人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
1786年の出来事である。
イルミナティの脱会者達がこの悪魔教団の内幕を暴露する文章を公表する出来事が起きる。
あるイルミナティ文書の中には、女性について次のように書かれていた。
女は男に影響を与える最も強力な手段であり、優先して研究する必要がある。
我々は女性の賛同を得られるよう徐々に感化し、女性の解放をほのめかしていく。
我々のために蜂起するよう仕向ける。
こうして女達は利用されていることに気づく事なく、我々のために熱心に活動するだろう。
彼女らは望んでいるもののために、自らの意思で動いていると思い込むのだ。
この文章内容はシオンの議定書内でも記されている部分である。
あらゆる人間に自尊感情を植え付ける事で、我々はゴイムから家族や家庭教育の価値を奪う。
我々の手先が導かない限りどの方向にも向かうことのない強大かつ従順な力を、我々は創り出す。
この目的を達成するため、世界を代表する二つのユダヤ財閥が大きく貢献する事になった。
イルミナティ13血統の一番手と二番手であるロスチャイルド家とロックフェラー家は暗躍する。
財団、シンクタンク、共産党、CIAをはじめとする諜報機関の大半を資金提供という形で掌握。
イルミナティネットワークは世界中に広がりを見せ、ルシファー主義を広めていくのだ。
戦後のフェミニズムとは、国際中央銀行カルテルが生み出した女性洗脳思想であった。
……………。
夜の神浜市立大附属学校に入り込んでいく数人の少女達。
防犯カメラは校門付近にしか供えられていないため、内部に入り込むのは容易いようだ。
「メル、本当に今日で間違いないのね?」
「ええ、今日で間違いないです。予知で視えた世界で日にちを確認しておきました」
「メルの予知で何が視えたの?」
「鶴乃さん…それは…その……」
しどろもどろになったメルに向けて、鶴乃は怪訝な表情を浮かべてしまう。
「ほえ?何で顔が真っ赤になっちゃうのかな?」
「あの…えっと…何て言っていいか……」
安名メルは14歳の魔法少女として生きた人物である。
学校教育でもようやく性に関する保険授業を受ける年齢であるため、性的な事に耐性がない。
そんな彼女が視えてしまったおぞましい予知の光景とは…。
「やめなさい、鶴乃。これは気軽に話せる内容なんかじゃないのよ」
「どういう意味なの?」
「R指定だからよ」
突然の発言を受けて、鶴乃は目が点になってしまう。
「アール指定…?それって…まさか!?」
鶴乃は17歳になる少女であるため、中学生よりは性的な知識を持つ年頃。
やちよが言いたい内容を把握したため、彼女まで顔が赤面したようだ。
「メルには申し訳ない事をしたわ…。予知を頼んだせいで…不快なモノを視る羽目になったの」
「詳しい事は言えませんが…暗くて広い屋内施設の光景でした。スポーツが出来るぐらいに」
「それに当て嵌まる場所は一つだけど…今は改装工事中の筈なのよ」
「そんな場所に沢山の在学生達が集められて…何をさせられてるっていうの?」
男性経験がない女として不安を感じていた時、先に潜入していた2人が走り寄ってくる。
「ご苦労様、みふゆ、かなえ。巡回している警備員達は大丈夫そう?」
「夜勤の警備員さん達は、私の幻惑魔法で眠りについてもらいました」
「人気は他に無さそうだけど…悪魔は何処に潜んでいるか分からない」
「そうね…警戒しながら進みましょう。私が案内するわ」
周囲に警戒しながら夜の学校内を進んで行く。
建物の入り口に手をかければ、鍵は開いているようだ。
「やはり誰かが中にいるというわけね」
建物の中に侵入するのだが、夜の学校内は思った以上に明かりが無い。
「あちゃ~…酷く暗いね。先が見えにくいし、スマホで明かりを灯そうか?」
「そんな時こそ!悪魔のボクに任せて下さいよ~鶴乃さん♪」
「むっ!悪魔パワーを見せる時がきたんだね!ド派手にやっちゃっていいから!」
「ド派手にされたら気づかれるでしょ!全くもう…」
「大丈夫♪これは騒々しい魔法じゃないから安心してくださいね」
メルが左手を掲げれば、彼女の魔法武器となったトートの書が出現する。
風で揺れ動くようにページがめくられていき、何かの魔法が行使された。
「うわ~…凄いね!?昼間のように明るくなったよ!」
周囲の暗闇が消え、明るい光で空間が包まれる光景が広がっていく。
悪魔の魔法において、暗い洞窟内を探索する時に重宝する魔法『ライトマ』であった。
「十分騒々しい事態になりますよ!?誰かが来たってバレちゃいます!」
「大丈夫だよ、みふゆ。この魔法の恩恵を受けるのは術者達だけなんだ」
「つまり…他の人達から見れば、暗い通路内であることに変わりはないんですね?」
「この魔法は長時間使える代物ではないんです。魔法が切れたらまた使いますね」
「助かるわ。行きましょう、目的地は地下よ」
建物内を慎重に進んで行く。
魔獣とは違う存在である悪魔が潜んでいるため、魔法少女達も緊張を隠せない。
緊張を紛らわせるために、やちよが口を開きだす。
「今日はね…この前私が講義を受けた活動家の二回目の講演があった日なのよ」
「やっちゃんは参加しなかったんですね?」
「頼まれてもお断りよ。メルの予知が起こる日と重なるだなんて…偶然なのかしら?」
