人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
地上で避難誘導が始まった頃、地下研究所内では激戦が繰り広げられていく。
セキュリティ区画を発見したが守りを固められており、戦闘マシンが銃弾をばら撒いてくる。
「チッ!通路が狭くて回り込めないじゃないか!」
「地の利を使ってくるわけね…トロイ連中も使いようってことでしょうね」
角に隠れて銃撃をやり過ごすが前進出来ないままの状態が続く。
「このままでは不味いわ。ここで足止めされたままでは後続部隊が来て挟撃されると思う」
「巴の派手なマギア魔法を一発ぶち込むってのは?」
「ここは地底なのよ?連中が爆発物を装備しないのには理由があるはずよ」
「生き埋めにされたら魔法少女でも困るよ。ゴリラな小巻の発想は貧弱だね~」
「うっさい!なら、選択肢は前に出るしかないってことじゃない!」
「そういうこと。だからこそ、小巻がいてくれて大助かりさ」
「アレをやれって訳ね?冴えてるじゃない」
小巻はポールアックスに魔力を込めて構える。
斧と一体化している盾が形を変えるようにして消えていく。
「あの盾…あんな能力があっただなんて…」
角から向こう側を見ればバリケードを築いているマシン達が結界に閉じ込められている。
発射され続ける銃弾は結界に阻まれて向こう側には届かない。
「盾ごと粉々にしてやるわ!!」
角から飛び出した小巻が駆けぬけていき、ポールアックスを振りかぶって跳躍する。
次々と四脚型マシンが真っ二つとなっていきながら道が切り開かれたようだ。
「よし!流石は荒々しいゴリラ!誰もゴリラを止める事は出来ない!」
「ちょっと呉さん…?それ聞こえてたら頭をかち割られるわよ……」
切り開いた道を駆けていき、両開きの扉がスライドするとセキュリティルームが見える。
「ここが…この研究所を統括する場所なの?」
無数のモニターと管理制御端末、スーパーコンピュータで埋め尽くされた広大な空間であろう。
「…よくここまで来れたな」
セキュリティ部署の所長が座る席が回転し、後ろ側に振り向く男が現れる。
「あんたがここのボスね!!」
「如何にも。私がこの研究所の所長を務める代表者だよ」
「織莉子を返してもらうよ!」
「他の魔法少女達も解放しなさい!!」
「フッ…威勢がいい魔法少女の姿を見るのは久しいな。ここでは絶望した者しか見なかったよ」
「どうして魔法少女達を狙ってきたの!?目的はソウルジェムなの!?」
「その通り。我々にはソウルジェムが必要だ…負の感情エネルギーを莫大に生み出せる魂がね」
「その為に…どれだけの魔法少女を殺害してきたというのさ!!」
「君達はそんな事を気にするのかね?今まで食べてきたパンの枚数など気にするのか?」
「魔法少女なんて…お前達にとっては食料品でしかないって言いたいの!」
「その通り。感情エネルギー、食肉、研究材料…あらゆる為に魔法少女は役だってくれたよ」
「食肉…?研究材料ですって!?」
「研究区画には立ち寄らなかっただろう?あそこでは人類の未来を担う研究が成されてきた」
「貴方達は何者なの!?未来を担う研究とは何なの!?」
邪悪な笑みを浮かべた所長が席を立ち上がりながら自分達の存在を伝えてくれる。
「我々はイルミナティを操る黒の貴族達の祖先。エグリゴリの堕天使と呼ばれる者達だ」
「イルミナティ…?黒の貴族…?エグリゴリの堕天使…?」
「イルミナティぐらいは聞いた事ないか?出していい情報なら都市伝説番組でやらせてるがね」
「そう言えばそんな番組を見た事があった気がする…世界を代表する秘密結社だと言ってたわ」
「彼らは国際金融資本家であり司令塔は13血統と呼ばれる。羅針盤となり世界を操る一族だ」
「国際金融資本家が世界を操る?大統領の方が偉いに決まってるだろ!」
「お子様らしい意見だな。
「あんた達は…世界を裏から操る秘密結社共のお親玉だと言いたいの!」
「彼らは悪魔を崇める悪魔崇拝者達。祖である我らエグリゴリの堕天使を崇拝する者達だ」
「これだけの研究施設を秘密裏に運営出来る…もしかしてこの国の政府も協力者だと言うの?」
「巴マミ君だったか?聡明な推察だ。世界各国は表の政府の影には裏の政府が存在する」
「裏の政府ですって…?」
「ディープステートと呼ばれる国家内国家だ。世界中の政府は影の政府で操られているのだ」
「そんな胡散臭い話…信じろって言うの!?」
「おかしいとは思わなかったか?政治家共が聞こえのいい政策を言っても、
「そ、それは……」
「いつだって裏切られてきたはず。彼らに決定権はない、国際金融資本家が国の政策を決める」
「仮に貴方の言ってる事が全て事実だとしたら…私達が敵にしているのは…」
「無論、日本政府となるディープステート。そして米軍、国連軍さえ敵に回すことになるね」
衝撃の発言を聞かされた魔法少女達の顔が真っ青になっていく。
語られた話はあまりにも現実離れしており、圧倒的な巨大組織を前にして力が入らなくなる。
いくら魔法少女が魔法を使える存在であったとしても、相手は世界を牛耳る巨大組織。
国でさえ歯向かえずに従うしか道が無い程の敵を相手にしてしまったのだ。
「君達は友人を救いに来たのだろうが…好奇心は猫をも殺す。もう日常には帰れんよ」
あまりにも巨大過ぎる敵組織を前にして震え上がっていく者達にたいしてこう宣言してくる。
「君達だけの問題では済まない。家族、友人、親族…あらゆる存在が我々の獲物となるだろう」
「私達の大切な人達にまで手を出すつもりなの!?」
