人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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165話 再会

地上で避難誘導が始まった頃。

 

地下研究所内では激戦が繰り広げられていく。

 

セキュリティ区画を発見したが、守りを固められているようだ。

 

戦闘マシン達が道を塞ぎ、銃弾の雨をばら撒き続ける。

 

「チッ!通路が狭くて回り込めないじゃないか!」

 

「地の利を使ってくるわけね…トロイ連中も使いようってことでしょうね」

 

角に隠れて銃撃をやり過ごすが、前進出来ないままの状態が続く。

 

「このままでは不味いわ。ここで足止めされたままでは後続部隊が来て挟撃されると思う」

 

「巴の派手なマギア魔法を一発ぶち込むってのは?」

 

「ここは地底なのよ?連中が爆発物を装備しないのには理由があるはずよ」

 

「生き埋めにされたら魔法少女でも困るよ。ゴリラな小巻の発想は貧弱だね~」

 

「うっさい!なら、選択肢は前に出るしかないってことじゃない!」

 

「そういうこと。だからこそ、小巻がいてくれて大助かりさ」

 

「アレをやれって訳ね。冴えてるじゃない、呉」

 

ポールアックスに魔力を込めて構える。

 

斧と一体化している盾が形を変えるようにして消えていく。

 

「あの盾…あんな能力があっただなんて」

 

角から向こう側を見れば、バリケードを築いていたマシン達が結界に閉じ込められている。

 

発射され続ける銃弾は結界に阻まれ、向こう側には届かない。

 

「盾ごと粉々にしてやるわ!!」

 

角から飛び出した小巻が駆ける。

 

ポールアックスを振りかぶり跳躍。

 

次々と四脚型マシンが真っ二つとなっていく。

 

「よし!流石は荒々しいゴリラ!誰もゴリラを止める事は出来ない!」

 

「ちょっと呉さん…?それ聞こえてたら頭をかち割られるわよ……」

 

小巻が切り開いた道を駆け進む。

 

奥に見えた両開きの扉がスライドし、セキュリティルームに入り込む魔法少女達。

 

「ここが…この研究所を統括する場所なの?」

 

無数のモニターと管理制御端末、スーパーコンピュータで埋め尽くされた広大な空間。

 

「…よくここまで来れたな」

 

セキュリティ部署の所長が座る席が回転し、後ろ側に振り向く男。

 

「あんたが…ここのボスね!!」

 

「如何にも。私がこの研究所の所長を務める代表者だよ」

 

3人の魔法少女達が武器を構える。

 

「織莉子を返してもらうよ!」

 

「他の魔法少女達も解放しなさい!!」

 

「フッ…威勢がいい魔法少女の姿を見るのは久しいな。ここでは絶望した者しか見なかったよ」

 

「どうして魔法少女達を狙ってきたの!?目的はソウルジェムなの!?」

 

「その通り。我々にはソウルジェムが必要だ…負の感情エネルギーを莫大に生み出せる魂がね」

 

「その為に…どれだけの魔法少女を殺害してきたというのさ!!」

 

「君達はそんな事を気にするのかね?今まで食べてきたパンの枚数など、いちいち気にするか?」

 

「私たち魔法少女なんて…お前達にとっては食料品でしかないって言いたいの!」

 

「無論だ。感情エネルギー、食肉、研究材料…あらゆる為に魔法少女は役だってくれたよ」

 

「食…肉…?研究材料ですって!?」

 

「研究区画には立ち寄らなかっただろう?あそこでは人類の未来を担う研究が成されてきた」

 

「貴方達は何者なの!?未来を担う研究ですって!?」

 

邪悪な笑みを浮かべた所長が立ち上がる。

 

「我々はイルミナティを操る黒の貴族達の祖先。エグリゴリの堕天使と呼ばれる者達」

 

「イルミナティ…?黒の貴族…?エグリゴリの堕天使…?」

 

「イルミナティぐらいは聞いた事ないか?出していい情報程度なら都市伝説番組でやらせてるが」

 

「そう言えばそんな番組を見たことがあった気がする。世界を代表する秘密結社だと言ってたわ」

 

「彼らは国際金融資本家であり司令塔は13血統と呼ばれる。システムとなり世界を操る一族だ」

 

「国際金融資本家が世界を操る?大統領の方が偉いに決まってるだろ!」

 

「フッ、お子様らしい意見だな。国の代表など、何の決定権も無い世界構造を知らないと見える」

 

「あんた達は…世界を裏から操る秘密結社共のお親玉だと言いたいの!」

 

「彼らは悪魔を崇める悪魔崇拝者達。祖である我らエグリゴリの堕天使を崇拝する者達だ」

 

「これだけの研究施設を秘密裏に運営出来る…もしかして、この国の政府も協力者だと言うの?」

 

「巴マミ君だったか?聡明な推察だ。世界各国は表の政府の影には、裏の政府が存在する」

 

「裏の政府ですって…?」

 

「ディープステートと呼ばれる国家内国家だ。世界中の政府は、影の政府で操られているのだ」

 

「そんな胡散臭い話…信じろって言うの!?」

 

「おかしいとは思わなかったか?政治家共が聞こえの良い政策を言っても、()()()()()()()

 

「そ、それは……」

 

「いつだって裏切られてきた筈だ。彼らに決定権などない、国際金融資本家が国の政策を決める」

 

「仮に…貴方の言ってる事が全て事実だとしたら…私たちが敵にしているのは…」

 

「無論、この国の政府となるディープステート。そして米軍、国連軍さえ敵に回すことになる」

 

衝撃の発言。

 

目の前の存在から語られた、あまりにも現実離れした圧倒的巨大組織。

 

いくら魔法少女が魔法を使える存在であったとしても、相手は世界を牛耳る存在。

 

国でさえ歯向かえずに従うしか道が無い程の敵を相手にしてしまったのだ。

 

「君達は友人を救いに来たのだろうが…好奇心は猫をも殺す。もう()()()()()()()()

 

あまりにも巨大過ぎる敵組織を前にして、震えあがっていく者達。

 

「君達だけの問題では済まない。家族、友人、親族…あらゆる存在が我々の獲物となるだろう」

 

「私達の大切な人達にまで手を出すつもりなの!?」

 

「聡明な君が想像できなかったのか?我々に立てつくなら、家族友人も犠牲にされると?」

 

「まるで…マフィア共じゃない!!家族は関係ないわ…私達だけを狙いなさいよ!!」

 

「断る。君達はそれだけの事をしてくれた。全員皆殺しにされなければならない」

 

