人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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175話 啓蒙の六枚翼

神浜の新たな魔法少女社会に芽吹いてきたフェミニズムの波。

 

それを好意的に受けとる魔法少女の数は多く、大きな派閥となっていく。

 

新入り魔法少女だけでなく、古参の魔法少女達もフェミニズムの影響を受けている。

 

気が付けば神浜の魔法少女社会は保守派と改革派に分かれてしまっているのが現状のようだ。

 

状況を看過出来ない常盤ななかの依頼を受けた志伸あきらと、ささらと明日香も動き出す。

 

彼女達は今、手分けして古参の魔法少女達の意見調査を行っている。

 

古参の魔法少女達の考え方は賛否両論といったところであった。

 

「まなかは…政治は分かりませんけど、良い事じゃないですか?」

 

胡桃まなかから意見聴取しているのは、竜城明日香。

 

「どのようにして、良い事だと思うんですか?」

 

「だって、フェミニズムは女性の社会進出を促す思想です。まなかは将来コックになりたいし」

 

「確かに…まなかさんは世界一のコックになるのが夢でしたね」

 

「コックだって立派なキャリアウーマンです。だけど伝統的な価値観だとまなかは報われません」

 

「そうですね…まなかさんも社会進出を望むお方でした」

 

「だからね、まなかの将来の道を手助けしてくれるフェミニズムは大事だと思います」

 

改革思想に慎重な態度を示す魔法少女も存在している。

 

「くみもね、アイドルを敵視するフェミの考え方には激おこぷんぷん丸だったんだ~」

 

十七夜が働くメイド喫茶とは別店舗のメイド喫茶で働く牧野郁美。

 

彼女から意見聴取をしているのは美凪ささらであった。

 

「女性の性消費差別とか言って、アイドルを攻撃するし!くみはプンプンだよ~!」

 

「フェミの理屈だと…ミニスカートを履いてるだけで女性差別扱いだからねぇ」

 

「ほんと信じられない!くみはアイドルになる夢を諦めないし、フェミとも関わりたくない!」

 

「郁美(いくみ)さんはフェミニズムに反対なんだね?」

 

「勿論だよ!それと…い・く・み・ん!って呼んでくれないとイヤイヤ~!」

 

「アハ…ハハ…そうでした」

 

意見聴取を繰り返す中、色恋沙汰が混じる意見を出す魔法少女も見かける。

 

「私は…伝統的な家族制度の在り方は反対だよ」

 

あきらから意見聴取を受けているのは、中央区で活動している粟根こころである。

 

「どうして…そう思うのかな?」

 

「男が女に家事を押し付ける価値観は嫌い。誰かの苦しみの上に成り立つ家族の在り方だから」

 

「それはそうだけど…でも、昔から続いてきた役割分担だと思うんだ」

 

「どうして役割分担が正しいの?それは誰かの為に生きる事を強いられる苦しみしか感じない」

 

「それだけが全てじゃないと思うけど…どうしてそこまで嫌うのか、理由があるのかな?」

 

重苦しい表情を浮かべるこころに無理強いはしないと言うが、聞いて欲しいと彼女は話し出す。

 

「母親の失踪が原因で魔法少女に契約したんだね…こころさんは」

 

「私は願った…両親の関係を守りたいって。だけどね…元に戻ってからが問題だったの」

 

沈痛な表情を浮かべながら語り続ける。

 

母親が出て行ってからは父との関係は壊れていく。

 

母親が戻ってきてからは喧嘩ばかり。

 

どちらに転んでも壊れそうな両親の関係を守る為、彼女は無理やり笑顔を作ってきた。

 

家族の関係性を守る為の潤滑油として犠牲になってきた人生。

 

「それでもね…私は家族を…守れなかったの」

 

切実な気持ちを生み出してしまったのは、社会的な環境のせいだとあきらも理解する。

 

「私はね、まさらに教えてもらったの。他の誰かの為に生きる義務なんて、どこにもないって」

 

「それが…こころさんがフェミニズムに賛成する理由なんだね?」

 

「女性だって自由に生きるべき。それを抑圧するだけでしかない伝統なんて…変えるべきだよ」

 

「それは…えっと…」

 

あきらは言葉を濁してしまう。

 

頑なにまでフェミニズムを支持するのは、家族関係だけでなくまさらも影響が大きいと考える。

 

こちら側の考えを押し付けたところで反発しか生まないと慎重になっているようだ。

 

「魔法少女社会は性の難民化社会だなんて思わない。魔法少女は魔法少女と絆が結べるんだから」

 

「じゃあさ…こころさんにとって男の人なんて…魔法少女には必要じゃないと言いたいのかな?」

 

「えっ…?そ、それは…その…」

 

突然の発言を受けて、こころも戸惑ってしまう。

 

いつの間にか感情的になっている自分に気が付いたようだ。

 

「確かにこころさんにとって、男の人は虐げる存在だよ。お父さんがそうであるように…」

 

「う…うん。それだけは…考え方を曲げる気はないよ」

 

「でもさ…ボクはこう考えてしまう」

 

――こころさんが本当に欲しかったのは、魔法少女同士の絆の世界だけなの?