「分からないけど、何か他に知っていることはない?」
「人伝で聞いた話だと、フェミニズムに熱心な生徒に向けての特別講演があると聞いたわね」
「それで…その講義に参加した女子大生達は、特別講演に参加したというわけなんだ?」
「かなえ…私は後悔してるわ。メルの予知を聞いた時、あの子達を止めるべきだった」
「七海先輩…証拠が無いんじゃ信じてくれませんよ。魔法なんて誰も信じてくれないし…」
「こんな時…魔法少女の存在を秘匿してきた事が悔やまれるわ。正しい情報さえ伝わらない」
「正しい情報が伝わらないから…人々は過ちを犯すんですね。それは魔法少女も同じです」
「だからこそ、正しい判断が出来る教育政策が肝心なんだよ。それが尚紀の望みだと思う…」
話をしていると、地下に下りる階段をやちよ達は見つける。
「下から聞こえるこの声は…女性達の声…?」
地下空間から聞こえてくるのは、多人数の叫び声。
「えっ…ええっ!?まさか…地下から聞こえてくるこの声って…!!」
「あ…あぁ…ボクが予知で見えた光景が…きっと広がっているんです!」
赤面しながら固まってしまう鶴乃とメル。
地下から聞こえてくるのは、女性達のだらしない喘ぎ声。
まるでポルノ動画を大音量で響かせてくるような恥ずかしさを周囲に与えてしまうのだ。
「やっちゃん…これは…その…アレなんですよね?」
19歳とはいえ、厳格な家で育てられたため性的な経験を持たなかったみふゆも固まってしまう。
男をまだ知らないやちよとかなえも赤面するが頷き合い、3人に振り返った。
「多分…みんなが想像している通りの光景が広がってると思う。無理強いはしないわ…」
「あたしは大丈夫だけど…みんなは辛いと思ったら、あたし達に任せても大丈夫だよ」
気を使ってくれる大人の女性達を見て、大人の女性になろうとするみふゆも覚悟を決めたようだ。
「鶴乃さん、メルさん。ここから先は18歳未満は閲覧禁止の光景です。大丈夫ですか?」
「わ、私だって…今年で18歳になる高校三年生だよ!だけど…メルはまだ中学生だし…」
周囲の視線がメルに集まっていく。
怖さと恥ずかしさで震えていたが、覚悟を決める表情を浮かべてくれたようだ。
「ボク…予知で見えた光景は暗くてよく見えませんでしたけど…アレが…性行為なんですね?」
「こんなモノを子供の貴女に見せる事になるのは…大人として恥ずかしいわ。だから…」
「いいえ!助けを求める人達を見捨てる行為の方が恥ずかしいです!ボクもついて行きます!」
「メル…本当にごめんなさい。でも…ありがとう」
「ボクは何処までも七海先輩について行きます!恥ずかしいけど…頑張りますね!」
5人は頷き合い、意を決して階段を下りていく。
地下アリーナは二階構造であり、一階部分は観客席となる。
観客席に入れる扉の前に立つが、奥から聞こえてくる男女の喘ぎ声を浴びせられ緊張してしまう。
「……行くわよ」
扉を開くと同時に魔法少女達が感じたモノ。
それは女性として身の毛のよだつ感情であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
フェミニストの中には同性愛者ではない男性も参加している。
性を糾弾する立場を演じているようだが、男性フェミニストの中には性犯罪を犯す者が多い。
男性フェミニストをネットで検索すると、真っ先に出てくるサジェストワードは
これは英語圏で男性フェミニストを名乗って活動してきた多くの男性活動家達に言えること。
性犯罪の前歴を告発されてきたため、捕食者と呼ばれたようだ。
「ハァ!ハァ!もっと犯したい…女を犯したいぃぃーーッッ!!!」
アリーナ内に広がっていた光景とは…男性経験のない少女達ならば目を覆いたくなるような光景。
一心不乱に腰を突き動かす男達と、成されるがまま尻を突き出し続ける女子大生達の姿。
数十人の男女によって繰り返されていたのは…集団レイプの光景。
「フェミニズムに騙されるアホ女共は犯しやすいぜ!また出すぞ…うぅ!!」
1人の男の体が震え、女性器と繋がった部分から精液が溢れ出していく。
この男達はフェミニズムに洗脳された女性を食い物にするために集まってきた者達。
性犯罪者達は、フェミニズムを利用してキャリアを築いてきた者達が数多い。
フェミニスト向けの企業展開を行う傍らで、女性に性的虐待を加える存在としても知られている。
不祥事が発覚すれば、女性に責任を擦り付ける程の外道達。
男性フェミニストとは、フェミニズム活動を隠れ蓑に女性を狙う性犯罪者であった。
「もっと…もっと頂戴!もっと犯してーーッッ!!」
レイプされているように見えるが、男とまぐわう女子大生達は喜びを感じているように見えた。
余りにも異常過ぎる光景と共に鼻を突くのは、アリーナ内を満たす生臭い匂い。
一体どれだけの量の精液を垂れ流したのか分からない程の有様であった。
「ッッ!!!!」
両手で口を抑え込み、ショックのあまり膝が崩れてしまう鶴乃。
隣のメルも両膝が崩れてしまい、放心状態となってしまう。
予知で視えた時には薄暗かったが、ライトマの魔法を用いたためにレイプ光景がハッキリ見える。
「なんて…ことを!!!」
赤面したまま震え抜くやちよと、同じ姿をしたままのみふゆ。
