人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
暗雲立ち込める神浜市の夜。
反省会を路地裏で行っていたももこ達の前に現れたのは、黒スーツ姿の男。
男の両目が瞬膜となり、再びももこ達は感情を揺さぶられる魔法をかけられる。
直ぐに男は去っていくのだが、魔法少女達は突然苦しみだす。
「いや…まなかは…こんな未来…嫌です!!」
まなかの頭に浮かんだのは、家庭に押し込められてコックの夢を諦めた幻。
「ウチ…やっぱり役割分担なんて認めない!月夜ちゃんに会えなくなる!!」
「わたくしもです!水名の伝統に支配されて…月咲ちゃんから遠ざけられる!」
天音姉妹の頭に浮かんだのは、男の家庭に押し込められて姉妹が離れ離れになる幻。
「嫌…嫌っ!!私が奇跡を願っても…お母さんは家を捨てる!お父さんは私を責めてくる!!」
こころの頭に浮かんだのは、両親が喧嘩の末に離婚していく幻。
「あ…あぁ…どうして…どうして…」
ももこの頭に浮かんだものとは…。
「他の街からやってきた余所者の男なんかに…大切な親友を奪われるんだよーっ!!」
それは、八雲みたまと結ばれた尚紀を見つめることしか出来ない敗北者となった自分の幻。
レナもかえでも同じようにして苦しみ、不安によって冷静ではいられなくなる。
「みんな…どうしたの?急に苦しみだして…さっきの男に何かされたの!?」
感情が希薄な加賀見まさらには、ハピルマ・プリンパの洗脳効果は薄い。
皆の動揺の光景を見て、まさらはかつてと同じ光景となっていると気づくのだが…。
「ダメだ…やっぱりアタシは認めない!今の長のやり方じゃ…女性は救えない!!」
「ももこの言う通りよ!レナ達を口車に乗せようとしていただけなのよ!!」
「私たちは同性愛のために戦うべきだよぉ!それがみんなを救う正義なんだから!」
「私はもう迷わない!男女社会は私を苦しめ続ける…私にはまさらだけいればいい!!」
「わたくし達も同じ気持ちです!」
「うん!こうなったら力づくでもあの長を止めに行こうよ!!」
「まなかも続きます!まなかはコックになる夢を絶対に諦めませんから!!」
まさら以外の少女達がソウルジェムを掲げて変身を行う。
だが、長の元に向かおうとする皆を制止するかのようにして加賀見まさらが立ち塞がる。
「みんな待って!どう考えてもこれはおかしいわ…冷静になって!」
「悪いけど、アタシは冷静だよ」
「レナも同じだから。邪魔したら承知しないわよ」
まさらの制止などお構いなく、魔法少女達は彼女を無視して横を通り過ぎていく。
こころも同じように歩き去ろうとするが、まさらは彼女の手を掴む。
「お願いだから話を聞いて!」
「放して!私は守る者…私とまさらの未来を…魔法少女社会の未来を守る者なんだから!」
まさらの手を振り解き、こころは走り去ってしまう。
見たいものしか見ない者達の行動が理解出来ず、茫然と立ち尽くすことしか出来ない。
「みんな…どうして冷静になってくれないの?どう考えても私達の方が間違ってたのに…」
まさらは自分の力だけでは止められないと考え、親友の江利あいみに連絡を入れる。
そんな彼女達を見送るのは、先程の黒スーツ姿の男。
隣ビルの屋上に立ち、煙草の紫煙を燻らせながら溜息をつく。
「やれやれ…閣下もお戯れが過ぎる。あのような小者共など捨て置けばいいものを」
貧乏くじを引かされたことに不満を感じているようだが、それでもまんざらでもない態度。
魔力を隠すため人間に擬態しているが、アンドラスは危険な堕天使。
彼は人々を不仲にする力を持っており、徹底的に相争わせることを好む。
固い絆を持つ者達を不仲にさせて分断し、争わせる光景によって心躍る外道なのだ。
「社会の事を考えろと周りに同調を強いる者ほど、自分のことしか考えていない愚民共だ」
たとえその方向性が後で失敗だったと判明したとする。
それでも、社会を変えろと叫んだ連中が責任をとることなどまずない。
そういう連中は他人を支配したいだけの無責任主義者であり、自由の侵略者に過ぎないのだ。
「大衆は愚か者だと見抜いた者こそが、あのヒトラーであった。同じ嘘の手口に何度も騙される」