 

それを問われた時、こころの心臓が大きく高鳴ってしまう。

 

「ボクは空手道場の娘として恥じない生き方をしてきた。だから両親からも必要とされてきた」

 

「あきら君は…両親から愛されてきたんだね。私とは…大違いだよ」

 

「両親から愛されたいから頑張ったし、地域の人達からも愛されたいから社会貢献もしてきたよ」

 

「その努力が実を結んだから…今のあきら君がいるんだね?」

 

「ボクは魔法少女だけでやっていけるとは考えない。異性愛社会の力だって必要だと思う」

 

あきらの言葉で思い浮かぶのは、異性愛社会で生きている親友の江利あいみのこと。

 

「空手道場の看板娘としての役割分担を…苦しみとは思わない。だってさ…」

 

――努力した分だけ…耐えた分だけ…みんながボクを愛してくれたから。

 

その言葉を聞いた時、こころの目に涙が浮かんでいく。

 

「ボクの生き方と考え方も語らせてもらったことだし…もう一度聞いても良い?」

 

震えていく彼女に聞くべきか迷っていた時、彼女の方から口を開きだす。

 

「私…必要とされたかった!!両親から…必要とされたかったの!!」

 

「こころさん…」

 

「だけど必要としてくれなかった!どれだけ頑張っても…応えてなんてくれなかった!」

 

子供を大切にして欲しかった。

 

男女の家で生まれた人間として大切にしてもらいたかったと涙ながらに語っていく。

 

「我慢し続けても応えてくれないなら…我慢しなくていいって…まさらは言ってくれたの!!」

 

周りに合わせるだけでは不幸しか得られない状況もある。

 

そんな時まで役割分担をしていては救えるものも救えない。

 

しかし、粟根こころの役目とは…両親が喧嘩しないよう愛想笑いを浮かべ続けることだったのか?

 

出て行った母親の悪い部分を客観視したり、その原因が父親にないかを客観視出来なかったのか?

 

「こころさん…辛い話をさせてしまったね…ごめんよ」

 

その時に手を差し伸べられなかった己を恥じ、あきらも観念したようだ。

 

「気持ちは分かったよ。時には我儘を言ってもいいって…ボクも思う」

 

「あきら君…」

 

「理不尽への抵抗権すら奪うような役割分担では救われないよ。だけど…忘れないで」

 

「私…その…」

 

「両親という異性愛社会から愛されたかった思いと、そのために努力し続けた自分の思いをね」

 

踵を返して去ろうとした時、あきらはこんな言葉を残すのだ。

 

「フェミニズムは女性の自立という我儘を擁護する。こころさんの母親の勝手な家出も擁護する」

 

「あっ……」

 

「伝えるべきことは全部伝えたからね…それじゃあ」

 

歩き去って行くあきらの背中を見つめながらも、こころは戸惑いの表情を浮かべていく。

 

「私は…両親のための我慢を登山に例えたよ。でも…望みが叶わないなら諦めてもいいと思った」

 

そんな事を繰り返して、本当の喜びが得られるのだろうか?

 

登山家のようなこころは知っている筈だ。

 

我慢の上に我慢を重ね、諦めずに上り切った果てにあった景色の美しさを。

 

「私だって…両親から愛されたかった。けど…私を大切にしてくれたのは…魔法少女だけだった」

 

あきらから言われた言葉で気が付かされるが、それでも彼女は愛する魔法少女へと逃げていく。

 

彼女は手近にあった癒される存在へと逃げ出した者。

 

同性愛者の例に漏れず、現実逃避を選んだ者であった。

 

……………。

 

古参の魔法少女達から意見聴取を行っていた魔法少女達が集まり、意見を交換し合う。

 

彼女達の情報交換が進むにつれ、深刻な表情を浮かべていく。

 

「そっか…思った以上に、古参の魔法少女達はフェミニズムについては好意的なんだね?」

 

「社会に出て働きたいと考える魔法少女は多いです。だからフェミニズムを魅力に思うんです」

 

「それに…異性愛社会から受けた理不尽に苦しんだ末に…フェミニズムを望む子もいるんだよ…」

 

「不味いね…今度の話し合いの場は、大きく荒れるかもしれないよ…」

 

「古参の魔法少女全ての了解を得られないのでしたら…ななかさんも厳しい立場となりますね…」

 

「報告しに行くのも辛いよね…。それでも、もう日にちが無いんだ」

 

「そうですね…彼女達の要求を突き付けられる日は…もう目前なんですから」

 

あきら達が危惧している日は迫っていく。

 

それは、魔法少女社会の労働環境を是正する要求を突き付ける団体交渉であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

団体交渉とは、労働組合が行う労働交渉である。

 

魔法少女社会は企業ではないのだが、それでも集団である以上は連帯を生み出せる。

 