性的な光景に耐性が一番強かったかなえは怒りの表情となり、女性として叫ぶのだ。
「やめろ……やめろぉーーーッッ!!!」
かなえの怒声がアリーナ内を包み込むのだが、まぐわう男女は叫び声にすら気づかない。
「あの魔法陣は…まさか!!」
放心状態であったが、集団レイプが行われているアリーナの地面に描かれていたものに気づく。
「あれは性魔術です!!」
「性魔術!?それって何なの!」
「魔術に性的興奮を取り入れる儀式です!性的絶頂エネルギーを利用して結果を視覚化させる!」
メルの中に溶けた知恵の神トートが与えた魔術知識により、メルは一目で魔術目的を見抜く。
「オーバーオーガズムは通常の知覚された現実を超越出来る強大な力です!それを使う目的は…」
<<もちろん、悪魔を召喚するためよ>>
声が聞こえてきた方角に視線を向ける。
観客席の奥側に立っていたのは、やちよ達女子大生に講義を行ったレズビアン活動家であった。
「夜中なのにここに現れるとはねぇ?貴女達もフェミニズムに興味を持ったのかしら?」
講演を行っていた時の澄まし顔が豹変し、邪悪な笑みを浮かべてくる。
集団レイプされているのは同じ大学の女子生徒であるため、やちよは憤怒の叫びを上げるのだ。
「今直ぐ彼女達を解放しなさい!!悪魔の魔法の力で操っているのは分かってるわ!!」
「どうして?これが彼女達の望みだというのに」
「フェミニズムは同性愛者の味方じゃなかったの!?貴女の講義ではそう言ってたわ!」
「講義を受けても理解していなかったようね?フェミニズムとは…女性の自立を促す思想なのよ」
「この光景の…何処に女性の自立があるっていうのよ!?あまりにも退廃的じゃない!!」
「同性愛者であろうと、異性愛者であろうとね…その本質は愛情を求める行為なのよ」
「愛情を求める行為…?」
「我儘を受け入れてくれる者を求めたい。そのために誰かれ構わずセックスを求めるようになる」
「その先には…何があるっていうのよ!?」
「人類の
ノーマライゼーションとは、違いを吸収して全体を均一化するという意味。
障害をもつ者ともたない者とが平等に生活する社会を実現させる考え方とも言えるだろう。
「退廃的と貴女は言うけど、それはアレルギー症状よ。アレルギーには
過敏性の原因となるアレルゲンをごく少量注射し、しだいにその量を増して過敏性を減弱させる。
「それがフェミニズムだと言いたいのね…。何が女性のための思想よ!女性を貶めているわ!!」
「そうです!こんなの…男女の道徳精神に反します!!」
「道徳観とは、偏見に満ちた社会の維持を目的にした人為的なもの。それでは女性は救われない」
「違います!私は伝統と共に生きましたが…水名の男女社会は上手く機能しましたよ!」
「その伝統とやらは、男が女を支配する伝統でしょ?それの何処に女性解放があるというの?」
「あるよ!!!」
声を張り上げたのは鶴乃である。
「私の家はね…女が男を支えてくれなくなった家なの。女は家のお金を盗んで…逃げちゃった」
「素晴らしいわ。その行動こそ女性の自立であり、男社会から女性が解放された光景なのよ」
「だからね…私がお父さんを支えるしか道が無くなった。私は女だよ?なのに解放されてない!」
「今直ぐその父親を切り捨てなさい。貴女も自由となりなさい。男などいなくても自由となれる」
「違うよ!私が自由でいられた時間は…お母さんがお父さんを支えてくれた時期だけだった!!」
やちよと同じく憤怒の表情を浮かべた鶴乃が立ち上がる。
怒りのままにこう叫ぶのだ。
「私は男が働いてくれたから生きてこれた!お父さんやお爺ちゃんが必死に働いてくれたから!」
――女の人生を必死になって守り抜いてくれた男の人を裏切る女の生き方なんて…許せない!!
鶴乃の怒りに鼓舞された魔法少女達が左手を構え、ソウルジェムを出現させて変身を行う。
魔法少女姿となった者達を見つめるアルプは目を細めていく。
「…そう。なら、こういう考え方ならお気に召すかしら?」
「これ以上…何を言うつもりなの?」
「魔法少女とは性の難民。人間に秘密を打ち明ける自由もなく、女同士で完結するしかない者達」
「そ、それは…そうだけど…」
「どれだけ命を懸けて戦っても男社会は応えてなどくれない。なら、男共をこう考えればいい」
――私達の愛しい百合(リリス)社会を存続させるためだけに飼ってやる…
傲慢極まった魔法少女至上主義者が望みそうな理屈をアルプが吐き出した時、かなえが動く。
「ぐっ!!?」
レズビアン活動家の心臓に突き刺さっていたのは、かなえの魔槍であるルーン。
「御託はもういい…同じ悪魔である…あたしが相手だ」
かなえとメルも悪魔化を行っており、いつでも戦闘を行える構えを見せた。
「フッ…フフフフ……」
レズビアン活動家の体から霧が噴き出していく。
「これは!?」
霧が晴れ、倒れ込んでいたのはアルプに擬態させられていた行方不明者の1人。
「なんなの…あの人の姿は!?」
全裸になっている男の死体の体色は紫に変色している。
頭髪が抜け落ちた頭に寄生されているのは…人間に寄生した魔界の花であった。
【マンドレイク】
マンドラゴラとも呼ばれ、根の部分が人間の形をした異形の植物。
名は愛の野草という意味をもち、男女の性別があるようだ。
万病に効く霊薬ともされるが、土から引き抜くと絶叫を上げて人間を死に至らしめると言われた。