「聡明な君が想像できなかったのか?我々に立てつくなら、家族や友人も犠牲にされると?」
「まるでマフィア共じゃない!!家族は関係ないわ…私達だけを狙いなさいよ!!」
「断る、君達はそれだけの事をしてくれた。全員皆殺しにされなければならない」
「魔獣なんて比べ物にならない!!こんな悪意の塊共は初めてだ!!」
指を鳴らす音が響くと無数のモニターに映っていくのは素性がバレたマミ達の素顔である。
「君達の情報は既に世界中に届いている。地球の裏側に逃げようとも追い詰めて殺せる」
「あ…あぁ……」
「絶望したまえ。これからの君達は平和な日常など訪れない」
3人のソウルジェムが絶望を示す穢れを生み出していく。
しかしマニトゥのキャリアにMAGを喰われていきながら輝きを取り戻す。
ここでは絶望死して人生から逃げ出す自由すら与えられない。
「どうだ?いつ暗殺されるか分からない恐怖に苛まれて生きるより、ここで生贄にならんか?」
項垂れたまま震えていたが、決断する一撃が放たれる。
「…これが答えか?」
片腕を持ち上げて放ったマスケット銃の銃弾は所長の右手の指に挟み取られている。
「美国さん…さぞ怖かったはずよ。あまりにも巨大過ぎる敵を相手にしていたのですもの…」
「織莉子の苦しみが…ようやく分かった。私も背負うよ…織莉子だけには背負わせない!!」
「小糸には悪いけど…私は自分が決めた事は必ずやる女なの…腹を括ってあげるわ!!」
「貴方を倒して美国さんを返してもらう!!逃げ場が無いなら受けて立つわ!!」
覚悟を示した魔法少女達を見ながら邪悪な笑い声を発する所長はこう告げてくる。
「素晴らしい覚悟だ!そんな君達の魂が、どんな絶望に染まっていくのかを味わいたい!!」
両手を広げながら構えると所長の全身から禍々しい光が放たれていく。
周囲の景色も歪んでいき、悪魔結界である異界に飲み込まれてしまう。
「これが…エグリゴリの堕天使なの…?」
3人が立つ異界の光景とは研究所の戦闘実験区画を模した異界。
眼前に立つのは
【オセ】
ソロモン王に封印された72柱の魔神の一柱であり、豹総裁と呼ばれる。
地獄の30個軍団を指揮する序列第57位の地獄の大総裁を務める豹の姿をした存在。
人を望む姿に変える力があると言われ、幻覚を見せたり発狂させたりも出来るという。
狂暴なので呪文によって従属させないと食い殺される恐ろしき存在であった。
「貴様らの代わりなど見つかる。恐れを知らぬ少女の魂…我が喰らってくれる!!」
背中に背負う形で装備していた巨大な剣を抜く。
二刀流を構えるのは15mはあろうかという巨大な悪魔であり、彼女達に仕掛けてくる。
「行くわよ、みんな!!」
「ここで死ぬつもりは無い!!織莉子と再会するまで死ねるものか!!」
「大型の魔獣ぐらいのデカさで粋がらないことね!真っ二つにしてやる!!」
3人の魔法少女達の戦いが始まっていくのだが、これで終わりではない。
彼女達はこれよりイルミナティとディープステートから追われる立場となるだろう。
終わりの無い恐怖と、いつ誰が襲われるか分からない苦痛と絶望との戦いが始まる。
それでも彼女達は悪には屈さないという誇り高き生き様を選んでくれるのであった。
♦
鳴り響く剣戟の音、そして弾き合う金属が火花を散らす。
「ヤァァーーッッ!!」
二刀流で果敢に攻め抜くさやかに対してクルースニクは剣戟を弾き続ける。
斬り結ぶ刃を鍔で止め、後ろに流し込む。
「ハァァーーーッッ!!」
続く杏子の連続突きを上半身を翻して避け、体勢を回転させながら払い斬りを行う。
後ろから迫るさやかの逆袈裟斬りを弾き、左の拳で顔面を殴りつけてくる。
「ぐっ!?」
大きく弾き飛ばされながらも左手の剣を構えて引き金を引く。
射出された刀身を避けるが、本命は次にある。
横向きで回転しながら迫りくるのは投げられた右手の剣。
迫りくる刃を避けると同時にフックガードに左指を入れ込み、回転を利用した逆投擲を行う。
「チッ!!」
杏子に目掛けて投げられたさやかの剣は袈裟斬りで弾き落とされる。
「こいつ…魔法で洗脳されてるはずなのに…!!」
「そうだね…狂ってるはずなのに…ここまでやれるなんて…!」
伝説のヴァンパイアハンターの実力は狂ってなお強力だと2人は痛感している。
「Grrrrrrrr!!」
左手を掲げて魔力を込めながら放たれた魔法は炎魔法であるマハラギオンである。
「あたしが防ぐ!!」
槍を両手で掲げながら編み込み結界を前方空間に敷く。
「くっ…!!なんて威力だよ!!」
悪魔の魔法攻撃を浴びたのは初めてであり、その威力に驚愕した表情を杏子は浮かべてしまう。
「ぐあぁぁーーーっ!!」
結界防御でも防ぎきれず、威力の一部が砕かれた結界を超えてさやか達を襲う。
杏子は倒れ込むが、常時発動する回復魔法で全身を回復しているさやかが前に出る。
「いい加減目を覚ましなさいよ!!」
焼けた肌が直ぐに回復したさやかが斬りかかる中、クルースニクは迎え撃つ。
刃を受け止めると同時に左手で手首を掴みとって捩じり上げる。
「ぐふっ!!」
腕を捩じられて俯けになった胴体に蹴りを浴び、続く回し蹴りが左側頭部を強打する。
弾き飛ばされたさやかの体がガラスに叩きつけられた事で背中がズタズタとなっていく。
倒れ込む彼女だが、その目に浮かぶ戦意は些かの曇りもない。
「まだ…まだぁ…!!」
背中のマントはガラスで切り裂かれて赤く出血している。
背中に円を描く複数の楽譜が展開された事で傷を癒しながら立ち上がる気力を示す。
「どいてろ、さやかぁ!!」
声がした方に振り向けば迫りくる鎖の鞭が飛んでくる。