自分と同じく扇動の達人であった者の手口をアンドラスは語っていく。
共通の敵を作り大衆を団結させよ。
敵の悪を拡大して伝え、大衆を怒らせろ。
人は小さな嘘より大きな嘘に騙される。
利口な人の理性ではなく、愚か者の感情に訴えろ。
貧乏な者、病んでいる者、困窮している者ほど騙しやすい。
都合の悪い情報は一切与えるな、都合の良い情報は拡大して伝えよ。
大衆を熱狂させたまま置け、考える間を与えるな。
「社会正義という大きな嘘に騙され、社会貢献する正義に熱狂していく。どう正しいかも考えず」
煙草の吸殻を指で弾き、踵を返してアンドラスは去っていく。
「ヒトラーの扇動術は21世紀でも陳腐化していない。SNS社会の閉鎖性なら100%通用する」
――思考の偏りに無意識となり、自分に都合の良いものだけを拾うことしか出来ないのが人間だ。
そう言い残し、彼の後ろ姿は消えていってしまう。
アンドラスが残した言葉は、格言の世界でも残っている。
――狂気とはすなわち、同じ事を繰り返して行い、
――大衆は常に間違う。
自分の発言と行動に責任を持たない我儘な者達は知る努力もせず、何度でも間違うだろう。
無責任に生きる方が楽なのだから。
――――――――――――――――――――――――――――――――
新西区の外れにかつてあった神浜ミレナ座周囲は、現在立ち入りが制限されている。
そこから離れた場所には、誰も利用しなくなった公園が存在していた。
外来種のシロツメクサに覆われたその公園に向かう大勢の魔法少女達。
周囲は濃霧と思える程に霧が濃く、視界は良好とはいえない。
「この先にアタシ達の長を気取る常盤ななかの魔力を感じる…近いよ」
「何であいつ…こんな夜中に人通りが全くない場所で行動してるわけ?」
「どうせ魔獣退治でしょ?チャンスよ…一気に畳みかけるわよ」
濃霧の中、大勢が公園内に入り込んでいく。
全員の手には魔法武器。
明らかに話し合いを行う光景ではなかった。
「……来ましたか」
待っていたかのようにして、魔法少女姿の常盤ななかは公園の中央で佇んでいる。
「…アタシ達が来ることを知ってたような素振りじゃん?」
「なら、私達が何を望んでいるのかも分かってるんじゃないですか?」
常盤ななか1人に対し、30人の魔法少女達が一斉に武器を構えていく。
冷徹な態度を崩さないななかの表情が厳しくなり、二刀流の刀を収めた鞘を持つ手に力が入る。
「…話し合いを望んでいるような態度ではないですね」
「あんたの嘘になんてアタシ達は乗らない!女性の権利を踏み躙ろうとする者には従わない!」
「私達は女性を守る者!女性を虐げる男の存在を許す者の決まり事なんて認めない!!」
ももこ達と同じく、前提という決めつけを行い謂れも無い言葉を浴びせられる。
しかし、あの時と同じく冷徹な態度をななかは決して崩さない。
「嘘だの踏み躙ろうだの…勝手に決めつけてくる。少しは自分達の考えを疑わないのですか?」
「五月蠅い!!お前のデマに惑わされるもんか!このミソジニー女め!!」
「陰謀論もそうですが、そういう言葉を使う人に限って自分では全く調べていない者達ばかり」
「コイツ…アタシ達が間違ってると決めつけようとしてる!こいつは詐欺師だ!!」
「調査力、洞察力に著しく欠けている事にも気づかない。だから物事の辻褄さえ無視出来る」
「黙れぇ!!私達は無知なんかじゃない!ちゃんとした考えのもとで動いてる!!」
「貴女方の論拠など、自分に都合の良い情報を与えてくれた人達のもの。持論ではない」
「これ以上貴女の嘘に付き合うつもりはないわ!私達の要求を踏み躙ろうとするなら…」
「するなら…?」
一斉に武器を構え、殺意をななかに叩きつけてくる新参の魔法少女達。
相手は手練れの魔法少女であるが、数の暴力による安心感なのか怯みはしない。
ななかは顔を俯けていく。
前髪で表情は伺えないが、怒りの形相と化していく。
「私達は貴女を長とは認めない!貴女を蹴り出して…私達は自由となるのよ!!」
「自由となった暁には!アタシ達は女性を脅かす人間の男なんて守らない!!」
「人間の男なんてほっといても死ぬ!だったらいっそのこと…」
――魔獣にでも喰わせて、百合(リリス)を脅かす男を減らす方が社会正義ってものよ!!