<<ア”ァ”ァ”ァ”ァ”―――ッッ!!!!>>
かなえの魔槍に貫かれたマンドレイクが絶叫を上げていく。
「キャァァーーーーッッ!!?」
耳をつんざく程の奇声によって、乱交を繰り返す男女が次々と倒れ込んでいく。
両耳を抑え込んで耐える魔法少女達であったが、このまま聞き続けては発狂してしまう。
「チッ!!!」
左耳を抑え込んでいた左手を動かして掲げる姿を見せる。
かなえの意思を汲み取った魔槍ルーンの柄が発火し、マンドレイクを一瞬で焼却。
しかし、絶叫のダメージを負ったのかピアスを身に付けた左耳から血が流れだす。
<<アッハハハ!!危険を省みずに現れるとでも考えていたのかしら?>>
絶叫から解放されたが、魔法少女達の意識は朦朧としている。
耳鳴りが酷くアルプの声は聞こえないが魔力を感じ取り、反対側の観客席に視線を向けた。
<鼓膜が破れる程度で済んだようね?いいわ、もう直ぐ私の友人が現れるから楽しみなさい>
念話を送ってくるのは、俯け姿勢のまま宙に浮かぶアルプ。
両手に顎を置き、愉悦を感じた表情を浮かべながらアリーナ内に視線を向けていた。
<みんな…大丈夫?>
<意識が朦朧としますが…何とか戦えます>
<皆さんの傷は…ボクに任せて下さい!>
メルがトートの書を開き、全体回復魔法である『メディラマ』を用いる。
鼓膜の傷を癒し、意識の朦朧も治った魔法少女達ではあるが…アリーナ内の異変に気付く。
「みんな!アレを見て!!」
鶴乃が指差すのは、男女が倒れ込んだアリーナの地面。
魔法陣が明滅を繰り返し、赤黒い波動を放ち続ける。
「ウフフ……出てきなさい、アルラウネ」
アリーナ内の地面が砕けていき、おびただしい数の枝が飛び出していく。
無数のいばらの棘が倒れ込んだ男女に絡みつき、絞め潰して殺していく光景が広がってしまう。
精液と血が混ざりあう地面に咲いていくのは…おびただしい数の魔界の花。
魔法陣の中央に咲いた紫色の巨大な薔薇のつぼみが開いていき、女悪魔の姿が顕界した。
<<あぁ…かぐわしい。男達の精の匂い…血の匂い…興奮しちゃう!!>>
現れた女悪魔とは、下半身が花であり上半身が美女の姿をした怪物であった。
【アルラウネ】
元々は魔術植物マンドレイクのドイツにおける名称であり、秘密に通じているという意味がある。
ドイツの民間伝承では深紅の蘭に似た幻花の精のイメージにアレンジされたようだ。
アルラウネの花は無念の想いを抱いて処刑された男の血または精液を吸って処刑台の下で育つ。
この花を鉢植えにして部屋に置いて眠ると美女がベッドを訪れ、男の精を吸っていくとされた。
「ハァイ、アルラウネ♪貴女も魔界からこちら側にこれて何よりね」
美しい真紅の長髪を持ち、前髪で目隠れしている顔をアルプに向けていく。
「アタシを召喚してくれて感謝するわ、アルプ。久しぶりに性の解放を楽しめそうよ♪」
「貴女は美男子を好むものねぇ。でも、強欲なまでに性を求める貴女は好きよ」
「よしてよ、アタシはレズビアンってわけじゃないし。アタシが欲しいのは男の精だけよ」
「そう…それは残念ね。それじゃあ、お邪魔虫達を始末してから出かけましょうか」
「そうね。アタシの最初の獲物となるのが女共だなんて、幻滅しちゃうけど」
アルラウネは視線を反対側の観客席に向けていく。
「美しい魔法少女と悪魔共ね…気に入らないわ。アンタ達もアタシの養分にしてあげる!」
アルラウネが片手を掲げていく。
地面を埋め尽くす花の世界から狂暴ないばらが湧きだし、地面をえぐり取っていく。
掘り出された地面の中から現れたのは…行方不明になっていた男女達。
全員が頭に魔界の種子を寄生させられ、マンドレイク化させられていた。
「これだけの事をしてくれたんだ…覚悟は出来てるよね?」
助けにやってきたのに全員を死なせる結果を残してしまったかなえの表情は怒りで満ちている。
左手を横に向けて構え、回転しながら飛んできた魔槍ルーンの柄を掴む。
左肩に槍の柄を乗せる彼女の横に立つのは、かつて死線を共に潜り抜けてきた仲間達。
「これでハッキリしましたね。女の敵はいつだって、
「思い知らせてやりましょう。女の敵を倒すのもまた…女の役目なのだと」
魔法の槍と円月輪を生み出したやちよとみふゆも同時に構える。
そんな3人の後ろ姿を見て、鶴乃とメルは微笑むのだ。
「見て…メル。やちよの時代が戻って来たよ」
「そうですね…。あの3人の姿こそが…七海先輩が愛してやまなかった…」
――大切な光景なんです。
頷き合い、2人も魔法の功夫扇とトートの書を構える姿を見せた。
迎え撃つアルラウネの横で浮遊しているアルプは、その表情を歪めていく。
「言ってくれたじゃない…ミソジニー女共!!女性を蔑視する裏切り者の女共に死を与えるわ!」
観客席側から飛び降り、女同士の戦いが始まっていく。
伝統的な秩序(LAW)を守りたい勢力と、自由(CHAOS)を周りに押し付けたい勢力。
その戦いは熾烈さを増していくのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
<<シャーーッッ!!!>>
マンドレイクの根にされてしまった死体達が襲い掛かってくる。
助けることは出来ないのかと迷う魔法少女達であったが、メルが皆に向けて叫ぶ。