変形機構を持つ槍が展開されて多節鞭の如く迫る中、後方に側方宙返りを行いながら回避する。
蛇の如く迫りくる槍の鞭を次々と斬り払い、鎖部分を唐竹割りで断ち切ってしまう。
「うらぁぁぁぁーーっ!!」
跳躍から仕掛けるさやかの袈裟斬りを右切り上げで受け止める。
新たに生み出した槍で迫る杏子に対し、受け止める刃を下に向けるように流し込んで払い込む。
逆袈裟斬りの角度で迫る槍の刃を左切り上げで受け止め、そのまま払い抜ける。
さやかと杏子から繰り出される剣戟の嵐に対して舞うように立ち回り、斬り払い続ける。
避けると同時に唐竹割りでさやかの袈裟斬りを弾き落とし、柄頭で彼女の右目を打つ。
「ぐっ!?」
右目が潰れたが袈裟斬りを果敢に放ち、刃を受け止められて鍔迫り合いとなった瞬間だった。
「あたしが合わせる!!」
飛び込んできた杏子の一撃が鍔迫り合ったさやかの刀身に打ち込まれる。
刃と刃を通して光り輝いたのはコネクト魔法であり、攻撃力が上がった斬撃が押し込まれる。
「グゥ!!?」
左肩まで刃が押し込まれて食い込み、白いトレンチコートが出血していく。
「ガッ…アァ…アァァァァーーーッッ!!!」
鍔迫り合いから右側面に回り込むと同時に右肘打ちをさやかの側頭部に放って弾き飛ばす。
「あぁぁぁぁーーっ!!」
続く杏子の袈裟斬りを片手で持つ剣で受け流した後、強烈な回し蹴りをお見舞いする。
「がっ!!?」
壁に激突して大きく砕け散る中、弾き飛ばされたさやかも攻め込む。
飛び込んで逆袈裟斬りを狙うさやかに対し、後ろ蹴りが槍の如く突き刺さってしまう。
反対側の壁に叩きつけられ、壁が大きく砕けて倒れ込むのだ。
「グゥ…ウゥ…!!」
跳躍して離れるクルースニクに対し、起き上がったさやかは杏子の元までふらつきながら歩く。
肩に手を貸すとコネクト魔法が光り、杏子の傷が回復の楽譜効果で癒されていく。
「魔力を気にせず戦えるのはいいが…ここまで技量の差があるのはキツイぜ…」
「それでも負けられない…!ここで殺されていった魔法少女達のためにも!!」
「グッ…ワタシ…ジャ…マ…スル…ナ……」
さやかから受けた傷の痛みによって封じられた自我の兆しが表れ始める。
しかし洗脳魔法は重く、専用の回復道具か状態異常回復魔法が無ければ完治しない。
錯乱したままのクルースニクに見えるのは二体の吸血鬼に襲われているような幻覚の世界。
左手を前に掲げるとさやかと杏子の周りに出現したのは破魔の光。
「これは何なの…?」
破魔を司る光の書物の紙が周囲を舞いながら2人を包み込んでいく。
その光景を見た瞬間、杏子の脳裏に巡ったのは封印された記憶。
「この魔法は…!?」
魔人との戦いの記憶の一部が蘇った事で状況判断してくれる。
「うわっ!?」
さやかを抱え込んだ杏子は後方に跳躍回避する。
悪しき存在を浄化の光で纏めて消滅させる『マハンマオン』の一撃をギリギリで避けたようだ。
「あぶねぇ…危うく即死するところだった…」
「杏子…あの魔法の効果を知ってたの?」
「いや…覚えてるようでいて…上手く思い出せない。それより、片目は治ったか?」
「バッチリ!」
潰れた片目を開けば自動回復魔法によって復元再生している。
その光景を見たクルースニクは生半可な一撃では足りないと感じた事で地面に剣を突き立てる。
「あいつ…今度は何をする気だ!?」
左手を前に向けながら握り込むと光りの魔力が噴き上がり、出現したのは光の弓。
横に構える光弓の弦に右手を添えながら引き絞り、射掛けるようにして出現したのは金色の矢。
「この膨大な魔力…アレを浴びたら不味いよ!!」
クルースニクにとっては必殺の一撃となる『天扇弓』を放とうとしている。
距離が離れ過ぎたため、いくら突進力のある2人でも斬り込む前に放たれるだろう。
「やめてよ!!あんたは正義のヴァンパイアハンターでしょ!?戦う相手を間違えないで!」
「ダマ…レ…!ノロ…ワレ…シ…吸血鬼共メ…!!」
「何を勘違いしてやがる!?あたし達は吸血鬼なんかじゃねーよ!!」
「あたし達を殺したって使命は果たせない!それに、あんたは最悪な連中の手助けをしてる!」
「グッ…ワタ…シ…ハ…狩人…ダ!!ソレ以上デモ…以下デモ…ナイ!!」
「お願いだから目を覚まして!正義の味方同士が殺し合うなんて…間違ってるよ!!」
精神に覆い被さる洗脳の力に逆らおうとした事で苦悶の表情を浮かべていく。
光の弓矢が消えて両膝が崩れ落ち、蹲りながら苦しみだす。
「あんたは狩人なんでしょ!?なら、何のために狩りをしてきたのかを思い出して!!」
「私…ガ…狩リヲ…シテキタ…理由ハ……」
微かに蘇っていく記憶こそ数多の並行宇宙において終わりなき戦いを繰り返していった記憶。
邪悪な吸血鬼であるクドラクによって罪もない人間達が犠牲になってきた光景が蘇る。
その光景に憤り、刃を振るってきたのは間違いなく善なる心なのだ。
「テメェは何者なのかを言ってみろよ!まだ誇りが残っているのならな!!」
「あたしには分かる!あんたもあたし達と同じく、正義のために戦う者だって!」
2人の説得の言葉に耐え切れず、両手で頭部を掴みながら苦しみ悶える。
「ウォォォォォーーッッ!!!」
精神を支配してきた洗脳の壁を乗り超えてくれる。
闇の膜を切り裂けたのは善なるヴァンパイアハンターとしての誇りの刃であろう。
だが精神操作魔法に抵抗するために全力を尽くした反動によって意識が朦朧としていく。
倒れ込んだクルースニクの口元から微かな言葉が聞こえてくる。
「わた…し…は…クルースニク…。闇の…悪魔と…戦う……者……」
そう言い残した後、彼の意識は途絶えて気絶してしまったようだ。