…看過出来ない言葉であった。
「私は……貴女達を信じたかった」
鞘を持ち上げ、左右の刀の柄を握り締める。
同時に刃を抜き、鞘が落ちる音と共に濃霧が晴れていく。
「こ…これは!!?」
フェミニスト魔法少女達は目を疑った。
ななか1人しかいないと思っていた公園内には、ななかに与する魔法少女達の姿。
かこ、あきら、美雨、令、それにこのは姉妹にささらと明日香達。
令から声をかけられた東の魔法少女達の姿も見える。
フェミニズムに反対する東の魔法少女とは、古町みくら、三穂野せいら、吉良てまり、水樹塁。
「そんな…魔力を感じなかったのに!?」
「この濃霧も魔法だったというの!?」
「誘い込まれた…最初から罠を張っていたのよ!!」
ななかの元に近寄るのは、事実偽装の魔法が使える美雨と霧の魔法が使える静海このは。
「……やはり、こうなてしまたカ」
「どうするの…ななかさん?」
怒りの形相のまま殺気を放つ者を見て、美雨の表情も不安によって歪んでいく。
「ななか…私の言葉を忘れたカ?お前もまた…かつてのナオキと同じになるのカ?」
眉間にシワが寄ったままだが、ななかは両目を閉じる。
怒りを飲み込もうと足掻くが、更紗帆奈に復讐した時と同じ感情が噴き上がり続ける。
「ななか…」
不安そうに見つめる葉月とあやめ達。
葛藤に苛まれるようだが、ななかの脳裏に浮かぶ言葉がある。
「怒りの感情が…善悪を生む。繰り返したくない感情が…他者を傷つけても良い
ななかの表情が落ち着きを取り戻し、両目が開いていく。
「それでは…あの子達と同じです。不快な存在を排除するために正義を掲げる者達と変わらない」
常盤ななかは
正義を掲げないため、ダブルスタンダードという思考の罠には陥らない。
「彼女達を制圧します。ただし、命を奪うような行いは禁止です」
それを聞けた時、美雨達の表情が喜びに包まれていく。
「ななか…よく頑張ったね。加害者の心にも…ちゃんと目を向けてあげられたんだよ」
「本当に強い子だよ…ななかは。あちし達はあの時…怒りの感情に飲まれたのに…」
「ななかだって同じことをしてる。だからこそアタシ達はもう…同じ過ちは繰り返さない!!」
葉月とあやめは握り手を持ち替え、武器で殴打する構えを見せる。
「拳の勝負こそ空手家の本懐!!」
「武道家として…稽古をつけてやるネ!!」
あきらと美雨は武器を使わず、武術を構える。
他の魔法少女達もななかの意思を受け取り、それぞれが魔法武器を構えるのだ。
「何処までもアタシ達をコケにする気ね!!男に味方する裏切り者共がぁ!!」
「私達は魔法少女の正義よ!!百合の間に男を挟み込むことを望む悪を成敗してあげる!!」
男に対する怒りと憎しみに支配された少女達が正義を掲げ、悪と決めた少女達に襲い掛かる。
善悪を掲げる者達と…善悪を超えた者達との戦いが始まったのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ヤァァーーッッ!!」
短刀を構えたフェミニスト魔法少女達が迫りくる。
「くっ!アタシの武器はあんまり峰打ちには向いてないかも~…!」
「あちしの武器だって同じだよ~!!」
迎え撃つ葉月とあやめだが、彼女達の武器の形は独特であり刃を返し辛い。
慣れない武器の扱い方に苦戦をしていたが、一陣の風の如く踏み込む長女の姿が迫りくる。
「ハァァーーーッッ!!」
このはの武器は長柄両端に蝶の羽根型の刃を持つ両刃薙刀。
魔法武器の平たい部分を用いた峰打ちによって短刀の魔法少女達の顔面を打ち据えていく。
「過去を肯定するためにも…」
このはの脳裏に浮かぶのは、怒りに我を忘れて殺戮を行った記憶。
「未来をつかめ!!」
迷いを振り切ったこのはの体から魔力が噴き上がっていく。
迫りくるフェミニスト魔法少女達に向け、両刀薙刀を水平に構える姿。
青白い魔力を放ち、周囲に出現した両刀薙刀が地面に突き刺さり魔法陣を描く。
「いい加減…視界から消えてもらおうかしら!!」
景色が一変し、周囲から美しい蝶々が大量に出現していく。
「な…何よコレはーーッッ!!?」
無数の蝶々に纏わりつかれると同時に、水流の竜巻が出現。
フェミニスト魔法少女達は水流の竜巻に巻き上げられ、地面に激しく叩きつけられる。