「マンドレイク化させられてしまった人間は助けられません!叫ばれる前に首を跳ねて下さい!」
「私たちが間に合わなかったばかりに…ごめんなさい!!」
みふゆとかなえが動き出す。
「ハァァーーーッッ!!」
みふゆは魔法武器である巨大な円月輪を投擲。
円月輪は生きているかのように周囲を回転していき、次々とマンドレイクの首を跳ね落とす。
「一瞬で殺す…これ以上は苦しませない!!」
魔槍を使うが槍術を心得ているわけではないため、かなえは力任せに魔槍を振り回す。
槍は鈍器として優れており、矛の重みによって遠心力が増した一撃を頭部に叩き込んでいく。
一体のマンドレイクの頭部を潰せば、後続から迫りくるマンドレイクの頭部も同時に潰れる。
魔槍ルーンは離れた相手でも一振り毎に確実に殺す武器であった。
かなえの背後の地面が爆ぜ、地中から一体のマンドレイクが奇襲を仕掛けてくる。
「これは!?」
かなえの意思に関係なく槍の柄が燃え上り、周囲を業火で包み込む。
「ギャァァァーーーーッッ!!!」
奇襲攻撃を仕掛けてきたマンドレイクは業火で焼き尽くされ絶命したようだ。
「そうか…アナタはあたしの背後を守ってくれるんだね?」
魔槍ルーンは戦闘が近付くと柄から炎を吹き出す槍と言われ、装備者は不意打ちを受けない。
「昔から喧嘩に巻き込まれて…背後に怯える人生だった。だけど今は…アナタがいてくれる」
槍の柄から吹き出す炎の勢いが強くなり、槍を纏うかなえまで炎の熱さを感じてしまう。
「分かってる…血に飢えてるんだろ?あたしは逃げない…あたしは戦いから逃げた事はない!」
燃え上る魔槍を振り上げ、次々と獲物を屠る光景が続く。
敵の血を浴びるごとに魔槍は満足していき、かなえが感じる炎の熱も収まっていく。
この槍は持ち手に永遠の戦いを求めさせ、敵の血が流されない場合には血に飢えて持ち主を襲う。
戦いを好まないかなえは、見た目のせいで望まぬ戦いを強いられる人生を生きた者。
槍の持ち主であったドゥフタハと同様に、逃れられぬ戦いを強いられる運命を背負う女であった。
「みふゆ!かなえ!私達も援護するよ!!」
「奴らの弱点属性は炎です!合わせて下さい鶴乃さん!!」
魔力で宙に浮かぶメルの周囲には、魔法書のページが浮遊していく。
魔法書のページが周囲を回転しながら広がり、炎の属性魔法を放つ。
<<ギャァーーッッ!!!>>
放たれたのは、炎属性を用いた全体魔法攻撃であるマハラギオン。
「メルには負けないもん!チャチャー!!」
跳躍と同時に燃え上る功夫扇を投擲。
業火を纏う功夫扇が魔力で操られ、次々とマンドレイクの群れを火葬していくのだ。
植物悪魔の弱点属性を供えていた者達を上空から見つめるアルプの顔に焦りが生まれる。
「おのれ…よくも!!」
右手を下に向けて構え、魔法を放とうとする。
状態異常を得意とするアルプが放つのは、敵全体に精神ダメージを与える『テンタラフー』だ。
しかし、戦場で目立つ存在にばかり意識を向けるのは愚の骨頂。
「私が相手よ!!」
背後から跳躍して現れたのは、複数の槍と共に突撃してくる七海やちよ。
「チッ!」
姿を消し、悪魔が得意とする隠し身の技術によって観客席側に移動。
突撃を回避されたやちよではあるが、前方に魔法の足場を生み出す。
青く光る魔法陣を蹴り、直角に飛びながらアルプを串刺しにせんと攻勢を緩めない。
複数の槍が次々と観客席を貫いていくが、アルプは飛翔しながら回避行動を繰り返す。
「貴女…大学生魔法少女なら19歳ぐらいよね?魔力の劣化時期を迎えている筈なのに…」
槍を構える彼女の隙を伺おうとするのだが見出せず、焦りが生まれる。
「魔力は減退してきている。それでも私には長年生き残れた経験と…大切な仲間がいてくれる」
地下二階のアリーナで戦う仲間達を信頼する彼女は、目の前の敵に集中する姿勢を崩さない。
「一対一の個人授業を望みたいのね?いいわ…貴女にもフェミニズム教育をしてあげる!」
「願い下げよ!!」
観客席側で繰り返される女同士の戦いは熾烈さを増していく。
一方、地下二階のアリーナの戦いは弱点属性を突ける魔法少女達が有利に見える。
手下のマンドレイクが倒されていくのだが、アルラウネは不気味な沈黙を続けていた。
「よし!マンドレイクはあらかた倒したよ!」
「後は中央に陣取るアルラウネを倒す…だ…け……?」
突然体の痺れを感じたみふゆの膝が崩れ、倒れ込む。
その光景は他の者達も同じであり、次々と地面に倒れ込むのだ。
「体が…痺れる!これは…一体…!?」
「この甘い匂い…迂闊でした!!」
アルラウネが全身から密かに放っていたのは、神経を麻痺させる『花粉』攻撃である。
「大人しくやられてくれるとでも思ったわけ?甘いわね~その甘さは命取りになるわ」
周囲に咲く花は魔法攻撃で燃やされたが、それでも地面から伸びる根は健在である。
「くっ!!」
「は、放して!!」
いばらの枝に体を拘束された魔法少女達と悪魔達が持ち上げられていく。
「みふゆ!!かなえ!!鶴乃!!メル!!」
仲間達が拘束された姿を見たやちよは焦りを浮かべてしまう。
「形勢逆転といったところかしら?」
右手をかざして放つのは、雷魔法であるジオ。
「アァァァァーーーッッ!!!」
避けることが出来ずに感電し、やちよは俯けに倒れ込んでしまったようだ。