「魔獣なんて…比べ物にならない…!!こんな悪意の塊共は初めてだ!!」

 

指を鳴らす音が響く。

 

セキュリティルームの無数のモニターに映っていくのは、素性がバレたマミ達の素顔。

 

「君達の情報は既に世界中に届いている。地球の裏側に逃げようとも追い詰めて殺せる」

 

「あ…あぁ……」

 

「絶望したまえ。これからの君達は、平和な日常など訪れない」

 

3人のソウルジェムが絶望を示す穢れを生み出していく。

 

しかし、マニトゥのキャリアにMAGを喰われていき輝きを取り戻す。

 

ここでは絶望死して人生から逃げ出す自由すら与えられない。

 

「どうだね?いつ暗殺されるか分からない恐怖に苛まれて生きるより、ここで生贄にならんか?」

 

項垂れたまま震えていたが、決断する一撃が放たれる。

 

「…これが答えか?」

 

片腕を持ち上げて放ったマスケット銃の銃弾は、所長の右手の指に挟み取られている。

 

「美国さん…さぞ怖かった筈よ。あまりにも巨大過ぎる敵を相手にしていたのですもの…」

 

「織莉子の苦しみが…ようやく分かった。私も背負うよ…織莉子だけには背負わせない!!」

 

「小糸には悪いけど…私は自分が決めたことは必ずやる女なの!腹を括ってあげるわ!!」

 

「貴方を倒して…美国さんを返してもらう!!逃げ場が無いなら受けて立つわ!!」

 

覚悟を示した者達を見て、邪悪な笑い声を発する所長の姿。

 

「クク…素晴らしい覚悟だ!そんな君達の魂が、どんな絶望に染まっていくのか味わいたい!!」

 

両手を広げながら構える。

 

所長の全身から禍々しい光が放たれていく。

 

周囲の景色も歪んでいき、悪魔結界である異界に飲み込まれていく。

 

「これが…エグリゴリの堕天使なの……?」

 

3人が立つ異界の光景とは、研究所の戦闘実験区画を模した異界。

 

眼前に立つのは、深碧(しんぺき)のマントを靡かせる巨大な豹人間。

 

【オセ】

 

ソロモン王に封印された72柱の魔神の一柱であり、豹総裁と呼ばれる。

 

地獄の30個軍団を指揮する序列第57位の地獄の大総裁を務める豹の姿をした存在。

 

人を望む姿に変える力があると言われ、幻覚を見せたり発狂させたりも出来るという。

 

狂暴なので、呪文によって従属させないと食い殺される恐ろしき存在であった。

 

「貴様らの代わりなど見つかる。恐れを知らぬ少女の魂…我が喰らってくれる!!」

 

背中に背負う形で装備していた巨大な剣を抜く。

 

二刀流を構えるのは、15mはあろうかという巨大な悪魔。

 

「行くわよ、みんな!!」

 

「ここで死ぬつもりは無い!!織莉子と再会するまで死ねるものか!!」

 

「大型の魔獣ぐらいのデカさで粋がらないことね!真っ二つにしてやる!!」

 

3人の魔法少女達の戦いが始まっていく。

 

これで終わりではない。

 

彼女達はこれより、イルミナティとディープステートから追われる立場となるだろう。

 

終わりの無い恐怖と、いつ誰が襲われるか分からない苦痛と絶望との戦いが始まる。

 

それでも彼女達は選んだのだ。

 

悪には屈さないという…誇り高き生き様を。

 

────────────────────────────────

 

鳴り響く剣戟の音。

 

弾き合う金属が火花を散らす。

 

「ヤァァーーッッ!!」

 

二刀流で果敢に攻め抜くさやかに対し、クルースニクは剣戟を弾き続ける。

 

斬り結ぶ刃を鍔で止め、後ろに流し込む。

 

「ハァァーーーッッ!!」

 

続く杏子の連続突きを上半身を翻して避け、態勢を回転させる払い斬り。

 

後ろから迫るさやかの逆袈裟斬りを弾き、左拳で顔面を殴りつけてくる。

 

「ぐっ!?」

 

大きく弾き飛ばされながらも、左剣を構えて引き金を引く。

 

射出された刀身を避けるが、本命は次にある。

 

横向きで回転しながら迫りくるのは、投げられた右剣。

 

鈍化した世界。

 

迫りくる刃を避けると同時にフックガードに左指を入れ込み、回転を利用した逆投擲。

 

「チッ!!」

 

杏子に向けて投げられた剣だが、袈裟斬りで弾き落とす防御。

 

「こいつ…魔法で洗脳されてる筈なのに…!!」

 

「そうだね…狂ってる筈なのに…ここまでやれるなんて!」

 

伝説のヴァンパイアハンターの実力は、狂ってなお強力だと2人は痛感する表情。

 

「Grrrrrrrr!!!!」

 

左手を掲げ、魔力を込める。

 

放たれた魔法とは炎魔法であるマハラギオン。

 

「あたしが防ぐ!!」

 

槍を両手で掲げ、編み込み結界を前方空間に敷く。

 

「くっ…!!なんて威力だよ!!」

 

悪魔の魔法攻撃を受けたのは初めてであり、その威力に驚愕した表情。

 

「ぐあぁぁーーーッッ!!」

 

結界防御でも防ぎきれず、威力の一部が砕かれた結界を超えて2人を襲う。

 

杏子は倒れ込むが、常時発動する回復魔法で全身を常に回復しているさやかが前に出る。

 

「いい加減目を覚ましなさいよ!!」

 

焼けた肌が直ぐに回復したさやかが斬りかかる。

 

受け止めると同時に左手で手首を掴み捩じり上げる。

 

「ぐふっ!!」

 

腕を捩じられて俯けになった胴体に蹴りを浴び、続く回し蹴りが左側頭部を強打。

 

弾き飛ばされたさやかの体がガラスに叩きつけられ、背中がズタズタとなっていく。

 

倒れ込む彼女だが、その目に浮かぶ戦意は些かの曇りもない。

 

「まだ…まだぁ……!」

 

背中のマントはガラスで切り裂かれ、赤く出血していく。

 

だが、背中に円を描く複数の楽譜が展開され傷を癒しながら立ち上がる力を示す。

 

「どいてろさやかぁ!!」

 

声がした方に振り向けば、迫りくる鎖の鞭。

 

変形機構を持つ杏子の槍が展開され、多節鞭の如く迫りくる。

 

後方に向け側方宙返りを行い一撃を回避。

 