「へっ…説得なんてガラじゃなかったけど、やってみるもんだな」
「正義の心が支配の鎖を断ち切れたんだよ…この人はもう大丈夫だと思う」
「急ぐぞ、さやか。マミ達の援護に向かおうぜ!」
「うん!!」
2人は回廊の道を駆けていくが、彼女達が相手にしようとしているのはエグリゴリの堕天使。
今まで戦ってきた魔獣や魔法少女など比べ物にならない力を発揮するだろう。
囚われた者達を救い出し、ここで行われた地獄を終わらせるために覚悟を決めるのであった。
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オセの異界に囚われてしまった魔法少女達の奮戦は続いているが戦力差は歴然であろう。
「うっ…うぅ…私の盾を…両断出来るなんて…」
地面に倒れ込む小巻の巨大な盾は真一文字に切り裂かれており、半分欠けている。
「物理攻撃も…魔法攻撃も…反射出来る魔法だなんて…これが…悪魔の魔法なのね……」
壁に激突してめり込んだマミは地面に倒れ込み、それでも必死に立ち上がろうとしていく。
「速度低下魔法効果を解除する魔法が使えるなんて…反則だよ……」
俯けに倒れ込んだキリカの連結された赤黒い鎌は切断されている。
満身創痍の彼女達の元へと歩み寄ってくる巨大な悪魔がこう告げてくる。
「どうした、魔法少女共?我の体に傷一つつける力すらなかったか?」
両手に持たれた巨大な二刀流の剣を振りかざしながら放つ一撃が迫ってくる。
<<アァァァァァァァーーッッ!!!>>
回転する薙ぎ払いを行うと同時に放たれたのは衝撃波である。
人修羅が用いてきた物理魔法とも呼べるヒートウェイブの一撃が襲い掛かっていく。
衝撃波に弾かれた魔法少女達が全員壁にぶつかって大きく砕け散る。
地面に倒れ込んでいく魔法少女達は力の差があまりにも開き過ぎていると痛感しているだろう。
<何か…方法は無いの…?あいつの反射魔法に対抗出来る方法は…?>
<一瞬だけ現れるシールドのような光が見えたわ…あれに反射されたんだと思う…>
<私達のマギア魔法を反射出来るぐらいなら…攻撃が通る魔法なんて…もうないよ…>
絶体絶命の窮地に立たされた魔法少女達の元に迫りくる堕天使は虫けらに対してこう告げる。
「これがエグリゴリの堕天使だ。神や悪魔の真似をする程度の魔法少女が勝てる相手ではない」
「く…そぉ…!!織莉子を前にして…殺されるだなんて…」
「絶望するがいい、魔法少女共。ここでは絶望しか許されん…そして、絶望死すら許されんぞ」
「魔力は際限なく使えるのに…こんなことって…!」
「何度でも試してみるがいい。汝らの体が持つならばな」
余裕の挑発に反応を示したのは、ふらつきながらも立ち上がる小巻である。
「上等じゃない…何度でも試してやるわ…」
「ダメよ…浅古さん!攻撃を反射されるダメージを繰り返されたら…貴女でも耐えられない!」
「それでも…やるのよ…」
「気は確かか…小巻!?白女でスポーツばかりしてたから…頭が弱くなったのかい!?」
「ゲームばかりしてる呉ほど弱くはないわよ。それにゲーマーなら…私の狙いが分からない?」
「えっ…?」
「あんな魔法…そう何度も使えるはずが無いわ…」
「小巻…もしかして、相手のMP切れを狙って…」
ポールアックスを振りかぶりながら決意を示す表情を浮かべる小巻は仲間達に後を託す。
「呉…巴…私が必ずこいつの魔力を削り取ってみせる。だから…後はお願いね…」
意を決した彼女が決死の突撃を仕掛けようとした時だった。
<<その役目、あたしが引き受ける!!>>
異界の中に入り込んできた存在に目を向けると美樹さやかが飛び込んでくる。
青い曲線を描くように迫りくる相手に対し、オセは剣を持つ両手を交差させる。
「無駄だ」
全身に張り巡らせたのは物理反射魔法であるテトラカーンであり、さやかの一撃は弾かれる。
「あたしを忘れてもらっちゃ困るぜーっ!!」
上空から飛び込んできたのは悪魔に与える鉄槌の如き杏子の槍。
「チッ!!」
振り向きながら剣を振り上げ、迫りくる巨大な右切上げと槍が打ち合う。
「ぐあぁぁぁぁーーーっ!!」
圧倒的な力の差で弾き飛ばされた杏子もさやかと同じく壁にぶつかって激しく砕ける。
「見えた…今の?」
「ええ…私にもハッキリと見えたわ…呉さん」
「あの反射魔法…攻撃を反射したら効果が消えるんだ!」
「だとしたら、休む間もなく攻撃を与え続ければいいわ!」
3人の元まで跳躍移動してきたのは全身に円形楽譜の自動回復魔法を使うさやかである。
「癒し系魔法少女のさやかちゃんが来たからには、もう大丈夫!」
地面に剣を突き立てると楽譜で描かれる魔法陣が出現し、傷ついた3人の体を癒してくれる。
さやかが得意とする回復魔法である『癒しの調べ』で回復した者達が立ち上がってくれる。
「あいつが反射魔法を使ったら、あたしが攻撃する!ここでは回復魔法を無尽蔵に使えるよ!」
「頼りになるじゃん…あんたってさ」
「本当だよ…杏子から聞いていたイメージだと、考えなしに突進するイノシシ娘だったけどね」
「うっ…!?それは…その…後で杏子は説教だよ!!」
「どうしてそうなる!?」
士気を取り戻した見滝原魔法少女達が武器を一斉に構えていく。
彼女達の狙いが何なのかを理解しているオセは高らかに笑い始める。
「クックックッ…!!実に子供らしい浅はかな希望だな?」
オセは両腕を交差させて魔法を行使する。
「なに…あの魔法は?」
「そういえば…私達と戦っていた時にも何度かあの光を見たわね…」
緑に輝く光を纏いながら再び剣を構えてくる。