空中から現れたアルプが地面に足をつけ、勝ち誇った顔つきをしたまま膝を屈めてくる。
「私とアルラウネはね、暑苦しい女は嫌いよ。派手にやってくれたし…覚悟しなさい」
「貴女達は…私達を殺して何を望むの!フェミニズムの先に求めるのは人類の人口管理なの!?」
やちよが語っていくのは、美雨から得た情報をななかがやちよに伝えた話である。
「アルケニーから大体は聞いたようね?ルシファー様とリリス様の望みを叶えるのが我々の使命」
アルケニーに負けない程の邪悪な笑みを浮かべたアルプは語っていく。
「アルフレッド・キンゼイによって、愛や子孫を残すという目的とセックスを切り離せたわ」
同性愛活動家は不特定多数とのセックスを擁護する。
性の革命とは、人々の人間としての成長を破壊する目的なのだと語っていく。
「同性愛者をセックスに縛り付け、異性愛者もセックスに縛り付けて中性化させていく」
「男らしさと女らしさの破壊行為…。だから私の学校の男子達は骨抜きにされて…」
「ラディカル・フェミニズムの到達点とは、
「フフッ♪表現が分かり辛いと思うわ、アルプ。もっと分かり易く言ってあげなさい」
「それもそうね…。なら、もっと分かり易い言葉で表現してあげる」
「分かり易い言葉ですって…?」
「私達フェミニストの目的とはね…女の心にチ〇ポを生やし、男の心のチ〇ポを去勢すること」
――
ふたなりという意味なら、もう直ぐ二十歳に届く年齢のやちよなら分かる。
女の体に男性器が生えている両性具有こそが、ふたなりと呼ばれる概念。
「ふたなりとは暁の星である金星信仰にも繋がるの。イナンナ様は男性器をお持ちだった女神よ」
「私たち女性を…金星信仰の生贄にしようっていうの!?」
「それこそがルシファー主義。女社会で完結する魔法少女達にとっては…悪い話じゃないわ」
――だって、貴女達は愛する魔法少女との
卑しい笑みを浮かべた女悪魔が高笑いを行う。
俯けに倒れたままだが、怒りで我を忘れそうになるぐらいに…やちよは激怒する。
彼女は叫ぶのだ。
女社会だけで面白おかしく生きていけるという、
「私たち魔法少女の…誰かに向ける愛の定義を……勝手に決めつけないでぇ!!!」
「貴様…そこまで男の肩を持つわけ!?男が魔法少女に何をしてくれたっていうのよ!?」
「私の全てよ!!生まれた赤ん坊の私を…お父さんは死に物狂いで働いて育ててくれたわ!」
やちよが語っていくのは、先祖達が残してくれた異性愛という幸福の道徳観。
セックスは愛や結婚の一部であり、人間的で健康的なことだと信じるという内容。
「女はね…男から必要とされたいから愛するの!女が愛してくれるから子供を育ててくれるの!」
やちよの心に蘇っていくのは、男の子に恋心を抱いた頃の気持ち。
「でもね…魔法少女は真実を語れない!いつ死ぬかも分からないから…異性愛からはぐれたの!」
同性愛者は愛情からはぐれた者達ばかりだと、ゲイの店長は梨花に語ったことがある。
同性愛者が不特定多数とセックスをしたがる心理とは、愛情に飢える気持ち。
同性愛者とは、環境によって同性愛へと導かれてしまった社会的犠牲者なのだ。
「私達が真実を人間に語ってもいい自由があるのなら…私は好きになった男の子に告白するわ!」
魔法少女達の同性愛とは、魔法少女社会の環境のせいで歪められていったもの。
諦めてその現実を受け入れてしまい、同性愛に流されたくはないとやちよは叫ぶ。
「私の心は人間よ!!人間として…正しい男女愛を求めたい!!」
――私を産んで愛してくれたお父さんとお母さんのような愛の形を…
――それが子供達の幸福に繋がる証拠なら、目の前にある!!!
「私が男女愛で幸福になれた子供の…生き証人になるわ!!!」
1人の女性として叫んだ言葉は、アルラウネに拘束されている女性達の心にも届いている。
「やちよ…私の代わりに私の気持ちを言ってくれて…ありがとう!!」
「私も…男女愛を継承したいです!魔法少女社会の現実は厳しくても…諦めたくない!!」
やちよの叫びを嬉しく思うかなえとメルは顔を向け合い、頷き合う。
七海やちよは、人間の女性として示してくれた。
先祖達が残してくれた幸福の定義を。
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黙って清聴していたアルプであるが、立ち上がっていく。
やちよを見下ろすその表情はあまりにもおぞましく、醜かった。
「…このミソジニー女め。百合(リリス)では幸せになれないとは…言ってくれるわね」
アルラウネに視線を向ける。
「お前達のような…右翼とも言える保守的女性を滅ぼす必要がある。誰一人生かしておかない」
「左翼主義者のフェミニストが正体を曝け出したわね。女の敵はいつだって女なのよ…」
「アルラウネ…いい加減待ちきれないでしょ?こいつの仲間を挽肉にしてあげなさい!!」
「勿論よ♪アタシの男を掠め取ろうと企む泥棒猫共は全員…磨り潰して養分にしてあげる!」
絶体絶命の状況ではあるが…時間をかけ過ぎたようだ。
「何っ!!?」
かなえの左腕の麻痺が回復してきたため、縛られながらも手を地面に向けている。
彼女の意思を汲み取ったのは、宙に浮かぶ魔槍ルーン。
魔槍が業火を纏い、回転しながら周囲を旋回していく。
「しまった!!!」
魔法少女達を拘束していたいばらの枝が焼き尽くされ、解放される。
