

その体は内側から弾けるように分割され、内側の触手で無理やり繋ぎ合わせる痛々しい姿。

 

この存在こそが、新たなる世界を生む母に捧げられし生贄の一体。

 

インディアンに伝わる超自然的な力として表される神。

 

大霊マニトゥのおぞましき御姿であった。

 




これでようやく人修羅パーティの一軍メンツが揃いましたね。
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