威力は弱めているが、このはのマギア魔法である『バタフライ・テンペスト』が猛威を振るう。
「これで何も言わなくなったら、許してあげるわ」
全身を強打したフェミニスト魔法少女達は激痛によって動くことはない。
「流石はアタシ達姉妹の長女だよ!」
「にっしっし♪それでこそあちし達のこのはだね♪」
「葉月!あやめ!気を抜かないで!!貴女達の武器は峰打ちには向いてないわ!」
「それならそれで…やりようはあるって!」
新手が迫りくる中、武器の柄を持ち直した葉月が武器を交差させる。
「アタシとしてもさ…これで終わらせたいわけよ!」
交差させた武器を滑らせながら開き、一気に火花を飛ばす。
斧に似た形状の魔法武器を天に向けて構え、魔力で生み出した雷を浴びる。
雷を一気に放つマギア魔法である『サンダー・トレント』の光景。
しかし雷を一直線に放出せず、全身に雷を溜め続ける。
「撃たれる前に仕留めてやるわ!!」
新手の魔法少女達の曲刀の一撃が迫りくる。
「…言っとくけどこれ、よっぽどのやつだから!」
葉月は両手に持つ武器で2人がかりで飛びかかってきた魔法少女達の武器を受け止める。
「「アバババババ!!?」」
雷を放出せずとも、雷のエネルギーを纏っているため全身が帯電している。
威力は弱められてはいるが体が感電したフェミニスト魔法少女達は地面に倒れ込んでいった。
「ここらで終わらせたいからね。ビリビリするのが怖くない奴からかかって来なよ!」
頼りになる2人の姉の姿を見つめるあやめではあるのだが…。
「う~ん…あちしの炎を武器に纏わせると大火傷させるし…どうしよう?」
フェミニスト魔法少女と目が合ったあやめは、取り合えず野球バッターの構えをとる。
「あちしは難しい戦い方は無理!ホームランされたい奴からかかってこい!」
どうやら難しいことを考えるのを止め、あやめは物理馬鹿一代を決め込む戦いを選んだようだ。
それぞれが奮戦を見せるこのは達姉妹の戦いが続く。
隣では、竜城明日香と美凪ささらの戦いが始まっている。
「くらえーーッッ!!」
処刑人の大剣のような魔法武器で跳躍斬りを仕掛けてくるフェミニスト魔法少女。
ささらは素早く体を横に向け、唐竹割りの一撃を回避。
「ぐっ!?」
回避と同時に自身の魔法武器であるレイピアの柄頭で顔面を打つ。
「せいっ!!」
怯んだ相手に回し蹴りを打ち込むが、新手が仕掛けてくる。
サーベルに似た魔法武器による斬撃が迫る中、レイピアを縦に構えて迎え撃つ。
「あっ!?」
柄を傾けたレイピアの刃でサーベルを受け流し、即座に首に向け刺突の構えに移る。
「騎士道に生きる私は無益な殺生はしたくない。まだ戦う?」
「フン!強がってられるのも今のうちよ!!」
フェミニスト魔法少女が視線を奥に向ければ、がら空きになった背中を狙う新手の姿。
しかし、ささらの背中を守る者がそれを許さない。
<<我が流派の神髄!お見せします!!>>
「えっ!?」
新手の魔法少女を覆う巨大な影に気が付き、影の方に視線を向ける。
「何よあれぇーーッッ!!?」
フェミニスト魔法少女が見たものとは、満月に照らされた巨大な日本の城。
天守閣の屋根に上るのは明日香の姿。
仁王立ちのまま薙刀を構え、勢いよく天守閣から跳躍。
「これが竜真流の奥義です!」
刃を返した薙刀から青い魔力が噴き上がり、水流のように明日香の体を包み込む。
「竜真閃光爪牙!ちゃあー!!」
浮かび上がったのは水の龍であり、顎を広げてフェミニスト魔法少女の頭上から迫る。
「キャァァーーーーッッ!!!」
明日香のマギア魔法の一撃を頭上から受けた魔法少女が倒れ込む。
「今のは峰打ちです!ですが、立ち上がるならば刃を返しますよ?」
返事は返らない。
どうやら気絶したようだ。
「あ…あれ?もしかして、やり過ぎましたか!?しっかりしてくださーい!!」
慌てて倒れた魔法少女の体を揺さぶる明日香を見ながら、ささらも溜息をつく。
「全く、明日香はやり過ぎるから冷や冷やするね…」
「隙あり!!」
後ろを向いていたささらにサーベルを振るうが、寸前で側方宙返りを行い距離をとる。
「まだやる気なの?これ以上は騎士同士の決闘になるけど良いの?」
「余裕ぶってるんじゃないわよ!この男女め!!」