今の長が行う治世に反対する者達が連帯して労働環境の是正をしてもらうために行う交渉だ。

 

もしこの交渉が上手くいかない場合、企業などでいうストライキの用意もあるようであった。

 

2020年、1月某日。

 

武術道場である竜真館に集まってきたのは改革派の代表者達。

 

予め団体交渉におけるルールとして様々な取り決めを行ったようであり、これもその一つ。

 

道場の中で待っていたのは、魔法少女達を束ねる長であり使用者たる常盤ななか達。

 

ななかと葉月の隣に座るのは、かこやあきら、このは達姉妹に明日香とささらであった。

 

用意された座布団に座り、互いが向かい合う。

 

「…十咎さん。貴女が改革派の代表者に選ばれたのですね」

 

「…うん。アタシの事をみんな信頼してくれたみたいだから」

 

「東側の魔法少女は月咲さんだけですか?…他の方々は?」

 

「神浜の東の魔法少女達は…尚紀さんの味方だよ。流石は東西差別を救った英雄様ってところさ」

 

「改革派は西と中央組を中心にしていると聞いておりましたが、相違なさそうです」

 

「神浜を救った恩人が相手でも、それとこれとは別問題。アタシ達はそれを託されたんだ」

 

交渉役として代表に選ばれた者達は古参の魔法少女達。

 

ももこ、レナ、かえでだけでなく、こころやまさら、それにまなかや天音姉妹の姿も見える。

 

月夜まで参加していたことにショックを感じた葉月が視線を向け、重い口を開く。

 

「月夜さんまで…改革派に付くなんてね」

 

「わたくしは伝統と共に生きてきました。ですが伝統が月咲ちゃん達を苦しめた事を知ってます」

 

「だから、今までのやり方を変えていきたいと願うんだね?」

 

「はい…。それが工匠区で虐げられてきた月咲ちゃんのためになると信じます」

 

横の月咲に視線を向ける。

 

姉の隣にいる月咲ではあるが、彼女の視線は何処か泳いでいる。

 

まるで迷いを孕んでいるように葉月には映ってしまう。

 

両者に与しない中庸側として美雨と令は端の真ん中席に座り、両方に視線を向けた。

 

「それでは、団体交渉協議を始めさせてもらうネ」

 

2人の進行役の元、ももこ達は改革を望む魔法少女達の要求を長に伝えていく光景が続く。

 

先ず第一の要求は、相談役としての嘉嶋尚紀を魔法少女社会の関係者とするのを禁止すること。

 

次の要求は、美雨や令だけでなくフェミニスト側の魔法少女も治世の監視側に回すこと。

 

最後の要求として出されたものとは…。

 

「魔法少女社会のパートナー関係を脅かす者は…人間であっても遠ざけろというのですか?」

 

「魔法少女である前に、アタシ達は女性だよ。女性は男性社会から常に虐げられる危険が大きい」

 

「これはレナ達だけで決めたことじゃないわ、みんなで相談して決めたことだから」

 

「魔法少女は助け合い社会を築くべきだよぉ…。魔法少女は常に人間社会の脅威を浴びちゃうし」

 

「先の神浜左翼テロにおいても…魔法少女は人間社会の脅威によって虐げられてきたわ」

 

「それが原因となって、私達は追い詰められていく。私も…家の事情で経験があるよ」

 

「まなかはももこさん達に賛成です。料理の仕事ではそう思いませんが魔法少女問題なら別です」

 

「これからは伝統に縛られない、自由な社会を模索するべきです。そうですよね月咲ちゃん?」

 

横に視線を向けるが、妹の月咲は返事も返さず俯いてしまう。

 

フェミニスト側の要求を清聴した治世側の魔法少女達は動揺していく。

 

葉月は長であるななかに視線を向ける。

 

「ななか…」

 

彼女は目を瞑り少しだけ溜息をついたあと目を開き…その重い口を開いていく。

 

「要求は分かりましたが…少し質問をさせてもらえないでしょうか?」

 

「質問だって…?」

 

「何故そのような考えに至ったのかというものです」

 

「それは答えないとならないものなの?」

 

「答え辛いですか?では、貴女方が如何にしてそのような考えに至ったのかを私がお答えします」

 

ななかは今まで秘密裏に調べてきたことを話していく。

 

「貴女方がフェミニズムに目覚めたキッカケとは、女性解放運動の影響が大きいです」

 

「…レナ達が通ってる場所を探りに来てたものね。頼んでもいなかったのに」

 

「女性は常に男性から虐げられる。果たして、その状況だけが全てなのでしょうか?」

 

「どういう…意味なの?」

 

ななかは語っていく。

 

フェミニズムが前提としてきた理屈が、如何にして切り取られたものでしかないのかを。

 

「貴方達は男性が大黒柱となる家族制度と戦っていると考えますが、ただの思い込みです」

 

ももこ達がざわめき、月咲の顔が青くなっていく。

 

「男性は女性を助けてくれている、必要としている。それを邪見にするのは我儘です」

 