「我が魔法しか能がない悪魔だと思い込んでいるようなら…思い知らせてくれるわ」
オセが踏み込み、両手から繰り出される唐竹割りの一撃が大地を砕く。
横っ飛びで回避した魔法少女達は着地と同時に仕掛けていく。
「タフさなら私も負けないわよ!美樹!」
互いに攻撃を仕掛け、傷ついたら回復しようという算段で小巻は動く。
ポールアックスの刃が迫りくるがオセの体が揺れる。
「えっ…?」
一瞬で背後の空間に回り込まれると剣の石突が小巻の背中にクリーンヒットしてしまう。
「がっ…!!?」
地面に倒れ込む彼女を援護するかのように周囲の魔法少女達も攻撃を仕掛け続ける。
「ヴァンパイアファング!!」
三日月鎌が重なった一撃に対してオセが動き、背後から狙いを定めていた杏子の元に移動する。
「ぐあぁぁーーーっ!!?」
投擲の構えをしていた杏子の背後から蹴り足が迫り、大きく蹴り飛ばされてしまう。
「レガーレ・ヴァスターリア!!」
右手を持ち上げたマミの拘束魔法を読んでいたのか、跳躍して拘束を避ける。
巨体にあるまじき程の軽やかさをもって、魔法少女達の猛攻を次々と避けては反撃を放つ。
「ま、まさか…さっきまで使っていたあの光の正体は!!」
「気づくのが遅過ぎる!最大限まで高まった我がスピード…とくと味わえ!!」
速度に関する魔法が使えるキリカだからこそオセの行使した魔法を理解出来たのだろう。
オセが行使していたのは悪魔の補助魔法の一つであるスクカジャ。
スピードを上げる事によって回避力を上げ、命中率を上げる効果をもたらす。
「くっ!!」
相手の上がったスピードを落とし込もうと地面に手をついて速度低下魔法を放つ。
「無駄だ」
オセは魔法効果解除をもたらす『デクンダ』を用いて魔法効果を打ち消してしまう。
「なんて強さなのよ…これが悪魔の力なの!?」
「魔獣なんて…束になっても比べ物にならない!!」
かつての世界で戦ってきた魔女さえも上回る強大な力と狂気。
この者達こそが改変された世界で戦うことになっていくだろう悪魔達の力なのだ。
攻め手を無くしていく魔法少女達は焦りの色が滲んでいく。
小手先の攻撃は避けられて反撃され、大技を狙えば反射魔法で自らの一撃が返される。
ボルテクス界で戦った事がある人修羅でさえ苦戦を強いられた程の悪魔なのだ。
「ソウルジェムを喰らう楽しみがなくなるかもしれん。頑張って生き残ってみせろ」
双剣を構えながら一回転させる薙ぎ払い攻撃を放つ。
全体に放たれたヒートウェイブの衝撃波によって魔法少女達が飲み込まれていく。
<<アァァァァーーーッッ!!!>>
全員が衝撃波に弾き飛ばされた事で壁にぶつかり地面に倒れ込んでいく。
満身創痍となってしまった魔法少女達であるが、死ぬ覚悟で立ち上がる者がいる。
「まだ…やれる…!!」
さやかは体を回復させながら剣を地面に突き立てて立ち上がっていく。
「みんなを…回復させないと……」
彼女を覆う巨体の影に気が付いた時にはもう遅い。
「先に汝から頂くとするか」
右腕が振り上げられ、放たれる唐竹割りが迫りくる。
「あっ……」
剣を地面に突き立ててしまっている彼女は剣戟を受け止められる姿勢ではない。
「さやかぁぁぁぁーーっ!!!」
杏子の叫びが木霊する中、大切な仲間が両断される光景に対して全員が目を背けてしまう。
そして剣の音が響き渡る時、マミは絶叫してしまう。
「そんな…そんな…美樹さん…美樹さん!!」
絶叫するマミであったが、魔力を感じた彼女はさやかに顔を向けていく。
「き…貴様は!?」
響き渡った剣の音とは剣と剣がぶつかり合う音。
「えっ…?あ、あんた…?」
さやかの目の前に見えたのは白いトレンチコートの背中に描かれた赤き蝙蝠。
現れた存在とは片手で持つ剣でオセの一撃を受け止めたクルースニクの姿なのだ。
「フンッ!!」
剣戟を打ち払われたオセは跳躍して後方に下がる。
「貴様…洗脳魔法を打ち破ったか…」
目の前に立つクルースニクの瞳は金色の瞳。
誇り高きヴァンパイアハンターの魂が宿った力強き眼差しをしている。
「よくも私を惑わしてくれたな…」
オセの一撃を止めてくれたクルースニクであったが片膝を地面につく。
全身に浴びた巨大な剣の一撃が左肩の傷に響き、血が噴き出してコートを染めていく。
「あたしを…助けてくれるの?あんたの体に酷い傷をつけたのに…」
「…私もお前の片目を潰した。これでおあいこだな」
強大な力を持つ悪魔ではあるが傷は深く、手負いであろうと堕天使は容赦しないだろう。
「クルースニク…やはり貴様は手に余る。ここで始末してやろうではないか」
悪魔の物理攻撃力を上げる気合を行使してくる中、さやかが駆け寄ってくる。
「待ってて!あたしが傷を癒すから!」
「そんな暇は無い!!いいか…私が奴の隙を作る。怯んだオセを一気に畳みかけろ!!」
オセが放つのは最大威力となったヒートウェイブの一撃。
衝撃波が迫りくる中、クルースニクは左手を掲げる。
「な、なにぃ!!?」
彼が行使した魔法とはオセと同じ物理反射魔法であり、驚愕した顔を向けてくる。
「グォォォォォーーーッッ!!」
テトラカーンに反射された自らの強大な一撃がオセに降りかかり、壁に激突してめり込む。
「佐倉さん!!今がチャンスよ!!」
「合わせろよ、マミ!!」
片手と片手を合わせる彼女達のコネクト魔法が発動する。
「ティロ・デュエット!!」
マミのコネクトにより攻撃力が上がった杏子が槍を投擲する構えを行う。
横のマミもリボンを放ち、巨大な大砲を生み出す構えとなっていく。
「ティロ・フィナーレ!!」
「
壁にめり込んだオセが顔を上げれば巨大なマギア魔法が迫りくる。