聞き捨てならない言葉である。
「男女!?私だってか弱い女の子なんだけど!」
「嘘よ!よく見たら筋肉が目立つし、ゴリラ女じゃない!だから名誉男性なのよ!!」
消防士を目指して体を鍛えていたためか、いつの間にかゴリラ女になっている。
そう客観視されたのが恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしたささらが睨む。
「くぅ~~っ!!私は傷ついたわよ!デリカシーの欠片もない悪者め!!」
右手のレイピアを払い、垂直に構える。
半円を描くようにレイピアを振るえば、魔力で生み出した黄金の剣が6本出現。
「悪者が勝って終わりだなんて、そんな最後は認めない!」
魔力で浮遊した6本の剣が水平になり、射出体勢。
「成敗!!はぁッッ!!」
レイピアを振るうと同時に6本の剣が射出されていく。
「くっ!?」
サーベルを持った魔法少女は剣術に覚えがあるのか、次々と迫りくる剣を切り払っていく。
6本の剣を受け流しきった魔法少女がサーベルを構えてささらに斬りかかるが終わりではない。
「えっ!?」
後方から飛んできた黄金の剣がサーベルを打ち落とす。
残りの5本の剣は既にフェミニスト魔法少女の頭上であり、刃が垂直に落ちてくる。
「これは!?」
5本の剣が地面に突き立てられていき、刃の牢獄と化す。
腕が抜ける程度の隙間しかないため脱出することは出来ない。
ささらのマギア魔法である『ナイトリゾルブ』だが、加減をしてるため6本の剣は爆発しない。
「知ってる?最後には必ず正義が勝つの」
レイピアを腰の鞘に仕舞ったささらが笑顔で向かってくる。
両手をポキポキ鳴らしながら。
「ま、待ってーッッ!!?こんな状態でサンドバッグは止めなさいよ!!」
「五月蠅い!乙女の地雷を容易く踏み抜く悪はこうよ!!」
「ギャーッッ!!!」
「ささらさん!?私よりもささらさんの方がやり過ぎですよーっ!!」
加減をしてるのかしていないのか分からない惨状が広がっていく。
どちらも狂暴な暴れ馬な側面があるささらと明日香コンビの戦いは続くのだ。
後方では、ななかの背中を守るために戦う武道家達の奮戦の光景。
「ぐあっ!?」
中段蹴りに見せかけた変則回し蹴りが左側頭部を強打。
フェミニスト魔法少女が後ろに倒れ込み、あきらの姿が現れる。
右足を引き、腰を落としながら左腕を縦に構え、右手は腹部の辺りで水平に開く構え。
相手から見れば被弾面積が細くなり狙いにくい状態となる。
「来い!!ボクの拳で君達の怒りを受け止めてみせる!!」
「ざけんなぁ!!男のような魔法少女めぇ!!」
「あんたみたいなノンケがいるから!百合(リリス)が悪者にされるのよ!!」
メイスのような武器を振り上げたフェミニスト魔法少女達が迫りくる。
袈裟斬りの角度で振り上げた一撃を右回し蹴りで手首を蹴り飛ばし、続く左後ろ回し蹴りを放つ。
左側頭部を蹴り飛ばされた魔法少女の後ろから迫りくる相手に向け、右足刀を放ち蹴り飛ばす。
「後ろがガラ空きよ!!」
背後から迫る一撃。
「ふんっ!!」
背後に向いたあきらの左腕が持ち上がり、武器の柄を上腕受け。
「がはっ!?」
引き絞られた右拳による水月突きが決まり、大きく突き飛ばされる。
「義を見てせざるは勇無きなり。ボクの守りたい者達に…性別なんて関係ない!!」
「だからアンタはミソジニーなのよ!!魔法少女は女だけを守ればいい!!」
「そうよ!!百合の間に挟まりに来る男なんて…殺した方が魔法少女のためなのよ!!」
「何処まで押しつけがましいんだ!?自分達の我儘で他人を傷つけてると気づいてよ!!」
「五月蠅い!!私たちは美しい百合(リリス)だけを守る!!」
見たいものしか見ない者達の不満と怒りが迫りくる。
「話しても分かり合えないなら…拳で語らせてもらう!!」
息を短く吸い込み、あきらは一気に踏み込む。
「この拳にボクの全部を乗せる!!」
鈍化した世界。
前方の魔法少女に踏み込み、引き絞った拳で正拳突きの連打。
「どりゃーーッッ!!!」
「ギャーーッッ!!!」
一気に突き飛ばされるが、周囲からは跳躍した一撃が迫りくる。
「これがボクの…」
片膝をつき、全身に魔力を溜め込む。
「最高の一撃!!!」
立ち上がりながら天に向けて揚げ突きのアッパーカットを放つ。