蛇の如く迫りくる槍の鞭を次々と斬り払い、鎖部分を唐竹割りで断ち切って見せた。

 

「うらぁーーッッ!!」

 

跳躍から仕掛ける袈裟斬り。

 

右切上げで受け止めるが、新たに生み出した槍で迫る杏子に視線を向ける。

 

受け止める刃を下に向けるように流し、払い込む。

 

逆袈裟斬りの角度で迫る槍の刃を左切り上げで受け止め、そのまま払い抜ける。

 

さやかと杏子から繰り出される剣戟の嵐に対し、舞うように立ち回り斬り払い続ける悪魔の剣技。

 

避けると同時に唐竹割りで袈裟斬りを弾き落とし、柄頭で右目を打つ。

 

「ぐっ!?」

 

右目が潰れたが、尚も袈裟斬りを果敢に放つ。

 

刃を受け止め鍔迫り合いとなった瞬間だった。

 

「あたしが合わせる!!」

 

飛び込んできた杏子の一撃が、鍔迫り合ったさやかの刀身に打ち込まれる。

 

刃と刃を通して光り輝いたのは、コネクト魔法。

 

攻撃力が上がったさやかの斬撃が押し込まれる。

 

「グゥッッ!!?」

 

左肩まで刃が押し込まれて食い込み、白いトレンチコートが出血していく。

 

「ガッ…アァ……アァァァァーーーッッ!!!」

 

鍔迫り合いから右側面に回り込むと同時に右肘打ちをさやかの頭部に放つ。

 

「あぁ!!」

 

続く杏子の袈裟斬りを片手で持つ剣で受け流し、強烈な回し蹴り。

 

「がっ!!?」

 

壁に激突し、大きく砕け散る。

 

飛び込んで逆袈裟斬りを狙うさやかに対し、後ろ蹴りが槍の如く突き刺さった。

 

反対側の壁に叩きつけられ、壁が大きく砕けて倒れ込む。

 

「グゥ…ウゥ……!!」

 

大きく跳躍して離れるクルースニク。

 

起き上がったさやかは杏子の元までふらつきながら歩き、肩に手を貸す。

 

コネクト魔法が光り、杏子の傷が回復の楽譜効果で癒されていく。

 

「魔力を気にせず戦えるのは良いが…ここまで技量の差があるのはキツイぜ…」

 

「それでも負けられない…!ここで殺されていった魔法少女達のためにも!!」

 

怒りに燃えるさやかの心。

 

円環のコトワリの使者として、救済を邪魔する存在に向ける怒りなのか?

 

それとも、1人の人間としての感情なのかは分からない。

 

「グッ…ワタシ…ジャ…マ…スル…ナ……」

 

さやかから受けた傷の痛みによって、封じられた自我の兆しが表れ始める。

 

しかし受けた洗脳魔法は重く、専用の回復道具か状態異常回復魔法が無ければ完治しない。

 

錯乱したままのクルースニクに見える光景。

 

それは…二体のヴァンパイアに襲われているような幻覚の世界。

 

左手を前に掲げる。

 

「これは……」

 

さやかと杏子の周りに出現したのは、破魔の光。

 

破魔を司る光の書物の紙が周囲を舞い、2人を包み込んでいく。

 

その光景を見た時、杏子の脳裏に巡ったのは封印された記憶。

 

「この魔法は…!?」

 

魔人との戦いの記憶の一部が蘇り、一瞬で状況判断。

 

「うわっ!?」

 

さやかを抱え込み大きく後方に向けて跳躍回避。

 

悪しき存在を纏めて浄化の光で消滅させる『マハンマオン』の一撃をギリギリで避け切った。

 

「あぶねぇ…危うく即死するところだった…」

 

「杏子…あの魔法の効果を知ってたの?」

 

「いや…覚えてるようでいて…上手く思い出せない。それより、片目は治ったか?」

 

「バッチリ!」

 

潰れた片目のまぶたを開けば、自動回復魔法によって復元しているさやかの目。

 

その光景を見たクルースニクは判断する。

 

あの魔法少女を滅ぼすには、生半可な一撃では足りないと。

 

右手に持つ剣を地面に突き立てる。

 

「あいつ…今度は何をする気だ!?」

 

左手を前に向け、握り込む。

 

左手から光りの魔力が噴き上がり、出現したのは光の弓。

 

寝かせて構える光弓の弦に右手を添え、引き絞っていく。

 

「この膨大な魔力…アレを受けたら不味いよ!!」

 

射掛けるようにして出現したのは、金色の弓矢。

 

クルースニクにとっては必殺の一撃となる『天扇弓』を放つのだ。

 

距離が離れすぎたため、いくら突進力のある2人でも斬り込む前に放たれる。

 

「やめてよ!!あんたは正義のヴァンパイアハンターでしょ!?戦う相手を間違えないで!」

 

「ダマ…レ…!ノロ…ワレ…シ…吸血鬼共メ…!!」

 

「何勘違いしてやがる!?あたし達は吸血鬼なんかじゃねぇよ!!」

 

「あたし達を殺したって使命は果たせない!それに、あんたは最悪な連中の手助けをしてる!」

 

「グッ…ワタ…シ…ハ……狩人…ダ!ソレ以上デモ…以下デモ…ナイ!!」

 

「お願いだから目を覚まして!正義の味方同士が殺し合うなんて…間違ってるよ!!」

 

精神に覆いかぶさる洗脳の力に逆らおうとし、苦悶の表情を浮かべていく。

 

光の弓矢が消え、両膝が崩れて蹲り苦しみだす。

 

「あんたは狩人なんでしょ!?なら、何のために狩りをしてきたのかを思い出して!!」

 

「私…ガ…狩リヲ…シテキタ…理由…ハ……」

 

微かに蘇っていく記憶。

 

それは、数多の並行宇宙において終わりなき戦いを繰り返していった記憶。

 

邪悪な吸血鬼であるクドラクによって、罪もない人間達が犠牲になってきた光景。

 

その光景に憤り、刃を振るってきたのは間違いなく善なる心。

 

「てめぇは何者なのか言ってみろよ!まだ誇りが残っているのなら!!」

 

「あたしには分かる!あんたも…あたし達と同じ正義のために戦う者だって!」

 

2人の説得の言葉に耐え切れず、両手で頭部を掴み苦しみ悶える姿。

 

「ウォォーーーーーッッ!!!!」

 

精神を支配してきた洗脳の壁を今、超える。

 

闇の膜を切り裂けたのは、善なるヴァンパイアハンターとしての誇りの刃。

 