「し、しまったぁぁーーっ!!」
テトラカーンを張り巡らせる暇もなく直撃を浴びて大爆発を起こし、壁が一気に壊れていく。
しかし爆炎の中から飛び出したのは怒りに我を忘れたオセの巨体なのだ。
「グォォォォォーーッッ!!」
悪魔の本能のまま迫りくるが他の魔法少女達は間合いにまで詰め寄っている。
「まだまだ…こんなもんじゃないわよぉーーっ!!」
高速の突進でオセの懐に入り込んださやかの乱舞斬りが炸裂する。
「ヌォォォォォーーッッ!!?」
巨体が後ずさるが、追撃を仕掛けるのはキリカと小巻である。
「合わせなさいよ、呉!!」
「言わなくてもいいさ、君と私の仲だ!!」
振り上げられたポールアックスと連なる赤黒い鎌がオセの両腕を切り落とす。
「ギャァァァァァァァァーーッッ!!!」
絶叫しながら後ずさっていく相手に対し、迫りくるのはさやかのマギア魔法である。
「こいつでトドメだぁーーっ!!」
楽譜を描く光を纏い、高速で迫る飛び込み突きとは『スプラッシュ・スティンガー』の一撃。
「ガッ……!!!」
オセの頭部に深く突き刺さるさやかの剣によって巨体がぐらつき、ついには倒れ込む。
「ば…か…な…?我が…エグリゴリの堕天使が…魔法少女…如き…に……?」
オセの胸元辺りで立つさやかは相手に対して右手で指差ししながらこう叫ぶ。
「あたし達魔法少女を玩具にして弄んだ皆の無念…キッチリ叩き込んであげたからね!!」
「図に…乗る…な…魔法少女共…これから…始まるのだ…」
オセの巨体が光り輝きながらMAGを放出していく。
「この世界は…魔界と化す…。世界に与える…サードインパクトが…始まる…」
「魔界…?サードインパクトですって…?あんた達は何を企んできたのさ!!」
「貴様らに…退路はない…それでも…地獄の道を…切り開きたい…なら…東京を…目指せ…」
そう言い残した後、オセの体は弾けてMAGの光を放出する最期を迎える。
飛び退いて着地したさやかの元まで走ってくる仲間達は笑顔のまま叫んでくる。
「やったじゃねーか、さやか!!」
片腕を首に回されて笑顔を向けられるのだが、さやかの表情は暗い。
「浮かない顔ね?何か言われたのかしら…?」
「…ううん、何でもない。今は説明している時間もないし」
周囲の景色が戻っていき、セキュリティルームに戻った一同が周囲を見回していく。
「あれが怪しそうね」
小巻が顔を向けたのはセキュリティルームに設置された巨大なスーパーコンピュータ群である。
「小巻さん、後はお願い出来る?あたしは…傷をつけちゃった人を回復してあげないとね…」
「そうしてあげなさい。あの悪魔が来てくれなかったら…私達は全員死んでたわ」
ポールアックスを担ぎながらスーパーコンピュータの前まで歩いていく。
コントロールシステムの前に立った時、大画面モニターに映し出された存在に顔を向ける。
「キンキュウジタイ、システム、サドウカイシ」
現れたのは研究所を統括するAIである警備システムであろう。
「タダチニ、シンニュウシャヲ、ハイジョ……」
「うるさい!!!」
振り上げた斧の一撃が大画面モニターを両断した後、激おこぷんぷん丸な小巻が叫んでくる。
「私は機械音痴なのよ!システムとか何だの言われたって、訳分からないから!!」
指差しながら怒鳴り散らす小巻の姿を見つめる仲間達は苦笑いしてくる。
「キリカ…あいつの面倒を見るのは大変だろうな」
「うん…小巻は超がつくほど短気だし、おまけに筋金入りの機械音痴だからねぇ」
「でも友達思いの優しい子よ。浅古さんのような友達がいてくれて嬉しいわ」
微笑みながらセキュリティルーム内のスーパーコンピュータを破壊していく者に目を向ける。
セキュリティAIによって区画管理されていたシステムがダウンしていく。
「これでよし!あとは織莉子を救出するために独房区画に向かうだけさ!」
「私が案内する」
声がした方に振り向けばさやかと共に歩いてくるのはクルースニクである。
「操られていたとはいえ、ここの構造なら把握している。ついて来い」
「私達に協力してくれるんですか…?」
「…この悪夢のような地獄で生贄となった者達のためにも、私は君達に手を貸そう」
セキュリティルームから出て行く者達の背後では火花が盛大に飛び散る残骸群が残される。
研究所内の全てのシステムがダウンし、独房区画の電子ロックも解除されたようだ。
しかし、それによって地の底に繋がれていた者までも解放される事になるだろう。
マニトゥを収めていた空間ではシステムダウンによってMAG供給が止まっている。
<<ヒハ…ハハハ…ソウル…ソウ…ル…ソウ…ル…?>>
体に繋がれたLANケーブルから流れ込むMAGが止まり、空間内の光が消えてしまう。
<<アガッ…ガッ…アァ…アァァ…アァァァァーーーッッ!!!!>>
狂気の雄叫びが地の底で噴き上がる。
<<AAAAAAAAAARRRRRRRRRTTTTTTTTHHHHH!!!!>>
暴れ狂いながら力任せに鎖を次々と千切っていく。
体の内側から伸び出た黒き触手も暴れ狂い、強化防壁を貫いてしまう。
魔法少女達から提供される授乳と言えるMAG供給を止められた狂気の赤子が暴れ狂うのだ。
両手を壁につけ、400m近い巨体が上を目指しながら這い上る。
地獄の底で続けられてきた魔法少女の苦しみは救出に来た魔法少女の活躍で終わるだろう。
だからこそマニトゥは最後の食事を求めるために地上を目指すのであった。
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「みんな!!早く逃げなさい!!」