「嘘だ!!」

 

声を荒げたのは、フェミニズム側の代表を任されたももこ。

 

「アタシは男性社会に抑圧されたから苦しんだ!男は女を所有物としか考えずに差別する!」

 

「ももこの言う通りよ!さゆさゆだって…同じことを言ってたんだから!」

 

「同性愛者達だって…同じだよぉ!私…そういうのが嫌だからフェミニズムが必要だと思う!」

 

「まなかは社会で活躍したいです!男女平等は必要だと思います!」

 

声を荒げる者達を制する為に進行役の美雨が彼女達を睨む。

 

美雨の迫力にたじろいだ者達が黙り込み、今度は葉月が口を開いていく。

 

「…平等と同じを混同してはダメだよ。男女は同じと考えれば…女性は辛い現実が待ってる」

 

「辛い現実…?」

 

「女性に不得手なことをしないとならなくなる。力仕事なんて、か弱い女の子では耐えられない」

 

葉月は視線を俯いたままの月咲に向けてみる。

 

「月咲さん…工匠区は女性が家事を押し付けられてきた封建時代の風習があるよね?」

 

葉月からの質問に対し、口を開くことも出来ず頷く態度。

 

「もし、月咲さんが男性と同じ仕事をやらされたとしたら…頑張っていけそう?」

 

「そ…それは…」

 

「工匠区は工業区。工場で働くのも力が必要な部分も多い…魔力強化無しでやれそう?」

 

「ウ…ウチは…」

 

「出来ない筈だよ。月咲さんだけでなく、月夜さんだって無理だと思うけど?」

 

「わ…わたくしは…その…」

 

「それを他の女性達にもやらせようとしている。フェミニズムは本当に女性を守る思想なの?」

 

「なら…女性は社会進出したらダメなんですか!?まなかは男性のように働きたいです!」

 

「男性だって、有能な女性上司と働くのは構わないと思う。でもね…家庭はどうなの?」

 

「家庭…?」

 

「有能な妻の尻に敷かれる男なんて男じゃない。自尊心もなくなって、夫は妻を愛さなくなる」

 

「それは…えっと…」

 

「家庭崩壊へと繋がる道なんだよ。そうなった時…犠牲となるのは産まれた子供なんだ」

 

孤児達の中には、そういう犠牲者もいたことを葉月達姉妹は誰よりも知っている。

 

そして、親から愛されなくなった子供となった者もいる。

 

こころは激情に駆られて立ち上がり、こう叫ぶのだ。

 

「男女社会が産まれた子供を犠牲にするのよ!!」

 

葉月が語った言葉を被害妄想で歪曲し、男女に犠牲にされたと思い込むこころは止まらない。

 

「お母さんは家から勝手に出て行く!お父さんは怒鳴るばかり!私は…抑圧されてきたのよ!」

 

「こころさん…」

 

自分が言った言葉は届かなかったのかと、あきらは辛そうな表情を浮かべてしまう。

 

「男女関係なんて築いても苦しむばかり!だったら…女の子は女の子同士の方が救われる!」

 

「自分自身を安心させてくれる、ペルソナとも言えるよく似た者を求めておられるのですか?」

 

長であるななかに振り向き睨むが、冷徹な態度を崩さない。

 

「男女は同じと考えるのと同じです。自分と似た人物に惹かれるのは恋愛の価値観では普通です」

 

「そ…そうよ!だから私は…苦しんできた私に我慢しなくて良いって言ってくれる子の方が…」

 

「こころ…」

 

救いを求めるかのようにまさらに視線を向けるこころだが…まさらは顔を俯けてしまう。

 

「まさら…?」

 

加賀見まさらは感情が希薄な人物。

 

感情的なエゴを押し通すことがないため、自分の考えに固執し続けることがない。

 

自分が言った言葉に整合性を感じられなくなり、自分が正しかったのかと疑問を感じてしまう。

 

そんな頼りない愛するパートナーの姿を見せられたこころは、動揺を隠しきれない。

 

「自分のアイデンティティを誰かに求める。それは他人の理想化に過ぎません」

 

「まさらを理想にしちゃダメだっていうの…?だったら私は…何を頼ればいいっていうの!?」

 

「辛い自分の逃げ道になってくれる依存先ではなく、自分を補ってくれる相手です」

 

「自分を…補ってくれる相手?ななかさんで言えば…嘉嶋さんのような?」

 

「貴女は両親という補ってくれる者達がいなければ生きられない。だから仲良くして欲しい」

 

自分の原点とも言える感情をななかに言われたこころの体が震えていく。

 

「ですが、フェミニズムは男女の夫婦制度を破壊する思想。それは…こころさんの望みですか?」

 

「私…は…」

 

「こころさんの母親がフェミニズム的な自立を望まず、妻としての役目を果たしてさえいれば…」

 

――勝手に家から出て行くこともなく、父親が激怒することもなかったのでは?