だが、精神操作魔法に抵抗するために全力を尽くした反動によって意識が朦朧としていく。

 

倒れ込んだクルースニクの口元から、微かな言葉が聞こえてくるのだ。

 

「わた…し…は…クルースニク…。闇の…悪魔と…戦う……者……」

 

そう言い残し、彼の意識は途絶えて気絶してしまった。

 

「へっ…説得なんてガラじゃなかったけど、やってみるもんだな」

 

「正義の心が支配の鎖を断ち切れたんだよ…。この人はもう大丈夫だと思う」

 

「急ぐぞ、さやか。マミ達の援護に向かおうぜ!」

 

「うんっ!!」

 

2人は回廊の道を駆け抜けていく。

 

彼女達が相手にしようとしているのは、エグリゴリの堕天使。

 

今まで戦ってきた魔獣や魔法少女など比べ物にならない力を発揮するだろう。

 

それでも戦うしかないのだ。

 

囚われた魔法少女達を救い出し、ここで行われてきた地獄を終わらせるために。

 

────────────────────────────────

 

その頃、オセの異界に囚われてしまった魔法少女達の戦いは続く。

 

奮戦する魔法少女達であったのだが…。

 

「うっ…うぅ……私の盾を…両断出来るなんて…」

 

地面に倒れ込む姿をした小巻。

 

地面から出現させた巨大な盾は真一文字に切り裂かれ、半分欠けている。

 

「物理攻撃も…魔法攻撃も…反射出来る魔法…。これが悪魔の魔法なのね……」

 

壁に激突してめり込んだ姿のマミ。

 

地面に倒れ込み、それでも立ち上がろうとしていく痛々しい姿。

 

「速度低下魔法効果を…解除する魔法が使えるなんて…反則だよ……」

 

俯けに倒れ込んだ姿をしたキリカ。

 

重ねるようにして並んだ赤黒い鎌は切断されていた。

 

満身創痍の彼女達の元へと歩み寄ってくる巨体。

 

「どうした、魔法少女共?我の体に傷一つつける力すらなかったか?」

 

両手に持たれた巨大な二刀流の剣を振りかざし、放つ一撃。

 

<<アァァーーーッッ!!!>>

 

回転する薙ぎ払いを行うと同時に放たれた衝撃波。

 

人修羅が用いてきた物理魔法とも言えるだろうヒートウエーブの一撃。

 

衝撃波に弾かれた魔法少女達が全員壁にぶつかり、壁が大きく砕け散る。

 

地面に倒れ込んでいく魔法少女達。

 

力の差はあまりにも開き過ぎていた。

 

<何か…方法は無いの…?あいつの反射魔法に対抗出来る方法は…?>

 

念話を送る小巻に対し、マミが返事を返す。

 

<一瞬だけ現れるシールドのような光が見えたわ…。あれに反射されたんだと思う…>

 

<私達のマギア魔法を反射出来るぐらいなら…攻撃が通る魔法なんてもうないよ…私達…>

 

絶体絶命の窮地に立たされた魔法少女達の元に迫りくる堕天使の巨体。

 

「これがエグリゴリの堕天使だ。神や悪魔の真似が出来る程度の魔法少女が勝てる相手ではない」

 

「く…そぉ…!!織莉子を前にして…殺されるだなんて…!」

 

「絶望するがいい、魔法少女。ここでは絶望しか許されん…そして、絶望死すら許されんぞ」

 

「魔力は際限なく使えるのに…こんなことって…!」

 

「何度でも試してみるがいい。汝らの体が保つならばな」

 

余裕の挑発。

 

だが、それに反応を示したのはふらつきながらも立ち上がる意思を示す小巻。

 

「上等じゃない…何度でも試してやるわ」

 

「ダメよ浅古さん!攻撃を反射され続けられたらダメージに耐えられない!!」

 

「それでも…やるのよ」

 

「気は確かか小巻!?白女でスポーツばかりしてたから頭が弱くなったのかい!」

 

「ゲームばかりしてる呉ほど弱くはないわよ。それに、ゲーマーなら…私の狙いが分からない?」

 

「えっ……?」

 

「あんな魔法…そう何度も使える筈が無いわ」

 

「小巻…もしかして、相手のMP切れを狙って…」

 

ポールアックスを振りかぶり、決意を示す表情を浮かべる。

 

「呉…巴…私が必ずこいつの魔力を削り取ってみせる。だから…後はお願いね」

 

意を決し、相手に決死の突撃を仕掛けようとした時だった。

 

<<その役目、あたしが引き受ける!!>>

 

異界の中に入り込んできた存在に目を向ける。

 

放たれた矢の如く迫りくるのは、美樹さやか。

 

青い曲線を描くが如く迫りくる相手に対し、オセは剣を持つ両手を交差させる。

 

「無駄だ」

 

前進に張り巡らせたのは、物理反射魔法であるテトラカーン。

 

「くっ!!」

 

さやかの一撃は反射され弾き飛ばされる。

 

「あたしを忘れてもらっちゃ困るぜーッッ!!」

 

上空から飛び込んできたのは、悪魔に与える鉄槌の如き杏子の槍。

 

「チッ!」

 

振り向きながら剣を振り上げる。

 

迫りくる巨大な右切上げと鉄槌の如き槍が打ち合う。

 

「ぐあぁぁーーーッッ!!」

 

圧倒的な力の差で弾き飛ばされ、壁に大きくぶつかる杏子の姿。

 

「見えた…今の?」

 

「ええ…私にもハッキリ見えたわ…呉さん」

 

「あの反射魔法…攻撃を反射したら効果が消えるんだ!」

 

「だとしたら、休む間もなく攻撃を与え続ければいいわ!」

 

3人の元まで跳躍移動してきたのは、全身に円形楽譜の自動回復魔法を使うさやか。

 

「癒し系魔法少女のさやかちゃんが来たからには、もう大丈夫!」

 

地面に剣を突き立てる。

 

楽譜で描かれる魔法陣が出現し、傷ついた3人の体を癒していく。

 

さやかが得意とする回復魔法である癒しの調べだ。

 

「あいつが反射魔法を使ったら、あたしが攻撃する!ここでは回復魔法を無尽蔵に使えるから!」

 

「頼りになるじゃん…あんた」

 

「本当だよ…杏子から聞いていたイメージだと、考えなしに突進するイノシシ娘だったけど」

 

「うっ……後で杏子は説教だよ!」

 

「どうしてそうなる!?」

 

士気を取り戻した見滝原魔法少女達が武器を構えていく。

 