槍の回転は収まらず、アリーナ内は業火地獄と化していくのだ。
「まだまだぁ!!!」
地面で拾ったトートの書がめくられていき、メルは回復魔法を行使する。
行使された魔法とは、全体の麻痺を回復する状態異常回復魔法である『パララディ』だ。
「アァァァァーーーッッ!!!?」
地面から伸びた根ともいえる枝が焼き尽くされ、体を構成する巨大花も燃え上っていく。
「アルラウネ!!?」
大事な仲魔が窮地に立たされたことにより、アルプは隙が生まれてしまう。
「やっちゃん!!!」
業火の中から飛び出して来たのは、複数の円月輪を繋ぎ合わせた武器を持つみふゆの姿。
繋ぎ合わした円月輪を天井に向けて突き刺し、大きく跳躍した遠心力を用いた移動を行ったのだ。
倒れ込んだやちよを左手で掴み、壁に激突する前に壁を蹴り込む。
アリーナ内を大きく後退していき、向こう側の観客席にまで移動したみふゆが着地を行う。
「ピンチヒッター登場~~ッッ!!!」
みふゆに続いて飛び込んできた鶴乃の飛び蹴りがアルプの側面を強打。
「ぐっ!!?」
蹴り飛ばされて倒れ込んだアルプが鶴乃を睨む。
「は~い!笑って笑って~~♪」
「えっ…?」
鶴乃の首にかけられているものにアルプはようやく気が付く。
首にぶら下げていたものとは、ツーリングの時に使う一眼レフカメラ。
「くっ!!」
構えられたカメラのシャッターが切られ、眩しい光で目を瞑る。
「これで物的証拠の一つを抑えられたし、後は貴女を倒すだけだよ!!」
悪魔は概念存在であるため、普通の人間が見れば風景しか映っていない写真になる。
しかし、悪魔の姿を確認出来る魔法少女達であれば証拠としては十分通用するだろう。
「私の気持ちは人生のししょーでもあるやちよと同じ!だから絶対に…貴女を許さない!!」
魔力で生み出した功夫扇を構えて振り抜く。
観客席全体が業火に包まれ、アルプは逃げ場を失ってしまう。
「おのれぇぇーッッ!!男に媚びを売る名誉男性共めーッッ!!」
「いいからいいから!倒されちゃいなよ!!」
飛び上がり、体を捩じりながら両手の功夫扇を構える。
「間違いないから!これが私の…全身全霊!!」
功夫扇を振り抜くと同時に周囲に生み出された火球が下に向けて放たれていく。
鶴乃が得意とするマギア魔法である『炎扇斬舞』の一撃だ。
「アァァァァーーーッッ!!?」
逃げ場を失ったアルプに向けて火球が命中していき、体が業火に包まれていく。
「ミトメナイィィ!!男女ノ愛ナド…ミトメナイィィ!!!」
フェミニストの怨念の如き執念が木霊する。
それを打ち倒す者こそ、同性愛とフェミニズムを否定する女性が放つ一撃。
「チャチャーーーッッ!!!」
一閃が起きる。
観客席の業火が収まれば、アルプの後ろ側を通り超えた鶴乃の背中が見えた。
「カッ…アッ……」
あの一瞬において懐まで飛び込んだ鶴乃の一撃が悪魔の体を切断している。
「申し…訳…ございま…せん…リリス…さ…ま……」
体が砕け、MAGの光を放出。
鶴乃はすぐさまカメラを構えてアリーナ内に視線を向けていく。
そこに見えた光景とは、荒々しいラフファイト。
鶴乃が観客席に飛び込むと同時にかなえも動く。
周囲を回転して炎の世界にアルラウネを閉じ込める魔槍は使う素振りも見せない。
「アナタ達のふざけた理屈なんて…これ以上耐えられるか!!」
全身から紫色に輝く魔力を放出するかなえの全力疾走。
跳躍して飛び込み、アルラウネの上半身の前に立つ。
「もう我慢なんてしてやらない…リミッターカットだぁ!!!」
「な、何をする気!!?」
振り上げられたのは、彼女の利き腕である左腕。
「ぐふぅ!!?」
放つ一撃とは、力任せのぶん殴り行為。
「ハァァーーーッッ!!!」
左右から繰り出される拳打がアルラウネの顔面を打ち据え、ボコボコにしていく。
「ギニャーッッ!!顔はやめてーッッ!!同じ女悪魔でしょーッッ!!?」
「聞く耳もたない!!昔のアタシとは違うんだ!!」
女悪魔を相手に女悪魔は一切の容赦をせずに殴り続ける光景。
彼女のマギア魔法は固有魔法の力など必要としない。
そのため魔法少女でなくなっても同じ攻撃を繰り出せる。
『無思考』となった雪野かなえは慈悲をもたなかった。
「ギャァァァーーーーーーッッ!!!!」
上半身が固定されているため逃げられず、ミドルキックが顔面を強打。
地面に入っていた根が千切れていき、巨大な花の体ごとアリーナの奥まで叩きこまれる。
着地したかなえは、アルラウネに視線を向けてこう吐き捨てる。
「消し飛べ……」
回転していた魔槍ルーンが飛来し、かなえは左手で柄を掴み取る。
両手で握り込んだ槍の矛を地面に突き立て、噴き上がる業火をえぐり取るようにして払い込む。
「クズがぁぁーーッッ!!!」
払われると同時に業火が前方に向けて広域放射。
<<そんなぁぁぁーー!?召喚されたばかりなのにーーッッ!!!>>
業火に飲み込まれたアルラウネが炎上し、体が崩れてMAGを放出。
アリーナ内を漂う二体のMAGの光を見つめながら、かなえはこう呟くのだ。
「…魔槍の錆びになれ」
かなえの魔槍ルーンは、これからも敵を求めていくだろう。
敵の血を魔槍は吸い上げ、その錆は獲物を殺し続ける者の証となろう。