 

あきらに続き、ななかからも核心に至れる事実を語られる。

 

こころの両膝が崩れ、両手で顔を覆いながら泣き始めてしまう。

 

「お父さん…グスッ…お母さん…ヒック…どうして…どうしてぇ…!!」

 

「こころ…」

 

隣のまさらに抱き着き、泣き崩れていく。

 

ななかはまさらに視線を向けるが、まさらは静かに頷き自分達の間違いを認めてくれたようだ。

 

「…他に、何か言いたい者はいないカ?」

 

進行役の美雨がフェミニズムサイドに目を向ける。

 

皆が動揺し、自分達の考えは間違いなのではないかと不安になっていく。

 

その動揺を打ち払うのは、皆に激励を与える力を持つ十咎ももこ。

 

「みんな騙されるな!アタシ達は女性の権利を守るために戦ってるんだぞ!」

 

騙す、という謂れもない言葉を浴びせられたななかの表情が厳しくなっていく。

 

「…何故、騙すという前提にされるのです?貴女は先の戦いで何を学んだのですか?」

 

「アタシは女性として男社会から抑圧されてきた者だ!騙されるもんかぁ!!」

 

「貴女がどのような人生を生きたかは存じませんが、何故男が女を虐げるとお考えに?」

 

「男は…女を都合の良い存在だと考える!だから抑圧するし…したいこともさせてくれない!」

 

「したいこととは…?」

 

「アタシは…女の子のように生きたかった。でも、周りが男社会だから…出来なかった!」

 

「それは…貴女が周りの空気に合わせていただけではないですか?」

 

核心を突く言葉を長から浴びせられ、ハッとさせられたももこが動揺を見せる。

 

「アタシが…周りに合わせていただけ?」

 

「女の子のように可愛くありたい。何を恥じる必要があります?存分にやれば良かった」

 

「で…でも、それだと…男達の迷惑になるじゃないか…」

 

それを聞かされたななかは眼鏡を外し、真剣な表情で日本の悪しき歴史を語っていく。

 

「…日本人を動かしているのは、人じゃなく()()なんです」

 

「空気…?」

 

「一人一人が自立していないから空気が変わると皆が付和雷同し、意見や態度をコロコロ変える」

 

「空気を読んだアタシが…意見や態度をコロコロ変える?」

 

「戦前の戦争の時だって反対する人はいました。でも…その時の空気がそれを認めなかった」

 

戦前からも変わらず、日本人は周りの空気で動き、空気が行動を先導していく。

 

結果…責任の所在が不明確になり、()()()()()()()()()()()

 

「周りを恐れる必要は最初からない。危害を加えないのなら、自由を謳歌してもいいです」

 

「アタシの自由を生きても良い…?女の子のような可愛い服を着てもいい…?」

 

「勿論です。貴女に似合う可愛いお召し物を一緒に探してくれる親友はいないのですか?」

 

それを言われた時、ももこの顔が俯いてしまう。

 

顔を隠しているが眉間にシワが寄っているのを察したななかは、こう質問する。

 

「…その苛立ちの感情が、私達から尚紀さんを遠ざけようとしているものなのですね?」

 

「そ…それは…」

 

「尚紀さんが貴女に何かしたんですか?貴女を傷つけたのなら、尚紀さんを直接怒ればいいです」

 

「そうだね。尚紀さんを怒れば済む問題なら、男社会という全体問題にすり替える必要はないよ」

 

「そんなの…」

 

言えるはずがなかった。

 

相手は神浜の差別問題を封印した英雄であり、彼を慕う神浜魔法少女達は数多い。

 

それに雪野かなえや安名メルを生き返らせてくれた大恩人でもあり、自分とて感謝している。

 

そんな尚紀を痴情のもつれで批判したなら、やちよ達だけでなく大勢からバッシングを受ける。

 

何よりも…自分が大好きな親友の調整屋から責められるのが何よりも恐ろしい。

 

勇気を周りに与える者なのに、自分が一番勇気がない。

 

好きになった男に告白する勇気も出せずにキュウベぇに縋った過去もある。

 

皮肉な話であるが、ももことてか弱い女の子。

 

だからこそ、自分の我儘を正当化出来る政治思想を欲したのだ。

 

「貴女方は男性を誤解しています。一部の男性の悪行を切り取り、全体問題にすり替えています」

 

ももこまで批判する気力がなくなったこともあり、親友のレナが立ち上がり口を開く。

 

「だったら…だったら同性愛問題はどうなのよ!?」

 

「そうだよぉ!レナちゃんの言う通り…男性は女性の同性愛を認めない人達が多すぎるよぉ!」

 

「それは古来から続いてきた異性愛社会を壊されるのを認められないからだよ」

 

葉月の言葉に対し、レナは食って掛かる。

 

「ハァ!?同性愛をしたからって、どうして異性愛社会が壊されるわけよ!!」

 

「異性愛で成り立ってきた夫婦制度を破壊するからだよ」

 

「だから!どうして同性愛がそんなことになるわけよ!?」

 