だが、彼女達の狙いが何なのかを理解しているオセは笑い始めるのだ。

 

「ククク…!実に子供らしい浅はかな希望だ」

 

両腕を交差させ、魔法を行使する。

 

「なに…あの魔法は?」

 

「そういえば…私達と戦っていた時にも、何度かあの光を見たわ」

 

緑に輝く光を纏い、再び剣を構えてくる姿。

 

「我が魔法しか能がない悪魔だと思い込んでいるようなら…思い知らせてくれるわ」

 

オセが踏み込み、斬撃を放つ。

 

両手から繰り出される唐竹割りの一撃が大地を砕く。

 

横っ飛びで回避した魔法少女達。

 

着地と同時に小巻が仕掛ける。

 

「タフさなら私も負けないよ!美樹!!」

 

互いに攻撃を仕掛け、傷ついたら回復しようという算段。

 

ポールアックスの刃が迫りくるが、オセの体が揺れる。

 

「えっ……?」

 

一瞬で背後の空間に回り込まれる。

 

「ガッ…!!?」

 

剣の石突が小巻の背中にクリーンヒット。

 

地面に倒れ込む彼女を援護するかのように周囲の魔法少女達も攻撃を仕掛け続ける。

 

「ヴァンパイアファング!!」

 

三日月鎌が重なった巨大な一撃。

 

オセの体が揺れ、背後から狙いを定めていた杏子の元まで移動している。

 

「ぐあぁぁーーーッッ!!?」

 

槍の投擲の構えをしていた杏子の背後から蹴りが迫り、大きく蹴り飛ばされていく。

 

「レガーレ・ヴァスターリア!!」

 

右手を翳すマミの拘束魔法。

 

読んでいたのか、大きく跳躍して拘束リボンを避け切る軽やかさ。

 

巨体にあるまじき程の軽やかさをもって、魔法少女達の猛攻を次々と避けては反撃を放つ。

 

「ま、まさか…さっきまで使っていたあの光の正体は!!」

 

「気づくのが遅すぎる!最大限まで高まった我がスピード…とくと味わえ!!」

 

速度に関する魔法が使えるキリカだからこそ理解出来た。

 

オセが行使していたのは、悪魔の補助魔法の一つであるスクカジャ。

 

スピードを上げることにより、回避力を上げ、命中率を上げる効果をもたらす。

 

「くっ!!」

 

相手の上がったスピードを落とし込もうと、地面に手をついて速度低下魔法を放つ。

 

「無駄だ」

 

オセは魔法効果解除をもたらす『デクンダ』を用いて魔法効果を打ち消してしまう。

 

「なんて強さなのよ…これが悪魔の力なの!?」

 

「魔獣なんて…束になっても比べ物にならない!!」

 

かつての世界で戦ってきた魔女さえも上回るだろう強大な力…そして狂気。

 

この者達こそが、改変された世界で戦うことになっていくだろう悪魔達の力。

 

攻め手を無くしていく魔法少女達は、焦りの色が滲んでいく。

 

小手先の攻撃は避けられて反撃され、大技を狙えば反射魔法で自らの一撃が返される。

 

ボルテクス界で戦ったことがある人修羅でさえ、苦戦を強いられた程の悪魔なのだ。

 

「ソウルジェムを喰らう楽しみがなくなるかもしれん。頑張って生き残ってみせろ」

 

双剣を構え、一回転させる薙ぎ払い攻撃。

 

全体に放たれたヒートウェイブの衝撃波が迫りくる。

 

<<アァァァァーーーッッ!!!>>

 

全員が衝撃波に弾き飛ばされ、壁にぶつかり地面に倒れ込んでいく。

 

満身創痍となってしまった魔法少女達。

 

「まだ…やれる…!!」

 

体を回復させながら剣を地面に突き立て、立ち上がっていくさやか。

 

「みんなを…回復させないと……」

 

彼女を覆う巨体の影に気づいた時にはもう遅い。

 

「先に汝から頂くとするか」

 

右腕が振り上げられ、放たれる唐竹割りが迫りくる。

 

「あっ……」

 

剣を地面に突き立ててしまい、受け止められる姿勢ではない。

 

「さやかーーーッッ!!!」

 

杏子の叫びが木霊する。

 

大切な仲間が両断される光景に対し、全員が目を背けてしまう。

 

響き渡る剣の音。

 

「そんな……そんな……美樹さん…美樹さん!!!」

 

絶叫するマミだが、魔力を感じた彼女はさやかに視線を向けていく。

 

「き…貴様は!?」

 

響き渡った剣の音とは、剣と剣がぶつかり合う音。

 

「えっ……あ、あんた……?」

 

さやかの目の前に見えたのは、白いトレンチコートの背中に描かれた赤き蝙蝠。

 

表れた存在とは、片手で持つ剣でオセの一撃を止め切ったクルースニクの姿。

 

「フンッ!!」

 

剣戟を打ち払われたオセは跳躍し、後方に下がる。

 

「貴様……洗脳魔法を打ち破ったか」

 

目の前に立つクルースニクの瞳は、金色の瞳。

 

誇り高きヴァンパイアハンターの魂が宿った、力強き眼差し。

 

「よくも私を惑わしてくれたな……」

 

片膝を地面につく。

 

全身に浴びた巨大な剣の一撃が左肩の傷に響き、血が噴き出してコートを染めていく。

 

「あたしを…助けてくれるの?あんたの体に酷い傷をつけたのに…」

 

「…私もお前の片目を潰した。これでおあいこだな」

 

現れた強大な力を持つ悪魔ではあるが、傷は深い。

 

だが、それで攻め手を緩めてくれる堕天使などではないのだ。

 

「クルースニク…やはり貴様は手に余る。ここで始末してやろうではないか」

 

悪魔の物理攻撃力を上げる気合を行使。

 

「待ってて!あたしが傷を癒すから!!」

 

「そんな暇は無い!!いいか…私が奴の隙を作る。怯んだオセを一気に畳みかけろ!!」

 

オセが放つのは、最大威力となったヒートウェイブの一撃。

 

衝撃波が迫りくる中、クルースニクは左手を掲げていく。

 

「な、なにぃ!!?」

 

彼が行使した魔法とは、オセと同じ物理反射魔法。

 

「グォォーーーッッ!!!」

 

テトラカーンに反射された自らの強大な一撃がオセに降りかかり、壁に激突してめり込む姿。

 

「佐倉さん!!今がチャンスよ!!」

 

「合わせろマミ!!」

 

片手と片手を合わせ、コネクト魔法が発動。

 