地面に流し込まれた魔力も噴き上がり、青白い魔力の柱が放たれていく。
<<アァァァァーーーッッ!!!>>
あきらのマギア魔法である『巨拳連弾』の猛威が周囲を穿つ。
青白い魔力の柱に突き上げられた魔法少女達が次々と倒れ込み、呻き声を上げていくのだ。
「分かり合えないって…悲しいね。ボクは女同士の恋愛の敵になりたいわけじゃ…」
彼女達の我儘な気持ちを力でねじ伏せることしか出来ない自分の未熟さを痛感していた時…。
「死ねぇ!!男の味方めーーッッ!!!」
「はっ!?」
反応が遅れて背後からの一撃を浴びかけるが、すかさず美雨の援護攻撃。
「ぐあっ!?」
美雨の旋風脚が顔面にクリーンヒットして倒れ込み、悶絶していく。
「考え事をしている暇はないネ!あきら!!」
「ご、ごめんよ!今は戦場の真っただ中だったね…」
「答えを出すのは戦いが終わてから好きなだけするといいヨ」
「うん…そのためにも、彼女達の怒りは!ボク達の拳で受け止めよう!!」
2人が並び、背中を向け合いながら武術の構えをとった。
油断なく戦う武術家魔法少女の姿の中で、最も苛烈な戦いを見せる者がいる。
それこそが、今の神浜魔法少女社会の長を務める常盤ななか。
「先ずは一太刀!!」
舞うような動きで次々と剣戟を払い、後ろから迫る敵の斬撃を打ち払うと同時に後ろ回し蹴り。
蹴り飛ばされたフェミニスト魔法少女を超え、次々と新手が迫りくる。
「柔能く剛を制す。我が流派の舞…恐れぬならばかかってきなさい!」
下段の構えを見せた二刀小太刀が揺れ、次々と華麗な斬撃が繰り返されていく。
前方からの敵の斬撃を左切り上げで打ち払うと同時に背後に振り向き、後方の斬撃を払い落とす。
後ろから斬りかかる剣を背中を向けたまま左小太刀で受け止め、振り向き様の右薙ぎ打ち。
「ぐはっ!?」
刃を返された峰打ちを受けて倒れ込む仲間を超え、次々と斬撃の嵐が迫りくる。
「推して参ります!!」
右手の小太刀を逆手に持ち、鋭い眼光を放つななかが踏み込んでいく。
振り上げた左小太刀で袈裟斬り打ちを鎖骨に放ち、横からくる剣戟を右小太刀で受け流す。
舞いながら構えなおし、左の小太刀も逆手に持ったななかの体が揺れる。
斬撃を踏み込んで左薙ぎ打ち、側面の斬撃を受け流しながら舞い、右薙ぎ打ち。
二刀流の敵の連続斬りを後方に回転移動しながら連続で受け流し、さらに踏み込む敵の胴に一撃。
ななかの戦いはさながら、武を用いた舞踏のようにも見えてくる。
「なんて強さなの!?」
「これが長の力!?知将だって聞いてたから頭が良いだけかと思ったのに…」
「臆病風に吹かれたの!?私達は魔法少女の幸福のために戦ってるのを忘れないで!!」
後がないフェミニスト魔法少女達が攻撃を仕掛けてくる。
前から来る敵に踏み込み、右肘をみぞおちに打ち込む。
怯んだ相手に左小太刀の逆袈裟打ちを放ち、後ろに振り向く。
「「ヤァァーーッッ!!」」
同時に放つ右薙ぎと左薙ぎの斬撃に対し、逆手に持つ二刀小太刀の刃を縦にして受け止める。
押し込んでくる刃が滑り、剣と剣が絡み合う。
「…散りなさい」
左小太刀で絡みあった剣を上に向けて払うと同時に舞い、二刀小太刀の持ち手を変える。
鈍化した世界。
まるで桜の木々が生茂る程の美しい光景が映る中、ななかの二刀小太刀は天と地に向けられる。
「この一閃で落とします」
美しく光を放つ二刀小太刀から放たれるのは、一瞬で起こる連続斬り。
「白椿!!!」
桜の花びらが舞い散る。
まるで散る者達の儚さを表すかのように。
しかし、刃を返しているため致命傷ではない。
「がっ…あっ……」
複数回の斬撃を浴びて倒れ込んだ魔法少女達を見下ろしながら、長はこう口にする。
「魔法少女同士の間に男が挟まりに来る…それが憎い。それこそ被害妄想です」
「なんで…すって…?」
「社会とはみんなのもの。魔法少女達だって、男の方々の労働力に頼った生活を送っています」
「そ、それは…」
「魔法少女同士の生活の中で、一度でも男の人を排除した生活を送れた日がありましたか?」
そう言われた時、フェミニスト魔法少女達の頭に浮かぶものがある。
生活に必要な品を買う、交通を利用する、医療を利用する、娯楽施設に行く。