悪魔となった雪野かなえが背負い続けなければならない業であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
ふらついた体を引きずりながらも、やちよ達は建物の中から出てくる。
騒ぎに気が付かれる前に移動しなければならないためだ。
「…みんなを助けられなかったわね」
メルの回復魔法によって傷を癒したやちよではあるが、その表情は暗い。
「魔法少女社会にフェミニズムを撒き散らすのは悪魔だっていう物的証拠は押さえたけど…」
カメラで写真画像を確認している鶴乃であるが、やはりやり切れない表情を浮かべてしまう。
「すいません…。日にちの確認だけでなく、犯行時刻も正確に視るべきでした…」
「自分を責めては駄目ですよ、メルさん。私達に出来ることは、これ以上の被害を防ぐだけです」
「ん…あたしもそう思う。あたし達が用意した証拠を使って…上手くやってくれるのを祈るよ」
「かなえさん、ボク達は悪魔ですよ?祈る神様は欲しいですけど…多分神様は許してくれません」
「んん…?そうかもしれないね…。あたし達は…円環の女神に嫌われてると思うし…」
「だからですね、尚紀さんもやってますけど…願うだけなら、悪魔でも自由です」
「そっか…じゃあ、あたしもそう願おうかな」
忍び込んでいた学校から抜け出したみふゆ達は、ふらつくやちよをみかづき荘まで送っていく。
歩きながらも、やちよは何かを考え込んでいたようだ。
「フェミニズムを撒き散らす目的の糸口は見えたわ。だけど…リリスの情報を聞き出せなかった」
「ごめん…倒す前に…情報を吐かせるべきだったね」
「それについては…私も反省しないとかなぁ」
「いいのよ、2人とも。相手は強敵だったのだし…生き残れたのならチャンスは巡ってくるわ」
みかづき荘に向かって行く魔法少女達ではあるが、その背後をつけ回す存在がいる。
(やれやれ…お楽しみの最中に喰ったモンで腹を下してトイレから帰ってみりゃ…全滅ときた)
怪しい身なりをしている男とは、ももこ達が参加するセミナー講師の1人でもあった。
(アルプとアルラウネを倒すような魔法少女なら、正面から挑むのは無謀だな。寝込みを襲うか)
人間に擬態しているため、やちよ達は尾行してくる者には気づいていない。
このままでは、やちよは男性フェミニストに寝込みを襲われかねない状況となってしまう。
(キッヒッヒ♪お楽しみを邪魔されたんだし、代わりを務めてもらっちゃうぜ~♪)
みかづき荘に向かう辺りに設置されてあったゴミ置き場に男は近寄っていく。
野犬がゴミを漁るため
「あらっ?」
ゴミ捨て場の後ろ側の屋根から飛びかかってきた巨大な存在によって、怪しい男の体が宙を浮く。
「ギャァーーッッ!!?」
男の体は獰猛な狂犬の顎で噛みつかれており、そのまま運ばれてしまうようだ。
「痛い痛い!!オレ様を何処に連れていく気だーーッッ!!?」
白い狂犬は跳躍移動を繰り返し、開けた路地裏に着地を行う。
そこにいた人物とは、ビール瓶の籠に座り込んでいる黒いトレンチコート姿の男であった。
「ご苦労だったな、ケルベロス。こいつは悪魔で間違いないのか?」
<我ノ嗅覚ハ誤魔化セン。コノ者ノ臭イハ…インキュバスダ>
念話を送るのは、嚙みついた相手を放すつもりはないという意思表示。
【インキュバス】
夢や現実で女を誘惑して性交する淫魔。
主に後家や修道女など欲求不満が高い女性に襲い掛かり、純潔を奪って淫乱の罪に陥れる。
美男子に変身する能力もあり、山羊のような姿にもなるという。
自分自身には生殖能力が無いため、サキュバスが集めた精子を犯した女に注ぎ込む存在であった。
「さて、長い質問になるだろう。洗いざらい吐いてもらうぞ、インキュバス」
「テメェ!?オレ様にこんな仕打ちを仕掛けて無事で済むと…ギャァーーッッ!!?」
ケルベロスの噛みつきが強くなり、激痛によって擬態が解けてしまう。
晒した悪魔姿とはピンク色の体を持ち、股間に大人の玩具を身に纏うような小柄な悪魔であった。
「ボルテクス界でも、お前らには世話になったな。見かけたらいの一番に殺したくなる」
「ボルテクス界だと!?ま、まさかお前は…ギャァーーッッ!!?」
「ケルベロスに胴体を食いちぎられる前に、洗いざらい吐いた方が良いんじゃないか?」
「こんな状態のオレ様に脅しを仕掛けてくるのか!?後生だ…見逃してくれ!頼む!!」
「断る。お前らのような連中が命乞いをしてくる時は、騙し討ちを仕掛けるのが定番だった」
「チクショーッッ!!ボルテクス界を彷徨ってた同胞共のせいで…オレ様大ピンチ!?」
野良犬の遠吠えが鳴り響く。
みかづき荘の窓際で遠吠えを聞いていたやちよは首を傾げてしまう。
「やだわ…また野良犬がうろついてるのかしら?誰かが襲われないよう願う事しか出来ないわね」
その誰かが彼女を強姦しそうになった現実があった事など知る由もない。
「今度は何?汚らしい男の叫び声まで聞こえてきたわ…野良犬に噛みつかれたのかしら?」
その通りである。
洗いざらい情報を吐かされたインキュバスであるが、ケルベロスは容赦なく噛み千切ったようだ。
夜の闇の中へと消えていく黒いトレンチコート姿の男と白い狂犬。
彼らもまた秘密裏に動いていくのだろう。
神浜で暗躍する巨大な闇の力は増すばかりであった。
話の内容的にベルセルクの断罪の塔辺りを思い出すエログロ展開でした(汗)