「ティロ・デュエット!!」

 

マミのコネクトにより攻撃力が上がった杏子が槍を投擲する構え。

 

横のマミもリボンを放ち、巨大な大砲を生み出す構えを見せた。

 

「ティロ・フィナーレ!!」

 

「盟神抉槍(くがたち)!!」

 

壁にめり込んだオセが顔を上げれば、巨大なマギア魔法が迫りくる。

 

「し、しまったぁぁーーッッ!!!」

 

テトラカーンを張り巡らせる暇もなく、直撃を浴びる光景。

 

大爆発を起こして壁が一気に壊れる。

 

しかし、爆炎の中から飛び出したのは…怒りに我を忘れたオセの巨体。

 

「グォォーーーッッ!!!」

 

悪魔の本能のまま迫りくるが、既に他の魔法少女達は間合いにまで詰め寄っていた。

 

「まだまだ…こんなもんじゃないわよぉーーッッ!!!」

 

高速の突進でオセの懐に入り込んださやかの乱舞斬り。

 

「ヌォォーーーッッ!!?」

 

巨体が後ずさるが、追撃を仕掛けるのはキリカと小巻。

 

「合わせなさい呉!!」

 

「言わなくてもいいさ!君と私の仲だ!!」

 

振り上げられたポールアックスと、連なる赤黒い鎌がオセの両腕を切り落とす。

 

「ギャァァァーーーーーッッ!!!!」

 

絶叫して後ずさっていく相手に対し、迫りくるのはさやかのマギア魔法。

 

「こいつでトドメだぁーーッッ!!!」

 

楽譜を描く光を纏い、高速で迫る飛び込み突きとはスプラッシュ・スティンガーの一撃だ。

 

「ガッ……!!!!」

 

オセの頭部に深く突き刺さるさやかの剣。

 

巨体がぐらつき、ついにオセの体が倒れ込む。

 

「ば…か…な……?我が…エグリゴリの…堕天使が…魔法少女…如き…に……?」

 

オセの胸元辺りで立つさやかは相手に対し、右手で指差しをしながら叫ぶのだ。

 

「あたし達魔法少女を玩具にして弄んだみんなの無念…キッチリ叩き込んであげたからね!!」

 

魔法少女を生き地獄へと突き落とし、恐怖の人体実験を繰り返してきた者に対する制裁の言葉。

 

その言葉は、円環のコトワリの使者として叫んだものなのか。

 

あるいは、今を生きる1人の魔法少女として叫んだのかは…分からない。

 

「図に…乗る…な…魔法少女共…。これから…始まるのだ…」

 

オセの巨体が光り輝き、MAGを放出していく。

 

「この…世界は…魔界と…化す…。世界に…与え…る…サード…インパクトが…始まる…」

 

「魔界…?サードインパクトですって…?あんた達、何を企んできたのさ!!」

 

「フフッ…貴様らにはもう…退路はない…。それでも…地獄の道を…切り開きたい…なら…」

 

――()()を…目指すと…いい。

 

そう言い残し、オセの体は弾けてMAGの光を放出していった。

 

飛び退いて着地したさやかの元まで走ってくる仲間達。

 

「やったじゃねーかさやか!!」

 

杏子に片腕を首に回されて笑顔を向けられるのだが、彼女の表情は暗い。

 

「浮かない顔ね?何か言われたのかしら…?」

 

「…ううん、何でもない。今は説明している時間もないし」

 

周囲の景色が戻っていく。

 

異界結界が解け、セキュリティルームに戻った一同が周囲を見回していく。

 

「あれが怪しそうね」

 

小巻が視線を向けたのは、セキュリティルームに設置された巨大なスーパーコンピュータ。

 

「小巻さん、後はお願い出来る?あたしは…傷をつけちゃった人を回復してあげないと」

 

「そうしてあげなさい。あの悪魔が来てくれなかったら…私達は全員死んでたわ」

 

ポールアックスを担ぎ、スーパーコンピュータの前まで歩いていく。

 

コントロールシステムの前に立った時、大画面モニターに映し出された存在に視線を向けた。

 

「キンキュウジタイ、システム、サドウカイシ」

 

現れたのは、この研究所を統括するAIである警備システム。

 

「タダチニ、シンニュウシャヲ、ハイジョ……」

 

「五月蠅い!!!」

 

振り上げた斧の一撃が大画面モニターを両断する。

 

「あたしは機械音痴なのよ!システムとか何だの言われたって訳分からないから!!」

 

指差しながら怒鳴り散らす小巻の姿を見ながら、皆は苦笑い。

 

「キリカ…あいつの面倒を見るのは大変だろうな」

 

「うん…小巻は超がつくほど短気だし、おまけに筋金入りの機械音痴だからねぇ」

 

「でも、友達思いの優しい子よ。浅古さんのような友達がいてくれて嬉しいわ」

 

微笑みながら、セキュリティルーム内のスーパーコンピュータを破壊していく者に目を向ける。

 

セキュリティAIによって区画管理されていたシステムがダウンしていく。

 

「これで良し!あとは織莉子を救出するために独房区画に向かうだけさ!」

 

「私が案内する」

 

声がした方に振り向けば、さやかと共に歩いてくるのはクルースニクだ。

 

「操られていたとはいえ、ここの構造なら把握している。ついて来い」

 

「私達に協力してくれるんですか……?」

 

「…この悪夢のような地獄で生贄になった者達のためにも、私は君達に手を貸そう」

 

セキュリティルームから出て行く彼の背中に続いていく。

 

火花が飛び散るセキュリティルーム。

 

研究所内の全てのシステムがダウンし、独房区画の電子ロックも解除されたようだ。

 

…だが、それによって地の底に繋がれていた者までも解放されることになるのだ。

 

マニトゥを収めていた空間では、システムダウンによりMAG供給が止まる光景。

 

<<ヒハ…ハハハ…ソウル…ソウ…ル……ソウ……ル…?>>

 

体に繋がれたLANケーブルから流れ込むMAGが止まり、空間内の光が消えてしまう。

 

<<アガッ…ガッ…アァ…アァァ……アァァァァーーーッッ!!!!>>

 

狂気の雄叫びが地底の底で噴き上がる。

 

<<AAAAAAAAAARRRRRRRRRTTTTTTTTHHHHH!!!!!>>

 

暴れ狂い、力任せに次々と鎖を千切っていく。

 

体の内側から伸び出た黒き触手も暴れ狂い、壁を貫いていく。

 