「女性が男性化していく。男の役目だったことを女性に奪われ、男性は女性を愛さなくなる」

 

「だ…だったら!男性だって同性愛を望んでもいいと思うよぉ!」

 

「かえでの言う通りよ!みんなが同性愛を認め合うのが差別解消なんだから!」

 

「同性愛やバイセクシャルばかりが増えて、どうやって夫婦制度を維持するわけ?」

 

「そ…それは!同性愛結婚を認めるとかあるでしょ!?」

 

「どうやって子孫を増やすの?出来ることなんて、同性愛同士の性交だけでしょ?」

 

「そ…それは…」

 

「異性にこだわらないフリーセックスを女性に望ませる。それがフェミニズムだったよね?」

 

「葉月さんの言う通りです。そんな社会空気にされたら…性の難民で溢れかえるだけです」

 

ななかは視線をあきらに向ける。

 

「…うん。ありがとう、ななか」

 

自分が相談したことを議題にしてくれたことを喜ぶようにして笑みを返してくれた。

 

隣に座るかこにも視線を向け、彼女は頷き言いたかったことを口にし始める。

 

「私…フェミニズムを認めれば、男女共に()()()()()()()()()()()と思うんです」

 

「どういう意味よ…?」

 

「女性は男性が求めるアイデンティティを失い…男性は女性からアイデンティティを奪われる」

 

「そ…それは…その…」

 

「レズビアンとフェミニズムは同じです。レズは男性の役目を奪い取り、排除しようとします」

 

「あちし…そういうの聞いた事ある。たしか…百合の間に挟まりにくる男を排除するだっけ?」

 

「あやめちゃん…そういうの何処から覚えてきたの?」

 

「えっ?このはから聞いた事あるけど」

 

「このは…姉として、そういうのをあやめに伝えるのはまだ早いかも~…?」

 

「ちょっと2人とも!?そういうのはこういう場で言わないでったら!」

 

治世側がドタバタと騒ぎ始めるが、かこは視線をレナに向ける。

 

レナは言い訳を必死に考えようとしているが、しどろもどろになっていく。

 

「あ…えっと…」

 

「ゴホン!レナさん、そこにフェミニズムが掲げる()()()()()はあるんですか?」

 

かこは同性愛とフェミニズムの欺瞞を見抜き、語っていく。

 

フェミニズムは平等や選択の自由を掲げてきた。

 

本当に選択の自由があるのなら、女性に仕事をさせて自立しろと強要などしない。

 

男性や異性愛や家族制度を悪として排除するはずがない。

 

それは選択の自由などではない、()()()()()()という。

 

フェミニズムに選択の自由など、最初から与えられてはいないと見抜いたのだ。

 

「尚紀さんを遠ざけろと叫ぶ魔法少女の行動は…異性愛を敵視する反社会運動にしか見えません」

 

「かこさんの言う通りです。同性愛とフェミニズムによる家族の解体…誰が犠牲となるんです?」

 

「それは…その…」

 

「…隣で泣き続けているこころさんのような子供達を、貴女達は生み出したいのですね?」

 

ついに心折れたのか、レナもかえでも黙り込む。

 

皆を見つめる進行役の観鳥令も安堵の溜息をつく。

 

「…どうやら、論戦は決着を迎えたようだね?美雨さん」

 

「そのようネ。さぁ、どう纏めるネ…ななか?」

 

徹底した理詰めによる論戦を繰り返した常盤ななかと遊佐葉月達。

 

自分達の主張に疑問を持てた者達を見つめるななかと葉月は、このような提案をしてくるのだ。

 

「皆さんのお気持ちの全ては否定をしません。要求のうち、二つ目は考慮させてもらいます」

 

「だけどね…要求の一つ目と三つ目については受け入れられないよ。もう一度考え直して」

 

「貴女方は女性を守ろうとする者達。同じ女だからこそ、守ろうとする意志だけは尊重します」

 

「だからね、全ての男を否定するのはやめようよ。酷い男の人だけを摘まみ上げたら良いんだよ」

 

新たな神浜魔法少女社会の長が出してきたのは、皆をジンテーゼに導く妥協案。

 

全てを否定するのではなく、片方の主張も取り入れた形で双方の利益を模索する。

 

ヘーゲルの弁証法手口を実践するのだ。

 

「ももこ…」

 

「ももこちゃん…」

 

不安そうに見つめてくるレナとかえでに顔を向け、観念したのか頷く顔を見せる。

 

「…帰ってみんなに説明しよう。完全に…アタシ達の敗北だよ」

 

頑なな態度ではなくなったのを見計らい、ななかは横に置いてあった封筒を手にする。

 

「他の方々に説明をするのなら、お渡ししたいモノがあります」

 

「渡したいモノ…?」

 

「これを見てもまだフェミニズムを信じる気になるのかどうか…熟慮下さい」

 

新たな神浜魔法少女社会においては初となる団体交渉はこれで終了となっていく。

 