声を張り上げるのはソウルジェムを取り戻して変身した姿の織莉子である。
独房管理ルームから出てくるのは囚われていた魔法少女達。
警備員達に集団で襲い掛かり、収納ボックスに収められていたソウルジェムを取り戻す。
織莉子の号令の元、研究所から脱走を始めていく。
「ソウルジェムがまだ一つ残っている…?誰か独房に残っているというの?」
残されたソウルジェムを持つ織莉子は走り続ける。
一つ一つの独房を確認していくと寝台の上で蹲った少女を見つけたようだ。
「独房の扉は開いてるのよ!どうして逃げ出さないの!?」
彼女の大声に反応を示さないのは生きる気力を奪われてしまった魔法少女。
愛する父を殺されてしまった里見那由他は消えそうな小声で反応してくれる。
「ほっといてくださいですの…」
「そんな事は出来ないわ!ここに残っていたら貴女は殺されてしまう!」
「別にいいですの…生き残れたって…私にはもう…何も残されていないですの…」
「どういう意味なの…?」
「私のパパは…連中に殺されましたの。それに…ラビさんの魔力も感じません…」
「貴女のお父様が殺されただなんて…それにラビさんというのは誰なの?」
「私と同じくここに囚われていた魔法少女ですの。だけど、魔力を感じられないのは…」
ラビの末路は容易に想像出来るため、織莉子は顔を俯けてしまう。
「私はもう…生きていたくないですの。ここで死んだ方が…」
生きる事に絶望した哀れな少女を見ていると自分の姿と重ねずにはいられない。
織莉子もまた愛する父親をイルミナティの傀儡であるディープステートに殺された少女。
彼女の両肩に手を置きながら真剣な眼差しを送ってくる。
「…それでも、生きなさい」
「どうして…ですの…?」
「私がそうしているからよ。私もね…貴女と同じ立場なのよ…」
「もしかして…貴女もパパを…?」
「お父様は…連中に嵌められて汚職議員にされた。私は…そんな父にトドメを刺した罪人よ…」
「どうしてですの…?そこまで辛い立場なのに…どうして生きようとするのですの?」
肩から手を離した後、信念を宿す胸に片手を置きながら自分の覚悟を織莉子は語る。
「お父様の無念を…晴らしたいからよ」
「パパの無念を晴らすために…ラビさんの無念を晴らすために…生きる…?」
「私は生きる事を止めないわ。たとえどれだけの責め苦を負わされても…戦い続けてみせる」
「強い人ですの…私は…貴女みたいには…」
「貴女には貴女の人生がある。生き抜く事こそ貴女のお父様が望むことだと…私は思うわ」
スカートのポケットから那由他のソウルジェムを取り出して手渡してくる。
「私は美国織莉子。貴女の名前は?」
「里見那由他ですの…。織莉子さん、私…貴女のように強くなりたいですの…」
「出来るわ…きっとね。お父様への愛を貫く気持ちがある限り…」
「パパ…パパ…グスッ…うぇぇぇぇぇ~~……っ!!」
織莉子の胸に抱き着きながら泣きじゃくる悲しき少女を力強く抱きしめてくれる。
苦しみを共に分かち合う中、彼女達に襲い掛かろうとする邪悪な大霊が迫りくるのだ。
「なにっ!!?」
突然の大地震によって研究所内が激しく振動し、明かりが明滅を繰り返す。
<<警告、マニトゥ格納区画で異常を確認>>
「マニトゥですって…?」
<<緊急事態コードを承認。研究区画を放棄せよ。職員は直ちに避難用プラットフォームへ>>
「な…何ですの!?地の底から感じさせてくる…あまりにも巨大な魔力は!?」
「貴女も魔法少女に変身しなさい!急いで!!」
「は、はいですの!!」
ソウルジェムを構える那由他も魔法少女変身を行う。
中華風のドレスを纏う女帝のような姿となり、
2人が独房から飛び出して来た時、遠くの方から叫び声が木霊する。
「何が…起きているの…?」
逃亡していた魔法少女達だったが研究所を破壊しながら飛び出す黒き触手に襲われている。
<<キャァァーーーーッッ!!!>>
次々と触手に取り込まれていく魔法少女達。
ソウルジェムどころか肉体さえも喰らいつくす飽くなきソウルの渇望が地獄を生み出す。
「ヒィィィィーーッッ!!!」
研究所から逃げ出そうとする職員達にも襲い掛かり、肉と魂を貪りつくす。
その光景はまさに最後の晩餐の如き地獄の光景であろう。
「こっちに来て!!」
織莉子に手を引かれながら那由他も走って行く。
「何処に逃げるというのですの!?」
「仲間達の魔力が近づいてくるのよ!」
「もしかして…助けが来てくれたのですの!?」
「その子達と合流してここから脱出しましょう!」
「は…はい!!」
独房区画を目指すクルースニクと魔法少女達も走り続ける。
クルースニクに担がれているのはリボンで拘束された姿をしたマッドサイエンティストである。
「は、放せーーっ!!私は研究者だ!!暴力反対!!」
「喧しいわね!ここで魔法少女をいたぶってきた屑のくせに!!」
「殺されないだけ有り難く思うんだね。刻みたいぐらいだけど脱出場所まで案内してもらう!」
「くぅ~~!!科学が魔法に負けるなんて~!!くやしい~~っ!!」
「うるせーぞ糞野郎!!」
杏子の槍の平たい部分で頭をどつかれたマッドサイエンティストは黙り込んでくれる。
「この魔力は…感じるわ!美国さんが近づいてきている!!」
「流石は織莉子さんだ!あたし達と合流して脱出しようというんだね!」
「あぁ…織莉子との感動の再会が始まる!救出に来た王子様としての私が今直ぐ行くよ!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!なんか…近くに別の魔法少女の魔力も感じるわよ?」