魔法少女達から提供される授乳と言えるMAG供給を止められた狂気の赤子が暴れ狂うのだ。

 

両手を壁につけ、400m近い巨体が上を目指していく。

 

地獄の底で続けられてきた魔法少女の苦しみは、救出に来た魔法少女の活躍で終わるだろう。

 

だからこそマニトゥは求めるのだ。

 

この悪魔にとっての、最後の食事を。

 

────────────────────────────────

 

「みんな!!早く逃げなさい!!!」

 

声を張り上げるのは、ソウルジェムを取り戻して変身した姿の織莉子。

 

独房管理ルームから出てくるのは、囚われていた魔法少女達。

 

警備員達に集団で襲い掛かり、収納ボックスに収められていたソウルジェムを取り戻すのだ。

 

織莉子の号令の元、研究所から脱走を始めていく。

 

「ソウルジェムがまだ一つ残っている…?誰か独房に残っているというの?」

 

残されたソウルジェムを持ち、彼女は走る。

 

一つ一つの独房を確認していくと、寝台の上で蹲った姿をした少女を見つけた。

 

「独房の扉は開いてるのよ!どうして逃げ出さないの!」

 

彼女の大声にも反応を示さないのは、生きる気力を奪われてしまった魔法少女。

 

愛する父を殺されてしまった里見那由他の姿だ。

 

「ほっといてくださいですの…」

 

「そんなことは出来ないわ!ここに残っていたら貴女は殺されてしまう!」

 

「別に良いですの…。生き残れたって…私にはもう何も残されてないですの」

 

「どういう意味なの…?」

 

「私のパパは…連中に殺されましたの。それに…ラビさんの魔力も感じませんですの」

 

「貴女のお父様が殺されただなんて…。それに、ラビさんというのは?」

 

「私と同じく、ここに囚われていた魔法少女ですの。だけど、魔力を感じられないのは…」

 

それは容易に想像出来るため、織莉子は顔を俯けてしまう。

 

「私はもう…生きていたくないですの。ここで死んだ方が……」

 

生きる事に絶望した哀れな少女。

 

その姿を自分の姿と重ねずにはいられない。

 

織莉子もまた、愛する父親をイルミナティの傀儡であるディープステートに殺された少女だ。

 

彼女の両肩に手を置き、真剣な眼差しを向ける。

 

「…それでも、生きなさい」

 

「どうして……ですの?」

 

「私がそうしているからよ。私もね…貴女と同じ立場なのよ……」

 

「もしかして……貴女もパパを……?」

 

「お父様は…連中に嵌められて汚職議員にされた。私は…そんな父にトドメを刺した罪人よ」

 

「どうしてですの…?そこまで辛い立場なのに…どうして生きようとするのですの?」

 

肩から手を離し、信念を宿す胸に片手を置く。

 

「お父様の無念を…晴らしたいからよ」

 

「パパの無念を晴らすために…ラビさんの無念を晴らすために…生きる…?」

 

「私は生きることを止めないわ。たとえどれだけの責め苦を負わされても…戦い続けてみせる」

 

「強い人ですの…。私は…貴女みたいには……」

 

「貴女には貴女の人生がある。生き抜くことこそ、貴女のお父様が望むことだと…私は思うわ」

 

スカートのポケットから那由他のソウルジェムを取り出して手渡す。

 

「私は美国織莉子。貴女の名前は?」

 

「里見那由他ですの…。織莉子さん、私…貴女のように強くなりたいですの…」

 

「出来るわ…きっと。お父様への愛を貫く気持ちがある限り…」

 

「パパ…パパ……グスッ…うぇぇぇぇぇ~~……ッッ!!!」

 

織莉子の胸に抱き着き、泣きじゃくる悲しき少女。

 

両手で力強く抱きしめ、彼女の苦しみを共に分かち合う。

 

だが、そんな彼女達に襲い掛かろうとする邪悪な大霊が迫りくるのだ。

 

「なにっ!!?」

 

突然の大地震。

 

研究所内が激しく振動し、明かりが明滅を繰り返す。

 

<<警告、マニトゥ格納区画で異常を確認>>

 

「マニトゥですって…?」

 

<<緊急事態コードを承認。研究区画を放棄せよ。職員はただちに避難用プラットフォームへ>>

 

「な……何ですの!?この…地の底から感じさせる、あまりにも巨大な魔力は!?」

 

「貴女も魔法少女に変身しなさい!急いで!!」

 

「は、はいですの!!」

 

ソウルジェムを構え、那由他も変身。

 

中華風のドレスを纏う女帝のような姿となり、芭蕉線(ばしょうせん)と似た武器を生み出す。

 

2人が独房から飛び出して来た時、遠くの方から叫び声が木霊する。

 

「何が…起きているの……?」

 

逃亡していく魔法少女達だったが、研究所を破壊しながら飛び出す黒き触手に襲われていく。

 

<<キャァァーーーーッッ!!!>>

 

次々と触手に取り込まれていく魔法少女達。

 

ソウルジェムどころか、肉体さえも喰らいつくす飽くなきソウルへの渇望。

 

「ヒィーーーッッ!!!!」

 

研究所から逃げ出そうとする職員達にも襲い掛かり、肉と魂を貪りつくす。

 

その光景はまさに最後の晩餐だった。

 

「こっちに来て!!」

 

織莉子に手を引かれながら那由他も走って行く。

 

「何処に逃げるというのですの!?」

 

「仲間達の魔力が近づいてくるのよ!」

 

「もしかして…助けが来てくれたのですの!?」

 

「その子達と合流してここから脱出しましょう!」

 

「は…はい!!」

 

独房区画を目指すクルースニクと魔法少女達も走り続ける。

 

クルースニクに担がれているのは、リボンで拘束された姿をしたマッドサイエンティスト。

 

「は、放せーーッッ!!私は研究者だ!!暴力反対!!」

 

「喧しいわね!ここで魔法少女をいたぶってきた屑のくせに!!」

 

「殺されないだけ有り難く思うんだね。刻みたいぐらいだけど、脱出場所まで案内してもらう!」

 

「くぅ~~!!科学が魔法に負けるなんて~!!くやしい~~ッッ!!!」

 

「うるせーぞ糞野郎!!」

 

杏子の槍の平たい部分でどつかれ、黙り込んだようだ。

 

「この魔力は…感じるわ!美国さんが近づいてきている!!」

 

「流石は織莉子さんだ!あたし達と合流して脱出しようというんだね!」

 

「あぁ……織莉子との感動の再会!救出に来た王子様としての私が今直ぐ行くよ!!」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!なんか…近くに別の魔法少女の魔力も感じるわよ?」