フェミニズム側の魔法少女達を見送る一同だが、美雨と令がななかに近寄り口を開く。

 

「これで…丸く収まってくれれば良いと思うけれど…」

 

「何を言いたいかは何となく分かります。何故、彼女達が浅慮な考えに至るのか…ですね?」

 

「私と令はフェミニズムセミナーに行て…見たネ。何も考えずに鵜呑みにする連中を」

 

「与えられた情報を鵜呑みにするテレビやSNS利用者達と同じさ…何も調べようとしない」

 

「人それぞれ考えは違う。ですが、無意識に()()()()()()()()()()()()方々は当てはまらない」

 

「論拠は偉い政治家や専門家がメディアで言ってた…って、話ばかりなんでしょ?」

 

「葉月さんも思うところがあるのですね?」

 

「アタシは交渉を生業とする女だよ?無意識を利用して要求を鵜呑みにさせる…だから分かる」

 

「誰かに与えられる情報を鵜呑みにする恐ろしさを知っておられる…ですね?」

 

「一度それを正しいと人々に思い込ませれば…疑う者はキチガイかデマ屋扱い。盲従してるのさ」

 

「まるでカルト宗教信者ネ。本当に自分が調べぬいた考えなのかを己に問うのを忘れてるヨ」

 

「それを忘れた瞬間、人は()()()()()()()()()()()()()()()()。だからメディアは恐ろしいんだ」

 

「人それぞれ考えはあって当然です。ですが…考えを他人に委ねる人々は伝書鳩に成り果てます」

 

「たとえ地球上で同じ考えを持つ人がいなくても自分はこう考える。それが言えて本物ヨ」

 

「それこそが個の確立…。民主主義国家を成熟させる最も重要な要素だと…観鳥さんは信じるよ」

 

周りに合わせて飾らない己のままで在れと尚紀に言われたななかは、視線を空に向けていく。

 

たとえ空気を読まずに皆から嫌われ者になってでも、批判する者として在り続けたい。

 

それこそが、尚紀と同じ思想を掲げた者の在り方だと常盤ななかは信じるのだ。

 

()()()()()が重要です。話し合いの前提条件が本当に正しいのかを見抜くためにも…」

 

間違えた情報を与えられて間違った前提でいる内は、選択の自由があるとは言えない。

 

最初に答えありきのままでは、答えにそぐわない者達を排除する結果しか生み出せない。

 

話し合いは重要だが…批判するものがいなくなれば最後、扇動者に操られるのみであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

社会正義を振りかざす者に右翼も左翼もない。

 

連中が言う言葉はみな共通しているからだ。

 

「それは社会的にどうなの?」

 

「被害者の身になれ」

 

「当人が聞いたらどう思う?」

 

人のため社会のためと、他人のために戦う事は素晴らしい。

 

しかし、そればかり連呼して他人を執拗に批判し、攻撃ばかりする人はどうなのか?

 

自分の本当の欲望、感情を隠している。

 

思想の型で殴りつけたいだけのようにも見える。

 

他人からよく思われたい欲求を、あたかも自己犠牲かのように目くらまししている姿なのだ。

 

人の為と書いて偽と呼ぶべき行為を行い、それにすら全く気が付いていない。

 

まさに偽善者と呼ぶしかない者達の姿がそこにはあった。

 

……………。

 

「あいつら…ただの役立たずよ!古参の魔法少女だからって信頼したのが間違いだったわ!」

 

フェミニズムサイドに戻って話し合いが行われたようだが、荒れに荒れたようだ。

 

神浜の魔法少女社会にフェミニズムをばら撒くのは悪魔だという証拠も用意した。

 

それでも、だから何だ?とフェミニスト魔法少女達は突き返してしまう。

 

人は見たいものしか見ないし、信じない生き物でしかない事を表す光景そのものである。

 

ももこ達を役立たずと罵った新参の魔法少女達は帰路につきもせず愚痴を言い合う。

 

「私たちの気持ちを共有してくれたのに!懐柔されて戻ってくるなんて!」

 

「あいつらも潜在的なミソジニーなのよ!男社会の味方をする気になった名誉男性共だわ!」

 

白か黒かでしか物事を考えない短絡的な正義を振りかざす者達。

 

彼女達が集まっているのは、新西区にある噴水公園。

 

時刻は既に夜中であり、人通りもまばらであった。

 

「でも…これからどうしよう?発言力のあったももこさん達が懐柔されちゃったら…」

 

「アタシ達の発言力もなくなって…新参の長の政治圧力に屈するしか道がなくなる…?」

 

「そうなったら…また正義の味方を強制されるんだよね?男共を守るために戦わされる…」

 

「私…そんなの嫌よ!女性を所有物としか考えない男を守るために命を使わされるなんて!」

 

「私たち魔法少女は異性愛社会を打ち壊すべきよ!それが不平等の元凶なんだから!」

 

「女は男に従うべきなんて理屈を振りかざす男なんて守らない!女は女を守ればいい!!」

 

「女同士で自立出来る!百合の間に男なんていらない!!だけど…私達だけで…何をやれるの?」

 

「そ…それは…」

 

その質問に答えられる者は誰もいない。

 

彼女達は自分を犠牲にした男達の労働力によって生かされている。

 

それを失った時、果たして彼女達の言う女性だけの自立した人生を送れるのであろうか?