あらゆる場所で男達が働き、その恩恵を魔法少女達は受けているはず。
「私達は男社会の恩恵無くしては生きられない。お世話になった方々を排除したいのですか?」
言い返せなくなっていた時、別のフェミニスト魔法少女がこう叫ぶのだ。
「だったら!!男共は魔法少女を楽させる労働力として奴隷生活を送っていけばいいのよ!!」
まるで魔法少女至上主義の如き暴論を放ち、スパイク付きメイスを振りかざす敵が迫りくる。
敵を迎え撃つため振り向くななかが見たものとは…。
「がふっ!!?」
フルスイングされたのは、杖の先端が工具のニッパーかと思わせるような魔法の杖。
夏目かこの一撃が顔面に決まった魔法少女が倒れ込み、目から星が出る始末。
「最低の暴論です!百合って美しい友情の世界だと思ってたのに…押しつけがましいだけです!」
プンスコ怒るかこの元にまで歩き、ななかが頭を撫でてくれる。
「フフッ♪やはり私の背中を任せられるのは、最初のパートナーだけですね」
「ななかさん…私と出会った頃のことを覚えてくれていたんですね?」
「勿論です。私とかこさんは最初のパートナー同士…そして、心を同じくしてくれた同志です」
「私とななかさんは…いつまでも弱い人間の目線を忘れない。そんな魔法少女で在りたいですね」
「魔法少女という強者になるからこそ己惚れる。そんな者達を止めるために…戦いましょう」
背中合わせとなり、ななかとかこは戦い抜く。
その姿はまるで最初の頃に戻れたかのような姿。
東の魔法少女達も奮戦しているのだが、西の魔法少女達の戦いを見て安堵の溜息をつく。
「観鳥さん…安心したよ。この人達ならきっと…間違いをみんなで止めていけると思う」
「映画趣味でも、好みの押し付け合いで喧嘩になる…。住み分けが大事だって私は思うよ」
「三穂野さんの言う通り。考え方が違う者同士は相いれない…住み分けこそが尊重精神なんだよ」
「尊重がない世界なんて、きっと争い合いしか起こらないって思う。映画の世界でもそうだから」
感慨にふける令とせいらに向けて、東の魔法少女仲間達が叫んでくる。
「ちょっと!遊んでないで手を貸しなさい!」
「闇の覇王である僕に手柄を全部横取りされたいなら、そこで見てても構わないよ?」
「数が多いのだから協力して取り組みましょうか。フォートレス・ザ・ウィザードさん♪」
みくら、てまり、塁の奮戦を見て、令とせいらも顔を向け合いながら頷き合う。
「さぁ!観鳥さんも派手にいこうか!!」
「カメラを回したら最高のアクション女優になれるよね!私達!!」
魔法のバズーカと拡声器を構え、東の魔法少女達の連携によって次々と敵を打ち倒す。
30人もいたフェミニスト魔法少女達は倒れていき、もはや全滅を免れない状況。
その窮地を救いに現れた者達とは…。
「やらせるもんかぁーーッッ!!!」
「えっ!?」
跳躍斬りを仕掛けてきた者に反応し、後方に宙返りを行う回避行動。
ななかが立っていた場所が大きく砕け、その一撃の重さを周りに知らしめる。
「そ…そんな…」
「どうして…どうしてですか…?」
驚愕したななかとかこ、そして長に与する魔法少女達。
砕けた大地から噴き出す煙の中から歩いて来たのは、十咎ももこ達。
「負けるなみんな!アタシ達は女性を守る為に戦う盾なんだ!!」
三日月の曲線を描く独特な刃をした大剣を構え、激励の固有魔法を放つ。
「ぐっ…私…達は…」
「女性を…魔法少女達の…絆を…守る者…」
倒れ込んだフェミニスト魔法少女達のソウルジェムに勇気が宿り、光を放つ。
全身に感じる激痛すら感じない程の覚悟を見せ、立ち上がっていく。
「痛覚麻痺を使てくるカ!?」
「不味いね…。相手を殺す一撃を放てないボク達は…決め手に欠ける戦いになるよ…」
「やれやれ…最悪のバットタイミングに現れるだなんてね」
「そこら辺も…あの子らしいのかもしれないわね、葉月」
ももこ、レナ、かえで、こころ、天音姉妹、まなかが武器を構えていく。
「行くぞみんな!フェミニズムこそが魔法少女社会を救うと…アタシ達で証明するんだぁ!!」
ももこから勇気を貰えたフェミニスト魔法少女達が再び襲い掛かってくる。
レナ達も武器を構えながら迫りくる。
考え方が違う者同士が互いの思想を押し付け合う。
それがどう正しいのかも分からないまま。