 

「ええっ!?織莉子…もしかして、私という者がいながら…違う魔法少女を選んだのかい!?」

 

「落ち着きなさい呉さん!今はそんなことを考えてる暇は無いわ!!」

 

「あぁ…恩人…私の心は散り果てて…走る気力がなくなっていく…」

 

「あたしの槍でケツをしばけば、走る気になるか?」

 

「私の斧でしばいてやってもいいわよ、呉?」

 

「やめてくれないか!そんな武器でお尻を叩かれたらパンツが履けないぐらいに腫れちゃうよ!」

 

緊張感が抜けきった一同を横目で見ながら、眼前に視線を移す。

 

「どうやら、合流出来そうだな」

 

奥の通路から走ってきたのは織莉子と那由他。

 

「キリカ!!小巻さん!!」

 

「織莉子ぉぉーーッッ!!!」

 

突然元気を出したキリカが走り、織莉子に抱き着く。

 

「会いたかったァァーーッ!!会いたかったよ織莉子ッッ!!」

 

泣くほど嬉しいのか、彼女の胸の中でワンワン泣きじゃくるキリカの姿。

 

「全く…このバカ!あんたバカでしょ!!私達がいなかったらどうなってたのよ…このバカ!」

 

「小巻さん…本当にごめんなさい。それに皆にも心配をかけさせて…」

 

「大体そんな景気悪い顔してるから絡まれるのよ!バカじゃないの!ほんとバカ!!」

 

(一生分のバカを言われている気がするわ…)

 

怒りながらも、小巻の目にも涙が浮かんでいく。

 

キリカと小巻は彼女の仲間として、ずっと織莉子の身を案じて探し続けてくれた親友達。

 

そんな彼女達の優しさと、再会の喜び。

 

織莉子の目にも薄っすら涙が滲んでいった。

 

「貴女は…囚われていた魔法少女ですか?」

 

マミが那由他に近寄る。

 

俯いたままであるが、それでも希望に縋るように顔を上げて口を開いてくれる。

 

「はい…ですの。私は里見那由他と申しますの…」

 

「巴マミよ。自己紹介を済ませる暇は…無さそうね」

 

彼女達が視線を向ける先。

 

遠くの通路を突き破りながら迫りくるのは、マニトゥの触手が群れとかして迫りくる光景だ。

 

「早く行け!!私がしんがりを務めてやろう!!」

 

光りの弓矢を出現させ、天扇弓を放つ。

 

一発の光の矢が分裂し、次々と触手の群れを破壊していく。

 

それでも次々と生み出される膨大な触手の群れに対応し続ける事は不可能だろう。

 

<<警告。証拠隠滅のため、自己破壊モードが作動>>

 

<<研究所は放棄されます。職員は速やかにプラットフォームに移動して下さい>>

 

マッドサイエンティストの誘導に従い、中央エレベーターを目指す。

 

「こ…ここから脱出用のプラットフォームに下りられる!」

 

「嘘じゃねーだろうな?嘘だったら!!」

 

「信じてくれ!!こんな場所に長居したら…私まで死んでしまう!!」

 

「命欲しさの情報なら、信用してもいいんじゃないの?」

 

「チッ、生き残れてもタダじゃおかねーからな、オッサン!!」

 

巨大な中央エレベーターからプラットフォーム区画へと移動。

 

辿り着いた場所とは、地下鉄を思わせる空間だった。

 

「ここは資材搬入路としても使われるが…緊急時には脱出用の車両基地としても運用される!」

 

「あれがそうなのかしら…?」

 

ホーム内を見れば、資材運搬用車両が見える。

 

「オラッ!オッサンが運転しろよ!!」

 

「キィーッッ!!大人をこき使うガキは嫌いだーーっ!!」

 

車両に乗り込み、マッドサイエンティストが操縦を行う。

 

資材を詰め込む車両に飛び移るが、中央エレベーター方面から迫りくる存在に目を向ける。

 

「急いで!!もう直ぐそこまで来てる!!!」

 

列車が動き出し、暗い地下鉄線路を猛スピードで走行していく。

 

後方からは物凄い数の黒き触手たちが獲物を逃がすまいと迫りくるおぞましい光景。

 

「いい加減しつこいのよ!去っていくレディの背中を追いかけるのは止めなさいよね!!」

 

最後の一撃としてマミが放つ極大魔法。

 

列車の後部車両の上に生み出されたのは、巨大な列車砲。

 

「あなた達に蹂躙されてきた魔法少女達の怒りを込めるわ!ボンバルダメント!!」

 

轟音と共に放たれたのは、巨大な榴弾。

 

洪水の如く迫りくる触手の群れに着弾し、大爆発を起こす。

 

「おいおい…不味いぞ!!」

 

マミの一撃によってトンネルが崩壊していく。

 

迫りくる触手をせき止められたのは良いのだが…このままでは生き埋めだ。

 

「もっと飛ばしなさいよ!!」

 

「やっとるわい!!死んだら化けて出てやる!!!」

 

猛スピードで地上へと駆けあがっていく車両。

 

光りが見えてきたのは、使われなくなった廃線路から見える夜の光。

 

「間に合えーーーッッ!!!」

 

偽装された廃トンネルから車両が飛び出すと同時に、トンネルが崩れ落ちる。

 

「ダメだぁ!!こんなスピードでは曲がり切れん!!!」

 

緩やかに曲がった線路であろうが、これ程のスピードが出れば遠心力も増すだろう。

 

<<ギャァァァーーーーーッッ!!!?>>

 

車両から飛び出す魔法少女達と、マッドサイエンティストを抱えたクルースニク。

 

車両は横倒しに倒れ込み、どうにか危機を脱出出来たようだ。

 

「ここは…何処なのかなぁ?」

 

「随分と遠くまで来ちゃったわね…。もしかして、見滝原の隣町かしら?」

 

「だとしたら…尚紀達と直ぐに合流するのは難しそうだな」

 

遠くに見える夜空を見上げる魔法少女達。

 

赤く燃え広がるのは、証拠隠滅のために研究所が自爆した事によって生み出された火災光景。

 

彼女達の顔には冷たい汗が滲んでいく。

 

遠くからでも感じる巨大な魔力。

 

屹立した巨大な大霊の影。

 

これから始まっていくのは、魔法少女では太刀打ち出来ない戦いの領域。

 

神々の領域の戦いへと進んで行くのであった。

 




完全にバイオハザード展開でした(汗)
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