 

家父長制の悪から無縁の、女性によって治められた社会がどのようなものであるのか例がある。

 

例えば、無人島に男だけの島と女だけの島を用意したとする。

 

男達は労働する事が当たり前だというアイデンティティがあるため、それぞれ役目を果たす。

 

しかし、女性はグループ全体のコンセンサス無しには何もすることが出来ない弊害を抱えている。

 

結果、女性社会はいがみ合いばかりを繰り返して何もしようとしない。

 

男の島は役目を果たして繁栄する傍ら、女の島は労働の押し付け合いで繁栄出来ずに惨めとなる。

 

女の島は安定した労働力も得られず、食料も尽きて男達に助けを求める以外にない。

 

この現実をフェミニスト達は全力で棚上げしている。

 

それでも、自分たち女の無力に薄々気が付いているのか不安を隠せない。

 

――貴女達って、不安なだけなんでしょ?

 

少女の声が響き渡り、フェミニスト魔法少女達が周囲を伺う。

 

「見て!あの子…何者なの?」

 

街灯の上に立っていたのは、魔法少女衣装のような服を纏う藍家ひめな。

 

「自分達が不安で堪らないから、それを解決出来ないから周りを変えようとする…違う?」

 

「貴女…誰なの?この街の魔法少女なの?」

 

「でもね、私チャンはそれで良いと思うよ?だってさ~男達に抑圧されてたら苦しいでしょ?」

 

「それは…そうだけど…」

 

「女は男に守られるべきという()()()()()に疑問を持とうよ?それは唯一神が決めたことだから」

 

「宗教の神様が決めたことだっていうの…?こんな偏見に満ちた世界を望んだっていうの!?」

 

「キリスト教の象徴たる神への絶対服従。それは暴力を携え、人間の尊厳を踏み躙り抑圧する」

 

「まるで…女(リリス)を虐げて抑圧する男(アダム)のような存在じゃない!!」

 

「女性は()()()()()()()レジスタンスになるべきだよ。それを正当化する思想こそ…啓蒙主義」

 

ひめなは片手を上に向けて構えていく。

 

「見て…あれは…天女の羽衣?」

 

かつてのひめなが纏っていたピンク色の羽衣ではない。

 

光り輝く羽衣が現れると同時にひめなの体も宙を浮く。

 

羽衣は彼女の体に蛇の如く纏わりつき、彼女の体を覆うのだ。

 

「かつて、私チャンは東の魔法少女達に光を与えた。今度は西や中央の子にも光を与えてあげる」

 

両手を広げていく。

 

「あの子は…何なの…?女神様…?」

 

ひめなの背中に現れたのは、発光する天使の六枚翼。

 

「なんて…美しいの…。まるで女性の美しさそのものだわ…」

 

魔法少女達の前に現れたのは、かつてのルミエール・ソサエティが掲げた旗の如き存在。

 

虐げられ抑圧される者達に、歯向かう剣の如き思想を与える六枚翼と啓蒙の光。

 

「凄い…光…」

 

「まるで…星の世界に…一番近いような…」

 

それを体現する啓蒙神が目の前に降臨したのだ。

 

「…私チャンが貴女達を、天辺の世界に連れて行ってあげる」

 

――天辺はね、光をもっとも強く浴びられる場所なんだから☆

 

……………。

 

覚悟を決めた魔法少女達の背中をひめなは見送っていく。

 

笑顔で手を振っていたようだが、口元には邪悪な笑みが浮かぶ。

 

「…あっちの方はアンドラスが行ってくれたし、私チャンまだまだ楽しめそうだね♡」

 

神浜未来アカデミーの女子制服姿に戻ったひめなが夜の世界へと消えていく。

 

神浜の魔法少女社会に再び啓蒙の光が降り注ぐ。

 

魔法少女達は人々のためだと信じて疑わずに啓蒙の光を希望の光だと叫ぶだろう。

 

しかし、彼女達が行うのは自分達が拒んだ暴力と抑圧を用いた世直し行為。

 

正義を掲げた瞬間、人々は自分のやっている事を見ようとしなくなる。

 

手品師が用いるトリックの如く、右手に意識が向けば左手が見えなくなるのと同じように。

 

正義を掲げる者達は常にダブルスタンダード。

 

自分は良くて、お前はダメ。

 

不満や苛立ちを払拭したい者達とは、()()()()()()()()()()()()だけの者達でしかない。

 

否定する人、悪口を言う人、怒る人、攻撃してくる人、論破しようとする人も変わらない。

 

自分の我儘を押し通したいだけの者達でしかなかったのだ。

 




体の体調も戻ってきたので投稿を再開します。
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