「ええっ!?織莉子…もしかして、私という者がいながら…違う魔法少女を選んだのかい!?」
「落ち着きなさい、呉さん!今はそんな事を考えてる暇は無いわ!!」
「あぁ…恩人…私の心は散り果てて…走る気力がなくなっていく…」
「あたしの槍でケツをしばけば走る気になるか?」
「私の斧でしばいてやってもいいわよ、呉?」
「やめてくれないか!そんな武器で尻を叩かれたらパンツが履けないぐらいに腫れちゃうよ!」
緊張感が抜けきった一同を横目で見ながら目の前に視線を移す。
「どうやら、合流出来そうだな」
奥の通路から走ってきたのは織莉子と那由他であり、感激した織莉子が叫んでくる。
「キリカ!!小巻さん!!」
「織莉子ぉぉーーっ!!」
突然元気を出したキリカが走りながら織莉子に抱き着く。
「会いたかったぁぁーーっ!!会いたかったよ織莉子ーーっ!!」
泣くほど嬉しいのか、彼女の胸の中でワンワン泣きじゃくるキリカの元に小巻も駆け寄る。
「全く…このバカ!あんたバカでしょ!私達がいなかったらどうなってたのよ…このバカ!!」
「小巻さん…本当にごめんなさい。それに皆にも心配をかけさせて…」
「大体そんな景気悪い顔してるから絡まれるのよ!バカじゃないの!ほんとバカ!!」
(一生分のバカを言われている気がするわ…)
怒りながらも小巻の目にも涙が浮かんでいる。
キリカと小巻は彼女の仲間として織莉子の身を案じながら探し続けてくれた親友達。
そんな彼女達の優しさと再会の喜びによって織莉子の目にも薄っすら涙が滲んでいく。
「貴女は…囚われていた魔法少女ですか?」
マミが那由他に近寄る中、俯いた顔を上げた彼女は希望に縋るような表情を浮かべてくる。
「はい…ですの。私は里見那由他と申しますの…」
「巴マミよ。自己紹介を済ませる暇は…無さそうね」
彼女達が視線を向ける先は通路を突き破りながら迫りくる触手が群れを成している。
「早く行け!!私がしんがりを務めてやろう!!」
光りの弓矢を出現させたクルースニクは天扇弓を放つ。
一発の光の矢が分裂し、触手の群れを次々と破壊してくれる。
それでも膨大な触手の群れに対応し続ける事は不可能だろう。
<<警告。証拠隠滅のため、自己破壊モードが作動しました>>
<<研究所は放棄されます。職員は速やかにプラットフォームに移動して下さい>>
マッドサイエンティストの誘導に従いながら中央エレベーターを目指す。
「こ…ここから脱出用のプラットフォームに下りられる!」
「嘘じゃねーだろうな?嘘だったら!!」
「信じてくれ!!こんな場所に長居したら…私まで死んでしまう!!」
「命欲しさの情報なら信用してもいいんじゃないの?」
「チッ、生き残れてもタダじゃおかねーからな、オッサン!!」
巨大な中央エレベーターからプラットフォーム区画へと移動していく。
辿り着いた場所とは地下鉄を思わせる空間のようだ。
「ここは資材搬入路としても使われるが…緊急時には脱出用の車両基地としても運用される!」
「あれがそうなのかしら…?」
ホーム内を見れば資材運搬用車両が見える。
「オラッ!オッサンが運転しろよ!!」
「キィーッッ!!大人をこき使うガキは嫌いだーーっ!!」
車両に乗り込んだ後、マッドサイエンティストが操縦を行う。
資材を詰め込む車両に飛び移るが中央エレベーター方面から迫りくる存在に目を向ける。
「急いで!!もう直ぐそこまで来てるわ!!」
列車が動き出し、暗い地下鉄線路を猛スピードで走行していく。
後方からは物凄い数の黒き触手が獲物を逃がすまいと迫りくるおぞましい光景が生まれている。
「いい加減しつこいのよ!去っていくレディの背中を追いかけるのは止めなさいよね!!」
最後の一撃としてマミが放つのは極大魔法の一撃となるだろう。
列車の後部車両の上に生み出されたのは巨大な列車砲である。
「あなた達に蹂躙されてきた魔法少女達の怒りを込めるわ!ボンバルダメント!!」
轟音と共に放たれたのは巨大榴弾であり、洪水の如く迫る触手に着弾して大爆発を起こす。
「おいおい…不味いぞ!!」
マミの一撃によってトンネルが崩壊していく。
迫りくる触手をせき止められたのはいいのだが、このままでは生き埋めだろう。
「もっと飛ばしなさいよ!!」
「やっとるわい!!死んだら化けて出てやる!!」
猛スピードで地上へと駆け上がっていく車両の先に光が見えてくる。
使われなくなった廃線路から見える夜の光に飛び込むような猛スピード移動を繰り返す。
「間に合えぇぇぇぇぇーーーっ!!!」
偽装された廃トンネルから車両が飛び出すと同時にトンネルが崩れ落ちる。
「ダメだぁ!!こんなスピードでは曲がり切れん!!」
緩やかに曲がった線路であろうが、これ程のスピードが出れば遠心力も増すだろう。
<<ギャァァァーーーーーッッ!!?>>
車両から飛び出す魔法少女達とマッドサイエンティストを抱えたクルースニク。
車両は横倒しに倒れ込み、どうにか危機を脱出出来たようだ。
「ここは…何処なのかなぁ?」
「随分と遠くまで来ちゃったわね…もしかして、見滝原の隣町かしら?」
「だとしたら…尚紀達と直ぐに合流するのは難しそうだな…」
遠くに見える夜空を見上げる魔法少女達。
赤く燃え広がるのは証拠隠滅のために研究所が自爆した事によって生み出された火災地獄。
彼女達の顔に冷たい汗が滲んでいくのは遠くからでも感じる巨大な魔力のせいだろう。
遠くで屹立しているのは巨大な大霊の影。
これから始まっていくのは魔法少女では太刀打ち出来ない戦いの領域。
神々の領域の戦いへと進んで行くのであった。
完全にバイオハザード展開でした(汗)