戦いは乱戦となり、混沌に包まれていったのだ。
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加賀見まさらから連絡を受けた江利あいみも動き始めている。
彼女は中央の元長であった都ひなのを頼り、ひなのも他の魔法少女と連絡を取り合う。
あいみの元まで駆けつけたのは、ひなの、衣美里、それに梨花とれんであった。
「急ごうみんな!暴走してるこころ達の後ろはまさらが追いかけてるから!」
「あいつの魔法なら気づかれないだろうな…アタシ達も急ぐぞ!」
「あーし分かんない!なんでまた喧嘩になっちゃうのかなぁ…?」
「まさらの話だと…変な男に近寄られてから皆の様子がおかしくなったって…」
「恐らくその男は悪魔だろう。もしかしたら…あの時にアタシ達の心を操った奴かもしれん」
「だったら!あーしはそいつを探し出してとっちめたい!!」
「はやる気持ちも分かるが、今は暴走している魔法少女達を止める方が先だ!」
まさらの連絡を頼りに、中央の魔法少女達が神浜の西に向けて走って行く。
ひなの達を追いかける梨花とれんであるが、梨花の表情は暗い。
「レズビアンのあたしに…同性愛とフェミニズムを望む子達を止める資格…あるのかな?」
彼女の脳裏に浮かぶのは、かつての過ちの記憶。
自分の過去に苦しんでいる親友の姿を見つめるれんは、心配しながらこう言ってくれる。
「…何者であっても構わないって、あの店長さんは言ってくれました」
「れんちゃん…?」
「店長さんはゲイなのに…同じ同性愛者の我儘で大勢の人に迷惑がかかると止めようとした…」
「あたしも…あの店長さんと同じことが出来るかな?」
「やろうとする意志が大事だと思います。望みがあるからこそ…生きていけるんです」
「あたしは今…生きてる。だから望みもあるし…過ちを繰り返したくないんだね」
れんに励ましてもらえたことで心が軽くなったのか、梨花は迷いを払う事が出来たようだ。
まさらの連絡でこころ達が向かった先が分かったこともあり、路地裏に隠れて皆が変身を行う。
ここから先は跳躍移動となるのだが、知っている魔力が近寄ってくる。
「ハァ!ハァ!待ってみんな!!」
「みたまか?こんな夜中の西側で何をやっていたんだ?」
「ももこを探してたの…。連絡しても繋がらない…私を避けてるみたいなの…」
「それで家にまで押しかけてみたがいなかった…と言ったところのようだな?」
「貴女達が集まってるようだから走ってきたわ。ももこの居場所を知らないかしら?」
「私達が向かう先にももこちゃんもいるみたい!こころ達と一緒にいるってまさらが言ってた!」
「どういうことなの…?ももこはこころちゃん達と何をしようとしてるの?」
状況が見えないみたまに向け、みやこが手短に状況を説明してくれる。
驚愕した表情を浮かべるが、真剣な表情となったみたまが決意を語るのだ。
「私も付いて行くわ。ももこを止めないと…あの子をもっと苦しめることになる!!」
「あたしもみたまさんと気持ちは同じ!あたしの苦しみを…みんなに繰り返して欲しくない!」
「梨花ちゃん…皆を止めましょう。自分を騙し続けても苦しいだけだって伝える必要があるわ!」
決意をもった者達をみつめる都ひなのが微笑みを浮かべてくれる。
(こいつらが…みんなを止めてくれるかもしれないな)
みたまは左手をかざして魔法少女姿に変身。
皆に続き跳躍移動を行っていくが、心の中には葛藤の気持ちが湧いていく。
(ありのままのももこを受け入れる…それは本当にももこの望みなの?)
どれだけ親友であっても他人は他人。
他人の心を読み取ることなど魔法が無ければ出来ないため、憶測で判断する以外にない。
それでもやらなければ最悪な結末は変わらないのならば、みたまは迷わず行動するだろう。
たとえ親友の望みが分からなくても、愛する者のために行動する。
たとえ罵倒される結果を生んで友情が壊れるかもしれなくとも、恐れはしない。
それこそが親愛という名の友情であり、自己犠牲精神。
そう信じるみたまの足取りが重くなることはなかったのだ。
活躍が乏しかった神浜魔法少女達のテコ入れのお話です。
分かり易くいえば、これ以降出番が薄くなるキャラ達なので目立たせました。